説明

電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、および画像形成装置

【課題】機械物性面で、フィルミングやクリーニング不良、異音発生等を起こし難く、耐摩耗性に優れ、かつ電気特性面でも高速応答性、十分低い露光部電位を示し、さらには耐ガス性、画像メモリー性に優れる電子写真感光体、電子写真カートリッジ、画像形成装置を提供する
【解決手段】特定のポリエステル樹脂をバインダー樹脂として使用した感光層中に、特定構造を有する電荷輸送物質を含有させることにより、機械特性面での良好な性能を発現するとともに、高移動度かつ露光時に十分の残留電位を示す電子写真感光体を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電気特性および機械特性を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を用いて作製した電子写真感光体カートリッジ、および、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時的に高品質の画像が得られることなどから、複写機、プリンター、印刷機として広く使われている。電子写真技術の中核となる電子写真感光体(以下適宜「感光体」という)については、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電物質を使用した感光体が広く使用されている。
近年、高画質化の要求により、トナーの小径化が進み、中でもケミカルトナーにおいては形状が球に近い形態となることが多いため、感光体上に残ったトナーをブレードによりクリーニングする際にすり抜けが発生し易く、その結果地汚れ等の画像欠陥となる可能性が高くなっている。そのため、クリーニングブレードを強い圧力で感光体に当接し、トナーのすり抜けを防止する対策が取られることが多くなっている。
【0003】
クリーニングブレードの感光体への当接圧が大きくなると、ブレードが感光体最表面とくっつき/滑りを繰り返す、いわゆるスティック・スリップ現象によるビビリを生じ、その結果、異音を発生するリスクが高くなる。また、トナー成分である外添剤やトナーキャリアがクリーニングブレードにニップ部を介して感光体に強く押し当てられた状態で回転することにより、周方向の摩耗の増大による感光体寿命の低下や周方向傷の発生による画像欠陥も発生し易くなる。また、感光体表面にトナーの成分であるワックスや外添剤が固着し、除去が困難になる、いわゆるフィルミング現象も発生し易くなり、持続的な画像欠陥となるリスクも高くなってくる。
【0004】
このように、感光体に対してはより厳しい使用条件下でも画像欠陥や異音、寿命の低減を最小限にするような表面機械物性を有することが求められる。表面機械物性を改良する手段として、感光体の最表層にポリエステル樹脂、中でも高い弾性変形率を有するポリアリレート樹脂(全芳香族系ポリエステル樹脂)を使用することが、上記のような厳しい機械物性の改良要求に応えられる手段として実用化されている。
【0005】
一方で、電子写真装置の小型化、高速化によって、感光体が小径化され、一層の電気的な応答性向上(露光後の感光体の表面電位の素早い低減)が求められている。それら特性を満たす電子写真感光体を提供するために高移動度かつ露光時に十分低い残留電位を示す高機能な電荷輸送物質の開発が必要となっている。そして、それら課題を解決するためにテトラフェニルベンジジン骨格にスチリル基等を置換させπ電子系を拡張させた電荷輸送物質の研究が盛んになされており、多くの報告が行われている。(特許文献1〜5)
なお、有機系材料を用いた電子写真感光体の感光層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂などを塗布溶剤に溶解させ、得られた塗布液を塗布、乾燥し得られる。この電子写真感光体を製造する際に電荷輸送物質に求められる点としては、塗布液製造時に用いる塗布溶剤に対する溶解性、バインダー樹脂に対する相溶性である。当該溶解性、相溶性が低いと、塗布溶剤に所望する電荷輸送物質の量を溶解させることが出来なかったり、電荷輸送物質を溶解させ塗布液製造後、析出等の塗布液の劣化を起こし易く、また、感光層を塗布後、塗布膜中で結晶析出が発生したりして、塗布液・感光体の製造効率の低下を招くことがある。
【0006】
一般的に分子内でπ電子系を拡張させた化合物は、分子サイズが大きくなるに従い、分子間相互作用が大きくなり、溶解性が低下していく傾向にある。前述のテトラフェニルベ
ンジジン骨格は分子サイズが大きく溶解性が低い傾向にあり、このテトラフェニルベンジジン骨格にスチリル基等を置換させ、分子内でπ電子系を拡張させると、更に分子サイズが大きくなり塗布溶剤に対しての溶解性が更に低くなる。そこで先述した報告の中には、溶解性を確保するために、新たに置換基を導入したり、幾何異性体混合物として取り扱うなどの工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−36203号公報
【特許文献2】特開2002−80432号公報
【特許文献3】特開2006−8670号公報
【特許文献4】特開2008−83105号公報
【特許文献5】特許4407537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、ケミカルトナーに対して好適に使用される感光体としては、従来のポリカーボネート系バインダー樹脂では不十分で、それに代わる候補材料として、ポリエステル系樹脂が検討されているが、ポリエステル系樹脂はポリカーボネート系樹脂と比較して、分子の極性が大きく、電荷輸送能が相対的に劣るため、従来の電荷輸送材料の多くは、応答性、残留電位等が不十分で実用に耐えなかった。また、電荷移動度の早い公知の電荷輸送材料を使用しても、その多くは応答性は優れるものの、残留電位の低下が不十分であることが多かった。逆に、残留電位が十分低い電荷輸送材料であっても、応答性が低く、高速プロセスでの使用には耐えないものが多かった。更には、残留電位、応答性が良好でも、オゾンやNOx等の耐ガス性、画像メモリー性、ポリエステル樹脂との相溶性に劣り、使用できないケースも多々あった。
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、機械物性面で、フィルミングやクリーニング不良、異音発生等を起こし難く、耐摩耗性に優れ、かつ電気特性面でも高速応答性、十分低い露光部電位を示し、さらには耐ガス性、画像メモリー性に優れる電子写真感光体、電子写真カートリッジ、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、特定のポリエステル樹脂をバインダー樹脂として使用した感光層中に特定構造を有する電荷輸送物質を含有させることにより、機械特性面での良好な性能を発現するとともに、高移動度かつ露光時に十分の残留電位を示す電子写真感光体を提供することが可能であることを見出し、以下の本発明の完成に至った。
本発明の要旨は下記の<1>〜<5>に存する。
<1>導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層中に下記式(1)で表される電荷輸送物質と下記式(2)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0011】
【化1】

【0012】
(式(1)R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基を表す。nは1以上5以下の整数を表し、k、l、q、rはそれぞれ独立して1以上5以下の整数を、m、o、pはそれぞれ独立して1以上4以下の整数を表す。)
【0013】
【化2】

【0014】
(式(2)中、Ar〜Arはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。sは0以上2以
下の整数を表す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す)。
<2>前記式(1)で表される化合物が位置異性体混合物であることを特徴とする<1>記載の電子写真感光体。
<3>導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層中にCuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)が少なくとも24.1°、27.2°に回折ピークを示す結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする<1>ないし<2>記載の電子写真感光体。<4> <1>〜<3>のいずれかに記載の電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置からなる群から選ばれる少なくとも1つ、を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジ。<5> <1>〜<3>のいずれかに記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、および、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、特定の構造を有する電荷輸送物質とポリエステル樹脂を感光層に含有させることにより、高速応答性にすぐれ、十分低い残留電位を示し、電子写真プロセス内でのストレスに対して耐性の高い電子写真感光体の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
【図2】実施例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
≪本発明に用いられる電荷輸送物質≫
<本発明に用いられる電荷輸送物質の構造>
本発明に用いられる電荷輸送物質は下記式(1)で表される化合物であればいかなるものであってもよい。
【0018】
【化3】

【0019】
式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基を表す。nは1以上5以下の整数を表し、k、l、q、rはそれぞれ独立して1以上5以下の整数を、m、o、pはそれぞれ独立して1以上4以下の整数を表す。
上記式(1)においてR、Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられ、アリール基としては、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の直鎖上アルコキシ基、イソプロポキシ基、エチルヘキシロキシ基等の分岐状アルキル基、及びシクロヘキシロキシ基が挙げられる。これらの中でも、製造原料の汎用性から水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、製造時の取扱性の面から、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、電子写真感光体としての光減衰特性の面から、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基が更に好ましく、電荷輸送物質としての電荷輸送能力の面から、水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基が更により好ましい。更にR〜Rがメチル基、メトキシ基、エトキシ基の水素原子以外の置換基である場合、ベンゼン環に対するそれぞれの置換基の結合位置は、スチリル基に対して、通常、o位、m位またはp位のいずれの位置でも可能であるが、製造の容易さの面から、o位またはp位のいずれかが好ましい。
【0020】
上記式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられ、アリール基としては、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の直鎖上アルコキシ基、イソプロポキシ基、エチルヘキシロキシ基等の分岐状アルキル基、及びシクロヘキシロキシ基が挙げられる。これらの中でも、製造原料の汎用性から水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、製造時の取扱性の面から、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、電子写真感光体としての光減衰特性の面から、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基が更に好ましく、電荷輸送物質としての電荷輸送能力の面から、水素原子が特に好ましい。
【0021】
上記(1)式において、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基のいずれかを表し、具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられ、アリール基としては、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の直鎖上アルコキシ基、イソプロポキシ基、エチルヘキシロキシ基等の分岐状アルキル基、及びシクロヘキシロキシ基が挙げられる。これらの中でも、製造原料の汎用性の面から水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、製造時の取扱性の面から、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、電子写真感光体としての光減衰特性の面からは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基が更に好ましく、電子写真感光体のオゾンに対する耐性面から、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましく、電荷輸送物質としての電荷輸送能力の面からメチル基、エチル基が最も好ましい。更にR〜Rがメチル基、エチル基である場合、ベンゼン環に対するそれぞれの置換基の結合位置は、スチリル基に対して、通常、o位、m位またはp位のいずれの位置でも可能であるが、製造の容易さの面から、o位またはp位のいずれかが好ましい。1つのベンゼン環に対するメチル基、エチル基等のアルキル基の合計が2個以上である場合、o位またはp位のいずれかに置換していることが好ましく、電子写真感光体特性の面から、より好ましくはアルキル基の合計が2個であり、その2個の置換基が、それぞれp位、o位に置換していること、もしくは両方ともo位に置換していることが更に好ましい。
【0022】
k、l、q、rはそれぞれ独立して1以上5以下の整数を、m、o、pはそれぞれ独立して1以上4以下の整数を表す。k、l、m、o、p、q及びrが2以上の整数を表す場合、ベンゼン環に結合する複数のR〜Rはそれぞれ異なっていてもよく、また、ベンゼン環に結合する複数のR〜Rもそれぞれ異なっていてもよい。
nは1以上5以下の整数を表す。nが大きくなると塗布溶媒への溶解性が低下する傾向にあることから好ましくは、4以下が好ましく、電荷輸送物質としての電荷輸送能力の面から、より好ましくは3以下、電子写真感光体の光減衰特性の面から更に好ましくは2以下である。また、nが小さいと、電子写真感光体の帯電性の低下がおこる可能性があることから、より好ましくは2以上である。
【0023】
ジフェニルアミノ基が結合するアリーレン基部分は、n=1の場合、フェニレン基、n=2の場合、ビフェニレン基、n=3の場合、ターフェニレン基、n=4の場合、クオターフェニレン基、n=5の場合、キンキフェニレン基を表す。2つのジフェニルアミノ基がアリーレン基と結合する位置は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが
、n=1の場合、電子写真感光体の帯電性の面から、2つのジフェニルアミノ基がフェニレン基の結合位置でm位の関係となることが好ましい。n=2の場合、電荷輸送物質としての電荷輸送能力の面から、ジフェニルアミノ基がビフェニレン基と結合する位置は、ビフェニレン基の4位と4’位に結合することが好ましく、n=3の場合、製造原料の汎用性からターフェニレン基の中でもp−ターフェニレン基が好ましく、p−ターフェニレン基へのジフェニルアミン基の結合位置は、電荷輸送物質としての電荷輸送能力の面から4位と4’’位に結合することが好ましい。n=4の場合、製造原料の汎用性からクオターフェニレン基の中でもp−クオターフェニレン基が好ましく、p−ターフェニレン基へのジフェニルアミン基の結合位置は、電荷輸送物質としての電荷輸送能力の面から4位と4’’’位に結合することが好ましい。n=5の場合、製造原料の汎用性からキンキフェニレン基の中でもp−キンキフェニレン基が好ましく、p−キンキフェニレン基へのジフェニルアミン基の結合位置は、電荷輸送物質としての電荷輸送能力の面から4位と4’’’’位に結合することが好ましい。
【0024】
また、本発明の電子写真感光体は、通常、感光層に、式(1)で表される化合物を単一成分として含有するものでもよいし、式(1)で表される異なる構造の化合物の混合物として含有してもよい。混合物としては、式(1)で表される構造のうち、R〜Rの置換位置だけが異なる、いわゆる位置異性体を複数種混合する場合が、互いの電子状態が近く電荷輸送のトラップになり難いことに加えて、塗布液あるいは膜中での結晶生成を抑制できる観点から、好ましい。位置異性体としては、R、Rの置換位置が異なるもの、具体的には、式(1)において、R、Rが共にo位の構造の化合物、R、Rが共にp位の構造の化合物、Rがo位であり且つRがp位である構造の化合物、Rがp位であり且つRがo位である構造の化合物(但し、分子が対称性を有する際には「Rがo位であり且つRがp位である構造の化合物」と同一となる)が挙げられ、これらの位置異性体2種以上を混合して使用することが化合物の合成の容易さの観点からより好ましく、R及びRに関する位置異性体3種以上を混合して使用することが最も好ましい。
【0025】
以下に本発明に好適な電荷輸送物質の構造を例示する。以下の構造は本発明をより具体的にするために例示するものであり、本発明の概念を逸脱しない限りは下記構造に限定されるものではない。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
<本発明に用いられる電荷輸送物質の製造方法>
上記に例示した電荷輸送物質は、公知の方法により、高効率で合成することが出来る。一例として、本発明の位置異性体混合物は、下記に記すスキームに従って製造することが可能である。
例えば、テトラフェニルベンジジン骨格を有する化合物をVilsmeier反応等でホルミル化を行った後に、リン酸エステル化合物と反応させスチリル基を導入することにより製造することができる。(スキーム1)
【0032】
【化9】

【0033】
≪本発明に用いられるポリエステル樹脂≫
<本発明に用いられるポリエステル樹脂の構造>
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、下記の式(2)で表される構造単位を有する。
【0034】
【化10】

【0035】
式(2)中、Ar〜Arはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。sは0以上2以下の整数を表す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。
上記式(2)中、Ar〜Arは、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。アリーレン基が有する炭素数としては、通常6以上、また、その上限は、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは6である。炭素数が多すぎる場合、製造コストが高くなり、電気特性も悪化する恐れがある。
【0036】
Ar〜Arの具体例としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。中でも、アリーレン基としては、電気特性の観点から、1,4−フェニレン基が好ましい。アリーレン基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0037】
また、Ar〜Arの置換基の具体例を挙げると、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アルコキシ基等が挙げられる。中でも、感光層用のバインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性とを勘案すれば、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基、
ナフチル基が好ましく、ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。なお、置換基がアルキル基である場合、そのアルキル基の炭素数は通常1以上、また、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは2以下である。
【0038】
より詳しくは、Ar及びArは、それぞれ独立して置換基の数は0以上2以下が好ましく、接着性の観点から置換基を有することがより好ましく、中でも、耐磨耗性の観点から置換基の数は1個であることが特に好ましい。また、置換基としてはアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
一方、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基の数は0以上2以下が好ましく、耐磨耗性の観点から置換基を有さないことがより好ましい。
【0039】
また、上記式(2)において、Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基である。アルキレン基としては、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシレンが好ましく、より好ましくは、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシレンであり、特に好ましくは−CH−、−CH(CH)−である。
【0040】
また、上記式(2)において、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、またはアルキレン基であって、中でも、Xは、酸素原子であることが好ましい。その際、sは0か1であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
sが1の場合に好ましいジカルボン酸残基の具体的としては、ジフェニルエーテル−2,2'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,3'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,3'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基等が挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸成分の製造の簡便性を考慮すれば、ジフェニルエーテル−2,2'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル
−2,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基がより好ましく、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基が特に好ましい。
【0041】
sが0の場合のジカルボン酸残基の具体例としては、フタル酸残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、トルエン−2,5−ジカルボン酸残基、p−キシレン−2,5−ジカルボン酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2'−ジカルボ
ン酸残基、ビフェニル−4,4'−ジカルボン酸残基が挙げられ、好ましくは、フタル酸
残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2'−ジカルボン酸残基、ビ
フェニル−4,4'−ジカルボン酸残基であり、特に好ましくは、イソフタル酸残基、テ
レフタル酸残基であり、これらのジカルボン酸残基を複数組み合わせて用いることも可能である。好ましい具体例としては、下記式(3)、(4)で表される構造単位を有するポリアリレート樹脂が挙げられる。式(3)、(4)中、イソフタル酸残基とテレフタル酸残基の比率は通常50:50であるが、任意に変更することができる。その場合、テレフタル酸残基の比率が高い程、電気特性の観点からは好ましい。
【0042】
【化11】

【0043】
本発明で用いられるポリエステル樹脂の粘度平均分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、また、その上限は、好ましくは70,000以下、より好ましくは50,000以下であることが望ましい。粘度平均分子量の値が小さすぎる場合、ポリエステル樹脂の機械的強度が不足する可能性があり、大きすぎる場合、感光層形成のための塗布液の粘度が高すぎて生産性が低下する可能性がある。なお、粘度平均分子量は、例えばウベローデ型毛細管粘度計等を用いて、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0044】
本発明に用いられる上記式(2)で表される共重合成分を有するポリエステル樹脂は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の最表面となる層に含有されるが、 以
下に詳述するように感光層の上に保護層を設ける場合は、保護層に含有される。
≪電子写真感光体≫
以下に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、上述した式(1)で表される電荷輸送物質と、式(2)で表されるポリエステル樹脂をバインダー樹脂として含有する感光層を設けたものであれば、その構造は特に限定されない。電子写真感光体の感光層が後に説明する積層型の場合には、電荷輸送層に、前記式(1)で表される電荷輸送物質、式(2)で表されるポリエステル樹脂、その他に必要に応じて酸化防止剤、レベリング剤、その他添加物を含むものである。また、電子写真感光体の感光層が、後に説明する単層型の場合には、前述の積層型感光体の電荷輸送層に用いられる成分に加えて電荷発生材料、電子輸送材料を用いるのが一般的である。
【0045】
<導電性支持体>
導電性支持体については特に制限はないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用しても良い。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いても良い。
【0046】
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いても良い。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
導電性支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであっても良い。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
【0047】
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、または樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。また、下引き層は、単一層からなるものであっても、複数層からなるものであってもかまわない。
【0048】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0049】
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の点から、その平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、特に10nm以上50nm以下が好ましい。この平均一次粒径は、TEM写真等から得ることができる。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタンアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知のバインダー樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
【0050】
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、バインダー樹脂に対して、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、繰り返し特性、及び製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常30μm以
下、好ましくは20μm以下である。下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。画像欠陥防止等を目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させて用いても良い。
【0051】
<感光層>
感光層は、上述の導電性支持体上に(前述の下引き層を設けた場合は下引き層上に)形成される。感光層は、上述した一般式(1)で表される電荷輸送物質と、式(2)で表されるポリエステル樹脂を含有する層であり、その形式としては、電荷発生材料と電荷輸送材料(本発明の電荷輸送物質を含む)とが同一層に存在し、それらがバインダー樹脂中に分散した単層構造のもの(以下適宜、「単層型感光層」という。)と、電荷発生材料がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送材料(本発明の電荷輸送物質を含む)がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層を含む、二層以上の層からなる積層構造の機能分離型のもの(以下適宜、「積層型感光層」という)が挙げられるが、何れの形態であってもよい。
【0052】
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に導電性支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
<積層型感光層>
[電荷発生層]
積層型感光層(機能分離型感光層)の電荷発生層は、電荷発生材料を含有すると共に、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷発生層は、例えば、電荷発生材料及びバインダー樹脂を溶媒又は分散媒に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)、また、逆積層型感光層の場合には電荷輸送層上に塗布、乾燥して得ることができる。
【0053】
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、中でも特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料またはアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
【0054】
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を使用する場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム等の金属またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類等が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
【0055】
また、これらフタロシアニンの中でも、A型(別称β型)、B型(別称α型)、および粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.1゜、もしくは27.3゜に明瞭なピ
ークを示すことを特徴とするD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン、28.1゜にもっとも強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、または26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有し、かつ25.9゜の半値幅Wが0.1゜≦W≦0.4゜であることを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
【0056】
電荷発生物質として、無金属フタロシアニン化合物、又は金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば、780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られる。また、モノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、又は660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光(例えば、380nm〜500nmの範囲の波長を有するレーザー光)に対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
【0057】
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
【0058】
一方、電荷発生材料としてアゾ顔料を使用する場合には、光入力用光源に対して感度を有するものであれば従前公知の各種のアゾ顔料を使用することが可能であるが、各種のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。
【0059】
【化12】

【0060】
電荷発生物質として、上記例示の有機顔料を用いる場合には、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよい。この場合、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有する2種類以上の電荷発生物質を組み合わせて用いることが好ましく、中でもジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料とフタロシアニン顔料とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0061】
積層型感光層を構成する電荷発生層に用いるバインダー樹脂は特に制限されないが、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース
系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いても良い。
【0062】
電荷発生層は、具体的に、上述のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、電荷発生物質を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状又は環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状又は環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。なお、上述の下引き層を設ける場合には、この下引き層を溶解しないものが好ましい。
【0063】
電荷発生層において、バインダー樹脂と電荷発生物質との配合比(質量比)は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常10質量部以上、好ましくは30質量部以上、また、通常1000質量部以下、好ましくは500質量部以下の範囲である。電化発生層の膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲である。電荷発生物質の比率が高過ぎると、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下する虞がある。一方、電荷発生物質の比率が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招く虞がある。
【0064】
電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散法を用いることができる。この際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の範囲の粒子サイズに微細化することが有効である。
<電荷輸送層>
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
【0065】
電荷輸送物質としては、上述した式(1)で表される電荷輸送物質が好ましい。また、上述した式(1)で表される電荷輸送物質に加えて、公知の他の電荷輸送物質を併用してもよい。他の電荷輸送物質を併用する場合、その種類は特に制限されないが、例えば、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、エナミン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、複数種のものを任意の組み合わせで併用しても良い。
【0066】
本発明に用いられる電荷輸送物質の効果を発揮するためには、全電荷輸送物質に対する式(1)で表される電荷輸送物質の割合が、通常、10重量%以上であり、電子写真感光体の光減衰特性の面から、好ましくは30重量%以上であり、電子写真感光体の高速応答性の面から、より好ましくは50重量%以上であり、特に好ましくは70重量%以上である。
【0067】
バインダー樹脂としては、上述の式(2)で表されるポリエステル樹脂が含有される。式(2)で表されるポリエステル樹脂は、単独で使用してもよいが、その機能を損なわない範囲において、他の樹脂と混合して用いてもよい。混合して用いてもよいバインダー樹脂としては、例えば、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂が好ましい。これらのバインダー樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。
【0068】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質を10質量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から20質量部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から30質量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は120質量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送材料とバインダー樹脂との相溶性の観点から100質量部以下が好ましく、耐刷性の観点から90質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から80質量部以下が最も好ましい。
【0069】
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には帯電安定性の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲で、高解像度化の観点からは25μm以下が最も好適に用いられる。
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダー樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
【0070】
電荷輸送物質およびバインダー樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質およびバインダー樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用
できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を十分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
【0071】
また、単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下の範囲とする。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
【0072】
<その他の機能層>
積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させても良い。
【0073】
また、積層型感光体、単層型感光体ともに、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上に更に別の層を設け、これを表面層としてもよい。例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けてもよい。
保護層の電気抵抗は、通常10Ω・cm以上、1014Ω・cm以下の範囲とする。電気抵抗が該範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
【0074】
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
【0075】
<最表面層の弾性変形率>
式(2)で表されるポリエステル樹脂を含有する最表面層の弾性変形率は、耐摩耗性の観点から40%以上であることが好ましく、トナー付着を防止する関連からは44%以上が好ましく、46%以上であることが最も好ましい。高い弾性変形率を保持するためには、式(2)で表されるポリエステル樹脂は、全芳香族ポリエステルである、ポリアリレートであることが好ましい。なお、弾性変形率は、Fischer社製微小硬度計FISCHERSCOPE H100C(もしくは同等性能を有するHM2000)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定する。測定には対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いる。
【0076】
<各層の形成方法>
上記した感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
【0077】
塗布液の作製に用いられる溶媒または分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の
芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせおよび種類で併用してもよい。
【0078】
溶媒または分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を使用時の温度において通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、また、通常500mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下の範囲とする。
【0079】
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、使用時の温度において、通常0.01mPa・s以上、好ましくは0.1mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下の範囲とする。
【0080】
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行っても良い。
【0081】
≪画像形成装置≫
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0082】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0083】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)等がよく用いられる。直接帯電装置の例としては、帯電ローラ、帯電ブラ
シ等が挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
【0084】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行って電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行うようにしてもよい。露光を行う際の光は任意であるが、例えば、波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光等で露光を行えばよい。
【0085】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0086】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0087】
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0088】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
【0089】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、
転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体)Pに転写するものである。
【0090】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
【0091】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0092】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0093】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行われる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行う。
【0094】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0095】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行うことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行うことで電子写真感光体の除電を行う工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い

【0096】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行うことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【実施例】
【0097】
<式(1)で表される電荷輸送物質の製造>
(製造例1:例示化合物CT−7、8、9かならなる位置異性体混合物)
例示化合物CT−7、8、9からなる位置異性体混合物を下記スキーム1に従って製造した。下記に詳細な条件を記す。
【0098】
【化13】

【0099】
テトラフェニルベンジジン誘導体である化合物A5gをDMF50ml中に仕込み60℃に昇温させた。昇温後、オキシ塩化リン4.4gを70℃以下で滴下し、滴下終了後4h、65℃〜75℃の範囲で反応させた。反応終了後、室温まで降温し、反応液を水100ml/トルエン100mlの混合液へ放出し、加水分解を行った。加水分解後、有機層を分取し、有機層を水酸化ナトリウム水溶液、及び水で有機層が中性になるまで洗浄し、有機層を濃縮した。そして、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、ホルミル基を有するテトラフェニルベンジジン誘導体である化合物Bを4.6g得た。(収率83.0%)
THF100ml中に、前記ホルミル化合物B4.6gとリン酸エステル誘導体である化合物Cと化合物Dとからなる位置異性体混合物(化合物C:化合物D=68:32)を4.8g仕込み、溶解させた。溶解後、t−ブトキシカリウム2.2gを添加し、室温に
て30分撹拌し反応させた。反応終了後、反応液を水に放出し、トルエンで抽出後、有機層を濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより目的物質である電荷輸送物質CT−7、8、9からなる位置異性体混合物を5.4g得た。(収率83.1%)得られたCT−7、8、9からなる位置異性体混合物の組成比率は、1H−NMR(核磁気共鳴)を測定することにより決定した。(組成比率:CT−7:CT−8:CT−9=47:43:10)
(製造例2:例示化合物CT−10、11、12かならなる位置異性体混合物)
例示化合物CT−10、11、12からなる位置異性体混合物を下記スキーム2に従って製造した。下記に詳細な条件を記す。
【0100】
【化14】

【0101】
テトラフェニルベンジジン誘導体である化合物E5gをDMF50ml中に仕込み60℃に昇温させた。昇温後、オキシ塩化リン4.3gを70℃以下で滴下し、滴下終了後4h、60℃〜70℃の範囲で反応させた。反応終了後、室温まで降温し、反応液を水100ml/トルエン100mlの混合液へ放出し、加水分解を行った。加水分解後、有機層を分取し、有機層を水酸化ナトリウム水溶液、及び水で有機層が中性になるまで洗浄し、有機層を濃縮した。そして、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、ホルミル基を有するテトラフェニルベンジジン誘導体である化合物Fを4.7g得た。(収率85.2%)
THF100ml中に、前記ホルミル化合物F4.5gとリン酸エステル誘導体である化合物Cと化合物Dとからなる位置異性体混合物(化合物C:化合物D=73:27)を4.5g仕込み、溶解させた。溶解後、t−ブトキシカリウム2.0gを添加し、室温にて30分撹拌し反応させた。反応終了後、反応液を水に放出し、トルエンで抽出後、有機層を濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより目的物質である電荷輸送物質CT−10、11、12からなる位置異性体混合物を4.4g得た。(収率70.2%)得られたCT−10、11、12からなる位置異性体混合物の組成比率は、1H−NMR(核磁気共鳴)を測定することにより決定した。(組成比率:CT−10:CT−11:CT−12=54:39:7)
(製造例3:例示化合物CT−13、14、15かならなる位置異性体混合物)
例示化合物CT−13、14、15からなる位置異性体混合物を下記スキーム2に従って製造した。下記に詳細な条件を記す。
【0102】
【化15】

【0103】
テトラフェニルベンジジン誘導体である化合物G10gをDMF130ml中に仕込み60℃に昇温させた。昇温後、オキシ塩化リン20.7gを75℃以下で滴下し、滴下終了後12h、70℃〜75℃の範囲で反応させた。反応終了後、室温まで降温し、反応液を水250ml/トルエン250mlの混合液へ放出し、加水分解を行った。加水分解後、有機層を分取し、有機層を水酸化ナトリウム水溶液、及び水で有機層が中性になるまで洗浄し、有機層を濃縮した。そして、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、ホルミル基を有するテトラフェニルベンジジン誘導体である化合物Hを8.5g得た。(収率77.0%)
THF100ml中に、前記ホルミル化合物H4.5gとリン酸エステル誘導体である化合物Cと化合物Dとからなる位置異性体混合物(化合物C:化合物D=71:29)を4.5g仕込み、溶解させた。溶解後、t−ブトキシカリウム2.0gを添加し、室温にて30分撹拌し反応させた。反応終了後、反応液を水に放出し、トルエンで抽出後、有機層を濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより目的物質である電荷輸送物質CT−13、14,15からなる位置異性体混合物を5.5g得た。(収率87.7%)得られたCT−13、14、15からなる位置異性体混合物の組成比率は、1H−NMR(核磁気共鳴)を測定することにより決定した。(組成比率:CT−13:CT−14:CT−15=51:41:8)
(製造例4:例示化合物CT−19)
例示化合物CT−19を下記スキーム1に従って製造した。詳細条件は下記の通り。
【0104】
【化16】

【0105】
テトラフェニルベンジジン誘導体である化合物E5gをDMF50ml中に仕込み60℃に昇温させた。昇温後、オキシ塩化リン4.3gを70℃以下で滴下し、滴下終了後4h、60℃〜70℃の範囲で反応させた。反応終了後、室温まで降温し、反応液を水100ml/トルエン100mlの混合液へ放出し、加水分解を行った。加水分解後、有機層を分取し、有機層を水酸化ナトリウム水溶液、及び水で有機層が中性になるまで洗浄し、有機層を濃縮した。そして、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、ホルミル基を有するテトラフェニルベンジジン誘導体である化合物Fを4.5g得た。(収率81.8%)
THF100ml中に、前記ホルミル化合物F4.5gとリン酸エステル誘導体である化合物Iを4.0g仕込み、溶解させた。溶解後、t−ブトキシカリウム2.2gを添加し、室温にて30分撹拌し反応させた。反応終了後、反応液を水に放出し、トルエンで抽出後、有機層を濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより目的物質である電荷輸送物質CT−19を4.3g得た。(収率73.8%)
(製造例5:例示化合物CT−31)
製造例4で用いたリン酸エステル化合物Iを下記リン酸エステル化合物J3.8gに変更した以外は、製造例1と同様の操作を行うことにより、目的の電荷輸送物質を4.0g得た。(収率1.2%)
【0106】
【化17】

【0107】
(実施例1〜6、比較例1〜11:電子写真感光体の評価)
<電子写真感光体作成方法>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着膜(厚み70nm)を形成した導電性支持体上を用い、その支持体の蒸着層上に、以下の下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μm以下となるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
【0108】
下引き層用分散液は、以下のように製造した。平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールのボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表される化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表される化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表される化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表される化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表される化合物]の組成モル比率が、75%/9.5%/3%/9.5%/3%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層分散液とし
た。
【0109】
【化18】

【0110】
(電荷発生層の形成)
電荷発生物質として、オキシチタニウムフタロシアニン結晶(図2に示すようにCuKα特性X線に対するX線回折スペクトルにおいてブラック角(2θ±0.2°)に27.2°に主たる回折ピークを示す。)を用いた。このオキシチタニウムフタロシアニン結晶を20重量部を用い、これを1,2−ジメトキシエタン280重量部と混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行って微細化処理液を得た。また、1,2−ジメトキシエタン253重量部及び4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン85重量部の混合液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)社製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10重量部を溶解させて、バインダー液を調製した。
【0111】
上述の微粒化分散処理により得られた微細化処理液、上述のバインダー液、及び1,2−ジメトキシエタン230重量部を混合して、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、前記導電性支持体上の下引き層上に、バーコーターにより、乾燥後の膜厚が0.3μmとなるように塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成した。
(電荷輸送層の形成)
バインダー樹脂としては、下記式PA1で表される構造単位からなるポリアリレート樹脂(Mv=43,000)を用いた。そして、後述する電荷輸送物質50重量部、バインダー樹脂100重量部、下記式(AOX1)の構造を有する酸化防止剤8部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調整した。
【0112】
【化19】

【0113】
得られた電荷輸送層用塗布液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、積層型感光層を有する電子写真感光体を得た。
以上の工程を得て、積層型感光層を有する電子写真感光体(感光体番号:感光体A〜C、感光体RA〜RG)をそれぞれ製造したが、比較例5〜7はいずれも電荷輸送層用塗布液調整段階で電荷輸送物質が完全に溶解しなかったため、感光体を製造することが出来なかった。各電子写真感光体の内訳は以下のとおりである。
【0114】
感光体PA(実施例1:製造例1にて合成した、下記構造式(CT−7)〜(CT−9)からなる位置異性体混合物を電荷輸送物質として使用)
【0115】
【化20】

【0116】
[位置異性体混合物組成比率:
CT−7:CT−8:CT−9=47:43:10]
感光体PB(実施例2:製造例2にて合成した、下記構造式(CT−10)〜(CT−13)からなる位置異性体混合物を電荷輸送物質として使用)
【0117】
【化21】

【0118】
[位置異性体混合物組成比率:
CT−10:CT−11:CT−12=54:39:7]
感光体PC(実施例3:製造例3にて合成した、下記構造式(CT−13)〜(CT−15)からなる位置異性体混合物を電荷輸送物質として使用)
【0119】
【化22】

【0120】
[位置異性体混合物組成比率:
CT−13:CT−14:CT−15=51:41:8]
感光体PD(実施例4:製造例4にて合成した、下記構造式(CT−19)を電荷輸送物質として使用)
【0121】
【化23】

【0122】
感光体PE(実施例5:製造例5にて合成した、下記構造式(CT−31)を電荷輸送物質として使用)
【0123】
【化24】

【0124】
感光体PF(実施例6:下記構造式(CT−34)を電荷輸送物質として使用)
【0125】
【化25】

【0126】
感光体PG(実施例7:下記構造式(CT−22)を電荷輸送物質として使用)
【0127】
【化26】

【0128】
感光体PH(実施例8:下記構造式(CT−26)を電荷輸送物質として使用)
【0129】
【化27】

【0130】
感光体PI(実施例9:下記構造式(CT−33)を電荷輸送物質として使用)
【0131】
【化28】

【0132】
感光体PJ(実施例10:下記構造式(CT−32)を電荷輸送物質として使用)
【0133】
【化29】

【0134】
感光体PK(実施例11:実施例4のバインダー樹脂PA1に代えて、下記PA2(Mv=40,000,ビスフェノールF成分の位置異性体比は、o,p体:p,p体=60:40)を使用)
【0135】
【化30】

【0136】
感光体PL(実施例12:実施例4のバインダー樹脂PA1に代えて、下記PA3(Mv=35,000)を使用)
【0137】
【化31】

【0138】
感光体PM(実施例13:実施例4のバインダー樹脂PA1に代えて、下記PA4を使用)
【0139】
【化32】

【0140】
比較感光体RA(比較例1:下記構造式(a)の電荷輸送物質使用)
【0141】
【化33】

【0142】
比較感光体RB(比較例2:下記構造式(b)の電荷輸送物質使用)
【0143】
【化34】

【0144】
[特開2002−80432号公報 実施例1に基づいて合成]
比較感光体RC(比較例3:下記構造式(c)の電荷輸送物質使用)
【0145】
【化35】

【0146】
比較感光体RD(比較例4:実施例4のバインダー樹脂PA1に代えて、下記構造のポリエステル樹脂PA5(Mv=21,000,a:b:c:d=1:1:1:1(mol比))を使用)
【0147】
【化36】

【0148】
<電子写真感光体の評価>
実施例1〜10、比較例1〜5の電子写真感光体を、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(「続電子写真技術の基礎と応用」、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、以下の手順に従って帯電、露光、電位測定、除電のサイクルを実施することにより、電気特性の評価を行なった。
【0149】
温度25℃、湿度50%の条件下、感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを照射して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー)を感度として測定した(単位:μJ/cm)。また、感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、0.6μJ/cmの照射エネルギーで露光後に測定した表面電位(単位:−V)を露光部電位(VL)とした。測定結果を表−1に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
以上の結果から、本発明範囲内である電荷輸送物質は電荷輸送層用の塗布溶媒に対する溶解性が非常に高く、成膜性良好で、本発明範囲内である電荷輸送物質を用いた場合に、高感度であり、暗減衰も少なく帯電性も良好で、かつ低い残留電位を示す高機能な感光体を提供することが可能であることが分かる。
<感光体ドラムの製造>
感光体DA1(実施例14)
前記実施例4で使用した塗布液を用いて、表面を切削加工した直径30mm、長さ260.5mm、肉厚0.75mmのアルミニウム合金(3003材)製チューブ上に、浸漬
塗布により、乾燥後の膜厚が下引き層1.25μm、電荷発生層0.3μm、電荷輸送層25μmとなるように感光層を形成し、感光体ドラムDA1を作製した。最表層である電荷輸送層の弾性変形率は48%であった。
【0152】
感光体DA2(実施例15)
前記実施例11で使用した塗布液を用いて、表面を切削加工した直径30mm、長さ260.5mmのアルミニウム製(3003材)チューブ上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が下引き層1.25μm、電荷発生層0.3μm、電荷輸送層25μmとなるように感光層を形成し、感光体ドラムDA2を作製した。最表層である電荷輸送層の弾性変形率は46%であった。
【0153】
感光体DA3(実施例16)
前記実施例12で使用した塗布液を用いて、表面を切削加工した直径30mm、長さ260.5mmのアルミニウム製(3003材)チューブ上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が下引き層1.25μm、電荷発生層0.3μm、電荷輸送層25μmとなるように感光層を形成し、感光体ドラムDA3を作製した。最表層である電荷輸送層の弾性変形率は44%であった。
【0154】
比較感光体DB1(比較例5)
前記実施例14において、バインダー樹脂として、PA1に代えて下記構造単位からなるポリカーボネート樹脂PC1を用いた以外は、実施例14と同様に比較感光体ドラムDB1を作製した。最表層である電荷輸送層の弾性変形率は42%であった。
【0155】
【化37】

【0156】
比較感光体DB2(比較例6)
前記実施例14において、バインダー樹脂として、PA1に代えて下記構造単位からなるポリカーボネート樹脂PC2を用いた以外は、実施例14と同様に比較感光体ドラムDB2を作製した。最表層である電荷輸送層の弾性変形率は39%であった。
【0157】
【化38】

【0158】
比較感光体DB3(比較例7)
前記比較例1で使用した塗布液を用いて、実施例14と同様に比較感光体ドラムDB3を作製した。
比較感光体DB4(比較例8)
前記比較例2で使用した塗布液を用いて、実施例14と同様に比較感光体ドラムDB4を作製した。
【0159】
比較感光体DB5(比較例9)
前記比較例3で使用した塗布液、実施例14と同様に比較感光体ドラムDB5を作製した。
比較感光体DB6(比較例10)
前記比較例4で使用した塗布液、実施例14と同様に比較感光体ドラムDB6を作製した。最表層である電荷輸送層の弾性変形率は37%であった。
【0160】
比較感光体DB7(比較例11)
前記比較例5において、電荷輸送物資をCT−19に代えて、CT−22を使用した以外は、比較例5と同様に比較感光体ドラムDB7を作製した。最表層である電荷輸送層の弾性変形率は41%であった。
<画像試験>
上記感光体ドラムを、ヒューレットパッカード社製タンデムフルカラープリンターLaserJet4650の感光体カートリッジに装着して、気温25℃、相対湿度50%下において、印字率5%で、10000枚の連続印字を行って、画像濃度(濃度が十分か否か)、クリーニングブレード由来の異音発生の有無、クリーニング不良の有無、感光体上のトナー付着(フィルミング)の発生度合(10段階で評価、最高:1、最低:10)、耐摩耗性(1000枚印刷あたりの感光体の平均膜減り量)、画像メモリー発生の有無、耐ガス性(画像ボケ、細線再現性)を調べた。結果を表―2に示す。
【0161】
【表2】

【0162】
【表3】

【0163】
以上の結果から、本発明範囲内である電荷輸送物質とバインダー樹脂を用いた場合には、画像不良や異音の発生がなく、耐摩耗性、耐ガス性に優れた感光体が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0164】
1 感光体(電子写真感光体)
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙,媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層中に下記式(1)で表される電荷輸送物質と下記式(2)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(式(1)R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基を表す。nは1以上5以下の整数を表し、k、l、q、rはそれぞれ独立して1以上5以下の整数を、m、o、pはそれぞれ独立して1以上4以下の整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Ar〜Arはそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。sは0以上2以
下の整数を表す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す)。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が位置異性体混合物であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
【請求項3】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層中にCuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)が少なくとも24.1°、27.2°に回折ピークを示す結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする請求項1ないし2記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置からなる群から選ばれる少なくとも1つ、を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、および、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−25189(P2013−25189A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161099(P2011−161099)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】