説明

電子部品およびプリント基板

【課題】発熱に応じて不可逆に絶縁することで保護し、かつ、発熱の発生を視認可能な過熱防止機能つき電子部品および過熱防止機能つき電子部品を実装されたプリント基板を提供する。
【解決手段】電子回路において固有の機能を有する部品である素子と、所定の温度に達すると膨張する熱膨張部材とを一体に、電子部品を構成する。形成された回路パターンに、固有の機能を有する部品である素子が実装されることで所定の電子回路を構成するプリント基板を、所定の温度に達すると膨張する熱膨張部材がプリント基板との間に配置されるように素子が実装されるよう、構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に表面実装される過熱保護機能つき電子部品、および、過熱保護機能つき電子部品を実装されたプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路で一般的に使用されているコンデンサは、クラック等の原因により短絡すると大電流が流れて発熱し、周辺部品や装置の破壊を招く場合がある。
【0003】
特許文献1には、温度上昇に応じて抵抗値が増大する過電流・過熱保護素子を配備することにより、短絡時に安定性良く保護されるセラミックコンデンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−176695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコンデンサを用いると、短絡によりコンデンサに流れる電流量が大きくなったときに、電流による発熱に応じて過電流・過熱保護素子の抵抗値が増大するため、それ以上に電流量が大きくなることを防ぐことができる。電流量が制限されるため、過電流による発熱量も制限され、周辺部品や装置の破壊を防ぐことができる。
【0006】
しかし、電流による発熱に応じて抵抗値が増大する過電流・過熱保護素子によって電流制限を行うため、電流制限によって発熱量が減少すると再び抵抗値が下がり、電流値が増大して発熱することとなる。過電流から生ずる発熱を短期的には適格に制御しているが、長期的に見ると通常動作時を超える電流値が流れ、通常動作時を超えた温度となっているため、周辺部品に悪影響を与え、動作不良の原因となる。
【0007】
また、過電流・過熱保護素子によって過電流・過熱を保護した場合、かかる機能が発揮されたことを基板上で確認することができないため、過電流・過熱の原因の特定が容易ではない。
【0008】
そこで、本発明は、発熱に応じて不可逆に絶縁することで保護し、かつ、発熱の発生を視認可能な過熱防止機能つき電子部品および過熱防止機能つき電子部品を実装されたプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子部品は、電子回路において固有の機能を有する部品である素子と、所定の温度に達すると膨張する熱膨張部材とを一体に構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のプリント基板は、形成された回路パターンに、固有の機能を有する部品である素子が実装されることで所定の電子回路を構成するプリント基板であって、所定の温度に達すると膨張する熱膨張部材がプリント基板との間に配置されるように素子が実装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発熱に応じて不可逆に絶縁することで保護し、かつ、発熱の発生を視認可能な過熱防止機能つき電子部品および過熱防止機能つき電子部品を実装されたプリント基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の過熱防止機能つきコンデンサの構造を示す図である。
【図2】本実施形態の過熱防止機能つきコンデンサが、プリント基板上に表面実装された図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本実施形態は、プリント基板に表面実装される過熱防止機能つきコンデンサである。
【0014】
図1は、本実施形態の過熱防止機能つきコンデンサの構造を示す図である。図1を参照すると、過熱防止機能つきコンデンサは、素子1、熱膨張部材2および電極3a、3bを有する。素子1は、電子回路において固有の機能を有する部品であって、本実施形態においてはコンデンサで構成されている。コンデンサは、静電容量によって電荷を蓄積し放出する素子であり、電気伝導体の表面に化学的に酸化皮膜による誘電体層を形成して電解液に浸した電解コンデンサや電気伝導体と誘電体とを交互に重ねた積層コンデンサなどで構成できる。
【0015】
熱膨張部材2は、温度が上昇して所定の温度に達すると膨張する部材である。熱膨張部材2は、所定の温度を沸点とする材料を、気密性および所定の温度で損傷しない耐熱性を有する袋に封入することで構成することができる。コンデンサがプリント基板に、220℃を融点とするハンダを使用して表面実装される場合、所定の温度とは約230℃程度である。この場合、例えば沸点が250℃の安息香酸や沸点が230℃のm−ニトロトルエンを、袋に封入する材料として使用することができる。また、袋としては、内容物の沸点以上の融点を有する素材、例えばポリエステル系やポリアミド系の合成繊維で構成することができる。袋は伸縮性を有するものでもよいし、伸縮性のない素材を折り畳んで構成してもよい。
【0016】
電極3a、3bは、コンデンサ本体1をプリント基板の回路パターンと電気的に接続するための導体である。
【0017】
図2は、本実施形態の過熱防止機能つきコンデンサが、プリント基板上に表面実装された図である。まず、図2(a)は、過熱防止機能つきコンデンサがプリント基板上に表面実装された状態を示している。図2(a)を参照すると、過熱防止機能つきコンデンサは、熱膨張部材2が素子1とプリント基板4との間に配置されるような状態で、ハンダ5a、5bによって電極3a、3bでプリント基板上に実装されている。
【0018】
図2(b)は、素子1の短絡による過電流等の原因によって熱が発生し、ハンダ5a、5bの温度が融点を超えた状態を示している。図2(b)を参照すると、発生した熱によってハンダ5a、5bの温度が融点を超え、融解している。
【0019】
図2(c)は、(b)からさらに温度が上昇し、熱膨張部材2の膨張温度を超えた状態を示している。図2(c)を参照すると、熱膨張部材2が膨張して素子1をプリント基板4の上方に持ち上げており、一方の電極3bのハンダ5bとの接続が外れている。図2(c)では、もう一方の電極3aとハンダ5aとの接続が維持されているが、両方外れても本発明の実施には影響ない。
【0020】
図2(d)は、(c)で素子1とプリント基板4との接続が外れて熱の発生がなくなり、温度が下がった状態を示している。図2(d)を参照すると、熱膨張部材2は温度が下がったため収縮している。また、一方の電極3aとハンダ5aとは、ハンダ5aの温度が下がって凝固するため、もう一方の電極3bが持ち上がった状態で固定される。なお、図2(c)の状態で両方の電極3a、3bがともに熱膨張部材2の膨張によってプリント基板4と接続されなくなった場合、素子1がプリント基板4に対して斜め上方に押し上げられたり回転したりするため、電極3a、3bがハンダ5a、5bと再接続されることは困難であり、無視することができる。
【0021】
以上説明したように、本実施形態の過熱防止機能つきコンデンサによれば、コンデンサ短絡による過電流などによる温度上昇から周辺部品を適切に保護することができ、また、保護された後を外観から容易に確認することができる。
【0022】
素子1がコンデンサで構成された本実施形態を説明したが、本発明において素子1はコンデンサに限定されず、抵抗、コイル、ダイオード、LSIなど、プリント基板に実装される電子部品であれば同様に実施可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 コンデンサ本体
2 熱膨張部材
3a、3b 電極
4 プリント基板
5a、5b ハンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路において固有の機能を有する部品である素子と、所定の温度に達すると膨張する熱膨張部材とを一体に構成した電子部品。
【請求項2】
前記所定の温度が、前記電子回路を構成するプリント基板に前記素子を接続するための接続部材の融点よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記熱膨張部材が、前記所定の温度を沸点とする物質を袋に封入することで構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記素子が、静電容量によって電荷を蓄積し放出するコンデンサであることを特徴とする、請求項1ないし3に記載の電子部品。
【請求項5】
形成された回路パターンに、固有の機能を有する部品である素子が実装されることで所定の電子回路を構成するプリント基板であって、
所定の温度に達すると膨張する熱膨張部材が該プリント基板との間に配置されるように前記素子が実装されていることを特徴とする、プリント基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−77234(P2011−77234A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226072(P2009−226072)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】