説明

電子機器の圧接型コネクタ及びその接続構造

【課題】電子機器の薄型化や小型化に資することのできる電子機器の圧接型コネクタ及びその接続構造を提供する。
【解決手段】携帯電話の回路基板に実装されてその横方向のバッテリに対向する絶縁性のハウジング10と、ハウジング10に並設され、回路基板とバッテリ間を電気的に接続する複数の導電ピン20とを備え、ハウジング10の底部後方に複数の導電ピン20用の収納溝孔11を並設し、ハウジング10の両側面に座ぐり溝孔12を形成し、各座ぐり溝孔12には、回路基板に接着される断面略L字形の補強金具14を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型化が要求される携帯電話等からなる電子機器の圧接型コネクタ及びその接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示す携帯電話1に内蔵された回路基板と交換可能なバッテリ4等とを電気的に接続する場合には、上下方向(厚さ方向)において相対向する回路基板とバッテリ4等とに圧接型コネクタのハウジングを挟持させ、このハウジングに、回路基板とバッテリ4等のランドを電気的に接続する複数の導電ピンを並設するようにしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002‐329540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における電子機器の圧接型コネクタは、以上のように優れた構造に構成されるが、回路基板とバッテリ4等とを上下方向において相対向させるので、上下方向に回路基板あるいはバッテリ4等の嵩張る配置スペースを必要とし、近年の携帯電話1のさらなる薄型化や小型化を図るには限界がある。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、電子機器の薄型化や小型化に資することのできる電子機器の圧接型コネクタ及びその接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、第一の電気接合物とその略横方向に位置する第二の電気接合物とを電気的に接続するものであって、
第一の電気接合物に取り付けられる絶縁性のハウジングと、このハウジングに取り付けられて第一、第二の電気接合物の間を電気的に接続する複数の導電ピンとを含み、
ハウジングの両側部に座ぐり溝孔をそれぞれ形成するとともに、各座ぐり溝孔には、第一の電気接合物に設けられる補強金具を挿入し、各座ぐり溝孔の側面には、ハウジングの表面寄りに位置する段差受け部を形成し、補強金具の端部には、座ぐり溝孔の段差受け部に接触する抜け止め突片を形成したことを特徴としている。
【0006】
なお、第一の電気接合物を携帯電話内の回路基板とし、第二の電気接合物を携帯電話のバッテリとすることができる。
また、補強金具を断面略L字形に形成し、この補強金具の非屈曲板の端部に、座ぐり溝孔の段差受け部に接触する抜け止め突片を形成することができる。
また、補強金具の非屈曲板に、座ぐり溝孔の側面に圧接する抜け止め圧接片を形成することもできる。
【0007】
また、ハウジングの底部後方に複数の導電ピン用の収納溝孔を並べて形成し、導電ピンを、ハウジングに挿入されて収納溝孔から一部露出し、この露出部分が第一の電気接合物の導体部に導通する略筒形の導電トーピンと、この導電トーピンに接触状態でスライド可能に挿入されてハウジングの前部から突出する導電ヘッドピンと、これら導電トーピンと導電ヘッドピンとの間に介在されて導電ヘッドピンを第二の電気接合物の導体部に押し付けるバネ部材とから構成することも可能である。
【0008】
さらに、導電トーピンの外周面に、ハウジングの収納溝孔に干渉するガイドを形成し、このガイドの底部を略平坦化して第一の電気接合物の導体部に接触させることも可能である。
【0009】
また、本発明においては上記課題を解決するため、第一の電気接合物とその略横方向に位置する第二の電気接合物との間に、請求項1ないし6いずれかに記載の電子機器の圧接型コネクタを介在して電気的に接続するようにしたことを特徴としている。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における第一、第二の電気接合物としては、各種の回路基板、バッテリ、回路部品等があげられる。略横方向は、おおよそ横方向であれば、前後左右のいずれの方向でも良い。また、補強金具は、断面略L字形やストレート形等に形成され、第一の電気接合物にハンダ付けで接着されたり、圧入される。バネ部材は、一般的なコイルバネが主ではあるが、他種類のバネでも良い。さらに、電子機器には、少なくとも薄型化が要求される携帯電話(PHSを含む)、PDA等の情報端末機器、携帯型ゲーム機等が含まれる。
【0011】
本発明によれば、電子機器の第一、第二の接合物を電気的に接続する場合には、第一の接合物の導体部に圧接型コネクタの導電ピンを実装し、略横方向に位置する第二の接合物の導体部に圧接型コネクタの導電ピンを接触させれば、電子機器の第一、第二の接合物を電気的に接続することができる。また、座ぐり溝孔の段差受け部と各種形状を呈する補強金具の抜け止め突片とが干渉し合うので、例え電子機器やハウジングに外力が作用しても、ハウジングと補強金具とが簡単に外れて分離することが少ない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子機器の薄型化や小型化に資することができるという優れた効果がある。また、各座ぐり溝孔の側面に、ハウジングの表面寄りに位置する段差受け部を形成し、補強金具の端部には、座ぐり溝孔の段差受け部に接触する抜け止め突片を形成すれば、例え電子機器が落下してハウジングに外力が作用しても、ハウジングと補強金具とが分離するのを抑制することができる。
【0013】
また、第一の電気接合物を携帯電話内の回路基板とし、第二の電気接合物を携帯電話のバッテリとすれば、携帯電話の薄型化や小型化に資することができる。
また、座ぐり溝孔の側面に補強金具の抜け止め圧接片が圧接すれば、補強金具の挿入の容易化と抜けにく性とを向上させることができる。
さらに、導電トーピンの外周面に、ハウジングの収納溝孔に干渉するガイドを形成すれば、導電ピンを良好に位置決めすることが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における電子機器の圧接型コネクタは、図1ないし図5に示すように、携帯電話1内の回路基板2に実装されてその横方向に位置するバッテリ4に対向するブロック形のハウジング10と、このハウジング10に並べて挿着され、回路基板2とバッテリ4との間を電気的に接続する複数の導電ピン20とを備えるようにしている。
【0015】
携帯電話1内の回路基板2は、図1に示すように、例えば可撓性のフレキシブル回路基板や小型のプリント回路基板からなり、表面に導体部である複数の配線ライン、ノイズ対策用のアース部、ランド3等がそれぞれスクリーン印刷等されており、携帯電話1の裏面側に位置する。
【0016】
バッテリ4は、図1や図5に示すように、例えばリチウムイオンタイプ等からなり、携帯電話1の裏面後部を着脱自在に構成して回路基板2の前後左右のいずれかに位置しており、圧接型コネクタに対向する対向面、具体的には、圧接型コネクタのハウジング10や複数の導電ピン20に対向する対向面に、導体部である複数のランド5等が並べて形成される。
【0017】
ハウジング10は、図2ないし図4に示すように、例えばABS樹脂、変性ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等を含む成形材料を使用して絶縁性を有する横長の平面矩形に成形され、底部後方には、複数の導電ピン20を収納する複数の収納溝孔11が左右横方向に一列に並設されており、携帯電話1の液晶側に位置する。このハウジング10の左右両側面には側面視略矩形の座ぐり溝孔12がそれぞれ形成され、各座ぐり溝孔12には、回路基板2の非実装用のランドにハンダを介して接着される補強金具14が図2の矢印方向から圧入して挿着される。
【0018】
各座ぐり溝孔12は、図2や図3に示すように、ハウジング10の表裏厚さ方向に伸びる横断面略凸字形に切り欠き形成され、相対向する両側面の端部には、ハウジング10の表面側に位置する段差受け部13がハウジング10の前後方向にそれぞれ幅広に一体形成される。
【0019】
各補強金具14は、図2や図3に示すように、アルミニウムや銅等を使用してハンダ付けされる短い屈曲板15から非屈曲板16が長く伸びる断面略L字形に屈曲形成され、座ぐり溝孔12に嵌合する非屈曲板16の端部両側には、座ぐり溝孔12上方の段差受け部13に係合接触する幅広の抜け止め突片17がそれぞれ突出形成されており、非屈曲板16の略中央部両側には、座ぐり溝孔12の側面内に圧接する抜け止め圧接片18がそれぞれ突出形成される。
【0020】
補強金具14の抜け止め圧接片18は、図3に示すように、座ぐり溝孔12に圧入された補強金具14を抜けにくくする観点から、逆テーパ形や台形等の抜けにくい形状に適宜形成される。このような補強金具14は、アンカーパッドとして回路基板2の非実装用のランドに屈曲板15がハンダにより強固に接着される。
【0021】
各導電ピン20は、図2や図4に示すように、ハウジング10に後方から圧入固定されて収納溝孔11から一部露出し、この一部露出した部分が回路基板2のランド3に導通する筒形の導電トーピン21と、この導電トーピン21に接触状態でスライド可能に挿入されてハウジング10の前面からプランジャとして貫通突出する導電ヘッドピン24と、これら導電トーピン21と導電ヘッドピン24との間に介在されて導電ヘッドピン24をバッテリ4のランド5に弾圧付勢する導電性のコイルバネとを備えて構成される。
【0022】
導電トーピン21や導電ヘッドピン24は、例えばニッケルメッキや金メッキ等が施されたアルミニウム、銅、真鍮等からなる導電性の材料を使用して形成される。導電トーピン21は、円筒形に形成され、収納溝孔11に隙間を介し遊嵌されており、閉じた底部の中心には、メッキ厚を向上させるメッキ処理用の小径孔22が貫通して穿孔される。
【0023】
導電トーピン21の外周面周方向には、ハウジング10の収納溝孔11内に密接する略リング形のガイド23が一体的に周設され、このガイド23の底部や両側部が直線的に切り欠かれて略平坦化されるとともに、この平坦なガイド23の底部とハウジング10側の導電トーピン21とが回路基板2のランド3にハンダを介して導通する。ガイド23は、導電トーピン21や導電ヘッドピン24同様、例えばニッケルメッキや金メッキ等が施されたアルミニウム、銅、真鍮等からなる導電性の材料を使用して形成される。
【0024】
導電ヘッドピン24は、図2や図4に示すように、細長い中実の断面略凸字形に形成され、コイルバネに接触する末端部が低抵抗化の観点から軸方向に対して3°〜30°程傾斜形成されており、バッテリ4のランド5に接触する先端部26が縮径の略ラウンド形に形成される。さらに、コイルバネは、例えばニッケルメッキ等が施された真鍮等からなる導電性の材料を使用して巻装形成され、バネ部材として導電トーピン21内に接触状態で嵌入される。
【0025】
上記構成において、携帯電話1の回路基板2とバッテリ4とを電気的に接続する場合には、回路基板2の非実装用のランド上に圧接型コネクタのハウジング10を補強金具14を介して実装するとともに、回路基板2の複数のランド3上に圧接型コネクタの導電トーピン21、及びガイド23の底部をハンダを介しそれぞれ実装し、横方向に位置するバッテリ4の複数のランド5に圧接型コネクタの導電ヘッドピン24をコイルバネによりそれぞれ圧接すれば、携帯電話1の回路基板2とバッテリ4とを電気的に接続することができる。
【0026】
上記構成によれば、回路基板2とバッテリ4とを上下方向において相対向させるのではなく、寝かせた水平横方向において相対向させるので、上下方向に回路基板2あるいはバッテリ4の嵩張る配置スペースを何ら必要としない。したがって、近年要求されている携帯電話1のさらなる薄型化や小型化に大いに資することができる。また、配置方向の変更に伴い、圧接型コネクタの導電ヘッドピン24のストロークをも適切な長さに変更することができる。
【0027】
また、ハウジング10の前部がスライドする導電ヘッドピン24を適正にガイドするので、導電ヘッドピン24の傾斜や倒れをきわめて有効に規制することができる。また、導電トーピン21の開口端部を内方向にかしめる必要がないので、導電ヘッドピン24の傾斜や倒れをきわめて有効に規制することが可能になる。また、ハウジング10の各収納溝孔11に導電トーピン21のガイド23が密接するので、導電ピン20の位置ずれや傾き防止が大いに期待できる。
【0028】
また、座ぐり溝孔12の段差受け部13に補強金具14の抜け止め突片17が係合して相互に干渉し合うので、例え携帯電話1が図1の矢印方向に落下してハウジング10に図3の矢印で示す外力が作用しても、ハウジング10と補強金具14とが外れて分離するのを有効に防止することが可能になる。さらに、座ぐり溝孔12に補強金具14が単に接触するのではなく、座ぐり溝孔12の側面に逆テーパ形や台形等の抜け止め圧接片18が強く圧接するので、補強金具14の挿入の容易化と抜けにく性とを著しく向上させることができ、これにより、ハウジング10と補強金具14との分離防止が大いに期待できる。
【0029】
なお、本発明に係る電子機器の圧接型コネクタ及びその接続構造は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば座ぐり溝孔12の一側面端部に段差受け部13を形成しても良い。また、補強金具14の非屈曲板16の端部一側に抜け止め突片17を形成したり、非屈曲板16の一側に抜け止め圧接片18を形成しても良い。
【0030】
また、補強金具14を、断面L字形ではなく、ストレートのI字形に形成してその端部を回路基板2に強固に圧入して取り付けても良い。また、上記実施形態では4本1組の導電ピン20を示したが、導電ピン20の数は2本1組、3本1組、5本1組等、適宜増減することができる。さらに、導電トーピン21は、角筒形等に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る電子機器の圧接型コネクタ及びその接続構造の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明に係る電子機器の圧接型コネクタの実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図3】本発明に係る電子機器の圧接型コネクタの実施形態における座ぐり溝孔や補強金具を模式的に示す要部斜視図である。
【図4】本発明に係る電子機器の圧接型コネクタの実施形態を模式的に示す底部斜視図である。
【図5】携帯電話を模式的に示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 携帯電話(電子機器)
2 回路基板(第一の電気接合物)
3 ランド(導体部)
4 バッテリ(第二の電気接合物)
5 ランド(導体部)
10 ハウジング
11 収納溝孔
12 座ぐり溝孔
13 段差受け部
14 補強金具
15 屈曲板
16 非屈曲板
17 抜け止め突片
18 抜け止め圧接片
20 導電ピン
21 導電トーピン
24 導電ヘッドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電気接合物とその略横方向に位置する第二の電気接合物とを電気的に接続する電子機器の圧接型コネクタであって、
第一の電気接合物に取り付けられる絶縁性のハウジングと、このハウジングに取り付けられて第一、第二の電気接合物の間を電気的に接続する複数の導電ピンとを含み、
ハウジングの両側部に座ぐり溝孔をそれぞれ形成するとともに、各座ぐり溝孔には、第一の電気接合物に設けられる補強金具を挿入し、各座ぐり溝孔の側面には、ハウジングの表面寄りに位置する段差受け部を形成し、補強金具の端部には、座ぐり溝孔の段差受け部に接触する抜け止め突片を形成したことを特徴とする電子機器の圧接型コネクタ。
【請求項2】
第一の電気接合物を携帯電話内の回路基板とし、第二の電気接合物を携帯電話のバッテリとした請求項1記載の電子機器の圧接型コネクタ。
【請求項3】
補強金具を断面略L字形に形成し、この補強金具の非屈曲板の端部に、座ぐり溝孔の段差受け部に接触する抜け止め突片を形成した請求項1又は2記載の電子機器の圧接型コネクタ。
【請求項4】
補強金具の非屈曲板に、座ぐり溝孔の側面に圧接する抜け止め圧接片を形成した請求項1、2、又は3記載の電子機器の圧接型コネクタ。
【請求項5】
ハウジングの底部後方に複数の導電ピン用の収納溝孔を並べて形成し、導電ピンを、ハウジングに挿入されて収納溝孔から一部露出し、この露出部分が第一の電気接合物の導体部に導通する略筒形の導電トーピンと、この導電トーピンに接触状態でスライド可能に挿入されてハウジングの前部から突出する導電ヘッドピンと、これら導電トーピンと導電ヘッドピンとの間に介在されて導電ヘッドピンを第二の電気接合物の導体部に押し付けるバネ部材とから構成した請求項1ないし4いずれかに記載の電子機器の圧接型コネクタ。
【請求項6】
導電トーピンの外周面に、ハウジングの収納溝孔に干渉するガイドを形成し、このガイドの底部を略平坦化して第一の電気接合物の導体部に接触させるようにした請求項5記載の電子機器の圧接型コネクタ。
【請求項7】
第一の電気接合物とその略横方向に位置する第二の電気接合物との間に、請求項1ないし6いずれかに記載の電子機器の圧接型コネクタを介在して電気的に接続するようにしたことを特徴とする電子機器の圧接型コネクタの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−70599(P2009−70599A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235099(P2007−235099)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】