説明

電子写真捺染方法

【課題】第1の目的は、電子写真を用いた反応性染料液体トナーの染着特性を向上させることであり、また、第2の目的は、捺染の作業性を大幅に効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない捺染方法の提供。
【解決手段】担体液を含有する液体トナーを用いた電子写真方式により捺染を行う電子写真捺染方法において、着色剤として反応染料を用いた液体トナーにより布に転写して画像形成を行い、形成された画像をアルカリ水溶液濃度0.1〜10質量%でパッド・スチーム法により発色処理することを特徴とする電子写真捺染方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染法は、糸、編織物、二次製品等色々な形態の繊維品に適用され、版形式及び機械操作によって凹版を用いるローラ捺染、孔版によるスクリーン、型紙捺染が主流である。スクリーン捺染には手工捺染、半自動スクリーン捺染機による捺染、自動走行スクリーン捺染機による捺染、フラット型及びロータリー式自動スクリーン捺染機による捺染などがある。しかし、ローラ捺染は、金属ローラに図柄を彫刻する工程が煩雑でローラの取り扱い等も大変であり、スクリーン捺染は、スクリーンの製造に時間がかかり、捺染作業に手間がかかる等の問題があった。また、ロータリー式スクリーン捺染もスクリーンの製作、ローラの彫刻等に時間がかかる等の問題があった。このように従来からの捺染法はその製作工程が煩雑で、出来上がりまで長期間費やされるため、簡便な捺染法が望まれていた。
【0003】
近年、従来の彫刻製版工程を省略し、短期間で製作が可能なインクジェットを用いた捺染方法として、特許文献1〜5などが考案されている。しかし、インクジェットによる捺染方式は、濃度を上げることができない、捺染していくうちに濃度が変化してしまう等の欠点があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、電子写真方式を用いた捺染方法(特許文献6や7に記載の方法)が最近開発されている。この方法は、感光体上に静電潜像を形成し、トナーを付着させ、これを布類に転写し、熱によりトナーを定着させるものである。しかし、これらの特許文献6や7に記載の方法の電子写真方式による捺染方法は乾式トナーを用いたものであり、トナー層厚が厚いため、肌触りが良くない、樹脂により物理的に繊維に付着させているため、摩擦堅牢度、耐洗濯特性が劣る等の問題があった。
【0005】
液体トナーを用いた電子写真方式による捺染法としては、特許文献8や9等が提案されている。これらは、昇華染料を用いた液体トナーをイオン流により現像し、図柄を転写物に印刷し、これを布類に重ね合せ昇華熱転写するものである。この方法は、肌触り等も自然で、簡便な方法であるが、カラーの場合、2色目に重ねた濃度が出にくい、耐洗濯性に劣る等の欠点があった。また、布の裏面までトナーが染込まず、両面捺染する必要があった。加えて作業が煩雑で、布に転写後、不要になった紙(転写物)がムダになるなどの問題があった。
【0006】
発色処理前の段階において通常の捺染と電子写真方式の捺染とで異なる点は、通常のスクリーン捺染等の場合は、染料が溶解した色糊の状態で布に付着しているのに対し、電子写真方式による捺染の場合は、染料が粒子の状態で布に付着しているようである。このため、通常用いられる発色方法では布と反応染料の反応性が不十分で発色濃度など染着特性が低下する問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−195776号公報
【特許文献2】特許第2995135号公報
【特許文献3】特開2003−96340号公報
【特許文献4】特開平7−278482号公報
【特許文献5】特開平8−226083号公報
【特許文献6】特開平5−027474号公報
【特許文献7】特開平5−033275号公報
【特許文献8】特開平9−73198号公報
【特許文献9】特開平10−239916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、電子写真を用いた反応性染料液体トナーの染着特性を向上させることである。また、本発明の第2の目的は、捺染の作業性を大幅に効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない捺染方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、担体液を含有する液体トナーを用いた電子写真方式により捺染を行う電子写真捺染方法において、着色剤として反応染料を用いた液体トナーにより布に転写して画像形成を行い、形成された画像をアルカリ水溶液濃度0.1〜10質量%でパッド・スチーム法により発色処理することを特徴とする電子写真捺染方法に関する。
本発明の第2は、前記液体トナーの着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有するものである請求項1記載の電子写真捺染方法に関する。
【化2】

(式中R〜R13はH、C2n+1、F、Cl、OH、SOH、NHCOCH、NHCONH、OCH、SOOSOH、COOH、NOよりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、nは1〜4の整数である。)
本発明の第3は、着色剤として用いる染料の純度が80〜100%である請求項1または2記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第4は、前記担体液が、沸点100〜350℃(常温、常圧時)の脂肪族飽和炭化水素である請求項1〜3いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第5は、前記液体トナーが固着剤として少なくともアルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂を含有するものである請求項1〜4いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。この固着剤は、着色剤を最終的に繊維に固着させるためのものではなく、着色剤のまわりにコーティングし、着色剤中の極性基の力を制御する働きをしており、固着剤は最終的にソーピングにより除去されるものである。
本発明の第6は、前記アルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂の酸価が0〜2000mg/KOHである請求項5記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第7は、ζ電位の絶対値が10〜200mVである請求項1〜6いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第8は、トナー粒子の重量平均粒径が0.1〜5μmである請求項1〜7いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第9は、静電潜像を感光体上に現像後、転写ローラで静電力及び/または圧力により、画像を転写させるものである請求項1〜8いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第10は、静電潜像を感光体上に現像し、中間転写体にトナー像を1次転写後、画像を2次転写させるものである請求項1〜9いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第11は、2次転写前に中間転写体に溶媒を吹きかける工程を含むものである請求項1〜10いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第12は、感光体の線速に対してトナーを現像するための現像ローラの線速が1.2倍〜6倍、過剰溶剤を除去するスクイズローラの線速が1.2〜4倍である請求項1〜11いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。
本発明の第13は、タンデム型に感光体を配置し、布に画像を転写してフルカラー捺染するものである請求項1〜12いずれか記載の電子写真捺染方法に関する。
【0010】
発色処理前の段階において染料が溶解した色糊として布に付着している通常の捺染糊(捺染インク)の場合(図5の左側)は、反応染料の反応基と綿布(セルロース)の水酸基が反応して共有結合を生成する。このため、アルカリショック法、コールドバッチ法など一般的な反応染料の発色固着処理で対応可能である。これに対し、液体トナーの場合(図5の右側)は、図5に示すように(1)染料が溶媒に溶解しておらず粒子の状態で布に付着している、(2)帯電性を制御する樹脂が染料の周囲に付着している、ことにより、通常の固着処理では染料の反応基と綿布(セルロース)の水酸基との反応性が不十分となり十分な染着効果が得られない。
【0011】
本発明者らは、少なくとも固着剤が溶解している担体液中に着色剤を分散してなる捺染用電子写真トナーを用いて捺染された捺染物をアルカリ水溶液濃度0.1〜10質量%のパッド・スチーム法により発色処理を行うことで、電子写真用捺染トナーを用いた場合においても通常の捺染糊と同様に染料が溶解し、通常の染色、捺染と同等の染着特性を得ることができることを見出したものである。
【0012】
前記アルカリ水溶液濃度を与えるためのアルカリ成分としては水溶液アルカリ物質であればとくに制限はないが、通常、ナトリウムやカルシウム、バリウムなどの水酸化物や炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナトリウム等を濃度0.1〜10質量%の水溶液にしたものを用いる。これらどのような材料でも効果は得られるが特に炭酸水素ナトリウム(重曹)(NaHCO)が好ましい。
【0013】
アルカリ水溶液濃度は0.1〜10質量%であることが必要である。好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%である。アルカリ濃度が0.1質量%よりも低い場合は反応性が低下し、アルカリ濃度が10質量%よりも高くなると綿布(セルロース)との反応前に染料自体の反応基が加水分解して、つぶれてしまう場合がある。
【0014】
一般の反応性染料を用いた捺染の場合は、FixerRC等の市販の固着剤を用い、温度をかけないで固着処理を行う方法がよく用いられる(コールド・パッド・バッチ法)。
本発明の場合は、固着処理前、染料が溶解状態ではなく、粒子の状態で布に付着しているため、通常の方法では、染料と布の反応が起こらず、固着しない(通常は溶解状態)。そのため本発明の固着処理には、一定量以上のエネルギーと水分が必要となる。そのため、本発明では、パッド・スチーム法による固着処理が必要である。
パッド・スチーム法は、
(1)出力された画像に2%程度の炭酸ナトリウム等の水溶液とアルギン酸ソーダ、CMC等の混合液をパディングし、ついで
(2)下記の処理条件下で飽和蒸気により布へ固着処理を行い、
(3)その後ソーピングする方法である。
本発明を用いる場合染料と布との結合反応には、一定量以上のエネルギーと水分が必要となる。
本発明では、このようなパッド・スチーム法により一定量以上の水分と熱エネルギーを与えることにより、染料粒子を溶解させることができる。系をアルカリ性にするのは、染料粒子を溶解させる目的ではなく、溶解した染料の反応性基と布の反応基(OH基等)との反応を進めるためのもので、アルカリ性にすること自体は粒子の溶解には寄与しない。
パッド・スチーム法による発色処理温度は80〜140℃、好ましくは95〜110℃である。処理温度が80℃よりも低い場合は樹脂や染料の溶解が不十分で反応性が低下する。処理温度が140℃よりも高い場合は布との反応前に染料反応基がつぶれてしまう場合がある。
【0015】
本発明は、パッド・スチーム法でなくても、加熱蒸気を用いる蒸熱法によっても実施可能である。アルカリ水溶液濃度は0.1〜10質量%であることが必要である。好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%である。アルカリ濃度が0.1質量%よりも低い場合は反応性が低下し、アルカリ濃度が10質量%よりも高くなると綿布(セルロース)との反応前に染料自体の反応基が加水分解して、つぶれてしまう場合がある。
【0016】
本発明の液体トナーの着色剤としては一般の反応性染料で使用可能であるが特に下記一般式(1)を含有するものが好ましい。
【化3】

(式中R〜R13は、からそれぞれ独立して、H、C2n+1、F、Cl、OH、SOH、NHCOCH、NHCONH、OCH、SOOSOH、COOH、NOよりなる群から選ばれた基であり、nは1〜4の整数である。)
【0017】
また、一般式(1)の染料と一緒に他の染料を混合して使用することもできる。他の染料を使用する場合は全染料分の30%以下が望ましい。
【0018】
一般式(1)の染料骨格部分は例えば芳香族ニトロ化合物類と芳香族アミン類等を用いて水酸化ナトリウムのような塩基の存在下で200℃程度に加熱しアゾカップリング反応を行うことにより合成できる。
トリアジン環の反応基部分は、例えば以下のような反応から合成できる。
【化4】

また官能基はF、Cl、はHF、Cl等によるハロゲン化反応、SOHはHSO等によるスルホン化反応、NOは硝酸等によるニトロ化反応、NHはNOの還元等一般的な方法により得ることができる。表1中の染料Aは、リアクティブイエロー2であって、公知の染料であり、他の染料もこれに準じた合成方法により合成できる。
【0019】
一般式(1)の例として以下のようなものがある。
【表1】

【0020】
一般式(1)の染料を分散させた電子写真捺染用の液体トナーは、イエロー捺染トナーとして特に高品質の捺染が得られる。
綿、麻などのセルロース系天然繊維は繊維中の官能基と化学反応して共有結合により染着する反応性染料が用いられ、特に一般式(1)の染料を用いることにより帯電特性、色特性、画像濃度、染着性において優れた性能が得られる。一般式(1)のトリアジン基と繊維との化学反応は以下の式で表される。
【化5】

R:色素母体〔一般式(1)におけるトリアジン環の右側部分〕
D:副置換基〔一般式(1)におけるトリアジン環の左側部分〕
一般の捺染インクでは版を用いて画像を作成するためインクの電気的な特性は意味を持たないが、電子写真の場合はプラスあるいはマイナスの電気的な特性により像を形成しているため帯電特性は非常に重要である。一般式(1)の染料を用いることにより帯電特性が良好になる明確な理由は不明であるが染料骨格と電子吸引基、電子供与基との微妙なバランスによるものと考えられる。
【0021】
電子写真方式でフルカラー画像を形成する場合は、4原色の混合によるが各色が目標となる基準色に近い方が望ましい。印刷分野ではジャパンカラーがその目標基準の一つとして用いられるが、一般式(1)の黄色染料はトナー化した場合この目標値に近く色再現性が良好となる。また一般式(1)の黄色染料は着色力が高く、少ない着色剤量でも高濃度を出すことができる。
【0022】
市販の粉体染料は、染料純度50%程度で、食塩、芒硝が多量に入っている場合が多く、液の抵抗、帯電性に悪影響を与えるため、精製するか、初めから塩類含有量の少ない染料を用いたほうが、良好である。純度80%以上が望ましい。
染料の純度は以下の溶解、再沈殿法で求められる。
(イ)食塩、芒硝などの無機塩類を溶解せずに染料のみを溶解する溶媒(N、N−ジメチルホルムアミドなど)を用いて抽出する。
(ロ)(イ)の染料溶解液に染料を溶解しない溶媒(アセトンなど)を混合し染料を析出させる。
(ハ)(析出させた染料重量/初めの染料重量)×100%で純度を算出する。
【0023】
本発明の液体トナーに使用される担体液としては、高抵抗で低誘電率のものが良く、たとえば、脂肪族飽和炭化水素とくにイソパラフィン系炭化水素、あるいはシリコーン系オイル等が良好である。イソパラフィン系炭化水素としては、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、エクソール100/140、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130(以上エクソンモービル社製またはエクソン化学の商品名)などがあり、シリコーン系オイルとしては、KF961〜10000cst(信越シリコンの商品名)、SH200、SH344(東レシリコンの商品名)、TSF451(東芝シリコンの商品名)などがある。
沸点は100〜350℃のものが望ましい。100℃未満であると転写前に溶媒が揮発しやすく転写性向上の効果が低減したり、臭気、安全性の点や、揮発溶剤蒸気が作業者にとって好ましくない。350℃を上回る場合は、溶剤が揮発しにくく、発色工程で溶剤が除去できず発色特性に問題が生じる。350℃以下であれば、後工程の加熱、スチーミングの段階で蒸発させることができる。
【0024】
本発明においては、一般式(1)で示される着色剤を、体積抵抗10Ω・cm以上の高抵抗低誘電率の担体液中に分散させた液体トナーとすることが好ましい。
【0025】
一般の捺染インクでは版を用いて画像を作成するためインクの電気的な特性は意味を持たないが、電子写真の場合はプラスあるいはマイナスの電気的な特性により像を形成しているため帯電特性は非常に重要である。一般式(1)の染料を用いることにより帯電特性が良好になる明確な理由は不明であるが、染料骨格と電子吸引基、電子供与基との微妙なバランスによるものと考えられる。
着色剤が被捺染物に固着するのは固着剤の働きによるものではなく、着色剤のそれ自体の有する結合力の動きによるものであり、固着剤は臨時的に帯電してトナーを被捺染物に付着させる働きをするだけであり、固着剤はその後のソーピング工程で除去されるものである。固着剤が残っていると被捺染物の風合いを悪化させるので好ましくない。そのため固着剤としてはアルカリ可溶性樹脂や水溶性樹脂を用い、ソーピングにより除去できるものを用いている。
【0026】
本発明で用いる固着剤は、水溶性樹脂および/またはアルカリ可溶性樹脂を用いることができるが、水不溶性樹脂を分散状態で併用することが好ましい。
【0027】
本発明に併用することが好ましい分散用樹脂としては
【化6】

(R15はHまたはCHを、nは6〜20の整数を表わす。)
であらわされるビニルモノマーAと
【化7】

(R16はCが1〜4のアルキル基又はH)
で表わされるビニルモノマー及びビニルピリジン、ビニルピロリドン、エチレングリコールジメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンより選ばれるモノマーBの各一種づつもしくは、数種の共重合体、グラフト共重合体があげられる。
【0028】
一般の捺染インクでは版を用いて画像を作成するためインクの電気的な特性は意味を持たないが、電子写真の場合はプラスあるいはマイナスの電気的な特性により像を形成しているため帯電特性は非常に重要である。一般式(1)の染料を用いることにより帯電特性が良好になる明確な理由は不明であるが、染料骨格と電子吸引基、電子供与基との微妙なバランスによるものと考えられる。
【0029】
また固着剤の一部にはアルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂を含有させると、発色固着処理、水洗、ソーピング処理工程でトナー中の樹脂が溶解し、布から脱離するため、風合の良好な捺染布が得られる。
アルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂は、固着剤全体に対し10〜80質量%の割合で含有されているのが好ましい。
更に好ましくは40〜70質量%の割合である。アルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂分が多いとトナーの帯電性が低下し、アルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂分が少ないと風合が低下する。
【0030】
アルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂としては、水溶性メラミン樹脂、水溶性ロジン変性樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、コラーゲン、ゼラチン、デンプン、キトサン等がある。
商品としては、クラレ社製ポバール(PVA)、イソバン(イソブチレン/マレイン酸樹脂)、ハリマ化成製ネオトール、ハリディプ(アルキッド樹脂、アクリル樹脂)、日本合成化学社製エコアティ(PVA)、ナガセケムテックス社製デコナール(エポキシ樹脂)、日本純薬社製ジュリアー(アクリル樹脂)、カブセン(ポリエステル樹脂)などが挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂以外の固着用樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0031】
本発明の液体トナーの酸価は0〜2000mg/KOHであることが、トナーの帯電特性を制御するために望ましいことである。2000mg/KOHより高いと現像特性が低下する。
固着剤として用いる樹脂の酸価はトナーの帯電特性に大きな影響を及ぼす。酸価が低いほど帯電性への影響は少なくなり、酸価が高くなるほどマイナス帯電性が高まる傾向にある。このため酸価が高い場合はトナーをプラス帯電性にする場合には、その制御が困難になる。望ましくは1〜150mg/KOHである。
【0032】
ζ電位とはトナー粒子の帯電性の強さを表す尺度となり、大きいほどトナー移動度が速くなる。トナー移動度が速くなれば短い現像時間でも高濃度が出せることになり、現像には有利になる。また電荷による粒子の反発力も強くなり、粒子どうしの凝集が起こりにくくなる。
このため、本発明の液体トナーの場合、ζ電位はその絶対値が10〜200mVであることが好ましい。ζ電位の絶対値が10mVよりも低いとトナー粒子が凝集したり、電気泳動性が低下し地汚れしたり、濃度が低下する。またζ電位の絶対値が200mVよりも高いと感光体付着量が低下し濃度が低下する場合がある。トナーの重量平均粒子径はトナー帯電性や画像特性に影響を与える。
液体状捺染用電子写真トナーにおける着色剤の重量平均粒径は0.1〜5μmが望ましく、0.1μm以下では、十分な濃度が得られない場合やニジミが発生しやすくなる場合があり、5μm以上では、色彩、解像性が悪くなる場合がある。
【0033】
感光体上で現像後、図2に示すように転写電圧付与部材としての転写ローラで0.1〜3Kg/cmの圧力をかけ転写した場合、平滑性の悪い転写紙や捺染の場合は転写性が向上し、高濃度の画像を形成できる。
また、図3に示すように中間転写体を用いて転写する場合も、更に高い圧力がかけられるため転写性が向上する。しかし、中間転写体を用いない場合よりも転写時の溶媒量が少なくなるため、捺染の場合は、2次転写前に中間転写体上に脂肪族炭化水素やシリコーンオイル等の溶媒を吹き付け(図3では溶媒塗布噴霧装置を設けている)転写に必要な溶媒量を確保することが望ましい。
吹き付け量は0.20〜0.70mg/cm程度が良好である。
【0034】
また、捺染の場合、濃度を向上のためには現像付着量を上げたり、あるいは、現像後スクイズローラの溶剤スクイズ量を少なくすることにより、感光体上の現像液量を多くして布への溶剤染込み量を増やすと効果がある。
【0035】
転写電圧は直接布に転写する場合は絶対値で1000〜7000V、中間転写を用いる場合は1次転写が100〜1000V、2次転写が300〜7000Vが望ましい。
【0036】
本請求項1の発明における捺染用電子写真トナーは、着色剤、固着剤等の添加剤および一部の担体液をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミルなどの分散機に投入、分散、混練を行い濃縮トナーを調製し、これを残りの担持液中に分散させることにより得ることができる。この場合でも、それぞれの濃度の制限はないが、例えば、着色剤5〜10質量%、固着剤5〜20質量%、担体液70〜95質量%、帯電制御剤0.1〜1質量%とすることができる。
【0037】
本発明を図面を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の画像形成方法の一例である。帯電電圧付与部材により、感光体に電荷を与え、露光により非画像部の電荷を消去する。感光体はセレン感光体、有機感光体、アモルファスシリコン感光体が使用できる。感光体の表面電位は、400V〜1600Vの範囲が良好である。感光体の電荷の残っている潜像に現像ローラから供給される液体現像剤、すなわち、本発明の液体トナーにより現像し、スクイズローラで余剰の捺染用電子写真トナーを除去し、転写電圧付与部材により前記トナーの電荷と逆電荷の電圧をかけ捺染布に転写させる。
現像ローラは感光体と順方向に回転し、スクイズローラは逆方向に回転させ、感光体に対する線速は現像ローラが1.2倍〜6倍、スクイズローラの線速は1.2倍〜4倍が効果的である。
ローラと感光体のギャップは50〜250μm、スクイズローラのギャップは30〜150μmが良好である。転写電圧は500〜4000Vの範囲が良好である。
布に転写されずに感光体に残った前記トナーをクリーニングブレード、クリーニングローラで除去後、感光体を除電する。
また、画像部の電荷を消去し非画像部の電荷を残す現像方式でも同様に画像形成できる。
【0038】
図2は図1の転写電圧付与部材をチャージャー方式からローラ方式にした例である。チャージャー方式に比べ転写時の圧力を付与できるため、表面性の荒れた凹凸の大きい布の場合でも転写性が良好である。転写圧は0.1〜3Kg/cmが良好である。
【0039】
図3は図2の装置に中間転写部材を追加した例である。図2の装置よりもさらに高い転写圧力を付与できるため、表面性の荒れた凹凸の大きい布の場合でも転写性が良好である。一次転写圧は0.1〜3Kg/cm二次転写圧は0.1〜5Kg/cmが良好である。ただ、中間転写部材への一次転写時にトナー中の溶媒成分が少なくなり、中間転写部材から布への二次転写に必要な溶媒量が少なくなる場合があるため、二次転写前に中間転写部材に溶媒を吹きかける工程を追加すると効果的である。
【0040】
図4は感光体をタンデム(tandem)に配置し、布搬送ベルト上に布を貼りつけてフルカラー捺染を行う装置の一例である。なお、タンデムとは、カラー用の場合は感光体が複数個(通常4個)並んだ電子写真用マシンである。タンデム方式は高速化に有利なカラー画像作成方法である。
【発明の効果】
【0041】
(1)請求項1に対応する効果
請求項1の電子写真捺染方法においては、アルカリ水溶液濃度0.1〜10質量%でパッド・スチーム法により発色処理するため、染着性、発色濃度が優れる。
(2)請求項2に対応する効果
請求項2の電子写真捺染方法においては着色剤として一般式(1)の染料を含有するため請求項1の効果に加えて更に濃度、染着性が優れる。
(3)請求項3に対応する効果
請求項3の電子写真捺染方法においては、一般式(1)の純度が80%以上であるため、高品質の画像を提供できる。
(4)請求項4に対応する効果
請求項4の電子写真捺染方法においては、担体液が、沸点100〜350℃の脂肪族飽和炭化水素であるため、発色工程での問題がなく、高品質の画像を提供できる。
(5)請求項5に対応する効果
請求項5の電子写真捺染方法においては、固着剤の少なくとも一部にアルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂が含有されているため風合の良好な高品質の画像を提供できる。
(6)請求項6に対応する効果
請求項6の電子写真捺染方法においては、アルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂の酸価が0〜2000mgであるため高品質な画像を提供できる。
(7)請求項7に対応する効果
請求項7の電子写真捺染方法においては、ζ電位の絶対値が10〜200mvであるため高品質の画像を提供できる。
(8)請求項8に対応する効果
請求項8の電子写真捺染方法においては、重量平均粒径が0.1〜5μmであるため高品質の画像を提供できる。
(9)請求項9に対応する効果
請求項9の電子写真捺染方法においては、静電潜像を感光体上に現像後、転写ローラで静電力及び/または圧力をかけ、画像を形成させるため平滑性の悪い紙や布への転写性が良好である。
(10)請求項10に対応する効果
請求項10の電子写真捺染方法においては、静電潜像を感光体上に現像後、中間転写体にトナー像転写後、画像を形成させるため平滑性の悪い紙や布への転写性が良好である。
(11)請求項11に対応する効果
請求項11の電子写真捺染方法においては、2次転写前に中間転写体に溶媒を吹きかける工程を含むため請求項10の効果に加えて更に転写性が良好である。
(12)請求項12に対応する効果
請求項12の電子写真捺染方法においては、感光体の線速に対して現像ローラの線速が1.2倍〜6倍、スクイズローラの線速が1.2〜4倍であるため高品質の画像が得られる。
(13)請求項13に対応する効果
請求項13の電子写真捺染方法においては、タンデム型に感光体を配置し布に画像を転写するため、高速で高画品質のフルカラー捺染が提供できる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、以下の「部」は全て重量部である。また、転写布はすべて綿布を用いた。
【0043】
実施例1
表1の染料A(純度50%品) 60部
ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート
/メタクリル酸(80/10/10)共重合体の
アイソパーH20%溶液 100部
ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン) 60部
水溶性樹脂 ポバール(PVA)(クラレ) 55部
アイソパーH(担体液) 180部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 3部
をピンミルに入れて10時間分散後、さらにアイソパーHを300部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。なお、アイソパーHは、体積抵抗2.5×1014Ω・cm、B.P.184℃のものである。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1リットルを混合した液体トナーにより図1の装置で転写圧0.15Kg/cmで電子写真捺染を行った。
これをアルカリ水溶液濃度1質量%(炭酸水素ナトリウム)、パッド・スチーム/蒸熱法により100℃で10分間固着処理を行った。その後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/リットルにより80℃で5分間ソーピング処理を行って捺染サンプルを作成した。
【0044】
実施例2
リアクティブイエロー16(純度90%品) 50部
ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート
/メタクリル酸(80/10/10)共重合体
のアイソパーH20%溶液 100部
ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン) 60部
水溶性樹脂 ポバール(PVA)(クラレ) 55部
アイソパーH(担体液) 180部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 3部
をピンミルに入れて10時間分散後、さらにアイソパーHを300部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1リットルを混合した液体トナーにより図1の装置で転写圧0.20Kg/cmで電子写真捺染を行った。
これをアルカリ水溶液濃度5質量%(炭酸水素ナトリウム)、パッド・スチーム/蒸熱法により110℃で20分間固着処理を行った。その後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/リットルにより80℃で5分間ソーピング処理を行って捺染サンプルを作成した。
【0045】
実施例3
表1の染料E (純度80%) 63部
エポキシ変性樹脂エピコート802(ジャパンエポキシレジン) 20部
水溶性樹脂 ハリディブ(水溶性アルキド樹脂)(ハリマ化成) 75部
ステアリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート
/メタクリル酸(80/10/10)共重合体の
アイソパーH20%溶液 100部
アイソパーH(担体液) 250部
荷電制御剤(オクタン酸ジルコニウム) 5部
をボールミルに入れて24時間分散後、さらにアイソパーHを250部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1リットルを混合した液体トナーにより図2の装置で転写圧1.75Kg/cmで電子写真捺染を行った。
これをアルカリ水溶液濃度3質量%(水酸化ナトリウム)、パッド・スチーム/蒸熱法により120℃で30分固着処理を行った。その後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/リットルにより80℃で5分間ソーピング処理を行い捺染サンプルを作成した。
【0046】
実施例4
実施例1の染料A(純度50%品)を純度90%に精製して用いた以外は、実施例1と同一にして濃縮トナーを作成した。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1リットルを混合した液体トナーにより図2の装置で転写圧1.52Kg/cmで電子写真捺染を行った。
これをアルカリ水溶液濃度1質量%(水酸化ナトリウム)、パッド・スチーム/蒸熱法により100℃で10分固着処理を行った。その後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/リットルにより80℃で5分間ソーピング処理を行い捺染サンプルを作成した。
【0047】
実施例5
実施例3の分散媒をアイソパーHからシリコーンオイル(KF−96 2cst)に変えた以外は全て実施例2と同様にして濃縮トナーを作成した。
この濃縮トナー100gとシリコーンオイル(KF−96 2cst)1リットルを混合した液体状捺染用電子写真トナーにより図2の装置で転写圧2.65Kg/cmで電子写真捺染を行った。なお、シリコーンオイルKF−96は、体積抵抗3.3×1014Ω・cm、B.P.230℃のものである。
これをアルカリ水溶液濃度6質量%(炭酸水素ナトリウム)、パッドスチーム/蒸熱法により125℃で30分間固着処理を行った。その後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/リットルにより80℃で5分間ソーピング処理を行い捺染サンプルを作成した。
【0048】
実施例6
リアクティブイエロー14 (純度90%) 40部
ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン) 5部
水溶性樹脂カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス)
95部
2エチルヘキシルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/
メタクリル酸(80/10/10)共重合体
のアイソパーH20%溶液 120部
アイソパーH(担体液) 200部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をバッチ式サンドミルに入れて12時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーM(1リットル)を混合して得られた液体トナーにより図2の装置で転写圧1.95Kg/cmで電子写真捺染を行った。なお、アイソパーMは、体積抵抗3.1×1014Ω・cm、B.P.223℃のものである。
これをアルカリ水溶液濃度1質量%(水酸化ナトリウム)、パッド・スチーム/蒸熱法により110℃で5分間固着処理を行った。その後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/リットルにより80℃で5分間ソーピング処理を行い捺染サンプルを作成した。
【0049】
実施例7
表1の染料B (純度80%) 43部
ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン) 95部
水溶性樹脂カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス)
5部
2エチルヘキシルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート
/メタクリル酸(80/10/10)共重合体の
アイソパーH20%溶液 120部
アイソパーH(担体液) 200部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をバッチ式サンドミルに入れて12時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとエクソールD30(1リットル)を混合して得られた液体トナーにより図2の装置で転写圧0.69Kg/cmで電子写真捺染を行った。エクソールD30は、体積抵抗1.4×1014Ω・cm、B.P.150℃のものである。
これをアルカリ水溶液濃度3質量%(水酸化カリウム)、パッド・スチーム/蒸熱法により120℃で10分間固着処理を行った。その後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/リットルにより80℃で5分間ソーピング処理を行い捺染サンプルを作成した。
【0050】
実施例8
実施例3で転写圧を0.14Kg/cmにした以外は全て実施例3と同様にして行った。
【0051】
実施例9
実施例3で使用する装置を図3の装置、1次転写圧1.23Kg/cm、2次転写圧3.98Kg/cmにした以外は全て実施例3と同様にして行った。
【0052】
実施例10
実施例9で2次転写前にアイソパーHを0.6mg/cm吹きかけた以外は全て実施例9と同様にして行った。
【0053】
その結果は次表2の通りであった。
【0054】
比較例1
実施例1同様に布に転写を行った後、アルカリ水溶液濃度1質量%(炭酸水素ナトリウム)の代わりにFixerRC〔水ガラス(珪酸ナトリウムの18%水溶液)の商品名〕を用い常温で15時間(コールドパッド・バッチ)の染着処理を行った以外は全て実施例1と同様にしてサンプルを作成した。なお、コールドパッド・バッチでは、珪酸ソーダ等の結着剤を用い、温度をかけないで結着処理を行う方法である。
【0055】
比較例2
実施例2同様に布に転写を行った後、アルカリ水溶液濃度5質量%(炭酸水素ナトリウム)の代わりにFixerRCを用い100℃で60秒(加熱法/アルカリショック)の染着処理を行った以外は全て実施例2と同様にしてサンプルを作成した。加熱法/アルカリショックとは、例えば塩化ナトリウム 100g、炭酸ナトリウム 150g、炭酸カリウム 50g、水酸化ナトリウム(40°ボーメ)50cc、珪酸ナトリウム10gに水を加えて1Kgとした、強めのアルカリ浴中で100℃で10秒程度で結着処理する方法である。
表2の結果より明らかなとおり、本電子写真捺染方法によると、染着率が高く、布濃度が高く、高解像な捺染布が得られた。
実施例4は染料純度を上げているため更に濃度が高い。実施例5は分散媒に脂肪族炭化水素以外の溶媒を使用しているため、実施例4に比べて分散性がやや悪い。実施例6は水溶性樹脂量が多いため濃度がやや低い。実施例7は水溶性樹脂量が少ないため風合がやや低い。
実施例10は二次転写前に中間転写ローラ上の画像にアイソパーHを吹きつけているため転写率が上がり画像濃度が向上した。
比較例の場合は染料と綿布(セルロース)の水酸基との反応が不十分で水洗い、ソーピング処理により、印字画像が除去され画像濃度が低下したり、除去された染料により汚染し地汚れとなったりニジミにより解像性が低下した。
【0056】
【表2】

*濃度はX−Riteにより測定
*地汚れは地汚れ段階見本布による
5:非常に良い、4:良い、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い
*風合は風合段階見本布による
5:布のみと同程度の柔らかさ、4:柔らかい、3:中程度、2:やや硬い、1:硬い
*平均粒径は島津製作所SA−CP3による
トナーを積分球式濁度計で透過率15%程度になるまでアイソパーで希釈し、SA−CP3用セルに充填しACCEL480、MODE:CENT、3〜16チャンネルの条件で測定
*ζ電位は大塚電子ELS−8000による
セル:低誘電率セル、電界:500V/cm、6回測定平均モードで測定
*解像性は、段階見本による
5:非常に良い、4:良い、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い
*転写率はテープ剥離法による濃度から算出
転写率=(転写前感光体上濃度−転写後感光体残濃度)/(転写前感光体上濃度)×100%
*帯電制御率は電着法により算出
電極間距離:1cm、電極面積:2cm×2cm、電着時間:100秒で測定
*ΔEはX−Riteによりジャパンカラーとの色差を算出
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1例を示す転写チャージャー方式による電子写真捺染方法の概略図である。
【図2】本発明の他の1例を示すローラ方式による電子写真捺染方法の概略図である。
【図3】図2に示す装置に、中間転写体を追加したケースを示す。
【図4】感光体をタンデムに配置し、布搬送ベルト上に布を貼りつけてフルカラー捺染を行う装置の1例を示す。転写ローラは、右から順にY(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、BK(黒)、G(グリーン)、R(赤)のためのものである。
【図5】染料が溶解している捺染糊(捺染インク)を使用する場合と、染料が懸濁している捺染トナーを使用する場合の捺染した直後の状態を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体液を含有する液体トナーを用いた電子写真方式により捺染を行う電子写真捺染方法において、着色剤として反応染料を用いた液体トナーにより布に転写して画像形成を行い、形成された画像をアルカリ水溶液濃度0.1〜10質量%でパッド・スチーム法により発色処理することを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項2】
前記液体トナーの着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有するものである請求項1記載の電子写真捺染方法。
【化1】

(式中R〜R13はH、C2n+1、F、Cl、OH、SOH、NHCOCH、NHCONH、OCH、SOOSOH、COOH、NOよりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、nは1〜4の整数である。)
【請求項3】
着色剤として用いる染料の純度が80〜100%である請求項1または2記載の電子写真捺染方法。
【請求項4】
前記担体液が、沸点100〜350℃(常温、常圧時)の脂肪族飽和炭化水素である請求項1〜3いずれか記載の電子写真捺染方法。
【請求項5】
前記液体トナーが固着剤として少なくともアルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂を含有するものである請求項1〜4いずれか記載の電子写真捺染方法。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性樹脂および/または水溶性樹脂の酸価が0〜2000mg/KOHである請求項5記載の電子写真捺染方法。
【請求項7】
ζ電位の絶対値が10〜200mVである請求項1〜6いずれか記載の電子写真捺染方法。
【請求項8】
トナー粒子の重量平均粒径が0.1〜5μmである請求項1〜7いずれか記載の電子写真捺染方法。
【請求項9】
静電潜像を感光体上に現像後、転写ローラで静電力及び/または圧力により、画像を転写させるものである請求項1〜8いずれか記載の電子写真捺染方法。
【請求項10】
静電潜像を感光体上に現像し、中間転写体にトナー像を1次転写後、画像を2次転写させるものである請求項1〜9いずれか記載の電子写真捺染方法。
【請求項11】
2次転写前に中間転写体に溶媒を吹きかける工程を含むものである請求項1〜10いずれか記載の電子写真捺染方法。
【請求項12】
感光体の線速に対してトナーを現像するための現像ローラの線速が1.2倍〜6倍、過剰溶剤を除去するスクイズローラの線速が1.2〜4倍である請求項1〜11いずれか記載の電子写真捺染方法。
【請求項13】
タンデム型に感光体を配置し、布に画像を転写してフルカラー捺染するものである請求項1〜12いずれか記載の電子写真捺染方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−248853(P2007−248853A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72785(P2006−72785)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(596053068)京都市 (26)
【Fターム(参考)】