説明

電子部品の実装方法

【課題】 本発明の目的は、半田の中にボイドが生じ難い、半田を用いた電子部品の実装方法を提供することにある。
【解決手段】 配線導体を有する回路基板に、下面の大部分が電極である電子部品を実装するための電子部品の実装方法であって、前記回路基板として、前記配線導体の前記電子部品が実装される実装部の一部に凹部が設けられたものを準備する工程と、前記凹部に第1の半田ボールを置く半田ボール載置工程と、前記電子部品を、前記電子部品の下面の電極が第1の前記半田ボールに当接するとともに、前記電子部品の下面が前記実装部に当接して、前記電子部品の下面が前記実装部に対して斜めになるように載置する電子部品載置工程と、前記電子部品が載置された前記回路基板に熱を加え、前記第1の半田ボールを融解させ、前記実装部と前記電子部品の下面の電極とを接合する接合工程とを含むものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に、半田を介して電子部品を実装する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板に電子部品を実装方法としては、半田を介して実装する方法が知られている。半田により実装された電子部品は、回路基板と電子部品との間は、半田により電気的接続あるいは熱伝導が行なわれる。
【0003】
半田を介して電子部品を実装する方法としては、回路基板の実装部に、半田粒子とフラックスなどとが混合された半田ペーストを印刷した後、電子部品を載置し、リフローを行なう方法が知られている。リフローでは、回路基板の実装部にある配線導体などおよび電子部品の電極が、フラックスにより活性化された後、半田粒子が融解し、回路基板の実装部の配線導体などと電子部品の電極が半田により接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−288310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の半田ペーストを用いた実装方法では、融解中の半田にボイドが巻き込まれる、特にフラックスと半田の酸化皮膜との反応などによって発生する気体が巻き込まれることにより、実装後の半田の中にボイドが存在することがあり、実装された電子部品が発熱する素子である場合などで、電子部品と回路基板との間の熱伝導の高さ求められる際に、ボイドにより熱伝導が低くなるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、半田の中にボイドが生じ難い、半田を用いた電子部品の実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品の実装方法は、配線導体を有する回路基板に、下面の大部分が電極である電子部品を実装するための電子部品の実装方法であって、前記回路基板として、前記配線導体の前記電子部品が実装される実装部の一部に第1の凹部が設けられたものを準備する工程と、前記第1の凹部に第1の半田ボールを置く半田ボール載置工程と、前記電子部品を、当該電子部品の下面の電極が前記第1の半田ボールに当接するとともに、前記電子部品の下面の一端が前記実装部に当接して、前記電子部品の下面が前記実装部に対して斜めになるように置く電子部品載置工程と、前記電子部品が置かれた前記回路基板に熱を加え、前記第1の半田ボールを融解させて、前記実装部と前記電子部品の下面の電極とを接合する接合工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
前記半田ボール載置工程の前に、前記実装部に粘稠性の液体を供給する工程を含むことが好ましい。
【0009】
前記電子部品として下面が四角形状のものを用いるとともに、前記第1の凹部として、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な線上の位置であり、かつ前記電子部品載置工程で直上に前記電子部品の電極がくる位置に複数の凹部を設け、前記半田ボール載置工程で、前記複数の凹部のそれぞれに前記第1の半田ボールを置くことが好ましい。
【0010】
前記回路基板として、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な前記線と、前記電子部品の下面の前記一辺に対向する辺との間に第2の凹部が設けられたものを用いるとともに、前記半田ボール載置工程で、第2の半田ボールを、前記第2の凹部に前記第1の半田ボールより前記実装部からの高さが低くなるように置くとともに、前記接合工程で前記第2の半田ボールを融解させることが好ましい。
【0011】
前記第2の凹部が、前記第1の凹部よりも深さが深いか、開口が大きいかの少なくとも一方であることが好ましい。
【0012】
前記第2の半田ボールとして前記第1の半田ボールよりも径が小さいものを使用することが好ましい。
【0013】
前記接合工程で前記第1の半田ボールよりも先に前記第2の半田ボールを融解させることが好ましい。
【0014】
また、本発明の電子部品の実装方法は、配線導体を有する回路基板に、下面の大部分が電極である電子部品を実装するための電子部品の実装方法であって、前記配線導体の前記電子部品が実装される実装部に粘稠性の液体を供給する工程と、前記実装部の前記粘稠性の液体が供給された部分に第1の半田ボールを置く工程と、前記電子部品を、当該電子部品の下面の電極が前記第1の半田ボールに当接するとともに、前記電子部品の下面の一端が前記実装部に当接して、前記電子部品の下面が前記実装部に対して斜めになるように置く電子部品載置工程と、前記電子部品が置かれた前記回路基板に熱を加え、前記第1の半田ボールを融解させて、前記実装部と前記電子部品の下面の電極とを接合する接合工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
前記電子部品として下面が四角形状のものを用い、前記半田ボール載置工程で、前記第1の半田ボールを、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な線上の位置であり、かつ前記電子部品載置工程で直上に前記電子部品の電極がくる位置に複数並べて置くことが好ましい。
【0016】
前記半田ボール載置工程で、前記実装部の、前記電子部品の下面の一辺に平行な前記線と、前記電子部品の下面の前記一辺に対向する辺の間に、前記第1の半田ボールより径の小さい第2の半田ボールを置くとともに、前記接合工程で前記第2の半田ボールを融解させることが好ましい。
【0017】
前記接合工程で前記第1の半田ボールよりも先に前記第2の半田ボールを融解させることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実装方法によれば、配線導体を有する回路基板に、下面の大部分が電極である電子部品を実装するための電子部品の実装方法であって、前記回路基板として、前記配線導体の前記電子部品が実装される実装部の一部に第1の凹部が設けられたものを準備する工程と、前記第1の凹部に第1の半田ボールを置く半田ボール載置工程と、前記電子部品を、当該電子部品の下面の電極が前記第1の半田ボールに当接するとともに、前記電子部品の下面の一端が前記実装部に当接して、前記電子部品の下面が前記実装部に対して斜めになるように置く電子部品載置工程と、前記電子部品が置かれた前記回路基板に熱を加え、前記第1の半田ボールを融解させて、前記実装部と前記電子部品の下面の電極とを接合する接合工程とを含むことにより、前記第1の半田ボールが前記第1の凹部に置かれることで、前記第1の半田ボールが移動できる範囲が制限され、電子部品載置工程後に、前記電子部品の下面と前記実装部とが斜めになることで、前記電子部品の下面と前記実装部との間隔が広い開口部が安定してでき、接合工程において、前記第1の半田ボール中に含まれているボイドの気体やフラックスから発生した気体、あるいは前記実装部に供給しておいたフラックスから発生した気体などが、前記実装部と前記電子部品の下面と間から、前記開口部から外に抜けていき易いため、実装後の半田にボイドを少なくできる。
【0019】
前記半田ボール載置工程の前に、前記実装部に粘稠性の液体を供給する工程を含む場合、載置された電子部品が動き難くなり、工程中で前記開口部を安定して開いた状態にすることができる。
【0020】
前記電子部品として下面が四角形状のものを用いるとともに、前記第1の凹部として、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な線上の位置であり、かつ前記電子部品載置工程で直上に前記電子部品の電極がくる位置に複数の凹部を設け、前記半田ボール載置工程で、前記複数の凹部のそれぞれに前記第1の半田ボールを置く場合、前記電子部品の下面の一辺に沿った線上に置かれた前記第1の半田ボールと、前記電子部品の下面の前記一辺に対向する一辺とで前記電子部品が支えられ、前記電子部品を安定した状態で保持できる。
【0021】
前記回路基板として、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な前記線と、前記電子部品の下面の前記一辺に対向する辺との間に第2の凹部が設けられたものを用いるとともに、前記半田ボール載置工程で、第2の半田ボールを、前記第2の凹部に前記第1の半田ボールより前記実装部からの高さが低くなるように置くとともに、前記接合工程で前記第2の半田ボールを融解させる場合、前記一辺に対向する辺の端まで、半田がより供給されやすくなる。
【0022】
前記第2の凹部が、前記第1の凹部よりも深さが深いか、開口が大きいかの少なくとも一方であることにより、前記第2の半田ボールの実装部からの高さを、前記第1の半田ボールの実装部からの高さより低くできる。
【0023】
前記第2の半田ボールとして前記第1の半田ボールよりも径が小さいものを使用する場合、前記第2の半田ボールの実装部からの高さを、前記第1の半田ボールの実装部からの高さより低くできる。
【0024】
前記接合工程で前記第1の半田ボールよりも先に前記第2の半田ボールを融解させる場合、先に前記第1の半田ボールが融解して、前記電子部品が不安定になり、位置ズレなどが生じることが抑制できる。
【0025】
また、本発明の電子部品の実装方法によれば、配線導体を有する回路基板に、下面の大部分が電極である電子部品を実装するための電子部品の実装方法であって、前記配線導体の前記電子部品が実装される実装部に粘稠性の液体を供給する工程と、前記実装部の前記粘稠性の液体が供給された部分に第1の半田ボールを置く工程と、前記電子部品を、当該電子部品の下面の電極が前記第1の半田ボールに当接するとともに、前記電子部品の下面の一端が前記実装部に当接して、前記電子部品の下面が前記実装部に対して斜めになるように置く電子部品載置工程と、前記電子部品が置かれた前記回路基板に熱を加え、前記第1の半田ボールを融解させて、前記実装部と前記電子部品の下面の電極とを接合する接合工程とを含むことにより、前記粘稠性の液体により前記第1の半田ボールが移動しにくくなり、電子部品載置工程後に、前記電子部品の下面と前記実装部とが斜めになることで、前記電子部品の下面と前記実装部との間隔が広い開口部が安定してでき、接合工程において、半田ボール中に含まれているボイドの気体やフラックスから発生した気体、あるいは実装部に供給しておいたフラックスから発生した気体などが、前記実装部と前記電子部品の下面と間から、前記開口部から外に抜けていき易いため、実装後の半田にボイドを少なくできる。
【0026】
前記電子部品として下面が四角形状のものを用い、前記半田ボール載置工程で、前記第1の半田ボールを、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な線上の位置であり、かつ前記電子部品載置工程で直上に前記電子部品の電極がくる位置に複数並べて置く場合、前記電子部品の下面の一辺に沿った線上に置かれた前記第1の半田ボールと、前記電子部品の下面の前記一辺に対向する一辺とで前記電子部品が支えられ、前記電子部品を安定した状態で保持できる。
【0027】
前記半田ボール載置工程で、前記実装部の、前記電子部品の下面の一辺に平行な前記線と、前記電子部品の下面の前記一辺に対向する辺の間に、前記第1の半田ボールより径の小さい第2の半田ボールを置くとともに、前記接合工程で前記第2の半田ボールを融解させる場合、前記一辺に対向する辺の端まで、半田がより供給されやすくなる。
【0028】
前記接合工程で前記第1の半田ボールよりも先に前記第2の半田ボールを融解させる場合、先に前記第1の半田ボールが融解して、前記電子部品が不安定になり、位置ズレなどが生じることが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る電子部品の実装方法によって実装された、回路基板および電子部品の平面図であり、(b)は、(a)の縦断面図であり、(c)は、(b)と同じ場所の実装工程における縦断面図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の他の電子部品の実装方法によって実装された、回路基板および電子部品の縦断面図であり、(c)は、(b)と同じ場所の実装工程における縦断面図であり、(d)および(e)は、本発明の他の電子部品の実装方法の実装工程における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る電子部品の実装方法によって、回路基板3に電子備品9を実装した実装構造1の部分平面図であり、図1(b)は(a)の仮想線Aにおける縦断面図である。
【0031】
本発明の実装方法は、配線導体5を有する回路基板3の配線導体5の一部である実装部上に、下面の大部分が電極である電子部品9を、半田7を介して実装するものである。電子部品9は半田7により固定され、配線導体5と電子部品9とが電気的に接続されたり、回路基板3と電子部品9の間で熱伝導が行なわれる。詳細は後述するが、本発明の実装方法で実装してあるため、半田7に含まれるボイドは少なくなっている。
【0032】
回路基板3は、半田を融解する加熱工程に耐えられるものであれば特に制約はなく、セラミックス、樹脂、金属などのいずれでもよい。構造も主面に電子部品9が実装される配線導体5が形成されていればよく、回路基板の主面に対向する面や内部に他の配線導体が形成されていてもよい。配線導体5は、半田に濡れるものであれば、金、銀、銅、タングステン、モリブデンなどのいずれでもよい。また、配線導体5を形成する方法も特に制約はなく、エッッチングした金属板を貼り付けたり、回路基板3となる基板に導体ペーストを塗布して焼成することにより形成してもよい。配線導体5の厚みは、形成方法により様々な場合があるが、例えば10μm〜2mmである。厚みが半田ボール5aの直径より大きい場合は、半田ボール5aの最上部が配線導体5より高くなるよう形状の凹部5aにする。
【0033】
実装する電子部品9は、回路基板1に実装される側の面である下面に電極があり、電極が下面の大部分を占めるものである。ここで大部分とは下面の面積の8割以上占めることを意味し、9割以上が好ましく、熱伝導率が高くなる。図1(a)および(b)に示した電子部品9は、半導体に作製されたICであり、下面は電極になっているが図では電極は省略してある。図1(a)および(b)に示した電子部品9の下面全面が電極になっているが、電極が部分的に形成されているものでもかまわない。しかし、本発明の実装方法は、電子部品9と実装部の接合面積が大きい場合に発生し易い半田7中のボイドを少なくできるものであり、電子部品9の下面全体が電極であるものに適用するのが好ましい。電子部品9の大きさは、例えば平面方向が1mm×1mm〜30mm×30mmで、厚さが0.5〜2mmである。
また、半田7にボイドが少なくなり電子部品9と回路基板3との間の熱伝導性が高くなるので、電子部品9が発熱素子、あるいは吸熱素子であることが好ましい。
【0034】
なお、図1(a)に示した実装構造1では、電子部品9の下面の電極はグランドとして働くように半田7を介して配線導体5に接続されている。この後電子部品9の上面にある電極(不図示)と配線導体5とがワイヤーボンディングで接続され、電子部品9は増幅回路を持つパワーICや大電流が流れるスイッチングICとして働くようになる。そして、その際、半田7に含まれるボイドが少ないので電子部品9で発生した熱を効率よく回路基板3に伝えることができるようになる。
【0035】
本発明の電子部品の実装方法は、回路基板3として配線導体5の電子部品3が実装される実装部の一部に凹部5aが設けられたものを準備する工程と、凹部5aに第1の半田ボール6aを置く半田ボール載置工程と、電子部品9を、電子部品9の下面の電極が第1の前記半田ボール6aに当接するとともに、電子部品9の下面が実装部に当接して、電子部品9の下面が実装部に対して斜めになるように載置する電子部品載置工程と、電子部品9が載置された回路基板3に熱を加え、第1の半田ボール6aを融解させ、実装部と電子部品9の下面の電極とを接合する接合工程とを含む。
【0036】
図1(c)は、図1(b)と同じ部分の縦断面であり、電子部品載置工程が終了した時点のものである。このような状態で熱を加えて接合することにより、半田ボール6a中に含まれている気体が、接合工程中に電子部品9の下面と配線導体5との間が斜めになっているため生じる、電子部品9の下面と配線導体5との間隔が広い開口部から抜けていき、接合後の半田7にボイドが残り難い。特に、実装部の配線導体5や電子部品9の電極を活性させるため実装部にフラックスを供給することが行なわれた際、フラックスと半田ボール6aの酸化皮膜との反応などによって発生する気体が半田7に巻き込まれる可能性が高くなるが、前述の開口があるため発生した気体は、実装部と電子部品9との間に留まり難くなる。
【0037】
これにより、半田7の回路基板3の主面に平行な面における断面のボイド率を1%以下と少なくすることができる。もし、実装部上に半田ボール6aを均等に配置し、実装部と電子部品9の電極が平行になるように載置した後、接合を行なうと、接合工程中に徐々に狭くなる電子部品の下面と実装部との間に気体が閉じ込められやすく、実装後に半田7に含まれるボイドが多くなってしまう。
【0038】
なお、接合工程において、フラックスと半田ボール6aの酸化皮膜との反応などによって発生する気体は主に、半田ボール6aの置かれた電子部品9の下面と配線導体5との間隔が広い開口部から抜けていくため、その方向の回路基板3上にフラックスの残渣が残ることがある。このような残渣は、後工程においてワイヤーボンディングする際に、ワイヤーと配線導体5の接合を阻害することがある。残渣は洗浄などにより取り除くこともできるが、安全のため、ワイヤーボンディング接続される配線導体5は、半田ボール6aが置かれる電子部品9の下面と配線導体5との間隔が広い開口部の側に設けないのが好ましく、開口から2cm以内に設けないのがよい。
【0039】
半田ボール6aの材質は特に限定されないが、すずと銀と銅との合金や、鉛とすずとの合金のものなどが使用できる。半田ボールは開口が大きくなるように直径が50〜300μmであるものが好ましい。
【0040】
半田ボール6aを置く位置は特に限定されず、回路基板3の上から電子部品9を載置した際に電子部品が9の下面が実装部に対して斜めになるように載置できればよい。載置後の電子部品9の位置の安定性をよくするためには次のようにすればよい。1つの配置方法は、電子部品9の下面の形状が、外辺に直線部分が存在する場合、その直線の両端の点それぞれと電子部品9の下面の形状の面積重心とを結ぶ線を面積重心側に延長してできる線分の間に半田ボール6aを置くものである。また別の配置方法は、延長してできる前述の2つの線分を挟むように半田ボール6aを置くものである。
【0041】
電子部品9として下面が四角形状のものを用いる場合、凹部5aを、実装部の電子部品9の下面の一辺に平行な線上の位置であり、かつ電子部品載置工程で直上に電子部品9の電極がくる位置に複数設けると、電子部品9を載置した後の安定度が増す。図1(a)においては、図1(a)における電子部品9の下面の右辺に沿うように、右辺と平行な仮想直線B上に凹部5aが配置されており、半田ボール載置工程では凹部5a上に半田ボール6aが載置されるので、電子部品9の下面の右辺に沿って半田ボール6aが載置される。
【0042】
凹部5aの形状は円柱状、角柱状、配線導体5の表面側の開口が大きな円錐状や角柱状、あるはそれら円錐状や角柱状の底部が平面になっているものなどにすればよい。また、1つの凹部5aに複数の半田ボール6aが載置できるように、配線導体5の平面方向に長い角柱状にしてもよい。配線導体5の平面方向に長い角柱状にする場合、仮想直線Bに沿ったものにすれば、電子部品9の角度が変わるように半田ボール6aが移動しないので好ましい。いずれにしても、半田ボール5aの最上部が配線導体5よりも上になる形状にする。また。半田ボール5aの位置が安定するように、半田ボール5aの直径の1/4以上が凹部5a内に入る形状にするのが良い。
【0043】
また半田ボール5aを直線上に配置し、接合工程でトンネル炉に入れて加熱するのであれば、前記線と入路方向が直角になるようにするのがよい。このようにすると、直線上の半田ボール5aがほほぼ同時に融解するため、電子部品9の位置ズレなどが生じ難くできる。
【0044】
凹部5aの底部は配線導体5になっていても、回路基板3の基板の基板になっていてもよい。凹部5aの底部が配線導体5である場合、底部も半田7が濡れ易いため、凹部5aの部分にボイドができ難くなり好ましい。他方、凹部5aの底部が回路基板13の基板の上面である場合、凹部5aの形成は配線導体5のパターンニングだけでできるため、配線導体5の形状を印刷などで形成する場合に、形成しやすくなり好ましい。
【0045】
図2(a)に示したのは、本発明の実装方法で実装された実装構造11の縦断面図である。回路基板13に形成されている配線導体15に、電子部品19が半田17を介して接続されており、凹部15aは配線導体15を貫通しており、底部は回路基板13の基板の上面になっている。
【0046】
載置した後の半田ボール6aや、電子部品9の位置をより安定した状態にするには、半田ボール載置工程の前に、実装部に粘稠性の液体を供給するのがよい。粘稠性の液体を、実装部全体に略均一に塗布したり、凹部5aや電子部品9と実装部が接する場所に部分的に供給することにより、外部から力が加わった際に、半田ボール6aは実装部品9が動き難くなり、上述の開口が安定してできるので半田7にボイドを少なくできる。また電子部品9の実装精度が高くなる。粘稠性の液体の粘度は、使用温度で2〜8cp(センチポイズ)であるのが好ましい。粘稠性の液体は、接合工程時に半田ボール5aが融解する温度より低い温度で蒸発あるいは分解して半田の接合に影響を与えないものであればよい。粘稠性の液体は、前述のフラックスの役目を果たすものであってもよい。
【0047】
図2(b)は、本発明の他の実装方法で実装された実装構造21の縦断面図である。回路基板23に形成されている配線導体25に、電子部品29が半田27を介して接続されている。図2(c)は図2(b)に示した実装構造21を作製する工程の途中の同じ部分の縦断面図である。配線導体5には第1の凹部25aおよび第2の凹部25bが形成されている。
【0048】
第1の凹部25aの上には第1の半田ボール26aが載置されており、第2の凹部25bの上には第2の半田ボール26bが載置されている。第1の半田ボール26aが載置される第1の凹部25aは、図1(a)における凹部5aと同じように電子部品29の下面の一辺に沿った線上配置されている。第2の半田ボール26bが載置される第2の凹部25bは、図1(a)における凹部5aと同じように電子部品29の下面の一辺に沿った線上配置されているが、図2(c)に示したように第2の凹部25bは、第1の凹部25aよりも、電子部品29の下面と実装部との開口している方向とは逆側に位置している。また、第2の半田ボール26bは、第1の半田ボール26aより、実装部からの高さが低くなっている。
【0049】
このように第2の半田ボール26bを載置することにより電子部品29の下面と実装部が接している部分に近い側にもより安定して半田を供給することができるようになる。なお、第2の半田ボール26bは電子部品29の下面の電極に接している必要はないが、接していれば、電子部品29の安定度が増す。また、第2の半田ボール26bは第1の半田ボール26aと同様に、電子部品29の下面の一辺と平行な線上に配置してもよい。またさらに、第2の半田ボール26bよりも子部品29の下面と実装部が接している部分に近い側に、凹部をさらに設け、第2の半田ボール26bよりも実装面からの高さの低くなる第3の半田ボール、第4の半田ボールなどを載置できるようにしてもよい。
【0050】
図2(c)では第2の凹部25bの開口が第1の凹部25aの開口よりの大きいことにより、第2の半田ボール26bの実装面からの高さが、第1の半田ボール26aの実装面からの高さより低くなっている。
【0051】
図2(d)は本発明の他の実装方法の工程の途中の状態の縦断面図であり、図2(c)と比較すると、第2の凹部35bの深さが、第1の凹部35aの深さより深いことにより、第1の半田ボール36aの実装面からの高さより低くなっている。
【0052】
また、第2の半田ボールとして第1の半田ボールよりも径が小さいものを使用することで、第2の半田ボールの実装面からの高さが、第1の半田ボールの実装面からの高さより低くしてもよい。
【0053】
さらに、このように第1の半田ボールと第2の半田ボールを使用する場合、接合工程において、第1の半田ボールよりも先に第2の半田ボールを融解させることにより、先に第1の半田ボールが融解して、電子部品が不安定になり、位置ズレなどが生じることが抑制できる。第1の半田ボールよりも先に第2の半田ボールを融解させるには、第2の半田ボールの組成を第1の半田ボールよりも融点の低いものにすればよい。また、トンネル炉に入れて加熱するのであれば、第2の半田ボールのある方から入炉し、第2の半田ボールの方が先に高温部に到達するようにすればよい。さらに、第2の半田ボールの径が第1の半田ボールよりも小さく、他の要因に大きな差がなければ、第2の半田ボールの方が先に融解する。
【0054】
また、図2(e)は、本発明の他の実装方法の工程途中における縦断面図である。図2(e)は、回路基板43の配線導体45の電子部品49が実装される実装部に粘稠性の液体50を供給し、実装部の粘稠性の液体50が供給された部分に半田ボール46aを置き、電子部品49を、電子部品49の下面の電極が半田ボール46aに当接するとともに、電子部品49の下面が実装部に当接して、電子部品49の下面が実装部に対して斜めになるように載置した状態である。
【0055】
粘稠性の液体50により半田ボール46aおよび電子部品49が移動しにくくなり、電子部品49の下面と実装部とが斜めになることで、電子部品49の下面と実装部との間隔が広い開口部が安定してできる。粘稠性の液体50を、図示したように実装部全体に略均一に塗布してもよいし、半田ボール46aや電子部品49と実装部が接する場所に部分的に供給してもよい。粘稠性の液体50の粘度は、使用温度で2〜8cp(センチポイズ)であるのが好ましい。粘稠性の液体は、フラックスの役目を果たすものであってもよい。
【0056】
この後、電子部品49が載置された回路基板43に熱を加え、第1の半田ボール46aを融解させ、実装部と電子部品49の下面の電極とを接合する。その際、半田ボール46a中に含まれているボイドの気体やフラックスから発生した気体、あるいは実装部に供給しておいたフラックスから発生した気体などが、実装部と電子部品49の下面と間から、前記開口部から外に抜けていき易いため、実装後の半田にボイドを少なくできる。
【実施例】
【0057】
回路基板として、アルミナ基板に銅板を付け、ニッケルメッキし、さらに金フラッシュ処理をした配線導体を形成したものを準備し、電子部品である2mm×3mmで厚さ1mmのシリコンのFETを実装して、半田に発生したボイドの状態を評価した。評価は、透過X線装置で撮影した写真で、実装部の面積に対するボイドの面積を計測し、ボイド発生率を算出した。なお、実装部の配線導体の外形はFETと同じ2mm×3mmとした。
【0058】
試料1は次のように作製した。実装部の配線導体は、長さが2mmの外辺から内側に300μmの場所に、長さ2mmの外辺に沿って直径50μmの凹部を4つ形成した回路基板を用いた。この回路基板の実装部全体に粘度6cpのフラックスを供給した。半田ボールとしては、すず96質量%、銀3質量%、銅2.8質量%および残部が活性剤等からなる直径100μmのものを用いた。半田ボールを凹部に載置し、その上にFET載置した。FETは長さ2mmの一辺が実装部に当接し、半田ボールが載置された側が実装部より持ち上がった状態に載置され、リフローにより半田ボールを融解し、FETと実装部の配線導体とを接合した。
【0059】
試料2は、凹部を実装部の配線導体の四隅近くに形成し、FETを載置した際に、FETの下面の電極が実装部と平行になるようにした以外は試料1と同様に作製した。
【0060】
試料3は、実装部にフラックスを含んだ半田ペーストを塗布し、その上にFETを妻子して、その後リフローし、FETと実装部の配線導体とを接合した。なお、半田ペースト中の半田の金属成分の組成比は試料1で使用した半田ボールと同じであった。
【0061】
本発明の電子部品の実装方法で作製された試料1では、回路基板の主面に平行な面における半田のボイド率は0.17%と低かった。これ対して、本発明の電子部品の実装方法で作製さていない試料2の半田のボイド率は1.7%、試料3の半田のボイド率は6.4%と高かった。
【符号の説明】
【0062】
1、11、21・・・実装構造
2、13、23、33、43・・・回路基板
5a、15a、25a、35a・・・凹部(第1の凹部)
25b、35b・・・第2の凹部
6a、16a、25a、35a・・・半田ボール(第1の半田ボール)
16b、25b、35b・・・第2の半田ボール
7、17、27・・・半田
9、19、29、39、49・・・電子部品
50・・・粘稠性の液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線導体を有する回路基板に、下面の大部分が電極である電子部品を実装するための電子部品の実装方法であって、前記回路基板として、前記配線導体の前記電子部品が実装される実装部の一部に第1の凹部が設けられたものを準備する工程と、前記第1の凹部に第1の半田ボールを置く半田ボール載置工程と、前記電子部品を、当該電子部品の下面の電極が前記第1の半田ボールに当接するとともに、前記電子部品の下面の一端が前記実装部に当接して、前記電子部品の下面が前記実装部に対して斜めになるように置く電子部品載置工程と、前記電子部品が置かれた前記回路基板に熱を加え、前記第1の半田ボールを融解させて、前記実装部と前記電子部品の下面の電極とを接合する接合工程とを含むことを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項2】
前記半田ボール載置工程の前に、前記実装部に粘稠性の液体を供給する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の実装方法。
【請求項3】
前記電子部品として下面が四角形状のものを用いるとともに、前記第1の凹部として、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な線上の位置であり、かつ前記電子部品載置工程で直上に前記電子部品の電極がくる位置に複数の凹部を設け、前記半田ボール載置工程で、前記複数の凹部のそれぞれに前記第1の半田ボールを置くことを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品の実装方法。
【請求項4】
前記回路基板として、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な前記線と、前記電子部品の下面の前記一辺に対向する辺との間に第2の凹部が設けられたものを用いるとともに、前記半田ボール載置工程で、第2の半田ボールを、前記第2の凹部に前記第1の半田ボールより前記実装部からの高さが低くなるように置くとともに、前記接合工程で前記第2の半田ボールを融解させることを特徴とする請求項3に記載の電子部品の実装方法。
【請求項5】
前記第2の凹部が、前記第1の凹部よりも深さが深いか、開口が大きいかの少なくとも一方であることを特徴とする請求項4に記載の電子部品の実装方法。
【請求項6】
前記第2の半田ボールとして前記第1の半田ボールよりも径が小さいものを使用することを特徴とする請求項4または5に記載の電子部品の実装方法。
【請求項7】
前記接合工程で前記第1の半田ボールよりも先に前記第2の半田ボールを融解させることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の電子部品の実装方法。
【請求項8】
配線導体を有する回路基板に、下面の大部分が電極である電子部品を実装するための電子部品の実装方法であって、前記配線導体の前記電子部品が実装される実装部に粘稠性の液体を供給する工程と、前記実装部の前記粘稠性の液体が供給された部分に第1の半田ボールを置く工程と、前記電子部品を、当該電子部品の下面の電極が前記第1の半田ボールに当接するとともに、前記電子部品の下面の一端が前記実装部に当接して、前記電子部品の下面が前記実装部に対して斜めになるように置く電子部品載置工程と、前記電子部品が置かれた前記回路基板に熱を加え、前記第1の半田ボールを融解させて、前記実装部と前記電子部品の下面の電極とを接合する接合工程とを含むことを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項9】
前記電子部品として下面が四角形状のものを用い、前記半田ボール載置工程で、前記第1の半田ボールを、前記実装部の前記電子部品の下面の一辺に平行な線上の位置であり、かつ前記電子部品載置工程で直上に前記電子部品の電極がくる位置に複数並べて置くことを特徴とする請求項8に記載の電子部品の実装方法。
【請求項10】
前記半田ボール載置工程で、前記実装部の、前記電子部品の下面の一辺に平行な前記線と、前記電子部品の下面の前記一辺に対向する辺の間に、前記第1の半田ボールより径の小さい第2の半田ボールを置くとともに、前記接合工程で前記第2の半田ボールを融解させることを特徴とする請求項9に記載の電子部品の実装方法。
【請求項11】
前記接合工程で前記第1の半田ボールよりも先に前記第2の半田ボールを融解させることを特徴とする請求項10記載の電子部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−134831(P2011−134831A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292034(P2009−292034)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】