説明

電子機器

【課題】太陽電池の発電電力により起動することが可能な電子機器を提供する。
【解決手段】携帯電話が、蓄電されている電力により所定の電圧を発生するバッテリ101と、光が照射されることにより所定の電圧を発生する太陽電池102と、バッテリ101と太陽電池102との電圧を比較する電圧比較器103と、電圧比較器103の比較の結果、太陽電池102の電圧がバッテリ101の電圧以上の場合に、自機のオペレーションシステムを立ち上げるまでの状態であるブート状態において使用したクロックの周波数と略同じ周波数のクロックを、オペレーションシステムを起動後の処理を行うためのクロックとして用いるクロック制御部104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池を搭載した携帯電話などの電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような太陽電池を搭載した電子機器では、電子機器の起動に必要な電力をバッテリが有していない状態であっても、太陽電池によってバッテリを充電し、バッテリの充電後に電子機器を起動可能にしている。
【0003】
しかし、従来の太陽電池を搭載した電子機器では、太陽電池の発電電力をバッテリに充電しなければならず、この充電の時間の分だけ電子機器の起動に時間がかかる。そこで、バッテリを太陽電池により充電するのではなく、太陽電池による発電電力を電子機器の起動に直接使用することが考えられている。
【特許文献1】特開2006−229741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電子機器ではブート状態からオペレーションシステム(以下、OSと記す。)の起動後の状態に遷移する場合、クロックの周波数を増加させているため、太陽電池の発電電力では電子機器を起動できない場合があるという問題点を有している。ブート状態とは、OSを起動するまでの処理を行っている状態であり、例えばレジスタの初期化などのハードの初期化などが行われる状態である。以下、上記従来技術におけるクロックの周波数を増加させる処理について説明する。
【0005】
まず、従来の電子機器の一例である携帯電話の起動の際の動作について、図6、図7及び図8を参照して説明する。図6は、従来の電子機器の一例である携帯電話の時間に対するクロックの周波数のグラフであり、図7は、従来の電子機器の一例である携帯電話の時間に対する消費電力のグラフであり、図8は、従来の電子機器の一例である携帯電話の時間に対する動作に必要な電圧のグラフである。
【0006】
図6に示されるように、従来の携帯電話は、起動を開始してから時刻t1まではブート状態となる。そして、時刻0から時刻t1までのブート状態においては、クロックの周波数[Hz]はC1となる。このC1は、例えば19.2[MHz]である。もちろん、従来の電子機器においてブート状態におけるクロックの周波数は19.2[MHz]に限定されるものではなく、その他の値であっても良い。
【0007】
そして、OSが起動された後、すなわち時刻t1以降は、クロックの周波数[Hz]がC2となる。このC2は、例えば220[MHz]である。もちろん、従来の電子機器においてOS起動状態におけるクロックの周波数は220[MHz]に限定されるものではなく、その他の周波数を用いることもできる。
【0008】
そして、図7に示されるように、時刻0から時刻t1までは携帯電話の消費電力[W]はW1であり、時刻t1以降はW2となる。ここで、W2>W1である。このように消費電力が時刻t1において増加するのはクロックの周波数がC1からC2に増加するからである。
【0009】
さらに、図8に示されるように、時刻0から時刻t1までは携帯電話の動作に必要とされる電圧[V]がV1であり、時刻t1以降は携帯電話の動作に必要とされる電圧はV2である。ここで、V2>V1である。このように携帯電話の動作に必要される電圧が時刻t1において増加するのは、クロックの周波数がC1からC2に増加し、消費電力がW1からW2に増加するからである。
【0010】
このように、従来の電子機器ではブート状態からOSの起動後の状態に遷移する場合、クロックの周波数を増加させている。そして、このクロックの周波数の増加に伴い電子機器の消費電力が増加する。そのため、太陽電池の発電電力を用いて電子機器をブート状態とした後、その後のOSの起動状態における消費電力の増加に伴う必要な電圧の増加分に対して、太陽電池の発電電圧が足りなくなり、電子機器の起動処理ができない場合があるという問題点を有する。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、太陽電池の発電電力により起動することが可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電子機器は、蓄電されている電力により所定の電圧を発生する蓄電手段と、光が照射されることにより所定の電圧を発生する太陽電池と、前記蓄電手段の電圧と前記太陽電池の電圧とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較の結果、前記太陽電池の電圧が前記蓄電手段の電圧以上の場合に、自機のオペレーションシステムを立ち上げるまでの状態であるブート状態において使用したクロックの周波数と略同じ周波数のクロックを、前記オペレーションシステムを起動後の処理を行うためのクロックとして用いるクロック制御手段と、を備える。
【0013】
また、本発明の電子機器は、前記クロック制御手段は、前記比較手段の比較の結果、前記太陽電池の電圧が前記蓄電手段の電圧よりも低い場合に、前記オペレーションシステムの起動後の処理を行うためのクロックとして、自機のオペレーションシステムを立ち上げるまでの状態であるブート状態において使用したクロックの周波数よりも高い周波数のクロックを用いる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の電子機器は、蓄電手段の電圧と太陽電池との電圧を比較して、OS起動後の状態のクロックの周波数を制御する。太陽電池の電圧が蓄電手段の電圧以上の場合、例えば蓄電手段が携帯電話に装着されていない場合や、蓄電手段が略空の場合など、太陽電池からの電力に基づき電子機器を起動する場合であっても、OS起動後において電子機器の内部システムに提供されるクロックの周波数を高速にせずに、ブート状態で使用したクロックの周波数と略同じ周波数のクロックを用いる。そのため、太陽電池を用いて電子機器を起動する場合であっても、クロックの周波数の増加により必要な電圧が維持できず電子機器を起動することができないといった事態を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る電子機器の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る電子機器の一実施形態である携帯電話の内部構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態の携帯電話は、充電されることにより電力が蓄積されるバッテリ101と、光が照射されることにより電圧が発生し電流が発生する太陽電池102と、バッテリ101の電圧と太陽電池102の電圧とを比較する電圧比較器103と、電圧比較器103からの出力に基づいて内部システムに供給するクロックを制御するクロック制御部104と、演算処理を行うCPU106や、データやプログラムなどを記憶するメモリ107や、クロック制御部104に制御されて所定の周波数のクロックを出力するクロック発生器108などを含む内部システム105とを備える。この内部システム105には、バッテリ101の電力と太陽電池102の電力とのいずれか又は双方が供給される。
【0016】
次に、図2、図3及び図4を参照して、図1に示される携帯電話の起動の際の動作について説明する。図2は、図1に示される携帯電話の時間に対するクロックの周波数のグラフであり、図3は、図1に示される携帯電話の時間に対する消費電力のグラフであり、図4は、図1に示される携帯電話の時間に対する動作に必要な電圧を示すグラフである。なお、図2、図3、図4に示されるグラフは直線であるが、種々の要因によりこれらのグラフの一部が直線から変動することもあり得る。
【0017】
図2に示されるように、本実施形態の携帯電話は、起動を開始してからOSが起動される時刻t1[s]まではブート状態となる。
【0018】
そして、本実施形態の携帯電話は、時刻0から時刻t1までのブート状態においては、クロックの周波数C1[Hz]は19.2[MHz]である。もちろん、本発明の電子機器においてブート状態におけるクロックの周波数C1は19.2[MHz]に限定されるものではなく、その他の値であっても良い。
【0019】
そして、本実施形態の携帯電話は、OSが起動された後、すなわち時刻t1以降であっても、クロックの周波数は19.2[MHz]のままである。もちろん、本発明の電子機器においてOS起動状態におけるクロックの周波数は19.2[MHz]に限定されるものではなく、OSが起動された後の携帯電話を起動させるに必要な電力を確保できるならばその他の周波数を用いることもできる。
【0020】
そして、図3に示されるように、本実施形態の携帯電話の消費電力[W]は、時刻0から時刻t1までのブート状態及び時刻t1以降のOS起動後の状態であっても、W1であり、時刻t1以降であってもクロックの周波数に基づいて増加することはない。
【0021】
さらに、図4に示されるように、本実施形態の携帯電話の動作に必要とされる電圧[V]は、時刻0から時刻t1までのブート状態及び時刻t1以降のOS起動後の状態であっても、V1であり、時刻t1以降であってもクロックの周波数に基づいて増加することはない。
【0022】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態である携帯電話の動作について図5を参照して説明する。図5は、図1に示される携帯電話の動作のフローチャートである。
【0023】
図5に示されるように、まず、電圧比較器は、バッテリの電圧と太陽電池の電圧とのいずれか大きいかを比較する(S501)。
【0024】
そして、太陽電池の電圧がバッテリの電圧以上の場合(YES)、クロック制御部は携帯電話の内部システムに提供されるクロックを、ブート状態において使用されたクロックの周波数と同じ周波数のクロックに設定する(S502)。その後、携帯電話の内部システムは、ブート状態において使用されたクロックの周波数と同じ周波数のクロックによりOSの起動後の処理を行い、携帯電話を動作させる(S504)。なお、太陽電池の電圧がバッテリの電圧以上の場合に使用されるクロックは、ブート処理に用いられたクロックの周波数と同じ周波数のクロックだけではなく、略同じ周波数のクロックであっても良い。
【0025】
他方、太陽電池の電圧がバッテリの電圧より小さい場合(NO)、クロック制御部は携帯電話の内部システムに提供されるクロックを、ブート状態において使用されたクロックの周波数より高い周波数のクロックに設定する(S503)。その後、携帯電話の内部システムは、ブート状態において使用されたクロックの周波数より高い周波数のクロックによりOSの起動後の処理を行い、携帯電話を動作させる(S504)。このように、携帯電話の内部システムは、ブート状態において使用されたクロックの周波数より高い周波数のクロックによりOSの起動後の処理を行い、携帯電話を動作させるため、OS起動後の処理を速く行うことができる。
【0026】
ここで、S501の比較において、太陽電池の電圧がバッテリの電圧以上の場合には、単に太陽電池の電圧がバッテリの電圧以上である場合の他、バッテリが携帯電話に装着されていない場合や(バッテリ電圧=0[V])、バッテリが携帯電話に装着されていてもバッテリや携帯電話の故障などによりバッテリから携帯電話に電力が供給されない場合や(バッテリ電圧=0[V])、バッテリが略空に近い場合などがある。
【0027】
このように、本発明の電子機器の一実施形態である携帯電話では、バッテリの電圧と太陽電池の電圧とを比較して、OS起動後の状態のクロックの周波数を制御する。そして、太陽電池の電圧がバッテリの電圧以上の場合、例えばバッテリが携帯電話に装着されていない場合や、バッテリが略空の場合など、太陽電池からの電力に基づき携帯電話を起動する場合であっても、OS起動後において、携帯電話の内部システムに提供されるクロックを、ブート状態において使用したクロックの周波数と同じ周波数のクロックとする。そのため、太陽電池を用いて携帯電話を起動する場合であっても、クロックの周波数の増加により必要な電圧が維持できず携帯電話を起動することができないといった事態を防止することができる。
【0028】
また、本発明の電子機器の一実施形態である携帯電話では、太陽電池の電圧がバッテリの電圧より小さい場合には、クロック制御部は、OS起動後に携帯電話の内部システムに提供されるクロックを、ブート処理に用いられたクロックの周波数より高速の周波数のクロックとするため、OS起動後の処理を速く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る電子機器の一実施形態である携帯電話の内部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示される携帯電話の時間に対するクロックの周波数のグラフである。
【図3】図1に示される携帯電話の時間に対する消費電力のグラフである。
【図4】図1に示される携帯電話の時間に対する動作に必要な電圧を示すグラフである。
【図5】図1に示される携帯電話の動作のフローチャートである。
【図6】従来の電子機器の一例である携帯電話の時間に対するクロックの周波数のグラフである。
【図7】従来の電子機器の一例である携帯電話の時間に対する消費電力のグラフである。
【図8】従来の電子機器の一例である携帯電話の時間に対する動作に必要な電圧のグラフである。
【符号の説明】
【0030】
101 バッテリ(蓄電手段)
102 太陽電池
103 電圧比較器(比較手段)
104 クロック制御部(クロック制御手段)
105 内部システム
106 CPU
107 メモリ
108 クロック発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電されている電力により所定の電圧を発生する蓄電手段と、
光が照射されることにより所定の電圧を発生する太陽電池と、
前記蓄電手段の電圧と前記太陽電池の電圧とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較の結果、前記太陽電池の電圧が前記蓄電手段の電圧以上の場合に、自機のオペレーションシステムを立ち上げるまでの状態であるブート状態において使用したクロックの周波数と略同じ周波数のクロックを、前記オペレーションシステムを起動後の処理を行うためのクロックとして用いるクロック制御手段と、を備える電子機器。
【請求項2】
前記クロック制御手段は、
前記比較手段の比較の結果、前記太陽電池の電圧が前記蓄電手段の電圧よりも低い場合に、前記オペレーションシステムの起動後の処理を行うためのクロックとして、自機のオペレーションシステムを立ち上げるまでの状態であるブート状態において使用したクロックの周波数よりも高い周波数のクロックを用いる請求項1記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−210102(P2008−210102A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45484(P2007−45484)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】