説明

電子部品の固定構造

【課題】プリント配線基板上に固定されるL型リードを有する電子部品の浮き上がりを容易且つ確実に防止することのできる電子部品の固定構造を提供する。
【解決手段】L型リード2aを有する電子部品2をプリント配線基板1上に固定する構造であって、電子部品2のL型リード2aをプリント配線基板1のリード挿通孔1bに挿通し、基板1の開口1aに挿着した差込み片3を電子部品2のリード2a側の端面に当接させた構成とする。基板1の開口1aに挿着した差込み片3を電子部品2のリード2a側の端面に当接させるという簡単な作業で、電子部品2の端面は常に基板1に対して垂直の関係(電子部品2は基板1に対して平行の関係)を保ったまま固定され、振動などによって電子部品2の後側が浮き上がるのを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板上に電子部品を固定する構造に関し、更に詳しくは、L型リードを有する電子部品の浮き上がりを防止する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板上に実装されるリード線を有する電解コンデンサなどの電子部品は、リード線を折り曲げないで電子部品を直立させて実装すると高さが嵩むので、リード線を90°折り曲げて電子部品を横向きに実装することが多い。
【0003】
このように、リード線を90°折り曲げて電子部品を横向きに実装すると、作業者の実装のバラツキや半田DIP槽で半田付けする際の振動などによって、電子部品の後側(リード線の反対側)が基板面より浮いてしまうという問題があった。また、電子部品が基板面にピッタリ接していても、その後のセット実機の振動や落下などによって電子部品が基板面から浮いたり、半田部のパターンが剥げたりするという問題があった。そのため、電子部品のリード線側と反対側部分を接着剤で固定しているが、このような固定手段は手間がかかるので好ましいものではない。
【0004】
一方ケース内に配置される主基板と、該主基板に直立させる蛍光表示器と、該表示器の背面を支持する倒れ防止部材とからなる電子機器の倒れ防止構造(特許文献1)や、コの字状の本体部を有する倒れ防止部材と、該倒れ防止部材が貫通して半田付けされるスリット部からなる、回路基板上に立設されたコンデンサ部品の倒れを防止する部品倒れ防止構造(特許文献2)が知られている。
【0005】
上記特許文献1,2の発明は、運搬時の衝撃等の外的応力により、プリント配線基板上に配置された電子部品の倒れや破損を防止できるようになっている。
【0006】
また、一対のリード端子を同一方向に引き出してなる電解コンデンサ本体と、該リード端子を保持する保持部材とを備えた電解コンデンサ(特許文献3)や、一対のリード端子を同一方向に引き出してなる電解コンデンサにおける一対のリード端子が突出している側に、電解コンデンサ本体の外周に嵌合する嵌合部と、一対のリード端子を貫通させる貫通部と、一対のリード端子を保持するL字型の保持部が設けられたリード端子保持部材を取付けた電解コンデンサのリード端子保持装置(特許文献4)なども提案されている。
【0007】
上記特許文献3,4の発明は、電解コンデンサ本体から同一方向に引き出されたリード端子の変形を阻止することで、電解コンデンサをプリント配線基板へスムーズに自動実装することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−335535号公報
【特許文献2】特開2007−227542号公報
【特許文献3】特開平08−097090号公報
【特許文献4】特開平08−064478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1,2の発明は、電子部品の倒れや破損を防止するためのものであって、L型リードを有する電子部品の浮き上がりを防止するものではない。
また、上記特許文献3,4の発明も、電解コンデンサのリード端子を保護して自動実装をスムーズに行なうことはできるが、これらの発明もまた、L型リードを有する電解コンデンサなどの電子部品の浮き上がりを防止することはできない。
【0010】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、熟練者でなくても、プリント配線基板上に固定されるL型リードを有する電子部品の浮き上がりを容易且つ確実に防止することのできる電子部品の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る電子部品の固定構造は、L型リードを有する電子部品をプリント配線基板上に固定する構造であって、電子部品のL型リードをプリント配線基板のリード挿通孔に挿通し、基板の開口に挿着した差込み片を電子部品のリード側の端面に当接させたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の電子部品の固定構造においては、基板の他の開口に挿着した他の差込み片を電子部品のリード側の端面と反対側の端面に当接させることが好ましい。また、上記差込み片が垂直辺と斜辺を備えた楔形をしており、その差込み片の垂直辺を電子部品の端面に当接させることが好ましく、上記プリント配線基板に、楔形の差込み片を挿着する開口を電子部品の端面と直角方向に細長く形成し、その一端を電子部品の端面より内側に延設することがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子部品の固定構造のように、電子部品のL型リードをプリント配線基板のリード挿通孔に挿通し、基板の開口に挿着した差込み片を電子部品のリード側の端面に当接させると、電子部品の端面は差込み片により規制されて基板に対して垂直の関係(電子部品は基板に対して平行の関係)を保ったまま固定される。従って、半田DIP槽で半田付けする際の振動やセット実機での振動などによる電子部品の浮き上がりを確実に防止でき、また、セット実機での落下によって半田部のパターンが剥げる心配も解消できる。しかも、この固定作業は、電子部品のL型リードを基板に穿孔されたリード挿通孔に挿通し、基板の開口に差込み片を上方から挿着するという簡単且つ統一された作業で実行することができるので、熟練者でなくても電子部品の浮き上がりを容易且つ確実に防止することができる。
【0014】
また、基板の他の開口に挿着した他の差込み片を電子部品のリード側の端面と反対側の端面に当接させた電子部品の固定構造は、電子部品の両端面を固定することで、電子部品の浮き上がりをより確実に防止することができるようになる。
【0015】
更に、上記差込み片が垂直辺と斜辺を備えた楔形をしており、その差込み片の垂直辺を電子部品の端面に当接させた電子部品の固定構造は、差込み片が楔形をしているので、その差込み片を開口に強く挿入するほど電子部品の端面が差込み片の垂直辺で押圧されて強固に固定され、電子部品の浮き上がりをより確実に防止することができる。また、差込み片が楔形であると、電子部品の形状や基板の開口形状のバラツキにより、電子部品と差込み片との密接性が良くない場合でも、差込み片を該開口に深く挿入することで対処することができる。
【0016】
また、上記プリント配線基板に、楔形の差込み片を挿着する開口を電子部品の端面と直角方向に細長く形成し、その一端を電子部品の端面より内側に延設した電子部品の固定構造は、楔形の差込み片をこの開口に挿着したときに、電子部品を内側に向って強く押圧する力が作用することになるので、電子部品の端面と差込み片の垂直辺がより強固に圧接して、電子部品の浮き上がりが皆無に等しくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の固定構造を示す斜視図である。
【図2】同固定構造を説明する概略断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る電子部品の固定構造を説明する概略断面図である。
【図4】同固定構造の差込み片を挿着する前の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0019】
図1に示す本発明の電子部品の固定構造は、プリント配線基板1(以下、単に基板1という。)の上にL型リード2aを有する電子部品2を固定する構造であって、2つの差込み片3,3を電子部品2の両端面に当接させて、電子部品2を強固に固定したものである。この基板1には、電子部品2のL型リード2aを挿通する円形のリード挿通孔1bが2つ穿孔されていると共に、差込み片3が挿着される方形の開口1aが、電子部品2のL型リード2a側の端面(以下、前側端面という。)近傍に2箇所と、そのL型リード2aの反対側の端面(以下、後側端面という。)近傍に2箇所の計4箇所設けられている。
【0020】
上記基板1上に固定される電子部品2は、図1、図2に示すように、円柱形をした電解コンデンサであって、その前側端面には一対のL型リード2a,2aが同一方向(電子部品2の前方向)に引き出されている。この電子部品2は、L型リード2a,2aを基板1のリード挿通孔1b,1bに挿通し、高さが嵩まないように横向きにして基板1に固定されるようになっている。
【0021】
基板1の開口1aに挿着され、電子部品2の端面に当接して電子部品2を固定する差込み片3は、図1に示すように、逆凹型をした板体であって、この差込み片3を基板1の開口1aに挿着した際に、電子部品2のL型リード2a,2aが干渉しないよう、逆U字型の切欠部3a,3aが設けられている。そして、その切欠部3a,3aよりも外側は下方に延設されて、差込み片3の下端と基板1の裏面とを半田4付けするための突出片3b,3bが形成されている。この差込み片3は、基板1を製作する際に発生する捨て基板を利用して形成されており、このように、捨て基板を利用して差込み片3を形成することで、廃棄物を減らせると共に生産コストを削減することができる。
【0022】
上記差込み片3を電子部品2の端面に当接させて固定するには、まず、図2の(a)に示すように、電子部品2のL型リード2aを基板1に穿孔されたリード挿通孔1bに挿通し、電子部品2を基板1の上に配置する。そして、図2の(b)に示すように、基板1の上方より差込み片3を電子部品2の前側端面に当接させながら、差込み片3の切欠部3aに電子部品2のL型リード2aを嵌め込むと共に、基板1の開口1aに差込み片3の突出片3bを挿入する。このように、差込み片3の突出片3bを基板1の開口1aに挿着すると、差込み片3が電子部品2の前側端面に当接して、電子部品2の端面が常に基板1に対して垂直の関係(電子部品2は基板1に対して平行の関係)が保たれたまま固定されるので、たとえ外力が作用したとしても、電子部品2の浮き上がりを防止することができる。
【0023】
電子部品2の端面に当接させる差込み片3は、電子部品2の前側端面、即ち、リード2a側の端面のみを規制するだけでも充分な固定作用を発揮するものではあるが、本実施形態では、より強固に電子部品2を固定する為に、図2の(c)に示すように、電子部品2の前側端面だけでなく、前側端面と反対側の端面(後側端面)の動きも、他の差込み片3によって規制している。このように、2つの差込み片3,3を電子部品2の両端面に当接させたのち、一対のL型リード2a,2aの先端部、2つの差込み片3,3の突出片3b,3b,3b,3bと、基板1の裏面とを半田4付けすることで電子部品2の実装作業は完了し、電子部品2の浮き上がりを確実に防止できる固定構造が出来上がる。
尚、電子部品2の後側端面にはL型リード2aが存在しないので、その後側端面に当接させる差込み片3には切欠部3aが存在しなくてもよい。
【0024】
図3は本発明の他の実施形態に係る電子部品の固定構造を説明する概略断面図、図4は同固定構造の差込み片を挿着する前の状態を示す平面図である。
【0025】
この実施形態の電子部品の固定構造は、前述した図1、図2に示す実施形態の電子部品の固定構造が、逆凹型形状の差込み片3の片面を電子部品2の両端面に当接させて固定しているのに対して、本実施形態の固定構造では、図3に示す差込み片30の垂直辺30aを電子部品2の端面に当接させて固定したものである。
【0026】
この差込み片30は、図3に示すように、垂直辺30aと斜辺30bとを備えた楔形の差込み片であって、図4に示すように、基板1には、これらの差込み片を挿着する開口10a,11aが、電子部品2の端面と直角方向に細長く形成されており、このうちの後側の開口11aは、その一端が電子部品2の後側端面より内側に喰い込むように延設されている。
【0027】
上記の楔形の差込み片30を用いて電子部品2を固定するには、図3の(a)に示すように、電子部品2のL型リード2aを基板1に穿孔されたリード挿通孔1bに挿通し、電子部品2を基板1の上に配置する。次に、図3の(b)に示すように、上方より一方の差込み片30の垂直辺30aを電子部品2の前側端面に当接させながら、差込み片30を開口10aに挿着すると共に、他方の差込み片30の垂直辺30aを電子部品2の後側端面に当接させながら開口11aに挿着し、双方の差込み片30,30の垂直辺30a,30aを電子部品2の両端面に圧接させて固定したのち、基板1の裏面より下方に突出した電子部品2のL型リード2a、差込み片30,30の下端部を半田4付けして電子部品2の固定作業が完了する。
尚、本実施形態では、2つの楔形の差込み片30,30の垂直辺30a,30aを電子部品2の両端面に当接させて固定しているが、差込み片30の垂直辺30aを少なくとも前側端面(L型リード2a側の端面)に当接させれば、その作用効果を奏することは言うまでもない。
【0028】
この実施形態の固定構造は、差込み片30が楔形をしているので、その差込み片30を開口10a,11aに深く挿着するほど電子部品2が強固に固定されて、電子部品2の浮き上がりを確実に防止することができる。また、差込み片30が楔形であると、電子部品2の形状や基板1の開口10a,11aの形状のバラツキによって、電子部品2と差込み片30との密接性が良くない場合でも、差込み片30の挿入深さを調節することで対処することができる。しかも、後側の開口11aを電子部品2の端面より内側に延設してあると、楔形の差込み片30を開口11aに挿入したときに、電子部品2を内側に向って強く押圧する力が作用することになるので、電子部品2の端面と差込み片30の垂直辺30aがより強固に圧接して、電子部品2の浮き上がりが皆無に等しくなる、といった顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0029】
1 プリント配線基板
1a,10a,11a 開口
1b リード挿通孔
2 電子部品(電解コンデンサ)
2a L型リード
3 差込み片
3a 切欠部
30 差込み片(楔形)
30a 垂直辺
30b 斜辺
4 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L型リードを有する電子部品をプリント配線基板上に固定する構造であって、
電子部品のL型リードをプリント配線基板のリード挿通孔に挿通し、基板の開口に挿着した差込み片を電子部品のリード側の端面に当接させたことを特徴とする電子部品の固定構造。
【請求項2】
基板の他の開口に挿着した他の差込み片を電子部品のリード側の端面と反対側の端面に当接させたことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の固定構造。
【請求項3】
上記差込み片が垂直辺と斜辺を備えた楔形をしており、その差込み片の垂直辺を電子部品の端面に当接させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品の固定構造。
【請求項4】
上記プリント配線基板に、楔形の差込み片を挿着する開口を電子部品の端面と直角方向に細長く形成し、その一端を電子部品の端面より内側に延設したことを特徴とする請求項3に記載の電子部品の固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−191079(P2012−191079A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54798(P2011−54798)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】