説明

電子複写機クリーニングブレード用ポリウレタンエラストマー組成物の製造方法

【課題】 ブレード全体の耐摩耗特性を維持したまま、高弾性であり、小粒径の真球状トナーに対してクリーニング性能が良好なクリーニングブレード部材の原料となるポリウレタンエラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】 脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)の存在下で、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー成分(B)と、ポリオールからなる硬化剤成分(C)とを反応させ硬化させてなるポリウレタンエラストマー組成物(D)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の複写装置において使用される、感光ドラム等のトナー担持体上に残留するトナーのクリーニングブレード用ポリウレタンエラストマー組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真複写機やレーザビームプリンタ等の電子写真方式による画像形成装置においては、画像データに応じて感光体ドラム等の像担持体の表面にトナー像を形成した後、かかるトナー像を記録シートに転写し、転写されたトナー像を記録シートに加熱定着することで記録画像を得ている。転写後に像担持体上に残留したトナーはクリーニングブレードにより除去される。
【0003】
これらのクリーニングブレードとしては、主にポリウレタン等のゴム材が使用されており、先端エッジを像担持体の表面に圧接させ、かかる先端エッジで像担持体の表面から残留したトナーを掻き落とすようにしたものが知られている。
【0004】
近年、高画質化への要求からトナーの小粒径化、真球化が進んでいる。このような小粒径の球形トナーは、従来の不定形トナーに比べて、残留したトナーの像担持体からの除去が困難であり、従来のクリーニングブレードではクリーニング不良を起こしてしまう問題が生じる。
【0005】
従来のクリーニングブレードは、耐摩耗特性が比較的低く、また、摩擦係数が高いために、像担持体を摺擦する際にブレードエッジが像担持体の回転方向に引きずられて、線接触から面接触に成り易い。このため、ブレード先端部が潰れ、変形、歪み等を起こして、像担持体とブレード間に僅かな隙間を生じ、クリーニングブレードに滞留したトナーは、ブレードの隙間を抜ける、いわゆるトナー抜けが発生する。
このような問題に対して、ブレードのトナー担持体当接部に硬化層を形成し、ブレード表面の摩擦係数を低下させること(特許文献1)や、ウレタンの耐摩耗特性を保持しながら、クリーニング性に必要な反発弾性向上させるために、ビニル系やフッ素系の樹脂粒子をウレタンプレポリマーに含有する手法が提案されている(例えば、特許文献2など)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−343874号公報
【特許文献2】特開2003−195711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上記特許文献1で提案されているクリーニングブレードは、イソシアネート化合物との反応によるアロファネート結合によりブレード表面に硬化層を形成させ、その結果、摩擦係数は多少低下する。しかし、それでもまだクリーニング能力が不足し、ブレード成形後にわざわざ表面硬化層を形成するための工程増加、その形成方法の複雑さなどの問題があった。またそのクリーニングブレードは像担持体を摺擦する際に粒子部位にクラックが生じ易いという問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的とするところは、ブレード全体の耐摩耗特性を維持したまま、高弾性であり、小粒径の真球状トナーに対してクリーニング性能が良好なクリーニングブレード部材の原料となるポリウレタンエラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)の存在下で、
両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー成分(B)と、ポリオールからなる硬化剤成分(C)とを反応させ硬化させてなることを特徴とする電子複写機クリーニングブレード用ポリウレタンエラストマー組成物(D);およびその製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクリーニングブレード用ポリウレタンエラストマー組成物は、ブレード全体の耐摩耗特性を維持したまま、高弾性であり、小粒径の真球状トナーに対してクリーニング性能が良好であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のクリーニングブレード用ポリウレタンエラストマー組成物は、ウレタンプレポリマー成分(B)と、3価以上のポリオールを一部含有する硬化剤成分(C)とを反応させて得られる一部架橋したタイプのポリウレタンエラストマー組成物である。そして、耐摩耗特性を維持したままクリーニング性能を向上させる成分として、脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)を必須成分として含有していることを特徴とする。
一部架橋タイプであるため、必須成分のリン酸エステル塩(A)は、硬化ポリウレタン反応後に添加して均一に配合することが困難である。従って、後述するように、リン酸エステル塩(A)を予めウレタンプレポリマー成分(B)と配合しておいてその後に硬化剤成分(C)と反応させるか、リン酸エステル塩(A)を予め硬化剤成分(C)と配合しておいてその後にウレタンプレポリマー成分(B)と反応させるか、あるいは、リン酸エステル塩(A)、ウレタンプレポリマー成分(B)および硬化剤成分(C)を一括して混合し反応させることになる。
【0012】
本発明の必須成分である脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)は、脂肪族アルコール(a)にアルキレンオキシド(b)が付加し、その末端の水酸基をリン酸エステル化(c)した後、水酸化物金属塩や炭酸金属塩で中和した構造の化合物である。
【0013】
この脂肪族アルコール(a)としては、官能基としてアルコール性水酸基を有する1価アルコール化合物、2価以上の多価アルコールが含まれる。これらは直鎖でも分岐鎖であってもよく、飽和でも不飽和であってもよい。
具体的には、ラウリルアルコール、ミスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、メタノール、エタノール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース、ショ糖等の4〜8価のアルコール等が挙げられる。
【0014】
この脂肪族アルコール(a)に付加するアルキレンオキシド(b)としては、エチレンオキサイド(以下、EOと略称する。)、プロピレンオキサイド(以下、POと略称する。)、1,2−、2,3−若しくは1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(以下、THFと略称する。)、スチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、エピクロルヒドリン等があげられる。これらの内好ましくはEO又はPOであり、より好ましくはEOである。
【0015】
アルキレンオキシド(b)は単独でも2種以上併用してもよく、後者の場合はブロック付加(チップ型、バランス型、活性セカンダリー型等)でもランダム付加でも両者の混合系でもよい。
これらのアルキレンオキシド(b)のうちで好ましいものはEO単独、PO及びEOの併用(併用の場合、ランダム、ブロック及び両者の混合系)である。
活性水素基含有化合物へのアルキレンオキサイドの付加モル数は活性水素1モルに対して好ましくは1〜300モル、より好ましくは1〜200モル、特に好ましくは1〜150モルである。
アルキレンオキシド(b)を付加する方法は、単独付加、二種以上の(b)を用いる場合のランダム付加、ブロック付加等が挙げられるが限定はない。好ましくは単独付加である。
脂肪族アルコール(a)へのアルキレンオキシド(b)の付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒又は触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒、酸性触媒)の存在下(とくにアルキレンオキシド付加の後半の段階で)に常圧又は加圧下に1段階又は多段階で行なわれる。
【0016】
本発明の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)は、脂肪族アルコール(a)に付加されたアルキレンオキシド付加物(b)を無水リン酸を用いてリン酸エステル化(c)し、相当量の水酸化物金属塩、また炭酸金属塩を投入し、塩交換させることにより得ることができる。
【0017】
塩交換のための水酸化物金属塩、炭酸金属塩の金属イオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、錫イオン、鉛イオン、銀イオン、銅イオン等、などが挙げられる。これらのうち、好ましいものはカルシウムイオンおよび亜鉛イオンである。
【0018】
本発明の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)は、ウレタンプレポリマー成分(B)と硬化剤成分(C)の合計量100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部含有することであり、より好ましくは1〜5重量部含有することである。10重量部を超えると、ウレタンエラストマー組成物の強度が低下し、クリーニングブレードに適さない。
【0019】
本発明の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)の数平均分子量は100〜5,000が好ましく、300〜2,000がより好ましい。数平均分子量が100未満であると、アルキレンオキシド部位による応力緩和効果が十分発揮されず、耐摩耗性が低くなる。また数平均分子量が5,000を超えると、リン酸エステル塩部位による弾性効果が十分に発揮されない
【0020】
本発明の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)のSP値は、ポリウレタンエラストマー組成物(D)との相溶性の観点から、8.0〜12.0が好ましく、9.0〜11.0がより好ましい。
【0021】
本発明の組成物において、硬化剤(C)は、ジオールと一部架橋させるための3〜8価のポリオールの混合物である。ジオールとしては、分子量60〜200のもの、3〜8価のポリオールとしては分子量80〜500のものが使用できる。
これらの具体例としては、エチレングリコ―ル、プロピレングリコ―ル、1,3−ブチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ―ル、1,6−ヘキサンジオ―ル、ジエチレングリコ―ル、ネオペンチルグリコ―ル、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンなどの2価アルコ―ルが挙げられるが、これらのうちエチレングリコ―ル、1、4−ブタンジオールが好ましい。
3〜8価のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロ―ルプロパン、ペンタエリスリト―ル、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビト―ル、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリト−ル、グルコ−ス、フルクト−ス、ショ糖などの3〜8価の多価アルコ―ルなどが挙げられるが、トリオールが好ましく、トリメチロールプロパンがさらに好ましい。
【0022】
硬化剤(C)のジオールとトリオールの比は、好適な機械的強度を付与し、永久歪を改善させるため、重量比で60/40〜95/5であることが好ましく、70/30〜90/10であることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いられるウレタンプレポリマー成分(B)は、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とをモル比で通常(2.2〜1.8):1.0で反応させて得られる、両末端がイソシアネート基であるプレポリマーである。
耐熱性、耐摩耗性などの観点から、ジイソシアネート化合物としては芳香族ジイソシアネート(E)が好ましく、ジオール化合物としては炭素数2〜9のグリコールと炭素数4〜8のジカルボン酸からなるポリエステルジオール(F)が好ましい。
【0024】
芳香族ジイソシアネート(E)の具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略称する。)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、 粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)またはその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5〜20重量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
これらの中で、MDI、粗製MDIが好ましく、MDIがより好ましい。
【0025】
ポリエステルジオール(F)のグリコール成分の炭素数は2〜9が好ましい。9を超えると、ポリウレタンエラストマー組成物の300%モジュラス応力の向上効果が小さくなり、またコスト高となる。
このような炭素数2〜9のグリコールとしては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ジプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどがあげられる。これらのうち、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、エチレングリコールがさらに好ましい。
【0026】
ポリエステルジオール(F)の具体例としては、先に例示したアルキレングリコールとアジピン酸の縮合体であるアジペート系ポリエステルジオール以外にも、カプロラクトンを開環重合させてえられたポリカプロラクトンエステルジオール、ポリカーボネートエステルジオールなどがあげられ、これらのなかでは、アジペート系ポリエステルジオールおよびポリカプロラクトンエステルジオールが好ましく、アジペート系ポリエステルジオールが特に好ましい。
【0027】
前記アジペート系ポリエステルジオールの具体例としては、たとえばポリエチレンアジペートエステルジオール、ポリブチレンアジペートエステルジオール、ポリヘキシレンアジペートエステルジオール、ポリエチレン−プロピレンアジペートエステルジオール、ポリエチレン−ブチレンアジペートエステルジオール、ポリエチレン−ネオペンチレンアジペートエステルジオールなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0028】
ポリエステルジオール(F)と、芳香族ジイソシアネート(H)とを反応させることにより、ウレタンプレポリマー(B)が得られる。
【0029】
前記ウレタンプレポリマー(B)の製造法については、とくに限定はないが、その一例として、芳香族イソシアネート(E)とポリエステルジオール(F)とを、たとえば窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で混合し、反応させる方法などがあげられる。
【0030】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物(D)は、前記ウレタンプレポリマー(B)と硬化剤(C)を反応させることによって得られる。
その際に、必須成分のリン酸エステル塩(A)をポリウレタンエラストマー組成物(D)中に取り込む必要がある。
本発明のウレタンエラストマー組成物(D)は、例えば、
(1)リン酸エステル塩(A)を予めウレタンプレポリマー成分(B)と配合しておいて、その後に硬化剤成分(C)を添加した混合物;
(2)リン酸エステル塩(A)を予め硬化剤成分(C)と配合しておいて、その後にウレタンプレポリマー成分(B)を添加した混合物;
(3)リン酸エステル塩(A)、ウレタンプレポリマー成分(B)および硬化剤成分(C)を一括投入した混合物
を、スタティックミキサー等の混合機でさらに混合し、数分間真空脱泡する。
その後、直ちに型内に注入し、必要によりさらに減圧脱泡して反応硬化させる等の方法により得ることができる。
硬化条件としては、例えば、120〜160℃で1〜2時間硬化する方法などが挙げられる。なお、エラストマーの製造方法として上記方法に限定されるものではない。
【0031】
また硬化を促進するために、クリーニングブレードの性能を損なわない範囲で、ウレタン化触媒(例えば、トリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などのアミン系触媒;オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛などの金属触媒など)を添加してもよい。また、公知のオイルやワックス等の滑剤等を(B)または(C)に添加して反応させることもできる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない
【0033】
製造例1
攪拌装置、温度制御装置付きの容器500mlのガラス製反応容器に、メタノールのエチレンオキシド9.25モル付加物(a−1)300重量部を投入し、窒素気流下、無水リン酸33.9重量部gを少しずつ投入し、反応させた。全量投入後、110℃に昇温し、3時間熟成し、リン酸化物(b−1)を得た。
この(b−1)300重量部をイオン交換水100重量部で希釈し、塩基性炭酸亜鉛41重量部を徐々に加えて中和した。減圧乾燥機にて120℃、−0.08MPa以下で5時間脱水し、本発明のリン酸エステルの亜鉛塩(A−1)320重量部を得た。
【0034】
製造例2
製造例1で、メタノールのエチレンオキシド9.25モル付加物(a−1)の代わりに、メタノールのポリプロピレンオキシド5モル付加物(a−2)400重量部、無水リン酸58.8重量部を投入する以外は同様にして、リン酸化物(b−2)を得た。この(b−2)300重量部に対して塩基性炭酸亜鉛31重量部を投入する以外は同様にして本発明のリン酸エステルの亜鉛塩(A−2)を得た。
【0035】
製造例3
製造例1で、メタノールのエチレンオキシド9.25モル付加物(a−1)の代わりに、
メタノールのポリエチレンオキシド44モル付加物(a−3)621重量部を投入無水リン酸14.2重量部を投入する以外は同様にして、リン酸化物(b−3)を得た。この(b−3)200重量部に対して塩基性炭酸亜鉛4.9重量部を投入する以外は同様にして、本発明のリン酸エステルの亜鉛塩(A−3)を得た。
【0036】
製造例4
製造例2で、リン酸化物(b−1)を、塩基性炭酸亜鉛の代わりに、水酸化カルシウム24.5重量部で塩中和する以外は同様にして、本発明のリン酸エステルのカルシウム塩(A−4)を得た。
【0037】
製造例5
撹拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、分子量2000のポリエチレンアジペートジオール[「サンエスター2620」、三洋化成工業(株)製]390重量部、分子量900のポリカプロラクトントリオール25.9重量部、MDI283重量部を投入し、窒素置換後密閉化で、80℃まで昇温後、ヒドロキシル価が56.1の投入した。、続いてヒドロキシル価が187のをを投入し、80℃で時間反応を行い、本発明の両末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(B−1)を得た。該プレポリマーのイソシアネート含量は6.25%であった。
【0038】
製造例6
攪拌機付の反応容器に、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)85重量部および1,1,1−トリメチロールプロパン(1,1,1−TMP)15重量部を仕込み、30〜50℃で30分混合して、本発明の硬化剤成分(C−1)を得た。
【0039】
製造比較例1
スチレン100重量部、ジビニルベンゼン 0.5重量部、ベンゾイルパーオキシド 0.5重量部、水400重量部を混合し、水系中にポリビニルアルコール1重量部を分散剤として添加し、70℃16時間懸濁重合した。重合後、アルカリ洗浄し、分散剤を除去して重合体を乾燥させた。乾燥後、風力分級し、平均粒径0.5μmの架橋スチレン微粒子(A’−2)を得た。
【0040】
実施例1
製造例1で得られたメタノールのエチレンオキシド9.25モル付加物リン酸エステルの亜鉛塩(A−1)7.9重量部をウレタンプレポリマー(B−1)150重量部に添加し、90℃で温調した。
予め90℃に温調しておいた硬化剤成分成分(C−1)9.1重量部を投入し、スクリュ−羽付攪拌機で40rpm、1分間攪拌混合した。続いて室温にて、5分間脱泡後、その液を150℃に調温した成型器に注入して成型した。1時間後脱型し、ポリウレタンエラストマー組成物(D−1)を得た。
得られた成型物は150mm×200mm×3mmのシートと、直径30mmで厚み12mmの円錐状成形物であった。
【0041】
実施例2
リン酸エステルの亜鉛塩(A−1)の代わりに、製造例2で得られたメタノールのポリプロピレンオキシド5モル付加物リン酸エステルの亜鉛塩(A−2)を使用したほかは実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマー組成物(D−2)を得た。
【0042】
実施例3
リン酸エステルの亜鉛塩(A−1)の代わりに、製造例3で得られたメタノールのポリエチレンオキシド44モル付加物リン酸エステルの亜鉛塩(A−3)を使用したほかは実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマー組成物(D−3)を得た。
【0043】
実施例4
リン酸エステルの亜鉛塩(A−1)の代わりに、製造例4で得られたメタノールのエチレンオキシド9.25モル付加物リン酸エステルのカルシウム塩(A−4)を使用したほかは実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマー組成物(D−4)を得た。
【0044】
比較例1
本発明のリン酸エステル塩(A)を用いずに、実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマー組成物(D’−1)を得た
【0045】
比較例2
本発明のリン酸エステル塩(A)を用いずに、代わりに製造比較例1で調製した平均粒径0.5μmの架橋スチレン樹脂微粒子を5重量部をウレタンプレポリマー(B−1)にあらかじめ混合しておいてを使用したほかは比較例1と同様にしてポリウレタンエラストマー組成物(D’−2)を得た
【0046】
〔物性評価〕
実施例1〜4と比較例1、2のポリウレタンエラストマー組成物について、以下の方法で摩耗深さ、反発弾性、硬度を測定した。
その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
<摩耗深さ>
得られたポリウレタンエラストマー組成物から試験片(150mm×200mm×3mmのシート)を作成し、これをテーパー摩耗試験にかけた。
荷重1000g、摩耗輪の型番がH22、3000回転で摩耗後、レーザー顕微鏡により摩耗深さを測定した
【0049】
<反発弾性>
JIS−K6301の方法に準拠して反発弾性(%)を測定した。
【0050】
<硬度>
JIS−K6301の方法に準拠して、硬度(JIS−A)を測定した。
【0051】
表1より、本発明のポリウレタンエラストマー組成物(D−1)〜(D−4)は高反発弾性でありながら、耐摩耗特性にも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
反発弾性はクリーニング特性と相関があることがわかっており、本発明より得られるポリウレタンエラストマー組成物は、これより製造されるクリーニングブレードに、小粒径の真球状トナーに対してもトナー抜けを発生させない良好なクリーニング性能を付与し、耐摩耗特性が優れているという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物リン酸エステル塩(A)の存在下で、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー成分(B)と、ジオールと3〜8価のポリオールからなる硬化剤成分(C)とを反応させ硬化させてなることを特徴とする電子複写機クリーニングブレード用ポリウレタンエラストマー組成物(D)の製造方法。
【請求項2】
該ウレタンプレポリマー成分(B)と該硬化剤成分(C)の合計量100重量部に対して、該リン酸エステル塩(A)を1〜10重量部含有する請求項1記載のポリウレタンエラストマー組成物(D)の製造方法。
【請求項3】
該リン酸エステル塩(A)の数平均分子量が100〜5,000である請求項1または2記載のポリウレタンエラストマー組成物(D)の製造方法。
【請求項4】
該リン酸エステル塩(A)のSP値が8.0〜12.0である請求項1〜3いずれか記載のポリウレタンエラストマー組成物(D)の製造方法。
【請求項5】
該硬化剤成分(C)が、分子量60〜200のジオールと分子量80〜500のトリオールの混合物である請求項1〜4いずれか記載のポリウレタンエラストマー組成物(D)の製造方法。
【請求項6】
該硬化剤成分(C)におけるジオールとトリオールの重量比が60/40〜95/5である請求項1〜5いずれか記載のポリウレタンエラストマー組成物(D)の製造方法。、
【請求項7】
該ウレタンプレポリマー成分(B)が、芳香族ジイソシアネート(E)と、炭素数2〜9のグリコールと炭素数4〜8のジカルボン酸を反応させてなるポリエステルジオール(F)とを反応させてなるウレタンプレポリマーである請求項1〜6いずれか記載のポリウレタンエラストマー組成物(D)の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の製造方法により得られることを特徴とする電子複写機クリーニングブレード用ポリウレタンエラストマー組成物(D)。



【公開番号】特開2008−225270(P2008−225270A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65940(P2007−65940)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】