説明

電子写真画像形成装置

【課題】 引き出し構成の電子写真画像形成装置の小型化と、感光体とベルトの摺擦防止。
【解決手段】 感光体を支持している引き出しを引く際に、引き出しの移動に沿ってベルトを回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真技術を用いた画像形成装置に基づいたものである。
【背景技術】
【0002】
(インラインカラー)
電子写真技術を用いて複数色またはフルカラーの画像を形成するための電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置)の一方式として、複数の画像形成ステーションを略一列に並べた、インライン方式やタンデム方式と称される画像形成装置が知られている。
【0003】
この様な画像形成装置において、各画像形成ステーションはそれぞれ異なる色(例えば、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)の画像形成を担い、各画像ステーションで形成された単色画を重畳した複色画を記録材に転写・定着することで画像を形成する。
【0004】
各画像形成ステーションは各々、像担持体(以下、感光ドラム)、現像剤供給手段、現像手段、帯電手段、クリーニング手段、露光手段、転写手段などのプロセス手段で構成されているが、これらのプロセス手段の一部をユーザーが交換可能なカートリッジとして装置のメンテナンス性を向上させたものが知られている。例えば、現像剤を内包した現像装置を現像カートリッジとして交換可能とした構成や、感光ドラムと現像剤供給手段と現像手段と帯電手段とクリーニング手段を着脱可能なプロセスカートリッジとした構成が広く知られている。
【0005】
(転写)
各単色画を記録材に転写する手段としては、エンドレス状(無端状)ベルト形状に形成された中間転写体を用いた構成が知られている。この様な装置では、順次、各単色画像を該中間転写体に一次転写し、該中間転写体上に重畳された複色画を記録材に二次転写する。
【0006】
また、各単色画を記録材に転写する別の手段として、エンドレス状(無端状)ベルト形状に形成された記録材搬送部材を用いた構成が知られている。この様な装置では、記録材を記録材搬送部材にて順次各画像形成ステーションに搬送して直接記録材上に画像が転写・重畳される。
【0007】
以下、中間転写体と記録材搬送部材とを含めて、エンドレス状ベルトと呼ぶ。
【0008】
(引き出し)
上記の様な画像形成装置において、装置のメンテ性を向上するために、画像形成装置に、前記装置本体の内側に位置する内側位置と前記装置本体の外側に位置する外側位置との間を移動可能な支持部材(以下、引き出しと言う)を配置し、該引き出しに各画像ステーションを配置した構成(以下、引き出し構成と言う)が知られている。装置のメンテナンスを行う際、ユーザーは引き出しを引き出す。
【0009】
前述のような画像形成装置において、感光ドラムやエンドレス状ベルト(特に中間転写体)に傷が付くと画像不良の原因となる恐れがある。このため、引き出し構成を用いた画像形成装置では感光ドラムやエンドレス状ベルトの傷を防止することを目的に、感光体をエンドレス状ベルトから離間してから引き出しを引き出す構成(例えば特許文献1)や、引き出し部材の引き出し方向を、感光体をエンドレス状ベルトから離間する方向に対して斜めに設定した構成(例えば特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開2003−015378
【特許文献2】特開2006−184554
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、感光体をエンドレス状ベルトから離間してから引き出しを引き出す構成(例えば特許文献1)においては、感光体をエンドレス状ベルトから離間する方向と引き出し方向が略直角になるため、操作性が犠牲になるなどの問題があった。また、感光体をエンドレス状ベルトから離間するために離間方向には露光装置等が配置されるが、前記離間を行うためには予め引き出し部材と露光装置との間に空間を設ける必要があり、装置小型化の妨げになっていた。
【0011】
また、引き出し部材の引き出し方向を感光体をエンドレス状ベルトから離間する方向に対して斜めに設定した構成(例えば特許文献2)においては、引き出し部材の操作方向を直線状に設定することで操作性は向上されているものの、直線状の操作を実現するために更に大きな空間を必要とし、装置小型化の妨げになっていた。
【0012】
本発明の主たる目的は、電子写真感光体を支持する支持部材が、エンドレス状ベルトを有する装置本体に対してスライド可能な画像形成装置において、装置の小型化を実現すると共に電子写真感光体とエンドレス状ベルトの摺擦を抑制できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係わる主たる発明は、
複数の電子写真感光体に形成されたトナー像を記録媒体に転写させるためのエンドレス状のベルトを内側に有する電子写真画像形成装置において、
前記複数の電子写真感光体を支持し前記装置本体の内側に位置する内側位置と前記装置本体の外側に位置する外側位置との間を前記複数の電子写真感光体の配列方向に沿ってスライド可能な支持部材と、
前記複数の電子写真感光体の少なくとも一つが前記ベルトに接触した状態で前記支持部材が前記内側位置と前記外側位置との間でスライドする際に、前記ベルトが前記支持部材の移動に伴って回転する力を前記ベルトに付与することを特徴とする電子写真画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子写真感光体を支持する支持部材が、エンドレス状ベルトを有する装置本体に対してスライド可能な画像形成装置において、装置の小型化を実現すると共に電子写真感光体とエンドレス状ベルトの摺擦を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態を図1から図7に基づいて説明する。
【0016】
図1はプロセスカートリッジを装着した状態の電子写真画像形成装置の断面図、図2はプロセスカートリッジの側面図、図3はプロセスカートリッジの断面図、図4は引き出し機構を示す電子写真画像形成装置の部分断面図、図5は転写装置の駆動機構を示す長手部分断面図、図6及び図7は引き出し機構の動作を示すための電子写真画像形成装置の部分断面図である。
【0017】
(全体構成)
本実施形態に係わる画像形成装置は、電子写真画像形成装置の装置本体100と、装置本体100に対して移動可能な支持部材としての引き出し部材60、引き出し部材60に対して着脱自在なプロセスカートリッジ50(50y、50m、50c、50k)とで構成される。装置本体100は、記録紙カセット10、給紙ローラ11、露光装置3、転写装置5、定着器12、排紙ローラ13、排紙トレイ14、開閉ドア15とを有する。引き出し部材60は、装置本体100の内側に位置する内側位置と、装置本体100の外側に位置する外側位置とをスライド可能に装置本体100に支持されている。
【0018】
プロセスカートリッジ50(50y、50m、50c、50k)はそれぞれが、像担持体である電子写真感光体ドラム1(以下「感光体ドラム」と称す)、帯電装置2、現像装置4、クリーニング装置6とを備える。尚、各現像装置4y、4m、4c、4kは、現像剤であるトナーTを内包するが、現像装置4yはイエローのトナーを、現像装置4mはマゼンダのトナーを、現像装置4cはシアンのトナーを、現像装置4kは黒のトナーと、各々異なる色のトナーTを内包している。
【0019】
装置本体100には駆動モータ(不図示)が配置され、画像形成時には不図示のカートリッジ駆動カプリングによって、プロセスカートリッジ50に駆動力を伝達可能に構成されている。尚、該カートリッジ駆動カプリングは、開閉ドア閉鎖時にはプロセスカートリッジ50と係合し、開閉ドア解放時には解除される。
【0020】
(画像形成プロセスの概略)
画像形成に際して感光体ドラム1は図1において反時計回りに回転駆動されるが、図1記載の状態において、感光体ドラム1の周囲には感光体ドラム1の回転方向に沿って帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6の順で配置される。
【0021】
画像形成に際して回転駆動された感光体ドラム1は、先ず帯電装置2にて一様均一に帯電される。続いて、露光装置3が画像情報に基づいて選択的な露光を行うことで感光体ドラム1外周面には静電潜像が形成される。続いて、前記静電潜像は現像装置4にて現像剤であるトナーTでトナー像として顕画化される。ここで、プロセスカートリッジ50yではイエローのトナー像、プロセスカートリッジ50mではマゼンダのトナー像、プロセスカートリッジ50cではシアンのトナー像、プロセスカートリッジ50kでは黒のトナー像が形成されるが、全てのトナー像は転写装置5の転写ベルト5a上で重畳される。
【0022】
ここで、記録カセット10からは記録紙が、給紙ローラ11によってタイミング供給され、転写ベルト5aと二次転写ローラ5bの間に供給される。転写ベルト5a上に形成された前記トナー像は転写ベルト5aと二次転写ローラ5bとのニップ部にて記録紙に二次転写される。記録紙は更に、定着器12に搬送され、該定着器12にてトナー像は記録紙に加圧・加熱定着され、最後に排紙ローラ13によって排紙トレイ14に排出される。
【0023】
一方、トナー像を転写装置5の転写ベルト5aに転写した感光ドラム1はクリーニング装置6に搬送される。クリーニング装置6では転写後に感光体ドラム1表面に残った残トナーが除去され、感光体ドラム1は再び帯電から始まる作像に供される。
【0024】
(転写装置)
転写装置5は、エンドレス状のベルトとしての転写ベルト5a、二次転写ローラ5bに加えて第一懸架ローラ70、第二懸架ローラ71、テンションローラ72、一次転写ローラ73(73y、73m、73c、73k)を有する。第一懸架ローラ70は第一懸架ローラ軸70aとゴム層70bとで構成される。第一懸架ローラ軸70aの両端部にはいわゆるDカット形状のDカット形状70cが施されている。
【0025】
転写ベルト5aは、第一懸架ローラと第二懸架ローラとの間が略平面となる一次転写面5tを形成するように懸架され、該一次転写面側にて各感光ドラム1(1y、1m、1c、1k)と接触する。
【0026】
第一懸架ローラ軸70aの一端側(図1奥側、図5右側)には駆動伝達クラッチ機構200、他端側(図1手前側、図5左側)にはトレイ連結クラッチ機構201が配置されている。駆動伝達クラッチ機構200とトレイ連結クラッチ機構201は各々、転写ギア80(駆動伝達側転写ギア80X、トレイ連結側ギア80Y)、クラッチコーン81、リング82(駆動伝達側リング82X、トレイ連結側リング82Y)、クラッチバネ83、ストッパリング84とで構成される。
【0027】
転写ギア80には、ギア面80gと円錐形状の凹クラッチ面80aとが形成されている。転写ギア80は、不図示の規制部材によって軸線方向の位置は固定されているが第一懸架ローラ軸70aに対して回転自在に保持されている。
【0028】
また、駆動伝達クラッチ機構200の駆動伝達側転写ギア82Xは不図示のギア列と契合しており、画像形成時にはモータから駆動力が伝達される。トレイ連結クラッチ機構201のトレイ連結側ギア82Yは後述する引き出しラック形状60aに係合している。ここで、トレイ連結クラッチ機構201のトレイ連結側ギア80Yはそのギア部のピッチ円半径が、第一懸架ローラ70のゴム層70b半径に転写ベルト5aの厚みを足した値と略等価になるように設定されている。
【0029】
クラッチコーン81は、軸部81aと、該軸部の一端側に形成されたコーン部81bとを有する。コーン部81bは、軸部81a側に形成され軸部81aに直行したバネ当接面81cと、軸部81aと反対側に形成された軸部81aと同軸の円錐状の凸クラッチ面81dからなり、更に、第一懸架ローラ軸70aが挿入可能な貫通穴81eが軸部81aと同軸に穿孔されている。クラッチコーン81の軸部81aには、順にクラッチバネ83、リング82、ストッパリング84とが組み込まれている。リング82は軸部81aに対してスライド自在であり、クラッチバネ83はバネ当接面81cとリング82との間に配置されている。ストッパリング84は、軸部81aより外形が大きく、かつ、中心部には第一懸架ローラ軸70aのDカット形状70cに係合可能なDカット穴形状84aが穿孔されている。軸部81aの他端側にて、クラッチコーン81の貫通穴81eとストッパリング84のDカット穴形状84aが同軸となるようにクラッチコーン81に一体的に固定され、クラッチバネ83およびリング82の抜け防止形状として機能する。クラッチコーン81は、クラッチバネ83、リング82、ストッパリング84とが組み付けられた状態で、第一懸架ローラ軸70aに、凸クラッチ面81bが凹クラッチ面80aに対向し、かつDカット穴部がDカット形状70cに系合するように組み込まれ、回転方向は第一懸架ローラ軸70aと一体的に回転するが、軸線方向にはスライド可能となっている。
【0030】
リング82(駆動伝達側リング82Xとトレイ連結側リング82Y)の第一懸架ローラ軸70a軸線方向の位置は、不図示の機構によって、開閉ドア15が閉鎖状態のときには図5(a)の位置に規制され、開閉ドア15が解放状態のときには図5(b)の位置に規制される。
【0031】
すなわち、開閉ドア15が閉鎖された状態においては図5(a)記載の様に、駆動伝達クラッチ機構200側ではクラッチバネ83が圧縮されてクラッチコーン81の凸クラッチ面81bが駆動伝達側転写ギア80Xの凹クラッチ面80aと圧接する位置に駆動伝達側リング82Xが規制されるとともに、トレイ連結クラッチ機構201側ではクラッチコーン81の凸クラッチ面81bがトレイ連結側転写ギア80Yの凹クラッチ面80aから完全に分離する位置にトレイ連結側リング82Yが規制される。一方、開閉ドア15が解放状態にあるときには図5(b)記載の様に、駆動伝達クラッチ機構200ではクラッチコーン81の凸クラッチ面81bが駆動伝達側転写ギア80Xの凹クラッチ面80aから完全に分離する位置に82Xが規制されるとともに、トレイ連結クラッチ機構201側ではクラッチバネ83が圧縮されてクラッチコーン81の凸クラッチ面81bがトレイ連結側転写ギア80Yの凹クラッチ面80aと圧接する位置にトレイ連結側リング82Yが規制される。
【0032】
すなわち第一懸架ローラ70は、開閉ドア閉鎖時にはギア列を経てモータと連結されて画像形成の際には第一懸架ローラ70が転写ベルト5aを駆動し、前述の画像形成プロセスが行われる。一方、第一懸架ローラ70は、開閉ドア解放時には引き出しラック60aと連結される。
【0033】
(引き出し機構)
引き出し部材60は、前述のように本体の内側に位置する内側位置と前記装置本体の外側に位置する外側位置とを移動可能に保持されているが、より具体的には、転写ベルト5aの一次転写面5tと略平行かつ略直線状に引き出し可能となっており、引き出し部材60を転写ベルト5aから離間するための空間が不要となっている。
【0034】
ユーザーが引き出し部材60を操作すると、感光ドラム1が転写ベルト5aと接触状態を保ったまま移動するが、前述のように引き出しラック形状60aはトレイ連結側転写ギア80Xと噛み合うととも、該トレイ連結側転写ギア80Xのピッチ円半径が第一懸架ローラ70のゴム層70b半径に転写ベルト5aの厚みを足した値と略等価になるように設定されているため、引き出し部材60の操作に伴って転写ベルト5aは引き出し部材60すなわち各感光ドラム1の移動速度と略等速で駆動される。このため、転写ベルト5a表面と各感光ドラム1との相対的な位置関係はほぼ維持され、転写ベルト5aと各感光ドラム1の摺擦は最小限に抑えられる。
【0035】
以上説明したように本実施例の画像形成装置は、複数の感光ドラム1に形成されたトナー像を記録媒体に転写させるための転写ベルト5aを内側に有する装置本体と、前記複数の感光ドラム1を支持し前記装置本体の内側に位置する内側位置と前記装置本体の外側に位置する外側位置との間を前記複数の感光体の配列方向に沿ってスライド可能な引き出し部材60とを有する前記画像形成装置に於いて、前記引き出し部材60が前記内側位置と前記外側位置との間でスライドする際に前記転写ベルト5aが前記引き出し部材60の移動方向に沿って回転する力を前記転写ベルト5aに付与する機構を提供するもので、前記構成によって、前記転写ベルト5aと前記複数の感光ドラム1のいずれかが接触した状態で前記引き出し部材60をスライドしても転写ベルト5a・感光ドラム1間の摺擦を最小限に留めつつ、前記複数の感光ドラム1を前記転写ベルト5aから離間するために前記引き出し部材60を前記離間方向に移動可能とするための空間を不要とし、前記画像形成装置の小型を可能としている。また、前記構成によって前記引き出し部材60の操作方向が略直線状になる故に、前記引き出し部材60の操作性向上も実現している。
【0036】
更に、実施例では引き出し部材60操作のために開閉ドア15を解放した段階でモータと転写ベルト5aとの駆動経路を遮断することで、モータの保持トルクによって引き出し部材60操作感が不要に重くなるのも防止している。
【0037】
尚、実施例ではクラッチ機構として円錐状の凸クラッチ面81dと凹クラッチ面80aとを接続・離間させるいわゆるコーンクラッチ機構を説明したが、より確実に滑りを防止するために凸クラッチ面81dと凹クラッチ面80aの一方または両方にゴム層を設けるなどしても良い。またクラッチ機構は、実施例で説明したいわゆるコーンクラッチ機構に限定されるものではなく、平板クラッチやドッグクラッチ等の他のクラッチ機構でも良い。また、駆動系列の切り替え手段としてクラッチ機構を説明しているが、本発明はこれに限定されるものでなく、クラッチ機構の替わりに、揺動歯車を用いるなどしても良い。
【0038】
更に、実施例では中間転写ベルトとしての転写ベルト5aを用いた構成を説明しているが、本発明の機構を転写ベルト5aの替わりに、記録材を各画像形成ステーションに搬送するベルト状の記録材搬送部材を用いた構成に用いることも可能である。
【0039】
また、実施例ではユーザーが引き出し部材60を操作する形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、駆動モータで引き出し部材60を駆動する構成としてもよい。例えば、図8記載のように駆動伝達クラッチ機構200の替わりに第一懸架ローラ軸70aと一体的に回転する転写駆動ギア202を配置、第一懸架ローラ軸70aの他端側は実施例同様のトレイ連結クラッチ201を配置、開閉ドア閉鎖時には図8(a)記載のようにトレイ連結クラッチ201が解除、開閉ドア解放時には図8(b)記載のように連結クラッチ201を連結する構成とした上で、ユーザーの操作パネル(不図示)操作に従ってモータを所定量駆動させても良い。
【0040】
(第二実施形態)
以下、本発明に第二の実施形態を図9に基づいて説明する。
【0041】
図9(a)は開閉ドア15を閉鎖した状態の電子写真画像形成装置の部分断面図、9(b) は開閉ドア15を解放した状態の電子写真画像形成装置の部分断面図、9(c)は開閉ドア15を閉鎖した際の転写装置の長手部分断面図、9(d)は開閉ドア15を解放した際の転写装置の長手部分断面図である。
【0042】
(全体構成)
本実施形態に係わる電子写真画像形成装置も、第一実施形態同様に、前記装置本体の内側に位置する内側位置と前記装置本体の外側に位置する外側位置とをスライド可能に保持されかつプロセスカートリッジ50(50y、50m、50c、50k)を保持する引き出し部材60と、転写ベルト5aと二次転写ローラ5bと第一懸架ローラ70と第二懸架ローラ71とテンションローラ72と一次転写ローラ73(73y、73m、73c、73k)で構成される転写装置5とを有する。また、第一懸架ローラ70は第一懸架ローラ軸70aとゴム層70bとで構成される。
【0043】
また、第一懸架ローラ軸70aの一端側(図9(a)と図9(b)の奥側、図9(c)と図9(d)の右側)には、第一実施形態同様の駆動機構が設けられ、画像形成に際してはモータから駆動力を伝達可能に構成されている(不図示)。
【0044】
(引き出し構成)
第一懸架ローラ70の他端側にはDカット形状70cが施され、該Dカット形状70cには連結ギア90が取り付けられており、第一懸架ローラ70と連結ギア90は一体的に回転する。なお、連結ギア90のピッチ円半径は、第一懸架ローラ70のゴム層70b半径に転写ベルト5aの厚みを足した値と略等価になるように設定されている。
【0045】
引き出し部材60の他端側にはラック回転軸63と回転規制ピン64が一体的に設けられており、ラック部材61が取り付けられている。ラック部材61はラック形状61a、分離ピン61b、回転規制穴61c、回動穴61dを有する。ラック部材61の回動穴61dは回転軸63と係合、ラック部材61の回転規制穴61cは回転規制ピン64と契合している。ラック部材61は、不図示の付勢部材によって図9記載時計回りに付勢されている。ここで、ラック部材61が図9記載時計回りに回転した際には、ラック部材61のラック形状61aが連結ギア90と噛み合うように設定されている。
【0046】
開閉ドア15には、ウェッジ15aが設けられている。ウェッジ15aは、開閉ドア15閉鎖時にはラック部材61の分離ピン15aと係合しラック部材61を図9記載反時計回りに回動させる。この際に、ラック形状61aと連結ギア90とは完全に分離するように設定されている。
【0047】
開閉ドア15を閉鎖し画像形成を行う際には、第一懸架ローラ70はモータによって回転駆動され、その際に連結ギア90も回転するが、ラック形状61aと連結ギア90は完全に分離しているため連結ギア90は空転する(図9(a)、図9(c))。一方、開閉ドア15を解放した際にはラック形状61aと連結ギア90とが係合するため、ユーザーが引き出し部材60を操作した際には、ラック形状61aが連結ギア90を駆動し、転写ベルト5aは第一実施形態同様に駆動される。
【0048】
まとめると、支持部材(引き出し)をスライドした際にエンドレス状ベルトが前記支持部材(引き出し)の移動に伴って回転する力を前記ベルトに付与する構成を提供することで、前記支持部材(引き出し)をスライドさせた際の該支持部材(引き出し)と前記ベルトとの相対速度差を削減あるいは略等速とする構成を提供しており、該相対速度差を削減あるいは略等速とすることで、感光体・ベルトが接触した状態で支持部材(引き出し)をスライドしても感光体とベルトとの摺擦を軽減・防止可能としている。このため、傷つき防止のための感光体・ベルト離間が不要であり、前記離間のための空間を確保する必要がなく装置の小型化を実現可能としている。また、支持部材の操作方向が略直線状となるため、引き出しの操作性向上も実現している。
【0049】
また、前述の実施例1、2においては、引き出し60に対してプロセスカートリッジ50が取り外し可能に装着される構成に基づいて説明したが、引き出し60が感光体ドラム1を直接支持して、現像装置4からなる現像カートリッジを取り外し可能に支持する構成でもよい。また、感光体ドラム1を有する感光体カートリッジと前記現像カートリッジとがそれぞれ引き出し60に取り外し可能に装着される構成であっても良い。
【0050】
また、前述の実施例1、2においては、エンドレス状のベルトとして中間転写体を用いて説明したが、前述したように記録材搬送部材を用いた構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】プロセスカートリッジを装着した状態の電子写真画像形成装置の断面図
【図2】プロセスカートリッジの側面図
【図3】プロセスカートリッジの断面図
【図4】第一実施形態記載電子写真画像形成装置の部分断面図とその部分拡大図
【図5】第一実施形態記載転写装置の長手部分断面図
【図6】第一実施形態記載電子写真画像形成装置の部分断面図
【図7】第一実施形態記載電子写真画像形成装置の部分断面図
【図8】他の実施形態を示す転写装置の長手部分断面図
【図9】第二実施形態記載電子写真画像形成装置の部分断面図と転写装置の長手部分断面図
【符号の説明】
【0052】
1 電子写真感光体ドラム
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
5a 転写ベルト
5b 二次転写ローラ
5t 一次転写面
6 クリーニング装置
10 記録紙カセット
11 給紙ローラ
12 定着器
13 排紙ローラ
14 排紙トレイ
15 開閉ドア
50 プロセスカートリッジ
60 引き出し部材
60a 引き出しラック形状
70 第一懸架ローラ
70a 第一懸架ローラ軸
70b ゴム層
70c Dカット形状
71 第二懸架ローラ
72 テンションローラ
73 一次転写ローラ
80 転写ギア
81 クラッチコーン
81a 軸部
81b コーン部
81c バネ当接面
81d 凸クラッチ面
81e 貫通
82 リング
83 クラッチバネ
84 ストッパリング
84a Dカット穴形状
100 電子写真画像形成装置
200 駆動伝達クラッチ機構
201 トレイ連結クラッチ機構
T トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子写真感光体に形成されたトナー像を記録媒体に転写させるためのエンドレス状のベルトを内側に有する装置本体と、
前記複数の電子写真感光体を支持し、前記装置本体の内側に位置する内側位置と、前記装置本体の外側に位置する外側位置と、の間を前記複数の電子写真感光体の配列方向に沿ってスライド可能な支持部材と、
を有し、
前記複数の電子写真感光体の少なくとも一つが前記ベルトに接触した状態で前記支持部材が前記内側位置と前記外側位置との間でスライドする際に、前記ベルトが前記支持部材の移動方向に沿って回転する力を前記ベルトに付与することを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−175621(P2010−175621A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15416(P2009−15416)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】