説明

電子装置及びその製造方法

【課題】信頼性の高い電子装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数のチップ12a,12bと、複数のチップを埋め込む樹脂層10と、互いに隣接するチップ同士を電気的に接続する配線26と、配線により電気的に接続されたチップに係合し、樹脂層より熱膨張率が低く、配線により電気的に接続されたチップ同士を固定する固定部材18とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のチップを1つのパッケージに収めてモジュール化したマルチチップモジュール(マルチチップパッケージ)が提案されている。
【0003】
マルチチップモジュールは、異なる種類の複数のチップを1つのパッケージに収めることが可能であり、高集積化等に寄与し得るため、大きな注目を集めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−260866号公報
【特許文献2】特開2004−335629号公報
【特許文献3】特開2005−353644号公報
【特許文献4】特許第3091214号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】小野塚 豊、他2名、“異種デバイスを高密度集積化できる擬似SOC技術”、東芝レビュー、2009年、Vol. 64、No. 2、p. 52-55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、提案されているマルチチップモジュールでは、必ずしも十分に高い信頼性が得られないことが考えられる。
【0007】
本発明の目的は、信頼性の高い電子装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、複数のチップと、前記複数のチップを埋め込む樹脂層と、互いに隣接する前記チップ同士を電気的に接続する配線と、前記配線により電気的に接続された前記チップに係合し、前記樹脂層より熱膨張率が低く、前記配線により電気的に接続された前記チップ同士を固定する固定部材とを有することを特徴とする電子装置が提供される。
【0009】
実施形態の他の観点によれば、複数のチップを樹脂層により埋め込む工程と、互いに隣接する前記チップに係合し、前記樹脂層より熱膨張率が低く、互いに隣接する前記チップ同士を固定する固定部材を形成する工程と、互いに隣接する前記チップ同士を電気的に接続する配線を形成する工程とを有することを特徴とする電子装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示の電子装置及びその製造方法によれば、配線により電気的に接続されたチップに係合し、樹脂層より熱膨張率が低く、配線により電気的に接続されたチップ同士を固定する固定部材が形成されている。かかる固定部材が形成されているため、樹脂層が熱膨張した場合であっても、配線により電気的に接続されたチップ同士を固定することができる。このため、配線の断線を防止することができ、ひいては、信頼性の高い電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1実施形態による電子装置を示す断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態による電子装置の平面図である。
【図3】図3は、第1実施形態による電子装置を回路基板に実装した状態を示す断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その1)である。
【図5】図5は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その2)である。
【図6】図6は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その3)である。
【図7】図7は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その4)である。
【図8】図8は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その5)である。
【図9】図9は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その6)である。
【図10】図10は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その7)である。
【図11】図11は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その8)である。
【図12】図12は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その9)である。
【図13】図13は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その10)である。
【図14】図14は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その11)である。
【図15】図15は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その12)である。
【図16】図16は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その13)である。
【図17】図17は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その14)である。
【図18】図18は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その15)である。
【図19】図19は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その16)である。
【図20】図20は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その17)である。
【図21】図21は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その18)である。
【図22】図22は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その19)である。
【図23】図23は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その20)である。
【図24】図24は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その21)である。
【図25】図25は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その22)である。
【図26】図26は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その23)である。
【図27】図27は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その24)である。
【図28】図28は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その25)である。
【図29】図29は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その26)である。
【図30】図30は、第1実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図(その27)である。
【図31】図31は、第1実施形態の変形例による電子装置の製造方法を示す工程図(その1)である。
【図32】図32は、第1実施形態の変形例による電子装置の製造方法を示す工程図(その2)である。
【図33】図33は、第1実施形態の変形例による電子装置の製造方法を示す工程図(その3)である。
【図34】図34は、第1実施形態の変形例による電子装置の製造方法を示す工程図(その4)である。
【図35】図35は、第2実施形態による電子装置及びその製造方法を示す断面図である。
【図36】図36は、第2実施形態による電子装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図37】図37は、第2実施形態による電子装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図38】図38は、第2実施形態による電子装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図39】図39は、第2実施形態による電子装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【図40】図40は、第2実施形態による電子装置の製造方法を示す工程断面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
マルチチップモジュールにおいては、複数のチップを樹脂層により封止した後、複数のチップを互いに電気的に接続するための配線(再配線)が樹脂層上に形成される。
【0013】
樹脂層の熱膨張率は比較的大きいため、樹脂層の熱膨張により、配線に大きなストレスが加わってしまう場合がある。
【0014】
配線に大きなストレスが加わると、配線の断線等が生じてしまい、製造歩留りや信頼性の低下を招いてしまうこととなる。
【0015】
[第1実施形態]
第1実施形態による電子装置及びその製造方法について図1乃至図30を用いて説明する。
【0016】
(電子装置)
まず、本実施形態による電子装置について図1乃至図3を用いて説明する。図1は、本実施形態による電子装置を示す断面図である。図2は、本実施形態による電子装置の平面図である。図1(a)は、図2のA−A′線断面に対応しており、図1(b)は、図2のB−B′線断面に対応している。図3は、本実施形態による電子装置を回路基板に実装した状態を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、樹脂層(モールド樹脂層、封止樹脂層)10には、複数のチップ(ベアチップ)12a,12bが埋め込まれている。樹脂層10の材料としては、例えば熱可塑性の樹脂が用いられている。より具体的には、樹脂層10の材料として、フィラーが混入されたエポキシ系樹脂が用いられている。樹脂層10の熱膨張率は、例えばシリコンの熱膨張率の100倍程度である。従って、樹脂層10の熱膨張率は、チップ12a,12bや配線26の熱膨張率と比較して著しく大きい。
【0018】
チップ12a,12bとしては、例えば半導体チップ等が挙げられる。かかる半導体チップ12a,12bとしては、例えばチップ状のLSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
【0019】
なお、チップ12a,12bは、半導体チップに限定されるものではない。例えば、チップ12a,12bは、チップ抵抗、チップコンデンサ、MEMS素子等であってもよい。
【0020】
また、半導体チップ12a,12bは、シリコン系の半導体チップに限定されるものではなく、化合物半導体の半導体チップであってもよい。例えば、チップ12aがシリコン系の半導体チップであり、チップ12bが化合物半導体の半導体チップであってもよい。
【0021】
また、樹脂層10に埋め込まれた複数のチップ12a,12bは、互いに異なる種類のチップであってもよいし、互いに同じ種類のチップであってもよい。ここでは、チップ12a,12bとして、互いに異なる種類のチップが用いられている。
【0022】
また、ここでは、1つのマルチチップモジュールに2つのチップ12a,12bが含まれている場合を例に説明するが、1つのマルチチップモジュールに含まれるチップの数は2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0023】
樹脂層10の厚さは、例えば300μm程度とする。チップ12a,12bの厚さは、例えば200μm程度とする。なお、樹脂層10の厚さが、チップ12a,12bの厚さと等しくてもよい。
【0024】
チップ12a,12bの一方の面(図1における紙面上側の面)及びチップ12a,12bの電極(表面電極、外部接続電極)14a,14bは、樹脂層10の一方の面(図1における紙面上側の面)に露出している。
【0025】
チップ12a,12bの一方の面(図1における紙面上側の面)には、凹部16が形成されている。かかる凹部16は、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18が係合するものである。凹部16は、例えばチップ12a,12bの四隅に形成されている。凹部16の開口寸法は、例えば50μm径〜100μm径程度とする。凹部16の深さは、例えば50μm〜100μm程度とする。
【0026】
チップ12a,12bが埋め込まれた樹脂層10の一方の面(図1における紙面上側の面)上には、凹部16に係合する固定部材18が形成されている。固定部材18は、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定するものである。互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18の一部は、チップ12aの凹部16に係合しており、当該固定部材18の他の一部は、当該チップ12aに隣接する他のチップ12bの他の凹部16に係合している。
【0027】
後述するように、本実施形態では、複数のマルチチップモジュール(マルチチップパッケージ)2が一括して形成される。複数のマルチチップモジュール2を一括して形成した後には、ダイシングライン(ダイシング領域、スクライブライン、スクライブ領域)66(図26参照)に沿って切断が行われ、マルチチップモジュール2が個片化される。この場合、ダイシングライン66によって区画されるデバイス領域68内において互いに隣接しているチップ12a,12b同士を固定する固定部材18は、切断されない。一方、ダイシングライン66を挟んで互いに隣接していたチップ12a,12b同士を固定していた固定部材18は、ダイシングライン66において切断される。
【0028】
このため、チップ12a,12bが埋め込まれた樹脂層10の一方の面(図1における紙面上側の面)上には、隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18のみならず、ダイシングライン66において切断された固定部材18も存在している。ダイシングライン66に沿って樹脂層10と一緒に固定部材18が切断されているため、切断された固定部材18の切断面と樹脂層10の切断面とが揃っている。
【0029】
固定部材18の熱膨張率は、樹脂層10の熱膨張率に対して十分に低いことが好ましい。また、固定部材18の熱膨張率は、配線26の熱膨張率以下であることが好ましい。即ち、固定部材18の熱膨張率は、配線26の熱膨張率と同等、又は、配線26の熱膨張率より小さいことが好ましい。固定部材18は、樹脂層10が熱膨張した場合であっても、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくためのものだからである。配線26の材料として例えば銅(Cu)を用いる場合には、固定部材18の材料として、例えば、Cu、クロム(Cr)、タングステン(W)、又は、二酸化シリコン(SiO)等を用いることができる。
【0030】
また、固定部材18は、チップ12a,12b内に形成されているいずれの電気的素子(トランジスタ等の能動素子や、抵抗、コンデンサ等の受動素子等)にも電気的に接続されていない。
【0031】
固定部材18は、機械的強度が比較的高いことが好ましい。固定部材18は、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定するためのものだからである。固定部材18の断面積を大きめに設定すれば、固定部材18の機械的強度を比較的高く設定することが可能である。このため、固定部材18の断面積は、配線26の断面積の例えば5倍以上に設定することが好ましい。より好ましくは、固定部材18の断面積を、配線26の断面積の例えば100倍以上に設定する。ここでは、固定部材18の断面積を、例えば500μm程度とする。
【0032】
固定部材18が形成された樹脂層10上には、固定部材18を覆うように絶縁膜20が形成されている。絶縁膜20の材料としては、例えばポリイミド系樹脂又はフェノール系樹脂等が用いられている。絶縁膜20の膜厚は、例えば10μm〜100μm程度とする。
【0033】
絶縁膜20には、チップ12a,12bの電極14a,14bにそれぞれ達する開口部(コンタクトホール)22が形成されている。
【0034】
開口部22内にはビア24が形成されている。
【0035】
絶縁膜20の一方の面(図1における紙面上側の面)には、ビア24と一体に形成された配線26が形成されている。互いに隣接するチップ12a,12b同士を電気的に接続する配線26の一方の側は、チップ12aの電極14aに接続されており、当該配線26の他方の側は、当該チップ12aに隣接する他のチップ12bの他の電極14bに接続されている。配線26の断面積は、例えば25μm程度とする。
【0036】
絶縁膜20の一方の面(図1における紙面上側の面)には、配線26を覆うように絶縁膜28が形成されている。絶縁膜28の材料としては、例えばポリイミド系樹脂又はフェノール系樹脂等が用いられている。絶縁膜28の膜厚は、例えば5〜50μm程度とする。
【0037】
絶縁膜28には、配線26にそれぞれ達する開口部(コンタクトホール)30が形成されている。
【0038】
開口部30内には、ビア(導体プラグ)32が形成されている。
【0039】
絶縁膜28の一方の面(図1における紙面上側の面)には、ビア32と一体形成された電極パッド34が形成されている。
【0040】
絶縁膜28の一方の面(図1における紙面上側の面)には、絶縁膜36が形成されている。絶縁膜36の材料としては、例えばポリイミド系樹脂又はフェノール系樹脂等が用いられている。絶縁膜36の厚さは、例えば10μm〜100μm程度である。
【0041】
絶縁膜36には、電極パッド34を露出する開口部38が形成されている。
【0042】
電極パッド34の一方の面(図1における紙面上側の面)には、例えば半田バンプ40が形成されている。半田バンプ40は、電極パッド34及び配線26等を介してチップ12a,12bの電極14a,14bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0043】
こうして、本実施形態による電子装置(マルチチップモジュール)2が形成されている。
【0044】
マルチチップモジュール2は、図3に示すように、回路基板42上に実装される。回路基板42の表面には、電極44が形成されている。電極44は、回路基板42に形成された配線(図示せず)等に接続されている。電極44の材料としては、例えばCu、アルミニウム(Al)等が用いられる。回路基板42としては、例えば樹脂基板やセラミックス基板等が用いられる。
【0045】
マルチチップモジュール2の電極パッド34と回路基板42の電極44とは、例えば半田バンプ(半田ボール)40を用いて接合される。
【0046】
このように、本実施形態による電子装置では、互いに隣接するチップ12a,12bに係合し、樹脂層10より熱膨張率が低く、互いに隣接するチップ12a,12bを固定する固定部材18が形成されている。本実施形態によれば、かかる固定部材18が形成されているため、樹脂層10が熱膨張した場合であっても互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくことができ、配線26に加わるストレスを緩和することができる。このため、本実施形態によれば、配線26の断線を防止することができ、信頼性の高い電子装置を提供することができる。
【0047】
(電子装置の製造方法)
次に、本実施形態による電子装置の製造方法を図4乃至図30を用いて説明する。図4乃至図30は、本実施形態による電子装置の製造方法を示す工程図である。図4は、断面図である。図5は、平面図である。図4(b)は、図5のC−C′線断面に対応している。図6及び図7は断面図である。図8は、平面図である。図7(a)は、図8のA−A′断面に対応しており、図7(b)は、図8(b)のB−B′線断面に対応している。図9乃至図14は、断面図である。図15及び図16は、平面図である。図14(a)は、図15のA−A′断面に対応しており、図14(b)は、図15のB−B′線断面に対応している。図15は、図16において破線で囲まれた部分に対応している。図17乃至図19は、断面図である。図20は、平面図である。図19(a)は、図20のA−A′断面に対応しており、図19(b)は、図20のB−B′線断面に対応している。図21乃至図24は、断面図である。図25は、平面図である。図24(a)は、図25のA−A′断面に対応しており、図24(b)は、図25のB−B′線断面に対応している。図26は、平面図である。図27は、断面図である。図28は、平面図である。図27(a)は、図28のA−A′断面に対応しており、図27(b)は、図28のB−B′線断面に対応している。図29及び図30は、断面図である。
【0048】
本実施形態では、支持基板46上に複数のマルチチップモジュール2を一括して形成し、この後、マルチチップモジュール2を個片化する場合を例に説明する。
【0049】
なお、支持基板46上に複数のマルチチップモジュール2を一括して形成することに限定されるものではない。例えば、支持基板46上に1つのマルチチップモジュール2を形成してもよい。
【0050】
まず、図4(a)に示すように、例えばテープラミネート法により、支持基板46上に、厚さ100μm〜300μm程度の粘着層48を形成する。支持基板46としては、例えばシリコン基板、ステンレス(SUS)基板等を用いる。支持基板46の厚さは、例えば0.5mm〜2.0mm程度とする。支持基板46の寸法は、例えば100mm径〜300mm径程度とする。粘着層48としては、例えば、熱可塑性接着剤を形成する。より具体的には、粘着層48として、例えば、熱可塑性のエポキシ系樹脂のテープ状の接着剤等を用いる。粘着層48の厚さは、例えば100μm〜300μmとする。
【0051】
次に、粘着層48上にチップ12a,12bを配置する(図4(b)及び図5参照)。チップ12a,12bとしては、例えば半導体チップ等が挙げられる。かかる半導体チップ12a,12bとしては、例えばLSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。半導体チップ12a,12bの一辺の寸法は、例えば1mm〜20mm程度とする。
【0052】
樹脂層10に埋め込まれた複数のチップ12a,12bは、互いに異なる種類のチップであってもよいし、互いに同じ種類のチップであってもよい。ここでは、チップ12a,12bとして、互いに異なる種類のチップを用いる。
【0053】
チップ12a,12bは、半導体チップに限定されるものではない。例えば、チップ12a,12bは、チップ抵抗やチップコンデンサ等であってもよい。
【0054】
粘着層48上にチップ12a,12bを配置する際には、チップ12a,12bの電極14a,14bが粘着層48に接するように、チップ12a,12bを配置する。こうして、複数のマルチチップモジュール2の分のチップ12a,12bが、粘着層48上に配置される。
【0055】
次に、図6(a)に示すように、チップ12a,12bが配された粘着層48上の全面に、樹脂層10を形成する。樹脂層10は、金型等により成形される。樹脂層10の材料としては、例えば熱可塑性の樹脂を用いる。より具体的には、樹脂層10の材料としてフィラーが混入されたエポキシ系樹脂を用いる。樹脂層10の材料として熱可塑性の樹脂を用いる場合には、チップ12a,12bが配された粘着層48上に、加熱により可塑化された樹脂を供給する。そして、樹脂を冷却することにより、樹脂層10を硬化する。樹脂層10の厚さは、チップ12a,12bの厚さに対して、例えば50μm以上厚く設定する。こうして、チップ12a,12bが樹脂層10により埋め込まれる。
【0056】
次に、図6(b)に示すように、支持基板46及び粘着層48を、樹脂層10及びチップ12a,12bから剥離する。即ち、チップ12a,12bが埋め込まれた樹脂層10から、支持基板46及び粘着層48を除去する。粘着層48として熱剥離が可能な接着剤(接着テープ)を用いた場合には、支持基板46及び粘着層48を樹脂層10及びチップ12a,12bから剥離する際に、熱処理を行うことにより粘着層48の粘着力を低下させる。構造体50の一方の面(粘着層48と接していた面)には、チップ12a,12bの電極14a,14bが露出した状態となる。こうして、チップ12a,12bが樹脂層10中に埋め込まれた構造体(擬似ウェハ、樹脂基板)50が得られる。
【0057】
なお、このような技術は、擬似SOC(System On Chip)技術と称される。
【0058】
次に、構造体50の上下を反転させる(図7及び図8参照)。
【0059】
次に、構造体50の一方の面(チップ12a,12bの電極14a,14bが露出している面)上の全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜52を形成する。
【0060】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜52に開口部54を形成する。開口部54は、チップ12a,12bに凹部16を形成するためのものである。開口部54の開口寸法は、例えば50μm径〜100μm径程度とする(図9参照)。
【0061】
次に、フォトレジスト膜52をマスクとし、例えばドライエッチングにより、チップ12a,12bをエッチングする。エッチングガスとしては、例えばOガス、CFガス等を用いる。これにより、凹部16がチップ12a,12bに形成される。凹部16の深さは、例えば50μm〜100μm程度とする。
【0062】
この後、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜52を剥離する(図10参照)。
【0063】
次に、構造体50の一方の面(チップ12a,12bの電極14a,14b及び凹部16が露出している面)上の全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚50nm〜300nm程度のシード層56を形成する。固定部材18の材料として、例えばCuを用いる場合には、シード層56の材料として、Cuを用いる(図11参照)。
【0064】
次に、構造体50の一方の面(図12における紙面上側の面)上の全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜58を形成する。
【0065】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜58に開口部60を形成する。開口部60は、固定部材18を形成するためのものである(図12参照)。
【0066】
次に、例えば電気めっき法により、固定部材18を形成する(図13参照)。
【0067】
固定部材18の熱膨張率は、樹脂層10の熱膨張率に対して十分に低いことが好ましい。また、固定部材18の熱膨張率は、配線26の熱膨張率以下であることが好ましい。固定部材18は、樹脂層10が熱膨張した場合であっても、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくためのものだからである。配線26の材料として例えばCuを用いる場合には、固定部材18の材料として、例えば、Cu、Cr、W、又は、SiO等を用いることができる。ここでは、固定部材18の材料として、Cuを用いる。
【0068】
固定部材18は、機械的強度が比較的高いことが好ましい。固定部材18は、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定するためのものだからである。固定部材18の断面積を大きめに設定すれば、固定部材18の機械的強度を比較的高く設定することが可能である。このため、固定部材18の断面積は、配線26の断面積の例えば5倍以上に設定することが好ましい。より好ましくは、固定部材18の断面積を、配線26の断面積の例えば100倍以上に設定する。ここでは、固定部材18の断面積を、例えば500μm程度とする。
【0069】
次に、固定部材18の周囲に露出している部分のシード層56を、例えばウェットエッチングにより除去する。エッチング液としては、例えば硫酸系のエッチング液を用いる。
【0070】
こうして、互いに隣接するチップ12a,12bに係合し、互いに隣接するチップ12a,12bを固定する固定部材18が形成される(図14及び図15参照)。
【0071】
次に、構造体50の一方の面(図17における紙面上側の面)上の全面に、例えばスピンコート法により、例えば感光性の樹脂の絶縁膜20を形成する(図17参照)。絶縁膜20の材料としては、例えばポリイミド系樹脂又はフェノール系樹脂等を用いる。
【0072】
次に、絶縁膜20に対してプリベークを行う。プリベークの温度は、例えば100℃〜120℃程度とする。プリベークの時間は、例えば1分〜2分程度とする。
【0073】
次に、開口部22のパターンを絶縁膜20に露光する。開口部22は、後述するビア(導体プラグ)24を埋め込むためのものである。
【0074】
次に、絶縁膜20に対して、現像を行う。現像液としては、例えばTMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide、水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液を用いる。
【0075】
次に、絶縁膜20に対して、キュアを行う。キュアの温度は、例えば200℃〜250℃程度とする。キュアの時間は、例えば1時間〜2時間程度とする。
【0076】
こうして、電極14a,14bに達する開口部22が形成された絶縁膜20が得られる(図18参照)。絶縁膜20の厚さは、例えば10μm〜100μm程度となる。
【0077】
次に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10nm〜50nm程度の密着層(図示せず)を形成する。密着層の材料としては、例えばチタン(Ti)を用いる。
【0078】
次に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚50nm〜300nm程度のシード層(図示せず)を形成する。シード層の材料としては、例えばCuを用いる。
【0079】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0080】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜に開口部(図示せず)を形成する。かかる開口部は、ビア24及び配線26を形成するためのものである。
【0081】
次に、例えば電気めっき法により、例えばビア24及び配線26を形成する。ビア24及び配線26の材料としては、例えばCuを用いる。ビア26及び配線28は、一体的に形成される。
【0082】
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜を剥離する。
【0083】
次に、配線26の周囲に露出している部分のシード層及び密着層を、例えばウェットエッチング又はドライエッチングにより除去する。
【0084】
こうして、チップ12a,12bの電極14a,14bにビア24を介して電気的に接続された配線(再配線層)26が形成される(図19及び図20参照)。
【0085】
次に、構造体20の一方の面(図21における紙面上側の面)上の全面に、例えばスピンコート法により、例えば感光性の樹脂の絶縁膜28を形成する。絶縁膜28の材料としては、例えば、感光性のポリイミド系樹脂、又は、感光性のフェノール系樹脂を用いる。かかる感光性フェノール系樹脂としては、例えば、JSR株式会社製の感光性のフェノール系樹脂(型番:WPR5100)等が挙げられる。
【0086】
次に、絶縁膜28に対してプリベークを行う。プリベークの温度は、例えば100℃〜120℃程度とする。プリベークの時間は、例えば1分〜2分程度とする。
【0087】
絶縁膜28をプリベークする際には、各々の構成要素が熱膨張率に応じて膨張する。本実施形態によれば、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18が形成されているため、樹脂層10が熱膨張した場合であっても、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくことができる。このため、本実施形態によれば、配線26に加わるストレスを緩和することができ、ひいては、絶縁膜28をプリベークする際に配線26の断線が生じるのを防止することができる。
【0088】
次に、開口部30のパターンを絶縁膜28に露光する。開口部30は、後述するビア(導体プラグ)32を埋め込むためのものである。
【0089】
次に、絶縁膜28に対して、現像を行う。現像液としては、例えばTMAH水溶液を用いる。
【0090】
次に、絶縁膜28に対して、キュアを行う。キュアの温度は、例えば200℃〜250℃程度とする。キュアの時間は、例えば1時間〜2時間程度とする。
【0091】
絶縁膜28をキュアする際には、各々の構成要素が熱膨張率に応じて膨張する。本実施形態では、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18が形成されているため、樹脂層10が熱膨張した場合であっても、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくことができる。このため、本実施形態によれば、配線26に加わるストレスを緩和することができ、ひいては、絶縁膜28をキュアする際に配線26の断線が生じるのを防止することができる。
【0092】
こうして、配線26に達する開口部30が形成された絶縁膜28が得られる(図21参照)。絶縁膜28の厚さは、例えば5μm〜50μm程度となる。
【0093】
次に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10nm〜50nm程度の密着層(図示せず)を形成する。密着層の材料としては、例えばTiを用いる。
【0094】
次に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚50nm〜300nm程度のシード層(図示せず)を形成する。シード層の材料としては、例えばCuを用いる。
【0095】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0096】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜に開口部(図示せず)を形成する。かかる開口部は、ビア32及び電極パッド34を形成するためのものである。
【0097】
次に、例えば電気めっき法により、例えばビア32及び電極パッド34を形成する。ビア32及び電極パッド34は、一体的に形成される。
【0098】
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜を剥離する。
【0099】
次に、電極パッド34の周囲に露出している部分のシード層及び密着層を、例えばウェットエッチング又はドライエッチングにより除去する。
【0100】
こうして、ビア32を介して配線26にそれぞれ電気的に接続された電極パッド34が形成される(図22参照)。
【0101】
次に、構造体50の一方の面(図23における紙面上側の面)上の全面に、例えばスピンコート法により、例えば感光性の樹脂の絶縁膜36を形成する。絶縁膜36の材料としては、例えば、感光性のポリイミド系樹脂、又は、感光性のフェノール系樹脂等を用いる。かかる感光性フェノール系樹脂としては、例えばJSR株式会社製の感光性のフェノール系樹脂(型番:WPR5100)等が挙げられる。
【0102】
次に、絶縁膜36に対してプリベークを行う。プリベークの温度は、例えば100℃〜120℃程度とする。プリベークの時間は、例えば1分〜2分程度とする。
【0103】
絶縁膜36をプリベークする際には、各々の構成要素が熱膨張率に応じて膨張する。本実施形態では、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18が形成されているため、樹脂層10が熱膨張した場合であっても、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくことができる。このため、本実施形態によれば、配線26に加わるストレスを緩和することができ、ひいては、絶縁膜36をプリベークする際に配線26の断線が生じるのを防止することができる。
【0104】
次に、開口部38のパターンを絶縁膜36に露光する。開口部38は、後述する半田バンプ40を形成するためのものである。開口部38の開口寸法は、例えば50μm径〜500μm径程度とする。
【0105】
次に、絶縁膜36に対して、現像を行う。現像液としては、例えばTMAH水溶液を用いる。
【0106】
次に、絶縁膜36に対して、キュアを行う。キュアの温度は、例えば200℃〜250℃程度とする。キュアの時間は、例えば1時間〜2時間程度とする。
【0107】
絶縁膜36をキュアする際には、各々の構成要素が熱膨張率に応じて膨張する。本実施形態では、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18が形成されているため、樹脂層10が熱膨張した場合であっても、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくことができる。このため、本実施形態によれば、配線26に加わるストレスを緩和することができ、ひいては、絶縁膜36をキュアする際に配線26の断線が生じるのを防止することができる。
【0108】
こうして、電極パッド34に達する開口部38が形成された絶縁膜36が得られる(図23参照)。絶縁膜36の膜厚は、例えば10μm〜100μm程度とする。
【0109】
次に、開口部38内に露出する電極パッド34上に、半田バンプ(半田ボール)40を形成する。半田バンプ40は、電極パッド34及び配線26等を介してチップ12a,12bの電極14a,14bにそれぞれ電気的に接続される。
【0110】
こうして、複数のマルチチップモジュール2が一括して形成される(図24及び図25参照)。
【0111】
次に、例えばダイシングを行うことにより、複数のマルチチップモジュール2を個片化する(図26参照)。図26における一点鎖線は、デバイス領域68を区画するダイシングライン66を示している。ダイシングを行う際、ダイシングライン66によって区画されるデバイス領域68内において互いに隣接しているチップ12a,12b同士を固定する固定部材18は、切断されない。一方、ダイシングライン66を挟んで互いに隣接しているチップ12a,12b同士を固定している固定部材18は、ダイシングライン66において切断される。ダイシングライン66に沿って樹脂層10と一緒に固定部材18が切断されるため、切断された固定部材18の切断面と樹脂層10の切断面とは揃った状態となる。
【0112】
こうして、個片化された本実施形態による電子装置(マルチチップモジュール)2が得られる(図27及び図28参照)。
【0113】
次に、回路基板42上に、マルチチップモジュール2を配置する(図29参照)。回路基板42としては、例えば樹脂基板やセラミックス基板等が用いられている。回路基板42の表面には、マルチチップモジュール2のバンプ40と接続するための電極44が形成されている。電極44の材料としては、例えばCu又はAl等を用いる。電極44は、回路基板42に形成された配線(図示せず)等に接続されている。マルチチップモジュール2を回路基板42上に配置する際には、マルチチップモジュール2のバンプ40と回路基板42の電極44とが互いに接するように、マルチチップモジュール2を回路基板42上に配置する。
【0114】
こうして、回路基板42上にマルチチップモジュール2が配置される。
【0115】
次に、熱処理(リフロー)を行うことにより、マルチチップモジュール2側の電極パッド34と回路基板42側の電極44とを半田バンプ40により接合する(図30参照)。熱処理温度は、例えば250℃〜350℃程度とする。熱処理時間は、例えば1分〜5分程度とする。
【0116】
熱処理を行う際には、各々の構成要素が熱膨張率に応じて膨張する。本実施形態では、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18が形成されているため、樹脂層10が熱膨張した場合であっても、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくことができる。このため、本実施形態によれば、配線26に加わるストレスを緩和することができ、ひいては、半田接合のための熱処理の際に配線26の断線が生じるのを防止することができる。
【0117】
このように、本実施形態によれば、互いに隣接するチップ12a,12bに係合し、樹脂層10より熱膨張率が小さく、互いに隣接するチップ12a,12bを固定する固定部材18を形成する。本実施形態によれば、かかる固定部材18を形成するため、樹脂層10が熱膨張した場合であっても、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくことができ、ひいては、配線26に加わるストレスを緩和することができる。このため、本実施形態によれば、配線26の断線を防止することができ、信頼性の高い電子装置を提供することができる。
【0118】
(変形例)
次に、本実施形態による電子装置の製造方法の変形例について図31乃至図34を用いて説明する。図31乃至図34は、本変形例による電子装置の製造方法を示す工程図である。
【0119】
まず、支持基板46上に粘着層48を形成する工程から凹部16を形成する工程までは、図4乃至図10を用いて上述した第1実施形態による電子装置の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0120】
次に、構造体50の一方の面(図31における紙面上側の面)上の全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜62を形成する。
【0121】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜62に開口部64を形成する(図31参照)。かかる開口部64は、固定部材18を形成するためのものである。
【0122】
次に、構造体50の一方の面(図32における紙面上側の面)上の全面に、例えばスパッタリング法により、固定部材の材料となる膜18を形成する(図32参照)。膜18の材料としては、例えば、Cr、W、又は、SiO等を用いることができる。
【0123】
次に、溶剤等を用いてフォトレジスト膜62を溶解することにより、フォトレジスト膜62上に存在する膜18をフォトレジスト膜62とともに除去する(リフトオフ)。
【0124】
こうして、互いに隣接するチップ12a,12bに係合し、互いに隣接するチップ12a,12bを固定する固定部材18が形成される(図33参照)。
【0125】
この後の電子装置の製造方法は、図17乃至図30を用いて上述した第1実施形態による電子装置の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0126】
こうして、本変形例による電子装置が製造される(図34参照)。
【0127】
このように、開口部64が形成されたフォトレジスト膜62上の全面に固定部材の材料の膜18を形成し、この後、リフトオフによりフォトレジスト膜62上の膜18をフォトレジスト膜62とともに除去することにより、固定部材18を形成してもよい。
【0128】
[第2実施形態]
第2実施形態による電子装置及びその製造方法について図35乃至図40を用いて説明する。図1乃至図34に示す第1実施形態による電子装置及びその製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0129】
(電子装置)
まず、本実施形態による電子装置について図35を用いて説明する。図35は、本実施形態による電子装置を示す断面図である。
【0130】
本実施形態による電子装置は、互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18aが係合している凹部16aの深さが、比較的深く設定されているものである。
【0131】
図35に示すように、ダイシングライン66(図26参照)により画定されるデバイス領域68(図26参照)内において互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18aが係合する凹部16aの深さは、比較的深く設定されている。固定部材18aが係合する凹部16aの深さを比較的深く設定しているのは、固定部材18aをチップ12a,12bに確実に固定するためである。凹部16aの深さは、例えば50μm〜60μm程度とする。
【0132】
固定部材18aは、デバイス領域68内において互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定しておくためのものである。このため、固定部材18aは、チップ12a,12bに確実に固定することが好ましい。このため、本実施形態では、十分な固定強度を確保すべく、凹部16aの深さを比較的深く設定している。
【0133】
一方、ダイシングライン66に沿って切断された固定部材18bは、個片化された後においては、デバイス領域68内において互いに隣接しているチップ12a,12b同士を固定するのには寄与しない。但し、個片化される前の段階においては、固定部材18bは、樹脂層10が全体として変形するのを防止するのに寄与する。固定部材18bは、固定部材18aと比較して重要度が低いため、必ずしも固定部材18aのように十分な固定強度でチップ12a,12bに固定されていなくてもよい。従って、凹部16bの深さは、凹部16aの深さより浅く設定されている。凹部16bの深さは、例えば100μm〜120μm程度とする。
【0134】
このように、本実施形態では、固定部材18a,18bの固定強度に重み付けが為されている。
【0135】
こうして、本実施形態による電子装置が形成されている。
【0136】
このように、デバイス領域68内において互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18aが係合している凹部16aの深さを、比較的深く設定するようにしてもよい。本実施形態によれば、より信頼性の高い電子装置を提供することができる。
【0137】
(電子装置の製造方法)
次に、本実施形態による電子装置の製造方法について図36乃至図40を用いて説明する。図36乃至図40は、本実施形態による電子装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0138】
まず、支持基板46上に粘着層48を形成する工程から構造体50の上下を反転させる工程までは、図4乃至図8を用いて上述した第1実施形態による電子装置の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0139】
次に、構造体50の一方の面(チップ12a,12bの電極14a,14bが露出している面)上の全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜70を形成する。
【0140】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜70に開口部72を形成する。開口部72は、チップ12a,12bに凹部16aを形成するためのものである。開口部72の開口寸法は、例えば50μm〜100μm程度とする(図36参照)。
【0141】
次に、フォトレジスト膜70をマスクとし、例えばドライエッチングにより、チップ12a,12bをエッチングする。エッチングガスとしては、例えばOガス、CFガス等を用いる。これにより、凹部16aがチップ12a,12bに形成される。凹部16aの深さは、例えば50μm〜60μm程度とする。
【0142】
この後、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜70を剥離する(図37参照)。
【0143】
次に、構造体50の一方の面(チップ12a,12bの電極14a,14b及び凹部16aが露出している面)上の全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜74を形成する。
【0144】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜74に開口部76を形成する。開口部76は、チップ12a,12bに凹部16bを形成するためのものである。開口部76の開口寸法は、例えば50μm径〜100μm径程度とする(図38参照)。
【0145】
次に、フォトレジスト膜74をマスクとし、例えばドライエッチングにより、チップ12a,12bをエッチングする。エッチングガスとしては、例えばOガス、CFガス等を用いる。これにより、凹部16bがチップ12a,12bに形成される。凹部16bの深さは、例えば100μm〜120μm程度とする。
【0146】
この後、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜74を剥離する(図39参照)。
【0147】
この後の電子装置の製造方法は、図11乃至図30を用いて上述した第1実施形態による電子装置の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0148】
こうして、本変形例による電子装置が製造される(図40参照)。
【0149】
このように、デバイス領域68内において互いに隣接するチップ12a,12b同士を固定する固定部材18aが係合する凹部16aの深さを、比較的深く設定するようにしてもよい。本実施形態によれば、より信頼性の高い電子装置を製造することができる。
【0150】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0151】
例えば、上記実施形態では、チップ12a,12bに形成された凹部16、16a、16bに固定部材18a,18bを係合させる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、チップ12a,12bに凸部を形成し、かかる凸部に係合する固定部材を形成してもよい。
【0152】
また、上記実施形態では、ダイシングライン66を挟んで互いに隣接するチップ12a,12b同士をも固定部材18,18bにより固定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。ダイシングライン66を挟んで互いに隣接するチップ12a,12b同士は、固定部材18,18bにより固定しなくてもよい。但し、樹脂層10が全体として変形するのを防止し、ひいては、製造歩留り及び信頼性をより向上させる観点からは、ダイシングライン66を挟んで互いに隣接するチップ12a,12b同士をも固定部材18,18bにより固定することが好ましい。
【0153】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0154】
(付記1)
複数のチップと、
前記複数のチップを埋め込む樹脂層と、
互いに隣接する前記チップ同士を電気的に接続する配線と、
前記配線により電気的に接続された前記チップに係合し、前記樹脂層より熱膨張率が低く、前記配線により電気的に接続された前記チップ同士を固定する固定部材と
を有することを特徴とする電子装置。
【0155】
(付記2)
付記1記載の電子装置において、
前記固定部材の熱膨張率は、前記配線の熱膨張率以下である
ことを特徴とする電子装置。
【0156】
(付記3)
付記2記載の電子装置において、
前記配線の材料は、Cuであり、
前記固定部材の材料は、Cu、Cr、W、又は、SiOである
ことを特徴とする電子装置。
【0157】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載の電子装置において、
前記チップには、凹部が形成されており、
前記固定部材は、前記チップの前記凹部に係合している
ことを特徴とする電子装置。
【0158】
(付記5)
付記4記載の電子装置において、
前記配線により電気的に接続された前記チップの一方に係合し、ダイシングラインにおいて切断された他の固定部材を更に有し、
前記固定部材が係合している前記凹部の深さは、前記他の固定部材が係合している前記凹部の深さより深い
ことを特徴とする電子装置。
【0159】
(付記6)
付記1乃至5のいずれかに記載の電子装置において、
前記固定部材は、前記チップ内に形成されているいずれの電気的素子にも電気的に接続されていない
ことを特徴とする電子装置。
【0160】
(付記7)
付記1乃至6のいずれかに記載の電子装置において、
前記チップの一方の面は、前記樹脂層の一方の面側に露出しており、
前記固定部材は、前記樹脂層の前記一方の面側において前記チップと係合している
ことを特徴とする電子装置。
【0161】
(付記8)
付記1乃至7のいずれかに記載の電子装置において、
前記固定部材の断面積は、前記配線の断面積の5倍以上である
ことを特徴とする電子装置。
【0162】
(付記9)
複数のチップを樹脂層により埋め込む工程と、
互いに隣接する前記チップに係合し、前記樹脂層より熱膨張率が低く、互いに隣接する前記チップ同士を固定する固定部材を形成する工程と、
互いに隣接する前記チップ同士を電気的に接続する配線を形成する工程と
を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0163】
(付記10)
請求項9記載の電子装置の製造方法において、
前記固定部材の熱膨張率は、前記配線の熱膨張率以下である
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【0164】
(付記11)
付記10記載の電子装置の製造方法において、
前記配線の材料は、Cuであり、
前記固定部材の材料は、Cu、Cr、W、又は、SiOである
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【0165】
(付記12)
付記9乃至11のいずれかに記載の電子装置の製造方法において、
前記複数のチップを前記樹脂層により埋め込む工程の後、前記固定部材を形成する工程の前に、前記複数のチップのそれぞれに凹部を形成する工程を更に有し、
前記固定部材を形成する工程では、前記凹部に係合する前記固定部材を形成する
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【0166】
(付記13)
付記12記載の電子装置の製造方法において、
前記凹部を形成する工程では、ダイシングラインによって区画される各々のデバイス領域内において互いに隣接する前記チップ同士を固定する前記固定部材が係合する前記凹部を、前記ダイシングラインを挟んで互いに隣接する前記チップ同士を固定する他の固定部材が係合する他の凹部より深く形成する
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【0167】
(付記14)
付記9乃至13のいずれかに記載の電子装置の製造方法において、
前記固定部材は、前記チップ内に形成されているいずれの電気的素子にも電気的に接続されていない
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【0168】
(付記15)
付記9乃至14のいずれかに記載の電子装置の製造方法において、
前記複数のチップを前記樹脂層により埋め込む工程では、前記複数のチップのそれぞれの一方の面が前記樹脂層の一方の面側に露出するように、前記複数のチップを前記樹脂層により埋め込み、
前記固定部材を形成する工程では、前記樹脂層の前記一方の面側において前記チップと係合する前記固定部材を形成する
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【0169】
(付記16)
付記15記載の電子装置の製造方法において、
前記複数のチップを前記樹脂層により埋め込む工程の前に、支持基板上に形成された粘着層上に前記複数のチップを配する工程を更に有し、
前記複数のチップを前記樹脂層により埋め込む工程の後、前記固定部材を形成する工程の前に、前記複数のチップを埋め込む前記樹脂層から前記粘着層及び前記支持基板を除去する工程を更に有する
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【0170】
(付記17)
付記9乃至16のいずれかに記載の電子装置の製造方法において、
前記固定部材の断面積は、前記配線の断面積の5倍以上である
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【符号の説明】
【0171】
2…マルチチップモジュール
10…樹脂層
12a、12b…チップ
14a、14b…電極
16、16a、16b…凹部
18、…固定部材、膜
18a、18b…固定部材
20…絶縁膜
22…開口部
24…ビア
26…配線
28…絶縁膜
30…開口部
32…ビア
34…電極パッド
36…絶縁膜
38…開口部
40…半田バンプ
42…回路基板
44…電極
46…支持基板
48…粘着層
50…構造体
52…フォトレジスト膜
54…開口部
56…シード層
58…フォトレジスト膜
60…開口部
62…フォトレジスト膜
64…開口部
66…ダイシングライン
68…デバイス領域
70…フォトレジスト膜
72…開口部
74…フォトレジスト膜
76…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップと、
前記複数のチップを埋め込む樹脂層と、
互いに隣接する前記チップ同士を電気的に接続する配線と、
前記配線により電気的に接続された前記チップに係合し、前記樹脂層より熱膨張率が低く、前記配線により電気的に接続された前記チップ同士を固定する固定部材と
を有することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子装置において、
前記固定部材の熱膨張率は、前記配線の熱膨張率以下である
ことを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電子装置において、
前記チップには、凹部が形成されており、
前記固定部材は、前記チップの前記凹部に係合している
ことを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子装置において、
前記固定部材は、前記チップ内に形成されているいずれの電気的素子にも電気的に接続されていない
ことを特徴とする電子装置。
【請求項5】
複数のチップを樹脂層により埋め込む工程と、
互いに隣接する前記チップに係合し、前記樹脂層より熱膨張率が低く、互いに隣接する前記チップ同士を固定する固定部材を形成する工程と、
互いに隣接する前記チップ同士を電気的に接続する配線を形成する工程と
を有することを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2013−38306(P2013−38306A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174747(P2011−174747)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】