説明

電子写真用現像部材、その製造方法、電子写真用プロセスカートリッジ、及び電子写真用画像形成装置

【課題】現像剤の固着の抑制と当接部材による変形の抑制を両立し、長期間に渡って安定した画像形成が可能な電子写真用現像部材を提供する。
【解決手段】表面層の表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各領域の平均架橋密度をそれぞれC1、C2、C3[mol/cm3]としたときに、下記式(1)乃至(3)の関係を満たしていることを特徴とする電子写真用現像部材:
(1)C3<C2<C1;
(2)C3×1.3≦C1≦C3×5.0;
(3)2.0×10-4≦C3≦7.0×10-4

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用画像形成装置において用いられる電子写真用現像部材(以下、単に現像部材とも言う)及びその製造方法に関する。さらに本発明は、この電子写真用現像部材を具備して成る電子写真用プロセスカートリッジ、及び電子写真用画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真用画像形成装置においては、高速化、高画質化の進展に伴い、静電潜像の形成された電子写真感光体に対して現像剤を供給する電子写真用現像部材に対する要求性能も高度なものとなってきている。
【0003】
特許文献1には、現像剤担持体の表面層の硬度を内層よりも高く設定することで、現像部材を電子写真感光体に均一に当接させるとともに、現像ニップ幅を狭くし、均一でコントラストの良好な画像を形成できることが開示されている。この技術では、特に、ハーフトーン部での画像品質の良好な画像を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−235941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記特許文献1に記載された構成について検討を重ねた。その結果、特許文献1に係る現像部材は、表面層の高い硬度により現像ブレード等との当接による変形は良好に抑制できるものの、現像剤の固着による表面の汚れが生じ易くなるという新たな課題を招来してしまうことを見出した。そこで、本発明の目的は、現像剤の固着の抑制と当接部材による変形の抑制を両立し、長期間に渡って安定した画像形成が可能な電子写真用現像部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子写真用現像部材は、軸芯体と、該軸芯体の周囲に設けられた、ウレタン樹脂を含有する表面層とを有する電子写真用現像部材において、該表面層の表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各領域の平均架橋密度をそれぞれC1、C2、C3[mol/cm3]としたときに、下記式(1)乃至(3)の関係を満たしていることを特徴とする:
(1)C3<C2<C1;
(2)C3×1.3≦C1≦C3×5.0;
(3)2.0×10-4≦C3≦7.0×10-4
【0007】
本発明に係る電子写真用部材の製造方法は、上記本発明の電子写真用現像部材の製造方法であって、該表面層の原料液の塗膜を大気圧の下でプラズマ処理する工程を有することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明に係る電子写真用プロセスカートリッジは、少なくとも、静電潜像を形成するための感光体と、電子写真用現像部材とを具備し、電子写真用画像形成装置に脱着可能に構成された電子写真用プロセスカートリッジにおいて、該電子写真用現像部材が、上記本発明の電子写真用現像部材であることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る電子写真用画像形成装置は、少なくとも、静電潜像を形成するための感光体と、電子写真用現像部材とを具備する電子写真用画像形成装置において、該電子写真用現像部材が、上記本発明の電子写真用現像部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、現像剤の固着の抑制と当接部材による変形の抑制を両立し、長期間に渡って安定した画像形成が可能な電子写真用現像部材を提供することができる。また、本発明によれば、長期間に渡って安定した画像形成が可能な電子写真用プロセスカートリッジ、及び電子写真用画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子写真用現像部材の一例であり、(a)は長手方向に平行な断面を表し、(b)は長手方向に垂直な断面を表している。
【図2】本発明の電子写真用現像部材の一例であり、(a)は長手方向に平行な断面を表し、(b)は長手方向に垂直な断面を表している。
【図3】大気圧プラズマ処理装置の概略構成図である。
【図4】大気圧プラズマ処理装置における、プラズマ処理部材の長手方向に対するプラズマの発生領域を説明する概略図である。
【図5】本発明に係る電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、ウレタン樹脂を含有する表面層を形成した電子写真用現像部材の表面から300nmまでの領域における架橋密度を本発明の範囲に制御することで、現像剤の固着の抑制と当接部材による変形の抑制を両立可能なことを見出した。
【0013】
即ち、現像剤の固着は現像部材と当接する感光ドラムや現像ブレードとの間の圧力により、現像剤が押しつぶされて生じる。このことから、ウレタン樹脂を含有する表面層の平均架橋密度を下げることが現像剤の固着の抑制に有効である。一方、当接部材による変形を抑制するためには、表面層の平均架橋密度を上げ、当接する感光ドラムや現像ブレードによる変形量を小さくすることが有効である。従って、従来は、現像剤の固着と当接部材による変形のバランスを考慮した平均架橋密度に設定する必要があり、設計の自由度が制限されていた。
【0014】
本発明者らが現像剤の劣化と現像部材の硬度の関係を鋭意検討した結果、表面層の表面への現像剤の固着の程度、及び表面層の当接部材による変形の程度が表面層の表面から深さ300nmまでの深さ方向全体の架橋密度と良い相関を示すことを見出した。そして、表面層の表面から深さ200nmから300nmまでの間の領域の平均架橋密度を基準として、該領域よりも表面に近い側の平均架橋密度を相対的に高くすることで本発明に係る課題を良く解決できることを見出した。より具体的には、上記(1)乃至(3)を全て満たすように各領域の架橋密度を制御することが適切であることを見出した。
【0015】
即ち、本発明に係る電子写真用現像部材は、軸芯体と、該軸芯体の周囲に設けられた、ウレタン樹脂を含有する表面層とを有している。そして、該表面層の表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各領域について、
マイクロサンプリング質量分析法により測定した平均架橋密度をそれぞれC1、C2、C3[mol/cm3]としたときに、下記式(1)乃至(3)の関係を満たしている:
(1)C3<C2<C1;
(2)C3×1.3≦C1≦C3×5.0;
(3)2.0×10-4≦C3≦7.0×10-4
【0016】
本発明にかかる条件(1)〜(3)の技術的意義を以下に説明する。
【0017】
まず、式(3)に示した、表面層の表面から深さ200nm〜300nmの領域(以降「深層領域」ともいう)における架橋密度は、当該深層領域にあるウレタン樹脂の架橋密度に相当する。そして、この程度の架橋密度を有することにより、表面層は、トナーに対して過度のストレスを与えることのない柔軟性を有することとなる。
【0018】
次に、式(1)は、本発明に係る表面層は、その表面から深さ方向に300nmまでの領域においては、表面に近いほどに架橋密度が上昇することを意味している。また、式(2)は、深層領域の架橋密度に対して表面から100nmまでの領域におけるウレタン樹脂の架橋密度の上昇の程度を表している。
【0019】
そして、深層領域の架橋密度に対して、式(1)、(2)で規定したように、表面側に向かって架橋密度が高まるように形成されてなる表面層は、当接部材が同じ位置に長期にわたって当接した場合にも永久変形が生じ難い。そうであるにも関わらず、現像剤に過度のストレスを与えない柔軟性をも有するものとなる。
【0020】
上記(1)〜(3)の条件を満たす表面層は、表面層形成用のウレタン樹脂原料液の塗膜の硬化膜(ウレタン樹脂膜)を形成した後に、該ウレタン樹脂膜を大気圧下でプラズマ処理を行うことによって得ることができる。即ち、プラズマ処理によって、当該ウレタン樹脂膜の表面とその近傍の架橋密度を、より高めることができる。一方、ウレタン樹脂膜の表面から離れた深い部分の架橋密度は、プラズマ処理によっても殆ど変化しない。そのため、プラズマ処理後のウレタン樹脂膜は、表面から深さ方向に架橋密度が減少することとなり、上記(1)〜(3)の条件を満たした表面層とすることができる。
【0021】
ここで、空気中でウレタン樹脂膜からなる表面層の表面のプラズマ処理を行った場合、プラズマ中で発生する酸素ラジカルが、当該ウレタン樹脂膜のウレタン結合を過度に切断し架橋密度を低下させてしまうことがある。そのため、ウレタン樹脂膜の上記プラズマ処理は、窒素雰囲気下、具体的には例えば、窒素95vol%以上の雰囲気で行うことが好ましい。このようなプラズマ処理によれば、ウレタン樹脂膜の表面の酸化が抑制される。その結果、表面の炭素原子/酸素原子の比率(O/C原子比)が、プラズマ処理の影響を殆ど受けることの無い表面から深さ200nm〜300nmの領域のO/C原子比の0.8倍〜1.1倍の範囲内にある表面を得ることができる。即ち、表面層の表面から深さ100nmまでの領域におけるO/C原子比の平均値をO1、表面層の表面から200nm〜300nmの領域におけるO/C原子比の平均値をO3としたとき、O1とO3とが下記関係式で示される関係を有するものとなる:
O3×0.8≦O1≦O3×1.1。
【0022】
また、上記したように、ウレタン樹脂膜の表面の酸化が抑制されるようにプラズマ処理を行った場合、O1の値は、0.27以上、0.44以下の数値範囲内とすることができる。つまり、プラズマ処理によってもウレタン樹脂膜の表面に酸素原子が多量に導入されることが避けられる。そのため、表面層が酸素原子を多量に含む場合に生じ得る、現像剤への過剰な帯電付与能力の獲得を避けることができる。
【0023】
以上のとおりであるため、本発明に係る電子写真用現像部材は、下記の条件(4)及び条件(5)を満たすことが好ましい:
O3×0.8≦O1≦O3×1.1[条件(4)]、
0.27≦O1≦0.44[条件(5)]。
【0024】
上記条件(4)、(5)において、O1、O2、及びO3の各々は、表面層の表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各領域の平均O/C原子比である。O1がO3の0.8〜1.1倍であると表面層の架橋密度の低下を抑制することが容易である。また、O1が0.27以上であると現像剤に対する帯電付与性を得ることが容易であり、O1が0.44以下であると現像剤に対する帯電付与性を均一にすることが容易である。
【0025】
さらには、前記式(2)の更なる限定として、C3×1.5≦C1≦C3×3.0[条件(6)]を満たすことがより好ましい。1.5倍以上であると当接部材による変形の抑制がさらに容易であり、3.0倍以下であると現像剤の固着の抑制がさらに容易である。
【0026】
また、O1≦O2≦O3[条件(7)]を満たすことがより好ましい。表面層の表面から平均O/C原子比を連続的に変化させることで、プラズマ処理による表面層の酸素量の増加を抑制でき、架橋密度を所定の範囲に制御することが容易である。
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0028】
<電子写真用現像部材>
本発明に係る電子写真用現像部材の最も基本的な構成は、軸芯体と、その周囲に形成された、ウレタン樹脂を含有する表面層とからなる。また、軸芯体の周面に形成した所望の弾性を有する樹脂層の表面に表面層を形成した構成も本発明の範疇に包含される。このような構成においては、樹脂層は多層であっても良い。
【0029】
本発明に係る電子写真用現像部材の例を図1及び図2に示す。図1及び2中の(a)は電子写真用現像部材の長手方向に平行な断面を表したものであり、(b)は電子写真用現像部材の長手方向に垂直な断面を表したものである。図1において、電子写真用現像部材10は、円柱状の軸芯体11の周囲に、樹脂層12と表面層13が被覆層として形成されている。図2においては、電子写真用現像部材10は、円筒状の軸芯体11の周囲に表面層13のみが被覆層として形成されている。
【0030】
以下、図1の電子写真用現像部材について詳細に説明する。
【0031】
軸芯体11の材料は、導電性であればとくに限定されず、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄、導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることができる。ここで、合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。
【0032】
さらに、防錆対策として、軸芯体材料にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきのいずれも使用することができるが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、カニゼンめっき、その他各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni−P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。膜厚は、それぞれ0.05μm以上であれば好ましいが、より好ましくは0.10〜30.00μmである。
【0033】
樹脂層12の材料は、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムを用いることができる。これらの材料は、単独で用いても良いし、複数種を組み合わせて用いても良い。さらに、これらの材料の発泡体を用いても良い。
【0034】
樹脂層12の厚さは、電子写真用現像部材10に充分な弾性を与えるために0.5〜10.0mmであることが好ましい。樹脂層12の厚さを0.5mm以上にすることで、現像部材10に充分な弾性が得られ、感光ドラムの摩耗を抑制することができる。また、樹脂層12の厚さを10.0mm以下にすることで、電子写真用現像部材10のコストを抑えることができる。
【0035】
樹脂層12の硬度は、Asker−C硬度で10〜80度であることが好ましい。樹脂層12のAsker−C硬度を10度以上にすることで、樹脂層12を構成するゴム材料からのオイル成分の染み出しを抑え、感光ドラムの汚染を抑制することができる。また、樹脂層12のAsker−C硬度を80度以下にすることで、感光ドラムの摩耗を抑制することができる。
【0036】
樹脂層12には、低硬度及び低圧縮永久歪の特性を阻害しない範囲内で、充填剤を添加しても良い。充填剤の材料としては、石英微粉末、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、ケイソウ土、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤を挙げることができる。これらの充填剤の表面は、有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサンで処理して疎水化しても良い。
【0037】
電子写真用現像部材10は、半導体領域の電気抵抗値を有する必要がある。そのため、樹脂層12が導電剤を含有し、体積抵抗率1×104〜1×1010Ω・cmのゴム材料から形成されていることが好ましい。ここで、樹脂層材料の体積抵抗率が1×104〜1×1010Ω・cmであれば、現像剤に対して均一な帯電制御性を得ることが可能である。さらに、より好ましくは1×104〜1×109Ω・cmである。
【0038】
樹脂層12の材料を導電化する手段としては、イオン導電機構または電子導電機構による導電付与剤を、上記材料に添加することにより導電化する手法が挙げられる。
【0039】
イオン導電機構による導電付与剤としては、以下のものが挙げられる。LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族金属の塩;NH4Cl、(NH42SO4、NH4NO3等のアンモニウム塩;Ca(ClO42、Ba(ClO42等の周期律表第2族金属の塩;これらの塩と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールやそれらの誘導体との錯体;これらの塩と、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のモノオールとの錯体;第4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;脂肪族スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;ベタイン等の両性界面活性剤。
【0040】
また、電子導電機構による導電付与剤としては、以下のものが挙げられる。カーボンブラック、グラファイト等の炭素系物質;アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅−ニッケル合金の金属或いは合金;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀の金属酸化物;各種フィラーに、銅、ニッケル、銀等の導電性金属めっきを施した物質。
【0041】
これらイオン導電機構、電子導電機構による導電付与剤は、粉末状や繊維状の形態で、単独または2種類以上を混合して使用することができる。この中でも、カーボンブラックは、導電性の制御が容易であり、また経済的であるといった観点から好適に用いられる。
【0042】
なお、樹脂層材料の体積抵抗率の測定は、以下の方法で求めることができる。
【0043】
はじめに、樹脂層12の材料を、樹脂層12の成形時と同じ条件で、樹脂層12と同じ厚さに硬化させた平板状のテストピースを作製する。次に、テストピースから直径30mmの試験片を切り出す。切り出した試験片の片面には、その全面にPt−Pd蒸着を行うことで蒸着膜電極(裏面電極)を設け、もう一方の面には同じくPt−Pd蒸着膜により、直径15mmの主電極膜と、内径18mm、外径28mmのガードリング電極膜を同心状に設ける。なお、Pt−Pd蒸着膜は、マイルドスパッタE1030(商品名、日立製作所製)を用い、電流値15mAにて蒸着操作を2分間行って得る。蒸着操作を終了したものを測定サンプルとする。
【0044】
次に、以下の装置を用いて、以下の条件で測定サンプルの体積抵抗の測定を行う。測定時には、主電極を測定サンプルの主電極膜からはみ出さないように置く。また、ガードリング電極を測定サンプルのガードリング電極膜からはみ出さないように置く。測定は、温度23℃、湿度50%RHの環境で行うが、測定に先立って、測定サンプルを、その環境に12時間以上放置しておく。
・試料箱:超高抵抗計測定用試料箱TR42(商品名、アドバンテスト社製)、
・主電極:口径10mm、厚さ10mmの金属、
・ガードリング電極:内径20mm、外径26mm、厚さ10mmの金属、
・抵抗計:超高抵抗計R8340A(商品名、アドバンテスト社製)、
・測定モード:プログラムモード5(チャージ及びメジャー30秒、ディスチャージ10秒)、
・印加電圧:100(V)。
【0045】
測定した体積抵抗値をRM(Ω)、試験片の厚さをt(cm)とするとき、樹脂層材料の体積抵抗率RR(Ωcm)は、以下の式によって求めることができる。
RR(Ωcm)=π×0.75×0.75×RM(Ω)÷(4×t(cm))
<<表面層13>>
表面層13は、前記した条件(1)〜(3)、好ましくは前記条件(1)〜(5)、特に好ましくは前記条件(1)〜(7)を満たすものである。このような表面層13の構成材料は、含窒素化合物であるウレタン樹脂を用いることが好ましい。現像剤を安定して帯電させられるからである。本発明では、表面層13のバインダー樹脂として、イソシアネート化合物とポリオールを反応させて得られるウレタン樹脂からなることがより好ましい。
【0046】
イソシアネート化合物としては、以下のものが挙げられる。ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、カルボジイミド変性MDI、キシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート。また、これらの混合物を用いることもでき、その混合割合はいかなる割合でもよい。
【0047】
また、ポリオールとしては、以下のものが挙げられる。2価のポリオール(ジオール)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、トリエチレングリコール;3価以上のポリオールとして、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール。さらに、ジオールまたはトリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した高分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックグリコールといったポリオールも使用可能である。また、これらの混合物を用いることもでき、その混合割合はいかなる割合でもよい。
【0048】
さらに、表面層13に導電性を付与して使用することができる。導電性を付与する手法としては、上記樹脂層12の導電化と同様の手法を用いることが可能である。
【0049】
表面層13の厚さは、1.0〜500.0μmが好ましい。さらには、表面層13の厚みは1.0〜50.0μmであることがより好ましい。表面層13を1.0μm以上にすることで、耐久性を与えることができる。また、500.0μm以下、さらに好ましくは50.0μm以下にすることで、MD−1硬度を低くでき、現像剤の固着を抑制できる。
【0050】
電子写真用現像部材10のMD−1硬度は、マイクロゴム硬度計MD−1capa タイプA(商品名;高分子計器株式会社製)を、ピークホールドモードで使用し、温度23℃、湿度50%RHに制御した室内で測定した。本発明においては、電子写真用現像部材10のMD−1硬度を25.0°以上40.0°以下にすることで、現像剤の固着と当接部材による変形を効果的に抑制できるため好ましい。MD−1硬度は32°以上38°以下であることがより好ましい。
【0051】
電子写真用現像部材10の表面粗さは、現像剤の搬送力に大きく影響する。従って、日本工業規格(JIS) B0601:1994に規定されている表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが0.05〜3.00μmであることが好ましい。Raを0.05μm以上にすることで、現像剤の搬送力を得ることができ、画像濃度の低下やゴーストといった画像品質の低下を抑制することができる。また、Raを3.00μm以下とすることで、かぶりやガサツキといった画像品質の低下を抑制することができる。
【0052】
表面粗さを制御する手段としては、表面層13に所望の粒径の粒子を含有させることが有効である。また、表面層形成前後に、適宜研磨処理を施すことにより所望の表面粗さに形成することも可能である。その場合、表面層のみを形成する場合には、表面層を形成後に研磨処理を施せば良い。表面層のみを複数層形成する場合には、複数層のうちの一部を形成後に研磨処理を施しても良いし、複数層の全てを形成後に研磨処理を施しても良い。また、樹脂層と表面層を形成する場合には、樹脂層を形成後に研磨処理を施しても良いし、表面層を形成後に研磨処理を施しても良い。
【0053】
表面層13に含有させる粒子には、粒径0.1〜30.0μmの金属粒子及び樹脂粒子を用いることができる。中でも、柔軟性に富み、比較的比重が小さくて塗料の安定性が得やすい樹脂粒子がより好ましい。樹脂粒子としては、ウレタン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、シリコーン粒子を挙げることができる。これらの樹脂粒子は単独、または複数種を混合して使用することができる。表面層を複数層形成する場合には、複数層全てに粒子を含有させても良いし、複数層のうちの少なくとも一層に粒子を含有させても良い。
【0054】
本発明においては、平均架橋密度が2.0×10-4mol/cm3以上7.0×10-4mol/cm3以下の範囲の表面層を形成後に、大気圧プラズマ処理することが好ましい。2.0×10-4mol/cm3以上であると、プラズマ処理により表面層13の架橋密度が低下するのを抑制することが容易である。7.0×10-4mol/cm3以下であると、プラズマ処理後に現像材の固着を抑制することが容易である。表面層を複数層形成する場合には、最表面に位置する表面層を上記の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、3.0×10-4mol/cm3以上5.0×10-4mol/cm3以下の範囲である。
【0055】
好ましい架橋密度を実現するためには、表面層13が、次のバインダー樹脂を主成分として含有することが好ましい。ポリオールとして重量平均分子量が4000以上11000以下であるポリウレタンプレポリマーと、イソシアネートとを、NCO当量が1.1以上1.5以下の比率で混合し反応させたバインダー樹脂である。具体的には、ポリウレタンプレポリマーとして末端に水酸基を有するポリウレタンプレポリマー用いることができ、イソシアネートとしてブロックイソシアネートを用いることができる。
【0056】
なお、NCO当量は、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数とポリオール成分中の水酸基のモル数との比([NCO]/[OH])を示すものである。表面層を複数層形成する場合には、最表面に位置する表面層に上記のバインダー樹脂を含有させることが好ましい。
【0057】
平均O/C原子比が0.25以上0.55以下の範囲の表面層を形成後に、大気圧プラズマ処理することが好ましい。0.25以上であると、プラズマ処理後に現像剤に対する帯電付与性を得ることが容易である。0.55以下であると、プラズマ処理後に現像剤に対する帯電付与性を均一にすることが容易である。表面層を複数層形成する場合には、最表面に位置する表面層を上記の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.28以上0.40以下の範囲である。
【0058】
本発明の電子写真用現像部材は、軸芯体の周囲に、表面層の原料液の塗膜の硬化膜を形成し、その後に大気圧の下でプラズマ処理することで好適に製造することができる。
【0059】
<大気圧プラズマ処理>
本発明に適用可能な大気圧プラズマ処理に用いる装置について、その概要を図3により説明する。
【0060】
図3は本発明の電子写真用現像部材の製造方法を実現する、大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。図3のプラズマ処理装置30は、チャンバー31、プラズマ電極32、高周波電源33、ガス導入口34、ガス排気口35、パルスジェネレーター39により構成される。プラズマ処理装置の一例として、コロナ放電表面処理装置(春日電機株式会社製)が挙げられる。
【0061】
大気圧プラズマ処理を施されるもの(以降「被処理物310」ともいう)は、チャンバー31内に設置された支持部36により芯金の両端を支持し、電極と平行に所望の間隔を隔てて配置する。被処理物310としては、例えば、軸芯体と、その周囲に形成された弾性層と、該弾性層の表面を被覆するウレタン樹脂膜とからなる電子写真用現像部材が取り付けられる。さらに、被処理物310の軸芯体は支持部36を介して接地するとともに、回転駆動部37に接続する。
【0062】
プラズマ電極32はチャンバー31とは絶縁されており、さらに所望の周波数の高周波電力を出力する高周波電源33が接続されている。高周波電源33にはパルスジェネレーター39が接続されており、必要に応じて高周波電力をパルス変調することができる。プラズマ電極32には、スパークの発生を抑制するため、高周波電力を供給する金属の導電体部と、その周囲を覆うセラミック部で構成したものが好ましく用いられる。
【0063】
また、チャンバー31内を所望のガス雰囲気にするため、ガス導入口34が不図示のガスボンベにレギュレーターを介して接続され、さらにガス排気口35は不図示の真空ポンプに接続される。また、チャンバー31内をパージするためのパージ口38が設置される。
【0064】
次に、プラズマ処理装置の動作について説明する。
【0065】
まず、被処理物310を所望の位置に設置する。チャンバー内を所望の雰囲気に制御する場合は、真空ポンプを動作させてガス排気口35からチャンバー31内を真空排気する。所望の真空度になったところで排気を停止し、ガス導入口34から所望のガスを供給する。チャンバー31内が大気圧になったところでガス供給を停止する。
【0066】
次に、被処理物310を回転駆動させる。その後、所望の高周波電力を高周波電源33よりプラズマ電極32に供給し、被処理物310とプラズマ電極32の間にプラズマを発生させて処理を開始する。所望の処理時間が経過したら、電力の供給及び回転駆動を停止し、処理を完了する。
【0067】
プラズマ処理の時間、及びプラズマ発生条件は、プラズマ処理によって得られる表面層が、前記条件(1)〜(3)を満たすように選択する。
【0068】
プラズマ処理の時間は、具体的には、処理時間は1〜30秒間が好ましい。1秒間以上にすることで、周方向に均一な処理効果が得られるため好ましい。また、30秒間以下にすることで、プラズマによる過昇温により架橋密度が低下することを抑制できるため好ましい。
【0069】
プラズマを発生させる際のチャンバー31内の圧力は、プラズマ中の荷電粒子密度を高めて効率良く処理するために、92000〜111000Paの大気圧近傍下でプラズマを形成して処理することが好ましい。
【0070】
プラズマ電極32に供給する高周波電力は、チャンバー内の圧力に応じて周波数及び投入電力を適宜選択することが好ましい。具体的には、1kHz〜3GHzの周波数が好ましい。特に大気圧プラズマを発生させる場合には、プラズマを安定して形成できることから、1kHz〜15MHzが好ましく、さらには5〜100kHzが好ましい。投入電力は、装置構成及びプラズマ発生領域に依存するためとくに限定はされないが、スパークの発生や現像部材の過昇温が起きない範囲で高くしたほうが、効率良く処理できるため好ましい。
【0071】
本発明においては、パルス幅変調方式によりパルス変調した高周波電力を供給してプラズマを発生させることがより好ましい。パルス幅変調方式を用いることにより、プラズマに投入される電力を効率良く制御でき、架橋密度を制御することが容易になる。また、duty比は50%以上80%以下の範囲であることが好ましい。duty比とは、パルス変調した高周波電力1周期に対する電力を印加する時間の比率を表す。duty比を50%以上にすることで、架橋密度を増加させるのに充分なエネルギーを与えることができる。また、duty比を80%以下にすることで、プラズマによる過昇温が引き起こす架橋密度の低下を抑制できる。duty比は60%以上75%以下の範囲であることがより好ましい。
【0072】
プラズマ電極32と被処理物310の間隔は、長手方向でほぼ均一であればとくに制限はされない。プラズマが均一に形成されるように、使用する電源周波数に応じて適正な範囲を選べばよいが、一般的には1〜10mmの間隔が好ましい。1mm以上とすることで、スパークの発生を抑制できるため好ましい。また、10mm以下とすることで、プラズマを均一に形成できるため好ましい。
【0073】
さらに、本発明においては、チャンバー31内の窒素量を制御して処理しても良い。チャンバー31内を一度真空排気した後、窒素ガスを供給することで、チャンバー内の窒素量を制御することができる。また、真空排気は実施せずに、プラズマ部に一定以上の流速で窒素ガスを供給することで、窒素量を制御して処理することも可能である。いずれにせよ、プラズマ部の雰囲気の窒素量が制御できていれば良い。プラズマ部の雰囲気の窒素量を制御する場合、窒素95vol%以上の雰囲気にすることが好ましい。窒素95vol%以上とすることで、表面の酸化を抑制し、架橋密度の低下を抑制できる。窒素98vol%以上の雰囲気にすることがより好ましい。
【0074】
プラズマの発生領域は装置構成によって任意に制御できる。図3のプラズマ処理装置30においては、図4(a)に示すように、被処理物310の軸方向全域にプラズマ40を形成して処理することができる。また、図4(b)に示すように局所的に形成したプラズマ40を、矢印で示した被処理物310の長手方向に走査することで、被処理物310の軸方向全域を処理しても良い。図4(b)に示すようなプラズマを発生させるプラズマ処理装置の一例として、プラズマ照射表面改質装置(商品名:PS−601C;春日電機株式会社製)が挙げられる。
【0075】
プラズマ処理中は、被処理物310を回転させて、周方向に均一にプラズマ処理を行うことが好ましい。被処理物310の回転数は特に制限されることはないが、1〜300rpmの回転数が均一に処理でき好ましい。
【0076】
以上のようなプラズマ処理を行うことで、電子写真用現像部材の表面近傍の架橋密度とO/C原子比を本発明の範囲に制御した電子写真用現像部材を作製することが可能となる。
【0077】
以下、電子写真用現像部材の表面近傍の架橋密度及びO/C原子比を本発明の範囲に制御する具体的な方法の一例を説明する。
【0078】
まず、プラズマ処理されるウレタン樹脂膜を作製するにあたり、その平均架橋密度を2.0×10-4mol/cm3以上7.0×10-4mol/cm3以下の範囲[条件(3)]になるように制御する。この制御は、ウレタン樹脂膜の原料の選択やウレタン樹脂膜を作製する際の硬化条件を調整することで行うことができる。このとき、ウレタン樹脂膜の平均O/C原子比も測定する。
【0079】
次いで、プラズマの発生条件を決定する。特に、架橋密度の低下が起こらず、プラズマ処理後の表面近傍の平均O/C原子比が条件(4)及び(5)を満足できるように、投入電力及びチャンバー内の窒素量を決定する。そして、表面から深さ100nmまでの平均架橋密度がプラズマ処理前の1.3〜5.0倍[条件(2)]、好ましくは1.5〜3.0倍[条件(6)]となり、かつ条件(1)[及び必要に応じて条件(7)]を満たすようにプラズマ処理する。
【0080】
こうすることで、電子写真用現像部材の表面近傍の架橋密度及びO/C原子比を本発明の範囲に制御することができる。
【0081】
<電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置>
次に、本発明の電子写真用現像部材を搭載する電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置の一例を、図5で説明する。本発明の電子写真用画像形成装置は、少なくとも、静電潜像を形成するための感光体と、電子写真用現像部材とを具備する。本発明の電子写真用プロセスカートリッジは、少なくとも、静電潜像を形成するための感光体と、電子写真用現像部材とを具備し、電子写真用画像形成装置の本体に着脱可能に構成される。
【0082】
本発明に係る電子写真用画像形成装置500は、図5のように電子写真用の各種部材が配置されて構成される。感光ドラム501は帯電ローラ502によりその表面に対し、所定の極性で、電位が一様になるように帯電処理される。その後、目的画像情報で変調された露光光503により、感光ドラム501の表面に目的画像に対応した静電潜像が形成される。この静電潜像は、本発明に係る電子写真用現像部材である現像ローラ504により供給される現像剤505により現像剤画像として可視化される。なお、現像ローラ504は、その表面に現像剤供給ローラ513により現像剤が現像剤貯槽514から供給され、現像ブレード515にて均一厚みになるようにそれぞれ現像剤供給ローラ513、現像ブレード515が当接されている。現像ローラ504上の、静電潜像を現像する際に使用されず、現像ローラ504上に残留した現像剤は、現像剤供給ローラ513で一旦現像ローラ504から掻き落とされる。
【0083】
可視化された現像剤画像は、給紙ローラ506により搬送された記録材507に、裏面から転写ローラ508によって電圧を印加され、記録材507に転写される。現像剤画像が転写された記録材507は、定着ローラ509と加圧ローラ510によって構成された定着部へ搬送され、像定着を受け、画像形成物として出力される。感光ドラム501はその上に残存する現像剤を取り除くためにクリーニング部511によりクリーニングされ、除電部材(図示していない)にて除電され、再び帯電過程に進む。なお、クリーニング部511によって取り除かれた現像剤は廃現像剤容器512へ集められる。また、クリーニング部511の部材としてクリーニングローラを用いることも可能である。
【0084】
なお、帯電ローラ502、現像ローラ504及び転写ローラ508には、バイアス印加電源により必要な電圧が印加されている。
【0085】
電子写真用プロセスカートリッジは、少なくとも、感光ドラムと、電子写真用現像部材とが一体として交換可能に構成され、かつ電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている。電子写真用プロセスカートリッジは、その他に、転写ローラ、定着部を除く、帯電ローラ、クリーニング部等が一体となっていてもよい。
【0086】
そして、ブラック、マゼンダ、シアン、イエローの4色の電子写真用プロセスカートリッジを並べ、記録材にそれぞれの現像剤を転写し、像定着を行うことにより、カラーの画像形成物を出力することが可能となる。また、現像ローラ504の代わりに、現像スリーブを用いることも可能である。
【0087】
<パラメータの測定方法>
(平均架橋密度の測定)
本発明の電子写真用現像部材の表面近傍の平均架橋密度は、マイクロサンプリング質量分析法と膨潤法を組み合わせて求める。すなわち、平均架橋密度は、一般的には、後述する膨潤法により求めることができる。しかし、本発明に係るC1、C2及びC3は、サンプリングしなければならない表面層の厚さが100nmと非常に薄いため、膨潤法を用いて平均架橋密度を求めることが困難である。そこで、本発明においては、マイクロサンプリング法を併用することとする。
【0088】
マイクロサンプリング質量分析法の概要を以下に示す。
【0089】
まず、測定する現像部材の表面をミクロトームで薄片に切削して切り出し、試料を準備する。本発明では、表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各々の領域から、100μm角、厚さ100nmの薄片を作製する。
【0090】
測定には、Polaris Q(商品名、Thermo Electron社製)に搭載されている、イオントラップ型MS装置を使用する。プローブの先端に位置するフィラメントに試料を固定し、イオン化チャンバーの中に直接挿入する。その後、一定の加熱速度で室温から温度1000℃まで急速に加熱する。蒸発した試料を電子ビームの照射によりイオン化し、質量分析計により検出する。
【0091】
このとき、加熱速度が一定の条件では、トータル・イオン・クロマトグラム(TIC)と呼ばれる質量スペクトルを持つ、TG−MS(熱重量−質量同時分析)法に類似した熱クロマトグラムが得られる。得られた熱クロマトグラムが最大値となる温度(ピーク温度)は、試料の平均架橋密度と非常に良い相関を示す。従って、表面層の原料液からなる、架橋密度が異なるウレタン樹脂硬化物の試験片を複数個用意し、これらの平均架橋密度を、後述する膨潤法を用いて求めておく。次いで、当該各試験片について、上記したマイクロサンプリング法を用いてピーク温度を求める。これにより、ピーク温度と平均架橋密度との相関を示す関係式を得られる。この関係式に基づき、表面層の各厚さ領域から作成した薄片のピーク温度から、当該厚さ領域の平均架橋密度を求めることができる。
【0092】
膨潤法による平均架橋密度の算出方法は以下の通りである。
【0093】
表面層の原料液を硬化させて、大きさが、10mm×10mm、厚さ10μmのウレタン樹脂硬化物からなる試験片の複数個を調製する。これらの試験片を、トルエンに72時間浸漬して飽和膨潤させた後、室温で48時間乾燥させる。そして、各試験片について、初期(浸漬前)、飽和膨潤時、乾燥後のそれぞれの状態における、重量W[g]と比重ρ[g/cm3]を測定する。これらから、各試験片の平均架橋密度ν[mol/cm3]を以下の式によって算出する。質量及び密度の測定は、乾式自動密度計アキュピック1330(商品名、島津製作所製)を用いて行った。これらから、平均架橋密度ν[mol/cm3]を以下の式によって算出する。
ν=−(V0/Vs)(ln(1−Vr)+Vr+μVr2)/(Vr1/302/3−2Vr/4)
1:初期質量、
ρ1:初期密度
2:膨潤状態質量
3:乾燥後質量、ρ3:乾燥後密度
ρs:溶媒(トルエン)の密度[g/cm3](0.866)
1=W1/ρ1
2=V3+(W2−W3)/ρs3=W3/ρ3
0:膨潤前ポリマー中の網目鎖ポリマー体積分率
0=(V3−V1P)/(V1−V1P)
r:膨潤状態中の網目鎖ポリマー体積分率
r=(V3−V1P)/(V2−V1P)
P:試料中の無機充填材体積分率(ρ:無機充填材=2.2で計算)
s:溶媒(トルエン)のモル容積[cm3](106.8)
μ:ポリマーの溶媒相互作用係数(0.413+0.364Vr)
ν:平均架橋密度[mol/cm3
(平均O/C原子比の測定)
本発明の電子写真用現像部材の表面近傍の平均O/C原子比は、X線光電子分光法により、以下の条件で測定した。
【0094】
試料は、同じくミクロトームを使用し、表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各々の領域から、100μm角、厚さ100nmの薄片を作製した。測定には以下の装置を用いて、各領域の酸素原子(O)と炭素原子(C)の平均原子%を求め、酸素原子(O)と炭素原子(C)の平均原子%比(平均O/C原子比)を算出した。
装置:ESCALAB 200−X型 X線光電子分光装置(商品名、VG社製)
X線源:Mg Kα(300W)
分析領域:2mm×3mm
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき詳細に説明する。下記の実施例は、本発明の最良な実施形態の一例であるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0096】
(実験1:実施例1−1〜1−5、比較例1−1〜1−3)
<大気圧プラズマ処理前の現像ローラの作製>
以下の手順により、円柱状の軸芯体の周囲に、被覆層として樹脂層と表面層をそれぞれ1層設けた現像ローラを作製した。なお、軸芯体として、直径6mm、長さ279mmのSUS304製の芯金表面にニッケルめっきを施したものを用いた。
【0097】
樹脂層の材料として、以下の要領で液状シリコーンゴムを準備した。まず、次の材料を混合し液状シリコーンゴムのベース材料とした。
・両末端にビニル基を有する温度25℃における粘度が100Pa・sのジメチルポリシロキサン:100質量部;
・充填剤として石英粉末(Pennsylvania Glass Sand社製、商品名:Min−USil):7質量部;
・カーボンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック、粉状品)8質量部。
【0098】
このベース材料に、硬化触媒として白金化合物を微量配合したものと、オルガノハイドロジェンポリシロキサン3質量部を配合したものを質量比1:1で混合し、液状シリコーンゴムとした。
【0099】
内径12mmの円筒型金型内の中心部に軸芯体を配置し、円筒型金型内に注入口からこの液状シリコーンゴムを注入し、温度120℃で5分間加熱硬化させ、室温まで冷却後、軸芯体と一体となった樹脂層を脱型した。さらに温度200℃で4時間加熱して硬化反応を完了させ、厚さ3mmのシリコーンゴムを主成分とする樹脂層を軸芯体の外周面上に設けた。
【0100】
表面層の材料として、次のものを用いた。
・ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG650SN、数平均分子量Mn=1000、f=2(fは官能基数を表す。以下同じ。);保土谷化学株式会社製):100.0質量部;
・イソシアネート(商品名:ミリオネートMT、MDI、f=2、日本ポリウレタン工業株式会社製):21.2質量部。
【0101】
これら材料をMEK溶媒中で段階的に混合して、窒素雰囲気下80度にて6時間反応させ、重量平均分子量Mw=10000、水酸基価20.0、分子量分散度Mw/Mn=2.9、Mz/Mw=2.5の2官能のポリウレタンプレポリマーを得た。MEKはメチルエチルケトンである。
【0102】
このポリウレタンプレポリマー100.0質量部にイソシアネート(商品名:コロネート2521、日本ポリウレタン工業株式会社製)35.0質量部を加えて、NCO当量を1.4となるようにした。さらに、カーボンブラック(商品名:#1000、pH3.0、三菱化学社製)を16.5質量部添加した。この原料混合液に有機溶剤を加え、20μm前後の膜厚が得られるように固形分20〜30質量%の範囲で適宜調整した。さらに、ウレタン樹脂粒子(商品名:C400透明、直径14μm、根上工業株式会社製)を20.0質量部加え、均一分散、混合したものを表面層の原料液とした。
【0103】
この表面層の原料液中に、上記の樹脂層を形成した軸芯体を浸漬して原料液の塗膜を形成した後、引上げて自然乾燥させた。次いで、温度140℃にて60分間の加熱処理を行い、表面層の原料液を硬化させて、20μm前後の膜厚のウレタン樹脂膜を得た。このときの外径は、約12mm、被覆層の長さ235mm、JIS B 0601:1994表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが、1.5μmであった。
【0104】
このとき、膨潤法により求めたウレタン樹脂膜の平均架橋密度は、4.4×10-4mol/cm3であった。また、X線光電子分光法により測定した平均O/C原子比は、0.40であった。
【0105】
<ピーク温度と平均架橋密度の関係式の算出>
前記手順において、表面層の原料液の塗膜を硬化させるための加熱処理の時間のみ変化させて、ウレタン樹脂膜の平均架橋密度を変化させた。その後、マイクロサンプリング質量分析法と膨潤法の両方を行い、マイクロサンプリング質量分析法から求まる熱クロマトグラムが最大値となるピーク温度と平均架橋密度の関係式を得た。
【0106】
表1に評価結果を示す。この評価結果から、以下のピーク温度と平均架橋密度の関係式が得られた。
(平均架橋密度)=0.5367×(ピーク温度)−210.11
本実験ではこの関係式を用いて、ピーク温度から平均架橋密度を求めた。
【0107】
【表1】

【0108】
<大気圧プラズマ処理>
次いで、図3に示したプラズマ処理装置により、前記手順に従い、以下の条件で処理を行い、本実験に係る現像ローラを得た。
【0109】
温度23℃、湿度50%RHに制御した室内に設置したプラズマ処理装置に、軸芯体上に樹脂層とウレタン樹脂膜とを積層してなる被処理物を、ウレタン樹脂膜の表面と電極との間隔が3mmとなるように配置した。チャンバー内の雰囲気を窒素78vol%の大気雰囲気とし、圧力を101000Paとした。次に、現像ローラを60rpmの回転数で回転駆動し、周波数35kHzの電力を、150Wの電力でDuty比100%で供給してプラズマ処理を行った。処理時間は3秒間とした。
【0110】
<評価方法>
本実験で作製した現像ローラを用い、前述の方法で、表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各々の領域について、平均架橋密度と平均O/C原子比の測定を行った。
【0111】
さらに、同じ条件で作製した別の現像ローラを用い、電子写真用画像形成装置で画像評価を行った。電子写真用画像形成装置には、Hewlett−Packard社製のColor Laser Jet3600(商品名)を用いた。プロセスカートリッジには専用のシアン用のものを用い、現像ローラのみを交換して以下の評価を行った。
【0112】
(かぶり評価)
本実験に係る現像ローラを組み込んだプロセスカートリッジを画像形成装置本体に搭載し、温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した。その後、同環境において、印字率が1%の画像を公称寿命よりも多い25000枚出力した。その後、同環境でベタ白画像を出力し、以下の方法でかぶり値を測定した。
【0113】
かぶり値は、反射濃度計TC−6DS/A(商品名、東京電色技術センター社製)を用いて、画像形成前の転写紙の反射濃度と、ベタ白画像形成後の転写紙の反射濃度を測定し、反射濃度の増加分を現像ローラのかぶり値とした。反射濃度は、転写紙の画像印刷領域の全域を測定し、最小値をその転写紙の反射濃度とした。かぶり値は小さいほど良好である。得られた結果を、以下の基準に基づき評価した。
「A」:1.0より小、
「B」:1.0以上かつ2.0より小、
「C」:3.0以上かつ5.0より小、
「D」:5.0以上。
ここで、評価「A」及び評価「B」は、目視では画像上に「かぶり」を認識できないレベルである。一方、評価「C」及び評価「D」は、目視で画像上に「かぶり」を明らかに認識できるレベルである。
【0114】
通常、ベタ白画像を形成した転写紙上には、現像剤はほとんど転写されておらず、かぶり値は2.0より小さい。しかしながら、表面に現像剤が固着した現像ローラでは、現像ローラ上の現像剤の帯電量が不足する。そのため、ベタ白画像の形成時にも、現像剤が感光体上に移動し、さらに転写紙上へ転写されてかぶりを生じる。従って、かぶり値を現像ローラに対する現像剤の固着の指標として用いることができる。
【0115】
(セット評価)
次に、同じく本実験に係るの現像ローラを組み込んだプロセスカートリッジを温度50℃、湿度95%RHの環境に20日間放置した。その後、プロセスカートリッジから現像ローラを取り出し、現像ブレード当接部の変形量を測定した。
【0116】
現像ローラの変形量は、現像ブレード当接部に形成された凹み形状の深さで規定し、レーザ変位センサ(LT−9500V(商品名)、キーエンス社製)を用いて測定した。現像ローラ表面に対して垂直方向にレーザ変位センサを設置し、現像ローラを回転駆動して現像ローラ表面の変位を読み取り、現像ブレード当接部の変形量を測定した。変形量は、長手方向に43mmピッチの5点で測定を行い、5点の平均値とした。
【0117】
その後、再度同じプロセスカートリッジに組み込み、温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した後、同環境で画像形成装置本体に搭載し、ハーフトーン画像を印字した。変形量が大きい場合には、現像ローラ上の現像ブレード当接部に対応する画像上に、横スジ状の画像弊害(以下、セットと言う)が形成される。変形量と画像弊害の間に、良い相関が見られることから、変形量をセットの指標とした。そして、変形量を以下の基準で評価した。
「A」変形量が4.0μmより小、
「B」変形量が4.0μm以上かつ5.0μmより小、
「C」変形量が6.0μm以上かつ7.0μmより小、
「D」変形量が7.0μm以上。
ここで、評価「A」及び評価「B」は、目視では画像上にセットを認識できないレベルである。一方、評価「C」及び評価「D」は、目視で画像上にセットを明らかに認識できるレベルである。
【0118】
前記手順に従い、大気圧プラズマ処理の条件を振って、実施例1−1〜1−5、比較例1−1〜1−3に係る現像ローラを作製し、評価した。大気圧プラズマ処理の条件は、表2に示すように、チャンバー内の雰囲気の窒素濃度(N2量)、供給電力、処理時間、パルス変調の有無及びDuty比を変更した。表2において、パルス変調をしない場合はDuty比を100%と表記した。
【0119】
得られた現像ローラの表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各領域の平均架橋密度C1、C2、C3[mol/cm3]を表2に示す。同じく各領域の平均O/C原子比O1、O2、O3、及びMD−1硬度を表2に示す。また、得られた現像ローラのかぶり値及びセットの評価結果を、表2に合わせて示す。
【0120】
(実験2:実施例2−1〜2−2、比較例2−1〜2−2)
表面層の原料液の塗膜を硬化させるための加熱処理時間のみを変化させて、ウレタン樹脂膜の平均架橋密度を実験例1とは異ならせた。具体的には、加熱処理時間を30分、45分、120分、180分に変更し、それ以外は同じ条件とした。このとき、大気圧プラズマ処理前に膨潤法により求めた表面層の原料液の塗膜の硬化膜の平均架橋密度は、それぞれ1.5×10-4mol/cm3、2.0×10-4mol/cm3、7.0×10-4mol/cm3、7.4×10-4mol/cm3であった。また、X線光電子分光法により測定した平均O/C原子比は、いずれも0.40であった。
【0121】
その後、表2に示す条件で大気圧プラズマ処理を行って現像ローラを作製し、評価を行った。このときの処理条件と、得られた現像ローラについての評価結果を、表2に合わせて示す。
【0122】
(実験3:実施例3−1〜3−5、比較例3−1〜3−2)
ウレタン膜の原料として、ポリウレタンポリオールプレポリマーと混合するイソシアネートを変更して、平均O/C原子比が実験1とは異なるウレタン樹脂膜を作製した。具体的には、ポリウレタンポリオールプレポリマー100.0質量部とイソシアネート(商品名:タケネートB830;三井武田ケミカル株式会社製)7.2質量部を加えて、NCO当量を1.2となるようにした。それ以外は実験1と同様にしてプラズマ処理に供する被処理物を製造した。なお、上記のイソシアネートは、TMP変性TDIであり、f(平均官能基数)=3相当である。さらに、大気圧プラズマ処理前に膨潤法により求めた、本実験に係るウレタン樹脂膜の平均架橋密度は、6.0×10-4mol/cm3であり、X線光電子分光法により測定した平均O/C原子比は、0.30であった。
【0123】
その後、大気圧プラズマ処理の条件を振って現像ローラを作製し、評価を行った。このときの処理条件と、得られた現像ローラについての評価結果を表2に合わせて示す。
【0124】
【表2】

【0125】
表2の結果より、実験1において、C1、C2、C3、及びO1、O2、O3が、条件(1)〜(5)の関係を満たす実施例1−1〜1−5において、良好な画像形成を行うことができた。さらに、条件(6)及び(7)の関係も満たす実施例1−2〜1−4において、より一層良好な画像形成を行うことができた。
【0126】
また、実験2において、C1、C2、C3、及びO1、O2、O3が、条件(1)〜(5)の関係を満たす実施例2−1及び2−2において、良好な画像形成を行うことができた。
【0127】
また、実験3において、C1、C2、C3、及びO1、O2、O3が、条件(1)〜(5)の関係を満たす実施例3−1〜3−5において、良好な画像形成を行うことができた。さらに、条件(6)及び(7)の関係も満たす実施例3−2〜3−4において、より一層良好な画像形成を行うことができた。
【0128】
(実験4:実施例4−1〜4−5)
樹脂層の材料の液状シリコーンゴムに配合する石英粉末の質量部数、及びウレタン樹脂膜の膜厚を変更し、さらに実施例1−2と同条件で大気圧プラズマ処理を行って、MD−1硬度の異なる現像ローラを作製した。このときの製造条件と、得られた現像ローラについての評価結果を表3に合わせて示す。
【0129】
【表3】

【0130】
表3の結果より、現像ローラのMD−1硬度を25.0°以上40.0°以下の範囲とした実施例4−2から4−4において、より一層良好な画像形成を行うことができた。
【0131】
(実験5:実施例5−1〜5−9)
実験1にて作成した被処理物に対する大気圧プラズマ処理の条件を下記表5に示す様に変更して現像ローラを作製し、評価を行った。プラズマ処理条件は、表4に示すように、チャンバー内の雰囲気の窒素濃度(N2量)及びパルス変調のDuty比を変更した。
【0132】
さらに、本実験では、大気圧プラズマ処理後の外観の評価を合わせて実施した。大気圧プラズマ処理をする際に、処理時間を短縮するために電力を増加した場合、処理後に微小なスパーク痕が生じる場合があった。そこで、外観の評価として、比較的電力を高めた場合のスパーク痕の有無と画像弊害の有無を以下の基準で評価した。
「A」スパーク痕が存在せず画像弊害が存在しない、
「B」スパーク痕が存在するが画像弊害がない、
「C」スパーク痕が存在し画像弊害が確認できた。
【0133】
このときの処理条件と、得られた現像ローラについての評価結果を表4に合わせて示す。
【0134】
【表4】

【0135】
表4の結果より、大気圧プラズマ処理を窒素95vol%以上の雰囲気下で行った実施例5−3及び5−4において、より良好な画像形成を行うことができた。また、大気圧プラズマを、パルス幅変調方式により50%以上80%以下のduty比にパルス変調した高周波電力を供給して形成した実施例5−6から5−8において、より良好な画像形成を行うことができた。
【符号の説明】
【0136】
10 電子写真用現像部材
11 軸芯体
12 樹脂層
13 表面層
30 プラズマ処理装置
31 チャンバー
310 被処理物
32 プラズマ電極
33 高周波電源
34 ガス導入口
35 ガス排気口
36 支持部
37 回転駆動部
38 パージ口
39 パルスジェネレーター
40 プラズマ
500 電子写真用画像形成装置
501 感光ドラム
502 帯電ローラ
503 露光
504 現像ローラ
505 現像剤
506 給紙ローラ
507 記録材
508 転写ローラ
509 定着ローラ
510 加圧ローラ
511 クリーニング部
512 廃現像剤容器
513 現像剤供給ローラ
514 現像剤貯槽
515 現像ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に設けられた、ウレタン樹脂を含有する表面層とを有する電子写真用現像部材において、
該表面層の表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各領域の平均架橋密度をそれぞれC1、C2、C3[mol/cm3]としたときに、
下記式(1)乃至(3)の関係を満たしていることを特徴とする電子写真用現像部材:
(1)C3<C2<C1;
(2)C3×1.3≦C1≦C3×5.0;
(3)2.0×10-4≦C3≦7.0×10-4
【請求項2】
前記電子写真用現像部材において、該表面層の表面から深さ100nmまで、深さ100nmから200nmまで、深さ200nmから300nmまでの各領域について、
X線光電子分光法により測定した酸素原子(O)と炭素原子(C)の平均原子%比(平均O/C原子比)をそれぞれO1、O2、O3としたときに、
下記式(4)及び(5)の関係を満たしている請求項1に記載の電子写真用現像部材:
(4)O3×0.8≦O1≦O3×1.1;
(5)0.27≦O1≦0.44。
【請求項3】
さらに下記式(6)及び(7)の関係を満たしている請求項1または2に記載の電子写真用現像部材:
(6)C3×1.5≦C1≦C3×3.0;
(7)O1≦O2≦O3。
【請求項4】
該軸芯体の周囲に、樹脂層と該表面層とをこの順に有している請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真用現像部材。
【請求項5】
前記電子写真用現像部材のMD−1硬度が、25.0°以上40.0°以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真用現像部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真用現像部材の製造方法であって、該表面層の原料液の塗膜の硬化膜を大気圧の下でプラズマ処理する工程を有することを特徴とする電子写真用現像部材の製造方法。
【請求項7】
前記プラズマ処理を、窒素95vol%以上の雰囲気下で行う請求項6に記載の電子写真用現像部材の製造方法。
【請求項8】
前記プラズマ処理で使用するプラズマを、パルス幅変調方式により50%以上80%以下のduty比にパルス変調した高周波電力を供給して形成する請求項6または7に記載の電子写真用現像部材の製造方法。
【請求項9】
少なくとも、静電潜像を形成するための感光体と、電子写真用現像部材とを具備し、電子写真用画像形成装置の本体に着脱可能に構成された電子写真用プロセスカートリッジにおいて、該電子写真用現像部材が、請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真用現像部材であることを特徴とする電子写真用プロセスカートリッジ。
【請求項10】
少なくとも、静電潜像を形成するための感光体と、電子写真用現像部材とを具備する電子写真用画像形成装置において、該電子写真用現像部材が、請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真用現像部材であることを特徴とする電子写真用画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−211063(P2009−211063A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24934(P2009−24934)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【特許番号】特許第4311760号(P4311760)
【特許公報発行日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】