説明

電子機器及び撮像装置

【課題】簡易な構造で水密性の検査が可能な電子機器及び撮像装置を提供する。
【解決手段】開口部10aおよび通気孔71を有する筐体10と、通気孔71を塞ぐように設けられた防水通気膜72と、開口部10aを覆った閉状態とすることで、筐体10と共に水密構造を構成することが可能な扉12と、水密構造内に設けられた気圧センサ92aと、気圧センサ92aが計測した水密構造内の気圧値の変化に基づいて、筐体10および扉12が水密状態を維持しているかどうか推定する水密検査部115と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気圧センサを備える電子機器及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水密構造を有する筐体の水密性(水密状態を維持しているかどうか)を検査するための手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−135429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、検査が必要な機器に対して検査のための別の装置を接続して検査を行う必要があった。このため、一般の使用者が電子機器を使用中に水密性を検査する際の方法として、この従来の方法を適用することは困難であった。
【0005】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で水密性の検査が可能な電子機器及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子機器は、開口部および通気孔を有する筐体と、通気孔を塞ぐように設けられた防水通気膜と、開口部を覆った閉状態と開口部を覆わない開状態とに遷移可能に取り付けられており、閉状態において筐体と共に水密構造を構成することが可能な扉と、水密構造内に設けられた気圧計と、気圧計が計測した水密構造内の気圧値の変化に基づいて、筐体および扉が水密状態を維持しているかどうか推定する水密検査部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構造で水密性の検査が可能な電子機器及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るデジタルカメラ1の正面斜視図
【図2】実施形態に係るデジタルカメラ1の後面斜視図
【図3】実施形態に係る筐体10の正面図
【図4】実施形態に係る筐体10の後面斜視図
【図5】実施形態に係る筐体10の分解斜視図
【図6】図3のA−A断面図
【図7】実施形態に係るデジタルカメラ1の機能ブロック図
【図8】実施形態に係るコントローラ110の機能ブロック図
【図9】統合LSI100の動作を説明するためのフロー図
【図10】水密検査部115の動作を説明するためのフロー図
【図11】扉12の開閉状態と筐体10内部の気圧の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
なお、以下の実施形態では、「撮像装置」の一例としてデジタルカメラを例に挙げて説明する。以下の説明では、横撮り姿勢のデジタルカメラを基準として、被写体側を「前」、被写体の反対側を「後」、鉛直上方を「上」、鉛直下方を「下」、被写体に正対した状態における右側を「右」、被写体に正対した状態における左側を「左」、と表現する。なお、横撮り姿勢とは、撮像画像の長辺方向が撮像画像中の水平方向と略一致する場合の姿勢である。
【0011】
(デジタルカメラ1の概略構成)
実施形態に係るデジタルカメラ1の概略構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係るデジタルカメラ1の正面斜視図である。図1(a)は、扉12が閉じた状態である。図1(b)は、扉12が開いた状態である。図2は、実施形態に係るデジタルカメラ1の後面斜視図である。
【0012】
デジタルカメラ1は、筐体10と、扉12と、前カバー20と、後カバー30と、操作ユニット40と、光学系50と、液晶モニタ60と、フラッシュ65と、カードスロット93と、開閉検出スイッチ150と、を備える。
【0013】
筐体10は、扉12と共に水密構造を構成する収容箱である。筐体10は、水中に入れられると水圧に応じて変形する。すなわち、筐体10の変形量は、水深が大きくなるほど増加する。このような筐体10は、可撓性及び弾性を有する材料によって構成されることが好ましい。筐体10は、開口部10aと、枠部10bとを有する。開口部10aは、筐体10の側面において縦長に形成されている。枠部10bは、筐体10の側面において、開口部10aを取り囲むように形成される。開口部10aは、枠部10bに扉12が密着されることで塞がれる。
【0014】
扉12は、メモリカード93bや電池97の入替時などに、扉12に設けられた開閉スイッチ12aを「開」方向にスライドすることによって開くことができる。扉12は、ヒンジ12dを介して筐体10と接続されている。扉12は、ヒンジ12dを回転中心として回転することにより、開口部10aを覆わない「開」状態と開口部10aを覆った「閉」状態との間で遷移可能である。パッキン12bは、扉12の内面を囲むように配置され、筐体10の枠部10bと密着することで、「閉」状態において筐体10を水密構造にする。このように、扉12は、筐体10の開口部10aを開閉可能に設けられており、開口部10aを覆った「閉」状態において筐体10と共に水密構造を構成する。
【0015】
カードスロット93は、メモリカード93bを着脱可能に挿入するためのスロットである。電池97は、デジタルカメラ1が動作するための電力を供給する。メモリカード93bおよび電池97は、枠部10bの内側にあり、扉12を開けることにより着脱可能である。
【0016】
突起12eは、扉12の内面のうちパッキン12bで囲まれた領域に配置される。開閉検出スイッチ150は、筐体10側の枠部10bで囲まれた開口部10aの内部に備えられる。突起12eは、扉12を閉めたときに開閉検出スイッチ150を押すような位置に設けられる。本実施形態において、突起12eおよび開閉検出スイッチ150は、扉開閉検出の手段を構成する。扉12を閉めたときに開閉検出スイッチ150が突起12eによって押され、すなわち開閉検出スイッチ150がON状態になり、扉12が閉められたことをコントローラ110(後述)が検知する。扉12が開いているときは、開閉検出スイッチ150がOFF状態になり、扉12が開いていることをコントローラ110(後述)が検知する。
【0017】
前カバー20は、筐体10の前面に取り付けられる。後カバー30は、筐体10の後面に取り付けられる。操作ユニット40は、筐体10の後面に取り付けられており、後カバー30から露出する。
【0018】
操作ユニット40は、ユーザの各種操作を受け付ける。本実施形態において、操作ユニット40は、撮影モードの一つとして水深測定モードの選択操作を受け付ける。光学系50は、筐体10の前面に取り付けられており、前カバー20から露出する。光学系50は、撮影時に外部光を筐体10の内部に取り入れる。液晶モニタ60は、筐体10の後面に取り付けられており、後カバー30から露出する。液晶モニタ60には、撮像画像が表示される。フラッシュ65は、筐体10の前面に取り付けられており、前カバー20から露出する。
【0019】
(筐体10の内部構成)
図3は、実施形態に係る筐体10の正面図である。図4は、実施形態に係る筐体10の後面斜視図である。図5は、実施形態に係る筐体10の分解斜視図である。図6は、図3のA−A断面図である。なお、図3および図4では、筐体10に扉12が取り付けられている。
【0020】
筐体10は、前板70と後板80とによって構成されており、筐体10の内部には、制御基板90が配置されている。前板70と後板80は、筐体10の水密性を確保するために密着されている。図示しないが、前板70および後板80それぞれの右側面には、開口部10aを構成する凹部が形成されている。制御基板90は、前板70と後板80との間に密封されている。
【0021】
前板70は、通気孔71と、防水通気膜72と、を有する。通気孔71は、筐体10の内外に連通している。防水通気膜72は、通気孔71を塞いでいる。防水通気膜72は、通気性を有する材料によって構成される。そのため、デジタルカメラ1が空気中に位置する場合、筐体10内の気圧は大気圧と一致する。また、防水通気膜72は、防水性を有する材料によって構成される。そのため、デジタルカメラ1が水中に位置する場合、通気孔71からの水の侵入が抑止される。防水通気膜72の材料としては、例えば、ジャパンゴアテックス社の「GORE−TEX(登録商標)」などを用いることができる。
【0022】
ここで、筐体10内部の気圧変化について、図面を参照しながら説明する。図11は、扉12の開閉状態と筐体10内部の気圧の関係を表したものである。図11(a)は、扉12を開けた状態から閉めたときの筐体10内部の気圧の変化を示す図であり、横軸に時刻、縦軸に筐体10内部の気圧を取っている。また、実線は、筐体10が水密状態を保っているときの筐体10内部の気圧変化の一例を示す。一点鎖線は、筐体10が水密状態を保っていないときの筐体10内部の気圧変化の一例を示す。図11(b)は、開閉検出スイッチ150の状態を示す図である。筐体10内部の気圧が急激に上昇するタイミングと同期して、時刻Aで開閉検出スイッチ150がOFFからONに変化している。
【0023】
本実施形態では水密状態が保たれていて、扉12が閉められた直後(開閉検出スイッチがONになった)は、筐体10内部の気圧がわずかに上昇する(時刻A)。その後、防水通気膜72で空気の出入りが生じる。ただし、防水通気膜72を介した空気の流量は、扉12を閉めた状態において水密状態が保たれていない場合、すなわちパッキン12bと枠部10bとが密着していない場合と比較して少ない。このため、扉12が閉まってから筐体10内部の気圧と大気圧が等しくなるまでにかかる時間は、水密状態が保たれていない場合よりも長くなる(時刻C、本実施の形態では時刻Aからの経過時間は約1分)。しかし、扉12のパッキン12bに異物が付着している等の場合、パッキン12bと枠部10bとが密着せずに隙間が生じる。この隙間から空気が流出するため、筐体内部の水密性が失われると共に、扉12を閉めたときの気圧上昇量は水密状態を保っている場合と比較して小さく、また、筐体10内部の気圧と大気圧が等しくなるまでにかかる時間は短くなる(時刻B、本実施の形態では時刻Aからの経過時間は約2秒)。筐体10内部の気圧と大気圧が等しくなる時間は、通気孔71の大きさと、防水通気膜72の透気度の影響を大きく受ける。
【0024】
なお、前板70と光学系50及びフラッシュ65との間には、図示しない防水テープが取り付けられる。また、後板80と操作ユニット40及び液晶モニタ60との間には、図示しないパッキンが取り付けられる。
【0025】
制御基板90は、基板本体91と、基板本体91の前面に載置されるセンサユニット92、カードスロット93及びAFE(Analog Front End)94と、基板本体91の後面に載置される統合LSI100と、を有する。
【0026】
基板本体91は、各種電子部品を接続するための板状部材である。
【0027】
センサユニット92は、図6に示すように、気圧センサ92aと、温度センサ92bと、を有する。気圧センサ92aは、筐体10内の気圧を検出する。デジタルカメラ1が空気中に位置する場合、気圧センサ92aによる検出気圧値Pは、大気圧と一致する。また、デジタルカメラ1が水中に位置する場合、気圧センサ92aによる検出気圧値Pは、デジタルカメラ1の水深が深くなるほど、すなわち、筐体10内の体積が小さくなるほど上昇する。温度センサ92bは、筐体10内の気温を検出する。
【0028】
カードスロット93は、メモリカードを着脱可能に挿入するためのスロットである。AFE94は、後述するCCDイメージセンサ95(図7参照、「撮像手段」の一例)により生成された画像データに対して、雑音抑圧処理、A/Dコンバータの入力レンジ幅への増幅処理及びA/D変換処理などを施す。
【0029】
統合LSI100は、デジタルカメラ1が備える各種電子部品の動作を統括制御する。統合LSI100の構成については後述する。
【0030】
(デジタルカメラ1の機能構成)
図7は、実施形態に係るデジタルカメラ1の機能構成を示す機能ブロック図である。なお、以下の説明では、上述した構成以外の構成について主に説明する。
【0031】
光学系50は、フォーカスレンズ51、ズームレンズ52、絞り53およびシャッタ54を有する。フォーカスレンズ51は、被写体のフォーカス状態を調節する。ズームレンズ52は、被写体の画角を調節する。絞り53は、CCDイメージセンサ95に入射する光量を調節する。シャッタ54は、CCDイメージセンサ95に入射する光の露出時間を調節する。フォーカスレンズ51、ズームレンズ52、絞り53およびシャッタ54それぞれは、DCモータ又はステッピングモータ等の駆動ユニットにより、コントローラ110から送信される制御信号に従って駆動される。
【0032】
CCDイメージセンサ95は、本実施形態に係る「撮像手段」の一例である。CCDイメージセンサ95は、光電変換によって画像データを生成する。
【0033】
統合LSI100は、コントローラ110と、画像処理部120と、バッファメモリ130と、フラッシュメモリ140と、を有する。
【0034】
コントローラ110は、デジタルカメラ1全体の動作を統括制御する。コントローラ110は、ROMおよびCPU等により構成される。ROMには、ファイル制御、オートフォーカス制御(AF制御)、自動露出制御(AE制御)、フラッシュ65の発光制御に関するプログラムの他、デジタルカメラ1全体の動作を統括制御するためのプログラムが格納されている。
【0035】
本実施形態において、コントローラ110は、モード検出部111、気圧値補正部112、差分算出部113、及び水深算出部114、水密検査部115を有する。コントローラ110は、操作ユニット40において水深測定モードの選択操作がユーザから受け付けられた場合、気圧センサ92aによって検出される検出気圧値Pに基づいて、筐体10の水深値Dを算出する。この際、コントローラ110は、フラッシュメモリ140から基準気圧値P及び基準気温値tを読み出す。また、コントローラ110は、開閉検出スイッチ150がON、すなわち扉12が開状態から閉状態に遷移したことを検知すると、水密検査部115にて、筐体10が水密状態であるかどうかを判断する。コントローラ110の機能構成及び動作については後述する。
【0036】
なお、コントローラ110は、プログラムを実行するマイクロコンピュータやハードワイヤードな電子回路によって構成することができる。
【0037】
画像処理部120は、AFE94により各種処理が施された画像データに対して、ホワイトバランス補正、色再現補正、ガンマ補正、スミア補正、YC変換処理、電子ズーム処理等の処理を施す。本実施形態において、画像処理部120は、デジタルカメラ1の水深値Dが所定の閾値(例えば、3m程度)を超えた場合に、画像データにホワイトバランス補正、色再現補正、及びガンマ補正を施す。この際、画像処理部120は、撮像画像の青みが強くなる(すなわち、撮像画像の赤みが減衰する)ことを抑えるようにホワイトバランス補正、色再現補正、及びガンマ補正を施す。
【0038】
なお、画像処理部120は、プログラムを実行するマイクロコンピュータやハードワイヤードな電子回路によって構成することができる。
【0039】
バッファメモリ130は、コントローラ110及び画像処理部120のワークメモリとして機能する揮発性の記憶媒体である。本実施形態において、バッファメモリ130は、DRAMである。
【0040】
フラッシュメモリ140は、デジタルカメラ1の内部メモリである。フラッシュメモリ140は、不揮発性の記録媒体である。本実施形態において、フラッシュメモリ140には、基準気圧値P及び基準気温値tが格納されている。
【0041】
(検出気圧値Pから水深値Dを計測する仕組み)
デジタルカメラ1は通気孔71を防水通気膜72で塞いでいる。大気中では、気圧変化が生じても、防水通気膜72の通気性により、筐体10の内圧も追従する。これにより、筐体10の内圧は大気圧と等しくなる。
【0042】
デジタルカメラ1の高度を徐々に下げて、水面下に入った直後は、デジタルカメラ1の筐体10内の気圧は、水面の高度における気圧とほぼ等しくなる。その後、水中に沈んでいく過程において、筐体10が水圧により変形しないと仮定すれば、筐体10内の気圧は変化しない。しかしながら実際には、デジタルカメラ1の筐体10は、水深が深くなるにつれて高くなる水圧により、徐々に変形していく。この変形に伴って、筐体10内の気圧は徐々に高くなっていく。この筐体10内の気圧変化を測定することで、外部の水圧(水深値D)を推定することができる。これが、本実施形態のデジタルカメラ1における、水深値Dを計測(推定)する仕組みである。
【0043】
すなわち、水圧による筐体10の変形に起因する筐体10内の気圧変化量を、気圧センサ92aで計測し、この気圧変化量に基づいて水圧(水深)を推定することができる。なお、筐体10内部の気圧変化量と水圧(水深値D)の関係は、所定の非線形関数(以下、「水深算出関数」という。)で近似することができる。
【0044】
(コントローラ110の機能構成)
図8は、実施形態に係るコントローラ110の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0045】
コントローラ110は、モード検出部111と、気圧値補正部112と、差分算出部113と、水深算出部114と、水密検査部115と、を有する。
【0046】
モード検出部111は、水深計測モードか否かを判断する。水深計測モードの設定および解除は、操作ユニット40によって行われる。モード検出部111が水深計測モードであると判断した場合、気圧値補正部112にその旨を通知する。
【0047】
気圧値補正部112は、フラッシュメモリ140に記憶した基準温度値tと、気圧センサ92aが検出した検出気圧値Pと、温度センサ92bが検出した検出温度値tとに基づいて、検出気圧値Pの温度補正を行う。具体的に、補正後の気圧値P’は、次の式(1)によって算出される。
【0048】
P’=P×(273.2+t)/(273.2+t) ・・・(1)
差分算出部113は、フラッシュメモリ140に記憶した基準気圧値Pと、気圧値補正部112によって算出された補正後の気圧値P’との差分ΔPを算出する。この差分ΔPは、基準気圧値Pを0に換算した相対的な気圧の変化量である。
【0049】
水深算出部114は、水深算出関数と差分検出部102によって求められた差分ΔPとに基づいて、水深値Dを算出する。水深算出部114は、算出した水深値Dを液晶モニタ60に表示する。また、水深算出部114は、算出した水深値Dが所定の水深(例えば、3m程度)を超えた場合は、画像処理部120にその旨を通知する。画像処理部120は、水深算出部114からの通知に応じて、画像データのホワイトバランス補正、色再現補正、及びガンマ補正を実施する。
【0050】
水密検査部115は、開閉検出スイッチ150がON、すなわち扉12が閉められた状態を検知すると、気圧センサ92aが検出した検出気圧値Pの変化量に基づいて、筐体10が水密状態であるかどうかを判断する。水密状態でないと判断した場合には、警告を液晶モニタ60に表示する。
【0051】
(統合LSI100の動作)
実施形態に係る統合LSI100の動作について、図面を参照しながら説明する。図9は、統合LSI100の動作を説明するためのフロー図である。以下においては、モード検出部111において水深測定モードが検出されたものとして説明する。
【0052】
ステップS10において、コントローラ110は、フラッシュメモリ140に記録された基準気圧値P、基準温度値tを読み出す。
【0053】
ステップS20において、コントローラ110は、水深計測モードが継続されているか否かを判断する。水深計測モードが継続されている場合、処理はステップS30に進む。モード検出部111において水深計測モードの解除が検出された場合は水深計測処理を終了する。
【0054】
ステップS30において、コントローラ110は、気圧センサ92aが出力した検出気圧値P、温度センサ92bが出力した検出温度値tを検出する。
【0055】
ステップS40において、コントローラ110は、ステップS10で読み出した基準温度値tと、ステップS30で検出された検出温度値t及び検出気圧値Pより温度補正後の検出気圧値P’を求める。
【0056】
ステップS50において、コントローラ110は、ステップS10で読み出した基準気圧値PとステップS40で算出した温度補正後の検出気圧値P’との差分ΔPを算出する。
【0057】
ステップS60において、コントローラ110は、ステップS50で求めた差分ΔPと水深算出関数とを用いて、水深値Dを求める。
【0058】
ステップS70において、コントローラ110は、ステップS60で求めた水深値Dを液晶モニタ60に表示する。
【0059】
ステップS80において、コントローラ110は、ステップS60で求めた水深値Dが所定の閾値(例えば、3m程度)を超えているか否かを判断する。所定の閾値を超えている場合、処理はステップS90へ移行する。所定の閾値を超えていない場合、処理はステップS20へ移行する。
【0060】
ステップS90において、画像処理部120は、画像データにホワイトバランス補正、色再現補正、及びガンマ補正を行う。
【0061】
(水密検査部115の動作)
本実施形態に係る水密検査部115の動作について、図面を参照しながら説明する。図10は、水密検査部115の動作を説明するためのフロー図である。以下においては、デジタルカメラ1に電源が投入された状態でかつ、扉12が開いた状態、すなわち開閉検出スイッチ150でOFFが検出されている状態からの動作について説明する。
【0062】
ステップS101において、水密検査部115は、開閉検出スイッチ150がONかOFFかを判断する。OFFの場合は、開閉検出スイッチの状態を監視し続ける。ONの場合は、ステップS102へ移行する。
【0063】
ステップS102において、水密検査部115は、カウンタをスタートさせる。
【0064】
ステップS103において、水密検査部は気圧センサ92aの気圧値のサンプリングを開始する。具体的には、ステップS103の処理毎に、気圧センサ92aの気圧値を取得してフラッシュメモリ140に記憶していく。フラッシュメモリ140には、過去に取得した所定回数分(例えば過去10回分)の気圧値が記憶される。
【0065】
ステップS104において、ステップS103で記憶した気圧値に基づいて、気圧値の変化量が所定値以下になったかを評価する。本実施形態では、具体的には、ある回数分取得した気圧値を比較し、変化量がほぼないとみなせる程度の所定の範囲内に収まっていれば、筐体内部の気圧と外部の気圧が等しくなったとみなし、ステップS105へ移行する。例えば、取得した過去10回分の気圧値について、連続して取得した2回の気圧値の差を順に求め、それらの合計値が所定の閾値以下であれば、筐体内部の気圧と外部の気圧が等しくなったとみなすことができる。気圧値が所定の範囲内でない場合は、カウンタを1増加させてステップS103へ戻る。
【0066】
ステップS105において、カウンタの値を確認する。カウンタの値が所定値以上であれば、水密状態を維持していると判断し、ステップS106に移行する。カウンタの値が所定値未満であれば、扉に異物等が付着して水密状態が失われていると判断し、ステップS107に移行する。
【0067】
ステップS106において、水密検査部115は、液晶モニタ60に正常であることを表示し、ユーザに水密状態であることを知らせる。なお、水密検査部115は、ユーザの意思とは無関係に、開閉検出スイッチがOFFからONになることによって自動的に水密検査の動作をスタートさせる。このため、正常である場合はステップS106の処理を省略してもよい。
【0068】
ステップS107において、水密検査部115は、液晶モニタ60に警告を表示し、ユーザに水密状態でないことを知らせる。
【0069】
(作用及び効果)
(1)実施形態に係るデジタルカメラ1は、開口部10aおよび通気孔71を有する筐体10と、通気孔71を塞ぐように設けられた防水通気膜72と、開口部10aを覆った閉状態とすることで、筐体10と共に水密構造を構成することが可能な扉12と、水密構造内に設けられた気圧センサ92aと、気圧センサ92aが計測した水密構造内の気圧値の変化に基づいて、筐体10および扉12が水密状態を維持しているかどうか推定する水密検査部115と、を備える。
【0070】
このように、水密構造内の気圧値の変化に基づいて筐体10および扉12が水密状態を維持しているかどうか推定するため、デジタルカメラ1のみで水密状態を維持しているかどうか推定できる。また、簡易な構造で水密性の検査が可能な電子機器及び撮像装置を提供することができる。
【0071】
(2)実施形態に係るデジタルカメラ1は、扉12が閉状態であること、および扉12が閉状態ではない開状態であることを検出する開閉検出スイッチ150を備え、水密検査部115は、扉12が開状態から閉状態に変化したことを開閉検出スイッチ150が検出した後に、所定期間内に気圧センサ92aが計測する気圧値の変化量が所定値未満になったときに、水密状態を維持していないと推定する。
【0072】
このように、扉12が閉じられてから筐体10内の気圧が短時間に変化(減少)するかどうかにより、デジタルカメラ1が水密構造を維持しているかどうかを推定することができる。
【0073】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0074】
(A)上記実施形態において、コントローラ110は、ユーザによって水深測定モードが選択された場合に、水深値Dの算出処理を開始することとしたが、これに限られるものではない。デジタルカメラ1が、筐体10の入水を検出する入水検出部を備えている場合には、筐体10の入水が検出されたときに水深値Dの算出を開始することとしてもよい。この場合、入水を自動検知できるので、ユーザの操作に応じて水深値Dの算出処理を開始する場合に比べて、より精度良く水深値Dを測定することができる。なお、コントローラ110は、例えば、筐体10の外表面上に設けられた一対の電極間における電圧変化に応じて、筐体10の入水を検出する入水検出部を有していればよい。
【0075】
(B)上記実施形態において、コントローラ110は、基準気圧値P及び基準気温値tとしてフラッシュメモリ140に格納された所定値を使用することとしたが、これに限られるものではない。
【0076】
例えば、コントローラ110は、基準気圧値Pとして、水深計測モードの選択が検出されたときの検出気圧値Pを使用してもよい。この場合には、水深値Dの算出処理を開始する時点における大気圧の大小を考慮して水深値Dを算出することができる。そのため、より精度良く水深値Dを算出することができる。
【0077】
また、コントローラ110は、基準気圧値Pとして、上述の入水検出部によって筐体10の入水が検出されたときの検出気圧値Pを使用してもよい。この場合には、入水時点の検出気圧値Pを基準にできるので、より精度良く水深値Dを算出することができる。
【0078】
さらに、コントローラ110は、基準気圧値Pとして、ユーザによって指定された時点における検出気圧値Pを使用してもよい。この場合には、上述の入水検出部がない場合であっても、入水時点を精度良く把握できるので、より精度良く水深値Dを算出することができる。
【0079】
(C)上記実施形態において、画像処理部120は、水深値Dが所定の閾値を超えた場合に、ホワイトバランス補正、色再現補正、及びガンマ補正を行うこととしたが、これに限られるものではない。例えば、画像処理部120は、水深値Dが大きくなるにしたがって徐々にホワイトバランス補正、色再現補正、及びガンマ補正それぞれの強度を大きくしてもよい。この場合には、水深値Dに応じて補正強度を変更できるので、撮像画像の品質をより向上させることができる。
【0080】
また、画像処理部120は、撮像画像の青みが強くなることを抑えるために、ホワイトバランス補正、色再現補正、及びガンマ補正のうち少なくとも一つの補正を行うこととしてもよい。
【0081】
(D)上記実施形態において、水深算出部114は、水深値Dを算出することとしたが、これに限られるものではない。水深算出部114は、水深値Dに代えて“水圧値”を算出してもよい。このような“水圧値”は、上記実施形態にて説明した水深算出関数と類似する関数によって算出することができる。
【0082】
(E)上記実施形態では、「電子機器」の一例としてデジタルカメラ1(「撮像装置」の一例)を挙げて説明したが、これに限られるものではない。「電子機器」としては、ビデオカメラ、携帯電話、ICレコーダーなどが挙げられる。
【0083】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0084】
(F)上記実施形態において、扉12の開閉を、開閉検出スイッチ150で検出することとしたが、これに限られるものではない。気圧センサ92aが計測する気圧値が、定常状態(=大気圧)の気圧値から一旦上昇して最大値を取った後、下降をして再び定常状態の気圧値に戻ったときに、最大値を取ってから定常状態の気圧値に戻るまでの時間が所定時間以下であれば水密構造を維持していないと推定するようにしてもよい。具体的には、ユーザが操作ユニット40を介して、水密検査モードを選択したら、水密検査部115は、気圧センサ92aのサンプリングを開始する。液晶モニタ60に、(もし扉12が閉まっていたら、一旦扉12を開けてから)扉12を閉めるように表示した後、待機する。水密検査部115が、気圧値の変化を観測することにより最大値を検出したら、その時刻を扉が閉まった瞬間と判断し、カウンタをスタートさせる。最大値の検出は、例えばサンプリング開始後に、気圧値が一定の値を保った定常状態(=大気圧)から上昇を始め、次に下降を開始したら、この範囲内の最大の気圧値を最大値とすることができる。この後の処理は図10のステップS103以降と同様である。
【0085】
(G)上記実施形態において、水密検査部115は、ステップS103、S104のように、ある回数分取得した気圧値を比較し、変化量がほぼないとみなせる程度の所定の範囲内に収まっていれば、筐体内部の気圧と外部の気圧が等しくなったとみなすこととしたが、これに限られるものではない。例えば、扉12が開いている状態(開閉検出スイッチ150がOFFの状態)において取得した気圧センサ92aからの気圧値(=大気圧)を記憶しておき、扉12が閉じられてから(開閉検出スイッチ150がOFFからONに変化してから)、気圧センサ92aからの気圧値が大気圧と等しくなれば(または差が所定値以下になれば)ステップS105にすすむようにしてもよい。
【0086】
(H)上記実施形態において、水密検査部115は、カウンタの値により時間を計測することとしたが、これに限られるものではない。デジタルカメラ1が時計を備え、水密検査部115がステップS102において開始時刻を取得して記憶しておき、ステップS105において現在時刻と開始時刻との差を経過時間として取得し、経過時間が所定値以上であれば、水密状態を維持していると判断するようにしてもよい。
【0087】
(I)上記実施の形態において、水密検査部115は、水密性の判断結果をユーザに通知する方法として、判断結果を液晶モニタ60に表示することとしたが、これに限られるものではない。例えば、水密検査部115はステップS106において、水密状態を維持しているかどうかをスピーカ等から音声を再生することにより通知するようにしてもよい。この場合、正常な場合は音声を再生せず、異常(水密状態を維持していない)な場合のみ、特定の音声を再生するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、簡易な構造で水密性の検査が可能な電子機器及び撮像装置を提供できるので、電子機器及び撮像装置の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 デジタルカメラ
10 筐体
12 扉
12a 開閉スイッチ
12b パッキン
12c 枠部
12d ヒンジ
12e 突起
20 前カバー
30 後カバー
40 操作ユニット
50 光学系
51 フォーカスレンズ
52 ズームレンズ
53 絞り
54 シャッタ
60 液晶モニタ
65 フラッシュ
70 前板
71 通気孔
72 防水通気膜
80 後板
90 制御基板
91 基板本体
92 センサユニット
92a 気圧センサ
92b 温度センサ
93 カードスロット
93b メモリカード
94 AFE
95 CCDイメージセンサ
97 電池
100 統合LSI
110 コントローラ
111 モード検出部
112 気圧値補正部
113 差分算出部
114 水深算出部
115 水密検査部
120 画像処理部
130 バッファメモリ
140 フラッシュメモリ
150 開閉検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部および通気孔を有する筐体と、
前記通気孔を塞ぐように設けられた防水通気膜と、
前記開口部を覆った閉状態と前記開口部を覆わない開状態とに遷移可能に取り付けられており、前記閉状態において前記筐体と共に水密構造を構成することが可能な扉と、
前記水密構造内に設けられた気圧計と、
前記扉が前記開状態から前記閉状態に遷移した場合に、前記気圧計が計測した前記水密構造内の気圧値の変化に基づいて、前記筐体および前記扉が水密状態を維持しているかどうか推定する水密検査部と、
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記扉が前記閉状態であること、および前記開状態であることを検出する検出手段を備え、
前記水密検査部は、前記扉が前記開状態から前記閉状態に遷移したことを前記検出手段が検出した後に、所定期間内に前記気圧計が計測する気圧値の変化量が所定値未満になったときに、水密状態を維持していないと推定する、
請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記水密検査部は、前記気圧計が計測する気圧値が、定常状態の気圧値から一旦上昇して最大値を取った後、下降をして再び前記定常状態の気圧値に戻ったときに、最大値を取ってから前記定常状態の気圧値に戻るまでの時間が所定時間以下であれば水密状態を維持していないと推定する、
請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
開口部および通気孔を有する筐体と、
前記通気孔を塞ぐように設けられた防水通気膜と、
前記開口部を覆った閉状態と前記開口部を覆わない開状態とに遷移可能に取り付けられており、前記閉状態において前記筐体と共に水密構造を構成することが可能な扉と、
前記筐体内に設けられ、被写体を撮像して画像データを出力する撮像部と、
前記水密構造内に設けられた気圧計と、
前記扉が前記開状態から前記閉状態に遷移した場合に、前記気圧計が計測した前記水密構造内の気圧値の変化に基づいて、前記筐体および前記扉が水密状態を維持しているかどうか推定する水密検査部と、
を備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−212093(P2012−212093A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174222(P2011−174222)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】