説明

電子装置

【課題】電子部品とアンテナが実装されてなる電子装置を小型化する。
【解決手段】基板と、前記基板に実装された電子部品と、前記基板に実装されたアンテナと、誘電率調整材料が添加された、前記電子部品および前記アンテナを封止する樹脂材料と、を有することを特徴とする電子装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品とアンテナが実装されてなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、能動素子や受動素子などの電子部品が実装されてなる電子装置には様々なタイプのものがあるが、近年、例えば、高周波(RF)通信部やMCU(マイコン)部、水晶振動子などを含む無線通信モジュールを有する電子装置が様々な場面で多用されるようになってきている。
【0003】
図1は、無線通信モジュールを有する電子装置の概略を示した図である。図1を参照するに、本図に示す電子装置は、配線基板1に無線通信モジュールを構成する複数の電子部品2,3が実装されてなる構造を有している。
【0004】
また、上記の電子装置は、アンテナを用いて無線通信を行うため、配線基板1上にパターニングされた導電層よりなるアンテナ4が形成されている。
【0005】
また、図2に示す電子装置では、図1示したアンテナ4に換わって、チップアンテナ5が実装されている。また、配線基板1上には、チップアンテナ5ともに用いられるアンテナマッチング用部品6がチップアンテナ5の近傍に実装されている。
【特許文献1】特開2004−159287号公報
【特許文献2】特開2005−191827号公報
【特許文献3】特開平10−93332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の電子装置においては、アンテナのために占有される実装基板の面積が大きく、電子装置を小型化する上で問題になる場合があった。
【0007】
例えば、図1に示した電子装置の場合、所定の性能を有するようにアンテナ4のパターニングを行うためには、配線基板1上で占める面積が大きくなってしまい、電子装置の小型化が困難になってしまう。
【0008】
また、図2に示した電子装置の場合、チップアンテナ5は、アンテナ4(アンテナパターン)よりも小さいものの、アンテナマッチング用部品6とともに用いられる必要がある。このために、チップアンテナとアンテナマッチング用部品の双方で考えると、配線基板上で占める面積が大きくなってしまう問題がある。
【0009】
そこで、本発明では、上記の問題を解決した、新規で有用な電子装置を提供することを統括的課題としている。
【0010】
本発明の具体的な課題は、電子部品とアンテナが実装されてなる電子装置を小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を、基板と、前記基板に実装された電子部品と、前記基板に実装されたアンテナと、誘電率調整材料が添加された、前記電子部品および前記アンテナを封止する樹脂材料と、を有することを特徴とする電子装置により、解決する。
【0012】
本発明によれば、電子部品とアンテナが実装されてなる電子装置を小型化することが可能となる。
【0013】
また、前記誘電率調整材料は、SiCまたはSiNよりなるように構成してもよい。
【0014】
また、前記誘電率調整材料は、金属化合物よりなるように構成してもよい。
【0015】
また、前記金属化合物を構成する金属は、Al,Ti,TaおよびZrのいずれかを含むようにしてもよい。
【0016】
また、前記金属化合物は、AlまたはAlNを含むようにしてもよい。
【0017】
また、前記樹脂材料の、前記電子部品近傍よりも前記アンテナ近傍で誘電率が高くなるように前記誘電率調整材料が添加されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子部品とアンテナが実装されてなる電子装置を小型化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による電子装置は、基板と、前記基板に実装された電子部品と、前記基板に実装されたアンテナと、誘電率調整材料が添加された、前記電子部品および前記アンテナを封止する樹脂材料と、を有することを特徴としている。
【0020】
例えば、上記の樹脂材料に、誘電率調整材料として、誘電率の高い金属化合物(金属酸化物または金属窒化物)の粉末を添加することで、樹脂材料の誘電率を高くすることが可能になる。また、誘電率調整材料としてはSiCまたはSiNを用いてもよい。上記の構成としたことにより、誘電率が高い樹脂材料に囲まれた上記のアンテナを小型化することが可能とり、さらに、電子部品とアンテナが実装されてなる電子装置を小型化することが可能となる。
【0021】
次に、上記の電子装置の構造の具体的な例について図面に基づき、説明する。
【実施例1】
【0022】
図3は、本発明の実施例1による電子装置10を模式的に示した図である。図3を参照するに、本実施による電子装置10の概略は、配線基板11上に、電子部品12乃至15と、アンテナ16とが実装され、さらに、電子部品12乃至15と、アンテナ16とが樹脂材料17で封止された構造を有している。
【0023】
例えば、上記の電子部品12は能動素子、電子部品13乃至15は受動素子よりなるが、電子部品の個数や能動素子と受動素子の割合はこれに限定されるものではなく、様々に変更(増減)して配置してもよい。
【0024】
例えば、配線基板11上の電子部品が無線通信モジュールを構成する場合、高周波(RF)通信素子やMCU(マイコン)に相当する電子部品12、水晶振動子、キャパシタなどの電子部品13乃至15子が配線基板11上に実装される。
【0025】
本実施例による電子装置では、上記の樹脂材料17に、樹脂材料17の誘電率を調整する誘電率調整材料が添加されていることが特徴である。例えば、誘電率調整材料として、従来のエポキシ系の樹脂材料(誘電率4程度)よりも誘電率が高い材料を用いることで、上記の樹脂材料17の誘電率を高くすることができる。
【0026】
その結果、アンテナ16は周囲を高誘電率材料(誘電率8〜20程度)で囲まれるため、従来と同様の特性を得るためのアンテナ16の大きさが小さくてすむことになる。この結果、電子装置10を小型化することが可能となる。
【0027】
また、上記の誘電率調整材料は、例えば、金属化合物を用いると容易に樹脂材料の誘電率を高くすることができる。上記の金属化合物を構成する金属としては、例えば、Al,Ti,TaおよびZrのいずれかを用いることが可能である。また、これらの金属もしくは金属化合物を混合して用いてもよい。
【0028】
例えば、上記の金属化合物の具体的な例としては、金属酸化物としては、Al、金属窒化物としてはAlNが一般的であり、入手が容易で低コストで作製が可能であるため、好ましい。特に、Alは、誘電率が高く、また、樹脂材料に添加するのに容易な粉末(粒子)状に形成することが容易であるため、誘電率調整材料として好適である。また、誘電率調整材料はこれらの材料に限定されず、例えば、Ti、Ta、Zr(x,y,m,n,p,qは整数)で示される材料を用いてもよい。
【0029】
また、誘電率調整材料としては、例えばSiCまたはSiNなどのシリコン化合物を用いてもよい。例えば、モールド樹脂(エポキシ系またはポリイミド系の樹脂)には、フィラーとしてシリカと呼ばれるSiOを主成分とする材料が添加されている場合がある。しかし、SiOは誘電率が4程度であるため、シリカよりも誘電率の高いSiCやSiNなどのシリコン化合物を誘電率調整材料として用いることで、樹脂材料の誘電率を高くすることができる。
【0030】
上記の誘電率調整材料を、例えば一般的なモールド樹脂に適量を添加することで、樹脂材料の誘電率を所望の値に調整する(高くする)ことが可能となる。
【0031】
また、誘電率調整材料の添加量が少なすぎると十分な誘電率上昇の効果が得られず、一方で添加量が多すぎると樹脂としての物性が失われて樹脂の硬化が困難となるため、上記の誘電率調整材料は、樹脂材料中に、70体積%乃至80体積%程度添加されることが好ましい。また、樹脂材料の誘電率は、低すぎると効果が小さく、高すぎると電波の放射効率が悪くなるため、6乃至20程度とされることが好ましい。
【0032】
図4は、上記の電子装置10に用いられるアンテナ16を示す斜視図である。アンテナ16は、例えばCuなどの板状の導電性材料を折り曲げて形成されており、いわゆる逆F型のアンテナの形状を有している。このような逆F型アンテナは、共振を用いたアンテナであるため、インピーダンスが所定の値となるような形状(大きさ)とされることが好ましく、従来は逆Fアンテナの設置スペースを確保することが困難であった。また、従来の通信装置では、アンテナと通信モジュールとは切り離されて別個に実装される方法がとられる場合もあった。
【0033】
そこで、本実施例では、このような逆F型アンテナを、通信モジュールが実装された基板に実装するとともに、該通信モジュールを構成する電子部品とともに樹脂材料で封止している。このため、電子部品とアンテナを一体的に実装し、かつ小型化することが可能となっている。
【0034】
また、上記のようにアンテナと素子を一体的に封止しているため、上記の電子装置10では、平面視した場合に、アンテナ16の一部と実装された電子部品が重なるように構成することも可能であり、電子装置を小型化する場合に有利である。
【0035】
図5は、図3の電子装置10のX−X'断面である。図5を参照するに、アンテナ16の少なくとも一部は、配線基板11上に実装された電子部品(例えば電子部品12)上にかかるように実装されており、平面視した場合に電子部品とアンテナ16の少なくとも一部が重なるように配置されている。
【0036】
このため、例えば、配線基板上に、実質的に同一平面上に電子部品とアンテナを実装する必要がある図1や図2で先に説明した従来の電子装置と比べて、本実施例による電子装置では、アンテナと電子部品をより狭小な空間に配置することが可能となっている。したがって、本実施例によれば、電子部品とアンテナの双方が実装されてなる電子装置を小型化することが可能となっている。
【0037】
また、本発明は上記の実施例に限定されず、実施例1を例えば以下の実施例2乃至4に示すように、様々に変形・変更してもよい。
【実施例2】
【0038】
図6は、本発明の実施例2による電子装置を示す図であり、実施例1の図5に相当する図である。ただし、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、特に説明しない部分は実施例1の電子装置と同じ構造としている。
【0039】
図6を参照するに、本発明による電子装置では、実施例1の樹脂材料17に相当する樹脂材料17Aが、誘電率の異なる樹脂材料17aと樹脂材料17bとより構成されていることが特徴である。
【0040】
すなわち、本実施例の場合、電子部品12乃至15(図3に図示)とアンテナ16を封止する樹脂材料17Aの、電子部品12乃至15近傍(樹脂材料17b)よりもアンテナ16近傍(樹脂材料17a)で誘電率が高くなるように誘電率調整材料が添加されている。
【0041】
このため、電子部品近傍では誘電率を低く(例えば4程度)して、電子部品や配線にかかる寄生容量を小さくし、通信モジュールの動作速度を維持しながら、一方では、アンテナの小型化を実現することが可能となっている。
【0042】
本実施例の場合、アンテナ16の周囲を覆うように、誘電率調整材料が添加された誘電率の高い樹脂材料17aが形成され、樹脂材料17aで覆われたアンテナ16が樹脂材料17bでさらに封止された構造(2重モールド構造)となっている。
【0043】
本実施例による電子装置を形成する場合には、まず、樹脂材料17aで覆われたアンテナ16を配線基板11に実装し、さらに誘電率の低い樹脂材料17bを用いて、樹脂材料17aによって覆われたアンテナ16を封止すればよい。また、樹脂材料17aで覆われたアンテナ16を形成する場合には、例えば静電吸着により、アンテナ16を樹脂材料17aで被覆すればよい。
【実施例3】
【0044】
また、図7は、本発明の実施例3による電子装置を示す図であり、実施例1の図5に相当する図である。ただし、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、特に説明しない部分は実施例1の電子装置と同じ構造としている。
【0045】
本図に示す場合、実施例2(図6)に示した場合と同様に、電子部品12乃至15(図3に図示)とアンテナ16を封止する樹脂材料17Bの、電子部品12乃至15近傍(樹脂材料17b)よりもアンテナ16近傍(樹脂材料17a)で誘電率が高くなるように誘電率調整材料が添加されている。このため、実施例2の場合と同様の効果を奏するが、本実施例の場合、樹脂材料17Bが、誘電率の異なる樹脂材料が積層された2層構造となっていることが特徴である。
【0046】
すなわち、下層(電子部品12乃至15および配線基板11の近傍)に誘電率が低い樹脂材料17b、上層(アンテナ16の周囲)に、誘電率調整材料が添加された誘電率の高い樹脂材料17aが形成されている。
【0047】
このため、実施例2の場合に比べて、部分的に誘電率が異なる樹脂材料を構成することが容易となっている。なお、上記の構造を形成する場合には、例えば、樹脂材料17b、樹脂材料17aの順に封止を行うようにすればよい。
【実施例4】
【0048】
図8は、本発明の実施例4による電子装置を示す図であり、実施例1の図5に相当する図である。ただし、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、特に説明しない部分は実施例1の電子装置と同じ構造としている。
【0049】
本実施例の場合、樹脂材料17Cが、樹脂材料17Bの場合と同様に、誘電率が低い樹脂材料17bと誘電率調整材料が添加された誘電率の高い樹脂材料17aの2層構造になっている。
【0050】
本実施例の場合には、実施例1のアンテナ16に相当するアンテナ16Aが、パターニングにより形成されていることが特徴である。例えば、本図に示す電子装置を製造する場合には、以下のようにすればよい。
【0051】
まず、配線基板11に電子部品12乃至15(図3に図示)を実装した後、誘電率が低い樹脂材料17bによってこれらの電子部品を封止する。
【0052】
次に、樹脂材料17b上に、誘電率調整材料が添加された誘電率の高い樹脂材料17aを積層する。ここで、樹脂材料17a,17bを貫通するビアホールを形成し、さらに当該ビアホールを例えばメッキ法などによって埋設し、ビアプラグ16Bを形成する。
【0053】
次に、樹脂材料17a上に、ビアプラグ16Bに接続されるアンテナ16Aをパターニングして形成する。アンテナ16Aは、例えば、マスクパターンを用いたスパッタリング、CVD、蒸着などにより形成することができる。また、樹脂材料17aを覆う導電膜を形成した後、当該導電膜をパターンエッチングすることで形成してもよい。次に、形成されたアンテナ16Aを覆うように、再び樹脂材料17aを形成する。
【0054】
このようにして、樹脂材料17aに覆われたアンテナ16Aを形成することができる。
【0055】
本実施例によれば、アンテナのパターン形状を微細加工することが容易であり、電子装置をさらに微細化、小型化することが可能となる。
【0056】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、電子部品とアンテナが実装されてなる電子装置を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来の電子装置を示す図(その1)である。
【図2】従来の電子装置を示す図(その2)である。
【図3】実施例1による電子装置を示す図である。
【図4】図3の電子装置に用いられるアンテナの斜視図である。
【図5】図3の電子装置の断面図である。
【図6】実施例2による電子装置の断面図である。
【図7】実施例3による電子装置の断面図である。
【図8】実施例4による電子装置の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 電子装置
11 配線基板
12,13,14,15 電子部品
16,16A アンテナ
16B ビアプラグ
17,17A,17B 樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に実装された電子部品と、
前記基板に実装されたアンテナと、
誘電率調整材料が添加された、前記電子部品および前記アンテナを封止する樹脂材料と、を有することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記誘電率調整材料は、SiCまたはSiNよりなることを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記誘電率調整材料は、金属化合物よりなることを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項4】
前記金属化合物を構成する金属は、Al,Ti,TaおよびZrのいずれかを含むことを特徴とする請求項3記載の電子装置。
【請求項5】
前記金属化合物は、AlまたはAlNを含むことを特徴とする請求項4記載の電子装置。
【請求項6】
前記樹脂材料の、前記電子部品近傍よりも前記アンテナ近傍で誘電率が高くなるように前記誘電率調整材料が添加されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−85639(P2008−85639A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263083(P2006−263083)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】