説明

電子機器を移動局の電磁放射波から保護する無線ネットワーク

【課題】電磁放射波に対して敏感な機器、特に病院におけるそのような機器が存在する領域における無線ネットワークの付加的な応用分野を拡げる。
【解決方法】送信機(3)を有する第1機器(2)と、送信機(3)の電磁放射波から保護されるべき第2機器(4)とを備え、両機器の少なくとも一方(2,4)は移動型(モバイル型)であり、両機器の一方(2,4)は他方の機器(4,2)の反射装置(5)と協動するワイヤレス問合せシステム(6)を含み、両機器の一方(2,4)は問合せシステム(6)及び反射装置(5)によって検出される他方の機器までの距離に応じて、通常動作モード(N2,N4)と比較的短い距離に対して設定される特別動作モード(S2,S4)との間で切替可能である無線ネットワークにおいて、送信機(3)を有する第1機器(2)の動作モード(N2,S2)は可変にされる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワーク、特に病院で用いるための無線ネットワーク、並びにネットワークの動作方法に関する。
【0002】
ワイヤレス通信ネットワーク、特にWLAN(ワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク)なる呼称で知られている無線ネットワークは、しばしば建物内で用いられる。そのような無線ネットワークにおける使用上の制約はしばしば電磁波に対して敏感な機器、特に病院内の機器によって生じる。そのため、場合によっては電磁波によって影響されうる例えば人工呼吸器のような機器が存在する領域内では、通常、無線ネットワークの使用は断念せざるを得ない。
【0003】
本発明の課題は、電磁放射波に対して敏感な機器、特に病院におけるそのような機器が存在する領域における無線ネットワークの付加的な応用分野を拡げることである。
【0004】
この課題は本発明により、請求項1に記載の特徴を有する無線ネットワーク、及び請求項6に記載の特徴を有する無線ネットワークの動作方法によって解決される。その場合、第1機器は送信機を有するネットワークの機器であり、第2機器は送信機の電磁放射波から保護されるべき機器である。両機器の一方は、他方の機器の反射装置、特にトランスポンダと協動するワイヤレスの問合せシステムを備える。問合せシステムは反射装置と協動して、第1機器及び/又は第2機器に両機器間の距離について少なくとも粗情報を提供する非接触検出システムを形成する。好ましくは、送信機を有する無線ネットワークの機器は同時に問合せシステムをも装備し、他方、無線ネットワークの電磁放射波に関して敏感な第2機器は、好ましくはトランスポンダとして構成される反射装置を備える。このシステム構成において、電磁波による危険にさらされる第2機器、特に医療機器の電磁波負担が全体として監視され、調節されるようにすることができる。しかし、機器の形式及び大きさ等に応じて、無線ネットワークの電磁波から保護されるべき第2機器も非接触で動作する問合せシステムの送受信ユニットを備えることができ、他方、無線ネットワークの一部を形成する第1機器は対応する反射装置を備えることができる。
【0005】
非接触近接測定システムによって測定される両機器間の距離に応じて、2つの異なる動作モード、すなわち通常動作モードと短い距離に対して設定される特別動作モードとの間で両機器の少なくとも一方の切替が行われる。その場合、距離なる用語は、距離に応じて測定システムによって測定されうる距離−信号と理解されるべきものとする。ここで両機器間の幾何学的距離に加えて、場合によっては送信機から発射される電磁波の、電磁波を吸収し又は反射する素子による影響も考慮される。言い換えれば、異なる動作モード間の切替に対して決定的なことは、送信機から放射される電磁波の第2機器地点での減衰度である。
【0006】
第1実施形態では、異なる送信モードにおいて、第1機器の送信機の送信出力は異なる値に調節される。ここで送信出力は段階的に、又は無段階に低減させることができる。第2機器の領域内の許容し得ない強い電磁界強度においては、送信機を自動的に遮断することも可能である。それに対して、非接触で動作する問合せシステムの送信ユニットにより第2機器を危険にさらすことは通常、是認され得ない。そのため問合せシステムは、好ましくは第1機器に内蔵される形態においても、第1機器が反射装置のみを含む形態においても、典型的には一定の動作パラメータ、特に一定送信出力で動作させられる。問合せシステムの動作時に生じる電磁波による第2機器の危険性が除去されなければ、上記とは異なり、両機器間の測定距離に応じて問合せシステムの動作パラメータを変化させることも可能である。
【0007】
送信出力の変化に対して付加的に、又はそれに代えて、好ましい構成によれば、動作モードに応じて両機器の一方による警報出力が行われる。生成された警報とは関係なく、又はそれに加えて、保護されるべき第2機器の自動遮断の可能性も考えられる。好ましくは、電磁波による危険にさらされる機器はその動作を危険に対して自動的に適合させる。特に好ましい構成においては、非接触近接測定システムによって両機器間の接近を検出した場合、危険にさらす第1機器も危険にさらされる第2機器も共に動作モードの切替が行われる。その場合、動作モード切替の特別な場合として、それぞれ動作の停止も含まれる。
【0008】
次に図面を参照して本発明の一実施例を詳細に説明する。
【0009】
例えば病院内に設置された無線ネットワーク1は、図示していない幾つかの固定局に加えて、送信機3を含む典型的には移動型(モバイル型)の第1機器2を備えている。第1機器2、例えば携帯電話又はWEBタブレットの送信機3から放射される電磁波によって、第2機器4、例えば無線ネットワーク1の一部ではない人工呼吸器が危険にさらされる虞がある。
【0010】
第2機器4は第2機器4に例えばラベルとして貼着されたトランスポンダ(TAG)の形の、少なくとも1つ、好ましくは複数の反射装置5を備えている。それに代えて、反射装置5は第2機器4に例えばパイプの形で取付けることもできる。反射装置5は、例えばドイツ国特許第19703823号明細書によって公知のごとく、送受信ユニットを含む問合せシステム6と協動する。問合せシステム6の詳細には図示されていない送信機は無線ネットワーク1の必須部分というわけではない。問合せシステム6の送信機から放射される電磁波が図には複数の同心円によってシンボル化されており、問合せシステム6が反射装置5の存在を検出することができる認識領域7を特徴づけている。認識領域7は典型的には1mオーダーの距離で拡がっている。このことから、第2機器4を取り囲む破線で示された安全ゾーン8が生じる。第1機器2が安全ゾーン8内へと動かされると、第1機器2が第1動作モードすなわち通常動作モードN2から第2動作モードすなわち特別動作モードS2に自動的に切り換わる。
【0011】
特別動作モードS2の動作パラメータは調節可能である。その場合、第2機器4を危険にさらすことを回避するために、好ましくは、安全ゾーン8内の第1機器2の送信機3が送信出力を減少し、又は動作を部分的に、又は完全に停止させることが行われる。さらに、第1機器2が安全ゾーン8内に位置する際に、例えば第1機器2が第2機器4の近くにおいて動作することを警告し、又は安全ゾーン8から第1機器2が遠ざかることを促す警報を出力することもできる。
【0012】
図示の実施例に代えて、危険にさらされる第2機器4も問合せシステム6を備え、他方、送信機3を含む第1機器2が少なくとも1つの反射装置(TAG)5を備えることができる。その場合、特に簡単には、問合せシステム6を備えた第2機器4は第1機器2の接近の際に警報を出力することができる。さらに、第2機器4の動作を通常動作モードN4から特別動作モードS4に切り替えるほぼ非常走行プログラムへの切替によって、第1機器2から放射される電磁波により危険にさらされる事態を停止させることも容易に可能である。第1機器2に反射装置5を配置することにより、第1機器2がワイヤレス問合せシステムを永久装備する必要がなく、必要に応じて、例えば病院のような危険にさらされる領域内に留まる時にのみ、第1機器2に反射装置5を例えば貼着するかクリップ止めするかして取り付けることができるという、さらなる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による無線ネットワークの模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1 無線ネットワーク
2 第1機器
3 送信機
4 第2機器
5 反射装置(トランスポンダ)
6 問合せシステム
7 認識領域
8 安全ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機(3)を有する第1機器(2)と、前記送信機(3)の電磁放射波から保護されるべき第2機器(4)とを備え、前記両機器の少なくとも一方(2,4)は移動型であり、前記両機器の一方(2,4)は他方の機器(4,2)の反射装置(5)と協動するワイヤレスの問合せシステム(6)を含み、前記両機器の一方(2,4)は前記問合せシステム(6)及び反射装置(5)によって検出された他方の機器までの距離に応じて、通常動作モード(N2,N4)と比較的短い距離に対して設定される特別動作モード(S2,S4)との間で切替可能である無線ネットワークにおいて、
前記送信機(3)を有する第1機器(2)の動作モード(N2,S2)が可変であることを特徴とする無線ネットワーク。
【請求項2】
前記送信機(3)が動作モード(N2,S2)に応じた送信出力を持っていることを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワーク。
【請求項3】
前記両機器の一方(2,4)の特別動作モード(S2,S4)が警報出力を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の無線ネットワーク。
【請求項4】
前記警報出力が前記第1機器(2)によって行われ、前記第2機器(4)へのさらなる接近の警告、及び/又は前記第2機器(4)までの必要とするより長い距離の指摘を含んでいることを特徴とする請求項3に記載の無線ネットワーク。
【請求項5】
前記警報出力が前記第2機器(4)によって行われ、前記第1機器(2)による前記第2機器(4)の危険について警告を含んでいることを特徴とする請求項3または4に記載の無線ネットワーク。
【請求項6】
2つの機器(2,4)、すなわち送信機(3)を有する無線ネットワークの第1機器(2)と、前記送信機(3)の電磁放射波から保護されるべき第2機器(4)との間の距離に応じた無線ネットワークの動作方法であって、前記両機器(2,4)間の距離に応じて非接触近接測定システム(5,6)によって制御されて、通常動作モード(N2,N4)と前記両機器(2,4)間の比較的短い距離に対して設定される特別動作モード(S2,S4)との間で切替が行われる無線ネットワークの動作方法において、
前記送信機(3)の特別動作モード(S2,S4)が低減された送信出力で駆動されることを特徴とする無線ネットワークの動作方法。
【請求項7】
前記送信機(3)の駆動が特別動作モード(S2,S4)への切替えによって停止されることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−502066(P2007−502066A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522927(P2006−522927)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008163
【国際公開番号】WO2005/018263
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】