説明

電子写真感光体の評価方法及び評価装置

【課題】 電子写真感光体における感光層の膜厚均一性を短時間で且つ精度良く評価することが可能な電子写真感光体の評価方法を提供すること。
【解決手段】 導電性支持体と感光層とを備える略円筒状の電子写真感光体の評価方法であって、感光体と帯電装置との少なくとも一方を、感光体の周方向に沿って相対的に移動させながら軸方向に沿って相対的に移動させ、帯電による感光体への流入電流及び帯電後の感光体の表面電位を複数の測定部位について測定する測定ステップと、複数の測定部位のそれぞれで、表面電位と流入電流との関係から感光体における感光層の静電容量を算出し、感光体における感光層の静電容量分布を求める算出ステップと、静電容量分布に基づいて感光体の膜厚均一性を評価する評価ステップと、を有することを特徴とする電子写真感光体の評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に使用される電子写真感光体の評価方法及び評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンター等の電子写真装置のカラー化が進んでおり、高画質化に対する要求が高まっている。一般的に、電子写真装置を用いた電子写真プロセスは、電子写真感光体(以下、場合により「感光体」と略す)を帯電させる工程、帯電した感光体を露光して静電潜像を形成させる工程、静電潜像を現像してトナー像を形成させる工程、並びにトナー像を感光体から被転写媒体に転写する工程を含んで行われるが、この電子写真プロセスにおいて、形成する画像の画質は、感光体の膜厚均一性に大きく依存する。すなわち、感光体の膜厚が十分に均一であり、膜厚のムラが十分に少なければ、感光体は良好な画像特性を得ることができ、高画質化を図ることが可能となる。したがって、新規な感光体の開発過程や、感光体の製造過程において、感光体の膜厚均一性を評価することは、形成画像の高画質化を図る上で極めて重要な項目の一つとなっている。
【0003】
ここで、従来、感光体の膜厚を評価する方法としては、例えば、分光測定による干渉法、渦電流方式、及び、感光体のコンデンサとしての特性を利用し静電容量として評価する方法(例えば、特許文献1参照)等が考案されている。
【特許文献1】特開平10−282057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、干渉法を用いて感光体の膜厚を測定する方法は、膜の外側と内側からの反射光を利用した方法であり、光を吸収する感光体に対しては好ましい方法ではない。そのため、感光体の膜厚を精度良く測定することができず、感光体の膜厚均一性を評価する方法としては不十分である。
【0005】
また、渦電流方式による感光体膜厚の測定方法は、高周波の磁界により感光体を構成するアルミニウム製基材等の導電性支持体に渦電流を誘導し、感光体表面と基材との間隔を測定する方法であるため、光を吸収する感光体に対しても適用可能である。しかし、渦電流方式は接触式の測定方法であるため、感光体の膜厚分布を測定しようとした場合に長い測定時間を要するとともに、感光体表面が傷つきやすいという問題を有している。また、渦電流方式では、導電性の基材から感光体表面までの距離を検出するため、例えば、アルマイト加工した導電性支持体を用いた感光体や下引層を有する感光体を測定すると、アルマイト層や下引層を含んだ膜厚が測定されることとなり、目的とする感光層自体の膜厚を直接求めることができない。これらのことから、渦電流方式による感光体膜厚の測定方法は、感光体の膜厚均一性を評価する方法としては不十分である。
【0006】
更に、感光体のコンデンサとしての特性を利用する方法は、感光体の表面に与える電荷量を変化させて、感光体の表面電位を測定し、そこからコンデンサとしての容量を計測して感光体の静電容量を算出する方法であるが、この方法は、感光体のある一部の領域で、表面電荷を変化させて繰り返し測定を行い、静電容量を求めるものであり、感光体の静電容量の面内分布を求めるものではない。したがって、かかる方法では、感光体の膜厚均一性を評価する方法としては不十分である。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電子写真感光体における感光層の膜厚均一性を短時間で且つ精度良く評価することが可能な電子写真感光体の評価方法及び電子写真感光体の評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、導電性支持体と、該導電性支持体上に配置された感光層と、を備える略円筒状の電子写真感光体の評価方法であって、上記電子写真感光体と該電子写真感光体を帯電させるための帯電装置との少なくとも一方を、上記電子写真感光体の周方向に沿って相対的に移動させながら軸方向に沿って相対的に移動させ、帯電による上記電子写真感光体への流入電流及び帯電後の上記電子写真感光体の表面電位を、前記電子写真感光体の外周面上の複数の測定部位について測定する測定ステップと、上記複数の測定部位のそれぞれで、上記表面電位と上記流入電流との関係から上記電子写真感光体における上記感光層の静電容量を算出し、上記電子写真感光体における上記感光層の静電容量分布を求める算出ステップと、上記静電容量分布に基づいて上記電子写真感光体の膜厚均一性を評価する評価ステップと、を有することを特徴とする電子写真感光体の評価方法を提供する。
【0009】
かかる評価方法によれば、電子写真感光体と帯電装置とを感光体の周方向及び軸方向に沿って相対的に移動させながら螺旋状に感光体の表面電位及び流入電流を測定することにより、感光体における感光層の周方向及び軸方向の連続的な静電容量分布を短時間で効率的に且つ精度良く求めることができる。そして、この静電容量分布を用いることで、電子写真感光体の膜厚均一性を精度良く評価することができ、それによって電子写真感光体の画像特性を予測する(見積る)ことができる。
【0010】
特に、感光体における感光層を浸漬塗布法により形成する場合、支持体をその軸方向が鉛直方向となるように支持し、これを感光層を形成するための塗工液に浸漬した後、軸方向に引き上げることで塗膜を形成するが、このとき塗工液に液だれが生じて支持体の軸方向下端部に液溜まりが形成され、塗膜の乾燥後に支持体下端部における感光層の膜厚が厚くなりやすい。このような場合を考慮すると、感光体における周方向の感光層の膜厚均一性はもちろんのこと、感光体の軸方向における感光層の膜厚均一性を評価することが極めて重要となってくる。本発明の評価方法によれば、上述のように感光体における感光層の静電容量を螺旋状に求めているため、周方向のみならず軸方向も含む感光体全体の連続的な静電容量分布を短時間で効率的に且つ精度良く求めることができ、周方向及び軸方向のいずれの方向に膜厚ムラがあってもこれを発見することができる。したがって、本発明の評価方法によれば、感光体の膜厚均一性を効率的に且つ極めて高い精度で評価することができ、それによって画像特性を見積ることができる。
【0011】
また、本発明の電子写真感光体の評価方法は、上記測定ステップの前に、上記電子写真感光体を、該電子写真感光体を回転させながらその軸方向に移動させるための回転駆動装置に装着し、上記電子写真感光体の外周部に、該電子写真感光体の回転方向に沿って少なくとも上記帯電装置、第1の電位測定装置、及び、除電装置をこの順に配置する配置ステップを更に有し、上記測定ステップは、上記電子写真感光体を回転させながらその軸方向に移動させ、一定間隔の複数の測定部位のそれぞれで、上記帯電装置による帯電、上記第1の電位測定装置による帯電後の電位測定、及び、上記除電装置による除電を行い、帯電による上記電子写真感光体への流入電流及び帯電後の上記電子写真感光体の表面電位を測定するステップであることが好ましい。
【0012】
上記の帯電装置、第1の電位測定装置及び除電装置を用いて、上記の方法で表面電位及び流入電流を測定することにより、電子写真感光体における感光層の静電容量分布をより効率的に且つより精度良く測定することができる。そして、この静電容量分布に基づいて電子写真感光体の膜厚均一性をより精度良く評価することができ、それによって電子写真感光体の画像特性を見積ることができる。
【0013】
更に、本発明の電子写真感光体の評価方法では、上記配置ステップにおいて、上記帯電装置よりも上記電子写真感光体の回転方向の上流側に第2の電位測定装置を更に配置し、上記測定ステップにおいて、上記複数の測定部位のそれぞれで、上記第2の電位測定装置及び上記第1の電位測定装置により上記帯電装置による帯電前後の電位測定を行い、上記表面電位を、上記第1の電位測定装置により測定した帯電後の電位から上記第2の電位測定装置により測定した帯電前の電位を減じた値により求めることが好ましい。
【0014】
本発明の評価方法においては、帯電、電位測定及び除電を繰り返し行って電子写真感光体の静電容量分布を測定するため、繰り返しの中で除電が不十分となる場合が生じる可能性がある。除電が不十分のまま次の帯電及び電位測定を行うと、帯電後の電位を上記表面電位とした場合、表面電位は前回の除電で除去されなかった電荷が加味された電位として測定されることとなる。これに対して、上記のように、複数の測定部位のそれぞれについて帯電前後で感光体の電位を測定し、表面電位を帯電後の電位から帯電前の電位を減じた値として求めると、除電が不十分となった場合であっても、前回の除電で除去されなかった電荷を含まない表面電位を求めることができる。そして、このようにして求めた表面電位と流入電流とから静電容量分布及び膜厚均一性を評価することにより、電子写真感光体の画像特性をより精度良く評価することができる。
【0015】
ここで、上記帯電装置における上記電子写真感光体の軸方向の実行帯電幅は、上記第1の電位測定装置の測定スポットサイズの1〜3倍の大きさであることが好ましい。
【0016】
帯電装置における実行帯電幅を上記範囲とすることにより、解像度の高いより正確な静電容量分布を求めることができる。ここで、帯電装置における実行帯電幅が第1の電位測定装置の測定スポットサイズの1倍未満であると、帯電が不安定になる傾向がある。一方、帯電装置における実行帯電幅が第1の電位測定装置の測定スポットサイズの3倍を超えると、感光体表面の電位を測定する範囲に対して帯電させる範囲が大きすぎるため、表面電位と流入電流との測定値が十分に対応せず、また、次の測定部位をも帯電させてしまい測定の精度を低下させてしまうこととなり、正確な静電容量分布を求めることが困難となる傾向にある。
【0017】
また、上記測定ステップにおいて、上記帯電装置による帯電を行ってから0.1秒以内に上記第1の電位測定装置による帯電後の電位測定を行うことが好ましい。
【0018】
このように、帯電後0.1秒以内に電位測定を行うことにより、帯電後の暗減衰による電位低下の影響を十分に抑制することができ、より精度の高い静電容量分布を求めることができる。
【0019】
また、本発明の電子写真感光体の評価方法では、上記測定ステップにおいて、上記複数の測定部位のそれぞれで、上記表面電位及び上記流入電流を上記帯電装置の帯電条件を変えて複数回測定し、上記算出ステップにおいて、上記複数の測定部位のそれぞれで、複数の上記表面電位と対応する上記流入電流との関係から上記感光層の静電容量を算出することが好ましい。
【0020】
これにより、複数の測定部位のそれぞれで、感光層の静電容量及び膜厚をより高い精度で求めることができる。そのため、電子写真感光体の膜厚均一性をより高い精度で評価することができ、それによって画像特性を見積ることができる。
【0021】
また、本発明の電子写真感光体の評価方法において、上記帯電装置は、非接触方式の帯電装置であることが好ましい。
【0022】
これにより、電子写真感光体表面を傷つけることなく、より短時間で電子写真感光体の画像特性を見積ることができる。
【0023】
また、本発明の電子写真感光体の評価方法において、上記評価ステップは、上記静電容量分布に基づいて上記電子写真感光体の上記感光層の膜厚分布を求め、上記膜厚分布に基づいて上記電子写真感光体の膜厚均一性を評価するステップであることが好ましい。これにより、膜厚均一性の評価をより簡易に且つより正確に行うことができる。
【0024】
本発明はまた、導電性支持体と、該導電性支持体上に配置された感光層と、を備える略円筒状の電子写真感光体を評価するための評価装置であって、上記電子写真感光体と該電子写真感光体を帯電させるための帯電装置との少なくとも一方を、上記電子写真感光体の周方向に沿って相対的に移動させながら軸方向に沿って相対的に移動させる駆動手段と、帯電による上記電子写真感光体への流入電流及び帯電後の上記電子写真感光体の表面電位を複数の測定部位について測定するための測定手段と、を有することを特徴とする電子写真感光体の評価装置を提供する。
【0025】
ここで、上記駆動手段は、上記電子写真感光体を回転させながらその軸方向に移動させるための回転駆動装置を含み、上記測定手段は、上記電子写真感光体の外周部に配置された上記帯電装置と、上記電子写真感光体の外周部であって上記帯電装置よりも上記電子写真感光体の回転方向の下流側に配置された、上記電子写真感光体の帯電後の電位を測定するための第1の電位測定装置と、上記電子写真感光体の外周部であって上記第1の電位測定装置よりも上記電子写真感光体の回転方向の下流側に配置された、上記電子写真感光体表面の電荷を除電するための除電装置と、上記導電性支持体に電気的に接続された、上記帯電装置による帯電時の上記電子写真感光体への流入電流を測定するための電流測定装置と、を含むことが好ましい。
【0026】
また、上記測定手段は、上記電子写真感光体の外周部であって上記帯電装置よりも上記電子写真感光体の回転方向の上流側に配置された、上記電子写真感光体の帯電前の電位を測定するための第2の電位測定装置を更に含み、上記複数の測定部位のそれぞれにおける上記電子写真感光体の上記表面電位を、上記第1の電位測定装置により測定した帯電後の電位から上記第2の電位測定装置により測定した帯電前の電位を減じた値により求める手段であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の評価装置は、上記複数の測定部位のそれぞれで、上記表面電位と上記流入電流との関係から上記電子写真感光体における上記感光層の静電容量を算出し、上記電子写真感光体における上記感光層の静電容量分布を求めるための算出手段を更に有することが好ましい。
【0028】
これらの評価装置によれば、上述した本発明の評価方法による電子写真感光体の評価を短時間で効率的に且つ精度良く行なうことができ、感光体における感光層の膜厚均一性を精度良く評価し、それによって画像特性を見積ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、電子写真感光体における感光層の膜厚均一性を短時間で且つ精度良く評価することができ、それによって電子写真感光体の画像特性を見積ることが可能な電子写真感光体の評価方法及び電子写真感光体の評価装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
図1は、本発明の電子写真感光体の評価装置の好適な一実施形態を示す説明図であり、図2は、図1に示した評価装置のI部の部分拡大断面図である。図1及び2に示すように、評価対象となる電子写真感光体1は、評価装置100のハウジング7内にセットされ、感光体1の外周部には、ハウジング7の底部に固定された環状の取り付け部材6を介して、第2の電位測定装置4、帯電装置3、第1の電位測定装置2及び除電装置5がセットされている。
【0032】
ここで、感光体1はその一端が支承部8に固定され、その後、支承部9が設置されたスライド台13を、ハンドル14の操作により図1中の矢印Aの方向に移動させることにより、感光体ドラム1の他端が支承部9によって固定される。一方の支承部8は回転モータ10に連動して、感光体1を図2中の矢印Bの方向に回転可能となっており、回転数は任意に設定することができる。また、感光体1を構成する導電性支持体は、支承部8を介して電流測定装置11に電気的に接続されており、これによって帯電時の感光体1への流入電流を測定することが可能となっている。更に、電流測定装置11はアースに接続されている。
【0033】
また、支承部8,9及び回転モータ10は、感光体1の軸方向に往復移動する自動ステージ12上に設置されており、これによって取り付け部材6に取り付けられた第2の電位測定装置4、帯電装置3、第1の電位測定装置2及び除電装置5に対して、感光体1をその軸方向に移動させることが可能となっている。
【0034】
また、第2の電位測定装置4、帯電装置3、第1の電位測定装置2及び除電装置5のそれぞれは、感光体1の直径が異なる場合でも、感光体1の表面と一定の間隔をもって配置できるように、感光体1表面の法線方向に進退可能に取り付け部材6に取り付けられている。更に、第2の電位測定装置4、帯電装置3、第1の電位測定装置2及び除電装置5のそれぞれは、感光体1の周方向に位置調節が可能となるように取り付け部材6に取り付けられている。
【0035】
以下、上記評価装置100の各構成要素について説明する。
【0036】
評価対象となる感光体1は、詳細は図示しないが、略円筒状の導電性支持体の外周面に感光層が形成されたものである。感光体1の感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、あるいはさらにこれらの物質を分散させる結着樹脂を含んで構成される。感光層は、電荷発生物質を含む層(電荷発生層)と電荷輸送物質を含む層(電荷輸送層)とが別個に設けられた機能分離型感光層であってもよく、電荷発生物質及び電荷輸送物質の双方を含む単層型感光層であってもよい。また、感光体1は、支持体と感光層との間に下引層を、感光層の表面(基体と反対側)に保護層を、それぞれ備えていてもよい。
【0037】
帯電装置3は、感光体1を帯電させるものであり、帯電ロールや帯電ブラシ等を用いた接触型帯電装置、及び、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電装置やコロトロン帯電装置等の非接触型帯電装置といった公知の帯電装置を特に制限なく用いることができる。これらの中でも感光体1の表面を傷つけることなく、短時間で感光体1の膜厚均一性を評価することができることから、非接触型帯電装置を用いることが好ましい。
【0038】
第1の電位測定装置2及び第2の電位測定装置4は、感光体1表面の電位を測定するものであり、第2の電位測定装置4は上記帯電装置3による帯電前の電位を、第1の電位測定装置2は上記帯電装置3による帯電後の電位を測定するものである。第1の電位測定装置2及び第2の電位測定装置4は、例えば、電位測定プローブと表面電位計とで構成される。
【0039】
除電装置5は、帯電装置3により帯電した感光体1の表面に光を照射し、感光体1表面の残留電荷を除電するためのものである。除電装置5の光源としては、例えば、ハロゲンランプ、LED等を用いることができる。
【0040】
電流測定装置11は、上記帯電装置3による帯電時に感光体1に流れる電流を測定するものであり、感光体1の導電性支持体とアースとの間に電気的に接続される。かかる電流測定装置11としては、公知の電流計を特に制限なく使用することができる。
【0041】
ハウジング7の材質は特に制限されず、金属、プラスチック等を用いることができる。なお、感光体1の画像特性の評価の精度を高める観点から、評価装置100内を遮光した状態で評価を行うことが好ましく、したがって、ハウジング7は遮光性の材料により形成されていることが好ましい。具体的には、ハウジング7は、鉄板等の金属で形成されていることが好ましい。
【0042】
評価装置100には、更に制御ユニット(図示されていない)が内蔵されており、感光体1の回転数や帯電条件等をコントロールすることが可能となっている。
【0043】
上記構成を有する評価装置100を用いて感光体1の評価を行う場合、まず、感光体1を上記評価装置100の支承部8,9に取り付け、感光体1の外周部に、該感光体1の回転方向に沿って第2の電位測定装置4、帯電装置3、第1の電位測定装置2、及び、除電装置5をこの順に配置する(配置ステップ)。次に、感光体1を回転モータ10により回転させながら、感光体1を自動ステージ12により感光体1の軸方向に移動させ、これに合わせて感光体1の複数の測定部位のそれぞれで、第2の電位測定装置4による帯電前の感光体1表面の電位の測定、帯電装置3による帯電、電流測定装置11による帯電時の感光体1への流入電流の測定、第1の電位測定装置2による帯電後の感光体1表面の電位の測定、及び、除電装置5による除電を行う(測定ステップ)。次に、上記複数の測定部位のそれぞれで、表面電位を帯電後の電位から帯電前の電位を減じた値として求め、得られた表面電位と流入電流との関係から、感光体1における感光層の静電容量を算出し、感光体1における感光層の静電容量分布を求める(算出ステップ)。次に、上記静電容量分布に基づいて感光体1の膜厚均一性を評価する(評価ステップ)。
【0044】
以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0045】
配置ステップにおいて、第2の電位測定装置4、帯電装置3、第1の電位測定装置2及び除電装置5のそれぞれの配置は、帯電装置3の位置を基準(0°)として、感光体1の回転方向Bの下流側を「+」の角度で表した場合、以下の配置とすることが好ましい。すなわち、第1の電位測定装置2の位置は15〜75°であることが好ましく、45°程度であることがより好ましい。除電装置5の位置は150〜210°であることが好ましく、180°程度であることがより好ましい。第2の電位測定装置4の位置は−15〜−75°であることが好ましく、−45°程度であることがより好ましい。第1の電位測定装置2の位置が上記範囲内の位置であることにより、帯電装置3により感光体1の帯電を行ってから第1の電位測定装置2により感光体1表面の電位を測定するまでの時間間隔を十分に短くすることができ、帯電後の暗減衰による電位低下の影響を十分に抑制することができる。これにより、より精度の高い静電容量分布を求めることができる。
【0046】
また、配置ステップにおいて、第1の電位測定装置2及び第2の電位測定装置4における電位測定プローブは、感光体1の表面から0.5〜5.0mm離した位置に設置することが好ましい。また、測定スポットサイズは1.0〜20.0mmとすることが好ましい。
【0047】
測定ステップにおいて、回転モータ10による感光体1の回転数は、50〜150rpmとすることが好ましい。また、上記回転数及び上記第1の電位測定装置2の位置を調整することにより、帯電装置3による帯電を行ってから0.1秒以内に第1の電位測定装置2による帯電後の電位測定を行うようにすることが好ましい。例えば、上記第1の電位測定装置2の位置が帯電装置3に対して45°である場合、上記回転数を100rpmとすることにより、帯電装置3による帯電から第1の電位測定装置2による電位測定までの時間間隔を0.075秒とすることができ、暗減衰による感光体1表面の電位低下の影響を十分に抑制することができる。
【0048】
また、測定ステップにおいて、自動ステージ12による感光体1の軸方向への移動速度は、1.0〜20.0mm/1回転とすることが好ましい。かかる移動速度及び上記の回転数で感光体1を螺旋状に測定することにより、感光体1の感光層の静電容量分布を短時間で効率的に且つ精度良く求めることができる。
【0049】
また、測定ステップにおいて、帯電装置3における感光体1の軸方向の実行帯電幅は、第1の電位測定装置2の測定スポットサイズの1〜3倍の大きさとすることが好ましく、1〜1.5倍の大きさとすることがより好ましい。上記実行帯電幅が上記測定スポットサイズの1倍未満であると、帯電が不安定になる傾向がある。一方、上記実行帯電幅が上記測定スポットサイズの3倍を超えると、感光体1表面の電位を測定する範囲に対して帯電させる範囲が大きすぎるため、表面電位と流入電流との測定値が十分に対応せず、また、次の測定部位をも帯電させてしまい測定の精度を低下させてしまうこととなり、正確な静電容量分布を求めることが困難となる傾向にある。
【0050】
また、測定ステップにおいて、帯電装置3により感光体1を帯電させる際の帯電条件は特に制限されないが、例えば、帯電装置3としてスコロトロンを用いる場合には、ワイヤー電圧を3.0〜7.0kV、グリッド電圧を0.1〜2.0kVとすることが好ましい。
【0051】
更に、測定ステップにおいて、除電装置5により照射する光の波長は600〜800nmとすることが好ましい。また、照射光量は20〜60mJ/mとすることが好ましい。このような条件で除電を行うことにより、感光体1表面の電荷を効率的に除去することができる。
【0052】
算出ステップにおいては、上記複数の測定部位のそれぞれで、表面電位と流入電流との関係から感光層の静電容量を算出し、感光体1の感光層の静電容量分布を求める。このとき、まず複数の測定部位のそれぞれにおいて、下記式(I)を用いて流入電流Iから電荷Qを算出する。
Q=I/(W・Vp) (I)
[式(I)中、Qは電荷(C/mm)を示し、Iは流入電流(A)を示し、Wは帯電装置の実行帯電幅(mm)を示し、Vp(mm/sec)は感光体のプロセススピードを示す。]
【0053】
こうして求めた電荷Q及び表面電位Vから、複数の測定部位のそれぞれにおいて、下記式(II)を用いて静電容量C(F/mm)を求める。
Q=C・V (II)
[式(II)中、Qは電荷(C/mm)を示し、Vは表面電位(V)を示し、Cは静電容量(F/mm)を示す。]
これにより、感光体1の静電容量分布を求めることができる。
【0054】
評価ステップにおいては、上記算出ステップで求めた静電容量分布に基づいて感光体1の膜厚均一性を評価する。ここで、一般的に静電容量分布の分布幅が0.08pF/mm以下であれば、感光体1は優れた膜厚均一性を有していると見積ることができ、感光体1は良好な画像特性を有していると評価することができる。
【0055】
以上、本発明の電子写真感光体の評価方法及び評価装置の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上記評価装置100及びこれを用いた評価方法においては、帯電装置3よりも感光体1の回転方向の上流側に第2の電位測定装置4を配置した構成を示したが、本発明の評価装置100は第2の電位測定装置4を備えていなくてもよく、本発明の評価方法は第2の電位測定装置4による帯電前の電位測定を行わずに感光体1の評価を行ってもよい。
【0056】
また、上記評価装置100及びこれを用いた評価方法においては、帯電装置3、第1の電位測定装置2、第2の電位測定装置4及び除電装置5を動かさずに、感光体1を回転させつつ軸方向に移動させる構成となっているが、本発明の評価方法及び評価装置においては、感光体1と、帯電装置3、第1の電位測定装置2、第2の電位測定装置4及び除電装置5とが、感光体1の周方向及び軸方向に相対的に移動するような構成となっていればよい。したがって、本発明の評価方法及び評価装置は、例えば、感光体1を動かさずに、帯電装置3、第1の電位測定装置2、第2の電位測定装置4及び除電装置5を感光体1の周方向及び軸方向に移動させる構成となっていてもよい。
【0057】
また、本発明の評価方法では、上記測定ステップにおいて、上記複数の測定部位のそれぞれで表面電位及び流入電流を帯電装置3の帯電条件を変えて複数回測定し、上記算出ステップにおいて、上記複数の測定部位のそれぞれで、複数の表面電位と対応する流入電流との関係から感光層の静電容量を算出する方法を用いてもよい。
【0058】
この場合、まず上記式(I)を用いて流入電流Iから電荷Qを算出した後、複数の測定部位のそれぞれで、複数測定した表面電位及びそれに対応する電荷を、図3に示すように、横軸に表面電位Vを、縦軸に電荷Qをとったグラフ上にプロットし、複数のプロット点を結んだ直線L1の傾きから静電容量Cを求める。かかる算出方法を用いることにより、複数の測定部位のそれぞれにおける感光層の静電容量をより高い精度で求めることができる。そのため、感光体1の感光層の膜厚均一性をより精度良く評価することができる。なお、1つの帯電条件のみで表面電位及び電荷を測定して静電容量を求める場合は、図3中の直線L2の傾きを求めることになる。
【0059】
更に、本発明の評価方法では、上記評価ステップにおいて、上記静電容量分布に基づいて感光体1の感光層の膜厚分布を求め、この膜厚分布に基づいて感光体1の膜厚均一性を評価してもよい。ここで、静電容量Cと感光層の膜厚Dとは、下記式(III)の関係を有している。
C=ε/D (III)
[式(III)中、Cは静電容量(F/mm)を示し、Dは感光層の膜厚(mm)を示し、εは感光層の誘電率(F/mm)を示す。]
【0060】
したがって、感光層固有の誘電率εを予め求めておくことにより、静電容量分布から感光層の膜厚分布を求めることができる。ここで、一般的に膜厚分布の分布幅が2.0μm以下であれば、感光体1は優れた膜厚均一性を有していると評価することができ、感光体1は良好な画像特性を有していると見積ることができる。
【0061】
また更に、本発明の評価装置は、第1の電位測定装置2、第2の電位測定装置4及び電流測定装置11に電気的に接続された算出手段(図示せず)を有していてもよい。本発明の評価装置は、かかる算出手段によって、複数の測定部位のそれぞれで、表面電位と流入電流との関係から電子写真感光体における感光層の静電容量を算出し、電子写真感光体の上記感光層の静電容量分布を求める構成としてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
(評価装置の作製)
まず、図1及び2に示した評価装置を準備した。ここで、取り付け部材6における帯電装置3、第1の電位測定装置2、第2の電位測定装置3及び除電装置5の配置は、帯電装置3の位置を基準(0°)とし、感光体1の回転方向の下流側を「+」の角度で表すと、第1の電位測定装置2を45°、除電装置5を180°、第2の電位測定装置4を−45°とした。この場合、感光体1の回転数を100rpmとすると、帯電装置3から第1の電位測定装置2までの時間間隔は0.075秒となる。
【0064】
また、第1の電位測定装置2及び第2の電位測定装置4は、電位測定プローブと表面電位計とで構成し、電位測定プローブとしてModel 555P−1(トレック社製)を、表面電位計としてModel 334(トレック社製)をそれぞれ用いた。また、電位測定プローブは、感光体1の表面から約2mm離した位置に設置し、このときの測定スポットサイズは10mmであった。
【0065】
帯電装置3は、感光体1の軸方向における実行帯電幅が15mmのスコロトロンを用いた。すなわち、このスコロトロンの実行帯電幅は、第1の電位測定装置2の測定スポットサイズの1.5倍の大きさとなっている。また、スコロトロンは電源と接続しており、ワイヤー及びグリッドに任意の電圧を印加することが可能となっている。
【0066】
除電装置5としては、光源としてハロゲンランプを使用し、波長600nm以上の光のみを透過する赤フィルターを通して感光体1の表面に光源からの光を照射するものを用いた。なお、光量は約40mJ/mに設定した。
【0067】
電流測定装置11としては、Model 614電流計(ケースレー社製)を用い、感光体1とアースとの間に接続した。
【0068】
(電子写真感光体の作製)
酸化亜鉛(テイカ社製、平均粒子径70nm、比表面積値15m/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、表面処理酸化亜鉛顔料を得た。この表面処理酸化亜鉛顔料60質量部とアリザリン1質量部とブロック化イソシアネート(スミジュールBL3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部とブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した樹脂溶液38質量部とメチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、及び、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にてアルミニウム基材(直径30mmφ、長さ404mm)上に塗布し、170℃、40分間の乾燥硬化を行い、膜厚25μmの下引層を形成した。
【0069】
次に、電荷発生物質としての、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜及び28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、ユニオンカーバイト社製)10質量部、並びに、n−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散し、分散液を得た。得られた分散液に、n−酢酸ブチル175質量部、及び、メチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。この塗布液を上記下引層上に浸漬塗布し、常温で乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0070】
次に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1、1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部、及び、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量4万)6質量部をテトラフドロフラン80質量部に加えて溶解させ、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、115℃、40分間の乾燥を行うことにより、膜厚27μmの電荷輸送層を形成した。これにより電子写真感光体の作製を完了した。
【0071】
(静電容量分布の測定)
上記電子写真感光体の静電容量分布を、上記構成を有する評価装置を用いて以下の手順で測定した。まず、帯電装置3であるスコロトロンのワイヤー電圧を−5kV、グリッド電圧を−600Vに設定し、感光体1を回転モータ10により回転数100rpmで回転させながら、感光体1を自動ステージ12により5mm/1回転の速度で感光体1の軸方向に移動させて、帯電、除電を行った。この間に、感光体1の帯電前後の電位、並びに、帯電時に感光体1に流れる電流(流入電流)を一定間隔の複数の測定部位(測定ポイント)のそれぞれで測定した。このときの測定ポイント数は、3720ポイント(周方向60ポイント×軸方向62ポイント)とした。測定データの取り込みは、感光体1の回転角度と同期させて行い、感光体1が6°回転するごとにデータの取り込みを行った。なお、上記一連の測定に要した測定時間は1分以内であった。
【0072】
次に、一つ一つの測定部位で、下記式(I)を用いて流入電流Iから電荷Qを求めた。
Q=I/(W・Vp) (I)
[式(I)中、Qは電荷(C/mm)を示し、Iは流入電流(A)を示し、Wは帯電装置の実行帯電幅(mm)を示し、Vp(mm/sec)は感光体のプロセススピードを示す。]
なお、本実施例において、上記Wは15mmであり、上記Vpは157mm/secである。
【0073】
また、一つ一つの測定部位で、表面電位Vは、感光体1に流れる電流に対応する電位とするために、帯電後の電位から帯電前の電位を減じた値として求めた。
【0074】
こうして求めた電荷Q及び表面電位Vから、一つ一つの測定部位で、下記式(II)を用いて静電容量Cを求めた。
Q=C・V (II)
[式(II)中、Qは電荷(C/mm)を示し、Vは表面電位(V)を示し、Cは静電容量(F/mm)を示す。]
【0075】
これにより、感光体1の画像領域の静電容量分布を求めた。得られた静電容量分布を図4に示す。図4においては、横軸に感光体1の一端からの軸方向への移動距離(mm)を、縦軸に感光体1の回転角度(deg)をとり、静電容量の大きさ毎に10段階に色分けして、感光体1の静電容量分布を模式的に示している。この図4から明らかなように、感光体1の静電容量は1.048〜1.105pF/mm(平均値:1.068pF/mm)の比較的狭い範囲に分布しており、分布幅は0.057pF/mmであった。
【0076】
ここで、静電容量C(F/mm)と感光層の膜厚D(mm)とは、下記式(III)の関係を有している。
C=ε/D (III)
[式(III)中、Cは静電容量(F/mm)を示し、Dは感光層の膜厚(mm)を示し、εは感光層の誘電率(F/mm)を示す。]
【0077】
ここで、誘電率εは感光層の組成によって決まる値であるため、上記の静電容量分布から感光層の膜厚均一性を評価することができる。そして、上記静電容量分布の分布幅が0.057pF/mmと小さいことから、上記電子写真感光体の感光層は、優れた膜厚均一性を有しており、感光体は良好な画像特性を有していると見積った。なお、静電容量分布の分布幅が0.08pF/mm以下であれば、電子写真感光体は、感光層の膜厚均一性が優れており、良好な画像特性を有していると見積ることができる。
【0078】
[実施例2]
(静電容量分布の測定)
上記実施例1で評価した電子写真感光体の静電容量分布を、上記実施例1で使用した評価装置により、以下の手順で測定した。
【0079】
<測定1>
まず、帯電装置3であるスコロトロンのワイヤー電圧を−5kV、グリッド電圧を−300Vに設定し、感光体1を回転モータ10により回転数100rpmで回転させながら、感光体1を自動ステージ12により5mm/1回転の速度で感光体1の軸方向に移動させて、帯電、除電を行った。この間に、感光体1の帯電後及び帯電前の電位、並びに、帯電時に感光体1に流れる電流(流入電流)を一定間隔の複数の測定部位(測定ポイント)のそれぞれで測定した。このときの測定ポイント数は、3720ポイント(周方向60ポイント×軸方向62ポイント)とした。測定データの取り込みは、感光体1の回転角度と同期させて行い、感光体1が6°回転するごとにデータの取り込みを行った。なお、上記一連の測定に要した測定時間は1分以内であった。
【0080】
<測定2>
次に、帯電装置3であるスコロトロンのワイヤー電圧を−5kV、グリッド電圧を−600Vに設定し、上記<測定1>と同様の手順で感光体1の帯電後及び帯電前の電位、並びに、帯電時に感光体1に流れる電流(流入電流)を上記<測定1>と同一の複数の測定部位(3720ポイント)のそれぞれで測定した。なお、上記一連の測定に要した測定時間は1分以内であった。
【0081】
次に、上記<測定1>及び<測定2>のそれぞれの結果から、一つ一つの測定部位で、上記式(I)を用いて流入電流Iから電荷Qを求めた。
【0082】
また、上記<測定1>及び<測定2>のそれぞれの結果から、一つ一つの測定部位で、表面電位Vを、帯電後の電位から帯電前の電位を減じた値として求めた。
【0083】
こうして求めた電荷Q及び表面電位V(各測定部位毎に2つずつ)を、図3に示すように横軸V、縦軸Qのグラフ上にプロットし、2つのプロット点を結ぶ直線の傾きを静電容量Cとして求めた。これにより、感光体1の画像領域静電容量分布を求めた。得られた静電容量分布を図5に示す。この図5から明らかなように、感光体1の静電容量は1.016〜1.061pF/mm(平均値:1.032pF/mm)の比較的狭い範囲に分布しており、分布幅は0.045pF/mmであった。
【0084】
(膜厚分布の測定)
上記式(III)における誘電率εを以下の手順で求めた。まず、実施例1における上記(電子写真感光体の作製)と同様の手順で、アルミ基材上に下引層を形成した試料1を作製した。この試料1を用いて、下引層の膜厚を、渦電流方式の膜厚計(フィッシャースコープMMS、フィッシャー社製)を用いて測定した。その結果、下引層の膜厚は25.1μmであった。次に、上記試料1の下引層上に、実施例1における上記(電子写真感光体の作製)と同様の手順で、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、試料2を作製した。この試料2を用いて、アルミ基材表面から電荷輸送層表面までの膜厚を、渦電流方式の膜厚計(フィッシャースコープMMS、フィッシャー社製)を用いて測定した。その結果、アルミ基材表面から電荷輸送層表面までの膜厚は32.2μmであった。これらの結果から、感光層(電荷発生層及び電荷輸送層)の膜厚Dを算出し、膜厚Dは27.1μmであった。
【0085】
また、上記試料2を用いて、上記(静電容量分布の測定)と同様の手順で、上記膜厚Dを測定した位置における静電容量Cを測定した。こうして求めた膜厚D及び静電容量Cを上記式(III)に代入し、感光層の誘電率εを求めた。その結果εは0.0282pF/mmであった。
【0086】
こうして求めた誘電率εを上記式(III)に代入し、そこへ上記(静電容量分布の測定)において求めた各測定部位毎の静電容量Cを代入することで、各測定部位毎の感光層の膜厚Dを求め、膜厚分布を求めた。得られた膜厚分布を図6に示す。この図6から明らかなように、感光体1の感光層の膜厚は26.5〜27.7μm(平均値:27.3μm)の比較的狭い範囲に分布しており、分布幅は1.2μmであった。このことから、上記電子写真感光体の感光層は、優れた膜厚均一性を有しており、感光体は良好な画像特性を有していると見積った。なお、膜厚分布の分布幅が2.0μm以下であれば、電子写真感光体は、感光層の膜厚均一性が優れており、良好な画像特性を有していると見積ることができる。
【0087】
(画質評価試験)
実施例1における上記(電子写真感光体の作製)と同様の手順で、感光体を複数作製した。得られた複数の感光体のそれぞれについて、実施例1における上記(静電容量分布の測定)と同様の手順で静電容量分布を測定し、複数の感光体の中から、静電容量分布の分布幅が0.08pF/mm以下で、優れた膜厚均一性を有していると評価した感光体(サンプル1〜3)と、静電容量分布の分布幅が0.08pF/mm以上で、膜厚均一性が劣ると評価した感光体(サンプル4〜6)をそれぞれ3本ずつ選んだ。
【0088】
次に、上記サンプル1〜6の膜厚分布測定を、従来の感光体の膜厚測定装置である渦電流方式の膜厚計(フィッシャースコープMMS、フィッシャー社製)を用いて行い、膜厚分布幅を求めた。なお、測定ポイント数は、実施例1における静電容量分布の測定と同じ、3720ポイント(周方向60ポイント×軸方向62ポイント)とした。このときの測定時間は4時間であった。この方法では、膜厚分布の分布幅が2μm以下であれば、感光体は優れた膜厚均一性を有していると評価することとし、これによりサンプル1〜6の優劣を評価した。
【0089】
また、上記サンプル1〜6を、画像形成装置(DocuCentre Color 400CP、富士ゼロックス社製)に搭載し、ハーフトーン画像を出力して、ドラムピッチの色むら発生の有無を調べることで画質評価を行った。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0090】
【表1】



【0091】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1の評価方法による感光体の膜厚均一性の評価結果は、サンプル1〜6の全てのサンプルにおいて、画質評価による色むらの有無の評価結果と対応が取れていることが確認された。一方、従来の感光体の膜厚測定装置である渦電流方式の膜厚計による感光体の膜厚均一性の評価結果は、画質評価による色むらの有無の結果と対応が取れていないものがあることが確認された。また、測定ポイント数3720ポイント(周方向60ポイント×軸方向62ポイント)の測定時間は、実施例1の評価方法では1分以下であるのに対し、従来の膜厚測定装置である渦電流方式の膜厚計では約4時間かかった。
【0092】
以上より、本発明の電子写真感光体の評価方法及び評価装置によれば、電子写真感光体の感光層の膜厚均一性を短時間で且つ精度良く評価することができ、それによって電子写真感光体の画像特性を見積ることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の電子写真感光体の評価装置の好適な一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1に示した本発明の電子写真感光体の評価装置のI部の部分拡大断面図である。
【図3】表面電位Vと電荷Qとの関係から静電容量Cを求める手順を説明するためのグラフである。
【図4】実施例1の評価方法により求めた静電容量分布を示す模式図である。
【図5】実施例2の評価方法により求めた静電容量分布を示す模式図である。
【図6】実施例2の評価方法により求めた膜厚分布を示す模式図である。
【符号の説明】
【0094】
1・・・電子写真感光体、2・・・第1の電位測定装置、3・・・帯電装置、4・・・第2の電位測定装置、5・・・除電装置、6・・・取り付け部材、7・・・ハウジング、8,9・・・支承部材、10・・・回転モータ、11・・・電流測定装置、12・・・自動ステージ、13・・・スライド台、14・・・ハンドル。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に配置された感光層と、を備える略円筒状の電子写真感光体の評価方法であって、
前記電子写真感光体と該電子写真感光体を帯電させるための帯電装置との少なくとも一方を、前記電子写真感光体の周方向に沿って相対的に移動させながら軸方向に沿って相対的に移動させ、帯電による前記電子写真感光体への流入電流及び帯電後の前記電子写真感光体の表面電位を、前記電子写真感光体の外周面上の複数の測定部位について測定する測定ステップと、
前記複数の測定部位のそれぞれで、前記表面電位と前記流入電流との関係から前記電子写真感光体における前記感光層の静電容量を算出し、前記電子写真感光体における前記感光層の静電容量分布を求める算出ステップと、
前記静電容量分布に基づいて前記電子写真感光体の膜厚均一性を評価する評価ステップと、
を有することを特徴とする電子写真感光体の評価方法。
【請求項2】
前記測定ステップの前に、前記電子写真感光体を、該電子写真感光体を回転させながらその軸方向に移動させるための回転駆動装置に装着し、前記電子写真感光体の外周部に、該電子写真感光体の回転方向に沿って少なくとも前記帯電装置、第1の電位測定装置、及び、除電装置をこの順に配置する配置ステップを更に有し、
前記測定ステップは、前記電子写真感光体を回転させながらその軸方向に移動させ、一定間隔の複数の測定部位のそれぞれで、前記帯電装置による帯電、前記第1の電位測定装置による帯電後の電位測定、及び、前記除電装置による除電を行い、帯電による前記電子写真感光体への流入電流及び帯電後の前記電子写真感光体の表面電位を測定するステップであることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の評価方法。
【請求項3】
前記配置ステップにおいて、前記帯電装置よりも前記電子写真感光体の回転方向の上流側に第2の電位測定装置を更に配置し、
前記測定ステップにおいて、前記複数の測定部位のそれぞれで、前記第2の電位測定装置及び前記第1の電位測定装置により前記帯電装置による帯電前後の電位測定を行い、前記表面電位を、前記第1の電位測定装置により測定した帯電後の電位から前記第2の電位測定装置により測定した帯電前の電位を減じた値により求めることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光体の評価方法。
【請求項4】
導電性支持体と、該導電性支持体上に配置された感光層と、を備える略円筒状の電子写真感光体を評価するための評価装置であって、
前記電子写真感光体と該電子写真感光体を帯電させるための帯電装置との少なくとも一方を、前記電子写真感光体の周方向に沿って相対的に移動させながら軸方向に沿って相対的に移動させる駆動手段と、
帯電による前記電子写真感光体への流入電流及び帯電後の前記電子写真感光体の表面電位を複数の測定部位について測定するための測定手段と、
を有することを特徴とする電子写真感光体の評価装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記電子写真感光体を回転させながらその軸方向に移動させるための回転駆動装置を含み、
前記測定手段は、前記電子写真感光体の外周部に配置された前記帯電装置と、前記電子写真感光体の外周部であって前記帯電装置よりも前記電子写真感光体の回転方向の下流側に配置された、前記電子写真感光体の帯電後の電位を測定するための第1の電位測定装置と、前記電子写真感光体の外周部であって前記第1の電位測定装置よりも前記電子写真感光体の回転方向の下流側に配置された、前記電子写真感光体表面の電荷を除電するための除電装置と、前記導電性支持体に電気的に接続された、前記帯電装置による帯電時の前記電子写真感光体への流入電流を測定するための電流測定装置と、を含むことを特徴とする請求項4記載の電子写真感光体の評価装置。
【請求項6】
前記測定手段は、前記電子写真感光体の外周部であって前記帯電装置よりも前記電子写真感光体の回転方向の上流側に配置された、前記電子写真感光体の帯電前の電位を測定するための第2の電位測定装置を更に含み、前記複数の測定部位のそれぞれにおける前記電子写真感光体の前記表面電位を、前記第1の電位測定装置により測定した帯電後の電位から前記第2の電位測定装置により測定した帯電前の電位を減じた値により求める手段であることを特徴とする請求項4又は5記載の電子写真感光体の評価装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−267442(P2006−267442A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84384(P2005−84384)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】