説明

電子表札

【課題】平常時には表札として機能し、緊急異常時には、特定メッセージの表示に切り替わって緊急事態の発生及びその発生場所を明瞭に報知し、犯罪等を未然に防止する電子表札を提供する。
【解決手段】表札機能としての氏名を表示し、また、この氏名に替えてSOS などの特定メッセージを表示するためのLED エレメントをマトリックス状に配設したLED 表示パネル2 と、氏名と特定メッセージの内容をあらかじめ記憶した主記憶部3 と、緊急異常事態が発生した際に、氏名を表示するモードから特定メッセージの表示モードに切り替える切り替え部4 と、この切り替え部4 等を制御する制御部5 と、LED 表示パネル2 、制御部5 に電力を供給する電源部6 とを備え、さらに、電子表札1 の制御部5 には外部からこの電子表札1 を操作するための外部入力操作部7 が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子表札に関し、更に詳しくは、通常は門や戸口に掲げる氏名を表示した一般的な表札であるが、緊急異常事態が発生した際には表札モードから異常事態を知らせる異常表示モードに切り替わる電子表札に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建住宅の門や戸口、あるいは集合住宅の玄関まわりには、表札が掛けられている。たとえば、戸建住宅の場合の表札は、一般的には門柱や該門柱に連設する外壁などに設置されている。
【0003】
近年、種々の電子技術を取り入れた表札が提案されているが、その一つの例として、訪問者の入門にあたって情報表示を行うLCD表示器を有する表示デバイスを有すると共に、情報を記録するデータ記録部、伝言メッセージを編集するデータ処理部、また音声メッセージを記録する音声メッセージ記録部等を備え、被訪問者の在宅、非在宅を問わず訪問者に対して柔軟な対応を可能にした電子表札器( 例えば、特許文献1 参照) がある。
【0004】
また、他の例としては、画面に表示データを表示するLCD表示部と、表示データを記憶する機能と、表示データの選択、決定を操作するキー操作部を有する表札と、この表札のLCD表示部を制御するLCDコントローラ等を備え、キー操作部からの操作によりLCD表示部に表示データとして名前やメッセージ等を入力して表示出来る多機能を備えた表札( 例えば、特許文献2 参照) がある。
【特許文献1】特開平9-259365号公報
【特許文献2】特開2001-324934 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の上記前者の電子表札は、その表示手段としてLCD(液晶表示デスプレイ) を使用して来訪者への伝言や、音声メッセージを伝達し、来訪者からの音声メッセージを記録する形式の表札であり、また、上記後者の多機能を備えた表札は、同様にLCDを使用し、このLCDの表示部に表示する内容を任意に変更して、適宜その都度の来訪者に対応できるところに特徴がある。
【0006】
ところで、近時、老齢化が急速に進み、独居する老人が増加し、突発的な事故や病気により、周囲の人々に救援を求めることもできず、心ならずも命を絶つケースが目立っている。また、近時、凶悪な犯罪が増え、若い女性や老人が非業の最期を遂げるケースも急増している。
【0007】
しかしながら、上記従来の表札は、来訪者に対する単なるメッセージ表示や音声による対話のみで、上記のような緊急事態に際し、近隣の住民等に緊急事態の発生を知らせ救援を求めることに対しては全く考慮されておらず、したがって、不本意な死亡事故や凶悪犯罪を未然に防ぐことはできないという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、平常時には表札として機能し、緊急時には、視認性に優れたLED(発光ダイオード) を点滅表示させるなどして緊急事態の発生及びその発生場所を近隣の住民に明瞭に報知し、事態の悪化や犯罪の発生を未然に防止する防犯機能を備えた表札を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1は、表札としての氏名を表示し、該氏名に替えて特定メッセージを表示する複数のLED を縦横に配設したLED 表示パネルと、前記氏名と特定メッセージの内容をあらかじめ記憶した主記憶部と、前記氏名と特定メッセージの表示モードを切り替える切り替え部と、該切り替え部等を制御する制御部と、前記LED 表示パネル、制御部に電力を供給する電源部とを備えたことを特徴とする電子表札を内容とする(請求項1)。
【0010】
好ましい態様としての請求項2は、特定メッセージの一つとしてSOS などの緊急救助文字を主記憶部に記憶させ、緊急時には切り替え部によって氏名の表示から前記緊急救助文字の表示に切り替え異常事態の発生を知らせることを特徴とする請求項1 記載の電子表札である。
【0011】
好ましい態様としての請求項3は、特定メッセージの一つとしてSOS などの緊急救助文字を主記憶部に記憶させ、緊急時には氏名又は前記緊急救助文字が点滅し異常事態の発生を知らせることを特徴とする請求項1 記載の電子表札である。
【0012】
好ましい態様としての請求項4は、LED の輝度が1100カンデラ/m2 以上であることを特徴とする請求項1 〜3 のいずれか1 項に記載の電子表札である。
【0013】
好ましい態様としての請求項5は、更に、音声や警報信号を記憶する音記憶部と、該音記憶部からの音信号を出力するスピーカとを備え、緊急時には前記スピーカから音声や警報を併用して出力することを特徴とする請求項1 〜4 のいずれか1 項に記載の電子表札である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子表札は、普段は単に氏名を表示した一般的な表札として機能するが、緊急異常事態発生の際には、氏名の表示から、例えば、「SOS」、「助けてください」、「110番して下さい」、「救急車を呼んで下さい」等の緊急救助文字の表示に直ちに切り替え、あるいは氏名又は前記緊急救助文字を点滅させて表示し、更には、必要に応じ、スピーカから音声や警報を併用して出力するなどして緊急事態の発生と発生場所を近隣の住民に明瞭に表示、報知することにより、すなわち、このような積極的且つ具体的な救助要請によって地域ぐるみで異常事態に対処することにより、危難状態からの脱出を可能とするものである。
【0015】
また、当該電子表札に使用するLED として、1100カンデラ/m2 以上の高輝度のものを使用することにより、一層視認性に優れ、さらに高輝度のLED(発光ダイオード) を点滅表示することによって、遠距離であっても、また、昼夜を問わず広い角度から緊急事態の発生を報知するとともに緊急事態の発生場所を報知することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の電子表札は、LED を縦横に配設したLED 表示パネルと、このLED 表示パネルに表示するあらかじめ決められた氏名と特定メッセージとを記憶した主記憶部と、更に、必要に応じ、音声や警報信号を記憶する音記憶部とを備え、普段は氏名を表示して一般的な表札として機能するが、緊急異常事態が発生した際には、氏名の表示から特定メッセージの表示に瞬時に切り替え、また、必要に応じて音声や警報をスピーカから出力するように構成される。
【0017】
さらに、LED 表示パネルに配設されるLED の輝度は通常1000カンデラ/m2 程度であるが、本発明では、好ましくは1100カンデラ/m2 以上、より好ましくは1250カンデラ/m2 以上、更に好ましくは1300カンデラ/m2 程度のものが用いられる。このような高輝度のLED を用いることによって、遠方距離であっても、また、昼夜を問わず視認性に優れ、緊急事態の発生及びその発生場所を明確に報知することができ、迅速且つ適切な救助や防犯が可能となる。
尚、輝度は株式会社オムロン製輝度測定器により測定した値である。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の電子表札の実施例を図面に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されないことは云うまでもない。
【0019】
実施例1
本実施例1における電子表札1 は、図1に示すように、表札機能としての氏名を表示し、また、この氏名に替えて、例えば、「SOS 」、「110番して下さい」、「救助を求めています」、「救急車を呼んで下さい」などの特定メッセージを表示するためのLED エレメントをマトリックス状に配設したLED 表示パネル2 と、氏名と特定メッセージの内容をあらかじめ記憶した主記憶部3 と、緊急異常事態が発生した際に、氏名表示モードから特定メッセージ表示モードに切り替える切り替え部4 と、該切り替え部4 、LED 表示パネル2 などを制御する制御部5 と、LED 表示パネル2 、制御部5 に電力を供給する電源部6 とを備え、さらに、電子表札1 の制御部5 には外部からこの電子表札1 を操作するための外部入力操作部7 が接続されている。
【0020】
上記構成における電子表札1 は、通常は氏名を表示して一般的な表札として機能している。しかし、例えば、強盗などの不法侵入をはじめとして、高齢者家族、一人暮らしなどの状況における突然の傷病的異変等々の緊急異常事態が発生した際には、居室、廊下など複数個所に取り付けられた外部入力操作部7 のキーボタン( 図示せず) を押せば、電子表札1 の制御部5 は、切り替え部4 を介し主記憶部3 に記憶された「SOS 」などの特定メッセージを選択し、それをLED 表示パネル2 に氏名に替えて即座に表示する。
【0021】
また、制御部5 にはLED の点灯制御回路の他に点滅制御回路も内蔵されており、外部入力操作部7 のキーボタンが予め点滅モードに設定されている場合には、氏名又は前記緊急救助文字を点滅させて、異常事態であることを一層目立つようにして表示させることもできる。
【0022】
また、電源部6 としては、電子表札1 内に乾電池、二次電池を内蔵するようにしてもよいが、一般商用電源から所定のDC電源に変換する電源ユニット( 図示せず) を介して電子表札1 に供給すれば電池切れの心配がないようにすることも可能であり、これによって、LED 表示パネル2 に配設されるLED として1100/m2 カンデラ以上の高輝度LED を何ら心配なく利用することができる。
【0023】
また、例えば、不法侵入者の検知するために屋敷内に赤外線センサーを設置したり、窓、ドア、シャッターなどに磁気センサー、熱感知センサーなどの防犯センサーを取り付け、このセンサーからの信号を外部入力操作部7 に接続しておけば、自動的に表札の表示から防犯のメッセージ表示に切り替わりその威力を発揮することができる。
【0024】
更にまた、LED を縦横に配置して構成したLED 表示パネル2 において、異なる二色のLED エレメントを一体的に封入したLED 素子を採用すれば、例えば、通常の表札表示の際には青色などの落ち着いた色とし、異常事態発生時には赤色やオレンジ色などの目立つ色にすれば色彩的にも一層効果的な表示や報知も可能になる。
【0025】
実施例2
本実施例2における電子表札1 は、図2 に示すように、前述の実施例1の構成に、さらに、「助けてください」、「110 番してください」、「救急車を呼んで下さい」などのメッセージ的音声や、ブザー、ベルなどの警報信号を記憶する音記憶部8 と、該音記憶部8 からの音信号を出力するスピーカ9 とを追加した形態であって、この構成によって、緊急時には前記スピーカ9 から音声や警報を併用して出力できるようにしたものである。このように構成することにより、緊急事態や異常事態の内容を一層具体的且つ明確に報知できるばかりでなく、緊急事態の発生場所を一層明瞭に報知することが可能となり、救難、防犯の効果を一層高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
叙上のとおり、本発明の電子表札は、通常は氏名を表示して表札として機能するが、緊急異常事態発生時には、氏名から特定メッセージの表示に切り替え、しかもLED を使用しているので、昼夜を問わず明瞭に表示できるとともに、メッセージやその周辺部を点滅させることにより、緊急事態の発生場所を報知させることができる。
【0027】
また、本発明の電子表札は、更に、スピーカーから音声や警報を併用すれば、緊急異常事態の具体的内容や発生場所を一層明確に報知できるので、より効果的に危難に対処したり、犯罪を予防することが可能である。
【0028】
以上のように、本発明の電子表札は犯罪や傷病的異変等の緊急異常事態に迅速且つ適切に対処し、犯罪や事故を防止することを可能とするもので、凶悪な犯罪や独居老人の孤独死等が多発する今日、その有用性は頗る大である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1における電子表札の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施例2における電子表札の構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1 電子表札 2 LED 表示パネル
3 主記憶部
4 切り替え部
5 制御部
6 電源部
7 外部入力操作部
8 音記憶部
9 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表札としての氏名を表示し、該氏名に替え特定メッセージを表示する複数のLED を縦横に配設したLED 表示パネルと、前記氏名と特定メッセージの内容をあらかじめ記憶した主記憶部と、前記氏名と特定メッセージの表示モードを切り替える切り替え部と、該切り替え部を制御する制御部と、前記LED 表示パネルに電力を供給する電源部とを備えたことを特徴とする電子表札。
【請求項2】
特定メッセージの一つとしてSOS などの緊急救助文字を主記憶部に記憶させ、緊急時には切り替え部によって氏名の表示から前記緊急救助文字の表示に切り替え異常事態の発生を知らせることを特徴とする請求項1 記載の電子表札。
【請求項3】
特定メッセージの一つとしてSOS などの緊急救助文字を主記憶部に記憶させ、緊急時には氏名又は前記緊急救助文字が点滅し異常事態の発生を知らせることを特徴とする請求項1 記載の電子表札。
【請求項4】
LED の輝度が1100カンデラ/m2 以上であることを特徴とする請求項1 〜3 のいずれか1 項に記載の電子表札。
【請求項5】
更に、音声や警報信号を記憶する音記憶部と、該音記憶部からの音信号を出力するスピーカとを備え、緊急時には前記スピーカから音声や警報を併用して出力することを特徴とする請求項1 〜4 のいずれか1 項に記載の電子表札。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−227868(P2006−227868A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40287(P2005−40287)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(393029686)三和計器株式会社 (1)
【Fターム(参考)】