説明

電子機器及び電子機器の取付装置

【課題】露出ボックスをねじ固定したときに、外力が作用してもずれ難い露出ボックスを備えた電子機器の取付装置を得る。
【解決手段】本発明に係る電子機器の取付装置1は、有底枠体状の露出ボックス3を有し、露出ボックス3を壁面側にねじ固定して、露出ボックス3に電子機器を挿入して固定することで、電子機器を壁面に取り付ける電子機器の取付装置1であって、露出ボックス3は、底面に固定ねじが挿通される長穴状のねじ挿通穴15を有し、ねじ挿通穴15の穴周縁部に固定ねじ6を締め付けたときに固定ねじ6の頭部座面によって潰される凸条部17を備えてなる特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に取り付けられる電子機器、及びインターホンなどの電子機器を壁面に取り付ける電子機器の取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば露出型インターホンなどを壁面へ取り付ける電子機器の取付構造として、汎用のスイッチボックスを石膏ボードなどの壁内に固定し、該スイッチボックスに露出型インターホンの本体枠をねじ固定して取り付けるものがある。
このような露出型インターホンを新型のものにリニューアルする場合、埋込型インターホンは壁面内に埋め込む方式になっているため、スイッチボックスに直接固定することができない。
【0003】
そこで、有底枠体状の露出ボックスをスイッチボックスにねじ固定して、固定された露出ボックスに新型の埋込型インターホンを挿入して固定するという方式が採られる。
このような用途の露出ボックスとしては、例えば特許文献1に開示された「インターホン親機の露出ボックス」がある。
【0004】
露出ボックスはスイッチボックスにねじ固定するため、通常、特許文献1の図5に示されるように、複数のねじ挿通穴が設けられており、かつねじ挿通穴は長穴になっている。
露出ボックスのねじ挿通穴を長穴にしているのは、スイッチボックスにおける固定ねじの螺入するねじ穴の位置と露出ボックスのねじ挿通穴の位置がずれていたとしても、このずれを吸収して露出ボックスを正しい姿勢で取り付けるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−60821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
露出ボックスをスイッチボックスに固定するためのねじ挿通穴が長穴になっているため、上述のように露出ボックスとスイッチボックスとの位置ずれを吸収することができる。
しかしながら、その反面、挿通した固定ねじと長穴からなるねじ挿通穴との間には、ねじ挿通穴長手方向に隙間が生ずる。そのため、例えば取付状態で、露出ボックスに外力が作用すると、露出ボックスがずれやすいという問題がある。
【0007】
この問題に対処するために、露出ボックスを固定する固定ねじを強く締め付けることも考えられるが、固定ねじを強く締め付けると、スイッチボックスのねじ穴が潰れたり、あるいは樹脂製の露出ボックスが変形したりする。
露出ボックスが変形する理由は以下の通りである。
スイッチボックスは壁面内部に設置されていることから、スイッチボックスの表面は壁表面よりも一段下がった壁内部にあるため、露出ボックスの背面を壁表面に当接させた状態では、露出ボックス背面とスイッチボックス表面との間に隙間が生ずる。この状態で、露出ボックスに固定ねじを挿入してスイッチボックスのねじ穴にねじ込むと、露出ボックスがスイッチボックス側に押し付けられ、これによって露出ボックス全体が内側に湾曲するように変形する。
【0008】
上記の説明は、電子機器としてインターホンを露出ボックスを用いてリニューアルする場合を例に挙げたが、上記の問題点は、本体とカバーを有する筐体を備えた火災受信機や中継器などの電子機器を直接壁面に取り付ける場合にも当てはまる。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本体又は露出ボックスをねじ固定したときに、外力が作用してもずれ難い電子機器又は電子機器の取付装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る電子機器は、有底枠体状の本体と、カバーとから電子機器の筐体が構成され、前記本体を壁面側にねじ固定して、前記本体にカバーを固定することで、前記電子機器を壁面に取り付ける電子機器であって、
前記本体は、底面に固定ねじが挿通される長穴状のねじ挿通穴を有し、該ねじ挿通穴の穴周縁部に前記固定ねじを締め付けたときに前記固定ねじの頭部座面によって潰される凸条部を備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
(2)本発明に係る電子機器の取付装置は、有底枠体状の露出ボックスを有し、該露出ボックスを壁面側にねじ固定して、該露出ボックスに電子機器を挿入して固定することで、前記電子機器を壁面に取り付ける電子機器の取付装置であって、
前記露出ボックスは、底面に固定ねじが挿通される長穴状のねじ挿通穴を有し、該ねじ挿通穴の穴周縁部に前記固定ねじを締め付けたときに前記固定ねじの頭部座面によって潰される凸条部を備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記凸条部は、該凸条部の長手方向に直交する断面形状が、先端が尖った形状であることを特徴とするものである。
【0013】
(4)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、前記凸条部はねじ挿通穴の周囲に沿ってリング状に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
(5)また、上記(2)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記露出ボックスの枠内面側に、枠内に挿入される電子機器の周壁に当接して前記露出ボックスの撓みを復元する形状復元用柱を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本実施の形態の電子機器においては、筐体を構成する本体の底面に、長穴状のねじ挿通穴を設け、該ねじ挿通穴の穴周縁部に固定ねじを締め付けたときに固定ねじの頭部座面によって潰される凸条部を形成したので、凸条部の潰れた部分と潰れていない部分の境界に段部が形成され、該段部が固定ねじがねじ挿通穴内を動くのを防止する。このため、固定ねじを極端に強く締め付けることなく、本体を固定しても、本体に外力が作用した場合に、固定ねじが凸条部の長穴内を動くのが防止され、本体がずれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子機器の取付装置の説明図である。
【図2】図1における破線で示したA部の拡大斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるねじ挿通穴に形成した凸条部の作用の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるねじ挿通穴に形成した凸条部の作用の説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態における露出ボックスに電子機器を挿入した状態の水平断面図である。
【図6】図5の矢視A−A線に沿う断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る形状復元用柱の作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態に係る電子機器の取付装置1は、図1に示すように、有底枠体状の露出ボックス3を壁面側に設置されたスイッチボックス5に固定ねじ6によって固定して、露出ボックス3に電子機器を取り付けることで、電子機器を壁面に固定する電子機器の取付装置1である。
以下詳細に説明する。
【0018】
<スイッチボックス>
スイッチボックス5は、壁面内に埋め込むように固定されたボックスであって、前面には固定ねじ6が螺入するねじ穴7が複数個(本例では4個)設けられている。
【0019】
<露出ボックス>
露出ボックス3は、枠部9と底部11からなる有底枠体状に形成されている。露出ボックス3の底面には、矩形状の開口部13が形成されており、開口部13の周縁部に複数個(本例では6個)の長穴状のねじ挿通穴15が設けられている。ねじ挿通穴15の周縁部には、図2に示すように、凸条部17の長手方向に直交する断面形状は先端部が尖った形状、例えば三角形であり、凸条部17が、ねじ挿通穴15の周囲に沿って一周するようにリング状に形成されている。凸条部17の高さは、例えば、0.5mmである。
【0020】
露出ボックス3における枠部9の内側中程、より具体的には開口部13の両側であって、枠部9の内側に、形状復元用柱19が立設されている(図1、図5、図6、図7参照)。形状復元用柱19は、円筒状の柱部21と、該柱部21における内側に上下方向に延出して形成されたガイド片23とを備えている。ガイド片23同士の間の距離Lは、露出ボックス3に挿入される電子機器の周壁29の幅Wよりも若干大きく設定されている(図5参照)。
また、ガイド片23の上端部には、内側に傾斜する傾斜部25が形成されている。
形状復元用柱19は、固定ねじ6の締付によって仮に露出ボックス3が、一対の形状復元用柱19のガイド片23の距離が狭くなるように撓んだ場合に、露出ボックス3の枠内に挿入される電子機器の周壁29にガイド片23を当接することによって、撓んだ露出ボックス3の形状を復元させる機能を有している。
【0021】
上記のように構成された電子機器の取付装置1を用いて電子機器を壁面に取り付ける取付方法を説明する。
図1に示すように、露出ボックス3の背面を、スイッチボックス5に対向させ、かつスイッチボックス5のねじ穴7と露出ボックス3のねじ挿通穴15の位置が合うように位置合わせをする。本例では、露出ボックス3の開口部13の4隅に設けたねじ挿通穴15とスイッチボックス5のねじ穴7の位置を合わせるようにする。
【0022】
この状態で固定ねじ6を露出ボックス3のねじ挿通穴15に挿通して、スイッチボックス5のねじ穴7にねじ込む。固定ねじ6をねじ込んだ状態におけるねじ挿通孔と固定ねじ6との関係が図3に示されている。固定ねじ6をしめつけることで、露出ボックス3がスイッチボックス5に固定される。このとき、図3に示されるように、固定ねじ6の頭部座面によって、凸条部17の一部が押し潰される。図4は固定ねじ6によって押し潰された凸条部17の様子を示している。凸条部17が押し潰されることで、凸条部17には、押し潰された部位と押し潰されていない部位との間に段部27が形成される。固定ねじ6の頭部側面がこの段部27に当接することで、固定ねじ6が長穴の長手方向への位置ずれが防止される。
【0023】
露出ボックス3がスイッチボックス5に取り付けられると、電子機器を露出ボックス3に挿入して固定する。図5は、露出ボックス3に電子機器を挿入した状態の水平断面図であり、露出ボックス3と、電子機器の周壁29のみを示している。図5、図6においては露出ボックス3に撓みがない状態を示している。露出ボックス3に撓みがない場合には、形状復元用柱19におけるガイド片23と電子機器の周壁29との間には隙間が形成されている。
【0024】
固定ねじ6が強くしめつけられることにより露出ボックス3に撓みが生じた場合、図7に示すように、枠部9に固定されている形状復元用柱19が枠部9と共に露出ボックス3の内側に倒れるようになる。図7では、図6に比較して電子機器の周壁29とガイド片23との間の隙間が小さくなっていることが分かる。仮に、露出ボックス3の撓みがさらに大きくなった場合には、形状復元用柱19の内側への倒れ込みはさらに大きくなるが、その場合、電子機器の周壁29がガイド片23に当接することで、形状復元用柱19を介して露出ボックス3を内側から押し広げるように作用する。この作用によって、露出ボックス3の撓みが解消される。
なお、ガイド片23の上端部には内側に向って傾斜する傾斜部25が形成されているので、露出ボックス3の撓みが大きい場合であっても、電子機器の周壁29が傾斜部25に当接して、傾斜部25によってガイド片23までガイドされるため露出ボックス3に電子機器を挿入し易くなっている。
【0025】
以上のように、本実施の形態の電子機器の取付装置1においては、露出ボックス3をスイッチボックス5に固定するための長穴状のねじ挿通穴15の周囲に凸条部17を形成し、固定ねじ6をねじ込んだときに凸条部17が固定ねじ6の頭部座面で潰されるようにしたので、固定ねじ6を極端に強く締め付けることなく、露出ボックス3を固定した場合であっても、露出ボックス3に外力が作用しても、固定ねじ6が長穴内を動くのが防止され、露出ボックス3がずれることがない。
【0026】
また、本実施の形態の電子機器の取付装置1においては、形状復用元柱19を設けたので、仮に露出ボックス3に撓みが生じたとしても、その撓みを解消することができる。
【0027】
上記の実施の形態では、凸条部17の断面形状として、三角形の例を挙げたが、本発明はこれに限られるものではなく、断面が台形状、矩形状であってもよい。要するに、固定ねじ6をねじ込んだ際に固定ねじ6頭部の座面によって押し潰されるものであればよい。
本実施の形態で示した露出ボックスの凸条部17は、固定ねじ6を締め込むときの締め込みトルクが0.2N・m以上で押し潰される。本実施の形態で示した露出ボックスで使用されるねじの場合、一般的に、ねじの締め込みトルクは0.4N・m程度なので、凸条部17はねじの締め込みトルクが0.4N・m程度で押し潰されれば充分である。
【0028】
なお、本実施の形態の凸条部17は断面が三角形になっており、先端部が尖った形状であるため、固定ねじ6頭部座面で押し潰され易いので好ましい。
また、上記の実施の形態では、凸条部17を長穴の穴周囲に連続する環状に設けた例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、固定ねじ6によって凸条部17が固定ねじ6頭部座面で押し潰されたときに、押し潰されていない部位が固定ねじ6頭部の長穴長手方向への移動を規制するように当接するような形状であればよい。
また、凸条部17が固定ねじ6頭部座面で押し潰されるのは凸条部17の全高でなくてもよく、全高の2/3〜3/4程度が潰れれば充分である。
なお、上記の実施の形態では、電子機器を挿入して壁面に取付ける電子機器の取向装置である露出ボックスを例にあげたが、上記実施例と同じく、ねじ挿通穴15の周縁部に凸条部17を設けていれば、電子機器本体であっても直接壁面に取付けることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 電子機器の取付装置
3 露出ボックス
5 スイッチボックス
6 固定ねじ
7 ねじ穴
9 枠部
11 底部
13 開口部
15 ねじ挿通穴
17 凸条部
19 形状復元用柱
21 柱部
23 ガイド片
25 傾斜部
27 段部
29 周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底枠体状の本体と、カバーとから電子機器の筐体が構成され、前記本体を壁面側にねじ固定して、前記本体にカバーを固定することで、前記電子機器を壁面に取り付ける電子機器であって、
前記本体は、底面に固定ねじが挿通される長穴状のねじ挿通穴を有し、該ねじ挿通穴の穴周縁部に前記固定ねじを締め付けたときに前記固定ねじの頭部座面によって潰される凸条部を備えてなることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
有底枠体状の露出ボックスを有し、該露出ボックスを壁面側にねじ固定して、該露出ボックスに電子機器を挿入して固定することで、前記電子機器を壁面に取り付ける電子機器の取付装置であって、
前記露出ボックスは、底面に固定ねじが挿通される長穴状のねじ挿通穴を有し、該ねじ挿通穴の穴周縁部に前記固定ねじを締め付けたときに前記固定ねじの頭部座面によって潰される凸条部を備えてなることを特徴とする電子機器の取付装置。
【請求項3】
前記凸条部は、該凸条部の長手方向に直交する断面形状が、先端部が尖った形状であることを特徴とする請求項2記載の電子機器の取付装置。
【請求項4】
前記凸条部はねじ挿通穴の周囲に沿ってリング状に設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の電子機器の取付装置。
【請求項5】
前記露出ボックスの枠内面側に、枠内に挿入される電子機器の周壁に当接して前記露出ボックスの撓みを復元する形状復元用柱を設けたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電子機器の取付装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−80167(P2012−80167A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220630(P2010−220630)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】