説明

電子制御ユニット及び車両挙動制御装置

【課題】センサ基板及び制御基板が収容されるハウジングを小型化することができ、全体をコンパクトに構成することができる電子制御ユニットを提供することを課題とする。
【解決手段】電子制御ユニット10´であって、センサ33,34が取り付けられたセンサ基板30と、センサ33,34で検出された物理量に基づいて、電気部品の作動を制御する制御基板20と、センサ基板30及び制御基板20が収容されるハウジング40と、を備え、ハウジング40には、電気部品を収容する第一収容室41と、センサ基板30及び制御基板20を階層状態で収容する第二収容室42と、第一収容室41と第二収容室42とを仕切る仕切部44と、が形成され、仕切部44には、第二収容室42に開口した凹部81が形成され、凹部81を利用して、センサ33,34の収容空間であるセンサ収容部80が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御ユニット、及びこの電子制御ユニットを用いた車両挙動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の挙動を安定させるための車両挙動制御装置は、電磁弁や圧力センサなどの電気部品と、モータなどの電動部品と、モータの動力によって駆動する往復動ポンプと、リザーバとなるリザーバ構成部品と、電磁弁やモータの作動を制御する制御基板と、ブレーキ液路が内部に形成され、前記した各種部品が組み付けられる基体と、を備えている。
【0003】
前記した車両挙動制御装置では、車体の挙動を検出するセンサが制御基板に組み込まれている。そして、センサによって検出された車体の挙動に基づいて、制御基板が電磁弁やモータの作動を制御し、ブレーキ液路内のブレーキ液圧を変動させることで、車輪ブレーキの制動力を制御して車両の挙動を安定させている。
【0004】
前記した車両挙動制御装置の電子制御ユニットとしては、センサが取り付けられたセンサ基板と、センサで検出された車体の挙動に基づいて、電磁弁やモータの作動を制御する制御基板と、センサ基板及び制御基板が階層状態で収容されるハウジングと、を備えているものがある。従来の電子制御ユニットでは、ハウジングの内面には外部に突出した凹部が形成され、この凹部にセンサ及びセンサ基板を収容している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような電子制御ユニットでは、センサと制御基板とをハーネスなどの部材によって接続する必要がなくなるため、部品点数を少なくすることができる。また、センサと電子制御ユニットとを別々に車内に収める必要がないため、車両を小型化及び軽量化することができる。
また、制御基板にセンサを取り付ける必要がないため、制御基板の面積を大きくする必要がない。
また、センサに対して検査や調整を行うときには、センサ基板のみが処理対象となるため、センサの検査・調整工程における処理効率を向上させることができる。
さらに、センサの仕様を変更する場合には、センサ基板の構成のみを変更すればよく、制御基板の構成を変更する必要がないため、センサの仕様変更に伴うコスト及び作業時間を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−200013号公報(段落0015、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した従来の電子制御ユニットでは、センサを収容するための部位がハウジングの外面から突出しているため、ハウジングが大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明では、センサ基板及び制御基板が収容されるハウジングを小型化することができ、全体をコンパクトに構成することができる電子制御ユニット、及びこの電子制御ユニットを用いた車両挙動制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、電子制御ユニットであって、所定の物理量を検出するセンサが取り付けられたセンサ基板と、前記センサで検出された物理量に基づいて、電気部品の作動を制御する制御基板と、前記センサ基板及び前記制御基板が収容されるハウジングと、を備え、前記ハウジングの内部には、前記電気部品を収容する第一収容室と、前記センサ基板及び前記制御基板を階層状態で収容する第二収容室と、前記第一収容室と前記第二収容室とを仕切る仕切部と、が形成され、前記仕切部には、前記第二収容室に開口した凹部が形成され、前記凹部を利用して、前記センサの収容空間であるセンサ収容部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
この構成では、センサを収容するセンサ収容部が、仕切部に設けられた凹部を利用して第一収容室に突出するように形成されている。つまり、この構成によれば、第一収容室の空間を有効に利用することで、センサを収容するための部位をハウジングの外面から突出させる必要がない。そのため、前記した構成では、ハウジングを小型化することができ、電子制御ユニット全体をコンパクトに構成することができる。
また、第一収容室とセンサ収容部とを仕切る部位が、仕切部と一体に形成されているため、センサ収容部を形成するための別体の部品を仕切部に設ける必要がない。したがって、前記した構成では、電子制御ユニットの部品点数の増加を抑えることができる。
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の他の構成としては、電子制御ユニットであって、所定の物理量を検出するセンサが取り付けられたセンサ基板と、前記センサで検出された物理量に基づいて、電気部品の作動を制御する制御基板と、前記センサ基板及び前記制御基板が収容されるハウジングと、を備え、前記ハウジングの内部空間には、前記電気部品を収容する第一収容室と、前記センサ基板及び前記制御基板を階層状態で収容する第二収容室と、前記第二収容室と連通するセンサ収容部と、が形成され、前記センサ収容部は、前記第一収容室と前記第二収容室とを仕切る仕切部に設けられた開口部を利用して前記第一収容室に突出するように形成されており、前記センサ収容部には、前記センサが収容されていることを特徴としている。
なお、本発明の他の構成におけるセンサ収容部は、センサを収容するために第一収容室に突出している空間であり、壁部によって仕切られていなくてもよい。
【0012】
この構成では、センサを収容するセンサ収容部が、仕切部に設けられた開口部を利用して第一収容室に突出するように形成されている。つまり、この構成によれば、第一収容室の空間を有効に利用することで、センサを収容するための部位をハウジングの外面から突出させる必要がない。そのため、前記した構成では、ハウジングを小型化することができ、電子制御ユニット全体をコンパクトに構成することができる。
【0013】
前記した電子制御ユニットにおいて、仕切部に設けられた開口部を利用してセンサ収容部を形成した構成では、前記センサ収容部と前記第一収容室とは、導電性を有する遮蔽部材によって仕切られており、前記ハウジング内には、前記ハウジングの外部に設けられた電動部品に給電するための接続端子が収容されており、前記遮蔽部材と前記電動部品とは、前記接続端子を介して電気的に接続されているように構成することができる。
【0014】
この構成では、電気部品から電気ノイズが生じたとしても、導電性を有する遮蔽部材と接続端子とを介して電動部品に流れることになる。すなわち、センサ収容部と第一収容室とを仕切る遮蔽部材がアースされていることになるため、電気ノイズを遮蔽することができる。これにより、電気ノイズを低減するためのコンデンサなどをセンサ基板や制御基板に取り付ける必要がなくなるため、電子制御ユニットの部品点数を少なくするとともに、製造コストを安くすることができる。
また、電気部品から発生した熱が遮蔽部材によって遮断されるため、熱がセンサに与える影響を防ぐことができ、センサの検出精度を高めることができる。
【0015】
前記した電子制御ユニットにおいて、前記センサ基板は、前記仕切部の前記第二収容室側の面に載置されているように構成することができる。
【0016】
この構成では、仕切部に取り付けられたセンサ基板が安定するため、センサ基板の撓みを防ぐとともに、センサの検出精度を高めることができる。
【0017】
前記した電子制御ユニットにおいて、前記センサに角速度センサ及び加速度センサを用いることができる。
この構成では、車体の挙動を検出する場合などに用いられる角速度センサや加速度センサが組み込まれた電子制御ユニットを小さくすることができる。
【0018】
前記した電子制御ユニットを用いた車両挙動制御装置であって、ブレーキ液路が形成された基体と、前記電子制御ユニットと、を備え、前記制御基板は、前記センサによって検出された車体の挙動に基づいて、前記電気部品の作動を制御することで、前記ブレーキ液路内のブレーキ液圧を制御するように構成されていることを特徴としている。
【0019】
この構成では、ハウジングを小型化することができ、電子制御ユニット全体をコンパクトに構成することができるため、車両挙動制御装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子制御ユニットによれば、ハウジングを小型化することができ、全体をコンパクトに構成することができる。
また、前記した電子制御ユニットを用いた車両挙動制御装置によれば、ハウジングを小型化することができ、電子制御ユニット全体をコンパクトに構成することができるため、車両挙動制御装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態の電子制御ユニットを備えた車両挙動制御装置を示した分解斜視図である。
【図2】第一実施形態の電子制御ユニットを備えた車両挙動制御装置を示した側断面図である。
【図3】第一実施形態の電子制御ユニットにおいて、ハウジングにセンサ基板及び制御基板を取り付ける前の状態を示した図で、ハウジングを表側から見た斜視図である。
【図4】第一実施形態の電子制御ユニットにおいて、ハウジングを裏側から見た斜視図である。
【図5】第一実施形態の電子制御ユニットに用いられる遮蔽部材及びセンサ基板を示した図で、(a)は遮蔽部材の斜視図、(b)はセンサ基板の斜視図である。
【図6】第一実施形態の電子制御ユニットにおいて、ハウジングにセンサ基板を取り付けた状態を示した図で、ハウジングを表側から見た斜視図である。
【図7】第一実施形態の電子制御ユニットにおいて、ハウジングにセンサ基板及び制御基板を取り付けた状態を示した図で、(a)はハウジングを表側から見た斜視図、(b)はハウジングを表側から見た平面図である。
【図8】第二実施形態の電子制御ユニットを備えた車両挙動制御装置を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
この実施形態では、車輪ブレーキの制動力を制御することで、自動車の挙動を安定させる車両挙動制御装置に適用される電子制御ユニットを例として説明する。
【0023】
<第一実施形態>
[車両挙動制御装置の構成]
まず、図1を参照して、第一実施形態の車両挙動制御装置Uの構成を説明する。
車両挙動制御装置Uは、電磁弁Vや圧力センサSなどの電気部品、モータ200などの電動部品、往復動ポンプPなどが組み付けられる基体100と、車体の挙動を検出して、電磁弁Vの開閉やモータ200の作動を制御する電子制御ユニット10と、を主に備えている。基体100内にはブレーキ液路が形成されており、電子制御ユニット10が車体の挙動に基づいて、電磁弁Vやモータ200を作動させることで、ブレーキ液路内のブレーキ液圧を変動させるように構成されている。
【0024】
(基体の構成)
基体100は、図1に示すように、略直方体に形成された金属部品であり、その内部にはブレーキ液路(油路)が形成されている。
基体100の各面のうち、表側の面101には、電磁弁Vや圧力センサSといった電気部品が装着される有底の取付穴151・・・などが複数形成されている。
また、基体100の上面103には、車輪ブレーキ(図示せず)に至る配管が接続される四つの出口ポート152・・・などが形成されている。
また、基体100の下面には、リザーバを構成するリザーバ構成部品Rが組付けられる二つのリザーバ穴153などが形成されている。
また、基体100の側面105には、往復動ポンプPが装着されるポンプ孔155などが形成されている。
なお、基体100に設けられた穴は、直接に、或いは基体100の内部に形成された図示せぬブレーキ液路を介して互いに連通している。
【0025】
(モータの構成)
モータ200は、往復動ポンプPの動力源となる電動部品であり、図2に示すように、基体100の裏側の面102に一体的に固着されている。なお、モータ200と基体100の裏側の面102との間には、モータ200と基体100の裏側の面102との間を液密にシールする無端状のシール部材214が介設されている。
モータ200の出力軸210には、偏心軸部211が設けられており、この偏心軸部211には、ボールベアリング212が嵌め込まれている。偏心軸部211及びボールベアリング212は、モータ装着穴154に挿入されている。出力軸210の上方には、図示せぬロータに電力を供給するためのモータバスバー220が接続されている。モータバスバー220は、端子孔140に挿通されており、ハウジング40内に設けられた接続端子であるターミナルTを介して、制御基板20に接続されている。
【0026】
[電子制御ユニットの構成]
電子制御ユニット10は、図1に示すように、基体100から突出した電気部品や、センサ基板30及び制御基板20などを収容するハウジング40と、このハウジング40の開口部を塞ぐカバー50と、を備えている。
【0027】
(ハウジングの構成)
ハウジング40は、図2に示すように、基体100の表側の面101から突出する電磁弁Vや圧力センサSなどの電気部品を覆った状態で、基体100の表側の面101に一体的に固着される合成樹脂製の箱体である。
このハウジング40は、基体100側の反対側の面(図2の右側の面)及び基体100側の面(図2の左側の面)が開口している。ハウジング40の内部空間の裏側には 電磁弁V、電磁コイルV1、圧力センサSなどの電気部品を収容する第一収容室41が形成され、内部空間の表側には、センサ基板30や制御基板20を収容する第二収容室42が形成されている。
【0028】
ハウジング40は、第一収容室41を形成する第一周壁部41aと、この第一周壁部41aの側方に配置されたコネクタ接続部43(図3参照)と、第二収容室42を形成する第二周壁部42aと、第一収容室41と第二収容室42とを仕切る仕切部44(図3参照)と、を備えている。
【0029】
第一周壁部41aは、電気部品を取り囲む部位であり、基体100の表側の面101の外周縁に当接するフランジ41bを備えている。このフランジ41bの適所には取付孔41cが形成されている(図4参照)。
なお、フランジ41bの基体100側の端面には、フランジ41bの内周に沿って、無端状のシール部材41dが装着されている。このシール部材41dは、基体100の表側の面101に密着して、基体100とハウジング40との間をシールする部材である。
【0030】
第二周壁部42aは、センサ基板30及び制御基板20を取り囲む部位であり、第一周壁部41a及びコネクタ接続部43(図3参照)の表側に配置されている。
図3に示すように、第二周壁部42aの外周形状は略長方形となっており、長手方向の二辺(図3の上下二辺)には外側に膨らんだ部位が形成されている。この第二周壁部42aの膨らんだ部位の内側にはターミナル集約部45が形成されている。
ターミナル集約部45では、金属部品である複数のターミナル45a・・・の表側の面(第二収容室42側の面)が制御基板20の外周側で露出している。図2に示すように、ターミナル45aから延びる導電部材45bは、仕切部44に埋設されており、仕切部44の裏側(第一収容室41側)で電磁コイルV1の端子、圧力センサSの端子、モータ200のモータバスバー220に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0031】
図3に示すコネクタ接続部43は、図示しない外部配線ケーブルの端部に設けられたコネクタが接続される部位である。コネクタ接続部43は、第二収容室42からコネクタ接続部43の底壁を通って外面(外部に露出している面)に導出される複数の接続端子43a・・・(図4参照)と、この接続端子43a・・・を取り囲む側壁43bと、を備えている。
【0032】
仕切部44は、図2に示すように、基体100の表側の面101に間隔を空けて対向した板状の部位である。本実施形態の仕切部44は、図3に示すように、略長方形に形成されており、第二収容室42側の面の四隅には基板保持部44a・・・がそれぞれ突設されている。
基板保持部44aは、制御基板20(図7参照)を支持する部位であり、各基板保持部44a・・・の突端面は制御基板20の裏側の面に当接する。また、基板保持部44aの突端面には取付穴44bが形成されており、取付穴44bの内周面にはねじ溝が形成されている。
また、仕切部44には、図2に示すように、ターミナルTが貫通するターミナル取付部44dが形成されており、ターミナルTの一端側は第一収容室41に突出し、他端側は第二収容室42に突出している。
【0033】
仕切部44の第二収容室42側の面の中央付近において、ターミナル取付部44dに隣接した位置には開口部71が形成されている。この開口部71には、第一収容室41に突出するようにして、箱状の遮蔽部材72が取り付けられている。この遮蔽部材72の内部空間は、第二収容室42に連通するセンサ収容部70となっている。すなわち、第一収容室41と第二収容室42とを仕切る仕切部44に設けられた開口部71を利用して、センサ収容部70が形成されている。
【0034】
遮蔽部材72は、導電性を有する金属製のケースであり、図5(a)に示すように、直方体の箱状で上面に開口部72aが形成されている。遮蔽部材72の開口部72aの縁部には、横方向に突出したフランジ72bが全周に亘って形成されている。また、遮蔽部材72の長手方向の一方の側部(図2の右側)に形成されたフランジ72bの長手方向の中央部には、垂直に立ち上げられたアース端子72cが形成されている。
【0035】
遮蔽部材72は、図2に示すように、仕切部44に形成された開口部71の内周面にフランジ72bが埋設されることで、下部が第一収容室41に突出するようにして、開口部71内に取り付けられている。本実施形態では、ハウジング40を製作するときに、モールド成形によって遮蔽部材72を仕切部44に取り付けている。
【0036】
また、遮蔽部材72のアース端子72cの先端部は、仕切部44の第二収容室42側の面から突出しており、このアース端子72cがターミナルTの他端部T1に溶接されることで、遮蔽部材72がターミナルTに対して電気的に接続される。ターミナルTにはモータバスバー220が接続されるため、遮蔽部材72とモータ200とは、ターミナルT及びモータバスバー220を介して電気的に接続されることになる。
【0037】
また、図3に示すように、仕切部44の第二収容室42側の面には、開口部71を長手方向に挟むようにして(すなわち、図3の左右方向に所定間隔を離して)、二体の基準ピン46,46が突設されている。また、仕切部44の第二収容室42側の面には、開口部71を長手方向に挟むようにして(すなわち、図3の左右方向に所定間隔を離して)、取付穴44c・・・が二つずつ形成されており、取付穴44cの内周面にはねじ溝が形成されている。
【0038】
(カバーの構成)
カバー50は、図1に示すように、ハウジング40の基体100側の反対側の開口部を密閉する合成樹脂製の蓋体であり、溶着や接着等の手段によりハウジング40の表側の端面に固着される。
【0039】
(センサ基板の構成)
センサ基板30は、図5(b)に示すように、電子回路(導電部材)がプリントされた長方形の基板本体31に、角速度センサ33や加速度センサ34などの電子部品を取り付けたものである。基板本体31がハウジング40の仕切部44の第二収容室42側の面に取り付けられることで、センサ基板30は制御基板20よりも仕切部44側で第二収容室42内に固定される(図6参照)。
このセンサ基板30では、角速度センサ33及び加速度センサ34によって、車体の挙動(所定の物理量)を検出するように構成されている。
【0040】
センサ基板30は、図6に示すように、角速度センサ33及び加速度センサ34が取り付けられた面を仕切部44側に向けた状態で、仕切部44の第二収容室42側の面に載置される。センサ基板30を仕切部44に取り付けるときには、図2に示すように、角速度センサ33及び加速度センサ34は、第二収容室42側から仕切部44に形成されたセンサ収容部70の遮蔽部材72内に収容される。
【0041】
図5(b)に示すように、センサ基板30の長手方向の両端部には、仕切部44に形成された取付穴44c・・・(図3参照)に連通する挿通孔32・・・が二つずつ形成されている。そして、図6に示すように、センサ基板30の表側から挿通孔32に挿通させた固定ボルト36の先端部を、仕切部44の取付穴44c(図3参照)内に螺着させることで、センサ基板30が仕切部44の第二収容室42側の面に取り付けられる。
なお、センサ基板30は、その安定性を高めるため、図6に示すように、仕切部44に形成された開口部71の縁部の全周に基板本体31が載置されることが望ましい。
【0042】
また、センサ基板30には、仕切部44に突設された基準ピン46,46(図3参照)が挿通される位置決め孔35,35(図5(b)参照)が形成されている。したがって、センサ基板30を仕切部44に取り付けるときには、各位置決め孔35,35に各基準ピン46,46を挿通させることで、センサ基板30を仕切部44の第二収容室42側の面上に位置決めすることができる。そして、センサ基板30が仕切部44の第二収容室42側の面上に位置決めされたときに、センサ基板30に取り付けられた角速度センサ33の検出軸が車両の上下方向に一致し、加速度センサ34の検出軸が車両の前後方向及び左右方向に一致するように構成されている。
【0043】
(制御基板の構成)
制御基板20は、図7に示すように、電子回路(導電部材)がプリントされた長方形の基板本体21に、半導体チップなどの電子部品26を取り付けたものである。電子部品26が取り付けられている面を表側にして、基板本体21がハウジング40の仕切部44の第二収容室42側に取り付けられることで、制御基板20は第二収容室42内に固定される(図2参照)。
この制御基板20では、図2に示すセンサ基板30や圧力センサSといった各種センサから得られた情報や、予め記憶させておいたプログラム等に基づいて、電磁弁Vの開閉やモータ200の作動を制御するように構成されている。
【0044】
制御基板20では、図7に示すように、基板本体21の四隅近傍に挿通孔22がそれぞれ形成されている。制御基板20を仕切部44(図3参照)の第二収容室42側に取り付けたときには、挿通孔22が基板保持部44a(図3参照)の取付穴44bに連通する。そして、制御基板20の表側から挿通孔22に挿通させた固定ボルト23の先端部を、基板保持部44a(図3参照)の取付穴44b内に螺着させることで、制御基板20が仕切部44の第二収容室42側に取り付けられる。これにより、図2に示すように、制御基板20の裏側の面と、仕切部44の第二収容室42側の面とが所定間隔を離して平行状態に配置され、仕切部44の第二収容室42側の面に取り付けられたセンサ基板30と、制御基板20とが第二収容室42内に階層状態で収容される。
【0045】
仕切部44(図3参照)の第二収容室42側に取り付けられた制御基板20では、制御基板20の電子回路と、ターミナル集約部45のターミナル45aとが、ボンディングワイヤ45cによって電気的に接続される。これにより、制御基板20に取り付けられた各種の電子部品と、基体100に取り付けられた電気部品とが電気的に接続される。
【0046】
また、図2に示す仕切部44に取り付けられたセンサ基板30では、仕切部44に埋設された導電部材(図示せず)が電気的に接続されており、この導電部材がターミナル集約部45のターミナル45aに対して電気的に接続されることで、センサ基板30の電子回路と、制御基板20の電子回路とが電気的に接続される。これにより、センサ基板30に取り付けられた角速度センサ33及び加速度センサ34で検出された車両の挙動情報を制御基板20に出力することができる。
【0047】
[電子制御ユニット及び車両挙動制御装置の作用効果]
第一実施形態の電子制御ユニット10では、図2に示すように、角速度センサ33及び加速度センサ34を収容するセンサ収容部70が、仕切部44に設けられた開口部71を利用して第一収容室41に突出するように形成されている。つまり、この電子制御ユニット10によれば、第一収容室41の空間を有効に利用することで、角速度センサ33及び加速度センサ34を収容するための部位をハウジング40の外面から突出させる必要がなくなる。
また、センサ基板30と制御基板20とが階層状態でハウジング40内に収められており、制御基板20の面上に角速度センサ33及び加速度センサ34を取り付ける必要がないため、制御基板20の面積を大きくする必要がなくなる。
したがって、本実施形態の電子制御ユニット10では、ハウジング40を小型化することができ、電子制御ユニット10全体をコンパクトに構成することができる。
なお、第一収容室41は、電磁弁Vや圧力センサSといった電気部品を組み付けるときの公差を考慮したり、ハウジング40から電気部品に伝わる振動を防ぐために、仕切部44と電気部品との隙間が多く形成されている。第一実施形態では、この隙間に角速度センサ33及び加速度センサ34を収容することで、角速度センサ33及び加速度センサ34を収容するための部位をハウジング40の外面に突出させることなく、ハウジング40を小型化している。
【0048】
また、図6に示すように、センサ基板30は、仕切部44の第二収容室42側の面に載置されており、仕切部44に取り付けられたセンサ基板30が安定するため、センサ基板30の撓みを防ぐとともに、角速度センサ33及び加速度センサ34の検出精度を高めることができる。
【0049】
また、図2に示すように、角速度センサ33及び加速度センサ34を収容する遮蔽部材72が、モータ200に対して電気的に接続されているため、電磁弁Vやモータ200などから電気ノイズが生じたとしても、導電性を有する遮蔽部材72とターミナルTとを介してモータ200に流れることになる。すなわち、センサ収容部70と第一収容室41とを仕切る遮蔽部材72がアースされていることになるため、電気ノイズを遮蔽することができる。これにより、電気ノイズを低減するためのコンデンサなどをセンサ基板30や制御基板20に取り付ける必要がなくなるため、電子制御ユニット10の部品点数を少なくするとともに、製造コストを安くすることができる。
また、電磁弁Vやモータ200などから発生した熱が遮蔽部材72によって遮断されるため、熱が角速度センサ33及び加速度センサ34に与える影響を防ぐことができ、角速度センサ33及び加速度センサ34の検出精度を高めることができる。
【0050】
また、センサ基板30と制御基板20とは別々の基板となっており、角速度センサ33及び加速度センサ34に対して検査や調整を行うときには、センサ基板30のみが処理対象となるため、検査・調整工程の処理効率を向上させることができる。
また、角速度センサ33及び加速度センサ34の仕様を変更する場合には、センサ基板30の構成を変更すればよく、制御基板20の構成を変更する必要がないため、角速度センサ33及び加速度センサ34の仕様変更に伴うコスト及び作業時間を低減することができる。
【0051】
また、図6に示すように、センサ基板30の位置決め孔35,35(図5(b)参照)にハウジング40の仕切部44に形成された基準ピン46,46を挿通(係合)させることで、センサ基板30はハウジング40の仕切部44に対して位置決めされる。これにより、角速度センサ33及び加速度センサ34の検出軸と、車両の前後左右方向に設定された基準軸とを簡単に一致させることができるため、センサ基板30及び制御基板20の組み付け効率を向上させることができる。
【0052】
前記した電子制御ユニット10を用いた図1の車両挙動制御装置Uでは、ハウジング40を小型化することができ、電子制御ユニット10全体をコンパクトに構成することができるため、車両挙動制御装置Uを小型化することができる。
また、角速度センサ33及び加速度センサ34(図2参照)が電子制御ユニット10内に組み込まれているため、車両挙動制御装置Uを車両に対して組み付けるときに、ハーネスにとらわれることなく簡単に組み付けることができる。
【0053】
[変形例]
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
例えば、第一実施形態では、図2に示すように、ハウジング40の仕切部44に形成された開口部71内に遮蔽部材72を取り付けることでセンサ収容部70を形成しているが、仕切部44に形成した開口部71内に遮蔽部材72を取り付けることなく、センサ収容部70と第一収容室41との仕切りを省略し、角速度センサ33及び加速度センサ34を開口部71から第一収容室41内に突出させてもよい。
【0054】
また、第一実施形態では、図5(a)に示す遮蔽部材72が導電性を有する金属製の部材によって形成されているが、導電性を有する部材であれば、遮蔽部材72の材料は限定されるものではなく、導電性を有する合成樹脂材を用いることもできる。また、遮蔽部材72は箱状のケースとなっているが、その形状は限定されるものではなく、例えば、板状の遮蔽部材によって、センサ収容部70と第一収容室41とを仕切ることもできる。
【0055】
<第二実施形態>
第二実施形態の電子制御ユニット10´は、第一実施形態の電子制御ユニット10´(図2参照)と略同じ構成であり、図8に示すように、第一収容室41とセンサ収容部80とを仕切る部位を、ハウジング40内の仕切部44と一体に形成した点が異なっている。
第二実施形態の仕切部44には、第二収容室42に開口した平面視で矩形状の凹部81が形成されている。第二実施形態のセンサ収容部80は、凹部81を利用して形成されている。
センサ収容部80の開口部は、センサ基板30によって塞がれており、センサ収容部80内にはセンサ基板30に取り付けられた角速度センサ33及び加速度センサ34が収容されている。
【0056】
第二実施形態の電子制御ユニット10´では、角速度センサ33及び加速度センサ34を収容するセンサ収容部80が、仕切部44に設けられた凹部を利用して第一収容室41に突出するように形成されている。つまり、この構成によれば、第一収容室41の空間を有効に利用することで、角速度センサ33及び加速度センサ34を収容するための部位をハウジング40の外面から突出させる必要がない。そのため、ハウジング40を小型化することができ、電子制御ユニット10´全体をコンパクトに構成することができる。
また、第一収容室41とセンサ収容部80とを仕切る部位が、仕切部44と一体に形成されているため、センサ収容部80を形成するための別体の部品を仕切部44に設ける必要がない。したがって、この構成では、電子制御ユニット10´の部品点数の増加を抑えることができる。
【符号の説明】
【0057】
U 車両挙動制御装置
10 電子制御ユニット(第一実施形態)
10´ 電子制御ユニット(第二実施形態)
20 制御基板
30 センサ基板
33 角速度センサ
34 加速度センサ
40 ハウジング
41 第一収容室
42 第二収容室
43 コネクタ接続部
44 仕切部
46 基準ピン
50 カバー
70 センサ収容部(第一実施形態)
71 開口部
72 遮蔽部材
72c アース端子
80 センサ収容部(第二実施形態)
81 凹部
100 基体
200 モータ
220 モータバスバー
T ターミナル(接続端子)
V 電磁弁
V1 電磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理量を検出するセンサが取り付けられたセンサ基板と、
前記センサで検出された物理量に基づいて、電気部品の作動を制御する制御基板と、
前記センサ基板及び前記制御基板が収容されるハウジングと、を備え、
前記ハウジングの内部には、前記電気部品を収容する第一収容室と、前記センサ基板及び前記制御基板を階層状態で収容する第二収容室と、前記第一収容室と前記第二収容室とを仕切る仕切部と、が形成され、
前記仕切部には、前記第二収容室に開口した凹部が形成され、前記凹部を利用して、前記センサの収容空間であるセンサ収容部が形成されていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項2】
所定の物理量を検出するセンサが取り付けられたセンサ基板と、
前記センサで検出された物理量に基づいて、電気部品の作動を制御する制御基板と、
前記センサ基板及び前記制御基板が収容されるハウジングと、を備え、
前記ハウジングの内部空間には、前記電気部品を収容する第一収容室と、前記センサ基板及び前記制御基板を階層状態で収容する第二収容室と、前記第二収容室と連通するセンサ収容部と、が形成され、
前記センサ収容部は、前記第一収容室と前記第二収容室とを仕切る仕切部に設けられた開口部を利用して前記第一収容室に突出するように形成されており、
前記センサ収容部には、前記センサが収容されていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項3】
前記センサ収容部と前記第一収容室とは、導電性を有する遮蔽部材によって仕切られており、
前記ハウジング内には、前記ハウジングの外部に設けられた電動部品に給電するための接続端子が収容されており、
前記遮蔽部材と前記電動部品とは、前記接続端子を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御ユニット。
【請求項4】
前記センサ基板は、前記仕切部の前記第二収容室側の面に載置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項5】
前記センサは、角速度センサ及び加速度センサであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項6】
ブレーキ液路が形成された基体と、請求項5に記載の電子制御ユニットと、を備えている車両挙動制御装置であって、
前記制御基板は、前記センサによって検出された車体の挙動に基づいて、前記電気部品の作動を制御することで、前記ブレーキ液路内のブレーキ液圧を制御するように構成されていることを特徴とする車両挙動制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−6367(P2010−6367A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103551(P2009−103551)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】