説明

電子機器

【課題】静電気対策の信頼性を向上させることができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器である投写型映像表示装置は、筐体3と、筐体3に収容されるプリント配線板4とを備え、プリント配線板4は、基板41と、基板41に設けられたグランド層42と、露出する静電気対策用の放電用導電部44と、基板41に設けられたビア45とを備えている。そして、放電用導電部44とグランド層42を電気的に接続するためのビア45が複数設けられ、少なくとも2つ以上のビア45を介して放電用導電部44とグランド層42とが電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気対策が施されたプリント配線板を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器が有する押ボタンを操作する場合等において、帯電した人体から電子機器の筐体に収容されたプリント配線板に向けて静電気が放電されることが知られている。このような静電気による不都合を回避するために、プリント配線板を構成する基板に静電気対策用の放電用導電部を設けることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、電子機器は、筐体と、筐体に収容されるプリント配線板とを備えており、プリント配線板は、例えば、基板と、基板に設けられたグランド層(GND)と、露出する静電気対策用の放電用導電部(放電用GNDランド)と、基板に設けられたビア(VIAホール)とを備えることが知られている。
【特許文献1】特開2007−207497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載されるプリント配線板を用いる場合であっても、放電用導電部と上記プリント配線板において基準電位となるグランド層との間のインピーダンスを低下させることが十分にできない場合があった。従って、静電気による不都合を回避するために施された静電気対策の信頼性が十分でないという問題があった。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電気対策の信頼性を向上させることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、筐体と、筐体に収容されるプリント配線板とを備え、プリント配線板は、基板と、基板に設けられたグランド層と、露出する静電気対策用の放電用導電部と、基板に設けられたビアとを備える電子機器であって、放電用導電部とグランド層を電気的に接続するための上記ビアが複数設けられ、少なくとも2つ以上のビアを介して放電用導電部とグランド層とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0007】
同構成によれば、放電用導電部とグランド層を電気的に接続するためのビアが複数設けられ、静電気対策用の放電用導電部は少なくとも2つ以上のビアを介してグランド層に接続されている。従って、放電用導電部を多点接続によりグランド層に接地することができるため、放電用導電部とグランド層との間のインピーダンスを確実に低下させることができ、その結果、静電気対策の信頼性を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子機器であって、プリント配線板には電子部品であるスイッチが設けられ、複数のビアが、スイッチがプリント配線板に設けられる箇所を取り囲むように設けられていることを特徴とする。
【0009】
同構成によれば、複数のビアが、スイッチがプリント配線板に設けられる箇所を取り囲むように設けられているため、スイッチを取り囲む複数のビアのうちスイッチの最も近くに設けられたビアを介して放電用導電部とグランド層とが接続されることにより、放電用導電部とグランド層との間のインピーダンスを確実に低下させることができる。その結果、静電気対策の信頼性をより向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子機器であって、プリント配線板は、放電用導電部が設けられる他のグランド層を備え、放電用導電部及び他のグランド層は、スイッチがプリント配線板に設けられる箇所から、所定間隔を空けて設けられていることを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、放電用導電部及び放電用導電部が設けられる他のグランド層は、スイッチがプリント配線板に設けられる箇所から、所定間隔を空けて設けられているため、放電用導電部とスイッチとの間のインピーダンス、及び他のグランド層とスイッチとの間のインピーダンスを高めることができ、相対的に放電用導電部とグランド層との間のインピーダンスを低下させることができる。その結果、静電気対策の信頼性をより一層向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の電子機器であって、スイッチを押すための押しボタンをさらに備え、筐体と押しボタンとにより形成される隙間の延長線上に放電用導電部が設けられ、プリント配線板の厚み方向において隙間と放電用導電部が対向していることを特徴とする。
【0013】
同構成によれば、筐体と押しボタンとにより形成される隙間の延長線上に静電気対策用の放電用導電部が設けられ、プリント配線板の厚み方向において上記の隙間と放電用導電部が対向しているため、筐体と押しボタンとの隙間から放電用導電部へ静電気を放電し易くすることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の電子機器であって、放電用導電部は、スイッチがプリント配線板に設けられる箇所を取り囲むように複数設けられ、複数の放電用導電部の間にビアが設けられていることを特徴とする。
【0015】
同構成によれば、放電用導電部は、スイッチがプリント配線板に設けられる箇所を取り囲むように複数設けられ、複数の放電用導電部の間にビアが設けられている。従って、はんだペーストを用いて放電用導電部を形成するためのメタルマスクの形状等に起因して、1つの放電用導電部でスイッチを取り囲むことができない場合には、上記のように複数の放電用導電部の間を有効に活用することができる。即ち、複数の放電用導電部の間にビアが形成されていない場合に比し、放電用導電部とグランド層との間のインピーダンスを確実に低下させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電子機器であって、放電用導電部の形状は、プリント配線板の厚み方向から見て、略長方形であることを特徴とする。
同構成によれば、放電用導電部の形状は、プリント配線板の厚み方向から見て略長方形であるため、放電用導電部の形状がプリント配線板の厚み方向から見て円形である場合に比し、上記箇所を取り囲む周方向について、放電用導電部の面積を大きくすることを容易に行うことができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の電子機器であって、放電用導電部は、スイッチがプリント配線板に設けられる箇所を取り囲む連続した形状をなすように設けられていることを特徴とする。
【0018】
同構成によれば、放電用導電部は、スイッチがプリント配線板に設けられる箇所を取り囲む連続した形状をなすように設けられている。従って、1つの放電用導電部でスイッチを取り囲むことができ、スイッチを取り囲む放電用導電部が不連続である場合に比し、放電用導電部の面積を大きくすることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の電子機器であって、筐体に収容されるとともに接地される導体板をさらに備え、グランド層上には接地用接続部が設けられ、導体板に接地用接続部が接触することにより、グランド層と導体板とが電気的に接続されることを特徴とする。
【0020】
同構成によれば、グランド層と導体板とを電気的に接続するために、導体板に、グランド層上に設けられた接地用接続部が接触する構成となっている。このため、例えばグランド層の一部にカバー層が設けられている場合であっても、グランド層上に設けられた接地用接続部が、カバー層に比し、導体板へ向けて突出していることにより、グランド層と導体板とが確実に接続される。従って、放電用導電部のインピーダンスをより一層確実に低下させることができる。その結果、静電気対策の信頼性をさらにより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、露出する静電気対策用の放電用導電部とグランド層との間のインピーダンスを確実に低下させることができ、静電気対策の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の電子機器を投写型映像表示装置として具体化した一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面において、矢印Sはプリント配線板において部品が実装される面に平行な方向である面方向を示し、矢印Tは面方向に垂直な方向である厚み方向を示している。
【0023】
図1に示すように、投写型映像表示装置1は、投写レンズ2を用いて前方へ光を投射することにより映像を表示するフロントプロジェクタであって、光を透過させて映像を生成するために液晶パネル(不図示)を備えた液晶プロジェクタである。
【0024】
図2に示すように、投写型映像表示装置1は、液晶パネル等の光学部品等を収納する筐体3と、筐体3に収容されるプリント配線板4と、筐体3内に収容されるとともに接地される導体板5と、投写型映像表示装置1の基準電位となる導体6とを備えている。なお、図2は、本発明に係る静電気対策が施されたプリント配線板4の配置箇所を説明するための断面図であって、投写型映像表示装置1が備える光学部品等の図示は省略されている。
【0025】
形状が略直方体の筐体3の一部には貫通孔31が形成されている。この貫通孔31には、投写型映像表示装置1のユーザにより操作される押しボタン71が設けられており、この押しボタン71と、プリント配線板4に設けられた電子部品であるスイッチ72とにより押しボタンスイッチ7が構成されている。なお、押しボタン71は、プリント配線板4の面方向Sにおいて、スイッチ72よりも大きい。
【0026】
また、筐体3には、プリント配線板4を支持するための配線板支持部32が設けられている。この配線板支持部32は、筐体3の内部へ向けて(即ち、プリント配線板4へ向けて)突出するように設けられており、樹脂製の筐体3と一体に形成されている。
【0027】
電子機器である投写型映像表示装置1を制御するためのプリント配線板4は、多層プリント配線板であって、図3及び図4に示すような静電気対策用のパターンを有している。なお、図3は、プリント配線板4を上方から見た図(即ち、上面図)であって、図4は、プリント配線板4を下方から見た図(即ち、下面図)である。
【0028】
具体的には、図5に示すように、多層プリント配線板であるプリント配線板4は、複数の基板41と、基板41に設けられたグランド層42,43と、グランド層42,43の一部を覆うソルダ・レジストとよばれる導電性を有していないカバー層(不図示)と、露出する静電気対策用の放電用導電部44と、基板41に設けられたビア45とを備えている。
【0029】
基板41は、絶縁性の樹脂により形成された基材であって、多層プリント配線板においては、複数の基板41が積層されることにより、プリント配線板4が形成されている。なお、本実施形態においては、プリント配線板4は、複数の基板41を備える多層プリント配線板であるが、1つの基板41を備える両面プリント配線板を用いてもよい。
【0030】
グランド層42,43は、導体6に直接的または間接的に接続されることにより、接地されることを目的とした導電層であって、銅等の金属により形成されている。グランド層42は、プリント配線板4の下面4b(即ち、プリント配線板4においてスイッチ72が実装される面である上面4aの反対側の面)に設けられ、グランド層43は、プリント配線板4の上面4aに設けられている。グランド層42,43は、導体6に接続されることにより接地された導体板5と電気的に接続されており、本実施形態においては、プリント配線板4の下面4bに設けられたグランド層42は、プリント配線板4上の回路の基準電位となる導体である。
【0031】
なお、グランド層42,43の一部を覆うカバー層は、絶縁性を有している。そのため、グランド層42を導体板5と電気的に接続する箇所においては、カバー層が在ると電気的な接続の妨げとなるため、グランド層42上にカバー層は設けられていない。また、グランド層43に放電用導電部44を設ける箇所においても、上記と同じ理由で、グランド層43上にカバー層は設けられていない。
【0032】
静電気対策用の放電用導電部44は、グランド層43上に設けられた導体からなり、部品を実装するために用いられるランドと同様に形成することができ、例えばリフロー工程においては、メタルマスクを用いてはんだペーストを配置して形成することができる。プリント配線板4の上面4aに設けられた放電用導電部44は、ビア45を介して、プリント配線板4の下面4bに設けられたグランド層42と電気的に接続されている。また、放電用導電部44は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所から所定間隔(例えば、1mm以上)を空けて設けられており、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲むように複数設けられている。具体的には、本実施形態においては、放電用導電部44は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所の中心Cを中心とする1つの円の一部をなすように複数設けられている。このようにして設けられた放電用導電部44は、上記隙間Mの延長線上に設けられ、プリント配線板4の厚み方向Tにおいて隙間Mと放電用導電部44が対向しており、形状がプリント配線板4の厚み方向Tから見て略長方形である。
【0033】
ビア45は、めっきが施されたスルーホールであって、グランド層42とグランド層43とがビア45によって接続されることにより、放電用導電部44とグランド層42とが電気的に接続されている。複数のビア45は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲むよう設けられている。具体的には、本実施形態においては、複数のビア45が、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所の中心Cを中心として、放電用導電部44よりも遠心側において、円周をなすように設けられている。即ち、複数のビア45は、上記隙間Mの相似形をなすように設けられている。
【0034】
導体板5は、例えば鉄やアルミニウムからなる金属板であって、電子機器の基準電位(即ち、投写型映像表示装置1の基準電位)となる導体6に対してビス8を用いて固定されている。従って、導体6、導体板5、グランド層42、及び放電用導電部44は互いに電気的に接続されており、グランド層42を導体板5及び導体6に接続することにより、静電容量を大きくして、グランド層42に接続された放電用導電部44における電位変化を小さくすることを図っている。
【0035】
以上のように、本実施形態においては、投写型映像表示装置1は、筐体3と、筐体3に収容されるプリント配線板4とを備え、プリント配線板4は、基板41と、基板41に設けられたグランド層42と、露出する静電気対策用の放電用導電部44と、基板41に設けられたビア45とを備えている。
【0036】
ここで、本実施形態においては、放電用導電部44とグランド層42を電気的に接続するためのビア45が複数設けられ、少なくとも2つ以上のビア45を介して放電用導電部44とグランド層42とが電気的に接続されていることに特徴がある。
【0037】
具体的には、グランド層43は、スイッチ72を取り囲む複数のビア45の全てに連続するように設けられるとともに、図3に示すように、放電用導電部44と同様に、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所から所定間隔を空けて設けられている。より具体的には、グランド層43は、図3に示す破線L1の外側に設けられており、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所の中心Cから所定間隔を空けて設けられている。従って、1つの放電用導電部44は、導電層であるグランド層43を介して、2つ以上のビア45に接続されることにより、2つ以上のビア45を介して、グランド層42に多点接続されている。このような構成により、放電用導電部44とグランド層42とを接続する回路において、複数のビア45が並列に接続されており、放電用導電部44とグランド層42との間のインピーダンスは、個々のビア45のインピーダンスを合成した合成インピーダンスとなる。
【0038】
なお、図3における二点鎖線L2は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所の領域を示しており、この領域は、スイッチ72が有する端子(不図示)及びプリント配線板4に設けられた露出する配線パターン(不図示)を含んでいる。従って、破線L1の内側であって二点鎖線L2の外側の領域は、プリント配線板4の表面にグランド層43、放電用導電部44、スイッチ72の端子、及び配線パターン等の導体が設けられていないクリアランス領域である。
【0039】
また、グランド層42も同様に、スイッチ72を取り囲む複数のビア45の全てに連続するように設けられるとともに、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所から所定間隔を空けて設けられている。具体的には、グランド層42は、図4に示す破線L3の外側に設けられており、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所の中心Cから所定間隔を空けて設けられている。なお、図4における破線L3は、スイッチ72の端子と導電層48(図5及び図6参照)とを電気的に接続するためのビア49(図5及び図6参照)を含む領域を示している。このような構成により、ビア49とグランド層42との間のインピーダンスを高めることができ、グランド層42を介する放電用導電部44と導体板5との間のインピーダンスを相対的に低下させることを図ることができる。
【0040】
また、本実施形態においては、放電用導電部44は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲むように複数設けられ、複数の放電用導電部44の間にビア46が設けられている。ビア46は、ビア45と同様に、めっきが施されたスルーホールであって、グランド層42とグランド層43とがビア46によって接続されている。このような構成により、放電用導電部44を形成するためのメタルマスクの形状等に起因して、上記隙間Mの形状をなすように放電用導電部44を設けることができない場合に(即ち、1つの放電用導電部44でスイッチ72を取り囲むことができない場合に)、複数の放電用導電部44の間を有効に活用することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、グランド層42上に接地用接続部47が設けられ、導体板5に接地用接続部47が接触することにより、グランド層42と導体板5とが電気的に接続されている。即ち、グランド層42と導体板5とを電気的に接続するために、導体板5に、グランド層42上に設けられた接地用接続部47が接触する構成となっている。
【0042】
接地用接続部47は、グランド層42を導体板5と電気的に接続する箇所においてグランド層42上に設けられた導体からなり、例えば、放電用導電部44と同様にはんだペーストにより形成されている。プリント配線板4の下面4bに設けられた接地用接続部47は、ビア45を介して、プリント配線板4の上面4aに設けられたグランド層43と電気的に接続されている。また、グランド層42上に設けられた接地用接続部47は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所の中心Cから所定間隔を空けて設けられており、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲むように複数設けられている。
【0043】
本実施形態の投写型映像表示装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)放電用導電部44とグランド層42を電気的に接続するためのビア45が複数設けられ、少なくとも2つ以上のビア45を介して放電用導電部44とグランド層42とが電気的に接続されている。従って、放電用導電部44を多点接続によりグランド層42に接地することができるため、放電用導電部44とグランド層42との間のインピーダンスを確実に低下させることができ、その結果、静電気対策の信頼性を向上させることができる。
【0044】
(2)プリント配線板4には電子部品であるスイッチ72が設けられ、複数のビア45が、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲むように設けられている。このため、スイッチ72を取り囲む複数のビア45のうちスイッチ72の最も近くに設けられたビア45を介して放電用導電部44とグランド層42とが接続されることにより、放電用導電部44とグランド層42との間のインピーダンスを確実に低下させることができる。その結果、静電気対策の信頼性をより向上させることができる。
【0045】
(3)プリント配線板4は、放電用導電部44が設けられる他のグランド層43を備え、放電用導電部44及びグランド層43は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所から、所定間隔を空けて設けられている。このため、放電用導電部44とスイッチ72との間のインピーダンス、及びグランド層43とスイッチ72との間のインピーダンスを高めることができ、相対的に放電用導電部44とグランド層42との間のインピーダンスを低下させることができる。その結果、静電気対策の信頼性をより一層向上させることができる。
【0046】
(4)グランド層42は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所の中心Cから所定間隔を空けて設けられている。このような構成によれば、ビア49とグランド層42との間のインピーダンスを高めることができ、グランド層42を介する放電用導電部44と導体板5との間のインピーダンスを相対的に低下させることを図ることができる。
【0047】
(5)投写型映像表示装置1は、スイッチ72を押すための押しボタン71を備え、筐体3と押しボタン71とにより形成される隙間Mの延長線上に放電用導電部44が設けられ、プリント配線板4の厚み方向Tにおいて隙間Mと放電用導電部44が対向している。このため、筐体3と押しボタン71との隙間Mから放電用導電部44へ静電気を放電し易くすることができる。
【0048】
(6)放電用導電部44は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲むように複数設けられ、複数の放電用導電部44の間にビア46が設けられている。従って、はんだペーストを用いて放電用導電部44を形成するためのメタルマスク(不図示)の形状に起因して、1つの放電用導電部44でスイッチ72を取り囲むことができない場合には、上記のように複数の放電用導電部44の間を有効に活用することができる。即ち、複数の放電用導電部44の間にビア46が形成されていない場合に比し、放電用導電部44のインピーダンスを確実に低下させることができる。
【0049】
(7)放電用導電部44の形状は、プリント配線板4の厚み方向Tから見て、略長方形である。このため、放電用導電部44の形状がプリント配線板4の厚み方向Tから見て円形である場合に比し、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲む周方向(本実施形態においては円周方向)について、放電用導電部44の面積を大きくすることを容易に行うことができる。
【0050】
(8)投写型映像表示装置1は、筐体3に収容されるとともに接地される導体板5を備え、グランド層42上には接地用接続部47が設けられ、導体板5に接地用接続部47が接触することにより、グランド層42と導体板5とが電気的に接続されている。このため、グランド層42の一部にカバー層が設けられている場合であっても、グランド層42上に設けられた接地用接続部47が、カバー層に比し、導体板5へ向けて突出していることにより、グランド層42と導体板5とが確実に接続される。従って、放電用導電部44のインピーダンスをより一層確実に低下させることができる。その結果、静電気対策の信頼性をさらにより一層向上させることができる。
【0051】
また、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。例えば、以下に示すように変更して実施することもできる。
【0052】
・図7に示すように、放電用導電部44が、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲む連続した形状をなすように設けられていてもよい。この場合、放電用導電部44は、スイッチ72等の電子部品をマスクしたフロー工程において形成することができる。また、カバー層を除去してグランド層43を露出させることにより、グランド層43の一部を、放電用導電部44として形成することもできる。このように構成すれば、1つの放電用導電部44でスイッチ72を取り囲むことができ、スイッチ72を取り囲む放電用導電部44が不連続である場合に比し、放電用導電部44の面積を大きくすることができる。
【0053】
・上記実施形態においては、導体板5に接地用接続部47が接触することにより、グランド層42と導体板5とが電気的に接続されていたが、十分にカバー層を除去して導体板5にグランド層42が直接接触するように構成してもよい。
【0054】
・上記実施形態においては、接地用接続部47は、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲むように複数設けられていたが、図8に示すように、接地用接続部47が、スイッチ72がプリント配線板4に設けられる箇所を取り囲む連続した形状をなすように設けられていてもよい。このような接地用接続部47は、上述のごとくカバー層を除去してグランド層42を露出させることにより形成することができ、また、フロー工程において形成することもできる。このように構成すれば、接地用接続部47が不連続である場合に比し、接地用接続部47と導体板5との接触部の面積を大きくすることができ、接触部のインピーダンスを確実に低下させることができる。
【0055】
・上記実施形態においては、例えばはんだペーストにより形成された接地用接続部47が導体板5に接触することにより、グランド層42と導体板5とが電気的に接続されていたが、接地用接続部47の代わりに導電性を有する部品(不図示)を用いて、この部品を介してグランド層42と導体板5とを電気的に接続するように構成してもよい。
【0056】
・上記実施形態においては、グランド層42と、投写型映像表示装置1の基準電位となる導体6に接続された導体板5とを互いに接触させることにより接続していたが、この接続を、ビス、ワッシャー、ナット等の固定用の部品(不図示)を用いてもよい。
【0057】
・上記実施形態においては、グランド層42を、投写型映像表示装置1の基準電位となる導体6に接続された導体板5に接続することにより、接地していたが、この導体板5を用いずに、グランド層42と基準電位となる導体6とを導線(不図示)で接続してもよい。この場合、導線とグランド層42との接触、及び導線と導体6との接触に、ビス、ワッシャー、ナット等の固定用の部品(不図示)を用いてもよい。
【0058】
・上記実施形態においては、グランド層42を接触させる導体板5と、投写型映像表示装置1の基準電位となる導体6とは別個の導体であったが、これらが一体に形成されていてもよい。
【0059】
・上記実施形態においては、複数のビア45は円周をなすように設けられていたが、多角形の外周をなすように複数のビア45が設けられていてもよい。即ち、筐体3と押しボタン71とにより形成される隙間Mに応じて、スイッチ72を取り囲む複数のビア45の配置を適宜変更してもよい。
【0060】
・上記実施形態においては、グランド層43を備えていたが、放電用導電部44を少なくとも2つ以上のビア45を介してグランド層42に接続することができれば、グランド層43を介さずに、1つの放電用導電部44を2つ以上のビア45に接続するようにしてもよい。
【0061】
・上記実施形態においては、本発明を投写型映像表示装置1に適用した場合について説明したが、テレビ受信機やオーディオ機器等のその他の電子機器についても上記実施形態に準じた態様をもって本発明を適用することはできる。その場合にも上記実施形態に準じた作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る電子機器である投写型映像表示装置の外観を示す斜視図。
【図2】同実施形態に係る投写型映像表示装置の断面を説明するための断面図。
【図3】同実施形態に係るプリント配線板を示す図であって、スイッチが実装される面を示すプリント配線板の上面図。
【図4】同実施形態に係るプリント配線板を示す図であって、スイッチが実装される面の反対側を示すプリント配線板の下面図。
【図5】図3に示すA−A部分の断面図。
【図6】図3に示すB−B部分の断面図。
【図7】その他の実施形態に係るプリント配線板を示す図であって、スイッチが実装される面を示すプリント配線板の上面図。
【図8】その他の実施形態に係るプリント配線板を示す図であって、スイッチが実装される面の反対側の面を示すプリント配線板の下面図。
【符号の説明】
【0063】
C…スイッチが設けられる箇所の中心、M…隙間、S…面方向、T…厚み方向、1…投写型映像表示装置(電子機器)、2…投写レンズ、3…筐体、4…プリント配線板、4a…上面、4b…下面、5…導体板、7…押しボタンスイッチ、31…貫通孔、32…配線板支持部、41…基板、42,43…グランド層、44…放電用導電部、45,46…ビア、47…接地用接続部、48…導電層、49…ビア、71…押しボタン、72…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、この筐体に収容されるプリント配線板とを備え、前記プリント配線板は、基板と、この基板に設けられたグランド層と、露出する静電気対策用の放電用導電部と、前記基板に設けられたビアとを備える電子機器であって、
前記放電用導電部と前記グランド層を電気的に接続するための前記ビアが複数設けられ、少なくとも2つ以上の前記ビアを介して前記放電用導電部と前記グランド層とが電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記プリント配線板には電子部品であるスイッチが設けられ、複数の前記ビアが、前記スイッチが前記プリント配線板に設けられる箇所を取り囲むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記プリント配線板は、前記放電用導電部が設けられる他のグランド層を備え、前記放電用導電部及び前記他のグランド層は、前記スイッチが前記プリント配線板に設けられる箇所から、所定間隔を空けて設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記スイッチを押すための押しボタンをさらに備え、
前記筐体と前記押しボタンとにより形成される隙間の延長線上に前記放電用導電部が設けられ、前記プリント配線板の厚み方向において前記隙間と前記放電用導電部が対向していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記放電用導電部は、前記スイッチが前記プリント配線板に設けられる箇所を取り囲むように複数設けられ、複数の前記放電用導電部の間に前記ビアが設けられていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記放電用導電部の形状は、プリント配線板の厚み方向から見て、略長方形であることを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記放電用導電部は、前記スイッチが前記プリント配線板に設けられる箇所を取り囲む連続した形状をなすように設けられていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記筐体に収容されるとともに接地される導体板をさらに備え、
前記グランド層上には接地用接続部が設けられ、前記導体板に前記接地用接続部が接触することにより、前記グランド層と前記導体板とが電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−135230(P2010−135230A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311366(P2008−311366)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】