説明

電子機器の冷却装置

【課題】安価な小さな装置で充分に冷却することができ、しかも保守点検も容易な射出成形機用のサーボアンプの冷却装置を提供する。
【解決手段】ヒートシンク(30)をサーボアンプ(E、K、S)が取り付けられる金属製の冷却板(31)と、この冷却板(31)の他方の面に該面に対して垂直方向に設けられている複数枚の金属製のフィン(32、32、…)とから構成する。冷却風はフィン(32、32、…)が設けられている側の冷却板(31)に対して垂直方向に吹き付ける。これにより、少量の冷却風で冷却できる。このとき、冷却風中の塵埃は、気体サイクロン(2)により除去する。気体サイクロン(2)を採用することにより、冷却装置は安価になり、保守・点検も殆ど必要としなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の冷却装置に関し、さらに詳しくはIGBTを含んだサーボアンプ等の電子機器が間接的に冷却されるようになっているヒートシンクと、該ヒートシンクに除塵された冷却風を送風する送風装置とからなる電子機器の冷却装置に関し、限定するものではないが、特に電動式の射出成形機用のサーボアンプの冷却装置に適用して好適な電子機器の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NC工作機、産業用ロボット等の生産機械、例えば射出成形機は、従来周知のように、型開閉ユニット、射出ユニット等からなっている。型開閉ユニットは、固定金型、この固定金型に対して型開閉される可動金型、成形品を突き出すエジェクタ装置等からなり、射出ユニットは加熱シリンダ、この加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動されるスクリュ等からなっている。そして、電動式の射出成形機においては、上記の可動金型を型開閉するための駆動源、エジェクタ装置の駆動源、スクリュを回転駆動して可塑化する駆動源、スクリュを軸方向に駆動する駆動源等の動力源は、サーボモータから構成されている。
【0003】
このようなサーボモータの制御には、サーボ制御装置から出力される制御信号に基づいて電流をオンオフするIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が使用されている。IGBTをスイッチングして電流を流すと、IGBTはスイッチング時と導通時に発熱する。
ところで、前述したような電動式の射出成形機に使用されるサーボモータの出力は大きく、最低でも4台のIGBTを含んだサーボアンプと、AC/DCコンバータとを必要としている。サーボモータの出力が15kwになると、IGBTで発生する熱は、1台の射出機を駆動するだけで1000w程度も発生する。IGBTは熱に対して弱く、ジャンクション温度が150℃を越えると破壊するので、120℃程度を上限として使用しなければならない。IGBTを含んだサーボアンプあるいは動力用半導体の冷却は、特に電動式の射出成形機にとって重要な問題となっている。
【0004】
このようなIGBTの冷却には、空冷式も採用されている。空冷式は、IGBTが取り付けられる冷却板と、この冷却板の側部に並列的に設けられている冷却風ダクトと、冷却風ダクトの終端部に設けられている吸引用の冷却ファンとからなっている。したがって、冷却ファンを駆動すると、外気あるいは冷却風が冷却風ダクトの一方の端部から吸い込まれ、そして他端部から大気中へ排出される。このとき冷却板は外気により冷却される。これによりIGBTが間接的に冷却される。
【0005】
空冷式冷却装置は、外気を吸引し、そして排出するだけでIGBTが冷却され、冷却熱媒体を必要としない特徴があり、また結露が生じないので水滴による漏電、ショート等の問題がないという利点も有する。このような利点を有するので、特許文献1〜3に示されているように、空冷式冷却装置を備えた電子機器、モータ制御盤等が色々提案されている。しかしながら、空気は熱容量が小さく電動式の射出成形機用のIGBTを冷却するには、大量の冷却風を取り込まなければならず、この多量の空気に含まれている塵埃等によりIGBT端子部分や、その他の制御機器が汚れる。そこで、冷却風を吸引するためのダクトには、前記特許文献1〜3には示されていないが、一般にエアフィルタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−235418号公報
【特許文献2】特開2008−177314号公報
【特許文献3】特開2002−186265号公報
【特許文献4】特開2007−268327号公報
【0007】
気体中すなわち空気中の微粉体のような塵埃を捕捉する固・気分離装置としては、前記エアフィルタの他に気体サイクロンが知られている。気体サイクロンは、特許文献4にも示されているように従来周知で、円筒状を呈する外筒と、この外筒の下端部から下方に向かって円錐状に絞られている円錐筒と、前記外筒の内部に所定の間隔をおいて設けられている内筒とからなっている。従って、塵埃を含んだ空気あるいは外気を外筒に接線方向に圧送すると、塵埃を含んだ空気は外筒内で旋回し、比重の大きい塵埃は遠心力により円錐筒の壁面に押し付けられながら径の小さい下方へ移動し、そして円錐筒の下端部に溜まる。塵埃が除去された清浄な空気は内筒の上端部から外部へ出ていく。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
IGBT等の電子機器の冷却には、特許文献には示されていないが、最近になって衝突型冷却装置も採用されるようになってきている。この冷却装置は、サーボアンプ等の電子機器が取り付けられるアルミニウム製合金のような金属製の冷却板と、この冷却板に略垂直にろう付けなどにより、所定の間隔をおいて取り付けられている複数枚のフィンと、これらのフィンに平行方向で、且つ冷却板に垂直方向に送風するファンとからなっている。したがって、ファンにより冷却風を冷却板に垂直方向に送風すると、冷却風は冷却板に叩きつけられるように衝突し、そしてフィンから側方へ出ていく。このような方向に吹き付けられる冷却風とフィンとの相互作用あるいは働きにより、衝突型冷却装置はフィンと冷却風との接触効率が高く、フィンの面積が狭くても大きな冷却効果が得られ、従って冷却風量も少なくて済む利点がある。
【0009】
しかしながら、このような接触効率の高い衝突型冷却装置が電子機器の冷却に適用された特許文献はない。衝突型冷却装置を適用すれば、少量の空気で足りるのに大容量のファン、大径のダクト、大規模なエアフィルタ等が適用されているのが実情である。また、気体サイクロンは、上記のように構造的に単純で安価であり、比重が大きくて電子機器への悪影響が懸念される微細な金属粉の除去には特に適しているが、さらにはエアフィルタは定期的に逆方向に送風して塵埃を落とす逆洗作業、あるいはフィルタを交換するなどコストのかかる作業を必要とするが、気体サイクロンは電子機器の冷却には未だ適用されていない。
本発明は、上記したような従来の実情に鑑みてなされたもので、安価な小さな装置で充分に冷却することができ、しかも保守点検も容易な電子機器の冷却装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、IGBTを含んだサーボアンプ等の電子機器の冷却に空冷式の衝突型冷却装置が適用される。そして、冷却風あるいは外気から塵埃を除去する装置には気体サイクロンが適用される。または、気体サイクロンと、該気体サイクロンの下流側に設けられるエアフィルタの両方が適用される。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、電子機器が取り付けられ間接的に冷却されるようになっているヒートシンクと、該ヒートシンクに除塵された冷却風を送風する送風装置とからなり、前記ヒートシンクは、その一方の面に前記電子機器が取り付けられる金属製の冷却板と、前記冷却板の他方の面に該面に対して垂直方向に所定の間隔をおいて設けられている同様に金属製の複数枚のフィンとからなり、前記送風装置は、気体サイクロンと送風ファンとからなり、前記気体サイクロンで除塵された冷却風は、前記送風ファンにより前記ヒートシンクの冷却板の他方の面に対して垂直方向に吹き付けられるように構成される。請求項2に記載の発明は、電子機器が取り付けられ間接的に冷却されるようになっているヒートシンクと、該ヒートシンクに除塵された冷却風を送風する送風装置とからなり、前記ヒートシンクは、その一方の面に前記電子機器が取り付けられる金属製の冷却板と、前記冷却板の他方の面に該面に対して垂直方向に所定の間隔をおいて設けられている同様に金属製の複数枚のフィンとからなり、前記送風装置は、気体サイクロンと、該気体サイクロンの下流側に設けられているエアフィルタと、送風ファンとからなり、前記気体サイクロンとエアフィルタとで除塵された冷却風は、前記送風ファンにより前記ヒートシンクの冷却板の他方の面に対して垂直方向に吹き付けられるように構成される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の冷却装置において、1台の気体サイクロンに対して複数個のヒートシンクが並列的に配置され、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の冷却装置において、複数個のヒートシンクのそれぞれに対応して送風ファンが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によると、ヒートシンクは、その一方の面に電子機器が取り付けられる金属製の冷却板と、この冷却板の他方の面に該面に対して垂直方向に所定の間隔をおいて設けられている同様に金属製の複数枚のフィンとからなり、冷却風は送風ファンによりヒートシンクの冷却板の他方の面に対して垂直方向に吹き付けられるように構成されているので、冷却風とフィンとの接触効率が高く、少量の冷却風で電子機器を冷却することができる。少量の冷却風で冷却することができるので、冷却風の取入口、送風管等も小さくなり安価に冷却装置を提供することができる。また、本発明によると、冷却風の除塵に気体サイクロンが適用されているで、分離される塵埃は下部に溜まり定期的に保守すればよい。他の発明によると、気体サイクロンの下流側にはエアフィルタが設けられているので、さらに清浄な冷却風で冷却することができる効果が得られる。また、1台の気体サイクロンに対して複数個のヒートシンクが並列的に配置されている発明によると、複数個の電子機器を効率的に冷却することができ、複数個のヒートシンクのそれぞれに対応して送風ファンが設けられている発明によると、ヒートシンクに対する冷却風の送風量を個々に制御できる効果が付加される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を模式的に示す図で、その(ア)は全体を示す側面図、その(イ)は(ア)において矢視イーイ方向に見た模式的な断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる電動式の複数個の成形機用のサーボアンプの冷却装置を模式的に示す図であるが、この図に示されているように、本実施の形態に係わるサーボアンプの冷却装置は、外気すなわち冷却風を送風する送風装置1と、この送風装置1から清浄な冷却風が送風されるサーボアンプ冷却箱20とからなっている。このサーボアンプ冷却箱20内に複数個のヒートシンクが収納されている。
【0016】
送風装置1は、気体サイクロン2と、この気体サイクロン2からサーボアンプ冷却箱20の方へ延びている送風管10とからなっている。気体サイクロン2は、従来周知であるので詳しい説明はしないが、円筒状を呈する外筒3と、この外筒3の下端部から下方に向かってテーパ状に絞られている円錐筒4と、外筒3の内部に、該外筒3と所定の間隔をおいて設けられている内筒5とからなっている。外筒3の上方の開口部は蓋体6で封鎖され、円錐筒4の下方部は小径の排出口7となっている。この下端部には、図には示されていないが、着脱自在に蓋が設けられている。このように構成されている外筒3の上方において接線方向に外気取入管8が取り付けられている。この外気取入管8には、図1には示されていないが、本実施の形態では送風機の他に、大きなゴミ等を予め取り除くゴミキャッチャーが介装されている。
【0017】
送風管10にも、図示の実施の形態では、送風ファン11と所定メッシュのエアフィルタ12とが介装されている。そして、送風管10の上流側は、気体サイクロン2の内筒5の上方端部に接続され、下流端部はサーボアンプ冷却箱20に接続されている。
【0018】
サーボアンプ冷却箱20は、全体としては下方が開口した箱状を呈し、その上方部分が圧力室あるいはプレナム室21となり、その下方部分がヒートシンク収納室22となっている。プレナム室21と収納室22とを隔離している底壁23には、本実施の形態では等間隔に4個の開口部24、24、…が開けられている。これらの開口部24、24、…からは末広がり状の冷却風ガイド25、25、…が下方へ延び、これらの冷却風ガイド25、25、…に対応してヒートシンク30、30、…が取り付けられている。
【0019】
ヒートシンク30、30、…は、例えばアルミニウム合金のような熱の良導体から構成されている複数個すなわち4個の独立した板状の冷却板31、31、…を備えている。そして、これらの冷却板31、31、…の一方の面には、同様に熱の良導体である例えばアルミニウム合金製の複数枚のフィン32、32、…がろう付けなどで取り付けられている。これらのフィン32、32、…は、図1の(ア)に示されているように、その面が紙面に垂直になるように、換言すると図1の(イ)に示されているように、その面が紙面に平行になるようにして所定の間隔をおいて取り付けられている。紙面に平行になるようにして取り付けられているので、冷却風が冷却板31、31、…に当たってフィン32、32、…から出ていくとき、隣の冷却風と干渉することはない。冷却板31、31、…の他方の面に、本実施の形態ではエジェクタ用サーボアンプE、型開閉用サーボアンプK,可塑化用サーボアンプS,射出用サーボアンプがそれぞれ独立して取り付けられるようになっている。
【0020】
次に、上記実施の形態の作用について説明する。送風管10に設けられている送風ファン11を起動する。必要に応じて、気体サイクロン2の外気取入管8に介装されている送風機も起動する。そうすると、例えば工場内の汚れている外気が外気取入管8から気体サイクロン2の外筒3内へ、その接線方向に圧送される。塵埃を含んだ外気すなわち冷却風は、外筒3内を旋回する。旋回することにより塵埃は遠心力により周壁方向に移動する。遠心力は旋回径が小さいほど大きく作用するので、円錐筒4内を下方へ移動するに従って塵埃は濃縮され、そして円錐筒4の下端の排出口7の下端部に溜まる。溜まった塵埃は、送風ファン11、送風機等を止めて定期的に蓋をおけて排出する。塵埃、特に鉄粉のような電子機器にとって有害な塵埃が分離・除去された清浄な冷却風は、外筒3の中心部に集まり、内筒5から送風管10へと吸引・圧送される。送風管10に介装されているエアフィルタ12によりさらに浄化された冷却風はプレナム室21に圧送される。
【0021】
加圧状態の清浄な冷却風は、プレナム室21からそれぞれの開口部24、24、…を通って、それぞれのヒートシンク30、30、…のフィン32、32、…間を通り冷却板31、31、…の一方の面に略直角に当たる。そして、冷却板31、31、…により方向が変えられ、ヒートシンク収納室22、22、…から外部へ出ていく。このような冷却風の動きが図1の(イ)において複数の点線で示されている。冷却風は、フィン32、32、…に平行に送風されるので、フィン32、32、…間で淀む、あるいは乱流を起こすことなく、冷却板31、31、…の面に叩きつけられる。これにより、熱交換効果が高まり、サーボアンプE、K、Sで生じる熱は、冷却板31、31、…およびフィン32、32、…を介して冷却風に放熱される。すなわち、気体サイクロン2で得られる少量の冷却風により、小さなヒートシンク30、30、…でサーボアンプE、K,Sは冷却される。
【0022】
本発明は、色々な形で実施できる。例えば、プレナム室21には加圧状態の清浄な冷却風が供給されるので、その開口部24、24、…に整流板を設け、整流された冷却風をヒートシンク30、30、…に叩きつけるように送風することもできる。また、開口部24、24、…には、個々に送風ファンを設けることもできる。さらには、送風管10のエアフィルタ12は省略しても実施できる。また、図示の実施の形態では、1台の気体サイクロン2に対して複数個のヒートシンク30、30、…が並列的に配置されているが、1台の気体サイクロン2により1個のヒートシンク30を冷却するように実施することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 送風装置 2 気体サイクロン
10 送風管 11 送風ファン
12 エアフィルタ 20 サーボアンプ冷却箱
21 プレナム室 24 開口部
30 ヒートシンク 31 冷却板
32 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器が取り付けられ間接的に冷却されるようになっているヒートシンクと、該ヒートシンクに除塵された冷却風を送風する送風装置とからなり、
前記ヒートシンクは、その一方の面に前記電子機器が取り付けられる金属製の冷却板と、前記冷却板の他方の面に該面に対して垂直方向に所定の間隔をおいて設けられている同様に金属製の複数枚のフィンとからなり、
前記送風装置は、気体サイクロンと送風ファンとからなり、
前記気体サイクロンで除塵された冷却風は、前記送風ファンにより前記ヒートシンクの冷却板の他方の面に対して垂直方向に吹き付けられるようになっていることを特徴とする電子機器の冷却装置。
【請求項2】
電子機器が取り付けられ間接的に冷却されるようになっているヒートシンクと、該ヒートシンクに除塵された冷却風を送風する送風装置とからなり、
前記ヒートシンクは、その一方の面に前記電子機器が取り付けられる金属製の冷却板と、前記冷却板の他方の面に該面に対して垂直方向に所定の間隔をおいて設けられている同様に金属製の複数枚のフィンとからなり、
前記送風装置は、気体サイクロンと、該気体サイクロンの下流側に設けられているエアフィルタと、送風ファンとからなり、
前記気体サイクロンとエアフィルタとで除塵された冷却風は、前記送風ファンにより前記ヒートシンクの冷却板の他方の面に対して垂直方向に吹き付けられるようになっていることを特徴とする電子機器の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却装置において、1台の気体サイクロンに対して複数個のヒートシンクが並列的に配置されている電子機器の冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却装置において、複数個のヒートシンクのそれぞれに対応して送風ファンが設けられている電子機器の冷却装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−222808(P2011−222808A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91367(P2010−91367)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】