説明

電子走査式レーダ装置

【課題】干渉抑圧が可能な、電子走査式レーダ装置の提供
【解決手段】サンプリングされたN個のサンプリングデータからなる受信データを時間方向に連続したM(<N)個のサンプリングデータからなる、(N−M+1)個のデータに切出す。(N−M+1)個のデータの周波数スペクトルを算出し、算出された周波数スペクトルから干渉波の干渉成分周波数を検出する。ビート信号から検出された干渉成分周波数を除去して干渉成分を抑圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子走査式レーダ装置に係わり、特に、車載用のFM-CW方式の電子走査式レーダ装置において、受信信号に含まれる干渉信号を抑圧することのできる電子走査式レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、FM-CWレーダ方式における送受信信号と、ミキシング処理の原理を示すタイムチャート、図2は、対向車線を有する道路環境の一例を示す平面図、図3の(a)(b)は、レーダ装置において、他車からの干渉信号が受信された場合の、自車での信号処理状態示す図である。
【0003】
自動車の衝突事故防止や車間制御のために、先行する車両などの前方物標に対する距離・速度・方位を計測する車載レーダが開発されている。
【0004】
前方物標に対する距離と相対速度を計測する手法としては、信号処理回路構成が簡易であるなどの理由からFM-CWレーダ方式が採用され、また、方位を計測するために電子走査方式を利用している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
FM-CW方式では、図1(a)に示すように、送信アンテナより直線的に周波数が変化する送信波Txを、図2に示すように、自車51の車輌中心CLを中心に左右方向に所定の角度にわたり扇状に送信する。この扇状に送信された送信波Txは物標(たとえば対向車52)に反射し、この反射信号Rx1を受信することで扇状の領域の走査が行われる。そして、この反射信号である受信信号Rx1と送信信号Txとのミキシングを行う。このミキシングにより、送受信信号の周波数差(ビート周波数fb)を成分とする図1(b)に示すビート信号Sが生成される。このビート信号Sの周波数が物標からの往復伝播遅延時間Δtに比例していることを用いて距離を換算する。
【0006】
方位を計測する方式として、短時間で全方位の走査処理が可能ものとして、前述した電子走査方式がある。電子走査方式では、対象からの反射波をある規則により配置された複数のアンテナ素子(アレーアンテナ)で受信する。この受信データのチャンネル間には、各アンテナに対する物標の方位α、各アンテナの配置位置及び受信信号周波数によって決定される時間差が生じている。この時間差(または位相差)から物標の方位検出ができる。たとえばこのような方式を具現化する手法としてデジタルビームフォーミング(DBF)が知られている。DBFでは受信データをAD変換器でデジタル化した後、各チャネルとベクトルデータ(モードベクトル)との相関をとることで方位検出をおこなう(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
ところで、車載レーダ装置搭載車両が多数往来するような、例えば図2に示すような道路環境では、対向車線を走行する車両52に搭載されたレーダから送信される電波Rx2が自車に搭載したレーダへ混入することで、自車において放射した電波(送信波)Txの物標での反射信号Rx1と対向車からの電波(対向車の送信波)Rx2との干渉が生じる。特に他車搭載レーダの送信アンテナからの直接送信波は電力レベルが大きい。更に、他車搭載レーダの変調方式がFM-CWなどの狭帯域信号の場合、その電力レベルは大きいものとなる。大きな電力レベルの干渉信号は、計測精度を劣化させる主要因となりうる。
【0008】
このような状況では、受信信号中に含まれる干渉成分を抑圧することが有効である。たとえば、特定方位からの成分を抑圧するフィルタを利用して干渉成分を抑圧する方法が提案されている。(例えば、非特許文献2参照)
【非特許文献1】菊間信良著「アレーアンテナによる適応信号処理」,科学技術出版,1998 年)。
【非特許文献2】論文:Adaptive Mainbeam JammingSuppressionfor Multi-Function Radars, T.J. Nohara 他著」)
【特許文献1】特開平11−133142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、FM-CW方式の電子走査式レーダでは当方法を直接適用することが困難となる。これを以下説明する。
【0010】
他車からの干渉信号成分の変調方式がFM-CW方式やCW方式の場合、図3(b)に示すように、自車において放射した電波(送信信号)Txの物標での反射信号Rx1は送信信号Txと同じ周波数変調となるため、ミキシング後のビート周波数は時間に対してほぼ一定となり、これが所望信号に対応するビート信号である。これに対して、干渉波である対向車からの送信波Rx2(以下干渉波という)は他車搭載のレーダからの信号であるため、自車において放射した送信信号Txの物標での反射信号R×1と同じ周波数変調とはならない。例えば、変調周波数幅や変調速度が規格上異なっていたり、たとえばこれら規格が対向車等に搭載されたレーダと自車レーダとが同等であっても製造上等のレーダ固体差による周波数変調差等により反射信号Rx1と干渉波Rx2とは全く同じ周波数変調となる可能性はほぼあり得ない。よって、図3(a)から分かるように、この他車からの干渉波R×2のビート周波数は時間に対して遷移する。すなわち、このように時間に対して周波数が遷移、言い換えれば時間に対して周波数が変化する状況を示す情報が周波数スペクトルの時間遷移情報であり、干渉波によってこの信号を周波数分析するなら、それは広帯域の信号成分として現れることとなる。
【0011】
更に、図3(a)および(b)にから分かるように、時間に対して遷移している干渉波R×2のビート周波数は、干渉波R×2の周波数と送信波Txの周波数が交差する点を前後してゼロにて折り返す(反転する)。この折り返した周波数成分については折り返し前の周波数の符号が反転したものとなり、結果として、図2及び図3(a)に示す、本来の干渉成分である干渉波Rx2の到来方位αとその到来方位が反転した方位−αからの電波Rx3(実際は、到来していない電波)と区別が付かなくなる。このような周波数の時間変動する折り返し信号に対しスナップショット毎の受信データで方位検出処理を行っても干渉信号成分として一定の方位に出現しない。このように、ビート信号として広帯域に広がることで干渉波R×2のビート周波数がゼロで反転し、これによって方向が判別できなくなる干渉信号に対し、方位を利用した干渉抑圧処理の適用は困難であった。
【0012】
そこで、本発明は、FM−CW方式のレーダにおいても干渉抑圧が可能な電子走査式レーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、連続波からなる送信信号を放射自在な送信アンテナ、チャンネルに対応するアンテナ素子からなる受信アンテナ、前記アンテナ素子で受信される受信信号と前記送信信号をミキシングしてビート信号を得るミキサ、前記ミキサで得られたビート信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてN個のサンプリングデータからなる受信データを得るAD変換器、前記AD変換器によりサンプリングされた前記受信データに基づいて物標との距離あるいは/および相対速度を検出する物標検出部、を有する電子走査式レーダ装置において、前記サンプリングされたN個のサンプリングデータからなる受信データを時間方向に連続したM(<N)個のサンプリングデータからなる、(N−M+1)個のデータに切出すデータ切出し部、前記(N−M+1)個のデータの周波数スペクトルを算出する周波数スペクトル算出部、前記周波数スペクトルから干渉波の干渉成分周波数を検出する干渉周波数検出部、前記ビート信号から前記干渉周波数検出部にて検出された干渉成分周波数を除去する干渉成分除去部、前記干渉成分が除去された前記データ切出し部にて切出されたデータをマージして切り出し前の長さのデータに復元するバッファ部、前記バッファ部にて復元されたデータに基づいて前記物標の距離あるいは/および相対速度を検出する構成を備えることを特徴とする。
【0014】
なお、請求項2に記載のように、データ切出し部は、前記M個のサンプリングデータが前記サンプリング周波数にてサンプリングされた場合に前記連続したM個のサンプリングデータ中では実質的に周波数が変化しないように当該Mを設定することが有益である。
【0015】
なお、請求項3に示すように、干渉成分除去部は、前記ビート信号から前記干渉周波数検出部にて検出された干渉成分周波数を除去するに際し前記受信波に対応するビート信号と前記干渉波に対応するビート信号とが交差する部分のビート信号を除去することが有益である。
【0016】
さらに、請求項4に記載のように、干渉成分除去部は、前記データ切出し部で切出されたデータに作用する射影行列を用いることも有益である。
【0017】
さらに請求項5に記載のように、チャンネルを複数存在させ、この複数のチャンネルに対応する各アンテナ素子からなる複数の受信アンテナを備え、前記ミキサは前記各アンテナ素子でそれぞれ受信される受信信号と前記送信信号をミキシングして前記各アンテナ素子についてのビート信号を得るために複数備えられ、前記AD変換器は前記複数のミキサで得られた各チャンネルのビート信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングして前記各アンテナ素子に対応した各チャンネルあたりN個のサンプリングデータからなる受信データを得るために複数設けられるようにすることも有益である。
【0018】
さらに請求項6に記載のように、干渉成分周波数に対してデジタルビームフォーミング処理を行って前記干渉成分周波数について方位方向の電力のピークを抽出するピーク方向抽出部を備え、前記干渉成分除去部は、前記ピーク方向抽出部で抽出された前記干渉成分周波数の到来方位の絶対値を求め、この絶対値に基づいて前記干渉成分周波数を除去するフィルタを形成するようにすることも有益である。
【0019】
さらに請求項7に記載のように、干渉成分周波数に対してデジタルビームフォーミング処理を行って前記干渉成分周波数について方位方向の電力のピークを抽出するピーク方向抽出部を備え、前記干渉成分除去部は、前記受信波に対応するビート信号と前記干渉波に対応するビート信号とが交差する部分のビート信号のうち、当該受信波と同方向からの干渉波に対応するビート信号が当該受信波に対応するビート信号と交差する部分のみを除去するフィルタを用いるようにしても有益である。
【0020】
さらに請求項8に記載のように、前記データ切出し部で切出されたデータに作用する射影行列のフィルタを用いることも有益である。
【0021】
請求項9に記載のように、干渉周波数検出部を、前記周波数スペクトルの時間遷移情報に基づいて前記干渉波成分周波数を検出するように構成することも有益である。
【0022】
さらに請求項10に記載のように、干渉周波数検出部は、前記周波数スペクトルの電力値が最大となる成分を前記干渉波成分周波数として検出するように構成することも有益である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、サンプリング後のサンプリングデータを少なくとも2つ以上の連続した切出しデータとしている。これにより、ビート信号を時間的に推移した情報、すなわち少なくとも2つのタイミング以上での情報として捉えることができるため、干渉周波数成分において時間に対する干渉波の周波数変化を推定することができる。さらに干渉成分除去部が推定された干渉成分周波数を除去すれば干渉波の影響を抑制できる。
【0024】
請求項2の発明では、M個のサンプリングデータ中では実質的に周波数が変化しないようにMを設定しているため、サンプリング後の干渉周波数成分の時間に対する周波数変動が切出したサンプリングデータにおいてはほとんど無い状態であり、その時間区分の中で干渉成分のビート周波数を一層適切に検出することが可能となる。
【0025】
さらに請求項3の発明では、干渉成分除去部が干渉成分周波数の除去を、受信波に対応するビート信号と前記干渉波に対応するビート信号とが交差する部分のビート信号を除去するようにしている。たとえば自車からの送信波の物標からの反射波のビート信号は時間に対して遷移しない信号であるが、干渉波は時間に対して遷移する信号であるため、干渉波に対応するビート信号は交差する受信波に対応するビート信号と交差する。この交差する部分は受信波か干渉波かが判別できないものであるため、この点を削除すれば干渉波の影響を抑制できる。
【0026】
請求項4に記載の如く、干渉成分除去部において、干渉波を除去可能な射影行列を用いれば、より精度よく干渉波の影響を抑制できる。
【0027】
なお送受信が1チャンネルづつのシステムにおいても本発明は適用できるが、請求項5に記載の如く受信アンテナが複数あるシステムにおいても有用である。たとえば受信が1チャンネルの場合には機械的に送受信の方向(角度)を振ることが必要であるが、複数の受信アンテナを備えれば、機械的な機構等が不要である。
【0028】
請求項6に記載の如くデジタルビームフォーミング(DBF)機能を備えるものであれば、方位情報を取得することができ、この方位情報を絶対値として求める。そして方位情報の絶対値に基づきフィルタが設定されることにより、極力本来の受信波のビート信号を残した干渉波の除去を実現できる。
【0029】
なお、請求項7に記載の如くDBFを用いて方位情報が分かれば、本来の受信波の到来方位と干渉波の到来方位とが判別できる。しかしながら到来方位が同じである場合には干渉波か受信波かの判別はつかないため、この観点で干渉波を除去すれば、干渉の影響を抑圧できる。
【0030】
また、請求項8に記載の如く、フィルタに、干渉波を除去可能な射影行列を用いれば、より精度よく干渉波の影響を抑制できる。
【0031】
さらに、請求項9の発明によれば、干渉成分のビート周波数を適正に検出するために、干渉周波数の時間遷移情報を用いる。具体的には、前述のように、物標での反射波Rx1のビート周波数は、時間に対してほぼ一定となる。これに対して、干渉波Rx2は別のレーダからの信号であるため、ビート周波数は時間に対して遷移する。例えば、図3(a)に示すように、他車搭載レーダが当該レーダとは異なる変調傾きであった場合、ビート周波数は一次直線的に遷移する。そこでビート周波数の遷移に着目し、ある一定以上の遷移が発生した場合に干渉成分と判定すれば、精度よく検出できる。
【0032】
また、請求項10の発明によれば、干渉成分のビート周波数を適正に検出するために、干渉周波数の電力情報を用いる。具体的には、干渉波の電力が物標からの反射波に比べて大きい場合に、計測精度を大きく悪化させる。そこで、電力が大きい場合、つまりピークが最大になる周波数を干渉成分として検出させれば、精度よく効率的に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面に基づき、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態である電子走査式レーダ装置1を示す構成図である。このレーダ装置1は、連続波(CW)に周波数変調(FM)を掛けた送信信号Txを用いるFM−CWレーダ装置である。また、受信用アレーアンテナ8においてデジタルビームフォーミング処理を行うDBFレーダ装置である。このレーダ装置1は、自動車に搭載されるいわゆる車載用レーダ装置であり、前方を走行する車輌(物標)までの距離やその相対速度などを検知するものである。このレーダ装置1の検知結果は、車輌走行の制御情報等に利用される。送信電波にはマイクロ波が用いられている。
【0035】
このレーダ装置1は、送受信部4を有しており、送受信部4は、タイミング発生器50に接続された中心周波数がf0(たとえば76GHz)の発振器2と、アンプ3と、送信アンテナ5とを備えている。発振器2は、図示しない変調用の直流電源から出力される制御電圧によって、周波数f0の搬送波に対して周波数変調幅ΔFの三角波変調を掛けた信号、すなわち周波数f0±ΔF/2の被変調波(送信波Tx)を出力する。被変調波はアンプ3で増幅され、送信アンテナ5から電磁波として放射される。なお、送信波Txの一部は受信検波用のローカル信号としてミキサ10に出力される。送信用アンテナ5は水平方向に所望の指向性を持たせるために、例えば図示しない4つの要素アンテナから構成されている。
【0036】
送受信部4に設けられた受信用アレーアンテナ8は、第1チャネル(♯1)から第Kチャネル(♯K)までの各チャネルに対応するK個の直線等間隔アレーアンテナ素子6を備えている。各アンテナ素子6はそれぞれ2つの要素アンテナで構成され、送信アンテナ13と同様に水平方向に固定の指向性を持たせている。
【0037】
各アンテナ素子6からの受信波Rx(1〜K)は、RFアンプ9でそれぞれ増幅され、ミキサ10により分配された送信波Txとミキシングされる。このミキシングにより受信信号Rxはダウンコンバートされ、図1(b)に示すように、送信波Txと受信波Rx(1〜K)との差信号であるビート信号Sが生成される。受信波Rx(1〜K)及び送信波Tに基づいてビート信号Sを得る処理の詳細は、例えば特開平11−133142号公報などで述べられている公知技術なので、本明細書ではその詳細な説明は省略する。
【0038】
ところで、三角波変調FM−CW方式では、相対速度が零のときのビート周波数をfr、相対速度に基づくドップラ周波数をfd、周波数が増加する区間(アップ区間)のビート周波数をfb1、周波数が減少する区間(ダウン区間)のビート周波数をfb2とすると、
fb1=fr−fd …(1)
fb2=fr+fd …(2)
が成り立つ。
【0039】
従って、変調サイクルのアップ区間とダウン区間のビート周波数fb1およびfb2を別々に測定すれば、次式(3)及び(4)からfrおよびfdを求めることができる。
fr=(fb1+fb2)/2 …(3)
fd=(fb2−fb1)/2 …(4)
相対速度が零のときのビート周波数frおよびドップラ周波数fdが求まれば、目標物の距離Rと速度Vを次の(5)(6)式により求めることができる。
R=(C/(4・ΔF・fm))・fr …(5)
V=(C/(2・f0))・fd …(6)
ここに、Cは光の速度、F0は中心周波数、ΔFは周波数f0の搬送波に対して周波数変調幅、fmはFM変調周波数である。
【0040】
生成された各アンテナ素子6毎のビート信号S3は、各アンテナ素子6毎に設けられたローパスフィルタ12を経由して、A/D変換器13にてサンプリング周波数fで、1スナップショット当たりN個のサンプリングデータとしてそれぞれサンプリング量子化される。そして次式のようなK(チャンネル)×N個の受信データDT1としてバッファ部14へ蓄積され、物標検出部17に出力される。なおこの受信データDT1は後述する受信データRDがKチャンネル分まとめられたものに相当する。
【0041】
【数1】

【0042】
物標検出部17は、図4に示すように、干渉抑圧部30,ビート周波数検出部31及び方位検出部33を有しており、干渉抑圧部30は、短時間データ切り出し部19,周波数スペクトル算出部20,干渉周波数検出部18,DBF(デジタルビームフォーミング)処理部22、最大ピーク方向抽出部23、干渉方向成分除去部26及びバッファ部27を有している。
【0043】
短時間データ切り出し部19では、図5に示すように、各アレーアンテナ素子6に対応する各チャンネルについて、それぞれ時間方向にサンプリングデータがN個(例えば、1024個/スナップショット)蓄積された受信データRDを、次式のような時間方向にサンプリングデータがM個(例えば、32個、変動可)づつの短いデータSDに切出す。そして切り出した短時間データSDを行列形式にならべ直す。なお、並べなおした切出しデータを式8に示す。
【0044】
【数2】

【0045】
次に、周波数スペクトル算出部20では、短時間に切り出したデータに対して各々に図6及び式(9)に示すように、離散フーリエ変換を行い周波数領域へのデータMfに変換して、周波数スペクトルを演算算出する。式9に短時間フーリエ変換データYを示す。
【0046】
【数3】

【0047】
干渉周波数検出部18では、Kチャンネル分の離散フーリエ変換後の電力の平均を求め、図7に示すように、さらにその周波数方向のピークを一つ以上検出しそのピークの平均電力レベルが最大となる周波数をもって、各時刻tnでの干渉成分の瞬時ビート周波数(干渉成分周波数)として求める。この瞬時ビート周波数(干渉成分周波数)を式10のように定義する。
【0048】
【数4】

【0049】
式10のように表される干渉成分周波数を数式化したものが式11である。
【0050】
【数5】

【0051】
次に、DBF処理部22では、短時間フーリエ変換データYに対して公知のDBF(デジタルビームフォーミング)処理を行う。DBF処理詳細については、非特許文献1に詳しい説明がある。ここでθはDBF走査する方位を表す。
【0052】
式12に示すZ[t](θ)はDBF処理によるスペクトルを表す。
【0053】
【数6】

【0054】
次に、最大ピーク方向抽出部23で、干渉成分の周波数について、DBF処理で得られたエネルギが最大となる方位方向のピーク値を式13を用いて検出する。
【0055】
【数7】

【0056】
次に、干渉方向成分除去部26では、求められた方位方向のピーク(周波数方向のピーク)から干渉成分の到来方向の絶対値を公知の演算手法で推定する。これにより得られる干渉成分の到来方向は、図2、図3(a)及び(b)に示すように、車輌中心CL(送信信号Txの電子走査における走査中心)に対して対称な方位角αを有する干渉波Rx2又はRx3のどちらか一方であるが、どちらであるかは確定出来ない値であることから、「到来方向の絶対値」と称する。これは、図3(a)に示すように、送信信号Txに線対称な干渉波Rx2及びRx3は、ミキシング後に、図3(b)に示すように、同じ干渉波パターンとなるからであり、これにより、例えば、演算で得られる到来方向がθ=αだとしても、実際の到来方位は、図2に示す方位θ=α又は−αのどちらの方位でも取ることが出来るのである。
【0057】
しかし、干渉方向成分除去部26では、干渉成分の到来方向を確定することなく、次のような干渉成分を抑圧する射影行列h[t]を式14、15に基づき時刻ごとに生成する。
【0058】
【数8】

ここでh[t]の定義は式15に示す
【0059】
【数9】

であり、Wk(θ)は方位θに対するDBFの重み(ステアリングベクトル)である。
【0060】
これを、元の受信データSD(図5参照)に施すことにより、干渉成分抑圧処理後の受信信号Xc[t]を得ることができる。
【0061】
【数10】

【0062】
受信信号Xc[t]は、バッファ部27で、干渉信号成分が抑圧された短時間データSD、即ちxC[t]を、元のデータ数分蓄積して、短時間データ切り出し部19で切出され、更に干渉方向成分除去部26で干渉方向成分が抑圧除去された短時間データSDを、切り出し以前の受信データRD、DT1(図5参照)に復元し、後段のビート周波数検出部31へ送る。この状態で、後段のビート周波数検出部31へは、図4の送受信部4のバッファ部14に蓄積されたビート信号から、干渉波成分が除去(抑圧)された形の信号S4が適切に出力される。
【0063】
なお、既に述べたように、干渉波成分が除去(抑圧)された形の信号SSは、図3(b)の送信波と干渉波の交差による折り返しが生じた干渉信号成分について、その到来方位の正負についての判定処理を行うことなく抑圧処理が成されているが、その到来方位の正負が分からなくても、干渉成分の除去が可能となっている。
【0064】
以下図8を用いて説明する。なお、図8(a),(b)は図3(a)(b)と同様であるため説明を省略する。また図8も図3と同様図2に示すような物標および干渉波の状況を例としたものである。
【0065】
例えば干渉信号の一方の到来方位に対応する、例えば図2および図8(a)(b)の状況ではDBF後の方位情報は図8(c)に示すものとなる。すなわち、図8(b)において時間に対して略同一のビート周波数であった所望信号であるビート信号に対応する方位は正の値αである。また対向車52からの送信波である干渉波Rx2の方位はαとして出る。干渉波Rx2が反転したビート信号に対応する方位は‐αである。よって、図8(b)に示すようなミキシング後の干渉波Rx2のビート信号のうち、ビート周波数がゼロにより反転した部分のビート信号はDBF後において所望のビート信号Sと方位の正負が異なるため区別できるものとなる。よって、干渉波Rx2に対応するビート信号を除去する場合、反射波Rx1に対応するビート信号Sと到来方位の正負の符号が逆である干渉波Rx2に対応するビート信号は干渉波のビート信号のみが射影行列によるフィルタにより除去され、一方で反射波Rx1に対応するビート信号Sと到来方位の正負の符号が一致する干渉波Rx2に対応するビート信号は反射波Rx1と干渉波Rx2との区別がつかないため一緒に削除される。なお、この一緒に削除される場合の削除幅は、図8(b)において所望のビート信号Sと干渉波Rx2のビート周波数とが交わる部分のうち破線で囲った部分としている。これらのように除去を施されたビート信号SSを図8(d)に示す。図8(d)では時間Toを中心とした時間T3〜T4が本来の所望のビート信号Sと共に干渉波Rx2のビート周波数も除去されている。なお、この除去の幅は信号強度が大きい場合には大きい幅、小さい場合には小さい幅とすることが可能である。
【0066】
物標検出部17の干渉抑圧部30で干渉成分が抑圧されたビート信号SSは、ビート周波数検出部31及び方位検出部33で公知の処理が施され、自車と先行車両などの物標との距離、相対速度、方位などが演算され、更に、図4に示す、物標追従部35において、時間的な追跡処理を行って前方の車両を検出するなどの演算処理を行う。なお、物標追従部35における詳しい処理内容については、特開2003−270341号公報などにその詳細が述べられている公知技術なので、本明細書ではその説明を省略する。また、ビート周波数検出部31及び方位検出部33での処理は、非特許文献1等に詳細に述べられており、公知の手法となっているので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0067】
なお、本実施例では、これらの処理部とその動作内容をマイクロプロセッサやディジタルシグナルプロセッサー等で動作する信号処理ソフトウエアとしての実現を想定して説明を行ったが、FPGAやLSI等の半導体デバイス上の集積回路としての実現も可能である。
【0068】
以上の実施例において、干渉抑圧部30を構成する各処理部は、以下のような機能を有する。即ち、
A)前段のバッファ部から受信した多チャンネルデータを複数チャンネル短時間データに切り出す、短時間データ切り出し部19、
B)短時間データから短時間周波数スペクトルを算出する、周波数スペクトル算出部20、
C)短時間周波数スペクトルから干渉成分周波数を検出する、干渉周波数検出部18、
D)DBF(デジタルビームフォーミング)処理を行う、DBF処理部22
E)DBF処理結果から、干渉成分の方位を求める、最大ピーク方向抽出部23、
G)求められた干渉成分の方位(求められた方位には、正負の方位が対応しており、どちらかを特定することは出来ない)に基づき、短時間複数チャネルデータからその方位方向の成分を抑圧するフィルタを作用させる、干渉方向成分除去部26、
H)干渉成分抑圧後の短時間複数チャネルデータをマージしてもとの長さのデータ長を復元する、バッファ部27。
【0069】
このように、対向車などからのFM−CW、CWレーダ波などを干渉波として受信したような場合などにおいて、干渉成分周波数の時間変動があっても、当該干渉波の短時間データを切出して処理する構成としたため、切出した時間範囲では周波数がほとんど変わらず、周波数スペクトル算出部20と干渉周波数検出部18によって、その時間区間での干渉成分周波数を検出し、抑圧することができる。
【0070】
次に図9を用いて第1の実施形態の第1の変形例について説明する。図9(a)(b)は図3(a)(b)と同等のため説明を省略する。
【0071】
図9(c)は図9(b)に示すビート周波数をAD変換器でサンプリングした結果であるが、通常サンプリング周波数の1/2倍のいわゆるナイキスト周波数において干渉波Rx2のビート信号は折り返す。よって、図9(c)から分かるようにサンプリング後の周波数はビート周波数がゼロとナイキスト周波数との間で各々折り返した形状となる。
【0072】
この図9に基づく変形例では、図9(b)から分かるように時点To1〜To4において反射波Rx1に対応するビート信号Sと干渉波Rx2に対応する折り返したビート信号とが交差している。しかしながらこの交差は時点To1とTo2とではビート信号Sと干渉波Rx2のビート信号とが到来方位の正負で一致しているものとなり、時点To3,To4では正負が逆である。よって、本変形例では到来方位の正負が一致している期間のビート信号を削除している。詳述すると、時点To2を挟む時点T1〜T2および時点To1を挟む時点T3〜T4の間のビート信号Sおよび干渉波Rx2のビート信号との双方がフィルタにより除去される。また時点T1まで、時点T2〜T3、時点T4以後の期間では、干渉波Rx2のビート信号のみがフィルタにより除去される。
【0073】
このようにサンプリングによるナイキスト周波数を鑑み、干渉波Rx2(Rx3)のビート周波数が周波数ゼロおよびナイキスト周波数との双方で折り返す場合、反射波Rx1と干渉波Rx2の到来方位の正負が一致する期間を全て除去するようにしても効率的である。
【0074】
なお、この変形例においても第1の実施形態と同様に時点To1、To2を挟み、干渉波の電力等を鑑み、除去する幅(期間)を設定するようにしてもよい。
【0075】
次に図10を用いて第2の実施形態について説明する。
【0076】
図10(a)(b)は略図3と同様であるため説明を簡略化する。
【0077】
この第2の実施形態ではDBF機能を備えない点が上述の実施形態、変形例とは大きく異なる点である。この第2の実施形態では、ミキサによりミキシングされた後の反射波Rx1に対応するビート信号Sと干渉波Rx2に対応するビート信号とが交差する2点を射影行列等により除去する。すなわち、干渉成分周波数のうち、前述の交差する点あるいはこの点の前後の期間はビート信号Sと干渉波Rx2のビート信号とを双方とも除去し、それ以外は干渉波Rx2のビート信号のみを除去する。すなわち、図10(d)に示すように、時点To4,To1の各々において前述の交差があるため、この時点To4、To1の前後の幅(期間)である時点T6〜T7、T3〜T4の双方とも、ビート信号Sと干渉波Rx2のビート信号とを両方フィルタで除去する。その他の期間は干渉波Rx2のビート信号のみを除去する。このようにDBFを用いて方位情報を得なくても干渉周波数成分の時間に対する遷移情報を用いれば、干渉成分を抑圧できる。
【0078】
なお、この第2の実施形態においては、図4における方位検出部33、DBF処理部22、最大ピーク方向抽出部23は省略でき、干渉方向成分除去部26はピーク方向等の方位情報を用いず、干渉周波数成分の時間に対する遷移情報を用いて干渉成分を除去するものとなる。
【0079】
本発明は上記までの実施形態、あるいは変形例に限定されることなくさらに種々変形可能である。
【0080】
たとえば、上述までの実施形態、変形例では、短時間データ切出し部9は時間方向に連続するM個のデータを単に切出すこととしており、極端に言えば、N=1024である場合、M=1023でもとり得るものであった。すなわち、短時間データ切出し部9は、2つ以上の時間帯が相違する連続したデータ群として取り出せばよかったものである。しかしながら、たとえば、短時間データ切出し部9において、短時間データSDのサンプル時間、即ち、図9(c)に示す干渉波Rx2(Rx3)の折り返し時間t1に比してより短い時間のデータとすることも可能である。これにより干渉成分のビート周波数の変動を折れ曲がり(反転)しないぐらいの大幅に小さなものとすることが出来るため、干渉波のビート周波数を一層適切に算出できる。
【0081】
また、上述までの実施形態、変形例では、最大ピーク方向抽出部23がDBF処理で得られたエネルギが最大となる方位方向のピーク最大値を検出していたが、最大値でなくても単にピークを検出するようにしてもよい。すなわち、ピークが複数あれば、複数のピークに基づいて干渉成分を除去するようにしてもよい。この際にはピークの時間的な推移を評価する必要があり、ピーク最大値を用いる際と比較して計算が複雑化するが、性能上は問題ないものとできる。逆に言えば上述までのようにピーク最大値を用いれば、計算が簡素化できるというメリットを有するものである。
【0082】
さらに、たとえば上述の第1の実施形態では方位検出部33を備え物標の方位情報を演算子追従処理部35に情報として与えていたが、これに限定されず、たとえば方位情報を算出しないシステムにも適用できる。すなわち、方位検出部33を備えない装置でも本発明を適用できる。
【0083】
以上説明した実施形態、変形例およびさらなる変形形態は適宜組み合わせ可能であり、上記内容に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、車載用のFM-CW方式の電子走査式レーダ装置に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1の(a)はFM-CWレーダ方式における送受信信号を示し、(b)はミキシング処理の原理を示すタイムチャートである。
【図2】図2は、対向車線を有する道路環境の一例を示す平面図。
【図3】図3の(a)はミキシング前の送信波、反射波、干渉波の時間に対する周波数変化を示す図であり、(b)はそれらの信号をミキシングした後の各ビート信号を示す図である。
【図4】図4は、本発明による電子走査式レーダ装置の1実施例を示すブロック図である。
【図5】図5は、短時間データ切り出し処理の内容を示す模式図である。
【図6】図6は、周波数スペクトル算出処理の内容を示す模式図である。
【図7】図7は、各時刻における干渉信号の瞬時ビート周波数を示す模式図である。
【図8】図8(a)はミキシング前の送信波、反射波、干渉波の時間に対する周波数変化を示す図であり、(b)はそれらの信号をミキシングした後の各ビート信号を示す図であり、(c)はDBF後の方位に関して示す図であり、(d)は方位情報に基づきビート信号から干渉波のビート信号を除去した際の所望ビート信号SSを示す図である。
【図9】図9(a)はミキシング前の送信波、反射波、干渉波の時間に対する周波数変化を示す図であり、(b)はそれらの信号をミキシングした後の各ビート信号を示す図であり、(c)は(b)における各々ビート信号のサンプリング後を示す図であり、(d)は方位情報に基づきビート信号から干渉波のビート信号を除去した際の所望ビート信号SSを示す図である。
【図10】図10(a)はミキシング前の送信波、反射波、干渉波の時間に対する周波数変化を示す図であり、(b)はそれらの信号をミキシングした後の各ビート信号を示す図であり、(d)は方位情報に基づかずにビート信号から干渉波のビート信号を除去した際の所望ビート信号SSを示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1……電子走査式レーダ装置
5……送信アンテナ
6……アンテナ素子
10……ミキサ
13……A/D変換器
17……物標検出部
18……干渉周波数検出部
19……短時間データ切出し部
20……周波数スペクトル算出部
26……干渉方向成分除去部
27……バッファ部
S3、S4,RD……ビート信号
……受信信号
……送信信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続波からなる送信信号を放射自在な送信アンテナ、チャンネルに対応するアンテナ素子からなる受信アンテナ、前記アンテナ素子で受信される受信信号と前記送信信号をミキシングしてビート信号を得るミキサ、前記ミキサで得られたビート信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてN個のサンプリングデータからなる受信データを得るAD変換器、前記AD変換器によりサンプリングされた前記受信データに基づいて物標との距離あるいは/および相対速度を検出する物標検出部、を有する電子走査式レーダ装置において、
前記サンプリングされたN個のサンプリングデータからなる受信データを時間方向に連続したM(<N)個のサンプリングデータからなる、(N−M+1)個のデータに切出すデータ切出し部、
前記(N−M+1)個のデータの周波数スペクトルを算出する周波数スペクトル算出部、
前記周波数スペクトルから干渉波の干渉成分周波数を検出する干渉周波数検出部、
前記ビート信号から前記干渉周波数検出部にて検出された干渉成分周波数を除去する干渉成分除去部、
前記干渉成分が除去された前記データ切出し部にて切出されたデータをマージして切り出し前の長さのデータに復元するバッファ部、
前記バッファ部にて復元されたデータに基づいて前記物標の距離あるいは/および相対速度を検出することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記データ切出し部は、前記M個のサンプリングデータが前記サンプリング周波数にてサンプリングされた場合に前記連続したM個のサンプリングデータ中では実質的に周波数が変化しないように当該Mを設定していることを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記干渉成分除去部は、前記ビート信号から前記干渉周波数検出部にて検出された干渉成分周波数を除去するに際し、前記受信波に対応するビート信号と前記干渉波に対応するビート信号とが交差する部分のビート信号を除去することを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記干渉成分除去部は、射影行列を前記データ切出し部で切出されたデータにフィルタとして作用させることで、前記干渉成分周波数を除去することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記チャンネルは複数存在し、この複数のチャンネルに対応する各アンテナ素子からなる複数の受信アンテナを備え、
前記ミキサは前記各アンテナ素子でそれぞれ受信される受信信号と前記送信信号をミキシングして前記各アンテナ素子についてのビート信号を得るために複数備えられ、
前記AD変換器は前記複数のミキサで得られた各チャンネルのビート信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングして前記各アンテナ素子に対応した各チャンネルあたりN個のサンプリングデータからなる受信データを得るために複数設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記干渉成分周波数に対してデジタルビームフォーミング処理を行って前記干渉成分周波数について方位方向の電力のピークを抽出するピーク方向抽出部を備え、
前記干渉成分除去部は、前記ピーク方向抽出部で抽出された前記干渉成分周波数の到来方位の絶対値を求め、この絶対値に基づいて前記干渉成分周波数を除去するフィルタを用いることを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記干渉成分周波数に対してデジタルビームフォーミング処理を行って前記干渉成分周波数について方位方向の電力のピークを抽出するピーク方向抽出部を備え、
前記干渉成分除去部は、前記受信波に対応するビート信号と前記干渉波に対応するビート信号とが交差する部分のビート信号のうち、当該受信波と同方向からの干渉波に対応するビート信号が当該受信波に対応するビート信号と交差する部分のみを除去するフィルタを用いることを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記フィルタは、前記データ切出し部で切出されたデータに作用する射影行列であることを特徴とする請求項6もしくは請求項7に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記干渉周波数検出部は、前記周波数スペクトルの時間遷移情報に基づいて前記干渉波成分周波数を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記干渉周波数検出部は、前記周波数スペクトルの電力値が最大となる成分を前記干渉波成分周波数として検出することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のレーダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−180703(P2008−180703A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329119(P2007−329119)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】