説明

電子機器用冷却装置

【課題】 本発明は、ICチップなどの発熱源を冷却する、放熱効果の優れた電子機器用冷却装置を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、ICチップなどの発熱源130に直接又は間接的に接触させると共に、そのベース部111に多数の冷却フィン112・・・を適宜間隔で平行に立設させてなるヒートシンク110を用いた電子機器用冷却装置100Aにおいて、多数の冷却フィン間の間に冷却送風装置120の冷気吹出ノズル121を挿入させ、かつ、この冷気吹出ノズル112の吹き出し角度を、発熱源130の法線に対して、10°〜80°の範囲で傾斜させた電子機器用冷却装置にあり、これにより、良好な放熱効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップなどの発熱源をヒートシンクを用いて冷却する電子機器用冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に組み込まれているLSIやCPUなどのICチップは、局所的な発熱源となっているため、製品によっては適宜冷却することが必要とされる。このような要求に答えるものとして、従来から、種々の冷却方法や冷却装置からなる放熱技術が提供されている(例えば引用文献1〜5)。
【特許文献1】特開2003−332575号
【特許文献2】特開2000−223871号
【特許文献3】特開2000−114760号
【特許文献4】特開平02−213200号
【特許文献5】特開平03−116961号
【0003】
これらの放熱技術において、一般にヒートシンクと呼ばれるものを用いることが多い。これは、例えばアルミなどの熱伝導率の高い金属からなる薄板状の冷却フィンを多数有するもので、ICチップなどの発熱源に直接又は間接的に接触させて取り付けることにより、放熱させるものである。
【0004】
ヒートシンクの場合、冷却フィンと周辺空気との接触による自然対流によって、放熱されるわけであるが、より大きな放熱効果を得るため、回転ファンや往復振動板(構造)などを内蔵させた冷却送風装置と組み合わせて併用することが行われている。つまり、強制冷気を、ヒートシンクの冷却フィン側に吹き付けて、大きな放熱効果を得ている。
【0005】
その一例を図示すると、図6〜図8の如くである。従来は、ヒートシンク10のベース部11に立設された多数の冷却フィン12・・・間の間に冷却送風装置20の冷気吹出ノズル21・・・を少々離間させて対向させ、冷気をほぼ水平方向に吹き付けているものが殆どである。この強制冷気を、冷気吹出ノズル21の反対側へ吹き抜けさせることにより、ヒートシンク10のベース部11の底面側に接触させてあるICチップなどの発熱源30から、熱を奪うようになっている。しかし、冷気の風速が小さいと、冷却フィン12の下流側でフィン表に温度境界層が生じるため、冷却フィン12から熱が効率的に奪えないという問題が起こる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、冷却送風装置20側の風速を上げるため、回転ファンの回転数を上げて、温度境界層を薄くする措置も取られているが、回転数を上げると、騒音が大きくなり、また、回転ファン側自体の発熱量を増大するという新たな問題が生じる。冷却送風装置20側の送風手段が往復振動板の場合も、振動数を上げると、回転ファンの場合と同様、騒音が大きくなり、また、往復振動板側自体の発熱量を増大する問題が生じる。さらに、限られたスペースでの往復振動板では、得られる送風量に制限があるため、十分な冷気効果が得られないという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その特徴とする点は、ヒートシンクの多数の冷却フィン間の間に冷却送風装置の冷気吹出ノズルを挿入させ(離間スペースをなくして)、また、好ましくは冷気吹出ノズルを適宜傾斜させて、冷気をICチップなどの発熱源側に向けるようにして、放熱効果の向上を図った優れた電子機器用冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、ICチップなどの発熱源に直接又は間接的に接触させると共に、そのベース部に多数の冷却フィンを適宜間隔で平行に立設させてなるヒートシンクを用いた電子機器用冷却装置において、前記多数の冷却フィン間の間に冷却送風装置の冷気吹出ノズルを挿入させたことを特徴とする電子機器用冷却装置にある。
【0009】
請求項2記載の本発明は、前記冷却送風装置の冷気吹出ノズルの吹き出し角度を、前記発熱源の法線に対して、適宜傾斜させたことを特徴とする請求項1記載の電子機器用冷却装置にある。
【0010】
請求項3記載の本発明は、前記傾斜角度を、10°〜80°としたことを特徴とする請求項2記載の電子機器用冷却装置にある。
【0011】
請求項4記載の本発明は、前記冷却フィン間の間に挿入される冷却送風装置の冷気吹出ノズル数を、1段又は2以上の多段構造としたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子機器用冷却装置にある。
【0012】
請求項5記載の本発明は、前記冷却フィン間の間に挿入される冷却送風装置の冷気吹出ノズルとして、前記発熱源の法線に対して、適宜傾斜させたものと、水平にしたものとを併用したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電子機器用冷却装置にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子機器用冷却装置によると、多数の冷却フィン間の間に冷却送風装置の冷気吹出ノズルを挿入させ、また、好ましくは冷気吹出ノズルを適宜傾斜させて、冷気をICチップなどの発熱源側に向けるようにしてあるため、放熱効果の向上を図ることができる。言い換えれば、この放熱効果の向上により、冷却送風装置側の回転ファンや往復振動板などの回転数や振動数を小さく抑えることができるため、騒音の発生を低減させることができる。また、これらの機器部分の発熱量も低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図2は、本発明に係る電子機器用冷却装置の一例を示したものである。
この電子機器用冷却装置100Aは、例えば矩形状の多数の冷却フィン112・・・がそのベース部111にほぼ平行に立設されたヒートシンク110と、これの多数の冷却フィン112、112間の間に挿入させた冷却送風装置120の多数の冷気吹出ノズル121・・・とからなる。
【0015】
冷却送風装置120の内部には、図示しないが、回転ファンや往復振動板(構造)などを内蔵させてあり、回転ファンの回動や往復振動板の振動などにより、所望の冷気が冷気吹出ノズル121から吹き出すようになっている。この冷気吹出ノズル121の先端は、図2から明らかなように、冷却フィン112、112間の間に差し込まれた形で(離間スペースをなくして)、挿入させてある。さらに、冷気吹出ノズル121から吹き出される冷気の角度(吹き出し角度)は、ヒートシンク110が直接又は間接的に接触させてある、ICチップなどの発熱源130のセンターからの法線Lに対して、適宜角度θで傾斜させてある。このため、本例ではその一例として、冷却送風装置120から水平に延びたノズル管(筒なども可)を概略く字型に屈曲させてある。
【0016】
このように冷気吹出ノズル121の先端が、冷却フィン112、112間の間に差し込まれているため、冷気が、ほぼ完全に冷却フィン112、112間に導かれる。つまり、冷気の冷却フィン外への漏れが効果的に防止される。また、冷気が、発熱源130のセンター部分(多少すれることも可)を狙う形で、角度θを持って吹き出されるため、発熱源130に対して、高い放熱効果が得られる。言い換えれば、同一の風速下では、従来の水平方向への吹き出し方式に比較して、大きな放熱効果が得られる。
この放熱効果が高い分だけ、風速を小さく抑えることが可能となる。結果として、冷却送風装置120側の回転ファンや往復振動板などの回転数や振動数を小さく抑えることが可能となるため、騒音の低減が得られる。また、回転ファンや往復振動板などの駆動部の発熱量の低減も得られる。サイレント化に適した冷却装置が得られる。
【0017】
また、冷気吹出ノズル121の吹き出し角度θとしては、後述する試験例から、10°〜80°に設定することが望ましい。特に45°前後において最も良好な放熱効果が得られることが分かった。
【0018】
なお、ヒートシンク110としては、上記図示のものに特に限定されない。つまり、矩形状の多数の冷却フィンからなるものが基本的な構造であるが、矩形状の形状も限定されず、冷却フィン間の平行スペース部分が波うち形のもの、冷却フィン間の平行スペース部分の上面側を塞いだ構造などであってもよい。また、冷却フィン材料としても、熱伝導率の高いアルミなの使用が望ましいが、他の金属製であってもよい。
【0019】
図3は、本発明に係る電子機器用冷却装置の他の例を示したものである。
この電子機器用冷却装置100Bでは、冷却送風装置120側から、2段構造(3段以上も可)の冷気吹出ノズル121a、121bを、ヒートシンク110の冷却フィン112、112間の間に挿入させてある。この場合、より良好な放熱効果が得られることは明らかである。例えば、両者の吹き出し角度θ1 、θ2 を、それぞれ45°前後に設定すれば、1段構造に比較して、約2倍の放熱効果も可能である。そうすれば、より一層の騒音の低減効果や駆動部の発熱量の低減効果が得られる。
【0020】
図4は、本発明に係る電子機器用冷却装置の他の例を示したものである。
この電子機器用冷却装置100Cでは、冷却送風装置120から1段構造(2段以上も可)の冷気吹出ノズル121の他に、従来と同構造の水平方向へ冷気を吹き出す冷気吹出ノズル121cを併設して、ヒートシンク110の冷却フィン112、112間の間に挿入させてある。この場合、本発明の放熱効果が得られると同時に、水平方向への冷気吹出ノズル121cにより、冷却フィン112の上方側の空気が迅速に排気されるため、ヒートシンク全体として、より大きな放熱効果が期待できる。
【0021】
〈実施例・比較例〉
図1に示した本発明と同構造の電子機器用冷却装置と、比較のため、図1と同構造の電子機器用冷却装置であるが、冷気吹出ノズルが水平方向へ冷気を吹き出す構造のもの(従来と同構造のもの)を試作した。
【0022】
ここで、それぞれのヒートシンクにおける冷却フィンはアルミ製、その形状は90mm×45mm、厚さは1mm、各冷却フィン間の間隔は2mmである。また、冷気吹出ノズル側の冷却送風装置の送風量は100cc/min、送風圧は30KPaである。ICチップを想定したヒーターからなる発熱源の形状は30mm×30mm、その発熱量は100Wであり、ヒートシンクの底面側にはサーマルグリスを介して設置した。
【0023】
また、本発明の冷気吹出ノズルの場合、その先端を冷却フィン間に差し込み、先端高さをヒートシンクの底部より15mmとした。そして、その吹き出し角度(挿入角)は0°〜90°まで変更できるようにした。水平方向へ冷気を吹き出す構造の冷気吹出ノズルの場合、その先端を冷却フィンのエッヂ(縁部)から1mmの隙間(離間スペース)を持って位置させた。
【0024】
このような本発明の電子機器用冷却装置と、冷気吹出ノズルが水平方向へ冷気を吹き出す構造の電子機器用冷却装置における、放熱効果を確認するため、それぞれの冷気吹出ノズルから冷気を、システムフロー(0.1m3 /s)として吹き出させ、両者の熱抵抗(℃/W)を求めた。具体的には、図2や図7に示す如き位置(Tc、Ta)に対応する部分での温度(Tc:ヒートシンの下部温度、Ta:外気温)を求め、これらの温度差から熱抵抗(℃/W)を演算して求めた。
【0025】
そして、本発明の電子機器用冷却装置における冷気吹出ノズルの吹き出し角度(θ)を変えた場合(実施例1〜19)と、冷気吹出ノズルが水平方向へ冷気を吹き出す構造の電子機器用冷却装置の場合(比較例1)の熱抵抗(℃/W)を、表1に示した。また、本発明の電子機器用冷却装置における冷気吹出ノズルの吹き出し角度(θ)を変えた場合については、熱抵抗(℃/W)の推移を、図5(グラフ)に示した。
【0026】
【表1】

【0027】
表1、図5から、本発明の電子機器用冷却装置における実施例1〜19の場合、比較例1に比べて、いずれの場合も熱抵抗(℃/W)が小さくなっていることが分かる。つまり、熱が奪われ易く、良好な放熱効果が得られていることが分かる。
特に実施例1では、吹き出し角度がゼロであるが、熱抵抗(℃/W)が比較例1より少々小さくなっている。これは、上述したように、冷気吹出ノズルの先端が冷却フィン間に差し込まれているため、冷気の漏れが少ないためと考えられる。また、冷気吹出ノズルの吹き出し角度が、10°〜80°の間で、熱抵抗(℃/W)の小さくなる傾向が顕著であることが分かる。さらに、45°前後において、熱抵抗(℃/W)が著しく小さくなり、放熱効果の向上が極めて高くなることが分かる。
【0028】
なお、上記の説明では、本発明の電子機器用冷却装置において、多数の冷却フィン間の間には、すべて同一構造の冷気吹出ノズルを挿入するものであったが、本発明はこれに限定されない。例えば、1段構造や2段以上の構造の本発明になる冷気吹出ノズルや、従来と同構造の水平方向への吹き出す冷気吹出ノズルを、適宜組み合わせて、挿入することができる。これらの場合も、上記と同様の作用、効果が得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る電子機器用冷却装置の一例を示した概略斜視図である。
【図2】図1の装置における一部縦断概略側面図である。
【図3】本発明に係る電子機器用冷却装置の他の例を示した一部縦断概略側面図である。
【図4】本発明に係る電子機器用冷却装置の他の例を示した一部縦断概略側面図である。
【図5】本発明に係る電子機器用冷却装置における冷気吹出ノズルの吹き出し角度と熱抵抗の関係を示した図(グラフ)である。
【図6】従来の電子機器用冷却装置を示した概略斜視図である。
【図7】図5の装置における一部縦断概略側面図である。
【図8】図5の装置における概略平面図である。
【符号の説明】
【0030】
100A〜100C・・・電子機器用冷却装置、110・・・ヒートシンク、111・・・ベース部、112・・・冷却フィン、120・・・冷却送風装置、121、121a、121b、121c・・・冷気吹出ノズル、130・・・発熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップなどの発熱源に直接又は間接的に接触させると共に、そのベース部に多数の冷却フィンを適宜間隔で平行に立設させてなるヒートシンクを用いた電子機器用冷却装置において、前記多数の冷却フィン間の間に冷却送風装置の冷気吹出ノズルを挿入させたことを特徴とする電子機器用冷却装置。
【請求項2】
前記冷却送風装置の冷気吹出ノズルの吹き出し角度を、前記発熱源の法線に対して、適宜傾斜させたことを特徴とする請求項1記載の電子機器用冷却装置。
【請求項3】
前記傾斜角度を、10°〜80°としたことを特徴とする請求項2記載の電子機器用冷却装置。
【請求項4】
前記冷却フィン間の間に挿入される冷却送風装置の冷気吹出ノズル数を、1段又は2以上の多段構造としたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子機器用冷却装置。
【請求項5】
前記冷却フィン間の間に挿入される冷却送風装置の冷気吹出ノズルとして、前記発熱源の法線に対して、適宜傾斜させたものと、水平にしたものとを併用したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電子機器用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−38159(P2009−38159A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200257(P2007−200257)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】