電子的ぶれ補正装置
【課題】 撮影者の技能に依ることなく、ぶれが補正された、所定以上の大きさの画像の有効領域を確保することができる電子的ぶれ補正装置を提供する。
【解決手段】 画像のぶれを検出する角速度センサ19,20と、時間的に連続して複数の画像を撮影し、撮影した複数画像の相互のぶれを角速度センサ19,20により検出されたぶれ量に応じて補正し、補正した複数の画像を合成して一画像を生成する固体撮像素子1と、連続して撮影される複数の画像全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように上記固体撮像素子1による連続撮影の回数を制御するCPU7と、を備えたデジタルカメラに適用された電子的ぶれ補正装置。
【解決手段】 画像のぶれを検出する角速度センサ19,20と、時間的に連続して複数の画像を撮影し、撮影した複数画像の相互のぶれを角速度センサ19,20により検出されたぶれ量に応じて補正し、補正した複数の画像を合成して一画像を生成する固体撮像素子1と、連続して撮影される複数の画像全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように上記固体撮像素子1による連続撮影の回数を制御するCPU7と、を備えたデジタルカメラに適用された電子的ぶれ補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的に撮影される画像のぶれを補正する電子的ぶれ補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いて静止画像や動画像を撮像する撮像装置は、手で把持して撮影するように構成されたものが少なくない。このような撮像装置において、例えば被写体の輝度が低い場合には、シャッタ速度が遅くなるために、手ぶれが発生し易くなることが知られている。また、車載カメラ等においては、走行時の振動により、同様にぶれが発生する可能性があることが知られている。
【0003】
こうしたぶれを補正するための技術は、従来より種々のものが提案されており、振動に応じて光学系を移動する光学式ぶれ補正、振動に応じて固体撮像素子を移動するセンサシフト式ぶれ補正、撮像した画像を処理することによりぶれを補正する電子式ぶれ補正などがある。
【0004】
これらの内の電子式ぶれ補正では、画像切り出し位置をぶれに応じてフレーム毎に異ならせることにより、画像内の被写体位置を一定に保つようにした動画対応のものがあるが、この技術は1フレーム内の画像のぶれを防止するものではないために、静止画には適用することができない。
【0005】
これに対して、静止画に適用可能な電子式ぶれ補正も、種々のものが提案されている。
【0006】
例えば、特開2001−45359号公報には、撮像素子から複数の画像を連続して読み出して画像メモリに記憶し、その後にこれら複数の画像の相互のぶれを補正して合成することにより、ぶれの補正された画像を生成する撮像装置が記載されている。
【0007】
また、特開2005−198148号公報には、撮像素子内に画像を水平および垂直方向に転送するための電荷転送部を設け、撮像した第1画像と上記電荷転送部に転送した第2画像との相対的なぶれを補正して、これら第1画像と第2画像とを合成することによりぶれが補正された画像を生成する固体撮像素子が記載されている。
【特許文献1】特開2001−45359号公報
【特許文献2】特開2005−198148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した各公報に記載された技術は、複数の画像の相対的な位置を調整してから合成を行い、1つの画像を得るものである。ところで、n(nは正の整数)枚の時分割撮影した画像の相互のぶれを補正してから1つの合成画像を生成するときには、生成した合成画像の端部に、合成された画像の枚数がn枚に満たない領域が発生することになる。こうしたn枚に満たない領域は、n枚が合成された領域に比べて輝度が段階的に小さくなるために、切り捨てるか、あるいは補正処理をする必要がある。このn枚に満たない領域は、通常は、画像全体の大きさに比べて無視できる程度に狭く、また補正には複雑な処理を要することから、切り捨てる方法を採用するのが簡単で実用的である。しかし、カメラのように不特定多数のユーザーが使用する機器においては、撮影者の技能に応じてぶれが非常に大きくなり、有効な画像領域が許容できないほど狭くなってしまう場合が生じることも考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、撮影者の技能に依ることなく、ぶれが補正された、所定以上の大きさの画像の有効領域を確保することができる電子的ぶれ補正装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明による電子的ぶれ補正装置は、連続して複数の画像を撮影する撮影手段と、上記画像のぶれを検出するぶれ検出手段と、上記連続して撮影された複数の画像の内の連続する所定数の画像の全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように連続撮影の回数を制御する撮影回数制御手段と、上記撮影回数制御手段の制御に基づき所定回数撮影された複数画像の相互のぶれを補正するぶれ補正手段と、上記ぶれ補正手段により補正された画像を合成する画像合成手段と、を具備したものである。
【0011】
また、第2の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第1の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記撮影手段が、マトリクス状に配列された複数の画素と、該画素により生成された第1画像を保持するレジスタと、を有する撮像素子を含んで構成されたものであり、上記ぶれ補正手段は、上記画素により生成された第2画像と上記レジスタに保持された第1画像との相対的なぶれを打ち消すように上記第1画像と上記第2画像との相対的な位置を移動させるものであり、上記画像合成手段は、上記ぶれ補正手段により補正された、上記第1画像と上記第2画像とを合成するものである。
【0012】
さらに、第3の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第1の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記撮影回数制御手段が、上記連続して撮影される複数の画像の全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように、撮影回数を制御するものである。
【0013】
第4の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第1の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記撮影回数制御手段が、上記連続して撮影される複数の画像の全体の露光時間が、撮影レンズの焦点距離の逆数に予め決められた所定の係数を乗じて得られる露光時間以下になるように、撮影回数を制御するものである。
【0014】
第5の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第2の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記連続して撮影される画像の数が予め決められた所定数に達しないときに上記画像合成手段により合成された画像を増幅する増幅手段をさらに具備したものである。
【0015】
第6の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第1の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記撮像手段が、マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子と、この撮像素子の出力信号を受けてデジタル化された複数の画像を生成する信号処理手段と、上記信号処理手段により処理された画像を記憶する記憶手段と、を有して構成されたものであり、上記ぶれ補正手段は、上記記憶手段に記憶された画像のぶれを補正するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子的ぶれ補正装置によれば、撮影者の技能に依ることなく、ぶれが補正された、所定以上の大きさの画像の有効領域を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施形態を詳細に説明する前に、まず、ぶれを補正するための原理について簡単に説明する。
【0018】
例えば、被写体を測光して得られた適正露光時間(全露光時間)が1/15秒であるとする。そして、この1/15秒の露光時間(シャッタ速度)ではぶれが発生するものとする。これに対して、露光時間(シャッタ速度)が1/125秒であるときには、ぶれが発生しないか、もしくは発生するぶれが実質的に無視し得るものとする。このようなケースにおいて、上述した全露光時間1/15秒を、1/125秒の露光時間に時分割して、該時分割撮影により8回の撮影を行い、この時分割撮影して得られた8枚の画像を合成(加算)することにより1/15秒の適正露光時間の1枚の画像を得るものである。ただし、上記1/125秒で撮影した時分割撮影による画像を単純に合成したのではぶれは補正されないために、各時分割画像のぶれを相互に補正してから合成する。そして、この合成した画像の内の、全ての時分割画像が重複する領域が有効な領域となる。しかし、ぶれが大きすぎると、この有効領域が狭くなってしまう。そこで、有効領域が余り狭くならないように、ぶれ量が所定の許容量以上であるときには、この許容レベルを超える画像について合成対象から除外する。そして、1枚以上の時分割画像を除外して得られる合成画像は、そのままでは信号レベルが所定レベルに達しないものとなってしまうために、除外した時分割画像の枚数に応じて、つまり合成した時分割画像の枚数に応じて、画像を増幅し適切な信号レベルを得る。
【0019】
以下に説明する実施形態1は、このようなぶれ補正と時分割画像の合成とを、撮像素子内で高速に行うものとなっている。また、以下に説明する実施形態2は、上述したようなぶれ補正と時分割画像の合成とを、時分割画像を撮像素子から読み出してデジタル信号に変換した後に行うものとなっている。
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
[実施形態1]
図1から図13は本発明の実施形態1を示したものであり、図1はデジタルカメラの主として電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態は、デジタルカメラに電子的ぶれ補正装置を適用したものとなっている。
【0022】
このデジタルカメラは、固体撮像素子(以下では適宜、撮像素子と略称する)1と、相関二重サンプリング回路(CDS:Correlated Double Sampling)2と、ゲインコントロールアンプ(AMP)3と、A/D変換器4と、タイミングジェネレータ(TG)5と、シグナルジェネレータ(SG)6と、CPU7と、情報処理部8と、DRAM9と、圧縮伸張部10と、記録媒体11と、液晶表示部12と、インタフェース部13と、レンズ駆動系14と、撮影レンズ15と、絞り駆動系16と、絞り17と、第1レリーズスイッチ18aおよび第2レリーズスイッチ18bと、角速度センサ19および角速度センサ20と、A/D変換器21およびA/D変換器22と、距離検出部23と、CPU7に内蔵されたEEPROM24と、撮影モード設定部25と、撮影条件設定部26と、を含んでいる。
【0023】
撮影レンズ15は、被写体像を撮像素子1の撮像面へ結像するための撮像光学系であり、撮影手段を構成している。
【0024】
絞り17は、この撮影レンズ15からの結像光束の通過範囲を規定することにより光量の調整を行うための光学絞りであり、撮像光学系の一部であって、撮影手段を構成している。
【0025】
撮像素子1は、絞り17を介して撮影レンズ15により結像された被写体像を、光電変換して電気信号として出力するものであり、撮影手段を構成している。ここに、図6は撮像素子1の第1の構成例を、図7は撮像素子1の第2の構成例を、それぞれ示している。図6,図7に示す撮像素子1は、何れも、マトリクス状に配列された多数のフォトダイオードと、ぶれを許容し得るような高速の露光制御によって上記フォトダイオードにより生成された第1画像を保持する第1レジスタとしての水平転送CCDまたは垂直転送CCDと、上記第1画像に続いて撮像される第2画像を保持する上記第1レジスタとは異なる第2レジスタとしての水平転送CCDまたは垂直転送CCDと、第1レジスタと第2レジスタとに保持された2つの画像の相対的なぶれを打ち消すように、これら2つの画像を上記第1レジスタ内、および上記第2レジスタ内でシフトした後に、上記2つの画像を合成し、この合成した画像を上記第1レジスタまたは上記第2レジスタに保持するという動作を繰り返し実行して、撮像素子1内においてぶれの補正された画像を生成するものである。このような撮像素子1のより詳細な構成や作用については、後で説明する。
【0026】
TG5は、この撮像素子1を駆動するための転送パルスを供給するものであり、撮影手段、信号処理手段を構成している。
【0027】
CDS2は、TG5から供給されるサンプルホールドパルスに従って駆動され、撮像素子1から出力される画像信号に相関二重サンプリング等の処理を行うことによりリセットノイズを除去するものであり、撮影手段、信号処理手段を構成している。
【0028】
SG6は、CPU7の制御に基づき、同期信号を生成してTG5へ出力するものであり、撮影手段、信号処理手段を構成している。
【0029】
ゲインコントロールアンプ(AMP)3は、CDS2から出力されるアナログの信号を増幅する増幅手段であり、撮影手段、信号処理手段を構成している。このゲインコントロールアンプ(AMP)3の増幅率は、ISO(International Organization for Standardization)感度Svに応じた増幅率に設定されるようになっていて、つまりゲインコントロールアンプ(AMP)3は、ISO感度変更部となっている。また、ゲインコントロールアンプ(AMP)3の増幅率は、時分割撮影された画像の数が規定数に達しないときに、その不足分を補うために合成された画像を増幅する際にも用いられる。
【0030】
A/D変換器4は、TG5から供給される信号に従って、ゲインコントロールアンプ(AMP)3から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換部であり、撮影手段、信号処理手段を構成している。
【0031】
情報処理部8は、A/D変換器4から出力される画素信号を処理して、画像データを生成するものであり、撮影手段、ぶれ補正手段、画像合成手段、信号処理手段を構成している。この情報処理部8は、撮像素子1から出力された画像データの中からぶれが適正に補正された画像データを抽出する機能を有する有効領域抽出部を含んでいる。さらに、この情報処理部8は、画像データを一時的に記憶するための記憶手段たるバッファメモリ8aを備えて構成されている。
【0032】
DRAM9は、情報処理部8から出力される画像データを一時的に記憶するものであるとともに、記録媒体11から読み出された圧縮画像データを圧縮伸張部10により伸張して得られた画像データを一時的に記憶するものとなっている。なお、上述したバッファメモリ8aがDRAM9の機能を兼用するように構成しても構わない。
【0033】
圧縮伸張部10は、DRAM9に記憶されている画像データを圧縮するとともに、記録媒体11から読み出された圧縮画像データを伸張するものである。
【0034】
記録媒体11は、圧縮伸張部10により圧縮された画像データを記録する記録部であり、例えば不揮発性の記録媒体となっている。
【0035】
液晶表示部12は、情報処理部8から出力される画像データ、またはDRAM9から出力される伸張された画像データを表示するものである。この液晶表示部12は、各種の警告表示等を行う表示部を兼ねたものとなっている。
【0036】
インタフェース部13は、モニタやパーソナルコンピュータ等の外部装置とのデータの授受を行うための端子を含むインタフェースである。このインタフェース部13を介して、情報処理部8またはDRAM9から供給される画像データ等を外部装置へ出力することが可能であり、あるいは場合によっては、外部装置から画像データ等をデジタルカメラ内に取り込むことが可能となっている。
【0037】
レンズ駆動系14は、距離検出部23により検出された被写体距離に基づきCPU7から指令を受けることにより、撮影レンズ15を合焦位置へ駆動するものである。このような処理は、いわゆるオートフォーカス制御として公知のものである。なお、ここでは距離検出部23からの出力に基づきオートフォーカス制御を行っているが、CPU7が、DRAM9に記憶された1フレーム(1画面)分の画像データの輝度成分にハイパスフィルタなどを用いて高周波成分を抽出し、抽出した高周波成分の累積合成値を算出する等により高周波域側の輪郭成分等に対応したAF評価値を算出し、該AF評価値に基づいて焦点検出を行うようにしても構わない。
【0038】
絞り駆動系16は、DRAM9に記憶された画像データに基づき測光部たるCPU7が露出演算を行い、該CPU7からその結果に基づいた指令を受けることにより、絞り17を駆動して開口径を変更する絞り制御部である。このような処理は、いわゆるAE(自動露出)制御として公知のものである。
【0039】
角速度センサ19は、デジタルカメラを被写体側から見たときの左右の方向における右方向をX軸方向としたときに、このX軸方向を回転中心としてデジタルカメラを回転したときの角速度を検出するためのぶれ検出手段である。
【0040】
一方、角速度センサ20は、デジタルカメラの上下方向における上方向をY軸方向としたときに、このY軸方向を回転中心としてデジタルカメラを回転したときの角速度を検出するためのぶれ検出手段である。
【0041】
A/D変換器21は、角速度センサ19により検出された角速度を表すアナログ信号を、所定の時間間隔(サンプリング間隔)でデジタル信号に変換するものであり、ぶれ検出手段の一部である。
【0042】
同様に、A/D変換器22は、角速度センサ20により検出された角速度を表すアナログ信号を、所定の時間間隔(サンプリング間隔)でデジタル信号に変換するものであり、ぶれ検出手段の一部である。
【0043】
CPU7は、A/D変換器21により変換されたデジタル信号を時間積分する処理を行う。この時間積分されたデジタル信号は、カメラ本体の上記X軸を回転中心とする回転量に相当する。また、X軸周りの回転方向が右回りであるか左回りであるかは、角速度センサ19のアナログ出力信号が正であるかあるいは負であるかにより判別されるようになっている。
【0044】
同様に、CPU7は、A/D変換器22により変換されたデジタル信号を時間積分する処理を行う。この時間積分されたデジタル信号は、カメラ本体の上記Y軸を回転中心とする回転量に相当する。また、Y軸周りの回転方向が右回りであるか左回りであるかは、角速度センサ20のアナログ出力信号が正であるかまたは負であるかにより判別されるようになっている。
【0045】
第1レリーズスイッチ18aは、撮像動作を指示入力するための自動復帰型の2段スイッチでなるレリーズスイッチの1段目である。レリーズスイッチが押し込まれてこの第1レリーズスイッチ18aがオンされると、測距動作や測光動作が行われるようになっている。
【0046】
第2レリーズスイッチ18bは、撮像動作を指示入力するための自動復帰型の2段スイッチでなるレリーズスイッチの2段目である。レリーズスイッチがさらに押し込まれてこの第2レリーズスイッチ18bがオンされると、撮像素子1により撮像動作が行われ、画像データが上述したように生成されて、圧縮された後に記録媒体11に記録されるようになっている。
【0047】
距離検出部23は、被写体までの距離を検出するためのものであり、公知の構成のものを適宜採用することが可能である。
【0048】
撮影モード設定部25は、シャッタ優先撮影モード、絞り優先撮影モード、プログラム撮影モードの何れかを選択するためのものである。
【0049】
撮影条件設定部26は、シャッタスピード(露光時間)や絞り値、ISO感度などの各種の撮影条件を設定するためのものである。
【0050】
CPU7は、露出値Evと、露出制御を最適に行うためのTv(露光時間のアペックス値)およびAv(絞り値のアペックス値)と、の関係をプログラム線図として記憶するEEPROM24を不揮発性メモリとして内蔵している。このEEPROM24には、デジタルカメラに必要なその他の情報も適宜格納可能となっている。
【0051】
このCPU7には、第1レリーズスイッチ18aからの信号、第2レリーズスイッチ18bからの信号、A/D変換器21を介した角速度センサ19からの信号、A/D変換器22を介した角速度センサ20からの信号、撮影モード設定部25からの信号、および撮影条件設定部26からの信号が入力されるようになっている。そしてCPU7は、TG5とSG6とへ指令を出力するようになっている。
【0052】
さらに、CPU7は、情報処理部8、DRAM9、レンズ駆動系14、絞り駆動系16、および距離検出部23と双方向に接続されていて、これらを含むこのデジタルカメラ全体を制御する制御部となっており、撮影手段、ぶれ検出手段、撮影回数制御手段、ぶれ補正手段、画像合成手段を兼ねたものである。
【0053】
具体的には、CPU7は、上述したようなオートフォーカス制御やAE制御を行うとともに、第1レリーズスイッチ18aおよび第2レリーズスイッチ18bからの静止画像の取り込みを指示する信号に基づき、撮像素子1の駆動モードの切り換えを行うようになっている。さらに、このCPU7は、絞り17の開口を変更する制御や撮像素子1の露光時間制御などを行うようになっている。そして、CPU7は、撮影モード設定部25からの入力に基づきこのデジタルカメラの撮影モードを設定し、撮影条件設定部26からの入力に基づきデジタルカメラに係る撮影条件を設定するようになっている。加えて、CPU7は、角速度センサ19,20からの出力に基づき、ぶれ量の演算等も行うようになっている。
【0054】
次に、図2〜図5を参照して、撮像素子1の動作原理について説明する。図2はフォトダイオードに蓄積された電荷を第1の画素電荷として垂直転送CCDに転送する様子を示す図、図3は第1の画素電荷読み出し後にフォトダイオードに蓄積された電荷を第2の画素電荷として水平転送CCDに転送しさらに水平方向に転送するとともに、第1の画素電荷を垂直方向に転送する様子を示す図、図4は第1の画素電荷と第2の画素電荷とを加算する様子を示す図、図5は加算された電荷を同一画素内における垂直転送CCDの電荷保持部に退避する様子を示す図である。
【0055】
撮像素子1には、被写体からの光線を受けて電荷を発生するフォトダイオード27が、複数、マトリクス状に配列されていて、マトリクス状に配列されたこれらのフォトダイオード27が光電変換部を構成している。
【0056】
さらに、撮像素子1は、光電変換部のフォトダイオード27の各行に隣接して行方向に配置された水平転送レジスタでありぶれ補正部、合成部たる水平転送CCD28を備えている。この水平転送CCD28は、フォトダイオード27で発生した電荷を読み出して得られた第1画像を記憶するとともに、この第1画像を水平方向に転送するものである。
【0057】
また、撮像素子1は、光電変換部のフォトダイオード27の各列に隣接して列方向に配置された垂直転送レジスタでありぶれ補正部、合成部たる垂直転送CCD29を備えている。この垂直転送CCD29は、第1画像よりも前の時刻に得られた電荷を合成した合成電荷に係る第2画像を記憶するとともに、この第2画像を垂直方向に転送するものである。
【0058】
そして、水平転送CCD28と垂直転送CCD29とが交差する位置に配置された電極部分は、第1画像と第2画像とをアナログ合成する合成部として機能するようになっている。
【0059】
なお、ここでは、複数のフォトダイオード27が、縦方向と、この縦方向に垂直な横方向と、に配列されてマトリクス状をなしている例を示しているが、実質的なマトリクス状をなす配列であればこれに限るものではない。例えば、一方向と、この一方向に斜めに交差する他方向と、に配列されてマトリクス状をなしているものでも構わない。このときには、水平転送CCD28と垂直転送CCD29とを、互いに斜めに交差する方向に配置すれば良い。さらに、フォトダイオード27の形状も正方形や矩形に限るものではなく、平行四辺形や三角形、六角形等の各種の形状であっても構わない。
【0060】
そして、撮像素子1における1画素38は、1つのフォトダイオード27と、このフォトダイオード27に隣接する水平転送CCD28の部分および垂直転送CCD29の部分と、を含んでいる。また、1画素38のサイズを、水平方向(横方向)の長さがLx、垂直方向(縦方向)の長さがLyであるとする。
【0061】
このような構成の撮像素子1の動作を説明する。
【0062】
以下では、撮像素子1の左上角に配置されたフォトダイオードをP1,1 と表記し、水平方向右側へ向かってi(iは1以上の整数)番目、垂直方向下側へ向かってj(jは1以上の整数)番目の位置に配置されたフォトダイオードをPi,j と表記することにする。
【0063】
図2は、最初に光電変換し蓄積されたフォトダイオードPi,j の電荷(第1の画素電荷)(図中において丸印で示している)を、このフォトダイオードPi,j に隣接する垂直転送CCD29にシフトした(読み出した)ところを示している。なお、この図2においては、フォトダイオードPi,j に係る第1の画素電荷のみを図示しているが、他の全てのフォトダイオードにおいて同一の時間だけ光電変換し蓄積された電荷も、同様に垂直転送CCD29に一斉にシフトされることになる。
【0064】
図3は、第1の画素電荷をシフトした直後から光電変換し蓄積されたフォトダイオードPi-1,j-1 の電荷(第2の画素電荷)を、このフォトダイオードPi-1,j-1 に隣接する水平転送CCD28にまずシフトした(読み出した)ことを示している。なお、この図3においても、フォトダイオードPi-1,j-1 に係る第2の画素電荷のみを図示しているが、他の全てのフォトダイオードにおいて同一の時間だけ光電変換し蓄積された電荷が、同様に水平転送CCD28に一斉にシフトされることになる。ここに、第1の画素電荷蓄積時にフォトダイオードPi,j に到達していた被写体からの光が、第2の画素電荷蓄積時には手ぶれ等によりフォトダイオードPi-1,j-1 に到達する位置に移っているものとする。この光の到達位置の変化は、第2の画素電荷の蓄積が終わった時点で初めて判明するために、図2に示した状態においては、第1の画素電荷はまだ転送されず、垂直転送CCD29に保持(記憶)されるのみである。しかし、第2の画素電荷を読み出した後は、角速度センサ19,20の出力により光の到達位置の変化が判明するために、同一の被写体光に係る第1の画素電荷と第2の画素電荷との位置関係が分かり、後述する合成を行うために、互いに近接する位置(同一の1画素38内の位置)への転送が行われる。すなわち、図3には、第2の画素電荷が水平転送CCD28上を紙面右方向に1画素分転送されるとともに、第1の画素電荷が垂直転送CCD29上を紙面上方向に1画素分転送される例が示されている。なお、第1の画素電荷の転送と第2の画素電荷の転送とが、全てのフォトダイオードに係る画素電荷について行われるのは上述と同様である。このような水平転送CCD28による転送と垂直転送CCD29による転送とを行うためには、各転送CCDが交差する位置において水平転送CCD28内の電荷と垂直転送CCD29内の電荷とが干渉することのないように、転送電極の配置を工夫する必要がある。
【0065】
図4は、第1の画素電荷と第2の画素電荷とを、水平転送CCD28と垂直転送CCD29とが交差する位置にシフトして、該交差位置において合成した様子(合成であることを、図4中において「+」により示している)を示している。この合成は、全てのフォトダイオードに係る第1の画素電荷と、全てのフォトダイオードに係る第2の合成電荷と、について行われることは勿論である。
【0066】
これにより、第1の画像(全ての第1の画素電荷で構成される画像)と、この第1の画像の直後に連続して撮影された第2の画像(全ての第2の画素電荷で構成される画像)と、がぶれ量だけシフトされた後に、つまりぶれを補正された後に、合成されたことになる。
【0067】
なお、3番目以降の時分割画像を新たに読み出した場合には、第1の画像に相当するのは、それまでの時分割画像を合成して得られた合成画像(最初の時分割画像から最新の1つ前の時分割画像までを順次ぶれ補正して合成して得られた画像)となるために、この図4に示すような動作を行うことにより、新たな時分割画像(全ての新たな画素電荷で構成される画像)と、合成画像と、の相対的なぶれ量が補正された後に、合成されることになる。
【0068】
図5は、水平転送CCD28と垂直転送CCD29との交差位置において合成された画素電荷を、同一画素内における例えば垂直転送CCD29の電荷保持部に転送した(退避させた)様子を示している。交差位置は、水平転送と垂直転送との両方に用いられるために、該交差位置に合成電荷を保持したままであると、次に読み出した画素電荷との合成を行うことができない。
【0069】
そこで、ここでは、合成後の電荷を、一旦、垂直転送CCD29の電荷保持部へ退避させるようにしたものである。これにより、次の画素電荷を水平転送CCD28へ読み出せば、上述と同様に、画素の合成を行うことが可能となる。
【0070】
なお、ここでは、合成後の電荷を同一画素内における垂直転送CCD29の電荷保持部へ転送した(退避させた)が、これに代えて、同一画素内における水平転送CCD28の電荷保持部へ転送しても(退避させても)構わない。このときには、次の画素電荷は、垂直転送CCD29へ読み出されることになる。また、合成後の画素電荷を退避させるのは、必ずしも同一画素内に限るものではない。
【0071】
従って、図2〜図5に示したような例に限らず、合成電荷は、水平転送CCD28と垂直転送CCD29との何れか一方の記憶部に記憶させれば良く、新たな画素電荷は、水平転送CCD28と垂直転送CCD29との何れか他方の記憶部へ読み出して記憶させれば良い。
【0072】
以上説明したように、
画像の水平転送CCDへのシフト
→ 相対的なぶれ補正のための電荷転送
→ 電荷の合成
→ 合成した電荷を水平転送CCDと垂直転送CCDとが交差する位置から退避する
というシーケンスを繰り返し行うようになっている。ただし、複数の時分割撮影の内の最初の時分割撮影による時分割画像については、ぶれ量が0、垂直転送CCDの電荷の合成値が0であるとして、同様のシーケンスを実行すれば足りる。
【0073】
なお、図2〜図5においては、合成画像に対して新たな時分割画像が左方向に1画素かつ上方向に1画素だけずれている例を示したが、一般的には、ずれ量に応じた適宜の画素数だけ水平方向および垂直方向に移動させることになる。
【0074】
以上説明したようなぶれ補正の動作原理は、撮像部の個々のフォトダイオードを囲むように配置された水平転送CCDと垂直転送CCDとに蓄積された2つの画像のX方向およびY方向の相対的なぶれを補正するものであった(図6参照)。これに対して、後で図7を参照して説明するように、撮像素子1内に撮像部とは別個に画像を蓄積するための蓄積部を設けて、この蓄積部に、時分割撮影された画像を保持するための垂直転送CCDと、この時分割画像とそれまでの時分割画像とのぶれを補正し合成して得られる合成画像を記憶するための水平転送CCDと、を設けることによっても、同様に、撮像素子1内でぶれの補正された画像を生成することができる。
【0075】
次に、図6は、撮像素子1の第1の構成例を示す図である。
【0076】
第1の構成例の撮像素子1は、図6に示すように、画像を光電変換して蓄積するフォトダイオード27と、このフォトダイオード27から読み出された電荷を水平方向に転送するための水平転送CCD28と、該フォトダイオード27から読み出された電荷を垂直方向に転送するための垂直転送CCD29と、上述した水平転送CCD28または垂直転送CCD29の端部に転送された電荷を転送路外へ排出するための電荷排出用ドレイン30と、垂直転送CCD29から転送された電荷を撮像素子1から外部に読み出すための読出用水平転送CCD31と、を有して構成されている。
【0077】
ここに、電荷排出用ドレイン30は、全ての水平転送CCD28の両端部と、全ての垂直転送CCD29の図6における紙面上側の端部と、に転送された電荷を転送路外へ排出することができるように、読出用水平転送CCD31側を除く撮像部の辺縁に、コの字形状に配設されている。
【0078】
このような構成において、フォトダイオード27により光電変換して蓄積された画素電荷は、水平転送CCD28に読み出されて蓄積されるようになっている。この水平転送CCD28に蓄積された電荷は、全体として第1画像を形成するものである。また、垂直転送CCD29には、それまでの合成電荷が記憶されている。この合成電荷は、全体として第2画像を形成するものである。新たに読み出された画素電荷は、読み出された水平転送CCD28内において、角速度センサ20の出力に基づき算出されたY軸周りのぶれに基づいて、垂直転送CCD29に記憶されている第2画像との相対的な水平方向のぶれ量を補正する移動量だけ転送される。一方、垂直転送CCD29に記憶されている合成画像である第2画像は、垂直転送CCD29内において、角速度センサ19の出力に基づき算出されたX軸周りのぶれに基づいて、水平転送CCD28に記憶されている第1画像との相対的な垂直方向のぶれ量を補正する移動量だけ転送される。
【0079】
こうしてぶれ量を補正するだけのシフトが行われたら、その後に、水平転送CCD28と垂直転送CCD29とが交差する位置において、新たに読み出された画素電荷とそれまでの合成電荷とを合成して垂直転送CCD29に記憶することにより、相対的なぶれを補正された新たな合成電荷が生成されるようになっている。以上説明したような動作が、時分割撮影の回数として設定された所定回数、例えば10回、行われる。ここで、垂直転送CCD29および水平転送CCD28に蓄積された電荷は、ぶれに応じて上下左右にシフトされることになるために、各転送CCD28,29の端部に達した電荷を、電荷排出用ドレイン30を介して転送路外に排出するようになっている。
【0080】
図6に示すような第1の構成例においては、電荷排出用ドレイン30は、図8に示すように構成されている。ここに、図8は、電荷排出用ドレイン30の構成例を示す図である。この図8に示す構成例においては、n型基板(例えば、n型シリコン基板)42の表面部分に、まず、p型拡散領域(pウェル:p−well)43と、n−拡散領域44と、が表面側へ向かって順に形成されている。さらに、水平転送CCD28または垂直転送CCD29の端部である転送電極39の下のポテンシャル井戸(n−拡散領域44)に隣接して、n+拡散領域のドレイン30が形成されている。そして、端部の転送電極39に達した電荷は、このn+拡散領域のドレイン30を介して排出される。一方、垂直転送CCD29の読出用水平転送CCD31側の端部に達した電荷は、この読出用水平転送CCD31を介して排出するようになっている。このような電荷の排出機構を備えることにより、水平転送CCD28および垂直転送CCD29において電荷があふれるのを防止することができるようになっている。
【0081】
以上のようにして得られた最終的な合成電荷が、ぶれ補正された画像を構成する電荷となる。
【0082】
なお、図6に示す第1の構成例においては、時分割画像を水平転送CCD28に読み出すとともに、合成した画像を垂直転送CCD29に保持するようにしたが、これに代えて、時分割画像を垂直転送CCD29に読み出すとともに、合成した画像を水平転送CCD28に保持するようにしても良い。
【0083】
次に、図7は、撮像素子1の第2の構成例を示す図である。
【0084】
この図7に示す撮像素子1は、撮像部1aと蓄積部1bとが分離したいわゆるFIT型CCD(フレームインターライン転送型CCD)である。
【0085】
撮像部1aは、画像を光電変換して蓄積するフォトダイオード32と、このフォトダイオード32から読み出された電荷を垂直方向に転送するための垂直転送CCD33と、を有して構成されている。
【0086】
蓄積部1bは、撮像部1aの垂直転送CCD33から転送された電荷をこの蓄積部1b内の所定位置まで転送する垂直転送CCD34と、この垂直転送CCD34と交差するように配置された水平転送CCD35と、水平転送CCD35の両端部に転送された電荷を転送路外に排出するための電荷排出用ドレイン36と、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部に転送された電荷を転送路外に排出するための電荷排出用ドレイン41と、垂直転送CCD34から転送された電荷を撮像素子1から外部に読み出すための読出用水平転送CCD37と、を有して構成されている。
【0087】
このような構成の撮像素子1において、フォトダイオード32により光電変換して蓄積された画素電荷は、垂直転送CCD33を介して蓄積部1bの垂直転送CCD34に転送される。この垂直転送CCD34に転送された電荷は、全体として第1画像を形成する。
【0088】
まず第1回目の時分割撮影により垂直転送CCD34に転送された第1画像は、その後に水平転送CCD35に転送される。この水平転送CCD35に蓄積された画像を第2画像とする。
【0089】
次の時分割撮影により撮影された画像は、再び垂直転送CCD34に転送される。そしてこの第1画像は、角速度センサ19の出力に基づき算出されたX軸周りのぶれに基づいて、水平転送CCD35に蓄積されている第2画像との垂直方向の相対的なずれを打ち消す方向に所定量だけシフトされる。また、第2画像は、角速度センサ20の出力に基づき算出されたY軸周りのぶれに基づいて、垂直転送CCD34に蓄積された第1画像との水平方向の相対的なずれを打ち消す方向に所定量だけシフトされる。そして、垂直方向および水平方向の相対的なぶれが打ち消されるようにシフトされた第1画像および第2画像は、垂直転送CCD34と水平転送CCD35とが交差する位置またはその近傍において合成され、水平転送CCD35に蓄積される。
【0090】
その後に再び時分割撮影が行われ、この撮影された画像が第1画像として蓄積部1bの垂直転送CCD34に保持される。そして同様にしてぶれが補正された合成画像が生成され、水平転送CCD35に保持される。このような動作が、時分割撮影の回数として設定された所定回数、例えば10回行われる。ここで垂直転送CCD34、および水平転送CCD35に蓄積された電荷は、ぶれに応じて上下左右にシフトされるために、水平転送CCD35の端部に達した電荷は電荷排出用ドレイン36を介して、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部に達した電荷は電荷排出用ドレイン41を介して、垂直転送CCD34の読出用水平転送CCD37側の端部に達した電荷は該読出用水平転送CCD37を介して、それぞれ転送路外に排出される。
【0091】
この図7に示すような第2の構成例の撮像素子1における電荷排出用ドレイン36は、図6に示したような第1の構成例の撮像素子1における電荷排出用ドレイン30(図8参照)と同様に、水平転送CCD35の端部である転送電極の下のポテンシャル井戸(n−拡散領域)に隣接して設けられたn+拡散領域のドレインとなっている。
【0092】
一方、第2の構成例の撮像素子1における電荷排出用ドレイン41をもし図8と同様に構成すると、撮像部1aからの電荷が蓄積部1bへ転送されなくなってしまう。そこで、この電荷排出用ドレイン41は、図9に示すように構成している。ここに、図9は、電荷排出用ドレイン41の構成例を示す図である。すなわち、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部の転送電極39に隣接してゲート電極40を設け、このゲート電極40を挟んだ転送電極39の反対側の位置にn+拡散領域でなる電荷排出用ドレイン41を設けている。そして、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部に転送された電荷は、ゲート電極40を介して、選択的に電荷排出用ドレイン41に排出されるようになっている。
【0093】
すなわち、撮像部1aからの電荷を蓄積部1bに転送するときには、ゲート電極40に低電圧を印加する。これにより、垂直転送CCD34を転送される電荷は、電荷排出用ドレイン41に排出されるのを防止される。一方、蓄積部1bに蓄積された電荷をぶれ補正のために垂直転送CCD34内で転送するときには、ゲート電極40に高電圧を印加することにより、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部に転送された電荷が電荷排出用ドレイン41に排出される。また、垂直転送CCD34の読出用水平転送CCD37側の端部に達した電荷は、この読出用水平転送CCD37を介して排出される。
【0094】
このような構成および作用により、垂直転送CCD34および水平転送CCD35で電荷があふれるのを防止することができるようになっている。
【0095】
なお、上述したような構成例においては、ぶれ補正のための電荷転送時に、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部の電荷を電荷排出用ドレイン41に排出するようにした。しかし、これに代えて、ぶれ補正のための電荷転送時に、垂直転送CCD33も同時に駆動して垂直転送CCD34の上端部に達した電荷をこの垂直転送CCD33に転送する(排出する)ことにより、電荷があふれるのを防止するようにしても良い。そして、この場合には、垂直転送CCD33に排出された電荷を、垂直転送CCD34(第1画像および第2画像の合成が行われて水平転送CCD35に蓄積され、電荷を保持していない状態の垂直転送CCD34)および読出用水平転送CCD37を介して排出し、その後に次回の時分割撮影を行うようにすれば良い。
【0096】
上述したようにして所定回数のぶれ補正および合成の動作が終了すると、水平転送CCD35に保持された画像は、垂直転送CCD34に転送された後に、垂直転送CCD34と読出用水平転送CCD37とを介して撮像素子1から外部に読み出される。
【0097】
次に、図10は、デジタルカメラにより画像を撮像して記録するときの、図7に示した第2の構成例の撮像素子1に対応する処理の一例を示すフローチャートである。
【0098】
デジタルカメラの電源が投入される(例えば、電池が交換されるなど)か、または、図示しない動作開始スイッチ(例えば、電源スイッチ)が操作されると、このデジタルカメラの動作がスタートする。
【0099】
処理を開始すると、所定の初期値設定等を行った後に、まず、撮影者のレリーズ操作によって第1レリーズスイッチ18aが閉じた状態になったか否かを判定する(ステップS101)。
【0100】
ここで、第1レリーズスイッチ18aが閉じていない場合には、J101に分岐して、第1レリーズスイッチ18aの検出を同様に繰り返して行う。ただし、実際には、J101とステップS101との間に、表示を行ったり、その他の図示しないキー入力の状態を検出したりする動作等を行うが、こうした一般的な動作については以下においても適宜説明を省略することにする。
【0101】
ステップS101において第1レリーズスイッチ18aが閉じたことが検出された場合には、次に、ぶれ限界露光時間TLimit を演算する(ステップS102)。このぶれ限界露光時間TLimit は、露光開始からのぶれ量が許容限界のぶれ量に達すると想定される時間である。
【0102】
ここで、ぶれ限界露光時間TLimit について説明する。35ミリフィルムカメラにおける縦24mm×横36mm(対角 43.28mm)のいわゆるライカ版フレーム(別称:ダブルフレーム)カメラに関する長年の経験則として、ミリメートル単位の撮影レンズの焦点距離をfとしたときに、ぶれ限界露光時間TLimit が、TLimit ≒1/f(秒)になるということが知られている。本実施形態においては、この経験則を、デジタルカメラの撮像素子1の有効撮像エリア内に設定した撮影画枠の大きさを考慮の上、応用することにする。なお、ぶれ限界露光時間TLimit は、必ずしも、1/fに基づき与えられる値を用いる必要はなく、要するに、ぶれが実質的に発生することのないような露光時間を用いれば良い。従って、ぶれ限界露光時間TLimit は、概略、1/fに基づき与えられる露光時間よりも短い時間であれば構わない。
【0103】
次に、被写体の明るさを測光する(ステップS103)。この測光は、撮像素子1から繰り返し出力される画像信号のレベルをモニタして、被写体の明るさを演算するものである。すなわち、撮像素子1から読み出された画像信号は、CDS2により処理されゲインコントロールアンプ3により増幅された後にA/D変換器4によりデジタル値に変換され、情報処理部8を経てDRAM9に一時的に記憶される。このDRAM9に記憶された画像信号の内、画像全体の中の例えば中央部付近の所定領域の画像信号がCPU7により読み出されて、そのレベルの加算平均値が求められる。そして、CPU7は、求めた加算平均値に基づいて被写体の明るさ(Bv)を計算する。
【0104】
続いて、CPU7は、適正露光を得るために必要なシャッタ速度値(露光時間)TExp や絞り17の絞り値を計算するとともに、計算結果に基づき絞り駆動系16を介して絞り17の絞り設定を行う(ステップS104)。ここで、上記露光時間TExp は、時分割撮影の露光時間をΔTExp 、時分割撮影の回数をmとすると、TExp =m×ΔTExp の関係が成り立つものである。
【0105】
次に、第2レリーズスイッチ18bが閉じているか否かを判定する(ステップS105)。ここで、第2レリーズスイッチ18bが閉じていない場合には、第1レリーズスイッチ18aが閉じている限り、J102へ分岐して、上述したようなステップS102〜S105の処理を繰り返して行いながら、この第2レリーズスイッチ18bが閉じるのを待機する。
【0106】
こうして、ステップS105において、第2レリーズスイッチ18bが閉じていると判定された場合には、露光時間TExp がぶれ限界露光時間TLimit よりも短いか否かを判定する(ステップS106)。
【0107】
このステップS106において、TExp <TLimit でないと判定された場合には、次に、露光時間TExp を時分割撮影の回数mで割った値を時分割撮影の露光時間ΔTExp を記憶するためのメモリに記憶する(ステップS107)。なお、〔〕は、括弧内のデータを記憶するメモリを意味している。従って、〔ΔTExp 〕は、括弧内の変数ΔTExp を記憶するメモリを意味する。
【0108】
次に、時分割撮影が実際に行われた回数nを記憶するメモリ〔n〕に、初期値「0」を記憶する(ステップS108)。ここで、上記時分割撮影の露光時間ΔTExp として、上述したぶれ限界露光時間TLimit を用いる方法と、上記ステップS103で演算した露光時間TExp を予め決められた時分割撮影の回数mで除算した露光時間を用いる方法と、がある。時分割撮影の露光時間ΔTExp としてぶれ限界露光時間TLimit を用いる方法は、ぶれを確実に補正することができる点で優れているが、露光時間TExp が長くなると時分割撮影の回数が増加することになる。時分割撮影の回数が増加すると、1回あたりの時分割撮影で得られる信号量が小さくなるために、S/N(信号対ノイズ比)が低くなる可能性がある。また、時分割撮影の回数に応じて、フォトダイオードの飽和信号量を調整する必要があるために、撮像素子の構成が複雑化する。従って、時分割撮影の回数mの種類はなるべく少ないほうが良い。そこで本実施形態では、時分割撮影の回数mは1種類のみとする。そして時分割撮影の露光時間は、露光時間TExp をmで割った値を用いるものとする。
【0109】
続いて、露光を開始する(ステップS109)。撮像素子1には、露光開始直前から、フォトダイオード32に蓄積された電荷を半導体基板(サブストレート=縦形オーバーフロードレインVOFD)へ強制排出するための撮像素子1の基板印加高電圧パルスVSUBが繰り返し印加されており、この高電圧パルスVSUBの印加が終了し、VSUBの値を上記時分割撮影の回数mに応じた値に設定した時点が、このステップS109の露光開始の時点となる。
【0110】
次に、1回の時分割撮影が終了したか否かを判定する(ステップS110)。ここで、1回の時分割撮影が終了したと判定されるまでは、J103へ分岐して、時分割撮影の終了を待機する。
【0111】
こうして、ステップS110において1回の時分割撮影が終了したと判定された場合には、撮像素子1のフォトダイオード32と垂直転送CCD33との間に配置された転送ゲートに高電圧の転送パルスを印加することにより、フォトダイオード32に蓄積された電荷を撮像部1aの垂直転送CCD33にシフトする。この垂直転送CCD33にシフトされた電荷は、その後に、蓄積部1bの垂直転送CCD34へ転送される。
【0112】
ここで、図12および図13を参照して、撮像素子の有効領域について説明する。図12は3つの時分割画像の重畳関係における有効領域を示す図、図13は撮像素子の撮像領域における有効領域を示す図である。
【0113】
まず、図12は、時分割画像51と時分割画像52と時分割画像53とが、この順序で時分割撮影して得られ、各画像における同一被写体が同一位置になるように画像を並べたときの画像同士の位置関係が図示のようにずれているケースを示している。このようなケースにおいて、最終的にぶれが補正されて合成された有効領域54は、図示のように、3つの時分割画像51,52,53の全てが重畳される領域となる。そして、この有効領域54は、画像のぶれ量が大きいほど狭くなる。
【0114】
通常は、画像の長辺と短辺とから予め決めた所定領域(例えば、画面の縦横それぞれ98%の領域)を撮像領域55における有効領域56と定めて(図13参照)、その他の領域を有効領域とはしないようにすれば十分である。しかし、撮影者の技量等によっては、想定外の大きなぶれが発生する場合も有り得る。そこで、1回分の時分割撮影が終了したところで、露光開始位置からのX方向のぶれ量の絶対値Bx、または露光開始位置からのY方向のぶれ量の絶対値Byが、予め設定した所定の値α(この所定値αは、絶対値BxおよびByの両方がα未満である場合には、合成画像として少なくとも有効領域56を含む画像を確保することができるような値として設定されたものである。)以上であるか否かを判定する(ステップS111)。
【0115】
そして、このステップS111において、X方向のぶれ量の絶対値Bxと、Y方向のぶれ量の絶対値Byとの少なくとも一方が所定の値α以上であると判定された場合には、時分割露光のループから抜けて、フラグFLGに1を設定した後に(ステップS112)、後述するステップS119の画像の読み出し処理に移行する(J104)ようにしている。これは、ぶれ量が所定値α以上であるときには、ぶれが正常に補正された画像の有効領域が予め決めた所定領域よりも狭くなってしまうために、これを防ぐべく時分割撮影を終了して、所定の大きさの有効領域を確保するようにしたためである。
【0116】
そして、ステップS112においてFLGを1に設定したときには、時分割撮影の回数が所定回数mに達していないことを意味しているために、全体の露光時間がTExp に達せず、合成画像のレベルが適正レベルよりも低いことになる。従って、このときには、後述するように、ゲインコントロールアンプ3により画像を増幅するようにしている。例えば時分割撮影の回数をk(kはm未満の正の整数)とすると、ゲインコントロールアンプ3の増幅率は通常の場合のm/k倍となる。
【0117】
また、ステップS111において、X方向のぶれ量の絶対値Bxと、Y方向のぶれ量の絶対値Byとの両方が所定値α未満であると判定された場合には、次に、画素値合成の処理を行う(ステップS113)。この画素値合成においては、既に説明したように、時分割撮影により得られた垂直転送CCD34内の第1画像と、水平転送CCD35内に保持されている第2画像とを、角速度センサ19,20の出力信号に基づいて演算されたX方向およびY方向のぶれ量に基づいて、各転送CCD34,35内でシフトすることによりぶれを打ち消すように補正した後に、合成する処理が行われる。この画素値合成処理は、通常、時分割撮影における露光時間ΔTExp よりも高速に行われる。
【0118】
次に、既に行われた時分割撮影の回数nを記憶するメモリ〔n〕に、n+1を記憶する(ステップS114)。
【0119】
そして、既に行われた時分割撮影の回数nが、設定された時分割撮影の回数mに等しいか否かを判定する(ステップS115)。
【0120】
ここで、まだn=mに達していない場合には、J103に分岐して、時分割撮影の処理と画素値合成の処理とを上述したように繰り返して行う。
【0121】
また、ステップS115においてn=mであると判定された場合には、J104に分岐して、水平転送CCD35に記憶されている合成画像を垂直転送CCD34に転送した後に、後述するステップS119の読み出し処理を行う。
【0122】
一方、上述したステップS106においてTExp <TLimit であると判定された場合には、時分割撮影を行わなくても実質的にぶれは発生しないことになる。従って、このときには、露光時間TExp をメモリ〔ΔTExp 〕に記憶する(ステップS116)。
【0123】
次に、露光を開始して(ステップS117)、露光時間がメモリ〔ΔTExp 〕に記憶した露光時間ΔTExp に達したか否かを判定する。そして、露光時間ΔTExp に達したと判定された場合には、フォトダイオード32により生成した電荷を垂直転送CCD33にシフトすることにより、露光を終了する(ステップS118)。この露光が終了したら、撮像部1aにおける垂直転送CCD33の電荷は、蓄積部1bの垂直転送CCD34へ転送される。一方、露光時間ΔTExp に達するまでは、上述した判定を繰り返して行う。
【0124】
このように、露光時間TExp がぶれ限界露光時間TLimit よりも短いときは、時分割撮影を行うことなく、従来の撮影と同様に1回の撮影でぶれのない画像を出力するようにしているために、処理が簡単になるとともに、ぶれ補正に伴う電力の無駄な消費を防止することができる。
【0125】
このステップS118において露光が終了したと判定されるか、ステップS112においてフラグFLGに1を設定し終えるか、ステップS115においてn=mであると判定された場合に、撮影された画像が、垂直転送CCD34および読出用水平転送CCD37を介して、この撮像素子1から外部へ読み出される(ステップS119)。
【0126】
このようにして撮像素子1から読み出された画像信号は、CDS2により処理され、ゲインコントロールアンプ(AMP)3により増幅された後に、A/D変換器4によりデジタル信号に変換される(ステップS120)。ただし、上述したステップS112においてフラグFLGが1に設定された場合には、ゲインコントロールアンプ(AMP)3による増幅率は、上述したように、通常の増幅率のm/k倍となる。
【0127】
その後、画像信号をデジタル化して得られた画像データは、バッファメモリ8aに記憶された後に、情報処理部8により所定の信号処理を施される(ステップS121)。
【0128】
この情報処理部8により行われる信号処理には、撮像素子1から出力された画像データの中から、ぶれ補正が有効に行われたとみなされる予め決められた領域の画像を抽出する処理も含まれている。すなわち、情報処理部8は、有効領域抽出部としての機能も有するものとなっている。上述したように、撮像素子1においては、全ての時分割画像が重複する領域が予め決められた有効領域(図13に示したような有効領域56)を含むように、最初に撮影した時分割画像を基準にしたぶれ量が予め決めた所定値αよりも小さい時分割画像についてのみ合成処理を行うようになっている。従って、情報処理部8は、有効領域の抽出処理を簡単に行うことが可能である。
【0129】
次に、情報処理部8により信号処理された画像データは、DRAM9に一時的に記憶される(ステップS122)。
【0130】
その後、圧縮伸張部10によりDRAM9に記憶された画像データを画像圧縮して(ステップS123)、圧縮された画像データを記録媒体11に記録し(ステップS124)、この処理を終了する。
【0131】
続いて、図11は、デジタルカメラにより画像を撮像して記録するときの、図7に示した第2の構成例の撮像素子1に対応する処理の他の例を示すフローチャートである。なお、この図11において、図10と同様の処理を行う部分については、その旨を述べて説明を適宜省略する。
【0132】
ステップS201からステップS207の処理は、図10のステップS101からステップS107までの処理と同様である。ただし、ステップS201で第1レリーズスイッチ18aが閉じていない場合のジャンプ先はJ201、ステップS205で第2レリーズスイッチ18bが閉じていない場合のジャンプ先はJ202となる。
【0133】
そして、ステップS207の処理が終了したら、次に、(β×TLimit )/ΔTExp を算出し、算出した値を変数kのメモリである〔k〕に記憶する(ステップS208)。この算出式におけるβは予め決められた所定の係数であり、該算出式の分子のβ×TLimit は、所定以上の大きさの有効領域を確保するために必要な全体のぶれ量(以下、「許容ぶれ量」という。)を表わしている。
【0134】
ここで有効領域とは、全ての時分割画像が重複する領域のことをいう。従って露光時間ΔTExp で時分割撮影を[(β×TLimit )/ΔTExp ]回よりも多く行うと、全体のぶれ量が許容ぶれ量を超えてしまうことになる。
【0135】
そこで、k>mであるか否かを判定する(ステップS209)。
【0136】
ここで、k>mであると判定された場合、すなわち、kが初期値として予め決められた時分割撮影の回数mよりも大きいために、m回の時分割撮影を行っても許容ぶれ量を超えないと判定するときには、時分割撮影の回数を記憶するメモリ〔p〕にmを記憶する(ステップS210)。
【0137】
一方、k>mでないと判定された場合には、時分割撮影の回数がk回を超えると時分割撮影全体のぶれ量が許容ぶれ量を超えてしまうために、〔p〕にkを記憶する(ステップS211)。
【0138】
ステップS210またはステップS211の処理が終了したら、次に、時分割撮影の回数を記憶するメモリ〔n〕に初期値0を記憶する(ステップS212)。
【0139】
そして、露光を開始し(ステップS213)、露光時間がΔTExp になるまで露光を行う(ステップS214)。
【0140】
次に、図10のステップS113で説明したのと同様にして、画素値合成を行い(ステップS215)、メモリ〔n〕にn+1を記憶することにより、時分割撮影の回数をインクリメントする(ステップS216)。
【0141】
続いて、時分割撮影の回数〔n〕がpであるか否かを判定し(ステップS217)、n=pでなければJ203にジャンプして、上述したように時分割撮影と画素値合成とを繰り返して行う。
【0142】
そして、このステップS217においてn=pであると判定された場合には、J204へジャンプして、水平転送CCD35に記憶された合成画像を垂直転送CCD34に転送した後に、読出用水平転送CCD37を介して、この撮像素子1の外部へ読み出す(ステップS221)。
【0143】
その後のステップS223において、撮像素子1から読み出した画像を、ゲインコントロールアンプ3により通常の増幅率のm/p倍に増幅する。このような増幅を行うのは、適正レベルの画像を得るためにはm回の時分割撮影を行う必要があるが、実際の時分割撮影の回数はpであって、この回数pに応じて増幅する必要があるためである。
【0144】
また、ステップS206においてTExp <TLimit であると判定された場合におけるステップS218〜S226の処理は、図10のステップS116〜S124の処理と同様であるために、説明を省略する。
【0145】
以上説明したように、図11で説明したような処理においては、経験的な知見により得られたぶれ限界露光時間TLimit のβ倍を、予め決めた有効領域以上の領域を確保するために許容可能な全体のぶれ量と定義して、このぶれ量を超えないように時分割撮影の回数を制御するようにしたために、図10で説明したようなリアルタイムにぶれ量をモニタして全体のぶれ量が許容値を超えたか否かを判定する処理と比べて、制御が容易になる利点がある。そして、この図11に示したような処理を行うことにより、角速度センサ19,20やA/D変換器21,22等が不要となるために、構成を簡単にすることも可能となる。
【0146】
なお、上述した図10、図11のフローチャートにおいては、図7に示したような第2の構成例の撮像素子1に対応するデジタルカメラの動作を説明したが、図6に示したような第1の構成例の撮像素子1に対応するデジタルカメラの動作についても、図10のステップS113における画素値合成の処理が、既に説明した図6に対応する撮像素子1の画素値合成に置き換わるのみであって、その他の動作は同様である。
【0147】
このような実施形態1によれば、連続して撮影した複数の時分割画像の内の、最初に撮影した時分割画像からのぶれ量が予め決められた所定値内のぶれ量を有する時分割画像を合成するようにしたために、所定の有効領域の合成画像を生成することができる。こうして、撮影技能が異なる不特定多数の撮影者に対しても、画像の有効領域を所定以上の大きさにすることが可能になる。
【0148】
そして、この合成画像の信号レベルが所定レベルに達しないときには、所定レベルに達するように合成画像を増幅しているために、適正露出の画像を得ることができる。
【0149】
また、図11に示したような処理を行えば、ぶれ量を検出するための角速度センサ等の特別の手段によることなく、連続撮影の回数を制御することができるために、構成を簡単にすることができると共に、制御が容易になる。
【0150】
[実施形態2]
図14および図15は本発明の実施形態2を示したものであり、図14は撮像素子1の動作を示すタイミングチャートである。この実施形態2において、上述の実施形態1と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
【0151】
この実施形態2は、時分割撮影した画像を撮像素子1から読み出してデジタル化し、バッファメモリ8aに記憶してから、情報処理部8によりぶれ補正と画像合成とを行うようにしたものである。
【0152】
このデジタルカメラの電気的な構成は、基本的には、図1に示したものとほぼ同様であるために、この図1等を参照しながら、主として実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0153】
まず、固体撮像素子1は、この実施形態2においては、実施形態1で述べたようなぶれ補正を行い得る撮像素子ではなく、通常のデジタルカメラにおいて使用されるような固体撮像素子、例えばCCD固体撮像素子である。なお、CCD固体撮像素子に限らず、CMOS固体撮像素子等であってももちろん構わない。
【0154】
情報処理部8は、上述したように、バッファメモリ8aを有しているが、このバッファメモリ8aは、時分割撮影により得られた複数の画像を記憶することができる容量のものとなっている。そして、情報処理部8は、CPU7の制御に基づいて、時分割撮影により得られた複数の画像の相互のぶれ量を演算して求め、求めたぶれ量に基づき、画像処理を行って複数画像のぶれを補正し合成を行うものとなっている。ここに、情報処理部8は、後述するように、画像内における数点の特徴点に基づいて、画像のぶれ量を演算するようになっている。従って、実施形態2における情報処理部8は、ぶれ検出手段を兼ねたものとなっている。こうして、この実施形態2においては、図1に示されている角速度センサ19,20およびA/D変換器21,22は、設けなくても構わない。
【0155】
次に、本実施形態のデジタルカメラの動作について説明する。まず、図14を参照して、撮像素子1の動作について説明する。
【0156】
図14に示すように、第2レリーズスイッチ18bが閉じて撮影トリガ信号が発生されると、タイミングジェネレータ5から撮像素子1にクロック信号CLKが供給される。
【0157】
クロック信号CLKを受けた撮像素子1には、撮像素子1の画素を構成するフォトダイオードに蓄積された電荷を半導体基板(サブストレート=縦形オーバーフロードレインVOFD)へ強制排出するための基板印加高電圧パルスVSUBが繰り返し印加されており、この高電圧パルスVSUBの印加が終了したところで、露光が開始される。
【0158】
そして、所定の時分割撮影の露光時間ΔTExp が終了すると、撮像素子1のフォトダイオードの電荷を垂直転送CCDへシフトするためのシフトパルスTPが出力される。その後、垂直同期信号VDに同期して、電圧Vφ1〜Vφ4を各転送電極に印加することにより、撮像素子1から画像が読み出される。
【0159】
また、撮像素子1からの画像の読み出し開始に同期して、撮像素子1に再びVSUBが所定の印加時間Tsub だけ印加される。
【0160】
このVSUBの印加が終了すると、同様に露光が開始され、次の垂直同期信号VDに同期して、2回目の時分割撮影による画像の読み出しが行われる。
【0161】
以上説明したような動作を、所定回数(例えば10回)行う。そして、この説明から分かるように、読み出し時間TReadからVSUBの印加時間Tsub を減算した時間が、時分割撮影の露光時間ΔTExp となる。
【0162】
撮像素子1から読み出された時分割画像は、CDS2によりリセットノイズが除去された後に、ゲインコントロールアンプ(AMP)3によりアナログの信号増幅が行われる。ここに、ゲインコントロールアンプ(AMP)3の増幅率は、ISO(International Organization for Standardization)感度Svに応じた増幅率をA1、時分割撮影による画像の露出不足分を補うための増幅率をA2としたとき、A1×A2となるように設定される。
【0163】
なお、通常撮影の露光量をE1、時分割撮影により得られる露光量をE2とするとき、A2=E1/E2となる。さらに具体的に述べると、適正露光を得るための露光時間をTExp とし、これをm回に等分割した露光時間TExp /mによりm回の時分割撮影を行うものとするとき、各時分割撮影においてA2=TExp /(TExp /m)=mとなる。
【0164】
ゲインコントロールアンプ(AMP)3により増幅されたアナログの画像信号は、A/D変換器4により、TG5から供給される信号に従って、デジタル信号に変換される。
【0165】
A/D変換器4によりデジタル信号に変換された画像信号は、情報処理部8により処理されて、画像データが生成される。
【0166】
次に、図15は、情報処理部8におけるぶれ画像の補正処理を示すフローチャートである。
【0167】
この処理を開始すると、まず初期設定として、時分割画像を識別するためのIDに相当する変数iを記憶するためのメモリ〔i〕に、0を記憶する(ステップS301)。
【0168】
次に、画像I(i)と画像I(i+1)とのぶれΔ(i,i+1)を演算する(ステップS302)。このぶれΔは、画像I(i)における特徴点を数点定めて、この特徴点と一致する画像I(i+1)の特徴点の位置を、公知の動きベクトル演算により求め、対応する位置の相対的なずれを求めることにより行われる。なお、上記ぶれΔは、ベクトルである。
【0169】
その後、ぶれΔを積算(順次のベクトル加算)したΣΔ(k,k+1)(但しk=0〜i)のスカラー値|ΣΔ(k,k+1)|を演算し、この値と予め決めた所定の値αとを比較する(ステップS303)。ここで、|ΣΔ(k,k+1)|>αでないと判定されたときには、メモリ〔i〕の内容をインクリメントする(ステップS304)。
【0170】
続いて、ぶれΔに基づいて、画像I(i)と画像I(i+1)とのぶれを補正した後に、対応する画素の値を加算(合成)する(ステップS305)。
【0171】
次に、iとm−1を比較する(ステップS306)。ここにmは、時分割撮影の回数、すなわち時分割撮影により得た画像数である。このステップS306において、i=m−1でないと判定された場合には、J301に分岐して、上述したような処理を繰り返して行う。
【0172】
また、ステップS306において、i=m−1であると判定された場合には、次に、合成画像の平均値を演算する(ステップS307)。
【0173】
また、ステップS303において|ΣΔ(k,k+1)|>αであると判定された場合には、時分割撮影期間中の全体のぶれ量が許容可能な(有効領域の確保が難しい)値よりも大きいと判定して、J302に分岐し、上述したステップS307の処理を行う。
【0174】
こうして、ステップS307の処理を行ったところで、この処理を終了する。
【0175】
以上説明したように、情報処理部8は、全ての時分割画像が重複する領域が予め決められた有効領域内に入るように、最初に撮影した時分割画像を基準にしたぶれ量が予め決めた所定以上の大きさとなる時分割画像について、合成処理対象から除外するようにしている。
【0176】
そして、ぶれ量が所定値内の時分割画像について、合成した画像の内の、最初に撮影した時分割画像から予め決めた領域内の画像を抽出する。このようにすることにより、所定以上の有効領域の抽出処理を簡単に行うことができる。
【0177】
こうして情報処理部8によりぶれが補正された有効領域の画像データは、DRAM9に一時的に記憶された後に、圧縮伸張部10によりJPEGなどの所定のフォーマットの形式の画像データに圧縮されて、記録媒体11に記録される。
【0178】
なお、上述では、時分割画像内の特徴点に基づいてぶれの検出を行っているが、もちろん、角速度センサ等の出力に基づいてぶれの検出を行うようにしても構わない。
【0179】
このような実施形態2によれば、上述した実施形態1とほぼ同様の効果を奏するとともに、撮像素子1から読み出した時分割画像の内の、所定のぶれ量以内の時分割画像に基づいて、ぶれ補正した合成画像を作成することができる。
【0180】
そして、ぶれ補正機能を備えない通常の撮像素子1を用いたデジタルカメラ等においても、ぶれ補正を行うことが可能となる。
【0181】
さらに、ぶれの検出を、時分割画像内の特徴点に基づいて行っているために、角速度センサ等が不要となって、構成を簡単にすることができる。
【0182】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は、電子的に撮影される画像のぶれを補正する電子的ぶれ補正装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の実施形態1におけるデジタルカメラの主として電気的な構成を示すブロック図。
【図2】上記実施形態1において、フォトダイオードに蓄積された電荷を第1の画素電荷として垂直転送CCDに転送する様子を示す図。
【図3】上記実施形態1において、第1の画素電荷読み出し後にフォトダイオードに蓄積された電荷を第2の画素電荷として水平転送CCDに転送しさらに水平方向に転送するとともに、第1の画素電荷を垂直方向に転送する様子を示す図。
【図4】上記実施形態1において、第1の画素電荷と第2の画素電荷とを加算する様子を示す図。
【図5】上記実施形態1において、加算された電荷を同一画素内における垂直転送CCDの電荷保持部に退避する様子を示す図。
【図6】上記実施形態1における撮像素子の第1の構成例を示す図。
【図7】上記実施形態1における撮像素子の第2の構成例を示す図。
【図8】上記実施形態1における電荷排出用ドレインの一構成例を示す図。
【図9】上記実施形態1における電荷排出用ドレインの他の構成例を示す図。
【図10】上記実施形態1において、デジタルカメラにより画像を撮像して記録するときの、図7に示した第2の構成例の撮像素子に対応する処理の一例を示すフローチャート。
【図11】上記実施形態1において、デジタルカメラにより画像を撮像して記録するときの、図7に示した第2の構成例の撮像素子に対応する処理の他の例を示すフローチャート。
【図12】上記実施形態1において、3つの時分割画像の重畳関係における有効領域を示す図。
【図13】上記実施形態1において、撮像素子の撮像領域における有効領域を示す図。
【図14】本発明の実施形態2における撮像素子の動作を示すタイミングチャート。
【図15】上記実施形態2の情報処理部におけるぶれ画像の補正処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0185】
1…固体撮像素子(撮影手段)
1a…撮像部
1b…蓄積部
2…相関二重サンプリング回路(CDS)(撮影手段,信号処理手段)
3…ゲインコントロールアンプ(AMP)(撮影手段,信号処理手段,増幅手段)
4…A/D変換器(撮影手段,信号処理手段)
5…タイミングジェネレータ(TG)(撮影手段,撮影回数制御手段)
6…シグナルジェネレータ(SG)(撮影手段,撮影回数制御手段)
7…CPU(撮影手段,ぶれ検出手段,撮影回数制御手段,ぶれ補正手段,画像合成手段)
8…情報処理部(撮影手段,ぶれ補正手段,画像合成手段,信号処理手段,ぶれ検出手段)
8a…バッファメモリ(記憶手段)
9…DRAM
10…圧縮伸張部
11…記録媒体
12…液晶表示部
13…インタフェース部
14…レンズ駆動系
15…撮影レンズ(撮影手段)
16…絞り駆動系
17…絞り(撮影手段)
18a…第1レリーズスイッチ
18b…第2レリーズスイッチ
19,20…角速度センサ(ぶれ検出手段)
21,22…A/D変換器(ぶれ検出手段)
23…距離検出部
24…EEPROM
25…撮影モード設定部
26…撮影条件設定部
27…フォトダイオード
28…水平転送CCD
29…垂直転送CCD
30…電荷排出用ドレイン
31…読出用水平転送CCD
32…フォトダイオード
33…垂直転送CCD
34…垂直転送CCD
35…水平転送CCD
36…電荷排出用ドレイン
37…読出用水平転送CCD
38…1画素
39…転送電極
40…ゲート電極
41…電荷排出用ドレイン
42…n型基板
43…p型拡散領域
44…n−拡散領域
51,52,53…時分割画像
54…有効領域
55…撮像領域
56…有効領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的に撮影される画像のぶれを補正する電子的ぶれ補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いて静止画像や動画像を撮像する撮像装置は、手で把持して撮影するように構成されたものが少なくない。このような撮像装置において、例えば被写体の輝度が低い場合には、シャッタ速度が遅くなるために、手ぶれが発生し易くなることが知られている。また、車載カメラ等においては、走行時の振動により、同様にぶれが発生する可能性があることが知られている。
【0003】
こうしたぶれを補正するための技術は、従来より種々のものが提案されており、振動に応じて光学系を移動する光学式ぶれ補正、振動に応じて固体撮像素子を移動するセンサシフト式ぶれ補正、撮像した画像を処理することによりぶれを補正する電子式ぶれ補正などがある。
【0004】
これらの内の電子式ぶれ補正では、画像切り出し位置をぶれに応じてフレーム毎に異ならせることにより、画像内の被写体位置を一定に保つようにした動画対応のものがあるが、この技術は1フレーム内の画像のぶれを防止するものではないために、静止画には適用することができない。
【0005】
これに対して、静止画に適用可能な電子式ぶれ補正も、種々のものが提案されている。
【0006】
例えば、特開2001−45359号公報には、撮像素子から複数の画像を連続して読み出して画像メモリに記憶し、その後にこれら複数の画像の相互のぶれを補正して合成することにより、ぶれの補正された画像を生成する撮像装置が記載されている。
【0007】
また、特開2005−198148号公報には、撮像素子内に画像を水平および垂直方向に転送するための電荷転送部を設け、撮像した第1画像と上記電荷転送部に転送した第2画像との相対的なぶれを補正して、これら第1画像と第2画像とを合成することによりぶれが補正された画像を生成する固体撮像素子が記載されている。
【特許文献1】特開2001−45359号公報
【特許文献2】特開2005−198148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した各公報に記載された技術は、複数の画像の相対的な位置を調整してから合成を行い、1つの画像を得るものである。ところで、n(nは正の整数)枚の時分割撮影した画像の相互のぶれを補正してから1つの合成画像を生成するときには、生成した合成画像の端部に、合成された画像の枚数がn枚に満たない領域が発生することになる。こうしたn枚に満たない領域は、n枚が合成された領域に比べて輝度が段階的に小さくなるために、切り捨てるか、あるいは補正処理をする必要がある。このn枚に満たない領域は、通常は、画像全体の大きさに比べて無視できる程度に狭く、また補正には複雑な処理を要することから、切り捨てる方法を採用するのが簡単で実用的である。しかし、カメラのように不特定多数のユーザーが使用する機器においては、撮影者の技能に応じてぶれが非常に大きくなり、有効な画像領域が許容できないほど狭くなってしまう場合が生じることも考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、撮影者の技能に依ることなく、ぶれが補正された、所定以上の大きさの画像の有効領域を確保することができる電子的ぶれ補正装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明による電子的ぶれ補正装置は、連続して複数の画像を撮影する撮影手段と、上記画像のぶれを検出するぶれ検出手段と、上記連続して撮影された複数の画像の内の連続する所定数の画像の全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように連続撮影の回数を制御する撮影回数制御手段と、上記撮影回数制御手段の制御に基づき所定回数撮影された複数画像の相互のぶれを補正するぶれ補正手段と、上記ぶれ補正手段により補正された画像を合成する画像合成手段と、を具備したものである。
【0011】
また、第2の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第1の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記撮影手段が、マトリクス状に配列された複数の画素と、該画素により生成された第1画像を保持するレジスタと、を有する撮像素子を含んで構成されたものであり、上記ぶれ補正手段は、上記画素により生成された第2画像と上記レジスタに保持された第1画像との相対的なぶれを打ち消すように上記第1画像と上記第2画像との相対的な位置を移動させるものであり、上記画像合成手段は、上記ぶれ補正手段により補正された、上記第1画像と上記第2画像とを合成するものである。
【0012】
さらに、第3の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第1の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記撮影回数制御手段が、上記連続して撮影される複数の画像の全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように、撮影回数を制御するものである。
【0013】
第4の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第1の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記撮影回数制御手段が、上記連続して撮影される複数の画像の全体の露光時間が、撮影レンズの焦点距離の逆数に予め決められた所定の係数を乗じて得られる露光時間以下になるように、撮影回数を制御するものである。
【0014】
第5の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第2の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記連続して撮影される画像の数が予め決められた所定数に達しないときに上記画像合成手段により合成された画像を増幅する増幅手段をさらに具備したものである。
【0015】
第6の発明による電子的ぶれ補正装置は、上記第1の発明による電子的ぶれ補正装置において、上記撮像手段が、マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子と、この撮像素子の出力信号を受けてデジタル化された複数の画像を生成する信号処理手段と、上記信号処理手段により処理された画像を記憶する記憶手段と、を有して構成されたものであり、上記ぶれ補正手段は、上記記憶手段に記憶された画像のぶれを補正するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子的ぶれ補正装置によれば、撮影者の技能に依ることなく、ぶれが補正された、所定以上の大きさの画像の有効領域を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施形態を詳細に説明する前に、まず、ぶれを補正するための原理について簡単に説明する。
【0018】
例えば、被写体を測光して得られた適正露光時間(全露光時間)が1/15秒であるとする。そして、この1/15秒の露光時間(シャッタ速度)ではぶれが発生するものとする。これに対して、露光時間(シャッタ速度)が1/125秒であるときには、ぶれが発生しないか、もしくは発生するぶれが実質的に無視し得るものとする。このようなケースにおいて、上述した全露光時間1/15秒を、1/125秒の露光時間に時分割して、該時分割撮影により8回の撮影を行い、この時分割撮影して得られた8枚の画像を合成(加算)することにより1/15秒の適正露光時間の1枚の画像を得るものである。ただし、上記1/125秒で撮影した時分割撮影による画像を単純に合成したのではぶれは補正されないために、各時分割画像のぶれを相互に補正してから合成する。そして、この合成した画像の内の、全ての時分割画像が重複する領域が有効な領域となる。しかし、ぶれが大きすぎると、この有効領域が狭くなってしまう。そこで、有効領域が余り狭くならないように、ぶれ量が所定の許容量以上であるときには、この許容レベルを超える画像について合成対象から除外する。そして、1枚以上の時分割画像を除外して得られる合成画像は、そのままでは信号レベルが所定レベルに達しないものとなってしまうために、除外した時分割画像の枚数に応じて、つまり合成した時分割画像の枚数に応じて、画像を増幅し適切な信号レベルを得る。
【0019】
以下に説明する実施形態1は、このようなぶれ補正と時分割画像の合成とを、撮像素子内で高速に行うものとなっている。また、以下に説明する実施形態2は、上述したようなぶれ補正と時分割画像の合成とを、時分割画像を撮像素子から読み出してデジタル信号に変換した後に行うものとなっている。
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
[実施形態1]
図1から図13は本発明の実施形態1を示したものであり、図1はデジタルカメラの主として電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態は、デジタルカメラに電子的ぶれ補正装置を適用したものとなっている。
【0022】
このデジタルカメラは、固体撮像素子(以下では適宜、撮像素子と略称する)1と、相関二重サンプリング回路(CDS:Correlated Double Sampling)2と、ゲインコントロールアンプ(AMP)3と、A/D変換器4と、タイミングジェネレータ(TG)5と、シグナルジェネレータ(SG)6と、CPU7と、情報処理部8と、DRAM9と、圧縮伸張部10と、記録媒体11と、液晶表示部12と、インタフェース部13と、レンズ駆動系14と、撮影レンズ15と、絞り駆動系16と、絞り17と、第1レリーズスイッチ18aおよび第2レリーズスイッチ18bと、角速度センサ19および角速度センサ20と、A/D変換器21およびA/D変換器22と、距離検出部23と、CPU7に内蔵されたEEPROM24と、撮影モード設定部25と、撮影条件設定部26と、を含んでいる。
【0023】
撮影レンズ15は、被写体像を撮像素子1の撮像面へ結像するための撮像光学系であり、撮影手段を構成している。
【0024】
絞り17は、この撮影レンズ15からの結像光束の通過範囲を規定することにより光量の調整を行うための光学絞りであり、撮像光学系の一部であって、撮影手段を構成している。
【0025】
撮像素子1は、絞り17を介して撮影レンズ15により結像された被写体像を、光電変換して電気信号として出力するものであり、撮影手段を構成している。ここに、図6は撮像素子1の第1の構成例を、図7は撮像素子1の第2の構成例を、それぞれ示している。図6,図7に示す撮像素子1は、何れも、マトリクス状に配列された多数のフォトダイオードと、ぶれを許容し得るような高速の露光制御によって上記フォトダイオードにより生成された第1画像を保持する第1レジスタとしての水平転送CCDまたは垂直転送CCDと、上記第1画像に続いて撮像される第2画像を保持する上記第1レジスタとは異なる第2レジスタとしての水平転送CCDまたは垂直転送CCDと、第1レジスタと第2レジスタとに保持された2つの画像の相対的なぶれを打ち消すように、これら2つの画像を上記第1レジスタ内、および上記第2レジスタ内でシフトした後に、上記2つの画像を合成し、この合成した画像を上記第1レジスタまたは上記第2レジスタに保持するという動作を繰り返し実行して、撮像素子1内においてぶれの補正された画像を生成するものである。このような撮像素子1のより詳細な構成や作用については、後で説明する。
【0026】
TG5は、この撮像素子1を駆動するための転送パルスを供給するものであり、撮影手段、信号処理手段を構成している。
【0027】
CDS2は、TG5から供給されるサンプルホールドパルスに従って駆動され、撮像素子1から出力される画像信号に相関二重サンプリング等の処理を行うことによりリセットノイズを除去するものであり、撮影手段、信号処理手段を構成している。
【0028】
SG6は、CPU7の制御に基づき、同期信号を生成してTG5へ出力するものであり、撮影手段、信号処理手段を構成している。
【0029】
ゲインコントロールアンプ(AMP)3は、CDS2から出力されるアナログの信号を増幅する増幅手段であり、撮影手段、信号処理手段を構成している。このゲインコントロールアンプ(AMP)3の増幅率は、ISO(International Organization for Standardization)感度Svに応じた増幅率に設定されるようになっていて、つまりゲインコントロールアンプ(AMP)3は、ISO感度変更部となっている。また、ゲインコントロールアンプ(AMP)3の増幅率は、時分割撮影された画像の数が規定数に達しないときに、その不足分を補うために合成された画像を増幅する際にも用いられる。
【0030】
A/D変換器4は、TG5から供給される信号に従って、ゲインコントロールアンプ(AMP)3から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換部であり、撮影手段、信号処理手段を構成している。
【0031】
情報処理部8は、A/D変換器4から出力される画素信号を処理して、画像データを生成するものであり、撮影手段、ぶれ補正手段、画像合成手段、信号処理手段を構成している。この情報処理部8は、撮像素子1から出力された画像データの中からぶれが適正に補正された画像データを抽出する機能を有する有効領域抽出部を含んでいる。さらに、この情報処理部8は、画像データを一時的に記憶するための記憶手段たるバッファメモリ8aを備えて構成されている。
【0032】
DRAM9は、情報処理部8から出力される画像データを一時的に記憶するものであるとともに、記録媒体11から読み出された圧縮画像データを圧縮伸張部10により伸張して得られた画像データを一時的に記憶するものとなっている。なお、上述したバッファメモリ8aがDRAM9の機能を兼用するように構成しても構わない。
【0033】
圧縮伸張部10は、DRAM9に記憶されている画像データを圧縮するとともに、記録媒体11から読み出された圧縮画像データを伸張するものである。
【0034】
記録媒体11は、圧縮伸張部10により圧縮された画像データを記録する記録部であり、例えば不揮発性の記録媒体となっている。
【0035】
液晶表示部12は、情報処理部8から出力される画像データ、またはDRAM9から出力される伸張された画像データを表示するものである。この液晶表示部12は、各種の警告表示等を行う表示部を兼ねたものとなっている。
【0036】
インタフェース部13は、モニタやパーソナルコンピュータ等の外部装置とのデータの授受を行うための端子を含むインタフェースである。このインタフェース部13を介して、情報処理部8またはDRAM9から供給される画像データ等を外部装置へ出力することが可能であり、あるいは場合によっては、外部装置から画像データ等をデジタルカメラ内に取り込むことが可能となっている。
【0037】
レンズ駆動系14は、距離検出部23により検出された被写体距離に基づきCPU7から指令を受けることにより、撮影レンズ15を合焦位置へ駆動するものである。このような処理は、いわゆるオートフォーカス制御として公知のものである。なお、ここでは距離検出部23からの出力に基づきオートフォーカス制御を行っているが、CPU7が、DRAM9に記憶された1フレーム(1画面)分の画像データの輝度成分にハイパスフィルタなどを用いて高周波成分を抽出し、抽出した高周波成分の累積合成値を算出する等により高周波域側の輪郭成分等に対応したAF評価値を算出し、該AF評価値に基づいて焦点検出を行うようにしても構わない。
【0038】
絞り駆動系16は、DRAM9に記憶された画像データに基づき測光部たるCPU7が露出演算を行い、該CPU7からその結果に基づいた指令を受けることにより、絞り17を駆動して開口径を変更する絞り制御部である。このような処理は、いわゆるAE(自動露出)制御として公知のものである。
【0039】
角速度センサ19は、デジタルカメラを被写体側から見たときの左右の方向における右方向をX軸方向としたときに、このX軸方向を回転中心としてデジタルカメラを回転したときの角速度を検出するためのぶれ検出手段である。
【0040】
一方、角速度センサ20は、デジタルカメラの上下方向における上方向をY軸方向としたときに、このY軸方向を回転中心としてデジタルカメラを回転したときの角速度を検出するためのぶれ検出手段である。
【0041】
A/D変換器21は、角速度センサ19により検出された角速度を表すアナログ信号を、所定の時間間隔(サンプリング間隔)でデジタル信号に変換するものであり、ぶれ検出手段の一部である。
【0042】
同様に、A/D変換器22は、角速度センサ20により検出された角速度を表すアナログ信号を、所定の時間間隔(サンプリング間隔)でデジタル信号に変換するものであり、ぶれ検出手段の一部である。
【0043】
CPU7は、A/D変換器21により変換されたデジタル信号を時間積分する処理を行う。この時間積分されたデジタル信号は、カメラ本体の上記X軸を回転中心とする回転量に相当する。また、X軸周りの回転方向が右回りであるか左回りであるかは、角速度センサ19のアナログ出力信号が正であるかあるいは負であるかにより判別されるようになっている。
【0044】
同様に、CPU7は、A/D変換器22により変換されたデジタル信号を時間積分する処理を行う。この時間積分されたデジタル信号は、カメラ本体の上記Y軸を回転中心とする回転量に相当する。また、Y軸周りの回転方向が右回りであるか左回りであるかは、角速度センサ20のアナログ出力信号が正であるかまたは負であるかにより判別されるようになっている。
【0045】
第1レリーズスイッチ18aは、撮像動作を指示入力するための自動復帰型の2段スイッチでなるレリーズスイッチの1段目である。レリーズスイッチが押し込まれてこの第1レリーズスイッチ18aがオンされると、測距動作や測光動作が行われるようになっている。
【0046】
第2レリーズスイッチ18bは、撮像動作を指示入力するための自動復帰型の2段スイッチでなるレリーズスイッチの2段目である。レリーズスイッチがさらに押し込まれてこの第2レリーズスイッチ18bがオンされると、撮像素子1により撮像動作が行われ、画像データが上述したように生成されて、圧縮された後に記録媒体11に記録されるようになっている。
【0047】
距離検出部23は、被写体までの距離を検出するためのものであり、公知の構成のものを適宜採用することが可能である。
【0048】
撮影モード設定部25は、シャッタ優先撮影モード、絞り優先撮影モード、プログラム撮影モードの何れかを選択するためのものである。
【0049】
撮影条件設定部26は、シャッタスピード(露光時間)や絞り値、ISO感度などの各種の撮影条件を設定するためのものである。
【0050】
CPU7は、露出値Evと、露出制御を最適に行うためのTv(露光時間のアペックス値)およびAv(絞り値のアペックス値)と、の関係をプログラム線図として記憶するEEPROM24を不揮発性メモリとして内蔵している。このEEPROM24には、デジタルカメラに必要なその他の情報も適宜格納可能となっている。
【0051】
このCPU7には、第1レリーズスイッチ18aからの信号、第2レリーズスイッチ18bからの信号、A/D変換器21を介した角速度センサ19からの信号、A/D変換器22を介した角速度センサ20からの信号、撮影モード設定部25からの信号、および撮影条件設定部26からの信号が入力されるようになっている。そしてCPU7は、TG5とSG6とへ指令を出力するようになっている。
【0052】
さらに、CPU7は、情報処理部8、DRAM9、レンズ駆動系14、絞り駆動系16、および距離検出部23と双方向に接続されていて、これらを含むこのデジタルカメラ全体を制御する制御部となっており、撮影手段、ぶれ検出手段、撮影回数制御手段、ぶれ補正手段、画像合成手段を兼ねたものである。
【0053】
具体的には、CPU7は、上述したようなオートフォーカス制御やAE制御を行うとともに、第1レリーズスイッチ18aおよび第2レリーズスイッチ18bからの静止画像の取り込みを指示する信号に基づき、撮像素子1の駆動モードの切り換えを行うようになっている。さらに、このCPU7は、絞り17の開口を変更する制御や撮像素子1の露光時間制御などを行うようになっている。そして、CPU7は、撮影モード設定部25からの入力に基づきこのデジタルカメラの撮影モードを設定し、撮影条件設定部26からの入力に基づきデジタルカメラに係る撮影条件を設定するようになっている。加えて、CPU7は、角速度センサ19,20からの出力に基づき、ぶれ量の演算等も行うようになっている。
【0054】
次に、図2〜図5を参照して、撮像素子1の動作原理について説明する。図2はフォトダイオードに蓄積された電荷を第1の画素電荷として垂直転送CCDに転送する様子を示す図、図3は第1の画素電荷読み出し後にフォトダイオードに蓄積された電荷を第2の画素電荷として水平転送CCDに転送しさらに水平方向に転送するとともに、第1の画素電荷を垂直方向に転送する様子を示す図、図4は第1の画素電荷と第2の画素電荷とを加算する様子を示す図、図5は加算された電荷を同一画素内における垂直転送CCDの電荷保持部に退避する様子を示す図である。
【0055】
撮像素子1には、被写体からの光線を受けて電荷を発生するフォトダイオード27が、複数、マトリクス状に配列されていて、マトリクス状に配列されたこれらのフォトダイオード27が光電変換部を構成している。
【0056】
さらに、撮像素子1は、光電変換部のフォトダイオード27の各行に隣接して行方向に配置された水平転送レジスタでありぶれ補正部、合成部たる水平転送CCD28を備えている。この水平転送CCD28は、フォトダイオード27で発生した電荷を読み出して得られた第1画像を記憶するとともに、この第1画像を水平方向に転送するものである。
【0057】
また、撮像素子1は、光電変換部のフォトダイオード27の各列に隣接して列方向に配置された垂直転送レジスタでありぶれ補正部、合成部たる垂直転送CCD29を備えている。この垂直転送CCD29は、第1画像よりも前の時刻に得られた電荷を合成した合成電荷に係る第2画像を記憶するとともに、この第2画像を垂直方向に転送するものである。
【0058】
そして、水平転送CCD28と垂直転送CCD29とが交差する位置に配置された電極部分は、第1画像と第2画像とをアナログ合成する合成部として機能するようになっている。
【0059】
なお、ここでは、複数のフォトダイオード27が、縦方向と、この縦方向に垂直な横方向と、に配列されてマトリクス状をなしている例を示しているが、実質的なマトリクス状をなす配列であればこれに限るものではない。例えば、一方向と、この一方向に斜めに交差する他方向と、に配列されてマトリクス状をなしているものでも構わない。このときには、水平転送CCD28と垂直転送CCD29とを、互いに斜めに交差する方向に配置すれば良い。さらに、フォトダイオード27の形状も正方形や矩形に限るものではなく、平行四辺形や三角形、六角形等の各種の形状であっても構わない。
【0060】
そして、撮像素子1における1画素38は、1つのフォトダイオード27と、このフォトダイオード27に隣接する水平転送CCD28の部分および垂直転送CCD29の部分と、を含んでいる。また、1画素38のサイズを、水平方向(横方向)の長さがLx、垂直方向(縦方向)の長さがLyであるとする。
【0061】
このような構成の撮像素子1の動作を説明する。
【0062】
以下では、撮像素子1の左上角に配置されたフォトダイオードをP1,1 と表記し、水平方向右側へ向かってi(iは1以上の整数)番目、垂直方向下側へ向かってj(jは1以上の整数)番目の位置に配置されたフォトダイオードをPi,j と表記することにする。
【0063】
図2は、最初に光電変換し蓄積されたフォトダイオードPi,j の電荷(第1の画素電荷)(図中において丸印で示している)を、このフォトダイオードPi,j に隣接する垂直転送CCD29にシフトした(読み出した)ところを示している。なお、この図2においては、フォトダイオードPi,j に係る第1の画素電荷のみを図示しているが、他の全てのフォトダイオードにおいて同一の時間だけ光電変換し蓄積された電荷も、同様に垂直転送CCD29に一斉にシフトされることになる。
【0064】
図3は、第1の画素電荷をシフトした直後から光電変換し蓄積されたフォトダイオードPi-1,j-1 の電荷(第2の画素電荷)を、このフォトダイオードPi-1,j-1 に隣接する水平転送CCD28にまずシフトした(読み出した)ことを示している。なお、この図3においても、フォトダイオードPi-1,j-1 に係る第2の画素電荷のみを図示しているが、他の全てのフォトダイオードにおいて同一の時間だけ光電変換し蓄積された電荷が、同様に水平転送CCD28に一斉にシフトされることになる。ここに、第1の画素電荷蓄積時にフォトダイオードPi,j に到達していた被写体からの光が、第2の画素電荷蓄積時には手ぶれ等によりフォトダイオードPi-1,j-1 に到達する位置に移っているものとする。この光の到達位置の変化は、第2の画素電荷の蓄積が終わった時点で初めて判明するために、図2に示した状態においては、第1の画素電荷はまだ転送されず、垂直転送CCD29に保持(記憶)されるのみである。しかし、第2の画素電荷を読み出した後は、角速度センサ19,20の出力により光の到達位置の変化が判明するために、同一の被写体光に係る第1の画素電荷と第2の画素電荷との位置関係が分かり、後述する合成を行うために、互いに近接する位置(同一の1画素38内の位置)への転送が行われる。すなわち、図3には、第2の画素電荷が水平転送CCD28上を紙面右方向に1画素分転送されるとともに、第1の画素電荷が垂直転送CCD29上を紙面上方向に1画素分転送される例が示されている。なお、第1の画素電荷の転送と第2の画素電荷の転送とが、全てのフォトダイオードに係る画素電荷について行われるのは上述と同様である。このような水平転送CCD28による転送と垂直転送CCD29による転送とを行うためには、各転送CCDが交差する位置において水平転送CCD28内の電荷と垂直転送CCD29内の電荷とが干渉することのないように、転送電極の配置を工夫する必要がある。
【0065】
図4は、第1の画素電荷と第2の画素電荷とを、水平転送CCD28と垂直転送CCD29とが交差する位置にシフトして、該交差位置において合成した様子(合成であることを、図4中において「+」により示している)を示している。この合成は、全てのフォトダイオードに係る第1の画素電荷と、全てのフォトダイオードに係る第2の合成電荷と、について行われることは勿論である。
【0066】
これにより、第1の画像(全ての第1の画素電荷で構成される画像)と、この第1の画像の直後に連続して撮影された第2の画像(全ての第2の画素電荷で構成される画像)と、がぶれ量だけシフトされた後に、つまりぶれを補正された後に、合成されたことになる。
【0067】
なお、3番目以降の時分割画像を新たに読み出した場合には、第1の画像に相当するのは、それまでの時分割画像を合成して得られた合成画像(最初の時分割画像から最新の1つ前の時分割画像までを順次ぶれ補正して合成して得られた画像)となるために、この図4に示すような動作を行うことにより、新たな時分割画像(全ての新たな画素電荷で構成される画像)と、合成画像と、の相対的なぶれ量が補正された後に、合成されることになる。
【0068】
図5は、水平転送CCD28と垂直転送CCD29との交差位置において合成された画素電荷を、同一画素内における例えば垂直転送CCD29の電荷保持部に転送した(退避させた)様子を示している。交差位置は、水平転送と垂直転送との両方に用いられるために、該交差位置に合成電荷を保持したままであると、次に読み出した画素電荷との合成を行うことができない。
【0069】
そこで、ここでは、合成後の電荷を、一旦、垂直転送CCD29の電荷保持部へ退避させるようにしたものである。これにより、次の画素電荷を水平転送CCD28へ読み出せば、上述と同様に、画素の合成を行うことが可能となる。
【0070】
なお、ここでは、合成後の電荷を同一画素内における垂直転送CCD29の電荷保持部へ転送した(退避させた)が、これに代えて、同一画素内における水平転送CCD28の電荷保持部へ転送しても(退避させても)構わない。このときには、次の画素電荷は、垂直転送CCD29へ読み出されることになる。また、合成後の画素電荷を退避させるのは、必ずしも同一画素内に限るものではない。
【0071】
従って、図2〜図5に示したような例に限らず、合成電荷は、水平転送CCD28と垂直転送CCD29との何れか一方の記憶部に記憶させれば良く、新たな画素電荷は、水平転送CCD28と垂直転送CCD29との何れか他方の記憶部へ読み出して記憶させれば良い。
【0072】
以上説明したように、
画像の水平転送CCDへのシフト
→ 相対的なぶれ補正のための電荷転送
→ 電荷の合成
→ 合成した電荷を水平転送CCDと垂直転送CCDとが交差する位置から退避する
というシーケンスを繰り返し行うようになっている。ただし、複数の時分割撮影の内の最初の時分割撮影による時分割画像については、ぶれ量が0、垂直転送CCDの電荷の合成値が0であるとして、同様のシーケンスを実行すれば足りる。
【0073】
なお、図2〜図5においては、合成画像に対して新たな時分割画像が左方向に1画素かつ上方向に1画素だけずれている例を示したが、一般的には、ずれ量に応じた適宜の画素数だけ水平方向および垂直方向に移動させることになる。
【0074】
以上説明したようなぶれ補正の動作原理は、撮像部の個々のフォトダイオードを囲むように配置された水平転送CCDと垂直転送CCDとに蓄積された2つの画像のX方向およびY方向の相対的なぶれを補正するものであった(図6参照)。これに対して、後で図7を参照して説明するように、撮像素子1内に撮像部とは別個に画像を蓄積するための蓄積部を設けて、この蓄積部に、時分割撮影された画像を保持するための垂直転送CCDと、この時分割画像とそれまでの時分割画像とのぶれを補正し合成して得られる合成画像を記憶するための水平転送CCDと、を設けることによっても、同様に、撮像素子1内でぶれの補正された画像を生成することができる。
【0075】
次に、図6は、撮像素子1の第1の構成例を示す図である。
【0076】
第1の構成例の撮像素子1は、図6に示すように、画像を光電変換して蓄積するフォトダイオード27と、このフォトダイオード27から読み出された電荷を水平方向に転送するための水平転送CCD28と、該フォトダイオード27から読み出された電荷を垂直方向に転送するための垂直転送CCD29と、上述した水平転送CCD28または垂直転送CCD29の端部に転送された電荷を転送路外へ排出するための電荷排出用ドレイン30と、垂直転送CCD29から転送された電荷を撮像素子1から外部に読み出すための読出用水平転送CCD31と、を有して構成されている。
【0077】
ここに、電荷排出用ドレイン30は、全ての水平転送CCD28の両端部と、全ての垂直転送CCD29の図6における紙面上側の端部と、に転送された電荷を転送路外へ排出することができるように、読出用水平転送CCD31側を除く撮像部の辺縁に、コの字形状に配設されている。
【0078】
このような構成において、フォトダイオード27により光電変換して蓄積された画素電荷は、水平転送CCD28に読み出されて蓄積されるようになっている。この水平転送CCD28に蓄積された電荷は、全体として第1画像を形成するものである。また、垂直転送CCD29には、それまでの合成電荷が記憶されている。この合成電荷は、全体として第2画像を形成するものである。新たに読み出された画素電荷は、読み出された水平転送CCD28内において、角速度センサ20の出力に基づき算出されたY軸周りのぶれに基づいて、垂直転送CCD29に記憶されている第2画像との相対的な水平方向のぶれ量を補正する移動量だけ転送される。一方、垂直転送CCD29に記憶されている合成画像である第2画像は、垂直転送CCD29内において、角速度センサ19の出力に基づき算出されたX軸周りのぶれに基づいて、水平転送CCD28に記憶されている第1画像との相対的な垂直方向のぶれ量を補正する移動量だけ転送される。
【0079】
こうしてぶれ量を補正するだけのシフトが行われたら、その後に、水平転送CCD28と垂直転送CCD29とが交差する位置において、新たに読み出された画素電荷とそれまでの合成電荷とを合成して垂直転送CCD29に記憶することにより、相対的なぶれを補正された新たな合成電荷が生成されるようになっている。以上説明したような動作が、時分割撮影の回数として設定された所定回数、例えば10回、行われる。ここで、垂直転送CCD29および水平転送CCD28に蓄積された電荷は、ぶれに応じて上下左右にシフトされることになるために、各転送CCD28,29の端部に達した電荷を、電荷排出用ドレイン30を介して転送路外に排出するようになっている。
【0080】
図6に示すような第1の構成例においては、電荷排出用ドレイン30は、図8に示すように構成されている。ここに、図8は、電荷排出用ドレイン30の構成例を示す図である。この図8に示す構成例においては、n型基板(例えば、n型シリコン基板)42の表面部分に、まず、p型拡散領域(pウェル:p−well)43と、n−拡散領域44と、が表面側へ向かって順に形成されている。さらに、水平転送CCD28または垂直転送CCD29の端部である転送電極39の下のポテンシャル井戸(n−拡散領域44)に隣接して、n+拡散領域のドレイン30が形成されている。そして、端部の転送電極39に達した電荷は、このn+拡散領域のドレイン30を介して排出される。一方、垂直転送CCD29の読出用水平転送CCD31側の端部に達した電荷は、この読出用水平転送CCD31を介して排出するようになっている。このような電荷の排出機構を備えることにより、水平転送CCD28および垂直転送CCD29において電荷があふれるのを防止することができるようになっている。
【0081】
以上のようにして得られた最終的な合成電荷が、ぶれ補正された画像を構成する電荷となる。
【0082】
なお、図6に示す第1の構成例においては、時分割画像を水平転送CCD28に読み出すとともに、合成した画像を垂直転送CCD29に保持するようにしたが、これに代えて、時分割画像を垂直転送CCD29に読み出すとともに、合成した画像を水平転送CCD28に保持するようにしても良い。
【0083】
次に、図7は、撮像素子1の第2の構成例を示す図である。
【0084】
この図7に示す撮像素子1は、撮像部1aと蓄積部1bとが分離したいわゆるFIT型CCD(フレームインターライン転送型CCD)である。
【0085】
撮像部1aは、画像を光電変換して蓄積するフォトダイオード32と、このフォトダイオード32から読み出された電荷を垂直方向に転送するための垂直転送CCD33と、を有して構成されている。
【0086】
蓄積部1bは、撮像部1aの垂直転送CCD33から転送された電荷をこの蓄積部1b内の所定位置まで転送する垂直転送CCD34と、この垂直転送CCD34と交差するように配置された水平転送CCD35と、水平転送CCD35の両端部に転送された電荷を転送路外に排出するための電荷排出用ドレイン36と、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部に転送された電荷を転送路外に排出するための電荷排出用ドレイン41と、垂直転送CCD34から転送された電荷を撮像素子1から外部に読み出すための読出用水平転送CCD37と、を有して構成されている。
【0087】
このような構成の撮像素子1において、フォトダイオード32により光電変換して蓄積された画素電荷は、垂直転送CCD33を介して蓄積部1bの垂直転送CCD34に転送される。この垂直転送CCD34に転送された電荷は、全体として第1画像を形成する。
【0088】
まず第1回目の時分割撮影により垂直転送CCD34に転送された第1画像は、その後に水平転送CCD35に転送される。この水平転送CCD35に蓄積された画像を第2画像とする。
【0089】
次の時分割撮影により撮影された画像は、再び垂直転送CCD34に転送される。そしてこの第1画像は、角速度センサ19の出力に基づき算出されたX軸周りのぶれに基づいて、水平転送CCD35に蓄積されている第2画像との垂直方向の相対的なずれを打ち消す方向に所定量だけシフトされる。また、第2画像は、角速度センサ20の出力に基づき算出されたY軸周りのぶれに基づいて、垂直転送CCD34に蓄積された第1画像との水平方向の相対的なずれを打ち消す方向に所定量だけシフトされる。そして、垂直方向および水平方向の相対的なぶれが打ち消されるようにシフトされた第1画像および第2画像は、垂直転送CCD34と水平転送CCD35とが交差する位置またはその近傍において合成され、水平転送CCD35に蓄積される。
【0090】
その後に再び時分割撮影が行われ、この撮影された画像が第1画像として蓄積部1bの垂直転送CCD34に保持される。そして同様にしてぶれが補正された合成画像が生成され、水平転送CCD35に保持される。このような動作が、時分割撮影の回数として設定された所定回数、例えば10回行われる。ここで垂直転送CCD34、および水平転送CCD35に蓄積された電荷は、ぶれに応じて上下左右にシフトされるために、水平転送CCD35の端部に達した電荷は電荷排出用ドレイン36を介して、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部に達した電荷は電荷排出用ドレイン41を介して、垂直転送CCD34の読出用水平転送CCD37側の端部に達した電荷は該読出用水平転送CCD37を介して、それぞれ転送路外に排出される。
【0091】
この図7に示すような第2の構成例の撮像素子1における電荷排出用ドレイン36は、図6に示したような第1の構成例の撮像素子1における電荷排出用ドレイン30(図8参照)と同様に、水平転送CCD35の端部である転送電極の下のポテンシャル井戸(n−拡散領域)に隣接して設けられたn+拡散領域のドレインとなっている。
【0092】
一方、第2の構成例の撮像素子1における電荷排出用ドレイン41をもし図8と同様に構成すると、撮像部1aからの電荷が蓄積部1bへ転送されなくなってしまう。そこで、この電荷排出用ドレイン41は、図9に示すように構成している。ここに、図9は、電荷排出用ドレイン41の構成例を示す図である。すなわち、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部の転送電極39に隣接してゲート電極40を設け、このゲート電極40を挟んだ転送電極39の反対側の位置にn+拡散領域でなる電荷排出用ドレイン41を設けている。そして、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部に転送された電荷は、ゲート電極40を介して、選択的に電荷排出用ドレイン41に排出されるようになっている。
【0093】
すなわち、撮像部1aからの電荷を蓄積部1bに転送するときには、ゲート電極40に低電圧を印加する。これにより、垂直転送CCD34を転送される電荷は、電荷排出用ドレイン41に排出されるのを防止される。一方、蓄積部1bに蓄積された電荷をぶれ補正のために垂直転送CCD34内で転送するときには、ゲート電極40に高電圧を印加することにより、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部に転送された電荷が電荷排出用ドレイン41に排出される。また、垂直転送CCD34の読出用水平転送CCD37側の端部に達した電荷は、この読出用水平転送CCD37を介して排出される。
【0094】
このような構成および作用により、垂直転送CCD34および水平転送CCD35で電荷があふれるのを防止することができるようになっている。
【0095】
なお、上述したような構成例においては、ぶれ補正のための電荷転送時に、垂直転送CCD34の撮像部1a側の端部の電荷を電荷排出用ドレイン41に排出するようにした。しかし、これに代えて、ぶれ補正のための電荷転送時に、垂直転送CCD33も同時に駆動して垂直転送CCD34の上端部に達した電荷をこの垂直転送CCD33に転送する(排出する)ことにより、電荷があふれるのを防止するようにしても良い。そして、この場合には、垂直転送CCD33に排出された電荷を、垂直転送CCD34(第1画像および第2画像の合成が行われて水平転送CCD35に蓄積され、電荷を保持していない状態の垂直転送CCD34)および読出用水平転送CCD37を介して排出し、その後に次回の時分割撮影を行うようにすれば良い。
【0096】
上述したようにして所定回数のぶれ補正および合成の動作が終了すると、水平転送CCD35に保持された画像は、垂直転送CCD34に転送された後に、垂直転送CCD34と読出用水平転送CCD37とを介して撮像素子1から外部に読み出される。
【0097】
次に、図10は、デジタルカメラにより画像を撮像して記録するときの、図7に示した第2の構成例の撮像素子1に対応する処理の一例を示すフローチャートである。
【0098】
デジタルカメラの電源が投入される(例えば、電池が交換されるなど)か、または、図示しない動作開始スイッチ(例えば、電源スイッチ)が操作されると、このデジタルカメラの動作がスタートする。
【0099】
処理を開始すると、所定の初期値設定等を行った後に、まず、撮影者のレリーズ操作によって第1レリーズスイッチ18aが閉じた状態になったか否かを判定する(ステップS101)。
【0100】
ここで、第1レリーズスイッチ18aが閉じていない場合には、J101に分岐して、第1レリーズスイッチ18aの検出を同様に繰り返して行う。ただし、実際には、J101とステップS101との間に、表示を行ったり、その他の図示しないキー入力の状態を検出したりする動作等を行うが、こうした一般的な動作については以下においても適宜説明を省略することにする。
【0101】
ステップS101において第1レリーズスイッチ18aが閉じたことが検出された場合には、次に、ぶれ限界露光時間TLimit を演算する(ステップS102)。このぶれ限界露光時間TLimit は、露光開始からのぶれ量が許容限界のぶれ量に達すると想定される時間である。
【0102】
ここで、ぶれ限界露光時間TLimit について説明する。35ミリフィルムカメラにおける縦24mm×横36mm(対角 43.28mm)のいわゆるライカ版フレーム(別称:ダブルフレーム)カメラに関する長年の経験則として、ミリメートル単位の撮影レンズの焦点距離をfとしたときに、ぶれ限界露光時間TLimit が、TLimit ≒1/f(秒)になるということが知られている。本実施形態においては、この経験則を、デジタルカメラの撮像素子1の有効撮像エリア内に設定した撮影画枠の大きさを考慮の上、応用することにする。なお、ぶれ限界露光時間TLimit は、必ずしも、1/fに基づき与えられる値を用いる必要はなく、要するに、ぶれが実質的に発生することのないような露光時間を用いれば良い。従って、ぶれ限界露光時間TLimit は、概略、1/fに基づき与えられる露光時間よりも短い時間であれば構わない。
【0103】
次に、被写体の明るさを測光する(ステップS103)。この測光は、撮像素子1から繰り返し出力される画像信号のレベルをモニタして、被写体の明るさを演算するものである。すなわち、撮像素子1から読み出された画像信号は、CDS2により処理されゲインコントロールアンプ3により増幅された後にA/D変換器4によりデジタル値に変換され、情報処理部8を経てDRAM9に一時的に記憶される。このDRAM9に記憶された画像信号の内、画像全体の中の例えば中央部付近の所定領域の画像信号がCPU7により読み出されて、そのレベルの加算平均値が求められる。そして、CPU7は、求めた加算平均値に基づいて被写体の明るさ(Bv)を計算する。
【0104】
続いて、CPU7は、適正露光を得るために必要なシャッタ速度値(露光時間)TExp や絞り17の絞り値を計算するとともに、計算結果に基づき絞り駆動系16を介して絞り17の絞り設定を行う(ステップS104)。ここで、上記露光時間TExp は、時分割撮影の露光時間をΔTExp 、時分割撮影の回数をmとすると、TExp =m×ΔTExp の関係が成り立つものである。
【0105】
次に、第2レリーズスイッチ18bが閉じているか否かを判定する(ステップS105)。ここで、第2レリーズスイッチ18bが閉じていない場合には、第1レリーズスイッチ18aが閉じている限り、J102へ分岐して、上述したようなステップS102〜S105の処理を繰り返して行いながら、この第2レリーズスイッチ18bが閉じるのを待機する。
【0106】
こうして、ステップS105において、第2レリーズスイッチ18bが閉じていると判定された場合には、露光時間TExp がぶれ限界露光時間TLimit よりも短いか否かを判定する(ステップS106)。
【0107】
このステップS106において、TExp <TLimit でないと判定された場合には、次に、露光時間TExp を時分割撮影の回数mで割った値を時分割撮影の露光時間ΔTExp を記憶するためのメモリに記憶する(ステップS107)。なお、〔〕は、括弧内のデータを記憶するメモリを意味している。従って、〔ΔTExp 〕は、括弧内の変数ΔTExp を記憶するメモリを意味する。
【0108】
次に、時分割撮影が実際に行われた回数nを記憶するメモリ〔n〕に、初期値「0」を記憶する(ステップS108)。ここで、上記時分割撮影の露光時間ΔTExp として、上述したぶれ限界露光時間TLimit を用いる方法と、上記ステップS103で演算した露光時間TExp を予め決められた時分割撮影の回数mで除算した露光時間を用いる方法と、がある。時分割撮影の露光時間ΔTExp としてぶれ限界露光時間TLimit を用いる方法は、ぶれを確実に補正することができる点で優れているが、露光時間TExp が長くなると時分割撮影の回数が増加することになる。時分割撮影の回数が増加すると、1回あたりの時分割撮影で得られる信号量が小さくなるために、S/N(信号対ノイズ比)が低くなる可能性がある。また、時分割撮影の回数に応じて、フォトダイオードの飽和信号量を調整する必要があるために、撮像素子の構成が複雑化する。従って、時分割撮影の回数mの種類はなるべく少ないほうが良い。そこで本実施形態では、時分割撮影の回数mは1種類のみとする。そして時分割撮影の露光時間は、露光時間TExp をmで割った値を用いるものとする。
【0109】
続いて、露光を開始する(ステップS109)。撮像素子1には、露光開始直前から、フォトダイオード32に蓄積された電荷を半導体基板(サブストレート=縦形オーバーフロードレインVOFD)へ強制排出するための撮像素子1の基板印加高電圧パルスVSUBが繰り返し印加されており、この高電圧パルスVSUBの印加が終了し、VSUBの値を上記時分割撮影の回数mに応じた値に設定した時点が、このステップS109の露光開始の時点となる。
【0110】
次に、1回の時分割撮影が終了したか否かを判定する(ステップS110)。ここで、1回の時分割撮影が終了したと判定されるまでは、J103へ分岐して、時分割撮影の終了を待機する。
【0111】
こうして、ステップS110において1回の時分割撮影が終了したと判定された場合には、撮像素子1のフォトダイオード32と垂直転送CCD33との間に配置された転送ゲートに高電圧の転送パルスを印加することにより、フォトダイオード32に蓄積された電荷を撮像部1aの垂直転送CCD33にシフトする。この垂直転送CCD33にシフトされた電荷は、その後に、蓄積部1bの垂直転送CCD34へ転送される。
【0112】
ここで、図12および図13を参照して、撮像素子の有効領域について説明する。図12は3つの時分割画像の重畳関係における有効領域を示す図、図13は撮像素子の撮像領域における有効領域を示す図である。
【0113】
まず、図12は、時分割画像51と時分割画像52と時分割画像53とが、この順序で時分割撮影して得られ、各画像における同一被写体が同一位置になるように画像を並べたときの画像同士の位置関係が図示のようにずれているケースを示している。このようなケースにおいて、最終的にぶれが補正されて合成された有効領域54は、図示のように、3つの時分割画像51,52,53の全てが重畳される領域となる。そして、この有効領域54は、画像のぶれ量が大きいほど狭くなる。
【0114】
通常は、画像の長辺と短辺とから予め決めた所定領域(例えば、画面の縦横それぞれ98%の領域)を撮像領域55における有効領域56と定めて(図13参照)、その他の領域を有効領域とはしないようにすれば十分である。しかし、撮影者の技量等によっては、想定外の大きなぶれが発生する場合も有り得る。そこで、1回分の時分割撮影が終了したところで、露光開始位置からのX方向のぶれ量の絶対値Bx、または露光開始位置からのY方向のぶれ量の絶対値Byが、予め設定した所定の値α(この所定値αは、絶対値BxおよびByの両方がα未満である場合には、合成画像として少なくとも有効領域56を含む画像を確保することができるような値として設定されたものである。)以上であるか否かを判定する(ステップS111)。
【0115】
そして、このステップS111において、X方向のぶれ量の絶対値Bxと、Y方向のぶれ量の絶対値Byとの少なくとも一方が所定の値α以上であると判定された場合には、時分割露光のループから抜けて、フラグFLGに1を設定した後に(ステップS112)、後述するステップS119の画像の読み出し処理に移行する(J104)ようにしている。これは、ぶれ量が所定値α以上であるときには、ぶれが正常に補正された画像の有効領域が予め決めた所定領域よりも狭くなってしまうために、これを防ぐべく時分割撮影を終了して、所定の大きさの有効領域を確保するようにしたためである。
【0116】
そして、ステップS112においてFLGを1に設定したときには、時分割撮影の回数が所定回数mに達していないことを意味しているために、全体の露光時間がTExp に達せず、合成画像のレベルが適正レベルよりも低いことになる。従って、このときには、後述するように、ゲインコントロールアンプ3により画像を増幅するようにしている。例えば時分割撮影の回数をk(kはm未満の正の整数)とすると、ゲインコントロールアンプ3の増幅率は通常の場合のm/k倍となる。
【0117】
また、ステップS111において、X方向のぶれ量の絶対値Bxと、Y方向のぶれ量の絶対値Byとの両方が所定値α未満であると判定された場合には、次に、画素値合成の処理を行う(ステップS113)。この画素値合成においては、既に説明したように、時分割撮影により得られた垂直転送CCD34内の第1画像と、水平転送CCD35内に保持されている第2画像とを、角速度センサ19,20の出力信号に基づいて演算されたX方向およびY方向のぶれ量に基づいて、各転送CCD34,35内でシフトすることによりぶれを打ち消すように補正した後に、合成する処理が行われる。この画素値合成処理は、通常、時分割撮影における露光時間ΔTExp よりも高速に行われる。
【0118】
次に、既に行われた時分割撮影の回数nを記憶するメモリ〔n〕に、n+1を記憶する(ステップS114)。
【0119】
そして、既に行われた時分割撮影の回数nが、設定された時分割撮影の回数mに等しいか否かを判定する(ステップS115)。
【0120】
ここで、まだn=mに達していない場合には、J103に分岐して、時分割撮影の処理と画素値合成の処理とを上述したように繰り返して行う。
【0121】
また、ステップS115においてn=mであると判定された場合には、J104に分岐して、水平転送CCD35に記憶されている合成画像を垂直転送CCD34に転送した後に、後述するステップS119の読み出し処理を行う。
【0122】
一方、上述したステップS106においてTExp <TLimit であると判定された場合には、時分割撮影を行わなくても実質的にぶれは発生しないことになる。従って、このときには、露光時間TExp をメモリ〔ΔTExp 〕に記憶する(ステップS116)。
【0123】
次に、露光を開始して(ステップS117)、露光時間がメモリ〔ΔTExp 〕に記憶した露光時間ΔTExp に達したか否かを判定する。そして、露光時間ΔTExp に達したと判定された場合には、フォトダイオード32により生成した電荷を垂直転送CCD33にシフトすることにより、露光を終了する(ステップS118)。この露光が終了したら、撮像部1aにおける垂直転送CCD33の電荷は、蓄積部1bの垂直転送CCD34へ転送される。一方、露光時間ΔTExp に達するまでは、上述した判定を繰り返して行う。
【0124】
このように、露光時間TExp がぶれ限界露光時間TLimit よりも短いときは、時分割撮影を行うことなく、従来の撮影と同様に1回の撮影でぶれのない画像を出力するようにしているために、処理が簡単になるとともに、ぶれ補正に伴う電力の無駄な消費を防止することができる。
【0125】
このステップS118において露光が終了したと判定されるか、ステップS112においてフラグFLGに1を設定し終えるか、ステップS115においてn=mであると判定された場合に、撮影された画像が、垂直転送CCD34および読出用水平転送CCD37を介して、この撮像素子1から外部へ読み出される(ステップS119)。
【0126】
このようにして撮像素子1から読み出された画像信号は、CDS2により処理され、ゲインコントロールアンプ(AMP)3により増幅された後に、A/D変換器4によりデジタル信号に変換される(ステップS120)。ただし、上述したステップS112においてフラグFLGが1に設定された場合には、ゲインコントロールアンプ(AMP)3による増幅率は、上述したように、通常の増幅率のm/k倍となる。
【0127】
その後、画像信号をデジタル化して得られた画像データは、バッファメモリ8aに記憶された後に、情報処理部8により所定の信号処理を施される(ステップS121)。
【0128】
この情報処理部8により行われる信号処理には、撮像素子1から出力された画像データの中から、ぶれ補正が有効に行われたとみなされる予め決められた領域の画像を抽出する処理も含まれている。すなわち、情報処理部8は、有効領域抽出部としての機能も有するものとなっている。上述したように、撮像素子1においては、全ての時分割画像が重複する領域が予め決められた有効領域(図13に示したような有効領域56)を含むように、最初に撮影した時分割画像を基準にしたぶれ量が予め決めた所定値αよりも小さい時分割画像についてのみ合成処理を行うようになっている。従って、情報処理部8は、有効領域の抽出処理を簡単に行うことが可能である。
【0129】
次に、情報処理部8により信号処理された画像データは、DRAM9に一時的に記憶される(ステップS122)。
【0130】
その後、圧縮伸張部10によりDRAM9に記憶された画像データを画像圧縮して(ステップS123)、圧縮された画像データを記録媒体11に記録し(ステップS124)、この処理を終了する。
【0131】
続いて、図11は、デジタルカメラにより画像を撮像して記録するときの、図7に示した第2の構成例の撮像素子1に対応する処理の他の例を示すフローチャートである。なお、この図11において、図10と同様の処理を行う部分については、その旨を述べて説明を適宜省略する。
【0132】
ステップS201からステップS207の処理は、図10のステップS101からステップS107までの処理と同様である。ただし、ステップS201で第1レリーズスイッチ18aが閉じていない場合のジャンプ先はJ201、ステップS205で第2レリーズスイッチ18bが閉じていない場合のジャンプ先はJ202となる。
【0133】
そして、ステップS207の処理が終了したら、次に、(β×TLimit )/ΔTExp を算出し、算出した値を変数kのメモリである〔k〕に記憶する(ステップS208)。この算出式におけるβは予め決められた所定の係数であり、該算出式の分子のβ×TLimit は、所定以上の大きさの有効領域を確保するために必要な全体のぶれ量(以下、「許容ぶれ量」という。)を表わしている。
【0134】
ここで有効領域とは、全ての時分割画像が重複する領域のことをいう。従って露光時間ΔTExp で時分割撮影を[(β×TLimit )/ΔTExp ]回よりも多く行うと、全体のぶれ量が許容ぶれ量を超えてしまうことになる。
【0135】
そこで、k>mであるか否かを判定する(ステップS209)。
【0136】
ここで、k>mであると判定された場合、すなわち、kが初期値として予め決められた時分割撮影の回数mよりも大きいために、m回の時分割撮影を行っても許容ぶれ量を超えないと判定するときには、時分割撮影の回数を記憶するメモリ〔p〕にmを記憶する(ステップS210)。
【0137】
一方、k>mでないと判定された場合には、時分割撮影の回数がk回を超えると時分割撮影全体のぶれ量が許容ぶれ量を超えてしまうために、〔p〕にkを記憶する(ステップS211)。
【0138】
ステップS210またはステップS211の処理が終了したら、次に、時分割撮影の回数を記憶するメモリ〔n〕に初期値0を記憶する(ステップS212)。
【0139】
そして、露光を開始し(ステップS213)、露光時間がΔTExp になるまで露光を行う(ステップS214)。
【0140】
次に、図10のステップS113で説明したのと同様にして、画素値合成を行い(ステップS215)、メモリ〔n〕にn+1を記憶することにより、時分割撮影の回数をインクリメントする(ステップS216)。
【0141】
続いて、時分割撮影の回数〔n〕がpであるか否かを判定し(ステップS217)、n=pでなければJ203にジャンプして、上述したように時分割撮影と画素値合成とを繰り返して行う。
【0142】
そして、このステップS217においてn=pであると判定された場合には、J204へジャンプして、水平転送CCD35に記憶された合成画像を垂直転送CCD34に転送した後に、読出用水平転送CCD37を介して、この撮像素子1の外部へ読み出す(ステップS221)。
【0143】
その後のステップS223において、撮像素子1から読み出した画像を、ゲインコントロールアンプ3により通常の増幅率のm/p倍に増幅する。このような増幅を行うのは、適正レベルの画像を得るためにはm回の時分割撮影を行う必要があるが、実際の時分割撮影の回数はpであって、この回数pに応じて増幅する必要があるためである。
【0144】
また、ステップS206においてTExp <TLimit であると判定された場合におけるステップS218〜S226の処理は、図10のステップS116〜S124の処理と同様であるために、説明を省略する。
【0145】
以上説明したように、図11で説明したような処理においては、経験的な知見により得られたぶれ限界露光時間TLimit のβ倍を、予め決めた有効領域以上の領域を確保するために許容可能な全体のぶれ量と定義して、このぶれ量を超えないように時分割撮影の回数を制御するようにしたために、図10で説明したようなリアルタイムにぶれ量をモニタして全体のぶれ量が許容値を超えたか否かを判定する処理と比べて、制御が容易になる利点がある。そして、この図11に示したような処理を行うことにより、角速度センサ19,20やA/D変換器21,22等が不要となるために、構成を簡単にすることも可能となる。
【0146】
なお、上述した図10、図11のフローチャートにおいては、図7に示したような第2の構成例の撮像素子1に対応するデジタルカメラの動作を説明したが、図6に示したような第1の構成例の撮像素子1に対応するデジタルカメラの動作についても、図10のステップS113における画素値合成の処理が、既に説明した図6に対応する撮像素子1の画素値合成に置き換わるのみであって、その他の動作は同様である。
【0147】
このような実施形態1によれば、連続して撮影した複数の時分割画像の内の、最初に撮影した時分割画像からのぶれ量が予め決められた所定値内のぶれ量を有する時分割画像を合成するようにしたために、所定の有効領域の合成画像を生成することができる。こうして、撮影技能が異なる不特定多数の撮影者に対しても、画像の有効領域を所定以上の大きさにすることが可能になる。
【0148】
そして、この合成画像の信号レベルが所定レベルに達しないときには、所定レベルに達するように合成画像を増幅しているために、適正露出の画像を得ることができる。
【0149】
また、図11に示したような処理を行えば、ぶれ量を検出するための角速度センサ等の特別の手段によることなく、連続撮影の回数を制御することができるために、構成を簡単にすることができると共に、制御が容易になる。
【0150】
[実施形態2]
図14および図15は本発明の実施形態2を示したものであり、図14は撮像素子1の動作を示すタイミングチャートである。この実施形態2において、上述の実施形態1と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
【0151】
この実施形態2は、時分割撮影した画像を撮像素子1から読み出してデジタル化し、バッファメモリ8aに記憶してから、情報処理部8によりぶれ補正と画像合成とを行うようにしたものである。
【0152】
このデジタルカメラの電気的な構成は、基本的には、図1に示したものとほぼ同様であるために、この図1等を参照しながら、主として実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0153】
まず、固体撮像素子1は、この実施形態2においては、実施形態1で述べたようなぶれ補正を行い得る撮像素子ではなく、通常のデジタルカメラにおいて使用されるような固体撮像素子、例えばCCD固体撮像素子である。なお、CCD固体撮像素子に限らず、CMOS固体撮像素子等であってももちろん構わない。
【0154】
情報処理部8は、上述したように、バッファメモリ8aを有しているが、このバッファメモリ8aは、時分割撮影により得られた複数の画像を記憶することができる容量のものとなっている。そして、情報処理部8は、CPU7の制御に基づいて、時分割撮影により得られた複数の画像の相互のぶれ量を演算して求め、求めたぶれ量に基づき、画像処理を行って複数画像のぶれを補正し合成を行うものとなっている。ここに、情報処理部8は、後述するように、画像内における数点の特徴点に基づいて、画像のぶれ量を演算するようになっている。従って、実施形態2における情報処理部8は、ぶれ検出手段を兼ねたものとなっている。こうして、この実施形態2においては、図1に示されている角速度センサ19,20およびA/D変換器21,22は、設けなくても構わない。
【0155】
次に、本実施形態のデジタルカメラの動作について説明する。まず、図14を参照して、撮像素子1の動作について説明する。
【0156】
図14に示すように、第2レリーズスイッチ18bが閉じて撮影トリガ信号が発生されると、タイミングジェネレータ5から撮像素子1にクロック信号CLKが供給される。
【0157】
クロック信号CLKを受けた撮像素子1には、撮像素子1の画素を構成するフォトダイオードに蓄積された電荷を半導体基板(サブストレート=縦形オーバーフロードレインVOFD)へ強制排出するための基板印加高電圧パルスVSUBが繰り返し印加されており、この高電圧パルスVSUBの印加が終了したところで、露光が開始される。
【0158】
そして、所定の時分割撮影の露光時間ΔTExp が終了すると、撮像素子1のフォトダイオードの電荷を垂直転送CCDへシフトするためのシフトパルスTPが出力される。その後、垂直同期信号VDに同期して、電圧Vφ1〜Vφ4を各転送電極に印加することにより、撮像素子1から画像が読み出される。
【0159】
また、撮像素子1からの画像の読み出し開始に同期して、撮像素子1に再びVSUBが所定の印加時間Tsub だけ印加される。
【0160】
このVSUBの印加が終了すると、同様に露光が開始され、次の垂直同期信号VDに同期して、2回目の時分割撮影による画像の読み出しが行われる。
【0161】
以上説明したような動作を、所定回数(例えば10回)行う。そして、この説明から分かるように、読み出し時間TReadからVSUBの印加時間Tsub を減算した時間が、時分割撮影の露光時間ΔTExp となる。
【0162】
撮像素子1から読み出された時分割画像は、CDS2によりリセットノイズが除去された後に、ゲインコントロールアンプ(AMP)3によりアナログの信号増幅が行われる。ここに、ゲインコントロールアンプ(AMP)3の増幅率は、ISO(International Organization for Standardization)感度Svに応じた増幅率をA1、時分割撮影による画像の露出不足分を補うための増幅率をA2としたとき、A1×A2となるように設定される。
【0163】
なお、通常撮影の露光量をE1、時分割撮影により得られる露光量をE2とするとき、A2=E1/E2となる。さらに具体的に述べると、適正露光を得るための露光時間をTExp とし、これをm回に等分割した露光時間TExp /mによりm回の時分割撮影を行うものとするとき、各時分割撮影においてA2=TExp /(TExp /m)=mとなる。
【0164】
ゲインコントロールアンプ(AMP)3により増幅されたアナログの画像信号は、A/D変換器4により、TG5から供給される信号に従って、デジタル信号に変換される。
【0165】
A/D変換器4によりデジタル信号に変換された画像信号は、情報処理部8により処理されて、画像データが生成される。
【0166】
次に、図15は、情報処理部8におけるぶれ画像の補正処理を示すフローチャートである。
【0167】
この処理を開始すると、まず初期設定として、時分割画像を識別するためのIDに相当する変数iを記憶するためのメモリ〔i〕に、0を記憶する(ステップS301)。
【0168】
次に、画像I(i)と画像I(i+1)とのぶれΔ(i,i+1)を演算する(ステップS302)。このぶれΔは、画像I(i)における特徴点を数点定めて、この特徴点と一致する画像I(i+1)の特徴点の位置を、公知の動きベクトル演算により求め、対応する位置の相対的なずれを求めることにより行われる。なお、上記ぶれΔは、ベクトルである。
【0169】
その後、ぶれΔを積算(順次のベクトル加算)したΣΔ(k,k+1)(但しk=0〜i)のスカラー値|ΣΔ(k,k+1)|を演算し、この値と予め決めた所定の値αとを比較する(ステップS303)。ここで、|ΣΔ(k,k+1)|>αでないと判定されたときには、メモリ〔i〕の内容をインクリメントする(ステップS304)。
【0170】
続いて、ぶれΔに基づいて、画像I(i)と画像I(i+1)とのぶれを補正した後に、対応する画素の値を加算(合成)する(ステップS305)。
【0171】
次に、iとm−1を比較する(ステップS306)。ここにmは、時分割撮影の回数、すなわち時分割撮影により得た画像数である。このステップS306において、i=m−1でないと判定された場合には、J301に分岐して、上述したような処理を繰り返して行う。
【0172】
また、ステップS306において、i=m−1であると判定された場合には、次に、合成画像の平均値を演算する(ステップS307)。
【0173】
また、ステップS303において|ΣΔ(k,k+1)|>αであると判定された場合には、時分割撮影期間中の全体のぶれ量が許容可能な(有効領域の確保が難しい)値よりも大きいと判定して、J302に分岐し、上述したステップS307の処理を行う。
【0174】
こうして、ステップS307の処理を行ったところで、この処理を終了する。
【0175】
以上説明したように、情報処理部8は、全ての時分割画像が重複する領域が予め決められた有効領域内に入るように、最初に撮影した時分割画像を基準にしたぶれ量が予め決めた所定以上の大きさとなる時分割画像について、合成処理対象から除外するようにしている。
【0176】
そして、ぶれ量が所定値内の時分割画像について、合成した画像の内の、最初に撮影した時分割画像から予め決めた領域内の画像を抽出する。このようにすることにより、所定以上の有効領域の抽出処理を簡単に行うことができる。
【0177】
こうして情報処理部8によりぶれが補正された有効領域の画像データは、DRAM9に一時的に記憶された後に、圧縮伸張部10によりJPEGなどの所定のフォーマットの形式の画像データに圧縮されて、記録媒体11に記録される。
【0178】
なお、上述では、時分割画像内の特徴点に基づいてぶれの検出を行っているが、もちろん、角速度センサ等の出力に基づいてぶれの検出を行うようにしても構わない。
【0179】
このような実施形態2によれば、上述した実施形態1とほぼ同様の効果を奏するとともに、撮像素子1から読み出した時分割画像の内の、所定のぶれ量以内の時分割画像に基づいて、ぶれ補正した合成画像を作成することができる。
【0180】
そして、ぶれ補正機能を備えない通常の撮像素子1を用いたデジタルカメラ等においても、ぶれ補正を行うことが可能となる。
【0181】
さらに、ぶれの検出を、時分割画像内の特徴点に基づいて行っているために、角速度センサ等が不要となって、構成を簡単にすることができる。
【0182】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は、電子的に撮影される画像のぶれを補正する電子的ぶれ補正装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の実施形態1におけるデジタルカメラの主として電気的な構成を示すブロック図。
【図2】上記実施形態1において、フォトダイオードに蓄積された電荷を第1の画素電荷として垂直転送CCDに転送する様子を示す図。
【図3】上記実施形態1において、第1の画素電荷読み出し後にフォトダイオードに蓄積された電荷を第2の画素電荷として水平転送CCDに転送しさらに水平方向に転送するとともに、第1の画素電荷を垂直方向に転送する様子を示す図。
【図4】上記実施形態1において、第1の画素電荷と第2の画素電荷とを加算する様子を示す図。
【図5】上記実施形態1において、加算された電荷を同一画素内における垂直転送CCDの電荷保持部に退避する様子を示す図。
【図6】上記実施形態1における撮像素子の第1の構成例を示す図。
【図7】上記実施形態1における撮像素子の第2の構成例を示す図。
【図8】上記実施形態1における電荷排出用ドレインの一構成例を示す図。
【図9】上記実施形態1における電荷排出用ドレインの他の構成例を示す図。
【図10】上記実施形態1において、デジタルカメラにより画像を撮像して記録するときの、図7に示した第2の構成例の撮像素子に対応する処理の一例を示すフローチャート。
【図11】上記実施形態1において、デジタルカメラにより画像を撮像して記録するときの、図7に示した第2の構成例の撮像素子に対応する処理の他の例を示すフローチャート。
【図12】上記実施形態1において、3つの時分割画像の重畳関係における有効領域を示す図。
【図13】上記実施形態1において、撮像素子の撮像領域における有効領域を示す図。
【図14】本発明の実施形態2における撮像素子の動作を示すタイミングチャート。
【図15】上記実施形態2の情報処理部におけるぶれ画像の補正処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0185】
1…固体撮像素子(撮影手段)
1a…撮像部
1b…蓄積部
2…相関二重サンプリング回路(CDS)(撮影手段,信号処理手段)
3…ゲインコントロールアンプ(AMP)(撮影手段,信号処理手段,増幅手段)
4…A/D変換器(撮影手段,信号処理手段)
5…タイミングジェネレータ(TG)(撮影手段,撮影回数制御手段)
6…シグナルジェネレータ(SG)(撮影手段,撮影回数制御手段)
7…CPU(撮影手段,ぶれ検出手段,撮影回数制御手段,ぶれ補正手段,画像合成手段)
8…情報処理部(撮影手段,ぶれ補正手段,画像合成手段,信号処理手段,ぶれ検出手段)
8a…バッファメモリ(記憶手段)
9…DRAM
10…圧縮伸張部
11…記録媒体
12…液晶表示部
13…インタフェース部
14…レンズ駆動系
15…撮影レンズ(撮影手段)
16…絞り駆動系
17…絞り(撮影手段)
18a…第1レリーズスイッチ
18b…第2レリーズスイッチ
19,20…角速度センサ(ぶれ検出手段)
21,22…A/D変換器(ぶれ検出手段)
23…距離検出部
24…EEPROM
25…撮影モード設定部
26…撮影条件設定部
27…フォトダイオード
28…水平転送CCD
29…垂直転送CCD
30…電荷排出用ドレイン
31…読出用水平転送CCD
32…フォトダイオード
33…垂直転送CCD
34…垂直転送CCD
35…水平転送CCD
36…電荷排出用ドレイン
37…読出用水平転送CCD
38…1画素
39…転送電極
40…ゲート電極
41…電荷排出用ドレイン
42…n型基板
43…p型拡散領域
44…n−拡散領域
51,52,53…時分割画像
54…有効領域
55…撮像領域
56…有効領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して複数の画像を撮影する撮影手段と、
上記画像のぶれを検出するぶれ検出手段と、
上記連続して撮影された複数の画像の内の連続する所定数の画像の全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように、連続撮影の回数を制御する撮影回数制御手段と、
上記撮影回数制御手段の制御に基づき所定回数撮影された複数画像の相互のぶれを補正するぶれ補正手段と、
上記ぶれ補正手段により補正された画像を合成する画像合成手段と、
を具備したことを特徴とする電子的ぶれ補正装置。
【請求項2】
上記撮影手段は、マトリクス状に配列された複数の画素と、該画素により生成された第1画像を保持するレジスタと、を有する撮像素子を含んで構成されたものであり、
上記ぶれ補正手段は、上記画素により生成された第2画像と上記レジスタに保持された第1画像との相対的なぶれを打ち消すように上記第1画像と上記第2画像との相対的な位置を移動させるものであり、
上記画像合成手段は、上記ぶれ補正手段により補正された、上記第1画像と上記第2画像とを合成するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項3】
上記撮影回数制御手段は、上記連続して撮影される複数の画像の全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように、撮影回数を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項4】
上記撮影回数制御手段は、上記連続して撮影される複数の画像の全体の露光時間が、撮影レンズの焦点距離の逆数に予め決められた所定の係数を乗じて得られる露光時間以下になるように、撮影回数を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項5】
上記連続して撮影される画像の数が予め決められた所定数に達しないときに上記画像合成手段により合成された画像を増幅する増幅手段をさらに具備したことを特徴とする請求項2に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項6】
上記撮像手段は、マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子と、この撮像素子の出力信号を受けてデジタル化された複数の画像を生成する信号処理手段と、上記信号処理手段により処理された画像を記憶する記憶手段と、を有して構成されたものであり、
上記ぶれ補正手段は、上記記憶手段に記憶された画像のぶれを補正するものであることをことを特徴とする請求項1に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項1】
連続して複数の画像を撮影する撮影手段と、
上記画像のぶれを検出するぶれ検出手段と、
上記連続して撮影された複数の画像の内の連続する所定数の画像の全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように、連続撮影の回数を制御する撮影回数制御手段と、
上記撮影回数制御手段の制御に基づき所定回数撮影された複数画像の相互のぶれを補正するぶれ補正手段と、
上記ぶれ補正手段により補正された画像を合成する画像合成手段と、
を具備したことを特徴とする電子的ぶれ補正装置。
【請求項2】
上記撮影手段は、マトリクス状に配列された複数の画素と、該画素により生成された第1画像を保持するレジスタと、を有する撮像素子を含んで構成されたものであり、
上記ぶれ補正手段は、上記画素により生成された第2画像と上記レジスタに保持された第1画像との相対的なぶれを打ち消すように上記第1画像と上記第2画像との相対的な位置を移動させるものであり、
上記画像合成手段は、上記ぶれ補正手段により補正された、上記第1画像と上記第2画像とを合成するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項3】
上記撮影回数制御手段は、上記連続して撮影される複数の画像の全体のぶれ量が予め決められた所定値内になるように、撮影回数を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項4】
上記撮影回数制御手段は、上記連続して撮影される複数の画像の全体の露光時間が、撮影レンズの焦点距離の逆数に予め決められた所定の係数を乗じて得られる露光時間以下になるように、撮影回数を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項5】
上記連続して撮影される画像の数が予め決められた所定数に達しないときに上記画像合成手段により合成された画像を増幅する増幅手段をさらに具備したことを特徴とする請求項2に記載の電子的ぶれ補正装置。
【請求項6】
上記撮像手段は、マトリクス状に配列された複数の画素を有する撮像素子と、この撮像素子の出力信号を受けてデジタル化された複数の画像を生成する信号処理手段と、上記信号処理手段により処理された画像を記憶する記憶手段と、を有して構成されたものであり、
上記ぶれ補正手段は、上記記憶手段に記憶された画像のぶれを補正するものであることをことを特徴とする請求項1に記載の電子的ぶれ補正装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−228297(P2007−228297A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47365(P2006−47365)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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