説明

電子装置

【課題】基板面の実装禁止領域を減らすことで装置の小型化を図り得る電子装置を提供する。
【解決手段】カバー30は、回路基板40が収容されたケース20への組付け時に、基板面40aに接触しないように形成され、カバー本体31には、コネクタ42のコネクタハウジング43に対して対向して上下方向から接触することでコネクタ42を実装した回路基板40を保持する一対の保持部として支持部35および上側嵌合部32aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースの開口を閉塞するカバーに接続部材が挿通する挿通用開口が形成される電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケースの開口を閉塞するカバーに接続部材が挿通する挿通用開口が形成される電子装置として、下記特許文献1に開示される制御機器が知られている。この制御機器では、ケースに、外部装置に接続する接続部材としてコネクタ部材が実装されたプリント基板が収容されている。そして、ケースの開口側にはカバーが嵌着され、このカバーのコネクタ用角穴部からコネクタ部材の接続端子側がケース外に臨むように構成されている。そして、ケースに収容されるプリント基板は、ケースの左右の内壁面に設けられる一対の支持レールおよびストッパ部とカバーに形成された保持部とによって押圧されて支持されている。これにより、ケースに対するプリント基板のがたつきを抑制している。
【0003】
また、下記特許文献2に開示される車載電子制御装置では、筐体(ケース)の内面に、プリント基板を所定の位置に誘導する棚部および漏斗形状部と、プリント基板を固定する対を成す突起部とが形成されている。また、プリント基板に装着されたコネクタハウジングがケースの開口のカバーとして用いられ、ケースおよびコネクタハウジングは、それぞれに形成された孔部および突起部を嵌合させることにより固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−261166号公報
【特許文献2】特開2002−134963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示されるように、プリント基板の基板面がカバーの保持部により押圧されて固定される構成では、基板面のうちこの保持部に接触する接触領域とその周辺とに歪みが生じることとなる。このため、この領域を素子が実装できない実装禁止領域とする必要があり、基板面において実装可能な領域(面積)が減るために基板の小型化が困難になるという問題があった。
【0006】
このため、上記特許文献2に開示されるように、プリント基板に実装(装着)されたコネクタハウジングをケースの開口のカバーとして用いることで、カバーが基板面に接触することが考えられる。しかしながら、このような構成では、コネクタハウジングとプリント基板とケースとを一組として専用設計する必要がある。このため、例えば基板やケースのサイズを変更する場合、この変更に応じたコネクタハウジングを新たに用意する必要があるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、基板面の実装禁止領域を減らすことで装置の小型化を図り得る電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電子装置では、外部装置に接続するための接続部材が基板面に実装される基板と、前記基板がケース開口を介して収容されるケースと、前記接続部材を挿通させるための挿通用開口が形成されるカバー本体を有し、前記挿通用開口を介して前記接続部材を挿通させた状態で前記ケースに組み付けられることで前記ケース開口を閉塞するカバーと、を備える電子装置であって、前記カバーは、前記基板が収容されたケースへの組付け時に、前記基板面に接触しないように形成され、前記カバー本体には、前記接続部材に対して対向して接触することで当該接続部材を実装した前記基板を保持する一対の保持部が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子装置において、前記一対の保持部は、前記基板面に対して直交する方向にて前記接続部材に対して対向して接触するように形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電子装置において、前記カバーには、前記一対の保持部が前記接続部材に対して複数設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置において、前記一対の保持部のうち少なくとも一方は、前記接続部材に対して弾性変形した状態で接触することで当該接続部材を保持のために付勢する付勢手段として形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置において、前記一対の保持部のうち一方は、前記基板面および前記接続部材間に介在しこの接続部材に対して弾性変形した状態で接触することで当該接続部材を保持のために付勢する付勢手段として形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項4または5に記載の電子装置において、前記付勢手段として形成される保持部は、前記カバー本体から離れた位置で前記接続部材に接触し、この接触位置から前記カバー本体に向けて前記基板面に直交する方向での断面積が徐々に大きくなるように形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載の電子装置において、前記付勢手段として形成される保持部は、前記接続部材に接触する突起とこの突起と前記カバー本体とを連結する梁部とから構成され、前記梁部は、前記突起から前記カバー本体に向けて前記基板面に沿う方向の長さが徐々に長くなり当該基板面に直交する方向の長さが徐々に長くなることで前記断面積が徐々に大きくなるように形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子装置において、前記カバーには、前記基板が収容されたケースへの組付け時に、当該基板のうち前記基板面を除く部位を当該基板面に沿う方向に押圧する押圧部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、カバーは、基板が収容されたケースへの組付け時に、基板面に接触しないように形成され、カバー本体には、接続部材に対して対向して接触することで当該接続部材を実装した基板を保持する一対の保持部が形成されている。
このように、カバーが基板面に接触しない状態で一対の保持部が対向して接続部材に接触することで、当該接続部材を実装した基板が保持されるので、基板の保持に起因する基板面での歪みの発生が抑制される。これにより、基板面における実装可能な領域が広がるので、基板面の実装禁止領域を減らすことで基板やこの基板を収容する装置の小型化を図ることができる。
【0017】
請求項2の発明では、一対の保持部は、基板面に対して直交する方向にて、接続部材に対して対向して接触するように形成される。これにより、基板面に実装される接続部材の接続部分に対して、上記直交する方向に作用する外力の伝達を確実に抑制することができる。
【0018】
請求項3の発明では、カバーには、一対の保持部が接続部材に対して複数設けられるため、比較的大きな外力が接続部材を介して各保持部に伝達される場合でも、この外力が各保持部にて緩和されやすくなるので、当該接続部材が実装された基板を基板面に接触することなく確実に保持することができる。
【0019】
請求項4の発明では、一対の保持部のうち少なくとも一方は、接続部材に対して弾性変形した状態で接触することで当該接続部材を保持のために付勢する付勢手段として形成される。このため、基板を基板面に接触することなく保持できるとともに、接続部材を介した外力が各保持部に伝達される場合でも、付勢手段として形成される保持部の弾性変形により上記外力を緩和することができる。
【0020】
請求項5の発明では、一対の保持部のうち一方は、基板面および接続部材間に介在しこの接続部材に対して弾性変形した状態で接触することで当該接続部材を保持のために付勢する付勢手段として形成される。このため、基板を基板面に接触することなく保持できるとともに、接続部材を介した外力が各保持部に伝達される場合でも、付勢手段として形成される保持部の弾性変形により上記外力を緩和することができる。特に、付勢手段として形成される保持部が基板面および接続部材間に介在するため、この保持部を基板面と対向しない接続部材の部位に接触させる場合と比較してスペースを有効活用でき、付勢手段として形成される保持部を採用することによるケース開口の大型化、すなわち、ケースの大型化を抑制することができる。
【0021】
請求項6の発明では、付勢手段として形成される保持部は、カバー本体から離れた位置で接続部材に接触し、この接触位置からカバー本体に向けて基板面に直交する方向での断面積が徐々に大きくなるように形成される。このため、接続部材を介した外力が分散されて保持部に伝達されるため、保持部とカバー本体との連結部位における応力集中が抑制されて、保持部等の破損を防止することができる。
【0022】
請求項7の発明では、保持部の梁部は、突起からカバー本体に向けて基板面に沿う方向の長さが徐々に長くなり当該基板面に直交する方向の長さが徐々に長くなることで、上記断面積が徐々に大きくなるように、テーパ状に形成される。これにより、形成容易な形状で上記断面積を徐々に大きくでき、保持部とカバー本体との連結部位における応力集中を抑制して、保持部等の破損を防止することができる。
【0023】
請求項8の発明では、カバーには、基板が収容されたケースへの組付け時に、当該基板のうち基板面を除く部位を当該基板面に沿う方向に押圧する押圧部が形成される。これにより、カバーをケースに組み付ける際には、押圧部により基板面を除く基板の部位が収容方向に押圧されるので、基板面に歪みを発生させることなく、カバーによる基板の保持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(A)は、第1実施形態に係る電子装置を一部断面で示す側面図であり、図1(B)は、コネクタ側からみた図である。
【図2】図1のコネクタ近傍を拡大した断面図である。
【図3】図3(A)は、図1のカバーの詳細形状を示す正面図であり、図3(B)は、側面図であり、図3(C)は、図3(A)の3C−3C線相当の切断面による断面図である。
【図4】図3(A)の4−4線相当の切断面による断面を拡大した拡大断面図である。
【図5】図3のカバーを回路基板が収容されたケースに組み付ける状態を説明するための断面図であり、図5(A)は組付前の状態を示し、図5(B)は組付後の状態を示す。
【図6】第2実施形態に係る電子装置の要部であるカバーを示す断面図である。
【図7】第3実施形態に係る電子装置の要部であるカバーを示す断面図である。
【図8】図7のカバーを回路基板が収容されたケースに組み付ける状態を上面から見て示す断面図であり、図8(A)は組付前の状態を示し、図8(B)は組付後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電子装置について、図面を参照して説明する。図1(A)は、第1実施形態に係る電子装置10を一部断面で示す側面図であり、図1(B)は、コネクタ側からみた図である。図2は、図1のコネクタ42近傍を拡大した断面図である。図3(A)は、図1のカバー30の詳細形状を示す正面図であり、図3(B)は、側面図であり、図3(C)は、図3(A)の3C−3C線相当の切断面による断面図である。図4は、図3(A)の4−4線相当の切断面による断面を拡大した拡大断面図である。
【0026】
図1に示す電子装置10は、たとえば自動車のような機器に搭載され、回路基板40に実装されるコネクタ42を介して接続される外部装置(図示略)と通信する通信機能を有するものである。この電子装置10は、略直方体形状に形成される樹脂製のケース20と、このケース20のケース開口21を閉塞する樹脂製のカバー30とにより外郭が構成されている。
【0027】
ケース20は、ケース開口21を構成する開口端部が、カバー30に対して挟嵌合するため、その開口面積が端部側ほど小さくなるように内方に傾いて形成されている。また、ケース20の両外側面のうちケース開口21の近傍には、カバー30によるケース開口21の閉塞時に後述するU字状係合部33に係合する凸部22がそれぞれ設けられている。
【0028】
ケース20の両内側面には、回路基板40を案内して支持する一対の支持レール23が形成されており、回路基板40は、ケース開口21を介して両支持レール23に案内されてケース20内に収容されている。この回路基板40の基板面40aには、所定の配線パターンが形成されており、上記通信機能等を実現するための電子部品41等が実装されている。
【0029】
図1および図2に示すように、基板面40aの外縁近傍には、上記外部装置に接続するための接続部材として、コネクタ42が上記所定の配線パターンに対応して実装されている。このコネクタ42は、略直方体形状のコネクタハウジング43により外郭が形成され、このコネクタハウジング43の接続端面43aに、外部装置に接続されたハーネスの雄型端子をそれぞれ挿入するための雌型端子(図示略)が複数形成されている。また、各雌型端子は、複数のコネクタピン44を介して、基板面40aの対応する配線パターンにそれぞれ接続されている。このように構成されるコネクタ42は、コネクタハウジング43の下面に複数設けられる凸部45を基板面40aに接触させてコネクタハウジング43の接続端面43aを基板面40aの外縁から突出させした状態で、ネジ46等を用いて回路基板40に締結されて固定されている。
【0030】
コネクタハウジング43は、回路基板40がケース20内に収容されるとき、接続端面43aがケース開口21から突出し、ケース20の内面(開口端部)に対して所定の隙間が設けられるように形成されている。
【0031】
カバー30は、回路基板40が収容されたケース20に組み付けることで、コネクタハウジング43の接続端面43aを外方に露出させた状態でケース開口21を閉塞するもので、この閉塞により、ケース開口21を介したケース20内への異物の混入や結露等が防止される。このカバー30は、図3および図4に示すように、ケース開口21を閉塞するためのカバー本体31と、このカバー本体31をケース20に組み付けるための環状嵌合部32および一対のU字状係合部33と、を有するように形成されている。
【0032】
環状嵌合部32は、ケース開口21を構成する開口端部に対して内面側から挟嵌合するように、カバー本体31の外縁に沿い略四角環状に突出して形成されている。この環状嵌合部32は、上側に位置する上側嵌合部32aが上面にてケース20内面のうち上面に接触するとともに下面にてコネクタハウジング43の上面に接触するように形成されている。また、一対のU字状係合部33は、ケース20の両外側面に設けられる凸部22に係合するように、カバー本体31に対して長手方向両端から略直交方向に突出してU字状にそれぞれ形成されている。
【0033】
カバー本体31には、その中央部にコネクタハウジング43が挿通可能な矩形状の挿通用開口34が形成されている。また、カバー本体31の挿通用開口34の下縁には、基板面40aおよびコネクタハウジング43間に介在し、基板面40aに接触することなくコネクタハウジング43のみに対して弾性変形した状態で接触する3つの支持部35が形成されている(図2参照)。これら支持部35は、環状嵌合部32の上側嵌合部32aとにより、コネクタハウジング43に対して対向して上下方向から接触することで、コネクタ42を実装した回路基板40を保持する一対の保持部としてそれぞれ機能するものである。
【0034】
図4に示すように、支持部35は、カバー本体31から離れた位置でコネクタハウジング43に接触する突起35aと、この突起35aとカバー本体31とを連結する弾性変形可能な梁部35bとから構成されている。突起35aは、コネクタハウジング43の挿通用開口34への挿入を容易にするために、先端側が傾斜して形成されている。
【0035】
梁部35bは、カバー本体31との連結部分での応力集中を避けるために、突起35aからカバー本体31に向けて、基板面40aに沿う方向の長さが徐々に長くなるように台形状(テーパ状)に形成されて、基板面40aに直交する方向での断面積が徐々に大きくなっている(図3(C)参照)。また、梁部35bは、その上面が挿通用開口34の下縁に段差なくほぼ平行に連結し、その厚さがほぼ一定となるように形成されている。
【0036】
このように各支持部35が構成されることにより、コネクタハウジング43が挿通用開口34に挿入されるとき、各突起35aがコネクタハウジング43の下面に接触して下方へ移動し梁部35bが下方へ傾斜するように弾性変形する。これにより、支持部35の弾性力が突起35aを介してコネクタハウジング43の下面に対し上方向に作用することとなる。この挿入時には、環状嵌合部32の上側嵌合部32aがコネクタハウジング43の上面に接触しているので、各支持部35は、コネクタハウジング43を保持のために付勢する付勢手段としても機能する。
【0037】
また、カバー30には、回路基板40が収容されたケース20への組付け時に、当該回路基板40のうち基板面40aを除く部位、具体的には回路基板40の側縁部40bを当該基板面40aに沿う方向(回路基板40をケース20に収容する収容方向)に押圧する押圧部36が設けられている。この押圧部36は、側縁部40bに適切な弾性力を付与するため、例えば、ゴム部材等、カバー本体31よりも弾性変形容易な部材により形成されている。
【0038】
次に、回路基板40を収容したケース20に対するカバー30の取り付けについて、図5を用いて説明する。なお、図5は、図3のカバー30を回路基板40が収容されたケース20に組み付ける状態を説明するための断面図であり、図5(A)は組付前の状態を示し、図5(B)は組付後の状態を示す。
【0039】
まず、回路基板40を、ケース開口21を介して両支持レール23に案内されるようにケース20内に差し込む。そして、回路基板40を、両支持レール23に設けられるストッパ(図示略)に当接する所定の位置まで差し込んで、ケース20内に収容する。このように回路基板40をケース20内に収容した後、図5(A)に示すように、カバー30を、挿通用開口34にてコネクタハウジング43の接続端面43aに対向するように、ケース20に近づける。
【0040】
そして、カバー30をケース側に押し込むことで、各支持部35の突起35aがコネクタハウジング43の下面に接触して押し下げられて、各梁部35bが下方へ傾斜するように弾性変形する。このとき、環状嵌合部32は、上側嵌合部32aの下面にてコネクタハウジング43の上面に接触している。さらに、カバー30をケース側に押し込むことで、環状嵌合部32がその外面にてケース開口21を構成する開口端部を外面側へ広げるように内面側から接触する。
【0041】
そして、図5(B)に示すように、押圧部36が回路基板40の側縁部40bに当接するまでカバー30をケース側に押し込むことで、環状嵌合部32が開口端部に挟嵌合し、両U字状係合部33が凸部22にそれぞれ係合する。これにより、コネクタハウジング43の接続端面43aが挿通用開口34から外方に突出した状態で、ケース20に対するカバー30の組み付けが完了する。
【0042】
組み付け完了時では、カバー30は、支持部35と上側嵌合部32aとによる一対の保持部により、コネクタハウジング43に対して対向して上下方向から接触することで、コネクタ42を実装した回路基板40を基板面40aに接触することなく保持している。このような組み付け状態では、外力がコネクタ42を介して各支持部35に伝達される場合でも、この外力が各支持部35の弾性変形により緩和されることとなる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る電子装置10では、カバー30は、回路基板40が収容されたケース20への組付け時に、基板面40aに接触しないように形成され、カバー本体31には、コネクタハウジング43に対して対向して上下方向から接触することでコネクタ42を実装した回路基板40を保持する一対の保持部として支持部35および上側嵌合部32aが形成されている。
【0044】
このように、カバー30が基板面40aに接触しない状態で一対の保持部である支持部35および上側嵌合部32aが対向してコネクタハウジング43に接触することで、コネクタ42を実装した回路基板40が保持されるので、回路基板40の保持に起因する基板面40aでの歪みの発生が抑制される。これにより、基板面40aにおける実装可能な領域が広がるので、基板面40aの実装禁止領域を減らすことで回路基板40やこの回路基板40を収容する電子装置10の小型化を図ることができる。
【0045】
また、支持部35および上側嵌合部32aは、基板面40aに対して直交する方向(上下方向)にて、コネクタハウジング43に対して対向して接触するように形成されている。これにより、基板面40aに実装されるコネクタ42の接続部分である各コネクタピン44に対して、上記直交する方向(上下方向)に作用する外力の伝達を確実に抑制することができる。
【0046】
また、カバー30には、一対の保持部である支持部35がコネクタハウジング43に対して複数設けられるため、比較的大きな外力がコネクタ42を介して各支持部35に伝達される場合でも、この外力が各支持部35にて緩和されやすくなるので、当該コネクタ42が実装された回路基板40を基板面40aに接触することなく確実に保持することができる。なお、本実施形態では、支持部35は3箇所設けられているが、これに限らず、4箇所以上設けられてもよいし、想定される外力に応じて1箇所または2箇所設けられてもよい。
【0047】
さらに、一対の保持部のうちの一方である各支持部35は、コネクタハウジング43に対して弾性変形した状態で接触することでコネクタ42を保持のために付勢する付勢手段として形成される。このため、回路基板40を基板面40aに接触することなく保持できるとともに、コネクタ42を介した外力が各支持部35に伝達される場合でも、付勢手段として形成される各支持部35の弾性変形により上記外力を緩和することができる。
【0048】
また、一対の保持部のうちの一方である各支持部35は、基板面40aおよびコネクタハウジング43間に介在しこのコネクタハウジング43に対して弾性変形した状態で接触することでコネクタ42を保持のために付勢する付勢手段として形成される。このように、各支持部35が基板面40aおよびコネクタハウジング43間に介在するため、この保持部を基板面40aと対向しないコネクタハウジング43の部位、例えば、コネクタハウジング43の上面に接触させる場合と比較してスペースを有効活用でき、各支持部35を採用することによるケース開口21の大型化、すなわち、ケース20の大型化を抑制することができる。
【0049】
さらに、各支持部35は、突起35aにてカバー本体31から離れた位置でコネクタハウジング43に接触し、梁部35bが上記接触位置からカバー本体31に向けて基板面40aに直交する方向での断面積が徐々に大きくなるように、形成される。このため、コネクタ42を介した外力が分散されて各支持部35に伝達されるため、各支持部35とカバー本体31との連結部位における応力集中が抑制されて、各支持部35等の破損を防止することができる。
【0050】
特に、各支持部35の梁部35bは、突起35aからカバー本体31に向けて基板面40aに沿う方向の長さが徐々に長くなることで、上記断面積が徐々に大きくなるように、台形状(テーパ状)に形成されるため、形成容易な形状で上記断面積を徐々に大きくできる。
【0051】
また、カバー30には、回路基板40が収容されたケース20への組付け時に、回路基板40の側縁部40bを基板面40aに沿う方向に押圧する押圧部36が設けられている。これにより、カバー30をケース20に組み付ける際には、押圧部36により基板面40aと異なる側縁部40bが収容方向に押圧されるので、基板面40aに歪みを発生させることなく、カバー30による回路基板40の保持力を高めることができる。なお、押圧部36は、ゴム部材のような別部材を設けることなく、カバー本体31の一部を弾性変形可能に突出させてカバー本体31と一体的に形成されてもよい。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る電子装置について図6を参照して説明する。図6は、第2実施形態に係る電子装置10の要部であるカバー30aを示す断面図である。なお、図6は、図3(A)の4−4線相当の切断面による断面に対応する拡大断面図である。
本第2実施形態に係る電子装置10では、カバー30に代えてカバー30aを採用する点が、上記第1実施形態に係る電子装置と異なる。したがって、第1実施形態の電子装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、カバー30aは、上述したカバー30に対して、梁部35bに代えて梁部35cが採用されている。この梁部35cは、突起35aからカバー本体31に向けて、上記第1実施形態と同様に基板面40aに沿う方向の長さが徐々に長くなるように台形状(テーパ状)に形成されるだけでなく、基板面40aに直交する方向の長さ(厚さ:図6にて上下方向)が徐々に長くなることで、上記断面積が徐々に大きくなるように形成されている。特に、梁部35cは、その上面が挿通用開口34の下縁に段差なくほぼ平行に連結し、その下面が厚さを変化させるように傾斜して形成されている。
【0054】
このようにしても、形成容易な形状で上記断面積を徐々に大きくでき、コネクタ42を介した外力が分散されて各支持部35に伝達されるため、各支持部35とカバー本体31との連結部位における応力集中が抑制されて、各支持部35等の破損を防止することができる。特に、梁部35cは、その上面が挿通用開口34の下縁に段差なくほぼ平行に形成されているため、上面も下面と同様に傾斜して形成される場合と比較して、カバー30aの型成形が容易になり製造コストの低減を図ることができる。
【0055】
なお、カバー30aに採用される梁部は、突起35aからカバー本体31に向けて、その厚さが徐々に厚くなり、基板面40aに沿う方向の長さが変化することなく一定となるように形成されてもよい。また、カバー30aは、その梁部が、外力の作用状況等によっては、基板面40aに沿う方向の長さおよび上記厚さが変化することなく一定となるように形成されてもよいし、突起35aをなくすことで直接コネクタハウジング43の下面に接触するように形成されてもよい。
【0056】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る電子装置について図7および図8を参照して説明する。図7は、第3実施形態に係る電子装置10の要部であるカバー30bを示す断面図である。図8は、図7のカバー30bを回路基板40が収容されたケース20に組み付ける状態を上面から見て示す断面図であり、図8(A)は組付前の状態を示し、図8(B)は組付後の状態を示す。なお、図7は、図3(A)の3C−3C線相当の切断面による断面に対応する断面図である。
【0057】
本第3実施形態に係る電子装置10では、カバー30に代えてカバー30bを採用する点が、上記第1実施形態に係る電子装置と異なる。したがって、第1実施形態の電子装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図7に示すように、カバー30bは、上述したカバー30に対して、一対の規制部37を新たに採用するように形成されている。この一対の規制部37は、挿通用開口34の両側縁にそれぞれ設けられて、カバー30bのケース20への組み付け時にコネクタハウジング43に対して両側面から接触することで、コネクタハウジング43の基板面40aに沿う方向の移動を規制して保持する機能を有するものである。すなわち、一対の規制部37は、コネクタ42を保持する一対の保持部としても機能する。
【0059】
規制部37は、カバー本体31から離れた位置でコネクタハウジング43の側面に接触する突起37aと、この突起37aとカバー本体31とを連結する弾性変形可能な梁部37bとから構成されている。突起37aは、コネクタハウジング43の挿通用開口34への挿入を容易にするために、先端側が傾斜して形成されている。また、梁部37bは、その内側面が挿通用開口34の側縁に段差なくほぼ平行に連結し、その厚さがほぼ一定となるように形成されている。
【0060】
このように両規制部37が構成されることにより、図8(A)に示すように挿通用開口34をコネクタハウジング43の接続端面43aに対向させた状態から、コネクタハウジング43が挿通用開口34に挿入されるとき、両突起37aがコネクタハウジング43の側面に接触して外方へ移動し梁部37bが外方へ傾斜するように弾性変形する。これにより、図8(B)に示すように、両規制部37の弾性力が突起37aを介してコネクタハウジング43の両側面に対し挟持するように内方にそれぞれ作用することとなる。
【0061】
したがって、コネクタ42が、基板面40aに沿う方向、特に収容方向に直交する方向(図8の左右方向)に移動することを規制することができる。また、コネクタ42の基板面40aに沿う方向の移動が規制されることで、ネジ46等を使用した回路基板40に対するコネクタ42の固定箇所を削減でき、基板面40aの実装可能な領域(面積)を広げることができる。
【0062】
第3実施形態の変形例として、梁部37bは、カバー本体31との連結部分での応力集中を避けるために、上述した梁部35bや梁部35cのように、突起37aからカバー本体31に向けて、基板面40aに直交する方向での断面積が徐々に大きくなるように形成されてもよい。これにより、規制部37とカバー本体31との連結部分での応力集中を避けることができる。
【0063】
なお、本発明は上記各実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)カバー30,30a,30bの挿通用開口34に挿通し支持部35等により保持される部材は、コネクタ42に限らず、回路基板40に実装されるケーブルなど、外部装置に接続するための接続部材であってもよい。
【0064】
(2)各支持部35は、基板面40aおよびコネクタハウジング43間に介在するように形成されることに限らず、例えば、ケース20の内側面とコネクタハウジング43との間に介在するように形成されてもよい。この場合、この各支持部35とによりコネクタハウジング43に対して対向して接触する部材をカバー本体31に設け、コネクタ42を実装した回路基板40を保持する一対の保持部とすることができる。
【符号の説明】
【0065】
10…電子装置
20…ケース
21…ケース開口
30,30a,30b…カバー
31…カバー本体
32a…上側嵌合部(一対の保持部)
34…挿通用開口
35…支持部(一対の保持部)
35a…突起
35b,35c…梁部
36…押圧部
37…規制部(一対の保持部)
40…回路基板
40a…基板面
40b…側縁部
42…コネクタ(接続部材)
43…コネクタハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置に接続するための接続部材が基板面に実装される基板と、
前記基板がケース開口を介して収容されるケースと、
前記接続部材を挿通させるための挿通用開口が形成されるカバー本体を有し、前記挿通用開口を介して前記接続部材を挿通させた状態で前記ケースに組み付けられることで前記ケース開口を閉塞するカバーと、
を備える電子装置であって、
前記カバーは、前記基板が収容されたケースへの組付け時に、前記基板面に接触しないように形成され、
前記カバー本体には、前記接続部材に対して対向して接触することで当該接続部材を実装した前記基板を保持する一対の保持部が形成されることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記一対の保持部は、前記基板面に対して直交する方向にて前記接続部材に対して対向して接触するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記カバーには、前記一対の保持部が前記接続部材に対して複数設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記一対の保持部のうち少なくとも一方は、前記接続部材に対して弾性変形した状態で接触することで当該接続部材を保持のために付勢する付勢手段として形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記一対の保持部のうち一方は、前記基板面および前記接続部材間に介在しこの接続部材に対して弾性変形した状態で接触することで当該接続部材を保持のために付勢する付勢手段として形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記付勢手段として形成される保持部は、前記カバー本体から離れた位置で前記接続部材に接触し、この接触位置から前記カバー本体に向けて前記基板面に直交する方向での断面積が徐々に大きくなるように形成されることを特徴とする請求項4または5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記付勢手段として形成される保持部は、前記接続部材に接触する突起とこの突起と前記カバー本体とを連結する梁部とから構成され、
前記梁部は、前記突起から前記カバー本体に向けて前記基板面に沿う方向の長さが徐々に長くなり当該基板面に直交する方向の長さが徐々に長くなることで前記断面積が徐々に大きくなるように形成されることを特徴とする請求項6に記載の電子装置。
【請求項8】
前記カバーには、前記基板が収容されたケースへの組付け時に、当該基板のうち前記基板面を除く部位を当該基板面に沿う方向に押圧する押圧部が形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−151212(P2012−151212A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7664(P2011−7664)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】