説明

電子素子のための材料

本発明は、部分的にフッ素化された置換基を有する構造単位を含むポリマー、本発明によるポリマーを含む混合物および処方、本発明によるポリマーの調製方法および本発明によるポリマーの機能性材料としての電子素子での使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的にフッ素化された側鎖を有する構造単位を含むポリマーと有機電子素子でのそれら使用に関する。
【0002】
本発明のポリマーのような化合物は、最も広義の電子業界に帰することのできる多くの異なる用途のために開発されている。これらの有機半導体が、とりわけ、機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461およびWO 98/27136に記載されている。
【0003】
先行技術は、有機エレクトロルミネセンス素子での使用のために適切である種々のポリマー材料を開示している。このように、たとえば、スピロビフルオレン、フルオレン、インデノフルオレン、フェナントレンもしくはジヒドロフェナントレン等のモノマー単位に基づく化合物は、WO 04/041901、 WO 04/113412 および WO 05/014689に開示されている。
【0004】
有機電子素子での使用のための新規な材料に関する需要、特に、以下の観点での素子の改善に関する需要が引き続き存在する:
1.低いLUMO(最低空分子軌道)を有する化合物が、より容易な電子注入とそれゆえの駆動電圧の減少のために必要とされる。駆動電圧の減少は、パワー効率の改善を生じ、特に、携帯用途において主として重要である。
【0005】
2.溶解性と湿潤特性に関する改善された示差能力が、多層構造を達成するために必要とされる。
【0006】
3.目的は、有機エレクトロルミネッセンス素子、特に、青色発光系の場合と高品質の用途に関して、寿命と効率をさらに増加することであった。
【0007】
要約すると、本発明は、有機電子素子のための新規な機能性材料、特に、改善された電子注入を可能とし、および/または多層構造の適用を単純化する改変された溶解特性を有するものを提供する目的を基礎としている。
【0008】
式(I)の部分的にフッ素化された置換基Rを有する一以上の構造要素を含む化合物は、電子素子での、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での機能性材料として首尾よく使用できることが今回見出された。
【0009】
本願に記載されるとおり、部分的にフッ素化された側鎖の導入は、好ましくは、化合物のLUMO軌道の低下、それゆえの電子注入障壁性の低下を容易にし、電子素子の駆動電圧の低下を引き起こす。
【0010】
さらに、本願に記載されるとおり、部分的にフッ素化された側鎖の導入は、好ましくは、溶解特性の改変を容易にし、機能性材料の複数の層を含む電子素子の構成を単純化する。
【0011】
本発明は、一以上の式(I)の構造要素を含むポリマーに関する。
【化1】

【0012】
ここで、Mは、出現毎に、同一であるか異なり、芳香族、複素環式芳香族もしくは脂肪族架橋芳香族環構造であって、随意に、一以上の置換基Rにより置換されてよく、ここで、以下に定義される置換基RおよびRは、出現毎に、同一であるか異なってよく、ただし、添え字aおよびbには以下が適用される:
10,000≧a≧1
10≧b≧1および
破線は、隣接する構造単位への結合を表し、ここで、加えて、二個以上のそのような結合が存在する。
【0013】
さらに、本発明による化合物は、追加的に、基Rにより置換されないさらなる同一であるか異なる構造要素Mを有し、ただし、本発明によるポリマー中の構造単位Mの合計は、2〜10,000である。
【0014】
さらに、RとRについては、
は、1〜60個のC原子を有するフッ素化された有機置換基であって、飽和あるいは不飽和、直鎖、環状もしくは分岐状であってよく、さらに、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、O、S、Se、Te、Si(R、Ge(R、BR、NR、PR、CO、C=S、C=Se、C=NR、PO(R)、PS(R)、RC=CR、C≡C、SO、SO、COO、O(CO)OもしくはCONRで置き代えられてよく、ただし、Rは、完全にはフッ素化されておらず、すなわち、基Rの炭素主鎖は、少なくとも一つの自由な位置でF以外の置換基により置換され、一つの基Mもしくは二以上の異なる隣接あるいは非隣接の基Mに結合する二個以上の基Rは、脂肪族、不飽和もしくは芳香族環構造を形成することができ、および
は、出現毎に、同一であるか異なり、H、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であって、ここで、加えて、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよく、さらに、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、O、S、Se、Te、Si(R、Ge(R、BR、NR、PR、CO、C=S、C=Se、C=NR、PO(R)、PS(R)、RC=CR、C≡C、SO、SO、COO、O(CO)OもしくはCONRで置き代えられてよく、ただし、一つの基Mもしくは二以上の異なる隣接あるいは非隣接の基Mに結合する二個以上の基Rは、脂肪族、飽和もしくは芳香族環構造を形成することができ、
は、出現毎に、同一であるか異なり、H、Fまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であって、一以上のH原子はFで置き代えられてよい。
【0015】
完全にフッ素化された側鎖を有するモノマービルディングブロックとエレクトロルミネッセンス素子のためのこの型の構造要素を含むポリマー材料は、文献(T. Swager et al., Macromolecules 2006, 39 (17), 5753 および WO 05/073338)から知られている。しかしながら、問題の機能性材料での部分的にフッ素化された側鎖の使用は、対応する文献には言及されていない。
【0016】
部分的にフッ素化された置換基を含む化合物は、これまでに、界面活性剤の分野で知られていたが、たとえば、WO 2006/072401に記載されているとおりに、その良好な生分解性と界面活性作用のために使用された。
【0017】
本発明によるポリマーは、好ましくは、2〜10,000個の繰り返し単位を含み、ここで、本発明における用語「ポリマー」は、ポリマーとデンドリマーとオリゴマーをも包含することが意図されている。本発明によるオリゴマー化合物は、好ましくは、2〜9個の反復単位を有する。本発明による好ましいポリマーおよびデンドリマーは、合計10〜10,000個のモノマー単位と1000〜2,000,000g/molの分子量を有する式(I)の構造要素を含む。ポリマーおよびデンドリマーの分岐度DBは、0(直鎖ポリマー、分岐点なし)と1(完全に分岐したデンドリマー)の間であり得る。本発明による、特に、好ましいポリマーは、100、0000〜1,50,000g/molの分子量を有し、非常に、特に、好ましいポリマーは、200,0000〜1,000,000g/molの分子量を有する。分子量は、内部ポリスチレン標準に対するGPC(=ゲル透過クロマトグラフィー)により測定される。
【0018】
本発明の具体例では、ポリマー中の式(I)の構造要素の割合は、0.01〜100モル%、好ましくは、0.1〜95モル%、特に、好ましくは、10〜80モル%、非常に、特に、好ましくは、30〜60モル%の範囲である。
【0019】
式(I)の構造単位に加えて、本発明の化合物は、好ましくは、随意に置換基Rにより置換され、上記に定義される一般的定義を満たすさらなる構造単位Mを含む。
【0020】
Mは、好ましくは、同一であるか異なり、5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、特に、好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、シス-あるいはトランス-インデノフルオレン、ベンズインデノフルオレン、ジベンズインデノフルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ベンゾフェナントレンもしくはジヒドロフェナントレン誘導体、非常に、特に、好ましくは、フルオレン、スピロビフルオレン、シス-インデノフルオレン、トランス-インデノフルオレン、フェナントレンもしくはジヒドロフェナントレン誘導体を表す。
【0021】
は、好ましくは、1〜20個のC原子を有する部分的にフッ素化された非芳香族置換基であって、飽和あるいは不飽和、直鎖、環状もしくは分岐状であってよく、さらに、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、O、S、Si(R、BR、NR、PR、CO、C=S、C=NR、PO(R)、PS(R)、RC=CR、C≡C、SO、SO、COO、O(CO)OもしくはCONRで置き代えられてよい。
【0022】
ここで、用語「部分的にフッ素化された」は、置換基Rが上記定義のとおりであり、少なくとも一つの炭素主鎖の自由な位置で、F以外の置換基を有することを意味するものと解されることを意図している。
【0023】
は、非常に、特に、好ましくは、1〜12個のC原子を有する部分的にフッ素化された飽和、直鎖、分岐もしくは環状アルキル基であって、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、随意に、O、S、NR、C=O、COOもしくはCONRで置き代えられてよい。
【0024】
は、さらに、特に、好ましくは、基-OCF、-SCF、-N(CFおよび末端脂肪族トリフルオロメチルから選ばれる一以上の構造要素を含む。
【0025】
本発明による化合物が、溶液からの加工のために使用されるべきものであるならば、好ましくは、置換基RとRとして、直鎖状もしくは分岐状アルキル鎖を含み、特に、好ましくは、1〜12の長さのC原子を含むものである。
【0026】
添え字b、ビルディングブロックM上の部分的にフッ素化された基Rの数は、好ましくは、1〜5の間、非常に、特に、好ましくは、1または2である。
【0027】
一以上の隣接する基M上の二以上のRおよび/またはRも、互いに、芳香族もしくは脂肪族環構造を形成してもよい。芳香族単位M上の複数の基Rおよび/またはRが、互いに、芳香族環構造を形成するならば、スピロ化合物が生じ得る。この型のスピロ構造は、本発明による好ましい化合物を表す。ここで、特に、好ましいものは、フルオレンもしくはインデノフルオレン骨格由来の化合物であり、非常に、特に、好ましくは、スピロビフルオレン誘導体である。
【0028】
式(I)の好ましい構造単位M-(Rは、以下の式(II)〜(XXXIV)により表される。
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

【0029】
ここで、Rは、上記定義されるとおりであり、構造要素Mは、随意に、骨格のすべてのH置換位置で、代わりに一以上の同一であるか異なる基Rにより置換されてもよい。
【0030】
式(II)〜(XXXIV)中の破線は、限定的な選択を表すものではなく、本発明によるポリマー中の潜在的な結合位置を示す。一般的には、二個のこのような結合が、構造単位毎に存在するが、ただ一つあるいは二個以上が存在してもよい。
【0031】
本発明の意味でのアリール基は、6〜40個のC原子を含む。本発明の意味でのヘテロアリール基は、2〜40個のC原子と少なくとも一つのヘテロ原子を含むが、ただし、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも五個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O、S、P、Se、Si、Ge、Te、BおよびAsから選ばれる。ここで、アリールもしくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または単純な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジンもしくはチオフェン、または縮合アリールもしくはヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフランおよびインドールを意味するものと解される。
【0032】
本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、その代わりに、加えて、複数のアリールもしくヘテロアリール基は、たとえば、一以上のC、N、SもしくはO原子のような短い非芳香族単位により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、たとえば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミンもしくはジアリールエーテルのような構造も、本発明の意味での芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、同様に、複数のアリールもしくヘテロアリール基は、互いに、単結合により連結されてもよく、たとえば、ビフェニル、ターフェニルもしくはビピリジンを意味するものと解される。
【0033】
芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、随意に、置換されていてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、ベンズインデノフルオレン、ジベンズインデノフルオレン、アセナフタレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントリイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10テトラアザピレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,3,5-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0034】
本発明の目的のために、脂肪族化合物は、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH基は、上記した基Rにより置換されていてよく、特に、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、シクロ-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルおよびオクチニルを意味するものと解される。C〜C40アルコキシ基は、特に、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味するものと解される。
【0035】
式(I)の好ましいビルディングブロックM-(Rの例は、限定的な選択を表すことを望むものではないが、以下である。
【化3−1】

【化3−2】

【化3−3】

【化3−4】

【化3−5】

【化3−6】

【0036】
ここで、化合物は、すべての自由な位置、または、同一であるか異なる基により、Hが置換される位置で随意に置換されてよい。
【0037】
式(1)〜(50)中の破線は、限定的な選択を表すものではなく、本発明によるポリマー中の潜在的な結合位置を示す。一般的には、二個のこのような結合が、構造単位毎に存在するが、ただ一つあるいは二個以上が存在してもよい。
【0038】
本発明による化合物は、好ましくは、基Mとして、複数の異なる構造単位を含む。これらは、とりわけ、WO 02/077060 A1およびWO 2005/014689 A2に広範に挙げられ、開示されるものである。この観点で関連する上記言及した出願の技術的教示は、参照として、本願に組み込まれる。更なる構造単位は、たとえば以下の基を指定することができる:
群1:ポリマーの正孔注入および/または正孔輸送特性に作用する単位。
【0039】
群2:ポリマーの電子注入および/または電子輸送特性に作用する単位。
【0040】
群3:群1および群2からの個々の単位の組み合わせを有する単位。
【0041】
群4:電子燐光発光を電子蛍光発光の代わりに得ることができる程度に、発光特性を変更する単位。
【0042】
群5:一重項状態から三重項状態への遷移を改善する単位。
【0043】
群6:得られるポリマーの発光色に作用する単位。
【0044】
群7:典型的には骨組として使用される単位。
【0045】
群8:膜形態学特性および/または得られるポリマーのレオロジー特性に作用する単位。
【0046】
正孔注入および/または正孔輸送特性を有する群1からの構造単位は、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール-パラ-フェニレンジアミン、トリアリールホスフィン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ-パラ-ジオキシン、フェノキサチン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロールおよびフラン誘導体と、更には、高HOMO(HOMO=最高占分子軌道)を有するさらなるO-、S-もしくはN-含有へテロ環である。これらのアリールアミンおよびヘテロ環は、ポリマー中で、好ましくは、−5.8eV(真空レベルに対して)より大な、特に、好ましくは、−5.5eVより大なHOMOを生じる。
【0047】
電子注入および/または電子輸送特性を有する群2からの構造単位は、たとえば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンズアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンズイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフインオキシドおよびフェナジン誘導体のみならずトリアリールボランならびに低LUMO(LUMO=最低空分子軌道)を有するさらなるO-、S-もしくはN-含有へテロ環である。これらの単位は、ポリマー中で、好ましくは、−1.5eV(真空レベルに対して)未満の、特に、好ましくは、−2.0eV未満のLUMOを生じる。
【0048】
本発明のポリマーは、正孔移動性を増加する構造と、電子移動性を増加する構造(即ち、群1および2からの単位)が互いに直接結合している構造または正孔移動性と電子移動性の双方を増加する構造を含む群3からの単位を含むことが好ましいかもしれない。これら単位の幾つかは、エミッターとして役立ち、発光色を緑色、黄色あるいは赤色にシフトすることができる。それゆえ、それらの使用は、たとえば、元来が青色発光のポリマーから他の発光色の生成のために適している。
【0049】
群4からの構造単位は、いわゆる、三重項エミッター単位であり、室温でさえも、高効率で三重項状態から発光することができる、即ち、電子蛍光発光の代わりに電子燐光発光を呈し、エネルギー効率の増加を引き起こすことができるものである。本発明の意味での三重項エミッターは、三重項エミッターを含む化合物を意味するものと解される。本発明の意味での三重項エミッターは、三重項状態からエネルギー的により低い状態への遷移により可視域またはNIR域で発光することができるすべての化合物を意味するものと解される。ここで、用語電子燐光発光も使用される。この目的のために適するのは、まず、36より大な原子番号を有する重い原子を含む化合物である。好ましい化合物は、上記条件を満足するdあるいはf遷移金属を含むものである。ここで、特に好ましいものは、周期率表の8〜10属の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含む対応する構造単位である。ここで、本発明によるポリマーのために適切な単位は、たとえば、WO 02/068435 A1、WO 02/081488 A1およびEP 1239526 A2に記載されているとおりの種々の錯体である。対応するモノマーは、WO 02/068435 A1およびWO 2005/042548 A1に記載されている。可視スペクトル領域(赤色、緑色もしくは青色)で発光する三重項エミッターを使用することが、本発明にしたがうと好ましい。三重項エミッターはポリマーの骨組(すなわち、ポリマーの主鎖。)の一部であってもよく、ポリマーの側鎖に位置してもよい。
【0050】
群5からの構造単位は、一重項状態から三重項状態への遷移を改善するものであり、上記三重項エミッター単位のサポートに使用され、これら構造要素の燐光特性を改善する。この目的のために適するものは、特に、カルバゾールおよび架橋カルバゾール2量体単位であり、たとえば、WO 2004/070772 A2およびWO 2004/113468 A1に記載されている。また、この目的のために適するものは、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、シラン誘導体および類似化合物であり、たとえば、WO 2005/040302 A1に記載されている。
【0051】
上記言及されたものに加えて、群6からの構造単位は、上記基の範囲に入らない、少なくとも1つの更なる芳香族構造もしくは別の共役構造を有するものであり、即ち、電荷担持移動性に関する作用が少ししかなく、有機金属錯体でなく、一重項-三重項遷移に作用しないものである。この型の構造要素は、得られるポリマーの発光色に作用することができる。それゆえ、単位に応じて、それらはエミッターとしても使用されることもできる。ここで好ましいものは、6〜40個のC原子を有する芳香族構造およびまたトラン、スチルベンあるいはビスチリルアリーレン誘導体であり、夫々は1以上の基Rにより置換されていてもよい。ここで特に好ましいものは、1,4-フェニレン、1,4-ナフチレン、1,4-あるいは9,10-アントリレン、1,6-、2,7-あるいは4,9-ピレニレン、3,9-あるいは3,10-ペリレニレン、4,4’-ビフェニリレン、4,4”-ターフェニリレン、4,4’-ビ-1,1’-ナフチリレン、4,4’-トラニレン、4,4’-スチルベニレン、4,4”-ビススチリルアリーレン、ベンゾチアジアゾールおよび対応する酸素誘導体、キノキサリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、ビス(チオフェニル)アリーレン、オリゴ(チオフェニレン)、フェナジン、ルブレン、ペンタセンまたはペリレン誘導体の組み込みであり、好ましくは、置換され、または、好ましくは、共役プッシュ-プル系(ドナーおよびアクセプター置換基により置換された系)、または、好ましくは、置換されたスクアリンもしくはキナクリドンのような系である。
【0052】
群7からの構造単位は、ポリマー骨組として典型的に使用される6〜40個のC原子を有する芳香族構造を含む単位である。これらは、たとえば、4,5-ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10-テトラヒドロピレン誘導体、フルオレン誘導体、9,9’-スピロビフルオレン誘導体、フェナントレン誘導体、9,10-ジヒドロフェナントレン誘導体、5,7-ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体、シス-およびトランス-インデノフルオレン誘導体であるが、基本的に、重合後に、共役、架橋あるいは非架橋ポリフェニレンもしくはポリフェニレン-ビニレンホモポリマーを生じるすべての同様の構造である。ここで、また、前記芳香族構造は、その骨組もしくは側鎖に、O、SあるいはN等のヘテロ原子を含んでよい。
【0053】
群8からの構造単位は、ポリマーの膜形態学特性および/またはレオロジー特性に作用する単位であり、たとえば、シロキサン、長鎖アルキルまたはフッ化物基のみならず、特に、たとえば、液晶生成単位もしくは架橋可能基のような剛直あるいは柔軟な単位である。
【0054】
本発明による好ましいポリマーは、少なくとも一つの構造単位が、電荷-輸送特性を有するもの、すなわち、群1および2から選ばれる少なくとも一つの単位を含むポリマーである。
【0055】
本発明による好ましい化合物は、式(I)の構造単位に加えて、群1乃至8から選ばれる1以上の単位を同時に追加的に含んでもよい。1つの群からの1以上の構造単位が同時に存在することがさらに好ましいかもしれない。
【0056】
同様に、本発明の好ましいポリマーは、電荷輸送および/または電荷注入を改善する単位、すなわち、群1および/または2からの単位を含み、これら単位の0.5〜50モル%の割合が好ましく、これら単位の1〜10モル%の割合が、非常に、特に、好ましい。
【0057】
さらに、本発明の特に、好ましいポリマーは、群7からの構造単位と群1および/または2からの単位を含む。ポリマー中の群7からの単位と群1および/または2からの単位の式(I)の構造単位の合計は、ポリマーの全単位を基礎として、少なくとも50モル%であることが、特に、好ましく、ここで、0.5〜30モル%は、好ましくは、群1および/または2からの単位である。
【0058】
ブロック様構造を有する上記コポリマーを得ることができ、さらなる構造要素が、この目的のために特に好ましい方法は、たとえば、WO 2005/014688 A2に詳細に記載されている。これは、参照として、本出願の開示内容に組み込まれる。ポリマーが樹状構造をも有してもよいことが、この点で同様に強調されねばならない。
【0059】
群1乃至8からの上記単位およびさらなる発光単位の合成は、当業者に知られ、文献、たとえば、WO 2005/014689 A2、 WO 2005/030827 A1 および WO 2005/030828 A1に記載されている。これら文書とそこで引用された文献は、参照としてこの出願に開示された技術的教示に組み込まれる。
【0060】
本発明による化合物は、一以上の異なるモノマービルディングブロックとの重合反応により一般的に合成され、ポリマー中に組み込まれた少なくとも一つのモノマーは、式(I)の構造単位を生じる。適切な重合反応は、当業者に知られ、文献に記載されている。C-C、C-N結合を生じる、特に、適切で、好ましい重合反応は、以下である:スズキ、ヤマモト、スチル、ヘック、ネギシ、ソノガシラ、ヒヤマまたはハートウイッグ-ブフバルト重合。重合がこれらの方法により実行されることができる方法とポリマーが反応媒体からその後分離し、精製することができる方法は、当業者に知られ、文献、たとえば、WO 03/048225 A2、 WO 2004/037887 A2 および WO 2004/037887 A2に記載されている。
【0061】
したがって、本発明は、また、スズキ、ヤマモト、スチル、ヘック、ネギシ、ソノガシラ、ヒヤマ、ウルマン、ウィティグまたはハートウイッグ-ブフバルト重合により調製されることを特徴とする本発明によるポリマーの調製方法に関する。
【0062】
本発明によるデンドリマーは、当業者に知られた方法によりもしくはそれに類似して調製することができる。適切な方法は、文献、たとえば、Frechet, Jean M. J.; Hawker, Craig J., "Hyperbranched polyphenylene and hyperbranched polyesters: new soluble, three-dimensional, reactive polymers"、 Reactive & Functional Polymers (1995), 26(1-3), 127-36; Janssen, H. M.; Meijer, E. W.、 "The synthesis and characterization of dendritic molecules", Materials Science and Technology (1999), 20 (Synthesis of Polymers), 403-458; Tomalia, Donald A., "Dendrimer molecules", Scientific American (1995), 272(5), 62-6、 WO 02/067343 A1 および WO 2005/026144 A1.に記載されている。
【0063】
本発明によるポリマーの合成のためには、対応する式(XXXV)のモノマーが必要とされる。
【化4】

【0064】
本発明のポリマー中で式(I)の構造単位を生じるモノマーは、対応して置換され、このモノマー単位がポリマー中に組み込まれることを許容する一、二もしくは三個のいずれか、好ましくは、二個の適切な官能位置を有する。したがって、本発明は、同様に式(XXXV)の構造を有するモノマーに関する。式(XXXV)中で使用される記号と添え字M、Rとbは、上記定義されるとおりのものである。基Xは、同一であるか異なり、ポリマー化合物中にモノマービルディングブロックを組み込むことを可能とする、重合反応のために適切である脱離基である。Xは、好ましくは、同一であるか異なり、ハロゲン、O-トシレート、O-トリフレート、O-スルホネート、ボロン酸エステル、部分的にフッ素化されたシリル基、ジアゾニウム基および有機錫化合物のクラスから選ばれる化学的官能基を表す。添え字nは、値1、2または3、好ましくは、2であることができる。
【0065】
モノマー化合物の骨格は、標準的な方法、たとえば、フリーデル-クラフツアルキル化もしくはアシル化により、官能化することができる。さらに、骨格は、有機化学の標準的な方法によりハロゲン化することができる。ハロゲン化された化合物は、追加的な官能化工程でさらに、随意に反応することができる。たとえば、ハロゲン化された化合物は、ポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーへの変換か、ボロン酸誘導体もしくは有機錫誘導体への直接あるいは後の変換のための出発物質として使用することができる。
【0066】
前記方法は、発明性を必要とすることなく、本発明の化合物の合成のために使用することができる当業者に知られた反応からの単なる選択を表す。
【0067】
本発明によるポリマーは、純粋物質としてだけでなく、それに代えて、任意の所望の型のさらなるポリマー状、オリゴマー状、樹状もしくは低分子量物質として使用することが好ましいかもしれない。これらは、たとえば、電子特性を改善してもよいし、それ自身発光してもよい。上記混合物は、少なくとも一つのポリマー成分を含む組成物を意味するものと解される。
【0068】
したがって、本発明は、さらに、一以上の本発明のポリマーおよび一以上のさらなるポリマー状、オリゴマー状、樹状もしくは低分子量物質を含む混合物(ブレンド)に関する。
【0069】
本発明のさらなる具体例では、式(I)の構造単位を含む本発明のポリマーと低分子量物質を含む混合物が好ましい。
【0070】
本発明のさらなる具体例では、混合物は、本発明によるポリマー、本発明によるポリマー中に存在するか、上記具体例のとおり、低分子量物質と全混合されるかのいずれかであるエミッターとさらなる低分子量物質を含むことが好ましい。これらの低分子量物質は、群1乃至8からの可能なモノマービルディングブロックに言及されると同じ官能基を有することができる。
【0071】
本発明は、さらに、本発明による一以上のポリマーと少なくとも一つの溶媒を含む処方に関する。この型の溶液を調製することができる方法は、当業者により知られ、たとえば、WO 02/072714A1、WO 03/019694A2 およびそこに引用された文献に記載されている。
【0072】
適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、キシレン、メチルベンゾエート、ジメチルアニソール、メシチレン、テトラリン、ベラトロールおよびテトラヒドロフランまたは上記物質の混合物である。
【0073】
これら溶液は、たとえば、エリアコ−ティング法(たとえば、スピンコ−ティング)または印刷法(たとえば、インクジェット印刷)によって、薄いポリマー層を製造するために使用することができる。
【0074】
本発明による化合物は、好ましくは、70℃を超える、特に、好ましくは、100℃を超える、非常に、特に、好ましくは、100℃を超えるガラス転移温度を有する。
【0075】
本発明によるポリマー、混合物もしくは処方は、電子または光電子素子もしくはその製造法に使用することができる。さらに、本発明による化合物は、界面活性物質、たとえば、界面活性剤として使用することができる。
【0076】
本発明は、発明によるポリマー、混合物もしくは処方の電子または光電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機集積回路(O-IC)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機太陽電池(O-SC)、有機レーザーダイオード(O-laser)、有機光電池もしくは素子(OPV)または有機光受容器(OPC)、特に、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)での使用に関する。
【0077】
本発明は、本発明による化合物の有機エレクトロルミネッセンス素子、特に、OLEDでの使用に焦点を当てている。しかしながら、当業者は、更なる発明性も要せずに、本発明を他の電子素子でのさらなる使用に使用することができる。
【0078】
本発明の目的のために、本発明によるポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーは、電子素子中で層として(または、層中に)存在することが好ましい。
【0079】
したがって、本発明は、本発明の一以上のポリマーを含む層、特に、有機層にも関する。
【0080】
化合物は、好ましくは、本発明による一以上のポリマーを含む少なくとも一つの層を含む有機電子素子中で使用される。好ましいものは、特に、陽極、陰極と少なくとも一つの発光層を含み、少なくとも一つの層が式(I)の構造要素を含む本発明による少なくとも一つのポリマーを含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子における使用である。
【0081】
さらなる具体例では、式(I)の構造要素を含むポリマーが、発光化合物と一緒になって発光層で使用されることが好ましい。ついで、式(I)の構造要素を含むポリマーと発光化合物の混合物は、次いで、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、99〜1重量%、好ましくは、98〜60重量%、特に、好ましくは、97〜70重量%、特に、97〜75重量%のポリマーを含む。対応して、混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、1〜99重量%、好ましくは、2〜40重量%、特に、好ましくは、3〜30重量%、特に、5〜25重量%のエミッターを含む。
【0082】
本発明のなおさらなる具体例では、本発明による化合物は、正孔輸送材料として、または正孔注入材料として使用される。化合物は、好ましくは、正孔輸送または正孔注入層中で使用される。本発明による正孔注入層は、たとえば、トリアリールアミン、カルバゾール、シランもしくはホスフィンである。
【0083】
本発明の意味での正孔注入層は、陽極に直接隣接する層である。本発明の意味での正孔輸送層は、正孔注入層と発光層との間に位置する層である。本発明による化合物が、正孔輸送材料または正孔注入材料として使用されるならば、それらは、電子受容性化合物、たとえば、F4-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)またはEP 1476881 もしくは EP 1596445に記載される化合物でドープされることが好ましいかもしれない。
【0084】
さらに、本発明による化合物は、電荷障壁層に使用することもできる。これらの電荷障壁層は、アルミニウム酸化物、ポリビニルブチラール、シランおよびそれらの混合物を含む種々の適切な材料から成ってもよい。これらの層は、公知の被覆技術により一般的に適用され、任意の有効厚さ、たとえば、0.05〜0.5μmを有することができる。
【0085】
本発明のなおさらなる具体例では、本発明による化合物は、電子輸送材料として使用される。ここで、一以上の置換基Rおよび/またはRは少なくとも一つの単位C=O、P(=O)、SOおよび/またはSOを含むことが好ましい。これらの基は、特に、好ましくは、本発明による中央単位に直接結合しており、さらに、特に、好ましくは、さらなる一個の、ホスフィンオキシドの場合は、二個のさらなる芳香族置換基を含むことが好ましい。本発明による電子伝導体は、たとえば、ベンズイミダゾール、トリアジン、ニトリル、ニトロ化合物もしくはボランであり得る。
【0086】
本発明は、さらに、一以上の活性層を含む電子または光電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機集積回路(O-IC)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機太陽電池(O-SC)、有機レーザーダイオード(O-laser)、有機光電池もしくは素子(OPV)または有機光受容器(OPC)、特に、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子であり、これら活性層の少なくとも一つは、本発明による一以上のポリマーを含む。活性層は、たとえば、発光層、電荷輸送層および/または電荷注入層であり得る。
【0087】
OLEDを製造することができる方法は、当業者に知られており、たとえば、WO 2004/070772 A1で一般的プロセスとして詳細に記載されており、対応して個々の場合のために採用されるべきである。
【0088】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、好ましくは、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくはたとえばロールツーロール印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷またはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)もしくはインクジェット印刷、浸漬プロセスもしくはスプレープロセスのような所望の印刷法により製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のために必要である。ここで、驚くべきことに、高い溶解度を、本発明による置換により達成することができる。
【0089】
陰極、陽極および発光層とは別に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、更なる層、を含んでもよい。これらの層は、たとえば、電荷担体注入層、電荷担体輸送層および電荷担体障壁層から選択し得る(T. Matsumoto et al., Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer, IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5))。しかしながら、これら各層の夫々は、必ずしも存在する必要はなく、同じ機能を有する複数の層が存在してもよいことが指摘されねばならない。
【0090】
本発明のさらなる具体例では、有機エレクトロルミネセンス素子は、複数の発光層を含み、少なくとも一つの層は少なくとも一つの本発明の化合物を含む。発光層は、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、この場合、全体として、白色発光が生じる。特に好ましいものは、3層構造であり、これらの層の少なくとも一つは少なくとも一つの本発明の化合物を含み、3層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈するものである。(基本構造については、たとえば、WO 05/011013参照。)
したがって、本発明は、素子自体と本発明による化合物の対応する素子での使用の両者に関する。
【0091】
本発明のポリマーの上記好ましいと言及されまたは明示的に言及されないすべての好ましい特徴とすべての特徴、それらの電子素子での使用と電子素子自体は、所望のとおりに互いに組み合わせることができる。すべての得られる組み合わせも、同様に、本発明の一部である。
【0092】
本発明による化合物は、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用において、一以上の以下の有利な性質を有する。
【0093】
1.本発明による化合物は、低いLUMO(最低空分子軌道)を有し、その結果、より還元しやすい。これは、より容易な電子注入とより低い駆動電圧を生じる。
【0094】
2.本発明による化合物は、多層構造を達成することができるための溶解性と湿潤特性に関する良好な示差能力を有する。これは、本発明による化合物の部分的にフッ素化された側鎖間の粘着フッ素-フッ素相互作用に基づいている。
【0095】
3.本発明による化合物は、特に、高品質の用途のための青色発光有機エレクトロルミネッセンス素子において、寿命と効率を増加する。
【0096】
以下の例は、本発明をより詳細に説明することを意図しているが、それにより限定することを望むものではない。特に、関連する例が基礎とする定義された化合物について記載された特徴、特性および優位性は、特に、断わらなければ、詳細には言及されない他の化合物にも適用することができ、クレームの保護範囲内のものである。
【0097】

ポリマーの調製
本発明によるポリマーの合成のためのモノマー化合物は、先行技術に記載された方法により調製することができ、当業者は、発明性を要することなく、方法を問題となる特別な場合に適用することができるだろう。9-位でアルキル基により置換されたインデノフルオレン誘導体の合成のためのプロセスは、たとえば、WO 04/113412に開示されている。
【0098】
本発明による部分的にフッ素化された側鎖、特に、-OCF、-SCFおよび-N(CF基を含むものの合成のためのプロセスは、たとえば、WO 06/072401および WO 08/003447に開示されている。
【0099】
ポリマーの調製
本発明によるポリマーP1〜P6は、WO 03/048225 A2からの一般的手順にしたがって、スズキカップリングにより以下のモノマー(パーセントデータ=モル%)を使用して合成される。
【0100】
例1(ポリマーP1)
【化5】

【0101】
例2(ポリマーP2)
【化6】

【0102】
例3(ポリマーP3)
【化7】

【0103】
例4(ポリマーP4)
【化8】

【0104】
例5(ポリマーP5)
【化9】

【0105】
例6(ポリマーP6)
【化10】

【0106】
例7〜12:PLEDの製造
ポリマー有機発光ダイオード(PLED)の製造は、特許文献(たとえば、WO 04/037887 A2)に何度も既に記載されてきた。本発明を実例により説明するために、本発明によるポリマーP1〜P6を含むPLEDが、スピンコーティングにより、製造される。
【0107】
このために、テクノプリント社からの特注基板が、この目的のために特別に設計されたレイアウトで使用される。ITO構造(インジウム錫酸化物、透明導電性陽極)は、2×2mm大きさの4画素が、製造工程の最後で気相堆積により適用される陰極で得られるようなパターンで、スパッタリングによりソーダライムガラスに適用される。
【0108】
基板は、クリーンルーム内でDI水と洗剤(デコネックス15PF)で洗浄され、ついで、UV/オゾンプラズマ処理により活性化される。80nmのPEDOT(PEDOTは、ポリチオフェン誘導体(バイトロン PVAI4083sp)H.C.Stack,Goslar製、水性分散液として供される)層が、その後同様に、クリーンルーム内で、スピンコーティングにより適用される。必要とされるスピン速度は、希釈度と特定のスピンコーターの形状(典型的には80nm:4500rpm)に依存する。層から残留水を除去するために、基板は、ホットプレート上で180℃10分間加熱により乾燥される。ついで、不活性ガス(窒素またはアルゴン)雰囲気下、まず、20nmの中間層(典型的には、正孔支配ポリマー、ここでは、メルク製HIL−012)と、ついで65nmのポリマー層が、トルエン溶液(中間層の濃度は、5g/l、ポリマーP1〜P6に対して8〜10g/l)から適用される。二層は、180℃で少なくとも10分間の加熱により乾燥される。Ba/Al陰極が、ついで、気相堆積マスク(アルドリッチ製高純度金属、特に、99.99%バリウム(注文番号474711);レスカー社等製気相堆積ユニット、典型的真空レベルは5×10−6mbar)により指示されるパターンで気相堆積される。最後に、素子は、特に、空気と周囲湿度から陰極を保護するために密封され、その後、特性決定される。
【0109】
このために、素子は基板サイズに合わせて特別に製造されたホルダーに把持され、ばね接点で供される。アイレスポンスフィルターを有するフォトダイオードは、外部光からの影響を排除するために、測定ホルダー上に直接置くことができる。
【0110】
電圧は、典型的には、0から最大20Vまで、0.2V刻みで増加され、再度減少される。各測定点で素子の電流と得られた光電流が、フォトダイオードにより測定される。こうして、試験素子のIULデータが得られる。重要なパラメータは、測定された最大効率(cd/Aでの“max.eff.”)と100cd/mに対して必要とされる電圧である。
【0111】
さらに、試験素子の色と正確なエレクトロルミネセンススペクトルを知るために、100cd/mに対して必要とされる電圧が、最初の測定後に再度適用され、フォトダイオードがスペクトル測定ヘッドにより置き代えられる。これは、光学繊維により分光計(オセアン オプティック製)に結合している。色座標(CIE:国際照明委員会、1931年からの標準オブザーバー)は、測定スペクトルから導き出すことができる。
【0112】
PLED中のポリマーP1〜P6の使用により得られた結果は、表1に示される。
【0113】
表1
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01〜100モル%の一以上の式(I)の構造要素を含むポリマー。
【化1】

(式中:
Mは、出現毎に、同一であるか異なり、芳香族、複素環式芳香族もしくは脂肪族架橋芳香族環構造であって、随意に、一以上の置換基Rにより置換されてよく、ここで、以下に定義される置換基RおよびRは、出現毎に、同一であるか異なってよく、ただし、添え字aおよびbには以下が適用される:
10,000≧a≧1
10≧b≧1および
破線は、隣接する構造単位への結合を表し、ここで、加えて、示される二個以上の結合が生じてもよく、本発明による化合物は、随意に、部分的にフッ素化された基Rにより置換されないさらなる同一であるか異なる構造要素Mを有し、ただし、本発明による化合物中の構造単位Mの合計は、2〜10,000であり、さらに、
は、1〜60個のC原子を有するフッ素化された有機置換基であって、飽和あるいは不飽和、直鎖、環状もしくは分岐状であってよく、さらに、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、O、S、Se、Te、Si(R、Ge(R、BR、NR、PR、CO、C=S、C=Se、C=NR、PO(R)、PS(R)、RC=CR、C≡C、SO、SO、COO、O(CO)OもしくはCONRで置き代えられてよく、ただし、Rは、完全にはフッ素化されておらず、すなわち、基Rの炭素主鎖は、少なくとも一つの自由な位置でF以外の置換基により置換され、一つの基Mもしくは二以上の異なる隣接あるいは非隣接の基Mに結合する二個以上の基Rは、脂肪族、不飽和もしくは芳香族環構造を形成することができ、および
は、出現毎に、同一であるか異なり、H、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であって、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよく、ここで、さらに、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、O、S、Se、Te、Si(R、Ge(R、BR、NR、PR、CO、C=S、C=Se、C=NR、PO(R)、PS(R)、RC=CR、C≡C、SO、SO、COO、O(CO)OもしくはCONRで置き代えられてよく、ただし、一つの基Mもしくは二以上の異なる隣接あるいは非隣接の基Mに結合する二個以上の基Rは、脂肪族、不飽和もしくは芳香族環構造を形成することができ、
は、出現毎に、同一であるか異なり、H、Fまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であって、一以上のH原子はFで置き代えられてよい。
【請求項2】
構造要素Mが、6〜40個のC原子を有する芳香族環構造を表すことを特徴とする、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
構造要素Mが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、シス-あるいはトランス-インデノフルオレン、ベンゾインデノフルオレン、ジベンズインデノフルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、ベンゾフェナントレンもしくはジヒドロフェナントレン誘導体を表すことを特徴とする、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項4】
ポリマーが、一以上の以下の式(II)〜(XXXIV)から選ばれる一以上の構造要素Mを含むことを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載のポリマー。
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

(式中、請求項1で定義されるとおりの構造要素は、随意に、骨格のすべてのH置換位置で、代わりに一以上の同一であるか異なる基Rにより置換されてもよい。)
【請求項5】
は、同一であるか異なり、1〜20個のC原子を有する部分的にフッ素化された非芳香族置換基であって、飽和あるいは不飽和、直鎖、環状もしくは分岐状であってよく、さらに、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、O、S、Si(R、BR、NR、PR、CO、C=S、C=NR、PO(R)、PS(R)、RC=CR、C≡C、SO、SO、COO、O(CO)OもしくはCONRで置き代えられてよいことを特徴とする、請求項1〜4何れか1項記載のポリマー。
【請求項6】
は、1〜12個のC原子を有する部分的にフッ素化された飽和、直鎖、分岐もしくは環状アルキル基であって、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、O、S、NR、C=O、COOもしくはCONRで、随意に、置き代えられてよいことを特徴とする、請求項1〜5何れか1項記載のポリマー。
【請求項7】
は、基-OCF、-SCF、-N(CFおよび末端脂肪族トリフルオロメチルから選ばれる一以上の構造要素を含むことを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載のポリマー。
【請求項8】
1000〜2,000,000g/molの分子量を有することを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載のポリマー。
【請求項9】
一以上の以下の機能を果たす構造要素を含むことを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載のポリマー。
電荷輸送、電荷注入、正孔輸送、正孔注入、発光、電荷障壁またはモルホロジー、レオロジーもしくは加工性改善。
【請求項10】
式(XXXV)の化合物。
【化3】

(式中:記号と添え字M、Rおよびbは、請求項1〜7に定義されるとおりに使用され、さらに、Xは、重合反応に適する脱離基を表し、添え字nは、値1、2または3であることができる。)
【請求項11】
Xが、互いに独立して、同一であるか異なり、ハロゲン、O-トシレート、O-トリフレート、O-スルホネート、ボロン酸エステル、部分的にフッ素化されたシリル基、ジアゾニウム基および有機錫化合物から選ばれることを特徴とする、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
請求項1〜9何れか1項記載の少なくとも一つのポリマーと、さらに、ポリマー状、オリゴマー状、樹状および低分子量物質のクラスから選ばれる一以上の化合物を含む混合物。
【請求項13】
請求項1〜9何れか1項記載の少なくとも一つのポリマーと、少なくとも一つの溶媒を含む処方。
【請求項14】
請求項1〜9何れか1項記載のポリマーまたは請求項12記載の混合物の有機電子素子での使用。
【請求項15】
有機電子素子であって、一以上の活性層を含み、これら活性層の少なくとも一つは、請求項1〜9何れか1項記載のポリマーまたは請求項12記載の混合物を含む、有機電子素子。
【請求項16】
有機電子素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機太陽電池(O-SC)、有機レーザーダイオード(O-laser)、有機光電池もしくは対応する素子(OPV)または有機光受容器(OPC)であって、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)であることを特徴とする、請求項15記載の有機電子素子。

【公表番号】特表2012−533661(P2012−533661A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520919(P2012−520919)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003881
【国際公開番号】WO2011/009522
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】