説明

電子回路ユニット及びこのユニットの製造方法

【課題】カバーの位置ずれを防止しつつ、隅部分の欠けを防止できる電子回路ユニット及びこのユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】取付脚46を有するカバー40と、カバーに覆われる上面を有するとともに、上面の隅部分で交差する縦辺及び横辺でそれぞれ構成され、上面に連なる側面8,9を有した樹脂製の絶縁基板2とを具備し、絶縁基板は、横辺にて絶縁基板に向けて窪んで形成され、取付脚に当接されるカバー位置決め部31,32と、横辺と縦辺とを跨ぎ、絶縁基板に向けて窪んで形成され、カバー位置決め部に連なる角落とし部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短距離無線通信機器等に用いられて好適な電子回路ユニット及びこのユニットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子回路ユニットは、縦辺及び横辺で区画された上面を有した絶縁基板を備え、この上面の適宜位置には配線パターンが設けられる。このパターン上には各種の電子部品が搭載され、所望の電気回路が構成されている。
また、この上面は金属製のカバーで覆われており、カバーは配線パターンや電子部品を外部から遮蔽する。そして、このカバーを取り付けた電子回路ユニットが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、当該電子回路ユニットは、その絶縁基板の側面に複数の凹部を有しており、この凹部は上面の隅部分から下方に向けて延び、平面視で略1/4円の長さの円弧が縦辺及び横辺を跨いで形成されている。これら凹部の底面とカバーの取付脚の下面とは半田にて接合され、カバーが絶縁基板に固定される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−64157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、カバーの位置が絶縁基板に対してずれ易いとの問題がある。
なぜならば、上述の取付脚は、凹部の底面には当接しているものの、この凹部の内周面、つまり、絶縁基板の側面には当接しておらず、半田で接合する前の取付脚は凹部内で動いてしまうからである。
【0006】
ここで、この取付脚の位置ずれを防止するにあたり、この隅部分の近傍に、平面視で円形の孔(サイドスルー孔)を縦辺や横辺に交わらないように穿設すると、電子部品を上面に実装できない領域(実装不可エリア)が大きくなるし、この隅部分と縦辺や横辺とで形成された箇所がユニットの製造時、例えば、大判の基板から切断する際に、欠けるとの懸念がある。
【0007】
また当該隅部分に、平面視で略1/2円の長さの円弧で形成することも考えられる。しかし、当該円弧を隅部分の近傍に単に設けると、この円弧と縦辺或いは横辺とで区画された隅部分が細長く残る故、この隅部分がやはり欠け易くなる。
一方、この略1/2円の長さの円弧を隅部分から大きく離間させると、当該円弧と縦辺或いは横辺とで区画された隅部分が太く残るため、この隅部分がデッドスペースになってしまうとの問題が新たに生ずる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、カバーの位置ずれを防止しつつ、隅部分の欠けを防止できる電子回路ユニット及びこのユニットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の発明は、電子回路ユニットである。そして、取付脚を有するカバーと、カバーに覆われる上面を有するとともに、上面の隅部分で交差する縦辺及び横辺でそれぞれ構成され、上面に連なる側面を有した樹脂製の絶縁基板とを具備し、絶縁基板は、横辺にて絶縁基板に向けて窪んで形成され、取付脚に当接されるカバー位置決め部と、横辺と縦辺とを跨ぎ、絶縁基板に向けて窪んで形成され、カバー位置決め部に連なる角落とし部とを備えている。
【0010】
第1の発明によれば、絶縁基板は上面を有し、この上面はカバーに覆われる。また、この基板は、その上面に連なる側面を有しており、この側面は、上面を区画する縦辺及び横辺で構成され、これら縦辺及び横辺の交差部分が隅部分に相当する。
ここで、当該側面には、カバー位置決め部及び角落とし部が絶縁基板に向けて窪んでそれぞれ形成されている。
【0011】
詳しくは、カバー位置決め部は、横辺を含む側面に、カバーの取付脚を当接させており、従来に比して絶縁基板に対するカバーの位置ずれを防止できる。
そして、角落とし部は、この横辺と当該横辺に交差する縦辺とを跨いでカバー位置決め部に連なっており、絶縁基板から隅部分を予め排除する。よって、その隅部分の欠けを防止できるし、この隅部分がデッドスペースにもならない。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の構成において、カバー位置決め部は、隅部分を避けたこの隅部分の近傍位置に形成されていることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、角落とし部に連なるカバー位置決め部を隅部分に寄せて形成すれば、上面に対して電子部品を実装できない領域を確実に減らすことができる。
【0013】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、カバー位置決め部及び角落とし部は、同径の穴あけ具にて絶縁基板を貫通してそれぞれ穿設されており、カバー位置決め部は、平面視で1/4円以上の長さであって1/2円未満の長さの円弧で形成される一方、角落とし部は、平面視で1/4円未満の長さの円弧で形成されていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、カバー位置決め部及び角落とし部が、同径の穴あけ具で穿設されていれば、異なる径の工具を用いた場合に比して、カバー位置決め部や角落とし部を絶縁基板に容易に加工可能になる。
さらに、カバー位置決め部を平面視で1/4円以上の長さであって1/2円未満の長さの円弧で形成し、角落とし部を平面視で1/4円未満の長さの円弧で形成すれば、カバー位置決め部を隅部分寄りに形成できるので、上面に対して電子部品を実装できない領域を確実に減らすことができる。
【0015】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、取付脚は、カバー位置決め部に当接するとともに、カバー位置決め部と角落とし部との連結部分に当接していることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、取付脚が、カバー位置決め部と、その角落とし部との連結部分とで保持可能になり、カバーの位置ずれをより一層確実に防止できる。
【0016】
上記目的を達成するための第5の発明は、ユニット本体の上面の隅部分で交差する縦辺及び横辺に沿って切断し、上面を覆うカバーの取付脚の位置決めをユニット本体の側面に形成させる電子回路ユニットの製造方法である。
そして、ユニット本体の横辺上に中心を有し、ユニット本体の隅部分を避け、隅部分から所定間隔の位置に第1貫通孔を穿設する工程と、隅部分を通る縦線を挟んでユニット本体に隣接した他のユニット本体に対し、横線と同一線状の他の横辺上に中心を有し、隅部分を避け、隅部分から上記所定間隔の位置に第2貫通孔を穿設する工程と、隅部分に中心を有し、第1貫通孔及び第2貫通孔の双方に交わる第3貫通孔を穿設する工程とを含む。
【0017】
第5の発明によれば、各ユニット本体を区画する横辺上に、奇数個、具体的には少なくとも3個の貫通孔を穿設し、平面視で串団子状の連続した長形を形成させるにあたり、第1貫通孔は、その横辺上に中心を有する一方、隅部分から所定間隔の位置に穿設される。次いで、第2貫通孔は、この隅部分を共有する他のユニット本体に対し、同じく横辺上に中心を有するものの、当該隅部分から所定間隔の位置に穿設される。
【0018】
つまり、第1貫通孔及び第2貫通孔は、隅部分を残して当該隅部分から等間隔の位置にそれぞれ形成されており、続いて、この隅部分に中心を有した第3貫通孔を穿設する場合にも、穴あけ具の先端は基板に確実に食い付くことができる。よって、串団子状の連続長形の貫通孔を穿設する場合に、隣り合った貫通孔の順に加工する場合に比して、この工具の先端が既に穿設済みの空間に向けて滑らず、当該工具には曲げの大きな力が作用しない。この結果、工具の折れを回避でき、ユニットの製造効率の向上に寄与する。
【0019】
第6の発明は、第5の発明の構成において、第1貫通孔、第2貫通孔、及び第3貫通孔は、電子部品を上面に実装するために用いる穴あけ具にて絶縁基板を貫通して穿設されていることを特徴とする。
第6の発明によれば、第5の発明の作用に加えてさらに、第1〜第3貫通孔が、配線用の穴あけ具、つまり、電子部品を上面に実装するために用いられる穴あけ具で穿設されていれば、この上面への穴あけに続いて横辺への穴あけをすれば良く、カバー位置決め部や角落とし部を絶縁基板により一層容易に加工できる。
【0020】
特に、第1〜第3貫通孔をルーターエンドミルで形成する場合には、基板の外形加工に耐える強度が必要になるため、その径は大きくなり、これでは、基板の加工量が多くなるし、上記配線用の穴あけとは別工程で実施しなければならないが、本発明では当該問題も生じない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カバー位置決め部に加えて角落とし部を基板に設けており、カバーの位置ずれを防止し、さらに、隅部分の欠けを防止する電子回路ユニット及びこのユニットの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
当該形態の電子回路ユニット1は例えば短距離無線通信機器に搭載され、図1に示されるように、ユニット本体2と金属製のシールドカバー(カバー)40とから構成される。
本実施例のユニット本体2は低温焼成によるセラミック基板ではなく、樹脂製の絶縁基板であり、略四角形の板状に形成されている。
【0023】
詳しくは、図1,2に示されるように、ユニット本体2は、平面視で略四角形の上面4及び下面14を有している。
この上面4及び下面14の周縁は、縦辺10及び横辺11で区画され、4つの側面8,9が形成される。具体的には、この側面8は縦辺10を含み、側面9は横辺11を含んでおり、側面8と側面9とが交差し、側面9,9は対峙して構成されている。
【0024】
この上面4の適宜位置には所望の配線パターン5が設けられ、また、このパターン5上には各種の電子部品6が搭載されており、所望の電気回路が構成されている。
ここで、本実施例の横辺11を含む側面9,9にはカバー位置決め孔(カバー位置決め部)31,32が形成されている。
【0025】
具体的には、図3に示される如く、本実施例のカバー位置決め孔31,32は、その内径が0.3mm〜0.8mmであり、横辺11を有した側面9から本体2の内部に向けて窪んで形成されている。そして、位置決め孔31が同図で見て右側に位置し、位置決め孔32は左側に位置している。
また、各位置決め孔31,32は、平面視で1/4円以上の長さであって1/2円未満の長さの円弧で形成される。
【0026】
より詳しくは、これら位置決め孔31,32は、図示しないドリル(穴あけ具)で上面4と下面14とを貫通して穿設されており、本体2の隅部分、つまり、縦辺10と横辺11との交差部分の近傍位置に形成されている。換言すれば、そのドリルの先端は横辺11上に中心を有しており、ドリルの外周は横辺11と横辺11とを跨いだ位置に配置され、本体2を貫通している。
【0027】
一方、本実施例の側面8,9には角落とし孔(角落とし部)33,33が形成されている。
詳しくは、本実施例の角落とし孔33もまた、その内径が0.3mm〜0.8mmであり、本体2の内部に向けて窪んで形成されているが、1つの本体2で見て、1つの角落とし孔33が、位置決め孔31、或いは位置決め孔32のいずれかに交わり、平面視で1/4円未満の長さの円弧で形成されている。
【0028】
この角落とし孔33もまた、上述したドリルと同径のドリルで上面4と下面14とを貫通して穿設され、横辺11を有した側面9と縦辺10を有した側面8とを跨いて形成されている。換言すれば、このドリルの先端は本体2の隅部分上に中心を有し、ドリルの外周は、位置決め孔31(或いは32)の途中に連なり、横辺11と縦辺10とを跨いだ位置に配置され、本体2を貫通している。これにより、図1,2等の本体2には隅部分が存在しない。
【0029】
ここで、上述したカバー位置決め孔31,32の内周面には、カバー40が当接される。
このカバー40は、図1に示されるように、箱型形状をなし、略四角形の上面41を有している。この上面41は本体2の上面4と略相似形に形成されており、上面41の周縁には4つの側面42,44が形成され、側面42と側面44とが交差し、側面44,44は対峙して構成され、この側面44が本体2の側面9の近傍に配置される。
【0030】
各側面44の下端部分には、位置決め孔31,32の個数に等しい4つの脚(取付脚)46が下方向に向けてそれぞれ延設されており、カバー40を本体2に載置すると、カバー40の下面が、図3に示された1点鎖線の外側と本体2の周縁の内側との間で上面4に当接し、この図3の一部を拡大した図4にも示されるように、1つの脚46の内側面が位置決め孔31の内周面に当接する。なお、位置決め孔32についても同様である。
【0031】
より具体的には、本実施例では、脚46と位置決め孔31(或いは32)とが1点で接している(図4)。この接点は、この横辺11から約1/8円の長さに相当する位置にあり、当該接点及びドリルの中心点を通る線と横辺11とのなす角は約45°をなし、この接点における縦辺方向の分力と横辺方向の分力とが等しくなる。よって、脚46は位置決め孔31(或いは32)内にて動かずに保持される。
【0032】
このように、総ての脚46を位置決め孔31,32にそれぞれ納めた後、カバー40の下面と本体2の上面4とが半田で固定される。
なお、この図3にて、上述した1点鎖線の外側と本体2の周縁の内側とで囲まれた領域が部品実装不可エリアであり、この1点鎖線の内側の領域が部品実装可能エリアである。
【0033】
また、本体2の下面14には、外部接続用のランド等が設けられており、上述の電子回路ユニット1は、この下面14を短距離無線通信機器のマザーボードに対峙させた状態で実装される。
そして、これら位置決め孔31,32及び角落とし孔33を備えた電子回路ユニット1は、次の如くの工程を経て製造される。
【0034】
詳しくは、まず、大判の基板30を1枚用意する(図5)。この基板30は、複数個のユニット本体2を同時に形成可能な大きさであり、当該本体2は、縦横に交差する仮想の切断線10,11で区画され(図中、1点鎖線で示す)、これら切断線10,11で規定された大きさがユニット本体2の1個分の大きさに相当する。
【0035】
次いで、電子部品6を上面4に実装するために、上記ドリルを用いて図示しないスルーホール等を上面4の適宜位置に穿設する。
つまり、本実施例のドリルもまた、その外径φが0.3mm〜0.8mmであり、ドリルを回転させるスピンドルの回転速度は約20,000回/分に設定されている。
【0036】
そのスルーホール等の穿設に続き、カバー位置決め孔31,32や角落とし孔33を穿設する。
具体的には、このドリルは、その中心が横辺11上に配置され、図6(a)に示されるように、本体2の隅部分12から所定間隔Lだけ離れた位置にて、基板30の上方から下方に向けて移動し、第1貫通孔31を形成する。
【0037】
この間隔Lはドリルの外径φの半分(半径)よりも大きいが、この外径φよりは小さな長さであり、この時点では隅部分12は依然として基板30に残される。また、この第1貫通孔31は、縦辺10に沿って隣接する2個の本体2,2に共通したカバー位置決め孔31になる。
続いて、第1貫通孔31を穿設したドリルは、上方に引き上げられ、上面4から離れた位置にて同図で見て右方向に移動する。
【0038】
次に、当該ドリルの中心は、この横辺11と同一線状にある他の横辺11上に配置される。
より具体的には、当該他の横辺11は他の本体2を区画しており、この他の本体2は、上記隅部分12を通る縦線10を挟んで、第1貫通孔31が穿設された本体2に隣接している。そして、図6(b)に示される如く、当該他の本体2の隅部分、つまり、第1貫通孔31が穿設された本体2の隅部分12から同じく所定間隔Lだけ離れた位置にて、基板30の上方から下方に向けて移動し、第2貫通孔32を形成する。
【0039】
なお、この時点でも隅部分12は依然として基板30に残され、また、この第2貫通孔32は、縦辺10に沿って隣接する2個の本体2,2に共通のカバー位置決め孔32になる。
そして、第2貫通孔32を穿設したドリルは、再び上方に引き上げられ、上面4から離れた位置にて同図で見て左方向に移動し、その中心は残された隅部分12上に配置され、第3貫通孔を形成する。
【0040】
より詳しくは、図6(c)に示されるように、当該ドリルは、貫通孔31,32の中心を通らず、これら貫通孔31,32の各中心の間にて貫通孔31,32の双方に交差する。これにより、隅部分12は基板30から無くなり、第1〜第3貫通孔31〜33は、平面視で串団子状の連続した長形をなす。
なお、この第3貫通孔33は、縦辺10及び横辺11に沿って隣接する、すなわち、同じ隅部分12を共有した4個の本体2,2の角落とし孔33になる。
【0041】
このように、串団子状に連続した第1〜第3貫通孔31〜33は、図5に示されるように、上述の手順で基板30に穿設される。なお、この図5では理解を助けるために、大きな孔径で図示されている。
その後、上面4や下面14には電子部品6等が実装され、次いで、カバー40で配線パターン5や電子部品6が覆われ、取付脚46を位置決め孔31,32に位置決めする。
【0042】
続いて、上面4とカバー40とは半田で固定され、切断線、つまり、縦線10及び横線11に沿って切断すると、図1に示された電子回路ユニット1になる。
ところで、取付脚46とカバー位置決め孔31(或いは32)とは2点で接していても良い。
【0043】
詳しくは、図7に示された例もまた、上記実施例と同様に、同径の位置決め孔31や角落とし孔33が形成されているが、脚46の内側面は、位置決め孔31の内周面の他、これら位置決め孔31と角落とし孔33との連結部分34にも当接している。このように、仮に脚46の断面積が上記実施例よりも大きい場合には2点で接し、このうち、脚46と位置決め孔31との接点は、この横辺11から約1/8円の長さよりも短い位置になり、この当該接点及びドリルの中心点を通る線と横辺11とのなす角は約45°よりも小さくなる。
【0044】
一方、図8に示された例は、脚46の内側面が位置決め孔31の内周面の2点で当接している。このように、仮に脚46の断面積が図7の例よりも小さい場合には、脚46と位置決め孔31との接点が1点であっても、2点であっても位置決めは可能である。なお、この場合の脚46と位置決め孔31との接点は、この横辺11から約1/8円の長さよりも長い位置になり、この当該接点及びドリルの中心点を通る線と横辺11とのなす角は約45°よりも大きくなる。
【0045】
以上のように、本実施例によれば、ユニット本体2は上面4を有し、この上面4はカバー40に覆われる。また、この本体2は、その上面4に連なる側面8,9を有しており、この側面8,9は、上面4を区画する縦辺10及び横辺11で構成され、これら縦辺10及び横辺11の交差部分が隅部分12に相当する。
【0046】
ここで、側面8,9には、カバー位置決め孔31,32及び角落とし孔33が本体2の内部に向けて窪んでそれぞれ形成されている。
詳しくは、位置決め孔31,32は、横辺11を含む側面9に、カバー40の取付脚46を当接させており、従来の構成、つまり、平面視で1/4円の円弧で隅部分を単に無くし、脚を側面に当接させない構成に比して、本体2に対するカバー40の位置ずれを防止できる。
【0047】
そして、角落とし孔33は、この横辺11と当該横辺11に交差する縦辺10とを跨いで位置決め孔31(或いは32)に連なっており、本体2から隅部分12を予め排除する。よって、仮に、この隅部分を残した場合に比して、基板30から切断時にもその欠けが生じないし、この隅部分がデッドスペースにもならず、電子部品6を上面4に実装できない領域(部品実装不可エリア)を増やさない。
【0048】
また、角落とし孔33に連なるカバー位置決め孔31(或いは32)を隅部分12に寄せて形成すれば、1つのユニット本体2で見て、同じ横辺11上に位置するカバー位置決め孔31,32同士の距離が長くなるので、上述した部品実装不可エリアを確実に減らすことができる。
さらに、位置決め孔31,32及び角落とし孔33が、同径のドリルで穿設されていれば、異なる径の工具を用いた場合に比して、位置決め孔31,32及び角落とし孔33を本体2に容易に加工可能になる。
【0049】
さらにまた、角落とし孔33は、横辺11よりも本体2の内部にて、位置決め孔31(或いは32)に連なっているので、連結部分34の欠けも生じ難い。
また、位置決め孔31,32を平面視で1/4円以上の長さであって1/2円未満の長さの円弧で形成し、角落とし孔33を平面視で1/4円未満の長さの円弧で形成すれば、位置決め孔31,32を隅部分12寄りに形成できるので、上述の部品実装不可エリアを確実に減らすことができる。
【0050】
さらに、取付脚46が、位置決め孔31(或いは32)の内周面と、連結部分34との双方で保持されていれば、カバー40の位置ずれをより一層確実に防止可能になる。
また、製造方法で云えば、各本体2を区画する横辺11上に、奇数個、具体的には少なくとも3個の貫通孔31〜33を穿設し、大判の基板30の平面視で串団子状の連続した長形を形成させるにあたり、第1貫通孔31及び第2貫通孔32は、隅部分12を残して当該隅部分12から等間隔Lの位置にそれぞれ形成されており、続いて、この隅部分12に中心を有した第3貫通孔31を穿設する場合にも、ドリルの先端は本体2に確実に食い付くことができる。
【0051】
よって、串団子状の連続長形の貫通孔31〜33を穿設する場合に、隣り合った貫通孔の順に加工する場合に比して、ドリルの先端が既に穿設済みの空間に向けて滑らず、当該ドリルには曲げの大きな力が作用しない。この結果、ドリルの折れを回避でき、ユニット1の製造効率の向上に寄与する。
さらに、第1〜第3貫通孔31〜33が、配線用のドリル、つまり、電子部品6を上面4に実装するために用いられるドリルで穿設されていれば、この上面4への穴あけに続いて横辺11への穴あけをすれば良く、位置決め孔31,32や角落とし孔33を本体2により一層容易に加工できる。
【0052】
特に、第1〜第3貫通孔31〜33をルーターエンドミルで形成する場合には、基板30の外形加工に耐える強度が必要になるため、その径はφ1.0mm以上になり、これでは、基板30の加工量が多くなるし、上記配線用の穴あけとは別工程で実施しなければならないが、本実施例では当該問題も生じないのである。
【0053】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施例の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
また、上記各実施例では、カバー位置決め孔31,32や角落とし孔33が横辺11に穿設されているが、カバー40が本体2の側面8で位置決めされる場合には、当然に縦辺10に穿設される。
【0054】
さらに、カバー40が本体2の側面8(或いは9)で位置決めでき、且つ、隅部分12を無くすことができる限り、位置決め孔31,32や角落とし孔33は、平面視で円形の他、例えば四角形等の公知の形状であっても良い。
さらにまた、位置決め孔31,32や角落とし孔33は、1つの隅部分12に対して3個以上の奇数個であれば、上記実施例の形態に限定されないし、また、取付脚46は、4個の他、対角線上に2個設けられていても良い。
【0055】
また、本体2は、穴あけ可能な樹脂製であれば、多層で構成されていて良いし、さらに、本発明は上述した短距離無線通信機器の他、実装する電子部品を遮蔽若しくは保護するためのカバーを備えていれば、種々の機器にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施例に係る電子回路ユニットの斜視図である。
【図2】図1のユニットからカバーを外したユニット本体の斜視図である。
【図3】図2のユニット本体の平面図である。
【図4】図3のカバー位置決め部及び角落とし部の拡大図である。
【図5】図1のユニットの製造方法において、カバー位置決め部及び角落とし部の形成工程に関する説明図である。
【図6】図5のカバー位置決め部及び角落とし部の形成順序に関する説明図である。
【図7】他の実施例によるカバー位置決め部及び角落とし部の拡大図である。
【図8】さらに他の実施例によるカバー位置決め部及び角落とし部の拡大図である。
【符号の説明】
【0057】
1 電子回路ユニット
2 ユニット本体(絶縁基板)
4 上面
8,9 側面
10 切断線(縦辺)
11 切断線(横辺)
12 隅部分
31,32 カバー位置決め孔(カバー位置決め部)
33 角落とし孔(角落とし部)
34 連結部分
40 カバー
46 取付脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付脚を有するカバーと、
該カバーに覆われる上面を有するとともに、該上面の隅部分で交差する縦辺及び横辺でそれぞれ構成され、該上面に連なる側面を有した樹脂製の絶縁基板とを具備し、
該絶縁基板は、
前記横辺にて該絶縁基板に向けて窪んで形成され、前記取付脚に当接されるカバー位置決め部と、
該横辺と前記縦辺とを跨ぎ、前記絶縁基板に向けて窪んで形成され、該カバー位置決め部に連なる角落とし部と
を備えることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路ユニットであって、
前記カバー位置決め部は、前記隅部分を避けた該隅部分の近傍位置に形成されていることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子回路ユニットであって、
前記カバー位置決め部及び前記角落とし部は、同径の穴あけ具にて前記絶縁基板を貫通してそれぞれ穿設されており、
前記カバー位置決め部は、平面視で1/4円以上の長さであって1/2円未満の長さの円弧で形成される一方、前記角落とし部は、平面視で1/4円未満の長さの円弧で形成されていることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子回路ユニットであって、
前記取付脚は、前記カバー位置決め部に当接するとともに、該カバー位置決め部と前記角落とし部との連結部分に当接していることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項5】
ユニット本体の上面の隅部分で交差する縦辺及び横辺に沿って切断し、該上面を覆うカバーの取付脚の位置決めを該ユニット本体の側面に形成させる電子回路ユニットの製造方法であって、
該ユニット本体の横辺上に中心を有し、該ユニット本体の隅部分を避け、該隅部分から所定間隔の位置に第1貫通孔を穿設する工程と、
該隅部分を通る縦線を挟んで該ユニット本体に隣接した他のユニット本体に対し、前記横線と同一線状の他の横辺上に中心を有し、前記隅部分を避け、該隅部分から前記所定間隔の位置に第2貫通孔を穿設する工程と、
前記隅部分に中心を有し、前記第1貫通孔及び該第2貫通孔の双方に交わる第3貫通孔を穿設する工程と
を含む電子回路ユニットの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電子回路ユニットの製造方法であって、
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、及び前記第3貫通孔は、電子部品を前記上面に実装するために用いる穴あけ具にて前記絶縁基板を貫通して穿設されていることを特徴とする電子回路ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−109120(P2010−109120A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279189(P2008−279189)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】