説明

電子機器

【課題】半導体装置とヒートシンクとの間にサーマルグリース層を介在させた電子機器において、半導体装置の熱履歴に伴う放熱性能の低下を抑制する。
【解決手段】電子機器10では、LSI12とヒートシンク15との間の隙間から露出するサーマルグリース層16の表面をサーマルグリース層16よりも低い流動性を有すると共に、高い弾性を有する樹脂層17で覆う。樹脂層17は、熱硬化性のシリコーン系接着材料から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、更に詳しくは、半導体装置の熱をヒートシンクを介して放散する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の性能向上の要請に伴い、LSI(Large Scale Integration)などの半導体装置が高性能化され、発生する熱量が増大している。半導体装置の熱量増大に対して、図2に示すように、半導体装置12の背面に、サーマルグリース層16を介してヒートシンク15を配設し、サーマルグリース層16及びヒートシンク15を介して、半導体装置12で発生した熱を放散している。
【0003】
ヒートシンク15の配設に際しては、半導体装置12の背面、又は、ヒートシンク15の接合面に、サーマルグリースを供給した後に、半導体装置12とヒートシンク15とを適度な力で互いに押し付ける。半導体装置12の熱はサーマルグリース層16を介してヒートシンク15に伝わるため、サーマルグリース層16の熱伝導率が高いほど、また、その厚みが小さいほど、熱抵抗が低くなり放熱性能が高まる。
【0004】
半導体装置の背面にサーマルグリース層を介してヒートシンクを配設した電子機器については、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003−124663号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子機器100では、半導体装置12による熱履歴を経た後にその放熱性能が低下する問題があった。つまり、半導体装置12の温度変化に伴って、配線基板11や半導体装置12、ヒートシンク15が熱膨張し、半導体装置12とヒートシンク15との間隔が変動して、サーマルグリース層16が流動して半導体装置12とヒートシンク15との間の隙間から押し出される。
【0006】
サーマルグリース層16が半導体装置12とヒートシンク15との間の隙間から押し出されることによって、その隙間に熱伝導率の低い空気等(気泡)が入り込み、半導体装置12とヒートシンク15との間の熱抵抗が上昇するものである。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、半導体装置と、半導体装置の背面側にサーマルグリース層を介して配設されたヒートシンクとを有する電子機器であって、半導体装置の熱履歴に伴う放熱性能の低下を抑制できる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、
半導体装置とヒートシンクとの間にサーマルインタフェース層を介在させた電子機器において、
前記半導体装置と前記ヒートシンクとの間の隙間から露出するサーマルインタフェース層の表面を樹脂層で覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体装置の温度上昇に際して、半導体装置とヒートシンクとの間の隙間から露出するサーマルインタフェース層の表面を覆う樹脂層が、半導体装置とヒートシンクとの間の隙間からサーマルインタフェース層が押し出されることを抑制する。これによって、サーマルインタフェース層中に気泡が入り込むことを抑制し、半導体装置の熱履歴に伴う放熱性能の低下を抑制できる。
【0010】
本発明では、前記半導体装置が、1つ以上のLSIチップを含んでもよい。本発明の好適な態様では、前記樹脂層は、前記サーマルインタフェース層よりも低い熱流動性を有する。この場合、半導体装置とヒートシンクとの間の隙間からサーマルインタフェース層が押し出されることを、より効果的に抑制できる。本発明で熱流動性とは、昇温時の流動性を言う。
【0011】
本発明では、前記サーマルインタフェース層がグリース層であってもよい。本発明の好適な態様では、前記樹脂層が、シリコーン系接着材料又はゴム系接着材料から成る。シリコーン系接着材料やゴム系接着材料は、高い弾性を有するため、半導体装置とヒートシンクとの間隔の変動に追従して変形させることができ、破壊を防止して信頼性を高めることが出来る。
【0012】
本発明では、前記樹脂層は、塗布によって形成されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、添付図面を参照し、本発明の実施形態を更に詳しく説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器の構成を示す断面図である。電子機器10は、配線基板11と、配線基板11上にはんだバンプ13を介して実装されたLSI12とを有する。配線基板11とLSI12との間には、配線基板11とLSI12との熱膨張係数差に起因する応力からはんだバンプ13やその付近を保護するために、アンダーフィル樹脂層14が充填されている。
【0014】
LSI12の背面には、LSI12の熱を効率的に放散することを目的として、熱伝導率の高いサーマルグリース層16を介してヒートシンク15が配設されている。ヒートシンク15は、LSI12の背面に略対応した平面形状を有する第1プレート部分21と、第1プレート部分21の上面に接続し第1プレート部分21よりも大きな平面形状を有する第2プレート部分22と、第2プレート部分22の上面に形成された複数のフィン23とを有する。複数のフィン23は、第2プレート部分22の上面に直交して形成され、互いに平行に延びている。
【0015】
LSI12とヒートシンク15との間から露出するサーマルグリース層16の表面の全てを覆って、サーマルグリース層16よりも低い流動性を有する樹脂層17が形成されている。本実施形態では、樹脂層17は、硬化したシリコーン系接着材料から成り、高い弾性を有する。樹脂層17は、LSI12、アンダーフィル樹脂層14、及び、ヒートシンク15に接しており、その接した部分に接着されている。
【0016】
樹脂層17は例えばディスペンサを用いた塗布によって形成される。本実施形態では、シリコーン系接着材料には湿気硬化型のものを用い、室温下で周囲の水分との化学反応によって硬化させることが出来る。
【0017】
本実施形態の電子機器10では、LSI12とヒートシンク15との間から露出するサーマルグリース層16の表面の全てを覆って、サーマルグリース層16よりも低い流動性を有すると共に、高い弾性を有する樹脂層17が形成されている。このため、LSI12の熱履歴によってLSI12とヒートシンク15との間隔が変動しサーマルグリース層16が流動した際にも、樹脂層17がLSI12とヒートシンク15との間の隙間を塞ぎつつ弾性的に変形することによって、サーマルグリース層16がLSI12とヒートシンク15との間の隙間から押し出されることを抑制できる。
【0018】
このため、サーマルグリース層16は、LSI12による熱履歴を経た後にも元の状態を維持することができ、層中に気泡が入り込むことを抑制し、放熱性能の低下を抑制できる。
【0019】
ところで、電子機器10において、樹脂層17が、仮に充分な弾性を有しない樹脂であるものとすると、樹脂層17をLSI12とヒートシンク15との間の間隔の変動に追従して変形させることが出来ず、破壊を生じるおそれがある。樹脂層17が破壊すると、その破壊部分からサーマルグリース層16が流れ出し、層中に気泡が入り込む。これに対して、本実施形態の電子機器10では、樹脂層17が高い弾性を有するシリコーン系接着材料から成るため、LSI12とヒートシンク15との間隔の変動に充分に追従させることができ、破壊を防止して信頼性を高めることが出来る。
【0020】
なお、上記実施形態において低い流動性と高い弾性とを有する樹脂材料として、シリコーン系接着材料以外にも、例えばゴム系接着材料を用いることも出来る。ゴム系接着材料は、例えば溶媒である有機溶剤の揮発によって硬化する。また、上記実施形態では、サーマルグリース層16が形成されている例を示したが、サーマルグリース層16以外のサーマルインタフェース層であって流動性を有する層が形成された場合にも、樹脂層17を形成することによって、同様の効果を得ることが出来る。
【0021】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の電子機器は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器を示す断面図である。
【図2】従来の電子機器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10:電子機器
11:配線基板
12:LSI(半導体装置)
13:はんだバンプ
14:アンダーフィル樹脂層
15:ヒートシンク
16:サーマルグリース層
17:樹脂層
21:第1プレート部分
22:第2プレート部分
23:フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置とヒートシンクとの間にサーマルインタフェース層を介在させた電子機器において、
前記半導体装置と前記ヒートシンクとの間の隙間から露出するサーマルインタフェース層の表面を樹脂層で覆うことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記半導体装置が、1つ以上のLSIチップを含む、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記樹脂層は、前記サーマルインタフェース層よりも低い熱流動性を有する、請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記サーマルインタフェース層がグリース層である、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記樹脂層が、シリコーン系接着材料又はゴム系接着材料から成る、請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記樹脂層が、塗布によって形成されている、請求項5に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−227361(P2008−227361A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66612(P2007−66612)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】