説明

電子回路装置

【課題】 フィルタのリターンロスを削減し、高性能であり、広帯域化可能であり、かつ小型化可能な電子回路装置を提供することである。
【解決手段】 本発明は、フィルタ(154,156)と、該フィルタに接続された90°ハイブリッド(150,152)と、を備えた電子回路装置である。本発明によれば、フィルタ(154、156)に90°ハイブリッド(150、152)を接続することにより、90°ハイブリッドの1端子に入力された信号が90°ハイブリッドを通過し、フィルタで反射され、元の端子に出力されることがない。すなわち、リターンロスを削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子回路装置、特に、高周波用フィルタを有する電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波用フィルタは、携帯電話などの無線装置の受信装置や送信装置に使用され、その高性能化が図られている。高周波用フィルタとしては、例えば、弾性波フィルタが用いられる。弾性波フィルタは、少量かつ軽量で角型性に優れた弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)フィルタや、より高周波数での特性が良好でかつ小型化可能な圧電薄膜共振器(Film Bulk Acoustic Resonator:FBAR)フィルタがある。送信装置において、高周波フィルタは、高出力増幅回路の入力端子や出力端子または両方に接続され、所望の周波数以外の出力を防止する。一方、受信装置において、高周波フィルタは、低雑音増幅回路の入力端子や出力端子または両方に接続され、所望の周波数の信号のみを次段の増幅回路やミキサに出力する。
【特許文献1】特開2004−104449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、増幅回路の入力端子に接続されたフィルタにおいては、フィルタの出力端子側のリターンロスS22、増幅回路の出力端子に接続されたフィルタにおいては、フィルタの入力端子側のリターンロスS11が大きいと、増幅回路の増幅特性が悪くなる。
【0004】
そこで、従来は、フィルタのリターンロスを削減するため、インピーダンス整合の付加、あるいはアイソレータを付加する方法が用いられている。
【0005】
しかし、インピーダンス整合により高周波フィルタのリターンロスを削減する方法は、インピーダンス整合する周波数が回路定数に依存する。このため、広帯域なフィルタにおいては使用周波数全域でリターンロスを削減することは難しいという問題がある。一方、アイソレータを用いる方法は、アイソレータは磁性体を有するため、小型化が難しいという問題がある
【0006】
本発明の目的は、フィルタのリターンロスを削減し、高性能であり、広帯域化可能であり、かつ小型化可能な電子回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フィルタと、該フィルタに接続された90°ハイブリッドと、を備えた電子回路装置である。本発明によれば、90°ハイブリッドの1端子に入力された信号が90°ハイブリッドを通過し、フィルタで反射され、元の端子に出力されることがない。すなわち、リターンロスを削減することができる。これにより、高性能であり、広帯域化可能であり、かつ小型化可能なフィルタ回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0008】
本発明は、入力端子と出力端子を有する第1のフィルタと、入力端子と出力端子を有する第2のフィルタと、第1の入力端子と、第2の入力端子とを有する第2の90°ハイブリッドと、を備え、前記第1のフィルタの前記出力端子が前記第2の90°ハイブリッドの第1の入力端子に接続し、前記第2のフィルタの前記出力端子が前記第2の90°ハイブリッドの第2の入力端子に接続した電子回路装置である。本発明によれば、出力側からのリターンロスを削減することができる。これにより、高性能でかつ広帯域化可能で小型化可能なフィルタ回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0009】
本発明は、第1の出力端子と第2の出力端子を有する第1の90°ハイブリッドを備え、前記第1の90°ハイブリッドの第1の出力端子が前記第1のフィルタの入力端子に接続し、前記第1の90°ハイブリッドの前記第2の出力端子が前記第2のフィルタの入力端子に接続した電子回路装置である。前記90°ハイブリッドは位相線路を含む電子回路装置である。本発明によれば、入力側および出力側からのリターンロスを削減することができる。これにより、高性能でかつ広帯域化可能で小型化可能なフィルタ回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0010】
本発明は、前記90°ハイブリッドは位相線路と集中定数回路素子の少なくとも一方で構成された電子回路装置である。本発明によれば、位相線路または集中定数回路素子を用いることにより、簡便に、フィルタ回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0011】
本発明は、前記位相線路は、1/4波長線路である電子回路装置である。本発明によれば、1/4波長線路を用いることにより、簡便に、フィルタ回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0012】
本発明は、前記90°ハイブリッドは、積層セラミックと集中定数回路素子の少なくとも一方で構成された電子回路装置である。本発明によれば、積層セラミックまたは集中定数回路素子を用いることにより、簡便に、フィルタ回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0013】
本発明は、前記フィルタは、弾性波フィルタである電子回路装置である。本発明によれば、弾性波フィルタを用いることにより、簡便に、フィルタ回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0014】
本発明は、増幅回路の入力端子と出力端子の少なくとも一方に、前述の電子回路装置が接続された電子回路装置である。本発明によれば、フィルタ回路のリターンロスを削減することができるため、増幅特性の良い増幅回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0015】
本発明は、前記増幅回路が、携帯電話端末用高出力増幅回路または携帯電話端末用低雑音増幅回路である電子回路装置である。本発明によれば、高出力増幅特性はたは低雑音増幅特性の良い増幅回路を有する電子回路装置を提供することができる。
【0016】
本発明は、出力端子が前記第1のフィルタの入力端子に接続された第1のミキサと、出力端子が前記第2のフィルタの入力端子に接続された第2のミキサと、を備えた電子回路装置である。本発明のよれば、リターンロスの少ない、イメージ抑圧アップコンバータやダウンコンバータを有する電子回路装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィルタに90°ハイブリッドを接続することにより、90°ハイブリッドの1端子に入力された信号が90°ハイブリッドを通過し、フィルタで反射され、元の端子に出力されることがない。すなわち、リターンロスを削減することができる。これにより、高性能であり、広帯域化可能であり、かつ小型化可能な電子回路装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、携帯電話端末用の高出力増幅回路を例に、フィルタのリターンロスが大きい場合の問題を説明する。図1は、携帯電話端末用の高出力増幅回路の入力側に接続されたフィルタのリターンロスS22が−5dBから−35dBまで5dBごとに変化した場合の、高出力増幅回路の入力電力に対する電力付加効率の計算結果を示している。図中の数字がフィルタのリターンロスS22である。フィルタのリターンロスS22が大きくなると、電力付加効率は小さくなる。
【0019】
図2は、携帯電話端末用の高出力増幅回路の出力側に接続されたフィルタのリターンロスS11が−5dBから−35dBまで5dBごとに変化した場合の、高出力増幅回路の入力電力に対する電力付加効率の計算結果を示している。図中の数字がフィルタのリターンロスS11である。フィルタのリターンロスS11が大きくなると、電力付加効率は小さくなる。
【0020】
このように、フィルタのリターンロスを削減することで、増幅回路の性能を向上させることができる。
【0021】
図3を用い、90°ハイブリッドの動作につき説明する。90°ハイブリッド110は、第1の入力端子112、第2の入力端子114、第1の出力端子116、第2の出力端子118を有しており、第1の入力端子112は入力信号源115が接続され、入力信号源115はインピーダンス122を介し接地されている。第2の入力端子114、第1の出力端子116、第2の出力端子118は、それぞれ、インピーダンス124、インピーダンス126、インピーダンス128を介し、接地されている。
【0022】
90°ハイブリッドの第1の入力端子112に入力した信号は、第1の出力端子116に1/2の電力、第2出力端子118に1/2の電圧の大きさで出力される(図中実線矢印)。このとき、第2の出力端子118に出力される信号は第1の出力端子に出力される信号に対し、位相が90°遅延している。一方、90°ハイブリッドの出力端子側で反射された信号は、第1の出力端子116と第2の出力端子118で同じ電力の大きさで、第2の出力端子118の信号の位相は90°遅延している。この場合、反射波は第2の入力端子114にのみ出力され、第1の入力端子112には出力されない(図中破線矢印)。
【0023】
90°ハイブリッドは位相線路である1/4波長線路を用い構成することができる。図4は、90°ハイブリッドを位相線路を用い構成した場合の回路図である。4つの1/4波長線路132,134,136,138が用いられている。90°ハイブリッドの第1の入力端子112と第1の出力端子116の間、第1の入力端子112と第2の入力端子114の間、第1の出力端子116と第2の出力端子118の間、第2の入力端子114と第2の出力端子118の間に、それぞれ、1/4波長線路132,134,136,138が接続される。
【0024】
また90°ハイブリッドは集中定数回路素子であるインダクタやキャパシタを用い構成することができる。図5は、90°ハイブリッドを集中定数回路素子を用い構成した場合の回路図である。90°ハイブリッドの第1の入力端子112、第2の入力端子114、第1の入力端子116、第2の出力端子118は、それぞれ、キャパシタ142,144,146,148を介し接地している。また、第1の入力端子112と第1の出力端子116の間、第1の入力端子112と第2の入力端子114の間、第1の出力端子116と第2の出力端子118の間、第2の入力端子114と第2の出力端子118の間に、それぞれ、インダクタ141、143、145、147が接続される。
【0025】
このように、90°ハイブリッドには、位相線路、集中定数回路素子のいずれを用いても実現することができる。また、位相線路と集中定数回路素子を混合させて実現することもできる。
【実施例1】
【0026】
次に、90°ハイブリッドとフィルタが接続されたフィルタ回路として、実施例1を説明する。
【0027】
図6は、実施例1の原理を説明するための図である。まず、実施例1の構成について説明する。実施例1は、第1の90°ハイブリッド150と、第2の90°ハイブリッド152、第1のフィルタ154、第2のフィルタ156を備えている。第1の90°ハイブリッド150の第1の出力端子163と第2の出力端子165は、第1のフィルタ154と第2のフィルタ156の入力端子にそれぞれ接続されている。第2の90°ハイブリッド152の第1の入力端子167と第2の入力端子169は、第1のフィルタ154、第2のフィルタ156の出力端子にそれぞれ接続されている。
【0028】
次に、第1の入力端子162に信号を入力した場合を考える。第1の90°ハイブリッド150の第1の入力端子162には高周波信号源155が接続され、高周波信号源155はインピーダンス172を介し接地されている。第1のハイブリッド150の第2の入力端子164、第2のハイブリッド152の第1の出力端子166、第2のハイブリッド152の第2の出力端子168は、それぞれ、インピーダンス174,176,178を介し接地されている。
【0029】
第1の90°ハイブリッド150の第1の入力端子162に入力した入力信号は、第1の90°ハイブリッド150の第1の出力端子163、第2の出力端子165に各々入力信号の1/2の電力の大きさで出力される(図中実線矢印)。第2の出力端子165に出力される信号は、第1の出力信号163に出力される信号より位相が90°遅延している。
【0030】
ここで、第1のフィルタ154と第2のフィルタ156で反射された信号は、第1の出力端子163と第2の出力端子165に入力する。図3を用い説明したように、フィルタで反射された信号は、第1の入力端子162にほとんど出力されず、第2の入力端子164に出力される(図中破線矢印)。その後、接地により消費される。これにより、第1の入力端子162の入力信号の反射波が同端子にほとんど出力されることはなく、リターンロスS11は非常に小さくなる。
【0031】
一方、第1のフィルタ154および第2のフィルタ156に入力した信号は、それぞれのフィルタにおいて所望の周波数を通過させる。通過した信号は、第2の90°ハイブリッド152の第1の入力端子167、第2の入力端子169に入力する。これら信号は、同じ電力を有し、第2の入力端子169に入力した信号は第1の入力端子167に入力した信号に対し位相が90°遅延している。2つの信号の電力が合成された信号が、第2のハイブリッド152の第2の出力端子168に出力される(図中実線矢印)。
【0032】
このように、第1の入力端子162に入力した信号は、フィルタ154,156で所望の周波数成分のみ通過し、第2の出力端子168に出力される。これによりフィルタ回路として機能する。
【0033】
第2のハイブリッド152の第2の出力端子168に信号が入力した場合を考える。第1のフィルタおよび第2のフィルタで反射された信号は第2の出力端子168にはほとんど出力されず、リターンロスS22を小さくすることができる。このように、実施例1によれば、リターンロスS11、リターンロスS22の小さいフィルタ回路が実現できる。
【0034】
図7は実施例1に係るフィルタ回路240の回路図である。フィルタ回路240は、第1の90°ハイブリッド150、第2の90°ハイブリッド152、第1のフィルタ154、第2のフィルタ156を有している。第1の90°ハイブリット150は1/4波長線路182、184、186、188を有し、第2の90°ハイブリッド152は1/4波長線路192、194、196、198を有している。それぞれの90°ハイブリッド150,152において1/4波長線路は図4と同様に接続されている。第1のフィルタ、第2のフィルタにはFBARフィルタを用いた。
【0035】
図8は実施例1の構成を示す概略図である。積層セラミック基板に位相線路を形成し、フィルタを実装している。積層セラミックを構成する第1のセラミック基板400上に第1のフィルタ154と第2のフィルタ156が実装されている。また、第1の90°ハイブリッド150を構成する1/4波長線路182、188、および第2の90°ハイブリッドを構成する192、198が形成されている。積層セラミックを構成する第2のセラミック基板402上には、第1の90°ハイブリッドを構成する1/4波長線路184、186、並びに第2の90°ハイブリッドを構成する194、196が形成されている。401はセラミック基板400、402上に形成されフィルタおよび波長線路を接続するための伝送線路である。
【0036】
第1のセラミック基板には、接続孔の位置404に接続孔が設けてある。第1のセラミック基板と第2のセラミック基板を積層させることにより、第1のセラミック基板上の位相線路と第2のセラミックの位相線路が接続されている。積層セラミックとしては、高温焼成セラミック基板(HTCC)若しくは低温焼成セタミック基板(LTCC)等を用いることができる。さらに、その他の多層基板またはプリント板に形成することもできる。
【0037】
実施例1のリターンロスを評価するため、図7のように、第1の入力端子162、第2の入力端子164、第1の出力端子166、第2の出力端子168をそれぞれ、インピーダンス172、174、176、178を介し接地した。インピーダンス172、174、176、178は50Ωとした。
【0038】
図9は、リターンロスS22の周波数依存を示す。図中の従来例はFBARフィルタのみのフィルタ回路の場合、図中の実施例は実施例1を示している。フィルタの通過周波数は1.92〜1.98GHzに設計されている。従来例では、通過周波数域で約−10dBのリターンロスS22であるのに対し、実施例1ではこの周波数帯域で約−30dB程度である。このように、実施例1においては、リターンロスを約20dB低減させたフィルタ回路を実現することができた。
【0039】
次に、実施例1の変形例として、90°ハイブリットを集中回路定数素子としてインダクタおよびキャパシタを用い構成したフィルタ回路を示す。図10は実施例1の変形例の構成を示す概略図である。例えば、セラミック基板またはプリント基板である基板410上に、第1のフィルタ412、第2のフィルタ414を実装する。また基板410上に、第1の90°ハイブリッド150を構成するインダクタ421、423、425、427、キャパシタ422、424、426,428、並びに、第2の90°ハイブリッド152を構成するインダクタ431、433、435、437、キャパシタ432、434、436、438が実装されている。キャパシタ422、424、426,428、432、434、436、438は基板410に設けられた接続孔により接地されている。インダクタおよびキャパシタとしてはチップインダクタおよびチップキャパシタが用いられている。
【0040】
このように、実施例1の90°ハイブリッドには、位相線路、集中定数回路素子のいずれを用いても実現することができる。位相線路は、高温焼成セラミック基板(HTCC)若しくは低温焼成セタミック基板(LTCC)等の多層基板またはプリント板に形成することができる。集中回路定数素子は、チップインダクタやチップコンデンサのようなディスクリート部品を実装することもでき、または多層基板の積層部に作り込むこともできる。また、一部を位相線路、一部を集中定数回路素子を用い実現することもできる。
【実施例2】
【0041】
実施例2は実施例1に係るフィルタ回路と増幅回路とを有する例であり、携帯電話端末用の高出力増幅回路の入力端子側にフィルタ回路を接続した例である。
【0042】
図11は実施例2の回路を示している。フィルタ回路240は実施例1の図7と同じ回路構成である。フィルタ回路240の出力端子220が、高出力増幅回路250の入力端子に接続されている。高出力増幅回路250は、段間整合回路260、出力側整合回路270、電源回路280、トランジスタ290を有する。
【0043】
フィルタ回路240の出力端子220は、段間整合回路260に入力し、段間整合回路260の出力端子がトランジスタのベースに接続される。段間整合回路260は、高出力増幅回路250の入力インピーダンスを、トランジスタ290に整合させる機能を有する。段間整合回路260としては、例えば、入力端子をインピーダンス265とキャパシタ261を直列に接続し接地する。さらに、キャパシタ262を介し接地する。さらに入力端子をインダクタ264とキャパシタ263を直列に接続し、トランジスタ290のベースに接続する構成とする。
【0044】
電源回路280は電源282から供給される電圧を所望の電圧にし、トランジスタ290のベースとコレクタに供給する。電源回路280としては、例えば、電源端子218をキャパシタ283、284を介し並列に接地させる、抵抗286を介しトランジスタ290のベースに、インダクタ285を介しトランジスタ290のコレクタに接続する構成とする。
【0045】
トランジスタ290のエミッタが接地されている。トランジスタ290は、ベースに入力された信号を増幅し、コレクタに出力する。コレクタは出力側整合回路270に接続されている。
【0046】
出力側整合回路270は高出力増幅回路250の出力インピーダンスをトランジスタ290に整合させる。出力側整合回路270は、例えば、入力端子にはキャパシタ272とインダクタ273を直列に接続し、出力端子に接続する。出力端子をインダクタ274を介し接地させる。さらにインピーダンス275とキャパシタ271を介し接地する構成とする。
【0047】
次に、実施例2に係る回路の電力付加効率の測定を行った。測定は図11のように接続して行った。フィルタ回路240の第1の入力端子210に信号源200を接続し、フィルタ回路240の第2の入力端子212、フィルタ回路240の第1の出力端子214、高出力増幅回路の出力端子216を、それぞれ、インピーダンス202,204,206を介し接地した。電源回路280に電源282を接続した。
【0048】
図12は電力付加効率の入力電力依存を示す。図中の従来例はフィルタ回路としてFBARフィルタのみを使用した場合である。図中の実施例は実施例2の結果である。実施例2の電力付加効率は、いずれの入力電力においても、従来例に比べ大きくなっている。特に入力電力が大きくなると、電力付加効率は大きく改善している。これは、フィルタ回路240のリターンロスS22が削減できたためである。
【実施例3】
【0049】
実施例3は携帯電話端末用の高出力増幅回路の出力端子側にフィルタ回路を接続した例である。図13のように、高出力増幅回路251の出力端子にフィルタ回路241の入力端子を接続している。
【0050】
実施例3に係る回路の電力付加効率の入力電力依存を図14に示す。図中の従来例はフィルタとしてFBARフィルタのみを使用した場合である。図中の実施例は実施例3の結果である。実施例3の電力付加効率は、入力電力の大きい領域で、従来例より大きくなっている。これは、フィルタ回路241のリターンロスS11が削減できたためである。
【0051】
実施例2および実施例3においては、高出力増幅回路の入力端子側または出力端子側にフィルタ回路を接続したが、高出力増幅回路の入力端子側と出力端子側両方に実施例1に係るフィルタ回路を接続しても良い。この場合はさらに高出力増幅回路の性能を向上させることができる。
【0052】
さらに、低雑音増幅回路の入力端子側に実施例1にかかるフィルタ回路を接続すること、低雑音増幅回路の出力端子側に実施例1にかかるフィルタ回路を接続すること、低雑音増幅回路の入力端子側と出力端子側にそれぞれ実施例1にかかるフィルタ回路を接続することもできる。これらの場合は低雑音増幅回路の性能を向上させることができる。
【0053】
前述の増幅回路とフィルタ回路を含む電子回路装置は、ひとつのモジュールとして同一パッケージで実現することもできるし、複数のパッケージを基板上で実装することもできる。
【実施例4】
【0054】
実施例4はフィルタと、90°ハイブリッドとミキサとを有し、ミキサの出力端子がフィルタの入力端子に接続された例であり、アップコンバータの例である。アップコンバータは、中間周波数信号(IF)の入力と局所発信電力(LO)を入力し、出力信号(RF)を出力する回路である。アップコンバータにおいては、IFの周波数ω、LOの周波数ωLO、RFの周波数ωRFとしたとき、RF出力としてはω+ωLOの周波数を有している。しかし、同時にω−ωLOの周波数も出力されるが、このω−ωLO成分は不要である。実施例4においては、ω−ωLO成分を抑圧し、かつ、出力端子側からのリターンロスを減らし、アップコンバータの性能を向上させることを目的としている。
【0055】
図15に実施例4に係るイメージ抑圧型アップコンバータを示す。第1のミキサ326と第2のミキサ328の出力端子が、それぞれ、第1のフィルタ322と第2のフィルタ324の入力端子302、304に接続されている。第1のフィルタ322と第2のフィルタ324の出力端子は、それぞれ、90度ハイブリッド310の第1の入力端子と第2の入力端子に接続されている。90°ハイブリッドの第1の出力端子360、第2の出力端子308は、それぞれインピーダンス336,338を介し接地されている。
【0056】
ミキサ326、328にIFの入力信号e(t)が入力し、ミキサ326にLO1、ミキサ328にLO2が入力される。このとき、LO2はLO1より位相を90°進ませる。ミキサ326、328からの出力信号をそれぞれe(t),e(t)とすると、e(t)はe(t)に比べ位相が90°進むことになる。e(t)、e(t)はそれぞれ第1のフィルタ322、第2のフィルタ324を通過し90°ハイブリッドに入力する。出力端子には、ω−ωLO周波数成分が抑圧されたRF信号が出力される。
【0057】
さらに、第1のフィルタ322と第2のフィルタ324の出力端子がそれぞれ90°ハイブリッド310の入力端子に接続されていることから、前述のように、リターンロスS22が削減できる。これにより、アップコンバータの性能を向上させることができる。実施例4はアップコンバータの例であるが、ダウンコンバータにも適用できる。
【0058】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は携帯電話用増幅器の入力側にフィルタを接続した場合の電力付加効率の計算結果を示す図である。
【図2】図2は携帯電話用増幅器の出力側にフィルタを接続した場合の電力付加効率の計算結果を示す図である。
【図3】図3は90°ハイブリッドの機能を説明するための図である。。
【図4】図4は90°ハイブリッドを位相線路で構成した回路図である。
【図5】図5はは90°ハイブリッドを集中定数回路素子で構成した回路図である。
【図6】図6は実施例1の原理を説明するための図である。
【図7】図7は実施例1の回路図である。
【図8】図8は実施例1の構成を示す概略図である。
【図9】図9は実施例1におけるリターンロスS22の周波数依存を示した図である。
【図10】図10は実施例1の変形例の構成を示す概略図である。
【図11】図11は実施例2に係る回路の構成を示した図である。
【図12】図12は実施例2における電力付加効率の入力電力依存を示した図である
【図13】図13は実施例3に係る回路の構成を示した図である。
【図14】図14は実施例3における電力付加効率の入力電力依存を示した図である
【図15】図15は実施例4に係る回路の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0060】
110 90°ハイブリッド
132、134、136、138 1/4波長線路
141、143、145、147 インダクタ
142、144、146、148 キャパシタ
150 第1の90°ハイブリッド
152 第2の90°ハイブリッド
154 第1のフィルタ
156 第2のフィルタ
162 第1の90°ハイブリッドの第1の入力端子
163 第1の90°ハイブリッドの第1の出力端子
164 第1の90°ハイブリッドの第2の入力端子
165 第1の90°ハイブリッドの第2の出力端子
167 第1の90°ハイブリッドの第1の入力端子
166 第1の90°ハイブリッドの第1の出力端子
169 第1の90°ハイブリッドの第2の入力端子
168 第1の90°ハイブリッドの第2の出力端子
155 信号源
172、174、176、178 インピーダンス
182、184、186、188 1/4波長線路
192、194、196、198 1/4波長線路
240、241 フィルタ回路
250、251 高出力増幅回路
260 段間整合回路
270 出力側整合回路
280 電源回路
282 電源
290 トランジスタ
310 90°ハイブリッド
322 第1のフィルタ
324 第2のフィルタ
326 第1のミキサ
328 第2のミキサ
336、338 インピーダンス
400 第1のセラミック基板
401 伝送線路
402 第2のセラミック基板
404 第1のセラミック基板に設けられた接続孔の位置
410 基板
412 第1のフィルタ
414 第2のフィルタ
421、423、425、427 インダクタ
422、424、426、428 コンデンサ
431、433、435、437 インダクタ
432、434、436、438 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタと、
該フィルタに接続された90°ハイブリッドと、
を備えた電子回路装置。
【請求項2】
入力端子と出力端子を有する第1のフィルタと、
入力端子と出力端子を有する第2のフィルタと、
第1の入力端子と、第2の入力端子とを有する第2の90°ハイブリッドと、
を備え、
前記第1のフィルタの前記出力端子が前記第2の90°ハイブリッドの第1の入力端子に接続し、
前記第2のフィルタの前記出力端子が前記第2の90°ハイブリッドの第2の入力端子に接続した請求項1記載の電子回路装置。
【請求項3】
第1の出力端子と第2の出力端子を有する第1の90°ハイブリッドを備え、
前記第1の90°ハイブリッドの第1の出力端子が前記第1のフィルタの入力端子に接続し、
前記第1の90°ハイブリッドの前記第2の出力端子が前記第2のフィルタの入力端子に接続した請求項1または2記載の電子回路装置。
【請求項4】
前記90°ハイブリッドは、位相線路と集中定数回路素子の少なくとも一方で構成された請求項1から3のいずれか一項記載の電子回路装置。
【請求項5】
前記位相線路は、1/4波長線路である請求項4記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記90°ハイブリッドは、積層セラミックと集中定数回路素子の少なくとも一方で構成された請求項1から5のいずれか一項記載の電子回路装置。
【請求項7】
前記フィルタは、弾性波フィルタである請求項1から6のいずれか一項記載の電子回路装置。
【請求項8】
増幅回路の入力端子と出力端子の少なくとも一方に、請求項1から7のいずれか一項記載の電子回路装置が接続された電子回路装置。
【請求項9】
前記増幅回路が、携帯電話端末用高出力増幅回路または携帯電話端末用低雑音増幅回路である請求項8記載の電子回路装置。
【請求項10】
出力端子が前記第1のフィルタの入力端子に接続された第1のミキサと、
出力端子が前記第2のフィルタの入力端子に接続された第2のミキサと、
を備えた請求項2記載の電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−222551(P2006−222551A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31983(P2005−31983)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【Fターム(参考)】