説明

電子機器における配線の引き回し構造

【課題】複数の配線を引き回すことによる意匠性や施工性の低下を防止することができる、電子機器における配線の引き回し構造を提供する。
【解決手段】受信機1の一側面に接続した同軸ケーブル7を引き回すための構造であって、電子機器の一側面における第1位置に配置されたコネクタ11であって、同軸ケーブル7を接続するためのコネクタ11と、コネクタ11に接続された同軸ケーブル7を引き回すために受信機1の一側面に形成された溝状の配線路であって、第1位置から引き出し位置に至る第1配線路15aと、少なくとも同軸ケーブル7を受信機1の外部に引き出すために受信機1の一側面に形成された凹部であって、引き出し位置に形成された引出口15eを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器における配線の引き回し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
センターから複数の住戸に対して各種の告知放送を行うための告知放送システムが普及している。この告知放送システムは、概略的に、センター側に配置したセンター装置と、各住戸内に設置した受信機とを、同軸ケーブルを介して相互に接続して構成されている。そして、地域のイベント開催又はFMラジオ放送等の一般放送や、火災や地震が発生した時の緊急放送を行う際、センター装置は告知放送信号を伝送線路を介して送信し、この告知放送信号を受信機が受信して、告知放送をスピーカにて音声出力する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような受信機に対しては、上述した同軸ケーブルに加えて、電源線や移報用出力線等の複数の配線を接続する必要がある。このため、従来は、受信機の背面や側面における複数の異なる位置に接続端子を設け、これら接続端子に接続した複数の配線を、受信機の背面や側面を通して、受信機の異なる位置から外部に引き出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−8753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように複数の配線を受信機の異なる位置から外部に引き出した場合には、複数の配線が相互にバラバラになって目立つことにより意匠性を低下させたり、複数の配線を個別的に壁面等に引き込む必要があることにより施工性を低下させるという問題があった。
【0006】
また、受信機は、壁面等の設置面に固定する場合、固定板を用いて卓上等に直立状に固定する場合等、複数の異なる固定形態で固定される可能性がある。しかしながら、従来は、受信機の固定形態に関わらず、所定の一通りの経路で配線を引き回しており、受信機の固定形態に合致した配線の引き回しを行うことができなかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電子機器に配線を引き回すことによる意匠性や施工性の低下を防止することができ、また追加的には、受信機の固定形態に合致した配線の引き回しを行うことが可能となる、電子機器における配線の引き回し構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の電子機器における配線の引き回し構造は、電子機器の一側面に接続した配線を引き回すための構造であって、前記電子機器の一側面における第1位置に配置された端子であって、前記配線としての第1配線を接続するための第1接続端子と、前記第1接続端子に接続された前記第1配線を引き回すために前記電子機器の一側面に形成された溝状の配線路であって、前記第1位置から引き出し位置に至る第1配線路と、少なくとも前記第1配線を前記電子機器の外部に引き出すために前記電子機器の一側面に形成された凹部であって、前記引き出し位置に形成された引出口とを備える。
【0009】
請求項2に記載の電子機器における配線の引き回し構造は、請求項1に記載の電子機器における配線の引き回し構造において、前記電子機器の一側面における前記第1位置以外の第2位置に配置された端子であって、前記配線としての第2配線を接続するための第2接続端子と、前記第2接続端子に接続された前記第2配線を引き回すために前記電子機器の一側面に形成された溝状の配線路であって、前記第2位置から前記引き出し位置に至る第2配線路とを備え、前記引出口は、前記第1配線及び前記第2配線を前記電子機器の外部に引き出すために形成された。
【0010】
請求項3に記載の電子機器における配線の引き回し構造は、請求項1又は2に記載の電子機器における配線の引き回し構造において、前記第1配線路には、前記第1接続端子に接続された前記第1配線を前記引出口以外から前記電子機器の外部に引き出すために、前記電子機器の一側面に形成された溝状の配線路であって、当該第1配線路のいずれかの位置から前記電子機器の一側面における外縁に至る第3配線路を備える。
【0011】
請求項4に記載の電子機器における配線の引き回し構造は、請求項2及び3に記載の電子機器における配線の引き回し構造において、前記第2接続端子に接続された前記第2配線を、少なくとも前記第2配線路及び前記引出口を介して、前記第3配線路に引き回し可能とした。
【0012】
請求項5に記載の電子機器における配線の引き回し構造は、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子機器における配線の引き回し構造において、前記電子機器の一側面は、当該電子機器の背面である。
【0013】
請求項6に記載の電子機器における配線の引き回し構造は、請求項5に記載の電子機器における配線の引き回し構造において、前記電子機器は、当該電子機器の背面に取り付けられた固定板を介して設置面に設置されるものであり、前記固定板における前記引き出し位置に対応する位置には、前記引出口を介して引き出された少なくとも前記第1配線を、前記設置面に向けて引き込むための引込口を設けた。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の電子機器における配線の引き回し構造によれば、第1配線を、第1配線路を介して引出口に引き込み、この引出口から電子機器の外部に引き出すことができるので、第1配線が電子機器の外側に向けて不用意に飛び出すことを防止でき、第1配線を引き回すことによる意匠性の低下を防止することができる。
また、第1配線を第1配線路に収容することで、第1配線路を電子機器に密着させることが可能となり、別途に固定する作業が不要となるので、第1配線を引き回すことによる施工性の低下を防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の電子機器における配線の引き回し構造によれば、第2配線を、第2配線路を介して引出口に引き込み、この引出口から電子機器の外部に引き出すことができるので、第1配線と同様に、意匠性の低下を防止することができると共に、施工性の低下を防止することができる。
特に、第1配線及び第2配線を相互に異なる第1配線路と第2配線路を介して引き回すことができるので、第1配線路や第2配線路を第1配線や第2配線の引き回し経路や形状に合致した構造にすることで、配線路の最適化を図ることができる。
また、第1配線及び第2配線を相互に共通の引出口を介して電子機器の外部に引き出すことができるので、施工性を一層向上させることが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の電子機器における配線の引き回し構造によれば、第1配線については、第1配線路から第3配線路を介して電子機器の外縁に引き出すことができるので、電子機器の固定状態に合致した経路で、第1配線を引き回すことが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の電子機器における配線の引き回し構造によれば、第2配線を、第2配線路及び引出口を介して、さらに第3配線路を介して電子機器の外縁に引き出すことができるので、電子機器の固定状態に合致した経路で、第2配線を引き回すことが可能となる。
特に、第1配線及び第2配線を相互に集約した形で電子機器の外縁に引き出すことができるので、施工性を一層向上させることが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の電子機器における配線の引き回し構造によれば、第1配線や第2配線を、電子機器の背面から外部に引き出すことができるので、第1配線や第2配線が電子機器の外側に向けて不用意に飛び出すことを防止でき、第1配線や第2配線を引き回すことによる意匠性の低下を防止することができる。
【0019】
請求項6に記載の電子機器における配線の引き回し構造によれば、第1配線を固定板の引込口を介して外部に引き出すことができるので、第1配線を電子機器の側方に突出させることなく設置面に引き込むことができ、第1配線を引き回すことによる意匠性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る受信機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は底面図である。
【図2】固定板を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のA−A矢視断面図、(d)は底面図、(e)は(a)のB−B矢視断面図、(f)は背面図である。
【図3】壁面平行状態で固定された受信機を示す斜視図である。
【図4】壁面平行状態で固定する際における受信機を配線と共に示す背面図である。
【図5】壁面平行状態で固定する際における受信機を配線及び固定板と共に示す図であって、(a)は背面図、(b)は右側面図、(c)は平面図である。
【図6】壁面平行状態で固定された受信機を固定板と共に示す右側面図である。
【図7】直立状態で固定された受信機を固定板と共に示す斜視図である。
【図8】直立状態で固定された受信機を固定板と共に示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図9】直立状態で固定された受信機を配線及び固定板と共に示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る電子機器における配線の引き回し構造の実施の形態を詳細に説明する。最初に電子機器の全体構成を説明し、次に電子機器における配線の引き回し構造を説明し、最後に本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、この実施の形態では、固定対象となる電子機器として、告知放送システムのセンター装置から送信された告知放送信号を住戸内で受信して告知放送出力を行う受信機を挙げて説明する。
【0022】
(構成−受信機)
最初に、受信機の基本構成について説明する。図1は本実施の形態に係る受信機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は底面図である。図1(a)に示すように、受信機1は、筐体3の内部に図示しない各種の電子部品等を収容して構成されている。この筐体3は、正面カバー3aと背面カバー3bとを組み合わされて構成されている。正面カバー3aと背面カバー3bの接続方法は任意であるが、例えば、正面カバー3aと背面カバー3bは嵌合やネジ留めにて接続することができる。
【0023】
この筐体3の正面には、操作部4及び表示部5が設けられている。操作部4としては、具体的には、受信機1に録音された告知放送の再生を指示するための告知再生スイッチ4a、後述するアンテナ17から受信したFMラジオ放送等の再生を指示するためのラジオ再生スイッチ4b、及び放送音量を調節するためのボリュームスイッチ4cが設けられている。表示部5としては、具体的には、電源ON時に点灯する電源表示灯5a、緊急放送時に点灯又は点滅する緊急放送表示灯5b、及び一般放送時に点灯又は点滅する一般放送表示灯5cが設けられている。また、筐体3の正面には、筐体3の内部に設けた図示しないスピーカから出力された音を、当該筐体3の外部に放出するための音響孔6が設けられている。
【0024】
また、図1(a)に示すように、筐体3には、図示しない電池を収容するための空間部である電池取付部16と、この電池取付部16を開閉自在に覆う電池カバー16aが設けられている。このように電池カバー16aを筐体3の正面に設けることで、電池カバー16aの着脱や電池交換を容易に行うことができる。
【0025】
また、図1(a)、(b)に示すように、筐体3の左側面には、FMラジオ等の電波を受信するためのアンテナ17が設けられている。従って、告知放送がセンター装置から受信できない状況であっても、アンテナ17にてFMラジオ等を受信することができる。
【0026】
また、図1(b)、(c)に示すように、筐体3の背面には複数の係止穴1a、1bが形成されており、筐体3の底面には複数の係止穴1c、1dが形成されている。これら係止穴1a〜1dは、後述する固定板20の係止突起24を係脱自在に係止するための貫通穴である。係止穴1a、1bは、筐体3の重心位置を中心として、上下に対称となる複数箇所に方形状に形成されている。係止穴1c、1dは、筐体3の左右中央位置を中心として、左右対称となる複数箇所に方形状に形成されている。
【0027】
次に、受信機1に配線を接続等するために形成された構造について説明する。筐体3に対して接続される配線としては、告知放送用信号を入力するための同軸ケーブル7(特許請求の範囲における第1配線に対応する)、商用電源を供給するための電源コード8、及び移報出力を行うための移報用ケーブル9(特許請求の範囲における第2配線に対応する)がある。以下では、これら同軸ケーブル7、電源コード8、及び移報用ケーブル9を、相互に特に区別する必要がない場合には配線と総称する。この配線については図1での図示は省略する。
【0028】
配線は、いずれも筐体3の背面に接続される。具体的には、図1(b)に示すように、筐体3の背面における図示右上部には収容空間部10が形成されており、この収容空間部10には同軸ケーブル7を接続するためのコネクタ11が収容されている。また、筐体3の背面における図示左上部には、移報用ケーブル9を接続するための移報端子12が設けられている。例えば、移報端子12としては、5つの移報接点が設けられており、警報用スピーカの如き小出力用機器への移報を行う場合には、当該5つの移報接点の内の2つの移報接点に対して移報用ケーブル9が接続され、トランペットスピーカの如き大出力用機器への移報を行う場合には、当該5つの移報接点の全てに対して移報用ケーブル9が接続される。なお、図1(b)には、5つの移報接点の内の2つの移報接点のみを露出し、残りの3つの移報接点は取り外し自在に設けられたカバーにて非露出状に覆われている状態を示す。さらに、筐体3の背面における図示左下部には、電源コード8を接続するための電源端子14が設けられている。
【0029】
ここで、筐体3の背面には、配線の取り回しを行うための配線ガイド部15が形成されている。この配線ガイド部15は、第1配線路15a、第2配線路15b、第3配線路15c、第4配線路15d、及び引出口15eを有する。
【0030】
図4に示すように、第1配線路15aは、筐体3の図示右側に設けられた配線路であり、少なくとも同軸ケーブル7を挿通可能な径で形成された溝状の配線路であって、収容空間部10から引出口15eに至るように連続状に形成されている。
【0031】
第2配線路15bは、筐体3の図示左側に設けられた配線路であり、少なくとも移報用ケーブル9を挿通可能な径で形成された溝状の配線路であって、移報端子12の近傍位置から引出口15eに至るように連続状に形成されている。
【0032】
第3配線路15cは、筐体3の図示右側に設けられた配線路であり、第1配線路15aと同様に少なくとも同軸ケーブル7を挿通可能な径(ただし、本実施の形態においては、同軸ケーブル7及び移報用ケーブル9を挿通可能な径)で形成された溝状の配線路であって、第1配線路15aの途中位置から筐体3の図示右下の外縁に至るように連続状に形成されている。この第3配線路15cには、当該第3配線路15cに収容された同軸ケーブル7や移報用ケーブル9が当該第3配線路15cから脱落することを防止するために、当該第3配線路15cの上方に突出するように形成されたコード抑え18が設けられている。
【0033】
第4配線路15dは、筐体3の図示左側に設けられた配線路であり、少なくとも電源コード8を挿通可能な径(あるいは、電源コード8及び移報用ケーブル9を挿通可能な径)で形成された溝状の配線路であって、筐体3の図示左側に沿って、筐体3の図示左上及び左下の外縁に至るように連続状に形成されている。この第4配線路15dには、当該第4配線路15dに収容された電源コード8や移報用ケーブル9が当該第4配線路15dから脱落することを防止するために、当該第4配線路15dの上方に突出するように形成されたコード抑え19が設けられている。
【0034】
引出口15eは、第1配線路15aと第2配線路15bとの相互間に設けられたものであって、少なくとも同軸ケーブル7及び移報用ケーブル9の両方を挿通可能な径で形成された凹部である。このように構成された配線ガイド部15を用いて行われる配線の具体的な取り回し方法については後述する。
【0035】
(構成−固定板)
次に、このように構成された受信機1を固定するための固定板20について説明する。図2は固定板20を示す図であり、(a)は正面図(受信機1に対向する側を正面とする)、(b)は右側面図、(c)は(a)のA−A矢視断面図、(d)は底面図、(e)は(a)のB−B矢視断面図、(f)は背面図である。固定板20は、樹脂材にて形成された略板状体であり、受信機1と設置面の間に介在され、受信機1を設置面に固定するものである。
【0036】
この固定板20は、引込口21、上下一対のネジ孔22、23、複数の係止突起24、及び溝部25を備えて構成されている。
【0037】
引込口21は、受信機1に接続した同軸ケーブル7又は移報用ケーブル9を、受信機1の配線ガイド部15の引出口15eを介して固定板20の外部に引き出すための開口であり、図2(a)、(c)、(f)に示すように、固定板20の上下左右のほぼ中央付近に設けられている。この引込口21は、引出口15eに対応する位置において、配線ガイド部15の引出口15eとほぼ同じ形状(略長方形状)または引出口15eより大きな形状で形成されている。
【0038】
上下一対のネジ孔22、23は、受信機1を後述する壁面平行状態で固定する際に、当該壁面にねじ込まれた図示しない取り付けネジを係止させるためのものである。上方のネジ孔22は、ダルマ形状の孔部であり、図示しない取り付けネジの頭部を挿通可能な径の大径部22aと、この大径部22aに対して上方に設けられたものであって図示しない取り付けネジの頭部は挿通不能であるが図示しない取り付けネジの本体部を挿通可能な径の小径部22bとを、相互に連通させて構成されている。下方のネジ孔23は、図示しない取り付けネジの頭部は挿通不能であるが図示しない取り付けネジの本体部を挿通可能な径にて形成されたもので、固定板20の幅方向に沿って長い長孔状として形成されている。
【0039】
複数の係止突起24は、図2(a)、(c)〜(e)に示すように、固定板20の正面に設けられたもので、受信機1を後述する壁面平行状態で固定する際に、受信機1の背面の係止穴1a、1bに係脱自在に係止され、あるいは、受信機1を後述する直立状態で固定する際に、受信機1の底面の係止穴1c、1dに係脱自在に係止されることによって、固定板20に対して受信機1を着脱自在に取り付けるものである。
【0040】
これら複数の係止突起24は、固定板20と同様の樹脂材にて形成された略板状体であり、固定板20の係止穴1a、1bに対応する位置及び形状(側面略L字形状)で、固定板20から受信機1に向けて突出するように形成されており、固定板20の長さ方向に沿って並設されている。また、この複数の係止突起24は、受信機1を後述する壁面平行状態で固定する際に、固定板20の側面に沿った係止突起24の側部を上方に向けて突出させるように配置されている。
【0041】
溝部25は、図2(a)、(c)〜(e)に示すように、固定板20の正面に設けられたもので、受信機1を後述する直立状態で固定する際に、受信機1を固定板20に対して嵌合させるものである。すなわち、上述した複数の係止突起24は、溝部25における、受信機1の底面の係止穴1c、1dに対応する位置に配置されており、受信機1を溝部25に配置することで、係止穴1c、1dに係止突起24を係止させることが可能となる。
【0042】
(受信機における配線の引き回し方法)
次に、受信機1における配線の引き回し方法について説明する。ここでは、受信機1の固定状態としては、壁面平行状態、及び直立状態の2つの方法を取り得るものとし、この固定状態によって、配線の引き回し方法が異なる。
【0043】
最初に、受信機1を壁面平行状態で固定した場合における配線の引き回し方法について説明する。壁面平行状態とは、受信機1を、鉛直方向に略沿った設置面である設置壁Wに沿わせた状態のことである。図3は、壁面平行状態で固定された受信機1を示す斜視図、図4は、壁面平行状態で固定する際における受信機1を配線と共に示す背面図、図5は、壁面平行状態で固定する際における受信機1を配線及び固定板20と共に示す図であって、(a)は背面図、(b)は右側面図、(c)は平面図、図6は、壁面平行状態で固定された受信機1を固定板20と共に示す右側面図である(ただし受信機1は想像線にて外形のみを示す)。
【0044】
この壁面平行状態の固定方法では、最初に、固定板20を設置壁Wへ固定する。このため、固定板20の上下一対のネジ孔22、23に、設置壁Wにねじ込まれた図示しない取り付けネジを係止する。具体的には、設置壁Wにねじ込まれた図示しない取り付けネジの頭部を、上方のネジ孔22の大径部22aに挿通させた後、小径部22bに挿通させ、この図示しない取り付けネジを支点に固定板20の鉛直面内での角度を任意に調整する。その後、下方のネジ孔23を介して設置壁Wに図示しない取り付けネジをねじ込むことで、固定板20を設置壁Wに固定する。
【0045】
次に、設置壁Wに取り付けた固定板20の係止突起24に対して、受信機1を当該受信機1の背面の係止穴1a、1bにおいて係止することにより、当該受信機1を当該設置壁Wに沿わせた状態で固定できる。
【0046】
ここで、図4に示すように、受信機1に対する固定板20の取り付け前には、受信機1の筐体3の背面に配線の取り回しが行われる。具体的には、筐体3のコネクタ11には同軸ケーブル7が接続される。この同軸ケーブル7は、収容空間部10から第1配線路15aを経て引出口15eに至るように引き回わされている。さらに、同軸ケーブル7は、図5に示すように、固定板20の引込口21に引き込まれ、図6に示すように、設置壁Wに形成された接続ボックスWaの内部に引き込まれて、宅内に設けられた分配器等の図示しない告知放送用設備に公知の方法にて接続されている。
【0047】
また、図4に示すように、受信機1の筐体3の背面の移報端子12には移報用ケーブル9が接続される。この移報用ケーブル9は、第4配線路15dから第2配線路15bを経て引出口15eに至るように引き回わされている。さらに、移報用ケーブル9は、図5に示すように、固定板20の引込口21に引き込まれ、図6に示すように、設置壁Wに形成された接続ボックスWaの内部に引き込まれて、図示しない移報中継設備に公知の方法にて接続されている。
【0048】
また、図4に示すように、受信機1の筐体3の背面の電源端子14には電源コード8が接続されている。この電源コード8は、第4配線路15dに引き込まれ、この第4配線路15dを介して当該筐体3の図示左下の外縁から受信機1の外部に引き出されて、図示しない商用電源に接続されている。
【0049】
次に、受信機1を直立状態で固定した場合における配線の引き回し方法について説明する。直立状態とは、受信機1を、水平方向に略沿った設置面である床面Gに沿わせた状態のことである。図7は、直立状態で固定された受信機1を固定板20と共に示す斜視図、図8は、直立状態で固定された受信機1を固定板20と共に示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、図9は、直立状態で固定された受信機1を配線及び固定板20と共に示す背面図である。
【0050】
この直立状態の固定方法では、最初に、固定板20を床面Gに載置する。例えば、単に固定板20を床面Gに載置してもよく、或いは、ネジ孔22、23を介して固定板20を床面Gに対してネジ留め等してもよい。
【0051】
次に、固定板20に受信機1を固定する。このため、固定板20の上方において、固定板20の係止穴1a、1bと受信機1の係止突起24との位置を合わせた後に、受信機1を溝部25に嵌め合わせる。このとき、受信機1は、固定板20の真上位置よりも幅方向に少しずらした位置に配置される。次いで、受信機1を、幅方向にスライドさせて固定板20の真上位置に位置させることで、受信機1の底面の係止穴1c、1dに固定板20の係止突起24を係止させ、受信機1を床面Gに対して起立させた状態で固定できる。また、固定板20の溝部25によって、受信機1の底部における短手側部(受信機1の幅方向の側部)を固定板20の幅方向から狭持することにより、受信機1を一層安定的に固定できる。
【0052】
ここで、図9に示すように、受信機1に対する固定板20の取り付けの前後のいずれか任意の時点において、受信機1の筐体3の背面に配線の取り回しが行われる。具体的には、筐体3の背面のコネクタ11に同軸ケーブル7が接続される。この同軸ケーブル7は、収容空間部10から第1配線路15aを経て第3配線路15cに至り、この第3配線路15cを介して筐体3の図示右下の外縁に引き出されている。さらに、同軸ケーブル7は、筐体3の側方等を通って、宅内に設けられた分配器等の図示しない告知放送用設備に公知の方法にて接続されている。
【0053】
また、図9に示すように、受信機1の筐体3の背面の移報端子12には移報用ケーブル9が接続されている。この移報用ケーブル9は、第4配線路15dから第2配線路15bを経て引出口15eに至り、この引出口15eから第1配線路15aを経て第3配線路15cに至り、この第3配線路15cを介して筐体3の図示右下の外縁に引き出されている。さらに、移報用ケーブル9は、例えば同軸ケーブル7に対して結束バンド30にて結束され、同軸ケーブル7と共に筐体3の側方等を通って、図示しない移報中継設備に公知の方法にて接続されている。
【0054】
また、図9に示すように、受信機1の筐体3の背面の電源端子14には電源コード8が接続されている。この電源コード8は、第4配線路15dに引き込まれ、この第4配線路15dの途中から出て、筐体3の背面に沿って図示左側から図示右側に至るように引き回され、例えば同軸ケーブル7に対して結束バンドにて結束され、同軸ケーブル7と共に筐体3の側方等を通って、図示しない商用電源に接続されている。
【0055】
(効果)
このように本実施の形態によれば、壁面平行状態においては、同軸ケーブル7を、第1配線路15aを介して引出口15eに引き込み、この引出口15eから受信機1の外部に引き出すことができるので、同軸ケーブル7が受信機1の外側に向けて不用意に飛び出すことを防止でき、同軸ケーブル7を引き回すことによる意匠性の低下を防止することができる。
【0056】
また、壁面平行状態においては、同軸ケーブル7を第1配線路15aに収容することで、第1配線路15aを受信機1に密着させることが可能となり、別途に固定する作業が不要となるので、同軸ケーブル7を引き回すことによる施工性の低下を防止することができる。
【0057】
また、壁面平行状態においては、移報用ケーブル9を、第2配線路15b等を介して引出口15eに引き込み、この引出口15eから受信機1の外部に引き出すことができるので、同軸ケーブル7と同様に、意匠性の低下を防止することができると共に、施工性の低下を防止することができる。
【0058】
さらに、壁面平行状態においては、同軸ケーブル7及び移報用ケーブル9を相互に異なる第1配線路15aと第2配線路15b等を介して引き回すことができるので、第1配線路15aや第2配線路15bを同軸ケーブル7や移報用ケーブル9の引き回し経路や形状に合致した構造にすることで、配線路の最適化を図ることができる。
【0059】
また、壁面平行状態においては、同軸ケーブル7及び移報用ケーブル9を相互に共通の引出口15eを介して受信機1の外部に引き出すことができるので、施工性を一層向上させることが可能となる。
【0060】
また、壁面平行状態においては、同軸ケーブル7を固定板20の引込口を介して外部に引き出すことができるので、同軸ケーブル7を受信機1の側方に突出させることなく設置面に引き込むことができ、同軸ケーブル7を引き回すことによる意匠性の低下を防止することができる。
【0061】
また、直立状態においては、同軸ケーブル7については、第1配線路15aから第3配線路15cを介して受信機1の外縁に引き出すことができるので、受信機1の固定状態に合致した経路で、同軸ケーブル7を引き回すことが可能となる。
【0062】
また、直立状態においては、移報用ケーブル9を、第2配線路15b及び引出口15e等を介して、さらに第3配線路15cを介して受信機1の外縁に引き出すことができるので、受信機1の固定状態に合致した経路で、移報用ケーブル9を引き回すことが可能となる。
【0063】
また、直立状態においては、同軸ケーブル7及び移報用ケーブル9を相互に集約した形で受信機1の外縁に引き出すことができるので、施工性を一層向上させることが可能となる。
【0064】
また、壁面平行状態と直立状態のいずれの状態においても、同軸ケーブル7や移報用ケーブル9を、受信機1の背面から外部に引き出すことができるので、同軸ケーブル7や移報用ケーブル9が受信機1の外側に向けて不用意に飛び出すことを防止でき、同軸ケーブル7や移報用ケーブル9を引き回すことによる意匠性の低下を防止することができる。
【0065】
〔本実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明の本実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0066】
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0067】
(固定状態について)
上記実施の形態では、受信機1の固定状態として、壁面平行状態と直立状態を挙げているが、いずれか一方のみの固定状態や、他の固定状態で受信機1を固定することも可能であり、この場合には、当該固定状態に合致した構造で配線を取り回し可能とすることができる。例えば、受信機1の長手側面を下方側にして設置面に載置する場合には、第3配線路15cを当該下方側の外縁に至るように形成してもよい。
【0068】
(配線の数及び種類について)
配線の数及び種類は任意に変更可能であり、例えば、同軸ケーブル7を介して電力供給を受ける場合には電源コード8を省略してもよく、移報出力を行わない場合には移報用ケーブル9を省略してもよく、あるいは、告知放送を他の機器に中継出力するためのさらなる同軸ケーブル7を受信機1に接続するようにしてもよい。このような配線の数及び種類に応じて、配線の取り回し構造を適合させることができ、例えば、配線数を増やした場合には配線路を増やすことができ、配線数を減らした場合には配線路を減らすことができる。上記実施の形態では、直立状態における第3配線路15cに、同軸ケーブル7と移報用ケーブル9を収容しているが、このように、一つの配線路に複数の配線を収容してもよい。この場合には、配線数を増やした場合であっても、配線路を増やすことなく、既存の配線路のみを用いて全ての配線を収容することもできる。
【0069】
(引き回し経路について)
上記実施の形態で説明した以外の引き回し経路を採用することもでき、例えば、壁面平行状態や直立状態において、移報用ケーブル9を電源コード8と共に第4配線路15dに引き込み、この第4配線路15dを介して筐体3の下縁又は上縁に引き出してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 受信機
1a、1b、1c、1d 係止穴
3 筐体
3a 正面カバー
3b 背面カバー
4 操作部
4a 告知再生スイッチ
4b ラジオ再生スイッチ
4c ボリュームスイッチ
5 表示部
5a 電源表示灯
5b 緊急放送表示灯
5c 一般放送表示灯
6 音響孔
7 同軸ケーブル
8 電源コード
9 移報用ケーブル
10 収容空間部
11 コネクタ
12 移報端子
14 電源端子
15 配線ガイド部
15a 第1配線路
15b 第2配線路
15c 第3配線路
15d 第4配線路
15e 引出口
16 電池取付部
16a 電池カバー
17 アンテナ
18、19 コード抑え
20 固定板
21 引込口
22、23 ネジ孔
22a 大径部
22b 小径部
24 係止突起
25 溝部
30 結束バンド
G 床面
W 設置壁
Wa 接続ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の一側面に接続した配線を引き回すための構造であって、
前記電子機器の一側面における第1位置に配置された端子であって、前記配線としての第1配線を接続するための第1接続端子と、
前記第1接続端子に接続された前記第1配線を引き回すために前記電子機器の一側面に形成された溝状の配線路であって、前記第1位置から引き出し位置に至る第1配線路と、
少なくとも前記第1配線を前記電子機器の外部に引き出すために前記電子機器の一側面に形成された凹部であって、前記引き出し位置に形成された引出口と、
を備える電子機器における配線の引き回し構造。
【請求項2】
前記電子機器の一側面における前記第1位置以外の第2位置に配置された端子であって、前記配線としての第2配線を接続するための第2接続端子と、
前記第2接続端子に接続された前記第2配線を引き回すために前記電子機器の一側面に形成された溝状の配線路であって、前記第2位置から前記引き出し位置に至る第2配線路とを備え、
前記引出口は、前記第1配線及び前記第2配線を前記電子機器の外部に引き出すために形成された、
請求項1に記載の電子機器における配線の引き回し構造。
【請求項3】
前記第1配線路には、前記第1接続端子に接続された前記第1配線を前記引出口以外から前記電子機器の外部に引き出すために、前記電子機器の一側面に形成された溝状の配線路であって、当該第1配線路のいずれかの位置から前記電子機器の一側面における外縁に至る第3配線路、
を備える請求項1又は2に記載の電子機器における配線の引き回し構造。
【請求項4】
前記第2接続端子に接続された前記第2配線を、少なくとも前記第2配線路及び前記引出口を介して、前記第3配線路に引き回し可能とした、
請求項2及び3に記載の電子機器における配線の引き回し構造。
【請求項5】
前記電子機器の一側面は、当該電子機器の背面である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電子機器における配線の引き回し構造。
【請求項6】
前記電子機器は、当該電子機器の背面に取り付けられた固定板を介して設置面に設置されるものであり、
前記固定板における前記引き出し位置に対応する位置には、前記引出口を介して引き出された少なくとも前記第1配線を、前記設置面に向けて引き込むための引込口を設けた、
請求項5に記載の電子機器における配線の引き回し構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−4030(P2011−4030A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143922(P2009−143922)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】