説明

電子装置

【課題】水平方向に対する情報の授受を良好に行なうことができる電子装置を提供する。
【解決手段】
アンテナ本体と、誘電体で形成された、壁および天井で前記アンテナ本体を覆う、その天井の構造でこのアンテナ装置における壁側の電波通信の指向性を強めるアンテナカバーとを備えたアンテナ装置;処理部;および、処理部の処理の対象である情報をアンテナ装置の電波通信で外部と授受する通信部;を備え、上記アンテナカバーは上記天井として、上記アンテナ本体側に凹凸が設けられた天井を有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波通信に利用されるアンテナ装置を搭載した電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台のコンピュータを互いにケーブルで接続することでいわゆるLAN(Local Area Network)を構築する技術が、オフィス等において普及している。ここで、このような有線でLANを構築する技術には、ケーブルの設置工事に時間やコストがかかることが多い上、場所によってはケーブルの設置が困難でLANの構築ができない等といった問題がある。また、近年では、持ち運びに便利なノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)が使われることが多いが、有線で構築されたLANにノートPCが組み込まれると、そのノートPCの持ち運びについての利便性が損なわれてしまう等といった問題もある。
【0003】
そこで、近年、複数台のコンピュータを無線通信によって互いに接続することで構築されるLAN、いわゆる無線LANの需要が高まっている。
【0004】
無線LANには、アクセスポイントと呼ばれる中継機器を介して通信が行なわれるタイプや、アクセスポイントを介さずにコンピュータ間で直接に通信が行なわれるタイプがあるが、いずれのタイプでも、各コンピュータに電波通信用のアンテナ装置を搭載する必要がある。ここで、このような無線LANにおける無線通信は、1つの部屋の中や互いに隣り合っている部屋どうしの間等といった、水平方向に広がる空間内で行なわれることが多い。このため、このような無線LANに利用される無線LAN用アンテナ装置は、水平方向の指向性が、鉛直方向の指向性に比べて強くなっていることが望ましい。
【0005】
従来、アンテナ装置について所望の指向性を得るための技術として、例えば、アンテナ装置を構成するアンテナの形状を所望の指向性に応じた形状に設計する技術や(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、アンテナと、そのアンテナの指向性を変える働きをする無給電端子とでアンテナ装置を構成し、その無給電端子を所望の指向性に応じた位置に配置する技術等が提案されている。また、アンテナ装置における所望の受信特性や送信特性を得るための技術として、例えば、アンテナを覆うカバーに対して、上方からの電波に対するそのカバー越しの受信特性を好ましい特性にするためにカバー形状に工夫を施すという技術や(例えば、特許文献2参照。)、あるいは、アンテナを覆うカバーに対して、電波のそのカバー越しの上方への送信特性を好ましい特性にするためにカバー形状に工夫を施すという技術(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−122022号公報
【特許文献2】特開2001−244716号公報
【特許文献3】特開2004−15408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記の特許文献2や特許文献3に示す技術では、アンテナを覆うカバーに、アンテナが送受信する電波の波長に対して十分な厚みや広さを持たせる必要がある。ところが、例えばノートPCに搭載される無線LAN用アンテナ装置等といった、携帯可能な機器に搭載されるアンテナ装置の多くは、設置のためのスペースが限られている。そのため、このようなアンテナ装置に特許文献2や特許文献3に示す技術を適用して、望ましい指向性を得ることができるほどの厚みや広さをアンテナを覆うカバーに持たせることには無理がある。
【0008】
また、特許文献1の技術を適用して、アンテナ装置を構成するアンテナの形状を、水平方向に強い指向性が得られるような形状に設計することは理論上では可能だが、アンテナの形状設計には、指向性以外にも、電波通信の効率等といった様々な要因が関わってくるためこれらの要因を全て考慮して最適な形状を設計するには熟練を要する。また、上記の無給電端子を用いる技術によれば、無給電端子の最適な配置を例えば試行錯誤等によって決めて望ましい指向性パターンを得ることができるが、上記の特許文献2や特許文献3に示す技術の場合と同様に、設置のためのスペースの観点から、携帯可能な機器に搭載されるアンテナ装置に適用するには無理がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、水平方向に対する強い指向性を、設置スペースの増加を抑えて容易に得ることができるアンテナ装置と、そのようなアンテナ装置を使って水平方向に対する情報の授受を良好に行なうことができる電子装置と、そのようなアンテナ装置に使われるアンテナカバーとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のアンテナ装置は、電子装置に搭載され、その電子装置と、その電子装置の外部との間の電波通信に利用されるアンテナ装置において、
アンテナ本体と、
誘電体で形成された、壁および天井で上記アンテナ本体を覆う、その天井の構造でこのアンテナ装置における上記壁側の電波通信の指向性を強めるアンテナカバーとを備えたことを特徴とする。
【0011】
従来、誘電体のカバーでアンテナを覆ったとき、そのカバーの厚みが電波の波長に対して十分に薄く、また、そのカバーの広さが電波の波長に対して十分に狭い場合には、カバーが電波の指向性に与える影響は殆ど無いものと考えられていた。ところが、本件発明者が本発明に関連して行なった後述の実験により、そのような薄く狭いカバーでアンテナを覆うと、カバーを通過する電波が拡散されることが見出され、さらに、そのような拡散効果が、カバーの構造に左右されることが見出されている。本発明は、このような実験結果を受けてなされたものであり、上記の本発明のアンテナ装置によれば、例えば上記天井に上記壁よりも電波に対する拡散効果が強くなる構造を持たせ、電波を上記壁側に多く拡散させることによって、その壁側の指向性を強めることができる。従って、この本発明のアンテナ装置を、例えば、水平方向に上記壁が向くように上記電子装置に搭載するといった容易な運用により、水平方向に強い指向性を得ることができる。また、本発明のアンテナ装置によれば、上記電子装置に搭載するに当たって、その電子装置の筐体の一部を上記アンテナカバーで置き換える等といった運用が可能であるため、搭載のための特別な追加スペースが不要である。つまり、本発明のアンテナ装置によれば、望ましい指向性を、設置スペースの増加を抑えて容易に得ることができる。
【0012】
ここで、本発明のアンテナ装置において、「上記アンテナカバーが、上記天井として、厚みが上記壁の厚みよりも厚い天井を有するものである」という形態は好ましい形態である。
【0013】
上記の実験では、アンテナを覆う誘電体のカバーによる電波の拡散効果が、カバーの厚みが厚いほど強く現れることが見出されている。上記の好ましい形態のアンテナ装置によれば、上記天井の厚みが上記壁よりも厚く電波がその壁側に多く拡散されることから、その壁側の指向性が強まることとなる。
【0014】
また、本発明のアンテナ装置において、「上記アンテナカバーが、上記天井として、複数の天井板が重なった天井を有するものである」という形態も好ましい。
【0015】
上記の実験では、アンテナを覆う誘電体のカバーによる電波の拡散効果が、複数枚のカバーを重ねると強く現れることも見出されている。上記の好ましい形態のアンテナ装置によれば、上記天井が複数の天井板が重なった構造を有し電波が上記壁側に多く拡散されることから、その壁側の指向性が強まることとなる。
【0016】
また、本発明のアンテナ装置において、「上記アンテナカバーが、上記天井として、上記アンテナ本体側に鋸歯状の凹凸が設けられた天井を有するものである」という形態も好ましい。
【0017】
この好ましい形態のアンテナ装置によれば、上記鋸歯状の凹凸が引き起こす電波の反射や屈折や回折等によって電波が上記壁側に多く拡散されることから、その壁側の指向性が強まることとなる。
【0018】
また、本発明のアンテナ装置において、「上記アンテナカバーが、上記天井として、上記アンテナ本体側に四角錐状の凹凸が設けられた天井を有するものである」という形態も好ましい。
【0019】
この好ましい形態のアンテナ装置によれば、上記四角錐状の凹凸が引き起こす電波の反射や屈折や回折等によって電波が上記壁側に多く拡散されることから、その壁側の指向性が強まることとなる。
【0020】
また、本発明のアンテナ装置は、「上記電子装置が、携帯可能なものである」という形態であっても良い。
【0021】
このような形態のアンテナ装置を無線LAN用アンテナ装置として利用することで、例えばノートPC等といった携帯可能な電子装置を無線LANに組み込むことができる。
【0022】
また、上記目的を達成する本発明の電子装置は、電波通信に利用されるアンテナ装置であって、
アンテナ本体と、
誘電体で形成された、壁および天井で上記アンテナ本体を覆う、その天井の構造でこのアンテナ装置における上記壁側の電波通信の指向性を強めるアンテナカバーとを備えたアンテナ装置;
情報処理を行なう処理部;および
上記処理部の情報処理の対象である情報を上記アンテナ装置の電波通信で外部と授受する通信部;
を備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明の電子装置によれば、例えば、水平方向に上記壁が向くように上記アンテナ装置を搭載するといった容易な運用により、水平方向に強い指向性を得ることができる。これにより、水平方向に対する情報の授受を良好に行なうことができる。
【0024】
また、本発明の電子装置において、「上記アンテナカバーが、上記天井として、厚みが上記壁の厚みよりも厚い天井を有するものである」という形態や、
「上記アンテナカバーが、上記天井として、複数の天井板が重なった天井を有するものである」という形態や、
「上記アンテナカバーが、上記天井として、上記アンテナ本体側に鋸歯状の凹凸が設けられた天井を有するものである」という形態や、
「上記アンテナカバーが、上記天井として、上記アンテナ本体側に四角錐状の凹凸が設けられた天井を有するものである」という形態という形態は好ましい形態である。
【0025】
また、本発明の本発明の電子装置は、「上記電子装置が、携帯可能なものである」という形態であっても良く、あるいは、
「上記電子装置が、被載置面を有する本体部とその本体部に対して開閉自在に連結された蓋部とで構成され、上記蓋部に上記アンテナ装置と上記アンテナカバーを内蔵している」という形態であっても良い。
【0026】
また、上記目的を達成する本発明のアンテナカバーは、電波通信に利用されるアンテナ装置を備えた電子装置に適用されるアンテナカバーであって、
誘電体で形成された二つの壁部と、
その両端に上記二つの壁部のそれぞれが連結された天井部とを備え、
上記二つの壁部と上記天井部で上記アンテナ装置のアンテナ本体を覆い、上記天井部の構造で上記アンテナ装置における上記壁部への電波指向性を強めるよう構成したことを特徴とする。
【0027】
本発明のアンテナカバーによれば、水平方向に対する強い指向性を、設置スペースの増加を抑えて容易に得ることができるアンテナ装置や、水平方向に対する情報の授受を良好に行なうことができる電子装置を容易に実現することができる。
【0028】
また、本発明のアンテナカバーにおいて、「上記天井部として、厚みが上記壁部の厚みよりも厚い天井を有するものである」という形態や、
「上記天井部として、複数の天井板が重なった天井を有するものである」という形態や、
「上記天井部として、上記アンテナ本体側に鋸歯状の凹凸が設けられた天井を有するものである」という形態や、
「上記アンテナカバーが、上記天井として、上記アンテナ本体側に四角錐状の凹凸が設けられた天井を有するものである」という形態は好ましい形態である。
【0029】
また、本発明のアンテナカバーは、「上記電子装置が、携帯可能なものである」という形態であっても良い。
【発明の効果】
【0030】
以上、説明したように、本発明によれば、水平方向に対する強い指向性を、設置スペースの増加を抑えて容易に得ることができるアンテナ装置と、そのようなアンテナ装置を使って水平方向に対する情報の授受を良好に行なうことができる電子装置と、そのようなアンテナ装置に使われるアンテナカバーとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のアンテナ装置の一実施形態が適用されたノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)の外観図である。
【図2】ノートPCのハードウェア構成図である。
【図3】無線LAN用アンテナ181の周辺部分Aの構造を示す図である。
【図4】カバー無しの状態の実験対象のアンテナを示す図である。
【図5】第1の試験用カバーで覆われた状態の実験対象のアンテナを示す図である。
【図6】第2の試験用カバーで覆われた状態の実験対象のアンテナを示す図である。
【図7】カバー無しの状態に対して、2400MHzから5100MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図8】カバー無しの状態に対して、5150MHzから5875MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図9】第1の試験用カバー503有りの状態に対して、2400MHzから5100MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図10】第1の試験用カバー503有りの状態に対して、5150MHzから5875MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図11】第2の試験用カバー504有りの状態に対して、2400MHzから5100MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図12】第2の試験用カバー504有りの状態に対して、5150MHzから5875MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図13】本発明にいうアンテナカバーの別例を示す図である。
【図14】アンテナカバーにおける鋸歯状の凹凸が電波を拡散させることに有効であることを実証するための実験に使用されたノートPCの外観図である。
【図15】図14に示すノートPC700に対して、2400MHzから2500MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図16】図14のノートPC700に対して、2600MHzから5250MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図17】図14のノートPC700に対して、5350MHzから5600MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図18】図14のノートPC700に対して、5725MHzから5840MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図19】図14のノートPC700に第3の試験用カバーを取り付けた状態を示す図である。
【図20】図19に示す状態のノートPC700に対して、2400MHzから2500MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図21】図19に示す状態のノートPC700に対して、2600MHzから5250MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図22】図19に示す状態のノートPC700に対して、5350MHzから5600MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図23】図19に示す状態のノートPC700に対して、5725MHzから5850MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図24】図14のノートPC700に第4の試験用カバーを取り付けた状態を示す図である。
【図25】図24に示す状態のノートPC700に対して、2400MHzから2500MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図26】図24に示す状態のノートPC700に対して、2600MHzから5250MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図27】図24に示す状態のノートPC700に対して、5350MHzから5600MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図28】図24に示す状態のノートPC700に対して、5725MHzから5850MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図29】図14のノートPC700に第5の試験用カバーを取り付けた状態を示す図である。
【図30】図29に示す状態のノートPC700に対して、2400MHzから2500MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図31】図29に示す状態のノートPC700に対して、2600MHzから5250MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図32】図29に示す状態のノートPC700に対して、5350MHzから5600MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図33】図29に示す状態のノートPC700に対して、5725MHzから5850MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【図34】四角錐状の凹凸の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態であるノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)の外観図であり、図2は、そのノートPCのハードウェア構成図である。
【0034】
ここで、このノートPC100は、本発明の電子装置の一実施形態に相当する。
【0035】
このノートPC100は、被載置面である底面を有する本体部200と、その本体部200に対し開閉自在で、このノートPC100の不使用時には閉じられ使用時には開かれる蓋部300とからなる。
【0036】
図1には、このノートPC100の使用時の状態が示されている。
【0037】
本体部200には、キーボード201、ポインティングデバイス202、内部にスピーカが配備された発音部203、フレキシブルディスク(FD)が装填されるFD装填口204、およびCD−ROMが装填されるCD−ROM装填口205等が配備されている。
【0038】
また、蓋部300の、閉じた状態における内側の面には、液晶表示画面301が備えられている。さらに、その蓋部300の、開いた状態における上部左側の端部には、このノートPC100を無線LANに組み込むための無線LAN用アンテナ181が内蔵されている。
【0039】
また、図2に示すように、このノートPC100には、各種プログラムを実行するCPU111、CPU111で実行されるプログラムが展開されるRAM112、内蔵されたハードディスク140をアクセスするハードディスクドライブ113、図1に示すFD装填口204から装填されたFD150をアクセスするFDドライブ114、
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図1に示すCD−ROM装填口205から装填されたCD−ROM160をアクセスするCD−ROMドライブ115、図1にも示すポインティングデバイス202の操作情報をCPU111に伝えるポインティングデバイスコントローラ116、キーボード201の操作情報をCPU111に伝えるキーボードコントローラ117、CPU111の指示に応じて液晶表示画面301上への表示画面を制御するディスプレイコントローラ118、CPU111の指示に応じて、図1の発音部203に配置されたスピーカ170から音声を出力させるオーディオ部119、および、図1にも示す無線LAN用アンテナ181を介しての無線LAN通信を司る無線LAN通信ボード120が備えられており、これらはバス110で相互に接続されている。
【0040】
ここで、上記のCPU111および無線LAN通信ボード120は、それぞれ本発明の電子装置における処理部および通信部の各一例に相当する。
【0041】
無線LANにおける無線通信は、1つの部屋の中や互いに隣り合っている部屋どうしの間等といった、水平方向に広がる空間内で行なわれることが多い。このため、このノートPC100のように、無線LANに組み込まれるパーソナルコンピュータにおける通信機能は、水平方向についてなるべく強い指向性を有していることが望ましい。
【0042】
本実施形態では、通信機能におけるこのような指向性が、このノートPC100内に内蔵されている無線LAN用アンテナ181を含む、この無線LAN用アンテナ181の周辺部分A(図1参照)の構造によって実現されている。以下、その周辺部分Aの構造について説明する。尚、以下の説明では、図1および図2に示す構成要素について特に図番を断らずに参照する。
【0043】
図3は、無線LAN用アンテナ181の周辺部分Aの構造を示す図である。
【0044】
この図3には、蓋部300に内蔵された無線LAN用アンテナ181が見えるように、上記の蓋部300のカバー302が部分的に除かれた状態で上記の周辺部分Aが示されている。
【0045】
無線LAN用アンテナ181は、電波を送受信する送受信部分181aと、その送受信部分181aと一体的に形成され、その送受信部分181aを支持すると共に他の部品に固定される被固定部分181bと、送受信部分181aと無線LAN通信ボード120とを電気的に結ぶケーブル181cとで構成されている。この無線LAN用アンテナ181が、本発明にいうアンテナ本体の一例に相当する。
【0046】
カバー302の内部には、液晶パネル301を支持する枠体303が在る。ここで、この枠体303における上面303aは、図1に示すこのノートPC100の使用時すなわち蓋部300が開かれた状態にある時には水平方向に広がる面となる。
【0047】
無線LAN用アンテナ181は、この枠体303に、図3に示すように送受信部分181aが上面303aに対して立った状態となるように固定される。
【0048】
カバー302は、誘電体である樹脂材料で形成されたものであり、2枚の壁302aと、天井302bとを備えている。ここで、天井302bは、2枚の天井板302b_1,302b_2が重なった2層構造となっており、さらに、厚みが壁302aの厚みよりも厚くなっている。このカバー302が、本発明にいうアンテナカバーの一例に相当し、壁302aおよび天井302bが、それぞれ本発明にいう壁および天井の各一例に相当し、また、上記の2枚の天井板302b_1,302b_2が、本発明にいう「複数の天井板」の一例に相当する。そして、上記の無線LAN用アンテナ181とカバー302とを合わせたものが、本発明のアンテナ装置の一実施形態に相当する。また、カバー302が、本発明のアンテナカバーの一実施形態に相当する。
【0049】
この図3に示す構造では、水平方向に進む電波は主に壁302aを通過し、鉛直方向に進む電波は主に天井302bを通過する。
【0050】
ところで、このカバー302の材質は上述したように誘電体であるが、従来、誘電体のカバーでアンテナを覆ったとき、そのカバーの厚みが電波の波長に対して十分に薄く、また、そのカバーの広さが電波の波長に対して十分に狭い場合には、カバーが電波の指向性に与える影響は殆ど無いものと考えられていた。ところが、今回、本発明がなされるに当たって行なわれた次のような実験によって、そのような薄く狭いカバーであっても電波の指向性に影響を与え、さらに、その影響が、カバーの構造に左右されることが分かった。以下、この実験について説明する。
【0051】
この実験では、本実施形態における無線LAN用アンテナ181と同等なアンテナが実験対象として用いられ、カバー無しの状態におけるアンテナの指向性パターンと、試験用カバーで実験対象のアンテナを覆った状態におけるカバー越しの指向性パターンとのそれぞれが計測される。また、試験用カバーについては、構造が互いに異なる2種類のものが用意され、それぞれの試験用カバーを使った場合について指向性パターンが計測される。
【0052】
図4は、カバー無しの状態の実験対象のアンテナを示す図であり、図5は、第1の試験用カバーで覆われた状態の実験対象のアンテナを示す図であり、図6は、第2の試験用カバーで覆われた状態の実験対象のアンテナを示す図である。
【0053】
図4、図5、および図6に示すように、実験対象のアンテナ501は、電波を送受信する送受信部分501aが、試験用の設置面502に対して立った状態となるように固定される。また、第1の試験用カバー503は、天井や壁の幅が電波の波長に対して十分に狭い、コの字型に成形された厚さ1mmの誘電体であり、図5に示すように、実験対象のアンテナ501から見た水平方向の360度の方向のうち90度方向と270度方向とが開いた状態でその実験対象のアンテナ501を覆うように固定される。また、第2の試験用カバー504は、図6に示すように、上記のようなコの字型に成形された厚さ1mmの2つの誘電体504a,504bが2層に重なった構造となっている。また、この第2の試験用カバー504も、上記の第1の試験用カバー503と同様に、実験対象のアンテナ501から見た90度方向と270度方向とが開いた状態でその実験対象のアンテナ501を覆うように固定される。
【0054】
この実験では、カバー無しの状態(図4参照)と、第1の試験用カバー503有りの状態(図5参照)と、第2の試験用カバー504有りの状態(図6参照)とのそれぞれについて、実験対象のアンテナ501を中心とした水平方向のXY平面上における、その実験対象のアンテナ501から見た360度の方向の指向性パターンが計測される。また、指向性パターンは、実験対象のアンテナ501で送受信される垂直偏波と水平偏波とのそれぞれについて計測され、その計測は、無線LANにおける通信で使われることが多い電波の周波数のうち、2400MHzから5875MHzまでの間の12種類の周波数について実行される。
【0055】
以下、実験結果を示す。
【0056】
図7は、カバー無しの状態に対して、2400MHzから5100MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図8は、カバー無しの状態に対して、5150MHzから5875MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【0057】
図7のパート(a)、パート(b)、パート(c)、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)には、それぞれ2400MHz、2450MHz、2500MHz、4900MHz、5000MHz、および5100MHzの各周波数について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、図8のパート(a)、パート(b)、パート(c)、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)には、それぞれ5150MHz、5250MHz、5350MHz、5470MHz、5730MHz、および5875MHzの各周波数について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されている。
【0058】
図9は、第1の試験用カバー503有りの状態に対して、2400MHzから5100MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図10は、第1の試験用カバー503有りの状態に対して、5150MHzから5875MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【0059】
上記の図7および図8と同様に、図9のパート(a)、パート(b)、パート(c)、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)には、それぞれ2400MHz、2450MHz、2500MHz、4900MHz、5000MHz、および5100MHzの各周波数について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、図10のパート(a)、パート(b)、パート(c)、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)には、それぞれ5150MHz、5250MHz、5350MHz、5470MHz、5730MHz、および5875MHzの各周波数について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されている。
【0060】
ここで、図7および図8に示すカバー無しの場合の各指向性パターンと、図9および図10に示す第1の試験用カバー503有りの場合の各指向性パターンとを、周波数が同じものどうし互いに比較してみる。すると、いずれの周波数についても、第1の試験用カバー503有りの場合の指向性パターンにおける0度付近および180度付近の方向についての指向性が、カバー無しの場合の指向性パターンにおける0度付近および180度付近の方向についての指向性よりも弱くなり、第1の試験用カバー503有りの場合の指向性パターンにおける90度付近および270度付近の方向についての指向性が、カバー無しの場合の指向性パターンにおける90度付近および270度付近の方向についての指向性よりも強くなっていることが分かる。
【0061】
ここで、0度付近および180度付近の方向は、図3に示すように、第1の試験用カバー503で覆われる方向である。この実験結果から、実験対象のアンテナ501で送受信される電波が第1の試験用カバー503によって拡散されて、電波の指向性パターンが、第1の試験用カバー503の壁で覆われている方向についての指向性が弱くなり、開いている方向についての指向性が強くなる形に変形するということが分かる。また、上記の各周波数を波長に換算したとき最も波長が長くなるのは2400MHzであって波長はおよそ125mmとなる。即ち、電波に対する誘電体のカバーの拡散効果は、そのカバーの広さが電波の波長に対して十分に狭く、そのカバーの厚みが電波の波長に対して十分に薄い場合でも確実に生じるということが分かる。
【0062】
図11は、第2の試験用カバー504有りの状態に対して、2400MHzから5100MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図12は、第2の試験用カバー504有りの状態に対して、5150MHzから5875MHzまでの間の6種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【0063】
上記の図7および図8や、図9および図10と同様に、図11のパート(a)、パート(b)、パート(c)、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)には、それぞれ2400MHz、2450MHz、2500MHz、4900MHz、5000MHz、および5100MHzの各周波数について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、図12のパート(a)、パート(b)、パート(c)、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)には、それぞれ5150MHz、5250MHz、5350MHz、5470MHz、5730MHz、および5875MHzの各周波数について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されている。
【0064】
この図11および図12に示されている各指向性パターンも、図9および図10に示されている各指向性パターンと同様に、図7および図8に示されているカバー無しの場合の各指向性パターンに比べて、壁で覆われている方向についての指向性が弱くなり、開いている方向についての指向性が強くなる形に変形されたものとなっている。さらに、図11および図12に示されている第2の試験用カバー504についての各指向性パターンと、図9および図10に示されている第1の試験用カバー503についての各指向性パターンとを互いに比較すると、第2の試験用カバー504についての各指向性パターンの方が、第1の試験用カバー503についての各指向性パターンよりも上記の変形の程度が大きいことが分かる。ここで、第2の試験用カバー504は、上記のように2つの誘電体504a,504b(図7参照)からなる2層構造を有しており、その結果、カバーの厚みが第1の試験用カバー503の厚みの2倍となっている。このことから、電波に対する誘電体のカバーの拡散効果は、そのカバーの構造に左右されることが分かる。
【0065】
以上、図4から図12までを参照して説明した実験により、電波の波長に対して十分に薄く、広さが電波の波長に対して十分に狭い誘電体のカバーであっても電波に対して拡散効果を発揮し、さらに、その拡散効果が、カバーの構造に左右されることが分かる。
【0066】
再び、図3に戻って説明を続ける。
【0067】
この図3に示す構造では、無線LAN用アンテナ181はカバー302で完全に覆われる。このとき、水平方向に進む電波はカバー302の壁302aを通過し、鉛直方向に進む電波はカバー302の天井302bを通過する。ただし、本実施形態では、天井302bが2層構造となっており、さらに厚みが壁302aの厚みの2倍となっている。そのため、天井302bを通過する電波が壁302a側に拡散されて、鉛直方向よりも水平方向の指向性が強くなり、無線LANにおける望ましい指向性パターンが得られる。また、本実施形態では、このような望ましい指向性パターンが、無線LAN用アンテナ181自体に手を加えること無く、カバー302の天井302bの構造に対する工夫のみによって得られている。つまり、本実施形態では、このような望ましい指向性パターンが、設置スペースの増加を抑えて容易に得られている。
【0068】
尚、ここまで、無線LANにおける望ましい指向性パターンを得るために、アンテナを覆うカバーの天井を2層構造にし、かつ厚みを壁よりも厚くするという例について説明してきたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、本発明にいうアンテナカバーは、カバーの天井の形状に以下に説明するような工夫が加えられたものであっても良い。
【0069】
以下、この本発明にいうアンテナカバーの別例について説明する。尚、アンテナカバー以外の部分については、上記に説明した実施形態と同様であるので重複説明を省略する。
【0070】
図13は、本発明にいうアンテナカバーの別例を示す図である。
【0071】
ここで、この図13では、上記の図3と同等な要素であるアンテナおよび枠体については、それぞれ図3と同じ符号「181」および「303」が付されている。
【0072】
この図13に示すカバー601は、図3に示すカバー302の壁302aとほぼ同形状の壁601aと、無線LAN用アンテナ181側に鋸歯状の凹凸601b_1が設けられている天井601bとを備えているものであり、本発明にいうアンテナカバーの一例に相当する。
【0073】
この図13に示すカバー601では、天井601bについては、誘電体による作用だけでなく、鋸歯状の凹凸601b_1によって生じる反射や屈折や回折等によっても指向性が弱められることとなる。一方、水平方向に進み壁601aを通過する電波は、誘電体による作用しか受けないので、鉛直方向よりも水平方向の指向性が強くなり、無線LANにおける望ましい指向性パターンが得られる。また、この図13に示す例でも、図3に示す例と同様に、このような望ましい指向性パターンが、無線LAN用アンテナ181自体に手を加えること無く、カバー601の形状についての工夫のみで得られている。つまり、この図13に示す例でも、図3に示す例と同様に、望ましい指向性パターンが、設置スペースの増加を抑えて容易に得られる。
【0074】
このように、図13の別例は、天井601bに向かう電波を鋸歯状の凹凸601b_1によって拡散させることで水平方向に望ましい指向性パターンを得るものである。以下では、アンテナカバーにおけるこのような鋸歯状の凹凸が電波を拡散させることに有効であることを実証するために、本発明の発明者によって行われた実験について説明する。
【0075】
この実験では、ノートPCにおける実際の無線LAN用アンテナに対する効果を得るために、上記の図4から図6に示すような単独の無線LAN用アンテナではなく、無線LAN用アンテナが搭載されたノートPCが使われる。また、このノートPCは、図1に示すように無線LAN用アンテナが1個搭載されたものではなく、以下に説明するように無線LAN用アンテナが2個搭載されたものである。
【0076】
図14は、アンテナカバーにおける鋸歯状の凹凸が電波を拡散させることに有効であることを実証するための実験に使用されたノートPCの外観図である。
【0077】
ここで、この図14に示すノートPC700は、無線LAN用アンテナが2個搭載されていること、及び、無線LAN用アンテナを覆うカバーの構造が図1とは異なっていること以外は、図1に示すノートPC100と同じであるので、以下では、この相違点について説明し重複説明は省略する。
【0078】
このノートPC700には、図1に示すノートPC100に組み込まれている無線LAN用アンテナ181と同等の無線LAN用アンテナ701が2個搭載されている。この2個の無線LAN用アンテナ701は、このノートPC700の蓋部750の、開いた状態における上部左側の端部および上部右側の端部それぞれに内蔵されている。
【0079】
ここで、このノートPC700では、電波の受信時には、左側の無線LAN用アンテナ701で受信される垂直偏波の電波と水平偏波の電波、および右側の無線LAN用アンテナ701で受信される垂直偏波の電波と水平偏波の電波という合計4種類の電波のうち、強度が最も大きい電波を受信電波として採用するというダイバーシティ制御が実行される。また、このダイバーシティ制御では、電波の送信時には、2個の無線LAN用アンテナ701のうち、直前に最も強い電波を受信した無線LAN用アンテナ701が送信用として採用される。
【0080】
また、この図14に示すノートPC700において無線LAN用アンテナ701を覆うカバーは、図3に示すカバー302とは異なり、カバーの天井がカバーの壁と同じ構造を有した単純なものである。
【0081】
ここでの実験では、まず、この図14に示すノートPC700における電波の指向性パターンが計測された。
【0082】
図15は、図14に示すノートPC700に対して、2400MHzから2500MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【0083】
図15のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ2400MHz、2450MHz、および2500MHzの各周波数について、図14に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図14に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されている。
【0084】
ここで、図15のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)の指向性パターンの計測は、右側の無線LAN用アンテナ701のみに送信用の電力信号を供給することで行われ、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)の指向性パターンの計測は、左側の無線LAN用アンテナ701のみに送信用の電力信号を供給することで行われる。
【0085】
また、図15のパート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、左右両アンテナに対してダイバーシティ制御を行ったときに得られるであろう指向性パターンが、上記のパート(a)〜パート(f)に示す計測結果に基づく計算によって算出されて示されている。この計算では、まず、互いに対応する周波数についての左右両アンテナそれぞれの垂直偏波の指向性パターンPVを互いに比較して各パターンの値のうち大きい方の値を採用するという処理が、XY平面における360度にわたって実行されることでダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVDが作成される。また、同様の処理が、互いに対応する周波数についての左右両アンテナそれぞれの水平偏波の指向性パターンPHについても実行されてダイバーシティ制御下での水平偏波の指向性パターンPHDが作成される。さらに、各周波数について、ダイバーシティ制御下での2種類の指向性パターンPVD,PHDを互いに比較して各パターンの値のうち大きい方の値を採用するという処理が、XY平面における360度にわたって実行されることでダイバーシティ制御下での最終的な指向性パターンPDが作成される。この図15のパート(g)、パート(h)、およびパート(i)では、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVDは、ダイバーシティ制御下での最終的な指向性パターンPDとほとんど重なっている。
【0086】
ここでの実験では、このような計測と計算とが、以下に示すように5600MHzまでの周波数について実行された。
【0087】
図16は、図14のノートPC700に対して、2600MHzから5250MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図17は、このノートPC700に対して、5350MHzから5600MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図18は、このノートPC700に対して、5725MHzから5840MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【0088】
図16のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ2600MHz、5150MHz、および5250MHzの各周波数について、図14に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図14に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されている。さらに、図16のパート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0089】
また、図17のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ5350MHz、5470MHz、および5600MHzの各周波数について、図14に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図14に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されている。さらに、図17のパート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0090】
また、図18のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ5725MHz、5785MHz、および5840MHzの各周波数について、図14に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図14に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されている。さらに、図17のパート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0091】
図16から図18までの各図においても、図15と同様に、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVDは、ダイバーシティ制御下での最終的な指向性パターンPDとほとんど重なっている。
【0092】
次に、図14のノートPC700において、無線LAN用アンテナ701が内蔵されている部分を、図5に示す第1の試験用カバーと同等な形状の第3の試験用カバーで覆った状態における指向性パターンが計測された。
【0093】
図19は、図14のノートPC700に第3の試験用カバーを取り付けた状態を示す図である。
【0094】
この図19に示す第3の試験用カバー800は、コの字型に成形された厚さ2.5mmの誘電体であり、図19に示すように、ノートPC700の蓋部750における、無線LAN用アンテナ701が内蔵されている2箇所の部分それぞれに被せられる。ここでの実験では、この状態での指向性パターンが計測された。
【0095】
図20は、図19に示す状態のノートPC700に対して、2400MHzから2500MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図21は、このノートPC700に対して、2600MHzから5250MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図22は、このノートPC700に対して、5350MHzから5600MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図23は、このノートPC700に対して、5725MHzから5850MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【0096】
図20のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ2400MHz、2450MHz、および2500MHzの各周波数について、図19に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図19に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0097】
また、図21のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ2600MHz、5150MHz、および5250MHzの各周波数について、図19に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図19に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0098】
また、図22のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ5350MHz、5470MHz、および5600MHzの各周波数について、図19に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図19に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0099】
また、図23のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ5725MHz、5785MHz、および5850MHzの各周波数について、図19に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図19に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0100】
図20から図23までに示す第3の試験用カバー800越しの各指向性パターンを、図15から図18までに示すカバー無しの各指向性パターンと比較すると、カバー無しの各指向性パターンとは形状が異なっている部分が随所に見られる。
【0101】
例えば、図20のパート(c)における垂直偏波の指向性パターンPVの形状は、丸印B1で囲まれた範囲のパターンが、図15のパート(c)における同じ範囲のパターンに比べて凹んでおり、その代わりに0°方向および180°方向にパターンが膨らんで、全体的に90°方向に凸の半円形に近づいている。また、図21のパート(a)における垂直偏波の指向性パターンPVの形状は、丸印B2で囲まれた範囲のパターンが、図16のパート(a)における同じ範囲のパターンに比べて膨らんでおり、その代わりに90°方向および0°方向にパターンが膨らんで、全体的に90°方向に凸の半円形に近づいている。同様に、図22のパート(c)、パート(e)、およびパート(f)それぞれにおける各丸印B3,B4,B5、図23のパート(a)、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)それぞれにおける各丸印B3,B4,B5,B7,B8,B9で囲まれた範囲のパターン形状に、カバー無しの各指向性パターンの形状との差異が見られる。
【0102】
これらの差異は、第3の試験用カバー800によって、カバーを通過する電波が拡散され、右側の無線LAN用アンテナ701については、パターン形状が総じて90°方向に凸の半円形に近づき、左側の無線LAN用アンテナ701については、パターン形状が総じて270°方向に凸の半円形に近づいたものと考えられる。また、この結果、ダイバーシティ制御下での最終的な指向性パターンは、総じて円形に近づいている。
【0103】
次に、ノートPC700の蓋部750における、無線LAN用アンテナ701が内蔵されている2箇所の部分それぞれに、鋸歯状の凹凸を有する第4の試験用カバーが被せられた状態での指向性パターンが計測された。
【0104】
図24は、図14のノートPC700に第4の試験用カバーを取り付けた状態を示す図である。
【0105】
この図24に示す第4の試験用カバー850は、コの字型に成形されさらに外壁に鋸歯状の凹凸が設けられた誘電体である。この第4の試験用カバー850の外壁に設けられた鋸歯状の凹凸では、山の頂部の厚みが2.5mmで、谷の底部の厚みが0.7mmとなっている。この実験では、この第4の試験用カバー850が、ノートPC700の蓋部750における、無線LAN用アンテナ701が内蔵されている2箇所の部分それぞれに被せられる。ここでの実験では、この状態での指向性パターンが計測された。
【0106】
図25は、図24に示す状態のノートPC700に対して、2400MHzから2500MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図26は、このノートPC700に対して、2600MHzから5250MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図27は、このノートPC700に対して、5350MHzから5600MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図28は、このノートPC700に対して、5725MHzから5850MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【0107】
図25のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ2400MHz、2450MHz、および2500MHzの各周波数について、図24に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第4の試験用カバー850越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図24に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第4の試験用カバー850越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0108】
また、図26のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ2600MHz、5150MHz、および5250MHzの各周波数について、図24に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第4の試験用カバー850越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図24に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第4の試験用カバー850越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0109】
また、図27のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ5350MHz、5470MHz、および5600MHzの各周波数について、図24に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第4の試験用カバー850越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図24に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第4の試験用カバー850越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0110】
また、図28のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ5725MHz、5785MHz、および5850MHzの各周波数について、図24に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図24に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0111】
この図25から図28までに示す第4の試験用カバー850越しの各指向性パターンについても、図15から図18までに示すカバー無しの各指向性パターンと比較すると、カバー無しの各指向性パターンとは形状が異なっている部分が随所に見られる。
【0112】
例えば、図26のパート(c)における垂直偏波の指向性パターンPVの形状は、丸印C1で囲まれた範囲のパターンが、図16のパート(c)における同じ範囲のパターンに比べて膨らんでおり、その代わりに90方向にパターンが凹んで、全体的に90°方向に凸の半円形に近づいている。同様に、図27のパート(b)における丸印C2、図28のパート(d)、パート(e)、およびパート(f)それぞれにおける各丸印C3,C4,C5で囲まれた範囲のパターン形状に、カバー無しの各指向性パターンの形状との差異が見られる。さらに、これらの差異は、図20から図23までに示す第3の試験用カバー800越しの各指向性パターンがカバー無しの各指向性パターンに対して有している差異よりも大きい場合が多い。これは、第4の試験用カバー850が有する鋸歯状の凹凸によって、電波を拡散させる効果が強められていることによると考えられる。その結果、この第4の試験用カバー850越しの各指向性パターンでは、第3の試験用カバー800越しの各指向性パターンよりもさらに、各無線LAN用アンテナ701については、パターン形状が半円形に近づき、ダイバーシティ制御下での最終的な指向性パターンは円形に近づいている。
【0113】
次に、ノートPC700の蓋部750における、無線LAN用アンテナ701が内蔵されている2箇所の部分それぞれに、鋸歯状の凹凸が、上記の第4の試験用カバーとは異なる箇所に設けられた第5の試験用カバーが被せられた状態での指向性パターンが計測された。
【0114】
図29は、図14のノートPC700に第5の試験用カバーを取り付けた状態を示す図である。
【0115】
この図29に示す第5の試験用カバー900は、コの字型に成形されさらに内壁に鋸歯状の凹凸が設けられた誘電体である。この第5の試験用カバー900の内壁に設けられた鋸歯状の凹凸では、山の頂部の厚みが2.5mmで、谷の底部の厚みが0.7mmとなっている。この実験では、この第5の試験用カバー900が、ノートPC700の蓋部750における、無線LAN用アンテナ701が内蔵されている2箇所の部分それぞれに被せられる。ここでの実験では、この状態での指向性パターンが計測された。
【0116】
図30は、図29に示す状態のノートPC700に対して、2400MHzから2500MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図31は、このノートPC700に対して、2600MHzから5250MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図32は、このノートPC700に対して、5350MHzから5600MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図であり、図33は、このノートPC700に対して、5725MHzから5850MHzまでの間の3種類の周波数について計測された指向性パターンを示す図である。
【0117】
図30のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ2400MHz、2450MHz、および2500MHzの各周波数について、図29に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第5の試験用カバー900越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図29に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第5の試験用カバー900越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0118】
また、図31のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ2600MHz、5150MHz、および5250MHzの各周波数について、図29に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第5の試験用カバー900越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図29に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第5の試験用カバー900越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0119】
また、図32のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ5350MHz、5470MHz、および5600MHzの各周波数について、図29に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第5の試験用カバー900越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図29に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第5の試験用カバー900越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0120】
また、図33のパート(a)、パート(b)、およびパート(c)には、それぞれ5725MHz、5785MHz、および5850MHzの各周波数について、図29に示すノートPC700における右側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(d)、パート(e)、およびパート(f)にはこれら3種類の各周波数について、図29に示すノートPC700における左側の無線LAN用アンテナ701について計測された第3の試験用カバー800越しの垂直偏波の指向性パターンPVと水平偏波の指向性パターンPHとが示されており、パート(g)、パート(h)、およびパート(i)には、これら3種類の各周波数について、ダイバーシティ制御下での垂直偏波の指向性パターンPVD、水平偏波の指向性パターンPHD、および最終的な指向性パターンPDが示されている。
【0121】
この図30から図33までに示す第5の試験用カバー900越しの各指向性パターンについても、図15から図18までに示すカバー無しの各指向性パターンと比較すると、カバー無しの各指向性パターンとは形状が異なっている部分が随所に見られる。
【0122】
例えば、図31のパート(a)における垂直偏波の指向性パターンPVの形状は、丸印D1で囲まれた範囲のパターンが、図16のパート(a)における同じ範囲のパターンに比べて膨らんでおり、その代わりに90方向にパターンが凹んで、全体的に90°方向に凸の半円形に近づいている。同様に、図32のパート(b)、パート(e)、およびパート(f)それぞれにおける各丸印D2,D3,D4で囲まれた範囲のパターン形状に、カバー無しの各指向性パターンの形状との差異が見られる。さらに、これらの差異は、図20から図23までに示す第3の試験用カバー800越しの各指向性パターンがカバー無しの各指向性パターンに対して有している差異よりも大きい場合が多い。これは、図24の第4の試験用カバー850の場合と同様に、第5の試験用カバー900が有する鋸歯状の凹凸によって電波に対する拡散効果が強められていることによると考えられる。その結果、この第5の試験用カバー900越しの各指向性パターンでは、第3の試験用カバー800越しの各指向性パターンよりもさらに、各無線LAN用アンテナ701については、パターン形状が半円形に近づき、ダイバーシティ制御下での指向性パターンは円形に近づいたものと考えられる。
【0123】
以上、図14から図33を参照して説明した実験により、アンテナカバーに設けられた鋸歯状の凹凸が電波に対して拡散効果を発揮することが分かる。上述した図13の例では、このような鋸歯状の凹凸601b_1がカバー601の天井601bに設けられている。この鋸歯状の凹凸601b_1によって、天井601bに向かう電波が拡散されて、鉛直方向よりも水平方向の指向性が強くなり、無線LANにおける望ましい指向性パターンが得られることとなる。
【0124】
また、ここまで、電波に対する拡散効果を発揮するものとして、誘電体の2層構造や厚みの増加、さらに鋸歯状の凹凸という例について説明してきたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、このような拡散効果を発揮するものとして、以下に説明するような、四角錐状の凹凸等も挙げられる。
【0125】
図34は、四角錐状の凹凸の一例を示す図である。
【0126】
この図34には、複数の四角錐が平面に配列されて構成される四角錐状の凹凸950が示されており、点線で囲まれた範囲E内の1つの四角錐951が凹凸を構成する四角錐の代表例として示されている。この図34に示す四角錐状の凹凸950が、本発明にいう四角錐状の凹凸の一例に相当する。
【0127】
このような四角錐状の凹凸950も、上記の鋸歯状の凹凸と同様に、この四角錐状の凹凸950を通過する電波を反射や屈折や回折等によって拡散させる効果を有している。そして、例えばこのような四角錐状の凹凸950をアンテナを覆うカバーの天井に設けることにより、上記の図13の例と同様に、天井に向かう電波を拡散して、鉛直方向よりも水平方向の指向性を強めて、無線LANにおける望ましい指向性パターンを得ることができる。
【0128】
尚、上記では、本発明の電子装置の一実施形態として、無線LANに組み込まれるノートPC100を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の電子装置は、例えば無線LANに組み込まれる一般的なパーソナルコンピュータであっても良く、あるいは外部装置との間で無線通信を行なう何らかの家電製品等であっても良い。
【0129】
また、上記では、本発明にいうアンテナ本体の一例として、図3に示したような金属プレートを一体成形して得られる無線LAN用アンテナ181を例示したが、本発明にいうアンテナ本体は、その材質や形状や使用目的が特定されるものでは無く、携帯可能な機器に搭載される一般的なアンテナ等であっても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波通信を行う電子装置であって、
アンテナ本体と、
誘電体で形成された、壁および天井で前記アンテナ本体を覆う、その天井の構造でこのアンテナ装置における前記壁側の電波通信の指向性を強めるアンテナカバーとを備えたアンテナ装置;
処理部;および
前記処理部の処理の対象である情報を前記アンテナ装置の電波通信で外部と授受する通信部;
を備え、
前記アンテナカバーは前記天井として、前記アンテナ本体側に凹凸が設けられた天井を有することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記凹凸は、鋸歯状あるいは四角錐状であることを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記アンテナカバーは、前記壁および天井として、2枚の壁と、それら2枚の壁の間をつなぐ天井とを有するものであり、
前記凹凸は、前記壁に沿って複数並び、1つ1つは該壁に対して交わる方向に延びた鋸歯状の凹凸であることを特徴とする請求項1または2記載の電子装置。
【請求項4】
前記電子装置が、携帯可能なものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の電子装置。
【請求項5】
前記電子装置が、被載置面を有する本体部と該本体部に対して開閉自在に連結された蓋部とで構成され、前記蓋部に前記アンテナ装置と前記アンテナカバーを内蔵していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−124970(P2012−124970A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73265(P2012−73265)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2008−502820(P2008−502820)の分割
【原出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】