説明

電子機器

【課題】強度を維持しつつ軽量化および薄型化を図ること。
【解決手段】電子機器は、第1筐体と、第2筐体と、連結部とを備える。連結部は、第1筐体と第2筐体とを可動自在に連結する。また、連結部は、可動部材と、一対のレール部材と、突起部とを有する。可動部材は、第1筐体に固定される。一対のレール部材は、第2筐体に固定され、可動部材のアーム部を摺動自在に収容する。突起部は、可動部材から突設され、一対のレール部材の間に介在する。また、第2筐体は、移動規制凹部を有する。移動規制凹部は、一対のレール部材の間に介在する状態で第1筐体との対向面に設けられ、突起部を移動自在に収容するとともに、突起部の移動範囲を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などの電子機器として、操作側の固定側筐体と表示側の可動側筐体とを連結部を介して連結し、回転やスライドなどの可動を可能にしたものが広く知られている。このような連結部を備えた従来の電子機器の構成例を図10および図11に示す。図10は、従来の電子機器の外観斜視図である。図11は、従来の電子機器の斜視分解図である。
【0003】
図10および図11に示すように、従来の電子機器は、操作側の固定側筐体210と表示側の可動側筐体230とを連結部250を介して可動自在に連結する。固定側筐体210は、可動側筐体230と対向する固定側フロントケース212と、固定側フロントケース212との間に回路基板214を介在させつつ固定側フロントケース212に取り付けられる固定側リアケース216とを有する。可動側筐体230は、固定側筐体210と対向する可動側リアケース232と、可動側リアケース232との間に回路基板234を介在させつつ可動側リアケース232に取り付けられる可動側フロントケース236とを有する。
【0004】
連結部250は、固定側フロントケース212の可動側筐体230との対向面に固定された可動部材252と、可動側リアケース232の固定側筐体210との対向面に固定されたレールプレート254とを有する。可動部材252は、固定側フロントケース212に装着されるベースプレート256と、ベースプレート256に回動自在に支持されるスイングプレート258とを有する。ベースプレート256のスイングプレート258側には、突起部260が突設され、突起部260は、スイングプレート258の弧状の貫通孔258aを挿通してレールプレート254側へ延出する。レールプレート254は、スイングプレート258のアーム部258bを摺動自在に収容する一対のレール部262と、一対のレール部262を繋ぐ板金部264と、一対のレール部262の間に介在する状態で板金部264に設けられた孔部266とを有する。孔部266は、突起部260を移動自在に収容するとともに、突起部260の移動範囲を規制する。
【0005】
そして、電子機器の可動動作が実行される場合には、外力を受けた可動側筐体230が固定側筐体210に対して移動し、孔部266により規制された範囲内で突起部260が孔部266を移動する。これにより、固定側筐体210に対して可動側筐体230をスライドまたは回動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−239592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の電子機器では、軽量化が阻害されるという問題がある。例えば、図10および図11に示した従来の電子機器では、筐体間を連結する連結部250が金属製のレールプレート254を有するため、レールプレート254の分だけ重量が増大してしまう。特に、レールプレート254が比較的に表面積の大きい板金部264により一対のレール部262を繋いでいるため、レールプレート254全体の重量が増大する傾向にある。
【0008】
また、重量の増大を抑えるため、金属製のレールプレート254を樹脂製のレールプレートに置換する構成も考えられる。ただし、このような構成では、金属製のレールプレート254と同等の強度を樹脂製のレールプレートに付与するために厚み方向のサイズが増大する可能性がある。厚み方向のサイズが増大すると、装置の薄型化が阻害される。
【0009】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであり、強度を維持しつつ軽量化および薄型化を図ることができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の開示する電子機器は、第1筐体と、第2筐体と、連結部とを備える。連結部は、前記第1筐体と前記第2筐体とを可動自在に連結する。また、連結部は、可動部材と、一対のレール部材と、突起部とを有する。可動部材は、前記第1筐体に固定される。一対のレール部材は、前記第2筐体に固定され、前記可動部材のアーム部を摺動自在に収容する。突起部は、前記可動部材から突設され、前記一対のレール部材の間に介在する。また、第2筐体は、移動規制凹部を有する。移動規制凹部は、前記一対のレール部材の間に介在する状態で前記第1筐体との対向面に設けられ、前記突起部を移動自在に収容するとともに、前記突起部の移動範囲を規制する。
【発明の効果】
【0011】
本願の開示する電子機器の一つの態様によれば、強度を維持しつつ軽量化および薄型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施例に係る携帯電話機の閉状態を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、本実施例に係る携帯電話機の開状態を示す外観斜視図である。
【図3】図3は、本実施例に係る携帯電話機の回転状態を示す外観斜視図である。
【図4】図4は、本実施例に係る携帯電話機の分解斜視図である。
【図5】図5は、可動側筐体に設置された連結部を固定側筐体から見た斜視図である。
【図6】図6は、図5に示した連結部の分解斜視図である。
【図7】図7は、携帯電話機の移動規制凹部周辺の模式的な断面図である。
【図8】図8は、ローラ部材の拡大斜視図である。
【図9】図9は、一対のレール部材とアンテナとの関係を説明するための図である。
【図10】図10は、従来の電子機器の外観斜視図である。
【図11】図11は、従来の電子機器の斜視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する電子機器の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例では、本願の開示する電子機器について携帯電話機を例にして説明するが、本願の開示する電子機器は、パソコン、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯ゲーム機など携帯電話機以外の各種の電子機器として実現することもできる。
【実施例】
【0014】
まず、本実施例に係る携帯電話機100の構成について説明する。図1は、本実施例に係る携帯電話機100の閉状態を示す外観斜視図である。図2は、本実施例に係る携帯電話機100の開状態を示す外観斜視図である。図3は、本実施例に係る携帯電話機100の回転状態を示す外観斜視図である。図4は、本実施例に係る携帯電話機100の分解斜視図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、携帯電話機100は、操作部側の筐体である固定側筐体110と、表示部側の筐体である可動側筐体130とを有する。固定側筐体110には、操作ボタンを有する操作部111が設けられている。可動側筐体130には、表示パネル131や音声通話用のマイク133およびスピーカ135が設けられている。
【0016】
また、固定側筐体110と可動側筐体130とは、図4に示した連結部150を介して相対的に可動自在に連結されている。そして、携帯電話機100は、連結部150を用いて固定側筐体110に対して可動側筐体130をスライドさせたり回転させたりすることで、図1に示す閉状態と、図2に示す開状態と、図3に示す回転状態のいずれかへ状態を変化させることができる。
【0017】
図1に示す閉状態は、固定側筐体110と可動側筐体130とが最大の重なり範囲で重なった状態である。この閉状態では、携帯電話機100の長手方向に関する全長が最も短くなる。このため、携帯電話機100は、例えば、持ち運びの際や、操作部111を用いなくても実行可能な通話履歴の閲覧等の簡易な機能を利用する場合に、閉状態に設定される。
【0018】
図2に示す開状態は、固定側筐体110に対して可動側筐体130をスライドさせることにより固定側筐体110と可動側筐体130とが最小の重なり範囲で重なった状態である。この開状態では、携帯電話機100の長手方向に関する全長が最も長くなる。また、この開状態では、固定側筐体110の操作部111が露出した状態となる。このため、携帯電話機100は、例えば、通話時や操作部111を用いた送信メールの作成などの操作を行う場合に、開状態に設定される。
【0019】
図3に示す回転状態は、固定側筐体110に対して可動側筐体130を90°回転した状態である。この回転状態は、表示パネル131が横長の状態となる。このため、携帯電話機100は、例えば、動画の視聴、WEBページの閲覧などを行うときに、回転状態に設定される。
【0020】
図4に示すように、固定側筐体110は、可動側筐体130と対向する固定側フロントケース112と、固定側フロントケース112との間に回路基板114を介在させつつ固定側フロントケース112に取り付けられる固定側リアケース116とを有する。固定側フロントケース112の可動側筐体130との対向面は、略長方形に形成される。固定側フロントケース112の可動側筐体130との対向面における一方の短辺側には、操作部111が配置される。また、固定側フロントケース112の可動側筐体130との対向面における他方の短辺側には、連結部150の後述するベースプレート156を収容する凹部113が形成される。
【0021】
可動側筐体130は、固定側筐体110と対向する可動側リアケース132と、可動側リアケース132との間に回路基板134を介在させつつ可動側リアケース132に取り付けられる可動側フロントケース136とを有する。
【0022】
連結部150は、固定側筐体110と可動側筐体130との間に介設される。連結部150は、固定側筐体110と可動側筐体130とをスライド自在に連結するとともに、これらを回転自在に連結する。
【0023】
続いて、連結部150および可動側筐体130の詳細を説明する。図5は、可動側筐体130に設置された連結部150を固定側筐体110から見た斜視図である。図6は、図5に示した連結部150の分解斜視図である。図4〜図6に示すように、連結部150は、可動部材152と、一対のレール部材154とを有する。
【0024】
可動部材152は、金属により形成され、固定側筐体110の可動側筐体130との対向面に固定される。可動部材152は、固定側フロントケース112の凹部113に収容されてネジ止め等により固定側筐体110に固定されるベースプレート156と、ベースプレート156に回動自在に支持されるスイングプレート158とを有する。ベースプレート156のスイングプレート158側には、突起部160が突設される。突起部160は、スイングプレート158に設けられた弧状の貫通孔158aを挿通して、一対のレール部材154の間に介在する。スイングプレート158には、スイングプレート158と反対側に伸延する一対のアーム部158bが設けられる。
【0025】
一対のレール部材154は、金属により形成され、可動側筐体130の固定側筐体110との対向面に固定される。可動側リアケース132の固定側筐体110との対向面は、略長方形に形成され、2つの長辺側に沿って一対のレール部材154を収容する凹部137が形成される。一対のレール部材154は、可動側リアケース132の凹部137に収容されてネジ止め等により可動側筐体130の固定側筐体110との対向面に固定される。また、一対のレール部材154は、可動部材152の一対のアーム部158bをそれぞれ摺動自在に収容する。
【0026】
図5および図6に示すように、可動側リアケース132の固定側筐体110との対向面には、一対のレール部材154の間に介在する状態で移動規制凹部139が形成される。移動規制凹部139は、固定側筐体110に対して可動側筐体130をスライドする方向および固定側筐体110に対して可動側筐体130を回転する方向に沿って略L字状に形成される。
【0027】
図7は、携帯電話機100の移動規制凹部139周辺の模式的な断面図である。図7に示すように、移動規制凹部139は、一対のレール部材154の間に介在する突起部160を移動自在に収容するとともに、突起部160の移動範囲を規制する。本実施例の移動規制凹部139は、固定側筐体110に対して可動側筐体130をスライドする方向および固定側筐体110に対して可動側筐体130を回転する方向に沿って突起部160の移動範囲を規制する。
【0028】
携帯電話機100の状態が図1〜図3に示す状態のいずれかに変化する場合には、外力を受けた可動側筐体130が固定側筐体110に対して移動し、移動規制凹部139により規制された範囲内で突起部160が移動規制凹部139を移動する。
【0029】
また、突起部160の先端には、図8に示すローラ部材161が装着される。図8は、ローラ部材161の拡大斜視図である。ローラ部材161は、突起部160が移動規制凹部139を移動する場合に、移動規制凹部139の内側面に当接して回転する。これにより、移動規制凹部139により規制された範囲内で突起部160が移動規制凹部139を移動する場合に、突起部160の移動が円滑化される。
【0030】
上述してきたように、本実施例の携帯電話機100では、固定側筐体110に固定された可動部材152のアーム部158bを摺動自在に収容する一対のレール部材154を可動側筐体130に固定する。また、本実施例の携帯電話機100では、一対のレール部材154間に介在する可動側筐体130の移動規制凹部139に可動部材152の突起部160を移動自在に収容する。このため、本実施例によれば、筐体間を連結する従来の連結部が有するレールプレートを省略することができ、レールプレートに対応する重量および厚み方向のサイズの増大を抑えることができる。また、本実施例によれば、重量の増大を抑えるために樹脂製のレールプレートを採用することを不要化することができる。つまり、本実施例によれば、強度を維持しつつ軽量化および薄型化を測ることができる。
【0031】
また、本実施例の携帯電話機100では、一対のレール部材154を可動側筐体130に固定することにより、アンテナの性能の劣化を抑えることができるという副次的な効果を得ることもできる。
【0032】
以下では、かかる副次的な効果について説明する。図9は、一対のレール部材154とアンテナとの関係を説明するための図である。図9に示すように、固定側筐体110の内部の回路基板114には、アンテナ115が実装されている。アンテナ115は、給電点に接続され、給電点から電流の供給を受けて電波を放出する。アンテナ115から放出される電波は、導電性の可動部材152および一対のレール部材154に高周波の電流を発生させる。
【0033】
ここで、可動部材152および一対のレール部材154に流れる電流の位相とアンテナ115に流れる電流の位相とが逆関係になると、可動部材152および一対のレール部材154に流れる電流によってアンテナ115に流れる電流が相殺される。アンテナ115に流れる電流が相殺されると、アンテナ115の性能が劣化してしまう。
【0034】
そこで、アンテナ115の性能の劣化を回避するために、固定側筐体110の内部の回路基板114には、位相調整回路117が実装されている。位相調整回路117は、金属製の可動部材152に電気的に接続され、可動部材152に流れる電流の位相152aをアンテナ115に流れる電流の位相115aと一致するように調整する。これにより、可動部材152に流れる電流によってアンテナ115に流れる電流が相殺されることを抑制することができる。
【0035】
さらに、本実施例の携帯電話機100では、一対のレール部材154を可動側筐体130に固定することにより、比較的に表面積の大きい板金部により一対のレール部を繋ぐ従来のレールプレートを不要化している。これにより、一対のレール部材154と可動部材152との間の結合容量を従来のレールプレートよりも縮減することができるため、一対のレール部材154に流れる電流を従来のレールプレートよりも縮減することができる。
【0036】
このように、本実施例の携帯電話機100では、固定側筐体110の内部の回路基板114に位相調整回路117を実装することにより、アンテナ115に流れる電流が相殺されることを抑制する。さらに、本実施例の携帯電話機100では、一対のレール部材154を可動側筐体130に固定することにより、一対のレール部材154に流れる電流を従来のレールプレートよりも縮減する。その結果、本実施例によれば、アンテナの性能の劣化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0037】
100 携帯電話機
110 固定側筐体
111 操作部
112 固定側フロントケース
113 凹部
114 回路基板
115 アンテナ
115a 位相
116 固定側リアケース
117 位相調整回路
130 可動側筐体
131 表示パネル
132 可動側リアケース
133 マイク
134 回路基板
135 スピーカ
136 可動側フロントケース
137 凹部
139 移動規制凹部
150 連結部
152 可動部材
152a 位相
154 レール部材
156 ベースプレート
158 スイングプレート
158a 貫通孔
158b アーム部
160 突起部
161 ローラ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを可動自在に連結する連結部と
を備え、
前記連結部は、
前記第1筐体に固定された可動部材と、
前記第2筐体に固定され、前記可動部材のアーム部を摺動自在に収容する一対のレール部材と、
前記可動部材から突設され、前記一対のレール部材の間に介在する突起部と
を有し、
前記第2筐体は、
前記一対のレール部材の間に介在する状態で前記第1筐体との対向面に設けられ、前記突起部を移動自在に収容するとともに、前記突起部の移動範囲を規制する移動規制凹部
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記連結部は、
前記突起部に装着され、前記突起部が前記移動規制凹部を移動する場合に前記移動規制凹部の内側面に当接して回転するローラ部材
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1筐体は、
給電点を有する回路基板と、
前記給電点に接続されたアンテナと、
前記回路基板に実装されるとともに、導電性の前記可動部材に接続され、前記可動部材に流れる電流の位相を前記アンテナに流れる電流の位相と一致するように調整する位相調整回路と
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−199713(P2012−199713A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61766(P2011−61766)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】