説明

電子写真装置

【課題】 トナー濃度の検知を長期間にわたり、高精度、かつ高安定に行うことができる電子写真装置であって、トナー濃度の検知を、高い頻度で、長期間にわたり、白スジ、黒スジなどの画像欠陥無く、行うことができる電子写真装置を提供する。
【解決手段】 トナー濃度検知手段から得られたトナー濃度の情報によりトナ−補給量及び/または、画像濃度を制御する画像濃度制御手段を有する電子写真装置において、該トナ−濃度検知手段は、現像行程後における電子写真感光体上のトナー濃度を検知するためのものであり、下記式で定義される分光相対感度が、5%以下とする。
B/A [1]
(式中、Aは電子写真装置内の像露光波長における感光体の分光感度、Bは電子写真装置内のトナ−濃度検知手段に用いているセンサの光源から感光体に投射される波長における感光体の分光感度)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンタおよびファックスなどの電子写真装置、および該電子写真装置に用いるプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の電子写真装置の画像濃度安定化の方法として、以下のような方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0003】
例えば、画像処理を調整する(画像制御)ことにより、画像濃度を安定化する方法が知られている。具体的には、画像形成装置を起動してそのウォームアップ動作の終了後や出力動作中に、特定パターン(パッチ画像)を感光ドラム等の像担持体(以下、感光体ともいう)上に形成し、その形成されたパターンの濃度を読み取り、その読み取った濃度値に基づいてγ補正(露光後ドラム表面電位とドラム上に形成されるトナーの濃度の関係からγ曲線を導き、実画像上の適正な色階調度に合わせ込むために行う補正)回路等の画像形成条件を決定する回路の動作を変更することにより、形成される画像の品質を安定させる方法がある。
【0004】
また、電子写真装置が長期に亘って使用された場合、像担持体上のパターンを読み取った濃度と実際にプリントアウトされた画像の濃度が一致しなくなるケースが生じてくる。そのため、記録材上に特定パターンを形成し、その濃度値によって画像形成条件を補正する方法も知られている。
【0005】
さらにまた、現像装置内のトナー濃度を調整する方法としては、現像剤からの反射光量を検知して制御する方式(現像剤反射ATR)によりトナー補給を行う方法が知られている。具体的には、像担持体上の特定パターン(パッチ画像)の濃度差の出力信号からパッチ画像濃度を初期濃度に戻すのに必要なトナー過不足量を演算し、そのトナー補給量を現像剤反射ATRに設定した目標値に加減算して補正し、該補正されたトナー補給量を補給することにより画像濃度を安定化させる方法が知られている。
【0006】
上記した、特定パターン(パッチ画像)を感光ドラム等の像担持体上に形成し、その形成されたパターンの濃度を読み取るセンサとしては、2種類ある。1つは、主に、トナー濃度制御用に用いられる散乱型光学濃度センサであり、もう1つは、主に、γLUT補正用に用いられる正反射型光学濃度センサである。
【0007】
散乱型光学濃度センサは、トナーおよび像担持体からの散乱光の光量の増減によってパッチ濃度を検出するタイプのセンサであり、カラーの画像形成装置の場合、投射光に対する反射率が色トナー・感光ドラム・黒トナーの順に高いため、感光ドラム上の色トナー量が増加すればセンサ出力が上がり、黒トナー量が増加すればセンサ出力が下がることによって濃度を検知する。散乱光の増減で濃度を判断するセンサであれば、センサ受光部に正反射光が入ってくる構成であっても散乱型光学濃度光センサということができる。
【0008】
一方、正反射型光学濃度センサは、像担持体からの正反射光の光量の増減によってパッチ濃度を検出するタイプのセンサであり、鏡面状の感光ドラムに投射光を散乱させるトナーが載ることによって、センサ出力が低下し、パッチ濃度を検出する。正反射光の増減で濃度を判断するセンサであれば、センサ受光部に散乱光が入ってくる構成であっても正反射型光学濃度センサということができる。
【0009】
図2に光学濃度検知手段の一例の模式図を示す。
【0010】
図2に示すように、LED光源10a、10bとフォトダイオード11a、11bを用いた光学濃度検知手段である光学濃度センサを像担持体の長手方向に対し平行に配置し、同一スラスト方向にLED光源とフォトダイオ−ドを1組にして、並べて2つ設け、これにより、像担持体上に形成されたトナーパッチパターンの反射光量を検出している。
【0011】
先記したように、出力される画像濃度を安定化させるためには、連続通紙で画像出力が行われることを鑑み、通常、画像形成動作中に、画像処理特性の補正と現像装置内のトナー濃度制御の補正の両方を行う。このとき、その画像処理補正やトナ−濃度制御補正をより精度良く行うためには、像担持体上のパッチ形成及びその濃度読み込みの頻度を高くする必要がある。
【0012】
しかし、図2より明らかなように、その装置構成上、感光体の長手方向の同一箇所で繰り返し、パッチ形成及びその濃度読み込みを行うため、これを、高い頻度で行うと、出力された画像上、その部分の濃度が形成していない部分に対し、縦筋状に、薄くなったり(以下、白スジともいう)、濃くなったり(以下、黒スジともいう)するという問題が生じてしまう。これに対し、従来は、繰り返しパッチ画像を形成して濃度読み込みする回数を、できる限り少なくするなどの対応を、せざるを得なかった。
【0013】
一方、電子写真装置に用いられる電子写真感光体としては、低価格、生産性等の利点から有機材料を用いた感光体が普及している。有機感光体は有機光導電性染料や顔料を含有した電荷発生層と光導電性ポリマーや低分子の有機光導電性物質を含有した電荷輸送層を積層した機能分離型感光体が主流である。電荷輸送層が表面層である場合、その層は、ポリマー中に有機光導電性物質を分散させた分子分散ポリマーの構成となっているため、その機械的強度はポリマーに依存しており、近年の高画質、高寿命化にともない、その耐久性は十分とは言いがたかった。
【0014】
これに対し、感光体の高耐久化を図るうえで、表面層に硬化性の樹脂を用いるのが効果的であることが知られている(例えば、特許文献3、特許文献4)。
【0015】
硬化性樹脂を感光体の表面層に用いた場合、熱可塑性の樹脂等に比べ、機械的強度が上がり、削れにくくなり、傷も入りにくくなり、寿命は長くなる。また、感光体の表面層に、硬化性樹脂を用いる場合、表面層の傷、削れに対する耐久性の観点から、その硬化手段として、電子線を用いることが、有用であることも知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0016】
上記したように、感光体の寿命が延命化したことにより、先記した、感光体の長手方向の同一箇所で、パッチ画像を形成して濃度読み込みするシ−ケンスを、長期間にわたり、繰り返し行うこととなってしまい、再び、画像が、縦筋状に、薄くなったり(以下、白スジともいう)、濃くなったり(以下、黒スジともいう)するという問題がクロ−ズアップされるようになってしまった。
【特許文献1】特開2003−195583号公報
【特許文献2】特開2003−091111号公報
【特許文献3】特開平07−72640号公報
【特許文献4】特開2000−66425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、電子写真感光体の周面のトナー濃度を検知するための散乱型トナ−濃度検知手段、及び/または、正反射型トナー濃度検知手段と、これらトナー濃度検知手段から得られたトナー濃度の情報により画像濃度やトナ−補給量を制御する手段を有する電子写真装置において、該トナー濃度の検知を、高い頻度で、長期間にわたり、白スジ、黒スジなどの画像欠陥を生じさせず、高精度、かつ高安定に行うことができる電子写真装置であって、これにより、階調安定性に優れた高精細画像を長期間に亘り、出力しつづけることができる電子写真装置を提供することを課題とする。また、本発明は、該電子写真装置に用いるプロセスカートリッジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、散乱型、及び/または、正反射型トナー濃度検知手段に用いる光源の波長における、感光体の分光相対感度が5%以下になるような感光体を有する電子写真装置が上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0020】
(1)少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、前露光手段、電子子写真感光体上のトナー濃度を検知するための散乱型及び/又は正反射型トナー濃度検知手段、及び該トナー濃度検知手段から得られたトナー濃度の情報によりトナ−補給量及び/または、画像濃度を制御する画像濃度制御手段を有する電子写真装置において、該トナ−濃度検知手段は、現像行程後における電子写真感光体上のトナー濃度を検知するためのものであり、下記式で定義される分光相対感度が、5%以下であることを特徴とする電子写真装置。
【0021】
B/A [1]
(式中、Aは電子写真装置内の像露光波長における感光体の分光感度、Bは電子写真装置内のトナ−濃度検知手段に用いているセンサの光源から感光体に投射される波長における感光体の分光感度)
(2)前記、該トナ−濃度検知手段に用いている光源の波長における、分光相対感度が、2%以下であることを特徴とする(1)に記載の電子写真装置。
【0022】
(3)前記、該電子写真感光体を形成する電荷発生物質が、下記構造式[2]合物を含有することを特徴とする(1)、又は(2)に記載の電子写真装置。
【0023】
Cp1−N=N−Ar−N=N−Cp2 [2]
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の複素環、またはこれらが直接あるいは結合基を介して結合したものを表し、Cp1およびCp2は同一または異なるフェノール性水酸基を有するカプラー残基を表す。ただし、上記Cp1−N=N−と−N=N−Cp2とが同一ベンゼン環に結合する場合を除く)。
【0024】
(4)前記構造式[2]が下記構造式[3]で表されることを特徴とする(3)に記載の電子写真装置。
【0025】
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子を示し、m1及びm2は0〜4の整数を示し、Cp1およびCp2は同一または異なるフェノール性水酸基を有するカプラー残基を表す)。
【0026】
(5)前記構造式[2]のCp1およびCp2の少なくとも一方が下記構造式[4]または[5]であることを特徴とする(3)に記載の電子写真装置:
【0027】
【化2】

(上記式[4]、[5]中、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を表し、また、R3とR4は式中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成してもよく、Zは酸素原子または硫黄原子を表し、nは0または1を表し、Yは置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基または置換基を有してもよい2価の含窒素複素環基を表す)。
【0028】
(6)前記構造式[2]が上記構造式[3]であり、かつCp1およびCp2の少なくとも一方が前記構造式[4]または[5]であることを特徴とする(3)記載の電子写真装置。(上記式[3]中、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子を示し、m1及びm2は0〜4の整数を示す)。
【0029】
(7)前記、該電子写真感光体が、少なくとも接着層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、かつこの順に積層した機能分離型の構成をとることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真装置。
【0030】
(8)前記、該電荷発生層の電荷発生物質/樹脂物質の比が、1/2〜5/1であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の電子写真装置。
【0031】
(9)前記、該電荷発生層の電荷発生物質の量が100mg/m2以上であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の電子写真装置。
【0032】
(10)前記、該電子写真感光体が、第2の電荷輸送層を有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の電子写真装置。
【0033】
(11)前記、該電子写真感光体の表面層が、重合性官能基を有する化合物を重合、あるいは架橋することにより硬化した化合物を含有していることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真装置。
【0034】
(12)前記、該電子写真感光体の表面層は、少なくとも2つ以上の重合性官能基を有する化合物を重合、あるいは架橋することにより硬化した化合物を含有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の電子写真装置。
【0035】
(13)前記電子写真感光体の表面層は、電子線により硬化した化合物を含有することを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の電子写真装置。
【発明の効果】
【0036】
電子写真装置内のトナ−濃度検知手段に用いている光源の波長に対し、電子写真感光体の分光相対感度が、5%以下であることを特徴とする電子写真装置を用いることにより、トナ−濃度検知手段に用いている光源起因のドラムメモリを無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0038】
本発明の電子写真装置は、円筒状支持体および該円筒状支持体上に設けられた感光層を有する円筒状の電子写真感光体と、該電子写真感光体の周面を帯電するための帯電手段と、該帯電手段によって帯電された該電子写真感光体の周面に露光光を照射することによって該電子写真感光体の周面に静電潜像を形成するための露光手段と、該露光手段によって形成された該電子写真感光体の周面の静電潜像をトナーにより現像することによって該電子写真感光体の周面にトナー像を形成するための現像手段と、該現像手段によって形成された該電子写真感光体の周面のトナー像を転写材に転写するための転写手段と、該現像手段による現像の後であって該転写手段による転写の前における該電子写真感光体の周面のトナー濃度を検知するための散乱型トナ−濃度検知手段と正反射型トナー濃度検知手段と、該散乱型トナ−濃度検知手段から得られたトナ−濃度の情報により、トナ−補給量を制御するトナ−補給量制御手段と該正反射型トナー濃度検知手段から得られたトナー濃度の情報により画像濃度を制御する画像濃度制御手段を少なくとも有する電子写真装置において、該電子写真感光体の電荷発生層が、先記トナ−濃度検知手段に用いている光源の波長の分光相対感度が5%以下であることを特徴とする。
【0039】
ここに示した、分光相対感度について、以下に説明する。
【0040】
一般的な電子写真感光体の特性として、分光感度がある。分光感度とは、光強度一定下での各波長における感度のことであり、感度の値は、相対的な値で示されることが多い。
【0041】
その場合、ある波長域内で、感度が一番良い波長に対しての相対感度値で、他の波長の感度を示すことになる。当然、電子写真装置に用いられている像露光光源の波長に対し、電子写真感光体は、その波長で出来る限り高い感度が得られるよう、材料設計されている。しかし、像露光光源以外にも、感光体には、前露光やトナ−濃度検知手段に用いているセンサの光源からの光が照射される。
【0042】
前露光のように、感光体全面に光が照射される場合、この前露光起因で、一枚の画像上での濃度変化は、生じない。しかし、本発明が課題としているトナ−濃度検知手段に用いているセンサの光源から感光体へ投射される光は、感光体の決まった一部分に照射される光であるため、頻繁に、長期に亘り、その状態で、使用しつづけると、その部分で、メモリ現象が生じ、センサからの光が照射されていない部分との間で、濃度差が発生し、画像欠陥が発現してしまう。
【0043】
本発明における分光相対感度とは、以下の式で表される。
【0044】
B/A [1]
(式中、Aは電子写真装置内の像露光波長における感光体の分光感度、Bは電子写真装置内のトナ−濃度検知手段に用いているセンサの光源から感光体に投射される波長における感光体の分光感度)
本発明者らは、先記、メモリ現象を引き起こさない条件を、鋭意検討を行い、導き出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の電子写真装置は、先記トナ−濃度検知手段に用いている光源の波長に対する感光体の分光相対感度が5%以下になるよう設計したものである。
【0045】
何故、感光体の分光相対感度5%以下という値を導き出せたのか、その詳しいメカニズムは明らかになっていない。しかし、本発明者らは、経験上、以下に示すような事象が生じているものと推測している。
【0046】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、先記した、画像上縦スジで、白スジ、黒スジになるという感光体のメモリ現象の最大要因は、感光体の長手方向の同一箇所で、感光体上のパッチトナ−像の濃度読み込みを行うときに、感光体面上にLED光源からの光を照射する行為にあることを確認した。
【0047】
感光層内の電荷発生物質より生成したキャリアは、電子写真プロセスにおいて、感光層内を移動し、表面電荷と再結合することで、潜像を形成する。反転現像において、トナ−濃度検知手段に用いている光源の光が照射されている部分は、画像上、濃度が濃くなり、黒スジとなるが、それは、その部分の帯電能が、濃度検知手段に用いている光源の光が照射されていない部分より良くなくなっているために生じている現象であった。これは、電荷発生層の同じ場所で前露光以外の強露光が行われることによる光メモリ現象と考えており、電子写真プロセスの中の一次帯電工程において、その部分は、感光層内の残留電荷が多い、且つ/又は、下地から注入し移動してくる電荷量が増えてしまい、帯電電位が低下してしまい、それにより、見かけの感度が良くなるため、画像上、濃度が濃くなってしまう現象と考えている。
【0048】
この現象は、先記、感光体面上にLED光源からの光を照射した部分での積算した電荷発生量に依存しており、強露光している時間が長いほど、また、その露光量が大きいほど、加速度的に早まっていく。これは、感光層を構成している物質が非可逆的な構造変化をしてしまうこと、感光層内で電荷を移動させている物質のリストラクチャリングが起こり電荷が移動し易くなっていることによるものと考えている。しかし、本発明の分光相対感度で5%以下という条件下において、感光体を使用している場合は、感光層内で、それらの現象が生じない、あるいは、それらの変化が、ほとんど起こらないような状態になっており、本発明者らは、そのシキイ値を鋭意検討の結果導き出したものと考えている。
【0049】
一般に、感光体の表面層が、重合性官能基を有する化合物を硬化重合することにより形成された層である場合は、熱可塑性樹脂で形成された層に比べ、削れ、傷に強く、耐久前後での感光体の表面粗さ状態の変動幅を小さくすることができる。特に、先記したように、感光体の表面層に、硬化性樹脂を用いる場合、表面層の傷、削れに対する耐久性の観点から、その硬化手段として、電子線を用いることが、有用であることが知られている。このような感光体を用いて光学濃度センサでトナーの濃度を検知すると、耐久により、感光体の表面形状は、ほとんど変化しないため、先記したトナ−濃度を測定するメカニズム上、耐久において、トナ−濃度検知するセンサ値のSN比が高く、変動幅の少ない状態を維持し続けることができるため、長期に亘り高精度にトナ−濃度を検知でき、トナ−濃度補正を行う上で優位であり、本発明においても、これを使用することができる。
【0050】
しかし、本発明者らは、本発明の課題である、メモリ現象が、感光体の表面層に硬化性樹脂を用いた場合、特に、電子線を用い、この硬化性樹脂を硬化した場合において、生じ易くなることを検討中、確認した。この事象に関しては、先記した電荷の移動に関わる部分の変化が、表面層、且つ/又は、その直下の層と表面層の間の界面において、起こり易くなっているものと考えている。本発明者らは、この現象に対しても、鋭意検討を行った結果、分光相対感度のシキイ値として2%以下であることを導き出した。
【0051】
本発明の感光体の表面層は、感光体の表面と当接するCLNブレ−ドなどの部材との間の摩擦力を低減する目的などにより、その表面の形状として凸凹を設けることができる。
【0052】
また、本発明の感光体の表面層は、重合性官能基を有する化合物を硬化重合させることによって得られる硬化物を含有している。硬化物としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0053】
本発明における感光体表面の硬化物を含有する層とは、感光体を作成する際の塗料中に重合性官能基を有するモノマーまたはオリゴマー等を含有させ、製膜、乾燥後その膜を加熱および放射線照射等で硬化重合を進行させる工程を設けることにより、3次元的に硬化重合することにより溶剤等に不溶、不融の強靭な製膜層を形成することができる。
【0054】
本発明中において表面層に含有される硬化物は、電荷輸送機能を有する硬化性樹脂であっても、電荷輸送機能を有していない硬化性樹脂であってもよいが、電荷輸送機能を有する硬化性樹脂であることが好ましい。すなわち、本発明における最良の感光層は、分子内に重合性官能基を有する電荷輸送材料を含有する塗料を塗布し製膜後、硬化重合させることにより、表面が硬化重合したものである。表面層の硬化強度をより高くするために重合性官能基は同一分子内に2つ以上存在することが好ましい。
【0055】
感光層の層構成として、導電性支持体側から電荷発生層/電荷輸送層をこの順に積層した順層積層構成、導電性支持体側から電荷輸送層/電荷発生層をこの順に積層した逆層積層構成、または電荷発生材料と電荷輸送材料を同一層中に分散した単層からなる構成の、いずれの構成をとることも可能である。
【0056】
単層の感光層では光キャリアの生成と移動が同一層内で行われ、また感光層そのものが表面層となる。一方積層の感光層では、光キャリアを生成する電荷発生層と生成したキャリアが移動する電荷輸送層とが積層された構成をとる。
【0057】
さらに、本発明においては、保護層を、この上に設けることも可能である。
【0058】
最も好ましい層構成は、導電性支持体側から電荷発生層/電荷輸送層をこの順に積層した順層構成である。
【0059】
この場合、電荷輸送層が硬化性樹脂を含有する一層からなる最表面層である電子写真感光体、または電荷輸送層が非硬化型の第一層と硬化型の第二層の積層型であり、硬化型の第二層が最表面層である電子写真感光体のいずれかが好ましい。
【0060】
本発明における表面層について、以下で詳しく説明する。
【0061】
本発明の表面層は、重合性官能基を有する化合物を硬化重合することにより、形成される。硬化重合手段としては、熱や可視光、紫外線等の光、さらに放射線(電子線、γ線など)を用いることができる。本発明の効果を、より顕著に見出すために、表面層は電子線で硬化重合するとよい。これは、高エネルギーである電子線を短時間照射して表面層を硬化重合することにより、電子写真特性上の電気的特性(例えば残留電位の上昇など)を損なうことなく、機械的特性上、本発明で所望の表面形状が形成できるからである。
【0062】
本発明における表面層を形成する手順は、次のとおりである。
【0063】
硬化重合することができる表面層用の化合物を溶解、または含有する塗布溶液を、浸漬コーティング法、スプレイコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法などにより塗工し、これを上記硬化重合手段により硬化重合する。感光体を効率よく大量生産するには浸漬コーティング法がより好ましい。
【0064】
本発明の感光体の構成は導電性支持体上に、電荷発生材料と電荷輸送材料の双方を同一の層に含有する層構成の単層型、あるいは電荷発生材料を含有する電荷発生層と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を、この順に、または逆の順に積層した構成の積層型のいずれであってもよい。本発明は、少なくとも感光体の表面層が、熱や可視光、紫外線等の光、さらに放射線により硬化重合させることができる化合物を含有していればよい。但し、感光体としての特性、特に残留電位などの電気的特性および耐久性の点より、電荷発生層/電荷輸送層、または、電荷輸送層が非硬化型の第一層と硬化型の第二層の積層型をこの順に積層した機能分離型の感光体の構成とするのが好ましい。
【0065】
本発明において、表面層の硬化重合させる化合物の硬化重合法は、感光体特性の劣化が無く残留電位の上昇が起こらず、耐久における、感光体の表面粗さの変動幅がより小さくでき、より効果があるという点から、上述したように電子線を用いるとよい。
【0066】
電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型およびラミナー型などいずれの形式も使用することができる。電子線を照射する場合に、本発明の感光体における電気特性および耐久性能を発現させる上で、その照射条件は、加速電圧は250KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また、照射線量は、好ましくは10KGyから1000KGyの範囲、より好ましくは3KGyから500KGyの範囲である。加速電圧が上記を超えると感光体特性に対する電子線照射のダメージが増加する傾向にある。また、照射線量が上記範囲よりも少ない場合には硬化重合が不十分となり易く、線量が多い場合には感光体特性の劣化が起こり易くなる。
【0067】
硬化重合させることのできる表面層用化合物としては、反応性の高さ、反応速度の速さ、硬化重合後に達成される硬度の高さなどの点から、分子内に重合性官能基を持つものが好ましく、さらにその中でもアクリル基、メタクリル基、およびスチレン基を持つ化合物が特に好ましい。
【0068】
本発明における、重合性官能基を有する化合物とは、その構造単位の繰り返しより、モノマーとオリゴマーに大別される。モノマーとは、重合性官能基を有する構造単位の繰り返しが無く、比較的分子量の小さいものを示し、オリゴマーとは重合性官能基を有する構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体を示す。また、ポリマーまたはオリゴマーの末端のみに重合性官能基を有するマクロノマーも本発明の表面層用の硬化性化合物として使用可能である。中でも、本発明では、少なくとも2つ以上の重合性官能基を有する化合物を用いるのがよい。
【0069】
また、本発明における重合性官能基を有する化合物は、表面層として必要な電荷輸送機能を満足させるために、電荷輸送材料であることが好ましい。中でも、正孔輸送機能を持った正孔輸送性化合物であることがより好ましい。特に、同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物であることがより好ましい。
【0070】
本発明における重合性官能基を有する化合物の例を以下の表1〜表8(1〜37)に示す。但し、これらの化合物に限定されるものでは無い。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

【0078】
【表8】

【0079】
次に、本発明における電子写真感光体の感光層について、以下に詳しく説明するが、本発明において、用いることの出来る材料は、例示した、これらの物質に限られるものではなく、先記したように、電子写真装置内で、トナ−濃度検知手段に用いている光源の波長における、分光相対感度が、5%以下になれば、どのような物質を用いることも可能である。
【0080】
電子写真感光体の支持体としては、導電性を有するものであればよく、例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレスなどの金属や合金をドラムまたはシート状に成形したもの、アルミニウムおよび銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化錫などをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独または結着樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、またプラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
【0081】
本発明においては導電性支持体の上にはバリアー機能と接着機能を持つ下引き層(以下、中間層ともいう)を設けることができる。
【0082】
下引き層は感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、また感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。
【0083】
下引き層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわおよびゼラチンなどが使用可能であり、これらはそれぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。その際の膜厚としては0.1〜2μmが好ましい。
【0084】
本発明の感光体が機能分離型の感光体である場合には、電荷発生層および電荷輸送層を積層する。電荷発生層に用いる電荷発生材料としては、トナ−濃度検知手段に用いている光源の波長における、分光相対感度が、5%以下である必要がある。
【0085】
例えば、電子写真装置の像露光光源として、400nmのレ−ザを使用し、トナ−濃度検知手段に用いている光源の波長が880nmであった場合は、以下に示すような、アゾ化合物の電荷発生物質を用いることが出来る。
【0086】
構造式[1]中、Arとしてはベンゼン、ナフタレン、フルオレン、フェナンスレン、アントラセン及びピレンなどの芳香族炭化水素環、フラン、チオフェン、ピリジン、インドール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、アクリドン、ジベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、オキサジアゾール及びチアゾールなどの複素環、更に上記芳香族炭化水素環または複素環を直接あるいは芳香族性基または非芳香族性基で結合したもの、例えば、ビフェニル、ビナフチル、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、N−メチルジフェニルアミン、フルオレノン、フェナンスレンキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、ベンズアンスロン、ターフェニル、ジフェニルオキサジアゾール、スチルベン、ジスチリルベンゼン、アゾベンゼン、アゾキシベンゼン、フェニルベンズオキサゾール、ジフェニルメタン、ビベンジル、ジフェニルスルホン、ジフェニルエーテル、ジフェニルサルファイド、ベンゾフェノン、ベンズアニリド、テトラフェニル−p−フェニレンジアミン、テトラフェニルベンジジン、N−フェニル−2−ピリジルアミン及びN,N−ジフェニル−2−ピリジルアミンなどの基が挙げられる。
これらの基が有してもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ及びプロポキシなどのアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子などのハロゲン原子、ジメチルアミノ及びジエチルアミノなどのジアルキルアミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基及びハロメチル基などが挙げられる。さらにより好ましくは、構造式[2]で示される置換基を有してもよいベンゾフェノンが挙げられる。式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子を示す。置換基としてはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。m1及びm2は0〜4の整数を示す。
【0087】
構造式[1]、[2]中のCp1およびCp2としては、同一または異なるフェノール性水酸基を有するカプラー残基が挙げられる。例えば、フェノール類、ナフトール類などの水酸基を有する芳香族炭化水素化合物及び水酸基を有する複素環式化合物などが用いられ、より好ましくは、カプラー残基が構造式[3]、および/または[4]で表されるものである。
【0088】
構造式[3]中のR3及びR4のアルキル基としては、メチル、エチル及びプロピルなどの基、アリール基としてはフェニル、ナフチル及びアンスリルなどの基、複素環基としてはピリジル、チエニル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリルなどの基、窒素原子を環内に含む環状アミノ基としてはピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、インドール、インドリン、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピリゾリン、オキサジン及びフェノキサジンなどが挙げられる。
【0089】
これらの基が有してもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ及びプロポキシなどのアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子などのハロゲン原子、ジメチルアミノ及びジエチルアミノなどのジアルキルアミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロメチル基及びハロメトキシ基などが挙げられる。
【0090】
これらの中でも、R3及びR4のどちらか一方が水素原子であり、他方が置換基を有してもよいフェニル基の場合が分光感度上好ましく、更にフェニル基の置換基は、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アセチル基、ハロゲン原子及びフェニルカルバモイル基が好ましい。なお、このフェニルカルバモイル基のフェニル基は前述のような置換基を更に有していてもよい。
【0091】
構造式[4]中のYの2価の芳香族炭化水素環基及び含窒素複素環基としては、o−フェニレン、o−ナフチレン、ペリナフチレン、1,2−アンスリル、3,4−ピラゾールジイル、2,3−ピリジンジイル、4,5−ピリジンジイル、6,7−イミダゾールジイル及び6,7−キノリンジイルなどの2価の基が挙げられる。
【0092】
Yが有してもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ及びプロポキシなどのアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子などのハロゲン原子、ジメチルアミノ及びジエチルアミノなどのジアルキルアミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基及びハロメチル基などが挙げられる。
【0093】
さらに最も好ましくは、構造式[1が構造式[2]であり、かつ構造式[1]のCp1およびCp2の少なくとも一方が構造式[3]または[4]である中心骨格とカプラーを組合せたアゾ化合物が挙げられる。
【0094】
上記した、全てのアゾ化合物の結晶形は結晶質であっても非晶質であってもよい。
【0095】
以下に、本発明に用いることのできる、アゾ化合物の好ましい化合物例を列挙するが、先記したように、本発明は、これらに限定されるものではない。アゾ化合物に関する構造式は、式[1]のAr、Cp1およびCp2に相当する部分のみを表9〜表16(1−1〜1−80)に、それぞれ記載した。
【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
【表12】

【0100】
【表13】

【0101】
【表14】

【0102】
【表15】

【0103】
【表16】

機能分離型感光体の場合、電荷発生層は電荷発生材料を質量基準で0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライターおよびロールミルなどの方法で良く分散し、分散液を塗布し乾燥させて形成させるか、または上記電荷発生材料の蒸着膜など単独組成の膜として形成させる。その膜厚は5μm以下であることが好ましく、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0104】
結着樹脂を用いる場合、結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどのビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0105】
電荷輸送層に用いる電荷輸送材料としては、適当な電荷輸送材料、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリスチリルアントラセンなどの複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾールなどの複素環化合物、トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの低分子化合物などを適当な結着樹脂(上述の電荷発生層の箇所で記載した結着樹脂と同様のものが使用できる)とともに溶剤に分散/溶解した溶液を上述の公知の方法によって塗布、乾燥して形成することができる。この場合の電荷輸送材料と結着樹脂の比率は、両者の全質量を100とした場合に電荷輸送材料の質量が30〜100が望ましく、好ましくは50〜100の範囲で適宜選択される。電荷輸送材料の量がそれ未満であると、電荷輸送能が低下し、感度低下および残留電位の上昇などの問題点が生ずる。この場合にも感光体の膜厚は5〜30μmの範囲であり、この時の感光層の膜厚とは電荷発生層、電荷輸送層、および/または、保護層、あるいは、電荷発生層、電荷輸送層が非硬化型の第一層と硬化型の第二層の積層において、各々の膜厚を合計した膜厚である。
【0106】
いずれの場合も、表面層の形成方法は、上記重合性官能基を有する化合物を含有する溶液を塗布後、重合/硬化反応をさせるのが耐久性という観点から、より好ましく、前もって該重合性官能基を有する化合物を含む溶液を反応させて硬化物を得た後に再度溶剤中に分散あるいは溶解させたものなどを用いて、保護層を形成することも可能である。これらの溶液を塗布する方法は、上記感光層の説明箇所でも述べたように、例えば浸漬コーティング法、スプレイコーティング法、カーテンコーティング法およびスピンコーティング法などをあげることができる。これらの方法のうち、効率性/生産性の点からは浸漬コーティング法がより好ましい。また、蒸着、プラズマその他の公知の製膜方法も適宜選択することができる。
【0107】
本発明における表面層中には導電性粒子を混入させてもよい。
【0108】
導電性粒子としては、金属、金属酸化物およびカーボンブラックなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、ステンレスおよび銀など、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したものなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。
【0109】
本発明に用いられる導電性粒子の平均粒径は表面層の透明性の点で0.3μm以下であることが好ましく、特には0.1μm以下であることが好ましい。
【0110】
また、本発明においては上述したような導電性粒子の中でも、透明性などの点で金属酸化物を用いることが特に好ましい。
【0111】
上記、表面層中の導電性金属酸化物粒子の割合は、直接的に表面層の抵抗を決定する要因のひとつであり、表面層の抵抗は1010〜1015Ω・cmの範囲であることが好ましい。
【0112】
本発明における表面層中にはフッ素原子含有樹脂粒子を含有することができる。
【0113】
フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂およびこれらの共重合体のなかから1種あるいは2種以上を適宜選択するのが好ましいが、特に、四フッ化エチレン樹脂およびフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。樹脂粒子の分子量や粒子の粒径は、適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
【0114】
上記表面層中のフッ素原子含有樹脂粒子の割合は、表面層全質量に対し5〜70質量%が好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。フッ素原子含有樹脂粒子の割合が70質量%より多いと表面層の機械的強度が低下し易く、フッ素原子含有樹脂粒子の割合が5質量%より少ないと表面層の表面の離型性、表面層の耐摩耗性や耐傷性が充分ではなくなることがある。
【0115】
本発明においては、分散性、結着性および耐候性をさらに向上させる目的で、上記表面層中にラジカル補足剤や酸化防止剤などの添加物を加えてもよい。
【0116】
本発明に用いる表面層の膜厚は0.2〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜6μmの範囲である。
【0117】
次に、画像形成を行う本発明の電子写真装置について説明する。図1に本発明の電子写真装置の一例図を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0118】
本発明の電子写真装置は、上述した電子写真感光体の他に、該電子写真感光体の周面を帯電するための帯電手段と、該帯電手段によって帯電された該電子写真感光体の周面に露光光を照射することによって該電子写真感光体の周面に静電潜像を形成するための露光手段と、該露光手段によって形成された該電子写真感光体の周面の静電潜像をトナーにより現像することによって該電子写真感光体の周面にトナー像を形成するための現像手段と、該現像手段によって形成された該電子写真感光体の周面のトナー像を転写材に転写するための転写手段と、該現像手段による現像の後であって該転写手段による転写の前における該電子写真感光体の周面のトナー濃度を検知するための散乱型、及び/又は、正反射型トナー濃度検知手段、及びトナー濃度検知手段から得られたトナー濃度の情報によりトナ−補給量、及び/または、画像濃度を制御する画像濃度制御手段を少なくとも有する。
【0119】
より具体的には、図1に示すように、プリンタ部Aと、このプリンタ部Aの上に搭載した画像読み取り部(イメージスキャナ)Bとを有する。
【0120】
プリンタ部Aは、像担持体である感光体1と、感光体1を帯電させるための帯電手段である一次帯電器2と、帯電した感光体1に画像情報に応じて光を照射して静電潜像を形成するための露光手段である露光装置3と、感光体1に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成するための現像手段である現像装置4と、感光体1が担持するトナー像を転写材Pに転写するための転写手段である中間転写体5と、トナー像を転写した感光体1の表面の付着物を感光体1の表面から除去するクリーニング装置6と、付着物が除去された感光体1の表面に光を照射して静電履歴を消去する前露光ランプ7と、中間転写体5上のトナ−像を転写材Pへ転写した後、転写材Pに定着させる定着装置9とを有する。
【0121】
また、図1の電子写真装置には、後述するように、図2で示される光学濃度検知手段、およびその光学濃度手段から得られたトナー濃度の情報によりトナ−補給量、及び/または、画像濃度を制御する画像濃度制御手段が含まれている。
【0122】
感光体1は、例えば、実施例中に記載されている方法で作成された電子写真感光体を用いる。
【0123】
一次帯電器2は、感光体1に対して非接触で帯電させるコロナ帯電器である。一次帯電器2には、この他にも感光体1に接触して設けられる導電性の帯電ローラや帯電ブラシ等の接触帯電器を用いることができる。
【0124】
露光装置3は、例えば図4に示すように、画像読み取り部Bで読み取られた画像信号に基づいて照射する光の発光の信号を発生する発光信号発生器24と、発光信号発生器24からの発光信号に応じてレーザ光を発生させる固体レーザ素子25と、発生したレーザ光の光路幅を規定するコリメーターレンズ系26と、光路幅が規定されたレーザ光を反射する回転多面鏡22と、回転多面鏡22で反射したレーザ光を感光体1に走査させるfθレンズ群23とを有する。
【0125】
現像装置4は、例えば複数の現像器とこれらを円周部に有するロータ部とから構成されており、シアントナーを有する現像剤、マゼンタトナーを有する現像剤、イエロートナーを有する現像剤、および、ブラックトナーを有する現像剤のそれぞれを収容する各現像器を、ロータ部が回転することにより現像位置に搬送するように構成されている。
【0126】
図中では、特色用の現像機が、さらに2台、投入できるような構成になっている。
【0127】
現像器は、例えば図5に示すような二成分系現像器であり、トナーtとキャリアとからなる現像剤Tを収容する現像容器32と、現像容器32の開口部に回転自在に設けられ現像容器32に収容されている現像剤Tを担持する現像スリーブ30と、現像スリーブ30の内側に固定され所定の複数の位置に複数の磁極を形成するマグネットローラ31と、現像スリーブ30に担持された現像剤Tの層厚を規制する規制ブレード33(例えば現像スリーブ30の表面に対して離間して設けられる非磁性の金属プレート等)と、現像容器32内を開口部側の現像室R1と現像室R1よりも奥の攪拌室R2とに区切る隔壁36と、各室の現像剤Tを搬送、攪拌する搬送スクリュー37、38と、攪拌室R2に補給されるトナーを収容するトナーホッパ34と、攪拌室R2に向けて開閉するトナーホッパ34の補給口35とを有する。現像スリーブ30は、例えばアルミニウムや非磁性ステンレス銅等の非磁性材からなる。トナーtは、例えば炭化水素系ワックスを含有するカラートナーである。なお現像器は、用いる現像剤の種類に応じて適宜選択することができる。
【0128】
中間転写体5は、ドラム形状であっても、ベルト形状であってもよく、例えば、中間転写ベルトの場合、中間転写体5と感光体1とのニップ部において中間転写体5の背面から感光体に押し付けながら電圧を印加する第一転写ロ−ラ帯電器5aと、転写された中間転写体上のトナー像を転写材Pに、さらに、転写するための第二転写ロ−ラ帯電器14とを有する。
【0129】
中間転写体5は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムからなり、これが、張設されており、矢印方向(時計方向)に回転駆動される。中間転写体5は、感光体1に対して当接、離間自在に設置されている。なお、本発明において、中間転写体5および帯電器等の転写手段としては、一般的な材料を用いることが可能である。
【0130】
クリーニング装置6は、例えば図6に示すように、感光体1側に開口するように設けられる容器状のケーシング61と、ケーシング61の開口部の上部近傍の外表面に接着し、感光体1の表面に当接するように設けられているウレタンゴム等からなるクリーニングブレード62と、ケーシング61の開口部に回転自在にかつ感光体1の表面を摺擦する位置に設けられているブラシ部材63と、ブラシ部材63に当接してブラシ部材63に捕集された捕集物をブラシ部材63から落とすスクレーパ67と、ケーシング61の開口部の下端縁に設けられケーシング61からの、クリーニングブレード62で感光体1の表面から除去された付着物や前記捕集物等の落下を防止するためのスクイシート64と、ケーシング61内に収容された前記付着物や捕集物等をケーシング61の外部に搬送するスクリュー65とを有する。
【0131】
クリーニングブレード62は、ケーシング61の開口部に支持部材によって取り付けてられている。クリーニングブレード62は一辺のエッジを像担持体1の回転駆動方向(図中a方向)に対してカウンター方向に当接されている。さらにブラシ部材63は、クリーニングブレード62より感光体1の回転方向の上流側において、感光体1の表面に当接している。
【0132】
ブラシ部材63は、例えば回転軸とこの回転軸の表面に林立するブラシ66とから構成されている。前記回転軸は金属製であり、接地されており、また、ブラシ66は、導電性の繊維によって形成されている。トナ−種によっては、先の回転軸に電圧を引加し、クリ−ニング性を良化させることも可能である。ブラシ部材63の繊維の太さは、4〜30D/Fであり、ブラシ密度は1万〜40万本/平方インチとされている。
【0133】
定着装置9は、例えばヒータを内蔵する定着ローラ9aと、定着ローラ9aに対して相対的に付勢して設けられている加圧ローラ9bと、定着ローラ9aにシリコーンオイル等の離型性のオイルを塗布するオイル塗布手段とを有する。なお、本発明では、オイル塗布手段を設けなくてもよい。
【0134】
プリンタ部Aは、これらの他にも、転写材Pを収容する給紙カセット10と、給紙カセット10から転写材Pを一枚ずつ搬送する給紙ローラ11および12と、トナー像の転写のタイミングに合わせて転写材Pを転写シート5cに向けて搬送するレジストローラ13と、定着装置9から排出された転写材Pを機外に排出する排紙ローラ15と、機外に排出された転写材Pを収容するトレイ16とを有する。
【0135】
画像読み取り部Bは、原稿Gが載置される原稿台ガラス20と、原稿台ガラス20に載置された原稿Gの画像を読み取る画像読み取りユニット21とを有する。画像読み取りユニット21は、原稿台ガラス20を挟んで原稿Gを照らす原稿照射用ランプ21aと、原稿照射用ランプ21aで照らされた原稿Gの像を集光する短焦点レンズアレイ21bと、集光された原稿Gの像を読み取り画像信号に変換するCCDセンサ21cとを有する。なおCCDセンサ21cはフルカラーセンサである。
【0136】
次に、本発明における電子写真装置の動作を説明する。なお、本発明の電子写真装置は、画像の形成に関する公知の手段や装置を適宜用いることができ、本実施形態に限られるものではない。
【0137】
感光体1は、中心支軸を中心に所定の周速度(プロセススピード)で矢印a方向(反時計方向)に回転駆動され、その回転過程において一次帯電器2により、本実施の形態では負極性の一様なコロナ帯電処理を受ける。
【0138】
そして、感光体1の一様帯電面に対して露光装置(レーザ走査装置)3から出力される、画像読み取り部Bからプリンタ部A側に出力される画像信号に対応して変調されたレーザ光による走査露光Lによって、感光体1上に、画像読み取り部Bにより光電読み取りされた原稿Gの画像情報に対応した各色の静電潜像が順次形成される。
【0139】
静電潜像の形成について説明すると、画像読み取り部Bにおいて、原稿台ガラス20の上面に、複写すべき面を下側にして原稿Gを載置し、その上に不図示の原稿板を被せてセットする。画像読み取りユニット21は、不図示のコピーボタンが押されることで、図1における原稿台ガラス20の下側において、この原稿台ガラス20の、図1における紙面に対して左辺側のホームポジションから右辺側に、ガラス下面に沿って往動駆動され、所定の往復終点に達すると復動駆動されて始めのホームポジションに戻される。
【0140】
画像読み取りユニット21の往動駆動過程において、原稿台ガラス20上の載置セット原稿Gの下向き画像面が、原稿照射用ランプ21aにより左辺側から右辺側にかけて順次照明走査され、その照明走査光の原稿面反射光が短焦点レンズアレイ21bによってCCDセンサー21cに結像入射する。
【0141】
CCDセンサー21cは、不図示の受光部、転送部、出力部より構成されており、受光部において光信号が電荷信号に変えられて、転送部でクロックパルスに同期して順次出力部へ転送され、出力部において電荷信号を電圧信号に変換し、増幅、低インピーダンス化して出力する。このようにして得られたアナログ信号を周知の画像処理によりデジタル信号に変換してプリンタ部Aに出力する。すなわち、画像読み取り部Bにより原稿Gの画像情報が時系列電気デジタル画素信号(画像信号)として光電読み取りされる。
【0142】
図7に、画像処理の一例のブロック図を示す。同図において、フルカラーセンサ21cから出力された画像信号は、アナログ信号処理部71に入力されてゲインやオフセットが調整された後、A/D変換部72で各色成分ごとに、例えば、8ビット(0〜255レベル:256階調)のRGBデジタル信号に変換され、シェーディング補正部73において、各色ごとに基準白色板(不図示)を読み取った信号を用いて、一列に並んだCCDのセンサセル群一つ一つの感度バラツキを無くすために、一つ一つのCCDセンサセルに対応させてゲインを最適化してかける公知のシェーディング補正が施される。
【0143】
ラインディレイ部74は、シェーディング補正部73から出力された画像信号に含まれている空間的ずれを補正する。この空間的ずれは、フルカラーセンサ21cの各ラインセンサが、副走査方向に、互いに所定の距離を隔てて配置されていることにより生じたものである。具体的には、B(ブルー)色成分信号を基準として、R(レッド)およびG(グリーン)の各色成分信号を副走査方向にライン遅延し、三つの色成分信号の位相を同期させる。
【0144】
入力マスキング部75は、ラインディレイ部74から出力された画像信号の色空間をマトリクス演算により、NTSCの標準色空間に変換する。つまり、フルカラーセンサ21cから出力された各色成分信号の色空間は、各色成分のフィルタの分光特性で決まっているが、これがNTSCの標準色空間に変換される。
【0145】
LOG変換部76は、例えば、ROM等からなるルックアップテーブル(LUT)で構成され、入力マスキング部75から出力されたRGB輝度信号をCMY濃度信号に変換する。
【0146】
ライン遅延メモリ77は、黒文字判定部(不図示)が入力マスキング部75の出力から制御信号UCR、FILTER、SEN等を生成する期間(ライン遅延)分、LOG変換部76から出力された画像信号を遅延させる。
【0147】
マスキング・UCR部78は、ライン遅延メモリ77から出力された画像信号から黒成分信号Kを抽出し、さらに、プリンタ部の記録色材の色濁りを補正するマトリクス演算を、YMCKが信号に施して、リーダ部の各読み取り動作ごとにM、C、Y、K順に、例えば8ビットの色成分画像信号を出力する。なお、マトリクス演算に使用するマトリクス計数は、CPU(不図示)によって設定されるものである。
【0148】
次に、得られたデータ8ビットの色成分画像信号Dataに基づき、濃ドットと淡ドットの記録率Rn、Rtを決定する処理を行う。例えば入力した階調データDataが、100/255であれば、淡ドットの記録率Rtは250/255、濃ドットの記録率Rnは40/255として決定される。なお、記録率は100パーセントを255とする絶対値で示してある。
【0149】
γ補正部79は、画像信号をプリンタ部の理想的な階調特性に合わせるために、マスキング・UCR部78から出力された画像信号に濃度補正を施す。
【0150】
出力フィルタ(空間フィルタ処理部)80は、CPUからの制御信号に従って、γ補正部79から出力された画像信号にエッジ強調またはスムージング処理を施す。
【0151】
LUT81は、原画像の濃度と出力画像の濃度とを一致させるためのもので、例えばRAM等で構成され、その変換テーブルは、CPUによって設定されるものである。
【0152】
パルス幅変調器(PWM)82は、入力された画像信号のレベルに対応するパルス幅のパルス信号を出力し、そのパルス信号は半導体レーザ(レーザ光源)を駆動するレーザドライバ83に入力される。
【0153】
なお、この電子写真装置にはパターンジェネレーター(不図示)がのせてあり、階調パターンが登録されていて、パルス幅変調器82に直接信号を渡すことができるようになっている。
【0154】
露光装置3は、画像読み取りユニット21から入力される画像信号に基づいて感光体1表面をレーザ走査露光Lによって、静電潜像を形成する。
【0155】
露光装置3により感光体1の表面をレーザ走査露光Lする場合には、先ず画像読み取りユニット21から入力された画像信号に基づき、発光信号発生器24により固体レーザ素子25を所定タイミングで明減(ON/OFF)させる。そして、固体レーザ素子25から放射された光信号であるレーザ光を、コリメーターレンズ系26によりほぼ平行な光束に変換し、さらに、矢印c方向に高速回転する回転多面鏡22により感光体1を矢印d方向(長手方向)に走査することによって、fθレンズ群23、反射ミラーにより感光体1表面にレーザスポットが結像される。
【0156】
このようなレーザ走査により感光体1表面には走査分の露光分布が形成され、さらに、各走査毎に、感光体1の表面に対して垂直に所定量だけスクロールさせれば、感光体1表面に画像信号に応じた露光分布が得られる。
【0157】
すなわち、感光体1の一様帯電面(例えば−700Vに帯電)に、画像信号に対応してON/OFF発光される固体レーザ素子25の光を高速で回転する回転多面鏡22によって走査することにより、感光体1表面には走査露光パターンに対応した各色の静電潜像が順次形成されていく。
【0158】
図2に示すように、感光体1上に形成された後述のトナーパッチパターンの反射光量を検出するために、LED光源10a、10bとフォトダイオード11a、11bを用いた光学濃度検知手段である光学濃度センサを同一スラスト方向に2つ設けている。1つは、現像器4内のトナー濃度制御に用いる散乱型光学センサ40aであり、もう1つはγLUT補正に用いる正反射型光学濃度センサ40bである。
【0159】
散乱型光学センサ40aは、トナーおよび感光体からの散乱光の光量の増減によってパッチ濃度を検出するタイプのセンサであり、感光体に投射光を散乱させるトナーが載ることによって、センサ出力が低下し、パッチ濃度を検出することができる。この値を、本体内で演算することで、現像器4内のトナー濃度減少度を認知することができ、これを一定に制御するよう、トナー補給槽より、補給制御を行う。
【0160】
正反射型光学濃度センサ40bは、正反射トナー濃度を検知し、γLUT補正により、階調特性の制御を行っている。本制御は、感光体1上のトナ−パッチパターン濃度を検出し、上述のLUT81を補正することにより画像安定化を達成するものである。尚、トナ−パッチパターンは階調画像に用いる200lpiを用いる。
【0161】
図8は感光体1に相対するLED光源10bとフォトダイオード11bから成る正反射型光学濃度センサ40bからの信号を処理する処理回路を示す。本制御で使用した正反射型光学濃度センサ40bは、本実施の形態で感光体対向の同一スラスト方向位置に配置した2つの光学濃度センサのうちの正反射型光学濃度センサ40bであり、感光体1からの正反射光のみを検出するよう構成されている。本制御はγLUTを補正するため、パッチ形成後の次の画像形成時には明確に効果が現れる。
【0162】
正反射型光学濃度センサ40bに入射された感光体1からの近赤外光は、正反射型光学濃度センサ40bによって電気信号に変換され、電気信号はA/D変換回路41により0〜5Vの出力電圧を0〜255レベルのデジタル信号に変換され、濃度換算回路42によりトナー濃度を把握する。そして、この正反射トナー濃度検知手段から得られたトナー濃度の情報により画像濃度制御手段を用い画像濃度を制御する。
【0163】
感光体1上のトナー濃度を各色の面積階調により段階的に変えていったときの正反射型光学濃度センサ40bの出力と画像濃度との関係を図9に示す。
【0164】
トナーが感光体1に付着していない状態における正反射型光学濃度センサ40bの出力を5V(すなわち、255レベル)に設定した。
【0165】
図9から分かるように、トナーによる面積被覆率が大きくなり、画像濃度が大きくなるに従って、正反射型光学濃度センサ40bの出力は小さくなる。ここで、各色専用のセンサ出力信号から濃度信号に変換するテーブル42aを持たせると、各色とも精度良くトナー濃度信号を読み取ることができる。
【0166】
本発明における画像濃度制御手段は、リーダ/プリンタを含む制御系により達成された色再現性の安定維持が目的であるため、リーダ/プリンタを含む制御系による制御の終了直後の状態を目標値として設定する。目標値設定のフローを図10に示す。リーダ/プリンタ双方を含む系の制御が終了した時点で、Y,M,C,Bkの各色毎のパッチパターンを感光体1上に形成して正反射型光学濃度センサ40bで検知する。
【0167】
ここで、パッチのレーザ出力は、各色とも濃度信号で128レベルを用いる。この際、LUT81の内容とコントラスト電位の設定は、リーダ/プリンタを含む制御系で得たものを用いる。
【0168】
感光体1上に形成された静電潜像は、現像装置4により、二成分磁気ブラシ法によって、現像器により反転現像されて第一色目のトナー像として可視像化される。
【0169】
各現像器において、現像室R1および攪拌室R2内には、上記トナー粒子と磁性キャリア粒子が混合された現像剤Tが収容されている。また、現像室R1内の現像剤Tは、搬送スクリュー37の回転駆動によって現像スリーブ30の長手方向に向けて搬送される。攪拌室R2内の現像剤Tは、搬送スクリュー38の回転駆動によって現像スリーブ30の長手方向に向けて搬送される。搬送スクリュー38による現像剤搬送方向は、搬送スクリュー37によるそれとは反対方向である。
【0170】
隔壁36には、紙面と垂直方向である手前側と奥側に開口部(不図示)がそれぞれ設けられており、搬送スクリュー37で搬送された現像剤Tがこの開口部の一つから搬送スクリュー38に受け渡され、搬送スクリュー38で搬送された現像剤Tが上記開口部の他の一つから搬送スクリュー37に受け渡される。トナーは磁性粒子との摩擦で、潜像を現像するための極性に帯電する。
【0171】
現像スリーブ30は矢印e方向(時計方向)に回転駆動し、トナーおよびキャリアの混合された現像剤Tを現像部Cに担持搬送する。現像スリーブ30に担持された現像剤Tの磁気ブラシは、現像部Cで矢印a方向(反時計方向)に回転する感光体1に接触し、静電潜像はこの現像部Cで現像される。
【0172】
現像スリーブ30には、電源(不図示)により交流電圧に直流電圧を重畳した振動バイアス電圧が印加される。静電潜像の暗部電位(非露光部電位)と明部電位(露光部電位)は、上記振動バイアス電位の最大値と最小値の間に位置している。これによって、現像部Cに、向きが交互に変化する交番電界が形成される。この交番電界中で、トナーとキャリアは激しく振動し、トナーが現像スリーブ30およびキャリアへの静電的拘束を振り切って静電潜像に対応して感光体1の表面の明部に付着する。
【0173】
振動バイアス電圧の最大値と最小値の差(ピーク間電圧)は1〜5kVが好ましく、(例えば2kVの矩形波)、また、周波数は1〜10kHzが好ましい。また、振動バイアス電圧の波形は、矩形波に限らず、サイン波、三角波等であってもよい。
【0174】
そして、上記直流電圧成分は、静電潜像の暗部電位と明部電位の間の値のものであるが、絶対値で、最小の明部電位よりも暗部電位の方により近い値であることが、暗部電位領域へのカブリトナーの付着を防止する上で好ましい。例えば、暗部電位−700Vに対して、明部電位−200V、現像バイアスの直流成分を−500Vとするとよい。また、現像スリーブ30と感光体1の最小間隙(この最小間隙位置は現像部C内にある)は0.1〜1mmであることが好ましい。
【0175】
また、規制ブレード33で規制されて現像部Cに搬送される現像剤Tの量は、マグネットローラ31の現像磁極S1による現像部Cでの磁界により形成される、現像剤Tの磁気ブラシの現像スリーブ30表面上での高さが、感光体1を取り去った状態で、現像スリーブ30と感光体1との間の最小間隙値の1.2〜5倍となるような量であることが好ましい。例えば、前記最小間隙値が500μm(0.5mm)であれば700μmにするとよい。
【0176】
マグネットローラ31の現像磁極S1は、現像部Cと対向する位置に配置されており、現像磁極S1が現像部Cに形成する現像磁界により現像剤Tの磁気ブラシが形成され、この磁気ブラシが感光体1に接触してドット分布静電潜像を現像する。その際、磁性キャリアの穂(ブラシ)に付着しているトナーも、この穂ではなくスリーブ表面に付着しているトナーも、静電潜像の露光部に転移してこれを現像する。
【0177】
現像磁極S1による現像磁界の現像スリーブ30表面上での強さ(現像スリーブ30表面に垂直な方向の磁束密度)は、そのピーク値が5×10-2T〜2×10-1Tであることが好適である。また、マグネットローラ31には、上記、現像磁極S1の他に、N1、N2、N3、S2極を有している。
【0178】
ここで、感光体1の表面の静電潜像を、現像器を用いて二成分磁気ブラシ法により顕像化する現像工程と現像剤Tの循環系について説明する。
【0179】
現像スリーブ30の回転によりN2極で汲み上げられた現像剤Tは、S2極からN1極と搬送され、その途中で規制ブレード33で層厚が規制され、現像剤薄層を形成する。そして、現像磁極S1の磁界中で穂立ちした現像剤Tが感光体1上の静電潜像を現像する。その後、N3極、N2極間の反発磁界により現像スリーブ30上の現像剤Tは現像室R1内へ落下する。現像室R1内に落下した現像剤Tは、搬送スクリュー37により攪拌搬送される。また、このような循環系において、消費されたトナーに見合った新規のトナーtが、補給口35を経て攪拌室R2内に落下し補給される。
【0180】
一方、感光体1上への上記トナー像の形成に同期して、中間転写体5は、矢印方向(反時計方向)に回転する。感光体1と対向した位置で、転写帯電器5aによって中間転写体5の裏側から、前記トナーと逆極性の電荷が付与されて、中間転写体5上に感光体1上のトナー像が転写される。
【0181】
この転写後、感光体1上に残留している転写残トナーはクリーニング装置6によって除去、この後、感光体1の表面は、さらに前露光ランプ7で除電され、次のトナー像の形成に供される。
【0182】
以下、同様にして感光体1上の静電潜像が現像されて、例えば、特色トナ−を用いた場合の1例としては、感光体1上に形成されたシアントナーa像、シアントナーb像、マゼンタトナー像c像、マゼンタトナー像d像、イエロートナー像、ブラックトナー像が転写帯電器5aにより中間転写体5上に重ねて転写される。
この中間転写体5への感光体1上のトナ−像の転写工程の最終色に同期して、給紙カセット10内に収納された紙等の転写材Pが給紙ローラ11または12により一枚づつ給送され、レジストローラ13により所定のタイミングで第二転写ロ−ラ帯電器14と中間転写体5のニップ部に給紙され、転写材Pに、フルカラー画像が形成される。
【0183】
そして、転写材Pは搬送ベルトを介して、定着装置9に搬送される。定着装置9に搬送された転写材Pは、前記オイル塗布手段によって少量のオイルが塗布されたか、またはオイルが塗布されていない定着ローラ9aと加圧ローラ9bとの間で加熱、加圧され、転写材Pの表面にフルカラー画像が定着される。その後、転写材Pは、排紙ローラ15によりトレイ16上に排紙される。
【0184】
なお、図示しないが、例えば感光体、感光体を帯電させる帯電手段、露光装置、現像装置、感光体に対応して設けられる転写手段、およびクリーニング装置を複数(トナーの種類の数だけ)有し、転写手段の転写位置に一枚の転写材を順に搬送する搬送手段と、定着装置とを有する電子写真装置(いわゆるタンデム方式の画像形成装置)を用いれば、各色のトナー画像を中間転写体に連続的に転写することが可能となる。
【0185】
また、上記、タンデム方式において、中間転写体5を介さずに、直接、転写材Pに、混色の画像を形成することも可能である。
【0186】
本発明においては、電子写真装置として、上述の感光体や現像手段、クリーニング手段等の構成要素のうち、複数のものを装置ユニットとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在のカートリッジに構成してもよい。例えば、感光体1とクリーニング装置6とを一体化して一つの装置ユニットとし、装置本体のレール等の案内部材を用いて着脱自在の構成にしてもよい。このとき上記の装置ユニットの方に帯電手段および/または現像手段を伴って構成してもよい。
【0187】
本発明における露光手段、現像手段、転写手段等の、通常の電子写真プロセスを行うために必要な手段は何ら限定されるもので無く、装置構成上クリーニング手段を除いたクリーナーレスシステムでの電子写真装置の構成要素を利用すること等も可能である。
【0188】
本発明は、上記感光体および帯電手段等を備えた電子写真装置として構成され、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザビームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ、レーザ製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0189】
また、本発明はリモート端末からの画像情報を受信する受信手段を有するファクシミリで構成することもできる。
【0190】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0191】
本発明の図1に示す感光体1を下記のようにして作成した。まず、長さ370mm、外径84mm、肉厚3mmのアルミニウムシリンダー(JIS A3003アルミニウムの合金)を切削加工により作製した。このシリンダーの表面粗さを周方向に測定したところRzjis=0.08μmであった。このシリンダーを洗剤(商品名:ケミコールCT、常盤化学(株)製)を含む純水中で超音波洗浄を行い、続いて洗剤の洗い流し工程を経た後、さらに純水中で超音波洗浄を行って脱脂処理した。
【0192】
次に、アンチモンをドープした酸化スズの被覆膜を有する酸化チタン粉体(商品名:クロノス(登録商標)ECT−62、チタン工業(株)製)60質量部、酸化チタン粉体(商品名:titone(登録商標) SR−1T、堺化学(株)製)60質量部、レゾール型フェノール樹脂(商品名:フェノライト(登録商標) J−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%)70質量部、2−メトキシ−1−プロパノール50質量部、メタノール50質量部とからなる溶液を約20時間、ボールミルで分散させた。この分散液に含有するフィラーの平均粒径は、0.25μmであった。
【0193】
このようにして調合した分散液を、前記アルミニウムシリンダー上に浸漬法によって塗布し、150℃に調整された熱風乾燥機中で48分間加熱乾燥、硬化することにより膜厚15μmの導電層を形成した。
【0194】
次に、共重合ナイロン樹脂(商品名:アミラン(登録商標)CM8000、東レ(株)製)10質量部およびメトキシメチル化ナイロン樹脂(商品名:トレジン(登録商標)EF30T、帝国化学産業(株)製)30質量部をメタノール500質量部およびブタノール250質量部の混合液に溶解した溶液を、前記導電層の上に浸漬塗布し、100℃に調整された熱風乾燥機中に22分間投入し加熱乾燥して、膜厚み0.45μmの下引き層を形成した。
【0195】
次に、例示化合物1−11に示されるアゾ化合物10質量部をシクロヘキサノン215質量部に添加し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で20時間前分散した。さらに、ポリ(ビニル・アセテート−コ−ビニル・アルコール−コ−ビニルベンザール)、(ベンザール化度80mol%、重量平均分子量83000)5質量部をシクロヘキサノン45質量部に溶解した溶液を添加し、サンドミル装置で2時間分散した後、これに375質量部のメチルエチルケトンを添加して希釈して電荷発生層用液を作製し、この塗料を中間層上にディッピング塗工し、80℃で10分間乾燥して、膜厚0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0196】
次に、下記構造式[6]で示されるトリアリールアミン系化合物35質量部
【0197】
【化3】

およびビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロン(登録商標)Z400、三菱エンジニアリングプラスティックス(株)製)50質量部を、モノクロロベンゼン320質量部およびジメトキシメタン50質量部に溶解して調製した電荷輸送層用塗工液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、100℃に調整された熱風乾燥機中に40分間投入し加熱乾燥して膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0198】
本実施例で用いた感光体のΔ500(−700V→−200V)における分光感度[V・m2/cJ]を図3に示す。図3に示すように感光体の最大分光感度時の波長は424nmであった。なお最大分光感度時の波長は、光源としてのハロゲンランプを各波長の干渉フィルターで単色化し、10cm2の導電性ガラスを用いて光放電特性を測定して求めた。
【0199】
次に、この有機感光体に回転駆動用フランジを装着し図1に示す電子写真装置に装着した。露光手段のレーザ露光光学系には、発振波長が405nm、出力5mWのGaN系チップ(日亜化学工業(株)製)を搭載した。除電装置には、発振波長が470nmのBlue LED(日亜化学工業(株)製)を搭載し光量はイメージ露光量の3倍に設定した。また、帯電電位(Vd)−700V、明電位(Vl)−200V、現像バイアス−550V、書き込みピッチは600dpi、ビームスポット径は32μmとなるように設定した。
【0200】
電子写真装置に搭載した散乱型及び正反射型トナー濃度センサに用いた、LED光源の波長は880nmであり、その光量は、感光体表面上の照度で、30μWに設定し、感光体上に形成されたトナ−パッチの濃度を検知した。現像器は、各色とも二成分ネガトナーを用い、A4テスト画像フルカラー2枚間欠耐久を23℃、5%の環境下で実施した。
【0201】
本実施例の感光体において、405nmの波長と880nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、0%であった。
【0202】
結果を表17に示す。
【0203】
初期から80000枚まで、画像上メモリなどの発生は無く、高画質なフルカラー画像を得ることが出来たが、80000枚を越えた時点で、感光体の表面層で成長した傷が、画像上に表出し、感光体の寿命を迎えることになってしまい、耐久を続行することができなくなった。
【実施例2】
【0204】
実施例1の感光体と同様な感光体を作成した。電子写真装置に搭載した散乱型及び正反射型トナー濃度センサの光源として、ハロゲンランプと干渉フィルタ−を組み合わせて、波長が、602nmになるようなものを用い、その波長に感度のあるセンサを用いた以外は、実施例1で使用したものと同様な電子写真装置に先記感光体を投入し、実施例1と同様な評価を行った。
【0205】
本実施例においては、405nmの波長と602nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、3.4%であった。
【0206】
結果を表17に示す。
【0207】
初期から80000枚まで、画像上メモリなどの発生は無く、高画質なフルカラー画像が得ることが出来たが、80000枚を越えた時点で、感光体の表面層で成長した傷が、画像上に表出し、感光体の寿命を迎えることになってしまい、耐久を続行することができなくなった。
【実施例3】
【0208】
実施例1の感光体と同様な感光体を作成した後、実施例1に示す電荷輸送層(第一の電荷輸送層)上に、以下に示す方法で第二の電荷輸送層を形成した。
【0209】
分散剤としてフッ素原子含有樹脂0.45質量部を、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン35質量部と1−プロパノール35質量部に溶解した後、潤滑剤として同様の四フッ化エチレン樹脂粉体(商品名:ルブロン(登録商標)L−2、ダイキン工業(株)製)9質量部を加え、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110EH、米Microfluidics社製)で59MPa(600kgf/cm2)の圧力で3回の処理を施し均一に分散させた。これを10μmのPTFEメンブレンフィルターで加圧ろ過を行い潤滑剤分散液を調製した。その後、下記構造式[7]で示される正孔輸送性化合物21質量部
【0210】
【化4】

を潤滑剤分散液に加え、PTFE製の5μmメンブレンフィルターで加圧ろ過を行い、硬化性表面層としての第二の電荷輸送層用塗工液を調製した。この塗工液を用いて実施例1に示す第一の電荷輸送層上に硬化性表面層として第二の電荷輸送層を浸漬塗布法により塗工した。
【0211】
その後、窒素中において加速電圧150kV、線量1.5×104Gyの条件で電子線を照射した。引き続いて感光体の温度が120℃になる条件で90秒間加熱処理を行った。このときの酸素濃度は10ppmであった。さらに、感光体を大気中で100℃に調整された熱風乾燥機中で、20分間加熱処理を行って、膜厚6μmの第二の電荷輸送層を形成した。
【0212】
次に、図11に示す、乾式ブラスト装置(不二精機製造所製)を用いて、上記の要領で作成した感光体の表面を、粗面化処理した。ブラスト装置構成は、以下のとおりである。
【0213】
容器(不図示)に貯留されている研磨材は11−4の経路よりノズルに導かれ、11−3の経路より導入された圧縮エアを用いて噴射ノズル11−1より噴射され、ワーク支持体11−6により支持され自転している感光体11−7に衝突する。11−5はブラスト砥粒である。
【0214】
上記装置を用い、下記条件にてブラスト処理を行った。
【0215】
研磨材砥粒:球状ガラスビーズ、平均粒径が30μm(商品名:UB−01L (株)ユニオン製)を使用した。エア吹き付け圧力:0.34MPa(3.5kgf/cm2)、ブラストガン移動速度:430mm/min、ワーク(感光体)回転速度:288rpm、ブラストガン吐出口と感光体の距離:100mm、砥粒吐出角度:90°、砥粒供給量:200g/min、ブラスト回数:片道×2回、さらに、感光体表面に残存付着した研磨材を圧縮エアを吹き付けることによって除去した。
【0216】
この電子写真感光体の最表面層の表面形状を測定した。測定は、表面粗さ測定器(商品名:サーフコーダSE3500型、(株)小坂研究所製)を使用して行った。RzjisおよびRSmの感光体周方向の測定は、上記装置用の円周粗さ測定装置を使用して行った。測定条件として、測定長:0.4mm、測定速度:0.1mm/sで測定した。RSm測定時のノイズカットのベースラインレベル設定値は、レベル設定=10%で測定した。
【0217】
本発明において十点平均粗さ(Rzjis)、凹凸の平均間隔(RSm)、最大山高さ(Rp)、最大谷深さ(Rv)はJIS−B0601−2001に記載の方法に準じて測定したものをいう。その結果、Rzjis0.7μm、Rsm43μm、Rp0.2μm、Rv0.75μmであった。
【0218】
本実施例においては、405nmの波長と602nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、3.1%であった。
【0219】
結果を表17に示す。
【0220】
200000枚まで耐久した結果、200000枚時点で、ハ−フト−ン上、かすかにメモリは確認されたが、実使用上、問題の無いレベルであり、高画質なフルカラー画像を、常に得ることが出来た。
【実施例4】
【0221】
実施例3の感光体と同様な感光体を作成した。電子写真装置に搭載した散乱型及び正反射型トナー濃度センサの光源として、ハロゲンランプと干渉フィルタ−を組み合わせて、波長が、621nmになるようなものを用い、その波長に感度のあるセンサを用いた以外は、実施例3で使用したものと同様な電子写真装置に先記感光体を投入し、実施例3と同様な評価を行った。
【0222】
本実施例においては、405nmの波長と621nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、0.7%であった。
【0223】
結果を表17に示す。
【0224】
200000枚まで耐久した結果、200000枚時点でも、メモリは発生せず、高画質なフルカラー画像を、常に得ることが出来た。
【実施例5】
【0225】
実施例3の感光体と同様な感光体を作成した。電子写真装置に搭載した散乱型及び正反射型トナー濃度センサに用いた、LED光源の波長を、880nmに変更した以外は、実施例3で使用したものと同様な電子写真装置に先記感光体を投入し、実施例3と同様な評価を行った。
【0226】
本実施例においては、405nmの波長と880nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、0.0%であった。
【0227】
結果を表17に示す。
【0228】
200000枚まで耐久した結果、200000枚時点でも、メモリは発生せず、高画質なフルカラー画像を、常に得ることが出来た。
【実施例6】
【0229】
実施例5の感光体において、電荷発生物質を例示化合物1-10に変更して感光体を作成した。作成された感光体を、実施例5と同様な電子写真装置に投入し、実施例5と同様な評価を行った。
【0230】
本実施例においては、405nmの波長と880nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、0.0%であった。
【0231】
結果を表17に示す。
【0232】
200000枚まで耐久した結果、200000枚時点でも、メモリは発生せず、高画質なフルカラー画像を、常に得ることが出来た。
【0233】
(比較例1)
実施例1と同様に、アルミシリンダ上に、導電層、下引き層を形成した後、電荷発生層の膜構成物質、形成方法を以下に示すように変更した。
【0234】
電荷発生物質として、CuK(線回折スペクトルにおけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いた。これを、4質量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレック(登録商標)BX−1、積水化学工業(株)製)2質量部、シクロヘキサノン90質量部からなる混合溶液を直径1mmガラスビーズを用いてサンドミルで10時間分散させた後、酢酸エチル110質量部を加えて電荷発生層用塗工液を調製した。この塗工液を先記の下引き層上に浸漬塗布し、80℃に調整された熱風乾燥機中に22分間投入し加熱乾燥して、膜厚0.17μmの電荷発生層を形成した。
【0235】
この電荷発生層上に実施例1と同様な電荷輸送層を形成し、本比較例用の感光体を作成した。
【0236】
この感光体に回転駆動用フランジを装着し、これを、露光手段のレーザ露光光学系に、発振波長が655nm、出力5mWのチップのもの、除電装置には、波長が660nm、光量がイメ−ジ露光量の3倍光量の LEDを搭載した電子写真装置に、投入した。
【0237】
そして、帯電電位(Vd)−700V、明電位(Vl)−200V、現像バイアス−550V、書き込みピッチは600dpi、ビームスポット径は45μmとなるように設定した。
【0238】
その他の設定は、実施例1と同様な電子写真装置を用い、A4テスト画像フルカラー2枚間欠耐久を23℃、5%の環境下で実施した。
【0239】
本比較例の感光体において、655nmの波長と880nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、30%であった。
【0240】
結果を表17に示す。
【0241】
その結果、40000枚時点で、画像上にメモリが表出し始め、50000枚時点では、高濃度な画像上においても、メモリを、はっきりと認識できた。
【0242】
(比較例2)
比較例1と同様の感光体を作成した後、比較例1に示す電荷輸送層(第一の電荷輸送層)上に、実施例3の第二の電荷輸送層を形成した。この感光体を用い、比較例1に用いた電子写真装置により、比較例1と同様な評価を行った。
【0243】
本比較例の感光体において、655nmの波長と880nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、28%であった。
【0244】
結果を表17に示す。
【0245】
その結果、30000枚時点で、画像上にメモリが表出し始め、50000枚時点では、高濃度な画像上においても、メモリを、はっきりと認識できた。
【0246】
(比較例3)
実施例3の感光体と同様な感光体を作成した。電子写真装置に搭載した散乱型及び正反射型トナー濃度センサの光源として、ハロゲンランプと干渉フィルタ−を組み合わせて、波長が、583nmになるようなものを用い、その波長に感度のあるセンサを用いた以外は、実施例3で使用したものと同様な電子写真装置に先記感光体を投入し、実施例3と同様な評価を行った。
【0247】
本実施例においては、405nmの波長と583nmの波長における感光体の分光感度から、求めた分光相対感度値は、18%であった。
【0248】
結果を表17に示す。
【0249】
その結果、60000枚時点で、画像上にメモリが表出し始め、70000枚時点では、高濃度な画像上においても、メモリを、認識できるレベルであった。
【0250】
【表17】

【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】本発明の電子写真装置の例を示す概略図である。
【図2】本発明の図1の電子写真装置における光学濃度検知手段の配置を示す概略図である。
【図3】本発明の感光体の分光感度特性である。
【図4】本発明の電子写真装置の露光手段の例を示す概略図である。
【図5】本発明の電子写真装置の現像手段の例を示す概略図である。
【図6】本発明の電子写真装置のブラシ部材を併設したクリーニング手段の例を示す概略図である。
【図7】本発明の電子写真装置で行われる画像処理の例を示すブロック図である。
【図8】本発明の電子写真装置のフォトセンサから濃度変換までを示すフロー図である。
【図9】本発明の電子写真装置のフォトセンサ出力と画像濃度の関係を示す図である。
【図10】目標値設定のフローチャートを示す図である。
【図11】本発明の感光体の表面を粗面化するために用いた乾式ブラスト装置の概略図である。
【符号の説明】
【0252】
11−1 ノズル
11−2 ノズル固定冶具
11−3 突出エア供給管
11−4 ブラスト砥粒供給管
11−5 ブラスト砥粒
11−6 ワーク固定冶具
11−7 ワーク(感光体)
11−8 ノズル支持体
11−9 ノズル固定アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、前露光手段、電子子写真感光体上のトナー濃度を検知するための散乱型及び/又は正反射型トナー濃度検知手段、及び該トナー濃度検知手段から得られたトナー濃度の情報によりトナ−補給量及び/または、画像濃度を制御する画像濃度制御手段を有する電子写真装置において、該トナ−濃度検知手段は、現像行程後における電子写真感光体上のトナー濃度を検知するためのものであり、下記式で定義される分光相対感度が、5%以下であることを特徴とする電子写真装置。
B/A [1]
(式中、Aは電子写真装置内の像露光波長における感光体の分光感度、Bは電子写真装置内のトナ−濃度検知手段に用いているセンサの光源から感光体に投射される波長における感光体の分光感度)
【請求項2】
前記、該トナ−濃度検知手段に用いている光源の波長における、分光相対感度が、2%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置。
【請求項3】
前記、該電子写真感光体を形成する電荷発生物質が、下記構造式[2]のアゾ化合物を含有することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の電子写真装置:
Cp1−N=N−Ar−N=N−Cp2 [2]
(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の複素環、またはこれらが直接あるいは結合基を介して結合したものを表し、Cp1およびCp2は同一または異なるフェノール性水酸基を有するカプラー残基を表す。ただし、上記Cp1−N=N−と−N=N−Cp2とが同一ベンゼン環に結合する場合を除く)。
【請求項4】
前記構造式[2]が下記構造式[3]で表されることを特徴とする請求項3に記載の電子写真装置。
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子を示し、m1及びm2は0〜4の整数を示し、Cp1およびCp2は同一または異なるフェノール性水酸基を有するカプラー残基を表す)。
【請求項5】
前記構造式[1]のCp1およびCp2の少なくとも一方が下記構造式[4]または[5]であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真装置:
【化2】

(上記式[4]、[5]中、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を表し、また、R3とR4は式中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成してもよく、Zは酸素原子または硫黄原子を表し、nは0または1を表し、Yは置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基または置換基を有してもよい2価の含窒素複素環基を表す)。
【請求項6】
前記構造式[2]が上記構造式[3]であり、かつCp1およびCp2の少なくとも一方が前記構造式[4]または[5]であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真装置。(上記式[3]中、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子を示し、m1及びm2は0〜4の整数を示す)。
【請求項7】
前記、該電子写真感光体が、少なくとも接着層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、かつこの順に積層した機能分離型の構成をとることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項8】
前記、該電荷発生層の電荷発生物質/樹脂物質の比が、1/2〜5/1であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項9】
前記、該電荷発生層の電荷発生物質の量が100mg/m2以上であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項10】
前記、該電子写真感光体が、第2の電荷輸送層を有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項11】
前記、該電子写真感光体の表面層が、重合性官能基を有する化合物を重合、あるいは架橋することにより硬化した化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項12】
前記、該電子写真感光体の表面層は、少なくとも2つ以上の重合性官能基を有する化合物を重合、あるいは架橋することにより硬化した化合物を含有することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載の電子写真装置。
【請求項13】
前記電子写真感光体の表面層は、電子線により硬化した化合物を含有することを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれかに記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−69771(P2009−69771A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240855(P2007−240855)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】