説明

電子透かしの埋込装置および埋込方法並びに画像形成装置

【課題】 電子透かし埋込装置において、処理性能の低下や製造コストの上昇を招くことなく、JPEGアルゴリズムを始めとした非可逆な再圧縮処理に対する耐性を向上させる。
【解決手段】 画像データを所定の大きさのブロックに分割し、得られたブロックごとの画像データを、該ブロックごとに空間周波数成分に変換するDCT変換処理部300(周波数変換手段)と、DCT変換処理部300によって得られた空間周波数成分に対応した係数のうち、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、電子透かし情報を埋め込む透かし埋込処理部303(埋込手段)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子透かしの埋込装置および電子透かしの埋込方法並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、静止画や動画、音楽等のデジタルコンテンツの改ざんや不当な複製を検証し、あるいは防止すること等を目的として、これらのコンテンツに署名データを付加したり(特許文献1)、電子透かしを埋め込む技術が提案されている(特許文献2)。
【0003】
ここで、電子透かしを用いた方法においては、検証用等の埋込み情報(電子透かし情報)が、画像等のコンテンツと不可分になるため、電子透かし情報をコンテンツから容易に除去することができず、コンテンツを保護する観点から好適ということができる。
【0004】
また、デジタルカメラ等の画像形成装置によって得られた画像をデジタル画像データとして取り扱う際には、JPEG(Joint Photographic Expert Group)アルゴリズム等による圧縮符号化処理が施されるため、この処理によって、コンテンツに埋め込まれた電子透かし情報が損なわれないようにする必要がある。
【0005】
そして、そのような圧縮符号化処理に対する耐性を向上させるべく、電子透かし情報を、量子化後のデータに対して埋め込むことも、特許文献2において提案されている。
【0006】
このようにして得られたデータは、その後に、使用者によって種々の画像処理等信号処理が施されることもあり、これらの信号処理に対しても耐性を有することが求められる。
【0007】
そこで、画像データの8画素×8画素のブロックごとに求められたDCT(離散コサイン変換)係数につき、隣接するブロック間での相関を求め、この相関に基づいて、埋め込む電子透かし情報の強度を変化させる手法が提案されている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−220686号
【特許文献2】特開2002−271609号
【非特許文献1】崔潤基、相澤清晴,「DCT係数のブロック間相関を利用した電子透かし法」,電子情報通信学会論文誌,2000年7月,Vol.J83-DII No.7,p.1620−1627
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1による技術は、処理が複雑であるため、例えばデジタルカメラなどの携帯型画像形成装置に付随的に搭載しても、処理時間が長くなって性能の低下を招き、また製造コストアップによる市場競争力の低下にもつながる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、処理性能の低下や製造コストの上昇を招くことなく、JPEGアルゴリズムを始めとした非可逆な再圧縮処理に対する耐性を有する電子透かし埋込装置および電子透かし埋込方法、並びにそのような電子透かし埋込装置を備えまたはそのような電子透かし埋込方法を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る電子透かし埋込装置は、デジタル画像データを所定の大きさのブロックに分割するブロック分割手段と、前記ブロック分割手段によって分割して得られたブロックごとの画像データを、該ブロックごとに空間周波数成分に変換する周波数変換手段と、前記周波数変換手段によって得られた空間周波数成分に対応した係数のうち、前記各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、前記デジタル画像データに電子透かし情報を埋め込む埋込手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込装置によれば、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、電子透かし情報を埋め込むため、大きな性能劣化やコストアップを伴うことなく、JPEGアルゴリズムなどの再圧縮処理に対する耐性を向上させることができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る電子透かし埋込装置は、請求項1に係る電子透かし埋込装置において、前記埋込手段は、前記係数を、量子化テーブルを規定する要素の値に基づいて、2つ選択することを特徴とする。
【0013】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込装置によれば、係数が、量子化テーブルを規定する要素の値に基づいて2つ選択されるため、再圧縮処理に対する耐性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項3に係る電子透かし埋込装置は、請求項2に係る電子透かし埋込装置において、前記埋込手段は、前記係数を、量子化テーブルを規定する要素のうち、同一の値を有する互いに異なる2つの要素にそれぞれ対応したものを2つ選択することを特徴とする。
【0015】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込装置によれば、係数が、量子化テーブルを規定する要素のうち、同一の値を有する互いに異なる2つの要素にそれぞれ対応したものとして2つ選択されるため、再圧縮処理に対する耐性をさらに向上させることができる。
【0016】
本発明の請求項4に係る電子透かし埋込装置は、請求項1に係る電子透かし埋込装置において、前記埋込手段は、前記大小の比較対象となる2つの係数からなる係数組を複数組選択することを特徴とする。
【0017】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込装置によれば、大小の比較対象となる2つの係数からなる係数組が複数組選択されるため、埋め込まれる電子透かしの情報量と、埋込みによる原画像の劣化とのバランスを調整することができる。
【0018】
本発明の請求項5に係る電子透かし埋込装置は、請求項4に係る電子透かし埋込装置において、前記埋込手段は、前記複数の係数組のうち、前記電子透かし情報を埋め込む前における各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を1組決定することを特徴とする。
【0019】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込装置によれば、各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組が1組決定されるため、電子透かしの埋込みによる原画像の劣化を最小限に抑えることができる。
【0020】
本発明の請求項6に係る電子透かし埋込装置は、請求項4に係る電子透かし埋込装置において、前記埋込手段は、前記複数の係数組のうち、前記電子透かし情報を埋め込む前における各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を2組以上決定することを特徴とする。
【0021】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込装置によれば、各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組が2組以上決定されるため、電子透かしの埋込み量を増大させることができる。
【0022】
本発明の請求項7に係る電子透かし埋込装置は、請求項1に係る電子透かし埋込装置において、前記電子透かし情報は、該電子透かし情報が埋め込まれる対象のブロックについての画像特徴データを含むことを特徴とする。
【0023】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込装置によれば、電子透かし情報には、その電子透かし情報が埋め込まれる対象のブロックの特徴データを含むため、原画像等コンテンツの改ざん検知の検出精度を向上させることができる。
【0024】
本発明に係る電子透かし埋込方法は、デジタル画像データを所定の大きさのブロックに分割し、分割して得られたブロックごとの画像データを、該ブロックごとに空間周波数成分に変換し、得られた前記空間周波数成分に対応した係数のうち、前記各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、前記デジタル画像データに電子透かし情報を埋め込むことを特徴とする。
【0025】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込方法によれば、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、電子透かし情報を埋め込むため、大きな性能劣化やコストアップを伴うことなく、JPEGアルゴリズムなどの再圧縮処理に対する耐性を向上させることができる。
【0026】
本発明の請求項9に係る電子透かし埋込方法は、請求項8に係る電子透かし埋込方法において、前記係数を、量子化テーブルを規定する要素の値に基づいて、2つ選択することを特徴とする。
【0027】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込方法によれば、係数が、量子化テーブルを規定する要素の値に基づいて2つ選択されるため、再圧縮処理に対する耐性をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明の請求項10に係る電子透かし埋込方法は、請求項9に係る電子透かし埋込方法において、前記係数を、量子化テーブルを規定する要素のうち、同一の値を有する互いに異なる2つの要素にそれぞれ対応したものを2つ選択することを特徴とする。
【0029】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込方法によれば、係数が、量子化テーブルを規定する要素のうち、同一の値を有する互いに異なる2つの要素にそれぞれ対応したものとして2つ選択されるため、再圧縮処理に対する耐性をさらに向上させることができる。
【0030】
本発明の請求項11に係る電子透かし埋込方法は、請求項8に係る電子透かし埋込方法において、前記大小の比較対象となる2つの係数からなる係数組を複数組選択することを特徴とする。
【0031】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込方法によれば、大小の比較対象となる2つの係数からなる係数組が複数組選択されるため、埋め込まれる電子透かしの情報量と、埋込みによる原画像の劣化とのバランスを調整することができる。
【0032】
本発明の請求項12に係る電子透かし埋込方法は、請求項11に係る電子透かし埋込方法において、前記複数の係数組のうち、前記電子透かし情報を埋め込む前における各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を1組決定することを特徴とする。
【0033】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込方法によれば、各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組が1組決定されるため、電子透かしの埋込みによる原画像の劣化を最小限に抑えることができる。
【0034】
本発明の請求項13に係る電子透かし埋込方法は、請求項11に係る電子透かし埋込方法において、前記複数の係数組のうち、前記電子透かし情報を埋め込む前における各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を2組以上決定することを特徴とする。
【0035】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込方法によれば、各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組が2組以上決定されるため、電子透かしの埋込み量を増大させることができる。
【0036】
本発明の請求項14に係る電子透かし埋込方法は、請求項8に係る電子透かし埋込方法において、前記電子透かし情報は、該電子透かし情報が埋め込まれる対象のブロックについての画像特徴データを含むことを特徴とする。
【0037】
このように構成された本発明に係る電子透かし埋込方法によれば、電子透かし情報には、その電子透かし情報が埋め込まれる対象のブロックの特徴データを含むため、原画像等コンテンツの改ざん検知の検出精度を向上させることができる。
【0038】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係るいずれかの電子透かし埋込装置を備え、または本発明に係るいずれかの電子透かし埋込方法を用いたことを特徴とする。
【0039】
ここで、画像形成装置としては、例えば、デジタルカメラ、ファクシミリ、複写機、カメラ付き携帯電話機、カメラ付き携帯情報端末装置などであるが、その他の装置においても、カメラ機能を有し、画像データを取得することができるものであれば、適用することができる。
【0040】
このように構成された本発明に係る画像形成装置によれば、形成された画像情報に対して、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、電子透かし情報を埋め込むため、大きな性能劣化やコストアップを伴うことなく、JPEGアルゴリズムなどの再圧縮処理に対する耐性を向上させることができる。
【0041】
本発明の電子透かし埋込みのアルゴリズムの処理はシンプルであるため処理は軽く、したがって、デジタルカメラなどの携帯型の画像形成装置に適用した場合には特に、上述した本発明に係る画像形成装置の効果を顕著に発揮させることができる。
【0042】
デジタルカメラの場合には、連写性能や記録媒体への記録時間を大きく損なうことなく、低コストで、デジタルカメラに好適な電子透かし情報の埋込みを行うことができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る電子透かし埋込装置及び電子透かし埋込方法によれば、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、電子透かし情報を埋め込むため、大きな性能劣化やコストアップを伴うことなく、JPEGアルゴリズムなどの再圧縮処理に対する耐性を向上させることができる。
【0044】
本発明に係る画像形成装置によれば、形成された画像情報に対して、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、電子透かし情報を埋め込むため、大きな性能劣化やコストアップを伴うことなく、JPEGアルゴリズムなどの再圧縮処理に対する耐性を向上させることができる。本発明の電子透かし埋込みのアルゴリズムの処理はシンプルであるため処理は軽く、したがって、デジタルカメラなどの携帯型の画像形成装置に適用した場合には特に、上述した本発明に係る画像形成装置効果を顕著に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明に係る画像形成装置の最良の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0046】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態としてのデジタルスチルカメラ1を表すブロック図である。以下、このデジタルスチルカメラ1により、デジタル画像データのブロックごとの空間周波数成分に対応した係数(DCT係数)のうち複数の係数組に、電子透かし情報としての撮影日時情報を埋め込む例(実施例1)と、各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を1組決定(差分が最も小さい1組を決定)し、この決定された係数組に他の係数の特徴情報を埋め込む例(実施例2)とについて説明する。
【0047】
図1に示したデジタルスチルカメラ1は、デジタルスチルカメラ1全体の制御を行うために設けられたCPU、フラッシュメモリ、SDRAM、タイマ等からなるシステム制御部2と、撮像のために設けられた、光学系部品(レンズおよびレンズ駆動モータ)、CCD、CCD駆動回路、A/D変換器等からなる撮像部3と、撮像部3で得られた画像信号に種々の画像処理を施すとともに、撮像部3のCCD駆動タイミング、レンズ駆動モータを制御して、ズーミング、フォーカシング、露出調整等を行い、また、画像のJPEG圧縮およびJPEG伸長を行うために設けられた画像処理用LSI、メモリ等からなる画像処理部4と、画像を表示し、また、ユーザーインターフェイスのためのグラフィックを表示するために設けられたLCD6と、画像処理部4で処理された画像信号をLCD6へ表示するための信号処理を行い、また、ユーザーインターフェイスのための種々のグラフィック画像を生成し、LCD6へ表示するために設けられたD/A変換器、オンスクリーンディスプレイコントローラ等からなる表示制御部5と、記録メディアとのインターフェイスのために設けられたメモリカードコントローラ等からなる記録メディアインターフェイス部7と、圧縮された画像信号や画像に纏わる種々の情報を記憶するために設けられた、フラッシュメモリ等からなる、デジタルスチルカメラ装置1から着脱可能な記録メディア8と、図示されていないキー、ダイアル等のユーザーインターフェイスの状態検出を行い、またメインCPUへの主電源制御を行うために設けられたサブCPU等からなるハードキーインターフェイス部9と、各種通信モジュールを接続してデータ通信を行うために設けられた、通信カードコントローラ等からなる、通信インターフェイス部9と、デジタルスチルカメラ1をUSBで接続し、デジタルスチルカメラ1からの画像を転送して再生する画像再生装置11とを備えている。
【0048】
まず、従来の撮影動作について説明する。使用者は、撮影に先立って、図示されていない種々のキーやダイヤルを操作して、撮影動作モード(連写撮影モード、通常撮影モード等)を決定する。使用者による操作内容は、ハードキーインターフェイス部9を通じて、システム制御部2により判別される。
【0049】
システム制御部2は、操作に応じて、表示制御部5にガイダンスグラフィックを生成して、利用者に次の操作を促す。
【0050】
システム制御部2は、撮影動作モードが決定されると、画像処理部4に対して、モードに応じた処理パラメータを設定する。
【0051】
撮影の準備が整った後、システム制御部2は、撮像部3および画像処理部4を起動し、撮像部3は画像処理部4からの制御に従い、実際の撮影に先だって、モニタリング画像を表示するための撮像動作を開始する。
【0052】
そして、撮像された画像データは連続的に画像処理部4へ送られ、画像処理部4は画像データに対して、色空間変換、ガンマ補正、ホワイトバランス調整などの処理を施した後、表示制御部5へ送る。
【0053】
また、このとき同時に、画像処理部4は、露出の検出を行い、撮像部3を制御して調整を行う。
【0054】
表示制御部5は、画像データを信号処理して、この画像データに対応した可視画像としてLCD6に表示し、利用者に撮像状態を提示する。
【0055】
図示されていないレリーズボタンの半押し状態が検出されると、その操作はモード設定と同様にしてハードキーインターフェイス部9を通じてシステム制御部2で判別される。
【0056】
システム制御部2は、画像処理部4を制御し、画像処理部4はモニタリング画像からオートフォーカス(AF)制御のための評価値を抽出し、所定のアルゴリズムに従って撮像部3を制御してフォーカス調整を行う。
【0057】
図示されていないズームボタンが押されると、その操作は同様にしてハードキーインターフェイス部9を通じてシステム制御部2により判別される。システム制御部2は、撮像部3を制御して、入力された方向へのズーム動作を行なわせる。
【0058】
図示されていないレリーズボタンが押されると、その操作は同様にしてハードキーインターフェイス部9を通じてシステム制御部2で判別される。システム制御部2は、設定されている撮影動作モードにしたがい、画像処理部4を制御して撮影動作を開始する。
【0059】
撮像部3は、画像処理部4からの制御にしたがって所定の画像を取り込み、これを画像処理部4へ送り、画像処理部4は、撮影動作モードに応じた画像処理、圧縮処理を行う。
【0060】
またこのとき、画像データから縮小画像データを生成、圧縮してサムネイルデータも作成する。
【0061】
通常の撮影動作モードの場合には、1フレーム分の画像の取込みと処理で終了する。連写モードの場合には、レリーズボタンの解除が検出されるまで、所定のフレームレートで画像の取込みと処理を繰り返し行う。
【0062】
システム制御部2は、圧縮された画像データおよびサムネイルデータを読み出し、さらにヘッダー情報を付加した後、記録メディアインターフェイス部7を通じて記録メディア8へ書き込む。なお、ヘッダー情報には、選択された撮影動作モードの情報や撮影日時の情報等が含まれている。以上で一連の撮影動作を完了する。
【0063】
次に、画像処理部4の詳細な構成について、図2を参照して説明する。
【0064】
画像処理部4は、システム制御部2の指示により、前述した各種駆動信号を撮像部3へ送出する撮像制御部100と、撮像部3からの画像信号を受け取り、システム制御部2からの設定に基づいて、前述した色空間変換、ガンマ補正、ホワイトバランス調整などの処理を行う画像変換部101と、JPEG圧縮処理を行うJPEGエンコーダ102と、JPEG伸長処理を行うJPEGデコーダ103と、各モジュールからのアクセスを調停しながら、メモリ105へのアクセスを行うメモリコントローラ104と、画像データ、符号データを蓄積するメモリ105とを備えた構成である。
【0065】
さらに、JPEGエンコーダ102は、図3に示すように、画像データを垂直方向8画素×水平方向8画素の大きさ(64画素)のブロックに分割し、得られたブロックごとの画像データを、該ブロックごとに空間周波数成分に変換すべくDCT変換を行い、DCT係数を求めるDCT変換処理部200(ブロック分割手段および周波数変換手段)と、DCT係数に対して、所定の量子化テーブルにしたがって量子化処理を施す量子化処理部201と、量子化された係数をハフマンテーブルに基づいてハフマン符号化(可変長符号化)するハフマン符号化処理部202とを備えている。
【0066】
なお、ブロック毎の画像データのメモリ105からの読み出しは、システム制御部2によって設定された画像データの配置情報(各色成分(Y,U,V)の先頭アドレス、水平サイズ、垂直サイズ)に基づいて、メモリコントローラ104により行われる。
【0067】
また、ハフマン符号化処理部202において、各係数はジグザグスキャン順に符号化され、符号化されたデータのメモリ105への書出しは、システム制御部2によって設定された先頭アドレスに基づいて、メモリコントローラ104によりバイト単位で行われる。
【実施例1】
【0068】
本実施例1においては、上述したJPEGエンコーダ102が図4に示したJPEGエンコーダ102′(電子透かし埋込装置)として構成されており、電子透かし情報を画像データに埋め込む透かし埋込処理部303(埋込手段)を有している。なお、DCT変換処理部300は図3に示したDCT変換処理部200と、量子化処理部301は図3に示した量子化処理部201と、ハフマン符号化処理部302は図3に示したハフマン符号化処理部202と、それぞれ対応している。
【0069】
この透かし埋込処理部303は、システム制御部2によって設定された埋込情報(電子透かし情報)を、画像データを量子化して得られた係数値に埋め込むものであり、DCT係数のうち、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて埋め込む。
【0070】
以下、この動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0071】
システム制御部2は、システムバスを経由して、量子化処理を行う際の量子化テーブルを量子化処理部301へ設定する(ステップ500)。ここで量子化テーブルは、予めシステム内で持っている図8に示したようなテーブルの値を、一律に一定の比率で変換したものある。なお、8ビットで表現されるため、変換結果が0の場合には1に、256以上の場合には255に、丸めを行う。
【0072】
その変換の比率は、出力される符号化データ量が所定の値になるように、撮影ごとにプレ圧縮を行うことにより求められる。システム制御部2は、システムバスを経由して、電子透かし情報の埋込みを行う係数位置を、透かし埋込処理部303が設定する(ステップ501)。
【0073】
ここで、透かし埋込処理部303は、埋込みを行う係数位置として、前述した量子化テーブル中の量子化値が同一の値となる位置を複数設定する。すなわち、例えば、図8に示すものでは、値がいずれも「56」である○印の係数組の位置700,700、値がいずれも「64」である□印の係数組の位置701,701、値がいずれも「87」である△印の係数組の位置702,702を、埋込位置として設定する。
【0074】
システム制御部2は、システムバスを経由して、埋め込む電子透かし情報を透かし埋込処理部303に設定する(ステップ502)。本実施例1においては、この電子透かし情報は、例えば撮影日時情報である。
【0075】
システム制御部2は、メモリコントローラ104を設定し、メモリコントローラ104は、8画素×8画素のブロックごとに、画像データをメモリ105からDCT変換処理部300へ転送する(ステップ503)。
【0076】
DCT変換処理部300は、DCT変換を行い、変換係数を量子化処理部301へ転送する(ステップ504)。
【0077】
量子化処理部301は、設定されている量子化テーブルに基づいて変換係数を量子化し、量子化された係数を透かし埋込処理部303に転送する(ステップ505)。
【0078】
透かし埋込処理部303は、設定されている埋込み位置に電子透かし情報を埋め込み、結果をハフマン符号化処理部302に転送する(ステップ506)。
【0079】
ここで埋込処理は、埋込情報を1ビットづつ順次埋め込んでいき、
・電子透かし情報のビットが1の時:○印1の係数=○印2の係数+1
・電子透かし情報のビットが0の時:○印1の係数=○印2の係数−1
として、他の係数組(□印、△印)にも、各々1ビットの情報を同様に埋め込む。
【0080】
なお、埋込情報が最後のビットに達した際には、先頭のビットに戻り、同じ情報を繰り返し埋め込む。
【0081】
ハフマン符号化処理部302は、設定されているハフマンテーブルに基づき、係数をハフマン符号化し、この符号化されたものは、メモリコントローラ104によってメモリ105に転送される(ステップ507)。ここで、ハフマンテーブルは、システム起動時に予め設定されているものとする。
【0082】
以上の処理を、全ての画像データに対して各ブロックごとに行い、全てのブロックの処理が完了すると、処理は終了する(ステップ508)。
【0083】
このように、本実施形態に係る電子透かし埋込装置(JPEGエンコーダ102′)によれば、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、電子透かし情報を埋め込むため、大きな性能劣化やコストアップを伴うことなく、その後の圧縮処理等に対する耐性を向上させることができる。
【0084】
また、量子化テーブルを規定する要素のうち、同一の値を有する互いに異なる2つの要素にそれぞれ対応した係数を2つ選択するため、再圧縮処理に対する耐性をさらに向上させることができる。
【0085】
さらに、2つの係数からなる係数組を複数組選択することにより、埋め込まれる電子透かしの情報量と、埋込みによる原画像の劣化とのバランスを調整することができる。
【0086】
また、電子透かし情報が埋め込まれる対象のブロックについての画像特徴データを含むため、原画像の改ざん検知の検出精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0087】
本実施例2においては、上述したJPEGエンコーダ102が図5に示したJPEGエンコーダ102″として構成されており、電子透かし情報を生成する透かし情報生成部403および生成された電子透かし情報を画像データに埋め込む透かし埋込処理部404(埋込手段)を有している。なお、DCT変換処理部400は図3に示したDCT変換処理部200と、量子化処理部401は図3に示した量子化処理部201と、ハフマン符号化処理部402は図3に示したハフマン符号化処理部202と、透かし埋込処理部404は図4に示した透かし埋込処理部303と、それぞれ対応している。
【0088】
透かし情報生成部403は、量子化された係数値から、透かし情報を生成し、透かし埋込処理部404は、そのように生成された透かし情報を、量子化された係数値に埋め込むものであり、DCT係数のうち、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、画像データに電子透かし情報を埋め込む。
【0089】
以下、この動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0090】
システム制御部2は、システムバスを経由して、量子化処理を行う際の量子化テーブルを量子化処理部401、透かし埋込処理部402、および透かし情報生成部403に設定する(ステップ600)。ここで量子化テーブルは、予めシステム内で持っている図8に示したようなテーブルの値を、一律に一定の比率で変換したものある。なお、8ビットで表現されるため、変換結果が0の場合には1に、256以上の場合には255に、丸めを行う。
【0091】
システム制御部2は、メモリコントローラ104を設定し、メモリコントローラ104は、8画素×8画素のブロックごとに画像データをメモリ105からDCT変換処理部400へ転送する(ステップ601)。
【0092】
DCT変換処理部400は、DCT変換を行い、変換係数を量子化処理部401へ転送する(ステップ602)。量子化処理部401は、設定されている量子化テーブルに基づき、変換係数を量子化し、量子化された係数を透かし情報生成部403、および透かし埋込処理部404に転送する(ステップ603)。
【0093】
透かし埋込処理部404は、転送された係数に基づき、埋込位置を決定する(ステップ604)。埋込位置の決定は、
1)量子化テーブルの、予め設定されている範囲(図8における範囲703)内において、同一の量子化値を持つ係数位置のペアを検索し、
2)検索して得られた係数組の各位置の量子化後の係数値の差の絶対値が最小となる係数組、
という条件に基づいて行われる。
【0094】
並行して、透かし情報生成部403は、転送された係数に基づき、埋め込む電子透かし情報を生成して、透かし埋込処理部404に転送する(ステップ605)。
【0095】
ここで埋込情報の生成は、あらかじめ設定されている範囲(図8における範囲704)内において、量子化された係数値×量子化値を演算し、下位4ビットをマスクした値Pi(i=0〜9)の各ビットをEORして得られた結果を、埋込み情報である電子透かし情報として設定する。
【0096】
Pi=(KixQi)&0xfff0
(ただし、Kiは量子化された係数値、Qiは量子化値)
透かし埋込処理部404は、ステップ604で決定した埋込位置に埋込情報を埋め込み、結果をハフマン符号化処理部402へ転送する(ステップ606)。ここで埋込処理は、実施例1と同じである。
【0097】
ハフマン符号化処理部402は、設定されているハフマンテーブルに基づき、係数をハフマン符号化し、結果はメモリコントローラ104によりメモリ105へ転送される(ステップ607)。ここで、ハフマンテーブルは、システム起動時に予め設定されているものとする。
【0098】
以上の処理を、全ての画像データに対して、各ブロックごとに行い、全てのブロックの処理が完了すると、処理は終了する(ステップ608)。
【0099】
このように、本実施形態に係る電子透かし埋込装置(JPEGエンコーダ102″)によれば、各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、電子透かし情報を埋め込むため、大きな性能劣化やコストアップを伴うことなく、その後の圧縮処理等に対する耐性を向上させることができる。
【0100】
また、量子化テーブルを規定する要素のうち、同一の値を有する互いに異なる2つの要素にそれぞれ対応した係数を2つ選択するため、再圧縮処理に対する耐性をさらに向上させることができる。
【0101】
さらに、2つの係数からなる係数組を複数組設定し、これらのうちから、2つの係数の値の差分が最小のものを1組選択することにより、電子透かし情報の埋込みによる原画像の劣化を最小限に抑えることができる。
【0102】
また、電子透かし情報が埋め込まれる対象のブロックについての画像特徴データを含むため、原画像の改ざん検知の検出精度を向上させることができる。
【0103】
なお、上述した各実施例1,2においては、色成分に拘わらず、全てのブロックに対して情報を埋め込む例であるが、目的に応じて特定の色成分にのみ埋込みを行ってもよい。
【0104】
また、実施例1,2においては、量子化後の係数からブロックの特徴データを算出する例を示したが、量子化前のデータ、あるいは画像データから算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態としてのデジタルスチルカメラを表すブロック図である。
【図2】図1に示したデジタルスチルカメラにおける画像処理部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した画像処理部における、従来の一般的なJPEGエンコーダの詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】実施例1におけるJPEGエンコーダの詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】実施例2におけるJPEGエンコーダの詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】実施例1の処理を示すフローチャートである。
【図7】実施例2の処理を示すフローチャートである。
【図8】量子化テーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0106】
102′JPEGエンコーダ(電子透かし埋込装置)
300 DCT変換処理部(周波数変換手段)
301 量子化処理部
302 ハフマン符号化処理部
303 透かし埋込処理部(埋込手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル画像データを所定の大きさのブロックに分割するブロック分割手段と、
前記ブロック分割手段によって分割して得られたブロックごとの画像データを、該ブロックごとに空間周波数成分に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段によって得られた空間周波数成分に対応した係数のうち、前記各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、前記デジタル画像データに電子透かし情報を埋め込む埋込手段とを備えたことを特徴とする電子透かし埋込装置。
【請求項2】
前記埋込手段は、前記係数を、量子化テーブルを規定する要素の値に基づいて、2つ選択することを特徴とする請求項1に記載の電子透かし埋込装置。
【請求項3】
前記埋込手段は、前記係数を、量子化テーブルを規定する要素のうち、同一の値を有する互いに異なる2つの要素にそれぞれ対応したものを2つ選択することを特徴とする請求項2に記載の電子透かし埋込装置。
【請求項4】
前記埋込手段は、前記大小の比較対象となる2つの係数からなる係数組を複数組選択することを特徴とする請求項1に記載の電子透かし埋込装置。
【請求項5】
前記埋込手段は、前記複数の係数組のうち、前記電子透かし情報を埋め込む前における各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を1組決定することを特徴とする請求項4に記載の電子透かし埋込装置。
【請求項6】
前記埋込手段は、前記複数の係数組のうち、前記電子透かし情報を埋め込む前における各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を2組以上決定することを特徴とする請求項4に記載の電子透かし埋込装置。
【請求項7】
前記電子透かし情報は、該電子透かし情報が埋め込まれる対象のブロックについての画像特徴データを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子透かし埋込装置。
【請求項8】
デジタル画像データを所定の大きさのブロックに分割し、
分割して得られたブロックごとの画像データを、該ブロックごとに空間周波数成分に変換し、
得られた前記空間周波数成分に対応した係数のうち、前記各ブロック内においてそれぞれ選択された2つ以上の係数の大小関係に基づいて、前記デジタル画像データに電子透かし情報を埋め込むことを特徴とする電子透かし埋込方法。
【請求項9】
前記係数を、量子化テーブルを規定する要素の値に基づいて、2つ選択することを特徴とする請求項8に記載の電子透かし埋込方法。
【請求項10】
前記係数を、量子化テーブルを規定する要素のうち、同一の値を有する互いに異なる2つの要素にそれぞれ対応したものを2つ選択することを特徴とする請求項9に記載の電子透かし埋込方法。
【請求項11】
前記大小の比較対象となる2つの係数からなる係数組を複数組選択することを特徴とする請求項8に記載の電子透かし埋込方法。
【請求項12】
前記複数の係数組のうち、前記電子透かし情報を埋め込む前における各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を1組決定することを特徴とする請求項11に記載の電子透かし埋込方法。
【請求項13】
前記複数の係数組のうち、前記電子透かし情報を埋め込む前における各係数組に含まれる2つの係数の値の差分に応じて、該電子透かし情報が埋め込まれる係数組を2組以上決定することを特徴とする請求項11に記載の電子透かし埋込方法。
【請求項14】
前記電子透かし情報は、該電子透かし情報が埋め込まれる対象のブロックについての画像特徴データを含むことを特徴とする請求項8に記載の電子透かし埋込方法。
【請求項15】
請求項1から8のうちいずれか1項に記載の電子透かし埋込装置を備え、または請求項9から14のうちいずれか1項に記載の電子透かし埋込方法を用いたことを特徴とする画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−295573(P2006−295573A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114056(P2005−114056)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】