説明

電子部品の製造方法及び導電性ペーストの付与装置

【課題】チップ素体への導電性ペーストの転写を適切に行うことが可能な電子部品の製造方法及び導電性ペーストの付与装置を提供すること。
【解決手段】電子部品の製造方法では、チップ素体を準備し、円周側面12bに溝18が形成されたローラ12を準備し、ローラ12の円周側面12bに導電性ペーストを付与し、ローラ12の円周側面12bから余分な導電性ペーストを溝18に対応する位置に凹部20を有するブレード14によってかきとることによって溝18に導電性ペーストを充填し、溝18を横断する状態でチップ素体をローラ12の円周側面12bに押圧することによって溝18に充填されている導電性ペーストをチップ素体に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法及び導電性ペーストの付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造方法として、表面に溝が形成された弾性部材を準備し、弾性部材の表面に導電性ペーストを付与し、弾性部材の前記表面から余分な導電性ペーストをブレードによってかきとることによって溝に導電性ペーストを充填し、チップ素体を弾性部材の表面に押圧することによって溝に充填されている導電性ペーストをチップ素体に転写するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。転写された導電性ペーストは、熱処理されて、電子部品の端子電極となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−167989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溝に充填された導電性ペーストの液面は、表面張力の影響により、溝の幅方向、すなわち溝を横断する方向で見て、中央部分が端部分に比して低くなり、中央部分が窪んだ状態となっている。チップ素体に適切に導電性ペーストを転写するためには、導電性ペーストの表面張力により液面が中央部分にて低くなることを考慮して、チップ素体を弾性部材の表面に押圧する際のチップ素体の押し付け量を設定する必要がある。
【0005】
しかしながら、導電性ペーストの液面の中央部分に対応させて押し付け量を設定した場合、チップ素体の押し付け量が大きくなり過ぎて弾性部材が過度に変形してしまう懼れがある。弾性部材が過度に変形すると、導電性ペーストの液面がその端部分では中央部分に比して高くなっていることもあって、導電性ペーストが溝から溢れてしまい、チップ素体の表面の意図しない部分にまで拡がって付着することとなってしまう。このように、導電性ペーストが適切に転写されていないと、端子電極が形状異常となって、端子電極間の短絡不良や外観不良を引き起こす要因となってしまう。
【0006】
本発明の目的は、チップ素体への導電性ペーストの転写を適切に行うことが可能な電子部品の製造方法及び導電性ペーストの付与装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子部品の製造方法は、チップ素体を準備する第1の工程と、表面に溝が形成された弾性部材を準備する第2の工程と、弾性部材の表面に導電性ペーストを付与し、弾性部材の表面から余分な導電性ペーストを溝に対応する位置に凹部を有するブレードによってかきとることによって溝に導電性ペーストを充填する第3の工程と、溝を横断する状態でチップ素体を弾性部材の表面に押圧することによって溝に充填されている導電性ペーストをチップ素体に転写する第4の工程と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電子部品の製造方法では、溝に対応する位置に凹部を有するブレードを用い、弾性部材の表面に導電性ペーストを付与した後、弾性部材の表面から余分な導電性ペーストを上記ブレードでかきとることによって溝に導電性ペーストを充填している。ブレードが凹部を有していることから、ブレードによりかきとられる導電性ペーストの量が少なくなり、凹部を有していないブレードにより導電性ペーストをかきとる場合よりも、溝に充填される導電性ペーストの量が多くなる。このため、導電性ペーストが表面張力の影響を受けても、溝の幅方向で見て、中央部分が端部分に比して低くなるのが抑制されて、導電性ペーストの表面の窪み度合いが小さくなる。したがって、チップ素体の押し付け量を導電性ペーストの液面の中央部分に対応させて設定した場合でも、押し付け量が過大となるようなことはなく、弾性部材の変形が抑制されることとなる。この結果、導電性ペーストが溝から溢れることによってチップ素体の表面の意図しない部分にまで拡がって付着することが防止され、導電性ペーストをチップ素体へ適切に転写することができる。
【0009】
好ましくは、第3の工程では、ブレードとして、凹部の幅が弾性部材に形成された溝の幅よりも狭くされたブレードを準備する。この場合、弾性部材に対するブレードの位置ずれの許容範囲が拡大し、凹部が溝からずれてしまうのが抑制される。この結果、チップ素体への導電性ペーストの転写を適切且つ確実に行うことができる。
【0010】
好ましくは、第3の工程にて、凹部が溝の幅方向での中央部に位置するように弾性部材に対してブレードを位置させる。この場合、弾性部材に対するブレードの溝を横断する両方向での位置ずれの許容範囲が拡大し、凹部が溝からずれてしまうのが確実に抑制される。この結果、チップ素体への導電性ペーストの転写を適切且つ確実に行うことができる。
【0011】
好ましくは、第3の工程では、弾性部材として、溝の幅がチップ素体の幅よりも狭くされた弾性部材を準備する。この場合、チップ素体の所定の面に、当該面の幅を越えて導電性ペーストが転写されるのを確実に防ぐことができる。
【0012】
好ましくは、第3の工程では、溝に充填された導電性ペーストの深さが溝の深さよりも浅くなるように溝に導電性ペーストを充填する。この場合、導電性ペーストが溝から溢れてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0013】
好ましくは、第1の工程では、チップ素体として、互いに対向する長方形状の一対の主面と、一対の主面間を連結するように一対の主面の長辺方向に伸び且つ互いに対向する一対の側面と、一対の主面を連結するように一対の主面の短辺方向に伸び且つ互いに対向する一対の端面と、を有するチップ素体を準備し、第4の工程では、チップ素体の側面を弾性部材の表面に押圧することによって側面から一対の主面に回り込むように導電性ペーストを転写する。この場合、チップ素体の長手方向に伸びる側面に、導電性ペーストを幅広な形状で転写する場合でも、導電性ペーストが一対の端面に回り込むようにして付着することはなく、導電性ペーストを所望の形状に適切に転写することができる。
【0014】
より好ましくは、第1の工程では、チップ素体として、一対の側面及び一対の端面のそれぞれに端子電極が形成された電子部品に用いられるチップ素体を準備する。この場合、端子電極同士が短絡するのを防ぐことができる。
【0015】
本発明に係る導電性ペーストの付与装置は、表面に溝が形成された弾性部材と、弾性部材の表面に当接すると共に、溝に対応する位置に凹部を有するブレードと、を備え、弾性部材の表面から余分な導電性ペーストをブレードによりかきとり、溝に導電性ペーストを充填することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る導電性ペーストの付与装置では、弾性部材の表面から余分な導電性ペーストが上記ブレードでかきとられることによって、溝に導電性ペーストが充填される。ブレードが凹部を有していることから、ブレードによりかきとられる導電性ペーストの量が少なくなり、凹部を有していないブレードにより導電性ペーストをかきとる場合よりも、溝に充填される導電性ペーストの量が多くなる。このため、導電性ペーストが表面張力の影響を受けても、溝の幅方向で見て、中央部分が端部分に比して低くなるのが抑制されて、導電性ペーストの表面の窪み度合いが小さくなる。したがって、本発明に係る導電性ペーストの付与装置を用いてチップ素体に導電性ペーストを付与する際に、チップ素体の押し付け量を導電性ペーストの液面の中央部分に対応させて設定した場合でも、押し付け量が過大となるようなことはなく、弾性部材の変形が抑制されることとなる。この結果、導電性ペーストが溝から溢れることによってチップ素体の表面の意図しない部分にまで拡がって付着することが防止され、導電性ペーストをチップ素体へ適切に転写することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、チップ素体への導電性ペーストの転写を適切に行うことが可能な電子部品の製造方法及び導電性ペーストの付与装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る電子部品の製造方法を説明するための模式図である。
【図2】本実施形態に係る導電性ペースト付与装置を示す模式図である。
【図3】弾性部材とブレードとを示す斜視図である。
【図4】ブレードを示す平面図である。
【図5】ブレードの変形例を示す平面図である。
【図6】本実施形態に係る電子部品の製造方法を説明するための模式図である。
【図7】本実施形態において、導電性ペーストが転写されたチップ素体を示す模式図である。
【図8】比較例としての電子部品の製造方法を説明するための模式図である。
【図9】比較例において、導電性ペーストが転写されたチップ素体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1〜図9を参照して、本実施形態に係る電子部品ECの製造方法を説明する。
【0021】
まず、チップ素体1を準備する。チップ素体1は、図1の(a)に示されるように、略直方体形状を呈しており、互いに対向する長方形状の一対の主面1a,1bと、一対の主面1a,1b間を連結するように一対の主面1a,1bの長辺方向に伸び且つ互いに対向する一対の側面1c,1dと、一対の主面1a,1b間を連結するように一対の主面1a,1bの短辺方向に伸び且つ互いに対向する一対の端面1e,1fと、を有している。図1の(a)では、側面1c,1dや端面1e,1fに露出する内部電極の端部の図示を省略している。
【0022】
チップ素体1は、例えば、以下のようにして得ることができる。
【0023】
セラミックペースト及び内部電極ペーストを準備した後、例えばPET等からなるキャリアシート上にセラミックペーストを、ドクターブレード法等の公知の方法でセラミックグリーンシートを形成する(シート成形工程)。そして、セラミックグリーンシート上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法で複数の内部電極パターンを形成する(内部電極形成工程)。セラミックペーストは、セラミック層を構成する材料を原料として、バインダー及び溶剤を含む有機ビヒクル等を混合・混錬して得ることができる。内部電極ペーストは、内部電極層を構成するための導電材料とバインダー及び溶剤を含む有機ビヒクルとを混合・混錬して得ることができる。
【0024】
続いて、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る(積層・プレス工程)。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る(切断工程)。得られたグリーンチップをバレル研磨し、グリーンチップの稜部を丸めてもよい。
【0025】
続いて、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する(焼成工程)。この焼成により、セラミックグリーンシートからセラミック層が、また、内部電極ペースト層から内部電極層がそれぞれ形成されたチップ素体1が得られる。得られたチップ素体は、バレル研磨して、焼成後の内部電極層を外表面に確実に露出させてもよい。
【0026】
次に、チップ素体1の外表面に導電性ペーストを付与して、熱処理を施すことにより導電性ペーストをチップ素体に焼付けて、端子電極3,5を形成する(端子電極形成工程)。導電性ペーストは、例えばCuを主成分とする金属粉末にガラスフリット及び有機ビヒクルを混合したものを用いることができる。金属粉末は、Ni、Ag−PdあるいはAgを主成分とするものであってもよい。導電性ペーストを焼き付けて形成した電極の上にめっきを施してもよい。めっきは、Ni,Sn,Ni−Sn合金,Sn−Ag合金,Sn−Bi合金などの金属めっきを施すことができる。また、金属めっきは、例えば、NiとSnとで2層以上形成した多層構造としてもよい。以上により、図1の(b)に示されるような、電子部品ECが得られる。
【0027】
端子電極形成工程における導電性ペーストの付与は、以下のようにして行う。ここでは、チップ素体1の側面1c,1dに導電性ペーストを付与する工程について、詳細に説明する。チップ素体1の端面1e,1fに導電性ペーストを付与する工程については、以下の工程と同じ工程としてもよく、以下の工程以外の既知の工程を採用してもよい。
【0028】
まず、図2に示されるように、導電性ペースト付与装置9を準備する。導電性ペースト付与装置9は、上方が開口すると共に導電性ペーストCPを収容するペーストタンク10と、ペーストタンク10の上方にペーストタンク10内にその一部が入り込むように配置されるローラ12と、ローラ12の表面に付着した導電性ペーストCPを除去するブレード14と、チップ素体1を保持する保持孔16aが形成されたチップ保持ベルト16と、を備えている。ローラ12は、不図示の駆動機構により回転駆動される。
【0029】
ペーストタンク10には、導電性ペーストCPが収容されている。ローラ12は、ペーストタンク10に収容された導電性ペーストCPに下方部分が浸漬される。導電性ペーストCPに下方部分が浸漬された状態でローラ12が回転すると、導電性ペーストCPは、その粘度のために、ローラ12の表面に付着した状態でペーストタンク10から取り出される。
【0030】
ローラ12は、ゴム等からなる弾性部材であって、図3にも示されるように、円柱形状を呈しており、互いに対向する円形の一対の端面12aと、円周側面12bとを有している。円周側面12bには、その全周にわたって伸びる溝18が形成されている。したがって、導電性ペーストCPに浸漬された状態では、導電性ペーストCPに浸漬されている円周側面12bに形成された溝18に、導電性ペーストCPが入り込んでおり、ローラ12の回転に伴ってペーストタンク10から取り出される導電性ペーストCPは、溝18内にも存在している。溝18の幅は、チップ素体1の幅(本実施形態では、チップ素体1の長手方向での長さ)よりも狭く設定されている。
【0031】
ブレード14は、金属又は樹脂等からなる板状の部材である。ブレード14は、図3に示されるように、ローラ12の円周側面12bに対応する部分14aの一部が切り欠かれるように形成されており、ローラ12の端面12aに対向する部分14bを有している。ローラ12の端面12aと当該端面12aに対向する部分14bと間には、所定の間隙が形成されており、ローラ12の回転に伴い、ローラ12の端面12aに付着した導電性ペーストCPは、ブレード14における端面12aに対向する部分14bで殆ど除去される。
【0032】
ブレード14における円周側面12bに対応する部分14aは、図4に示されるように、溝18に対応する位置に凹部20を有している。凹部20は、平面視で三角形状を呈している。凹部20は、図5に示されるように、平面視で台形形状を呈してもよく、これ以外にも、矩形形状や半円慶形状であってもよい。凹部20の幅は、溝18の幅よりも狭く設定されている。ローラ12とブレード14とは、ブレード14の凹部20が溝18の幅方向、すなわち溝18を横断する方向での中央部に位置するように、互いに位置決めされている。
【0033】
ブレード14は、ローラ12に対して所定の押し付け量で押圧されている。これにより、ローラ12におけるブレード14(円周側面12bに対応する部分14a)が当接している部分は、僅かに弾性変形する。そして、ローラ12の回転に伴い、ブレード14は、ローラ12の円周側面12b上に付着した導電性ペーストCPを円周側面12bからかきとり、余分の導電性ペーストCPを除去する。このとき、溝18内に存在している導電性ペーストCPはブレード14によりかきとられないため、溝18内には導電性ペーストCPが残ることとなり、溝18に導電性ペーストCPが充填されることとなる。
【0034】
ところで、ブレード14は、ローラ12が弾性変形した状態で余分の導電性ペーストCPを除去しているため、ブレード14を通過すると、ローラ12は弾性変形した状態から復元する。このため、溝18に充填された導電性ペーストCPの深さは、図6の(a)に示されるように、溝18の深さよりも浅くなる。また、溝18に充填された導電性ペーストCPの表面は、導電性ペーストCPの表面張力の影響を受け、溝18の幅方向で見て、中央部分が端部分に比して僅かに低くなる。
【0035】
チップ素体1は、一方の側面1c側の部分がチップ保持ベルト16から突出するように、チップ保持ベルト16の保持孔16aで保持されている。チップ素体1は、チップ素体1の長手方向が溝18の幅方向と略一致するように、チップ保持ベルト16に保持されている。チップ保持ベルト16は、プーリ22を含む搬送機構により搬送される。これにより、チップ素体1は、ローラ12に対して移動することとなる。
【0036】
ローラ12とプーリ22との間隔は、チップ保持ベルト16に保持されたチップ素体1が所定の押し付け量でローラ12に押圧されるように設定されている。すなわち、プーリ22とローラ12との間に移動したチップ素体1は、図6の(b)に示されるように、溝18を横断する状態でその側面1cがローラ12の円周側面12bに押圧される。これにより、図7に示されるように、溝18に充填されている導電性ペーストCPがチップ素体1の一方の側面1cに転写されることとなる。ローラ12は、チップ素体1が押圧されることにより、チップ素体1が接触している部分が弾性変形する、このため、溝18に充填されている導電性ペーストCPは、側面1cだけでなく、側面1cと隣り合う一対の主面1a,1bの一部に回り込むように転写されて、付着する。
【0037】
一方の側面1cに導電性ペーストCPが転写されたチップ素体1は、転写された導電性ペーストCPを乾燥させた後、他方の側面1d側の部分がチップ保持ベルト16から突出するように、チップ保持ベルト16の保持孔16aで保持する。そして、一方の側面1cへの導電性ペーストCPの転写と同様にして、溝18に充填されている導電性ペーストCPをチップ素体1の他方の側面1dに転写し、乾燥させる。
【0038】
更に、チップ素体1の一対の端面1e,1fに導電性ペーストCPを付与して、当該導電性ペーストCPを乾燥させた後、上述したように熱処理を施して、端子電極3,5を形成する。
【0039】
ここで、図8及び図9を参照して、凹部20を有していないブレードを用いた比較例について説明する。ブレードが凹部20を有していない場合、ブレードを通過する際のローラ12の弾性変形の影響を受けることもあって、溝18に充填される導電性ペーストCPの量が少なくなり、更に、表面張力の影響を受けて、図8の(a)に示されるように、溝18の幅方向で見て、中央部分が端部分に比して著しく低くなり、中央部分が大きく窪んだ状態となっている。
【0040】
この状態で、チップ素体1の側面1cに導電性ペーストCPを転写するためには、導電性ペーストCPの液面の中央部分に対応させてローラ12に対するチップ素体1の押し付け量を大きく設定せざるを得ず、ローラ12が過度に変形してしまう。このようにローラ12が過度に変形すると、導電性ペーストCPの液面がその端部分では中央部分に比して高くなっていることもあって、図8の(b)に示されるように、導電性ペーストCPが溝18から溢れてしまう。この結果、図9に示されるように、導電性ペーストCPがチップ素体1の表面の意図しない部分にまで拡がって付着してしまう。
【0041】
これに対して、本実施形態では、溝18に対応する位置に凹部20を有するブレード14を用い、ローラ12の円周側面12bに導電性ペーストCPを付与した後、ローラ12の円周側面12bから余分な導電性ペーストCPをブレード14でかきとることによって溝18に導電性ペーストCPを充填している。ブレード14が凹部20を有していることから、ブレード14によりかきとられる導電性ペーストCPの量が少なくなり、凹部20を有していないブレードにて導電性ペーストCPをかきとる場合よりも、溝18に充填される導電性ペーストCPの量が多くなる。このため、導電性ペーストCPが表面張力の影響を受けても、溝18の幅方向で見て、中央部分が端部分に比して低くなるのが抑制されて、導電性ペーストCPの表面の窪み度合いが小さくなる。したがって、チップ素体1の押し付け量を導電性ペーストCPの液面の中央部分に対応させて設定した場合でも、押し付け量が過大となるようなことはなく、ローラ12の変形が抑制される。この結果、導電性ペーストCPが溝18から溢れることによってチップ素体1の表面の意図しない部分にまで拡がって付着することが防止され、導電性ペーストCPをチップ素体1へ適切に転写することができる。
【0042】
本実施形態においては、凹部20の幅がローラ12に形成された溝18の幅よりも狭く設定されている。これにより、ローラ12(円周側面12b)に対するブレード14の位置ずれの許容範囲が拡大し、凹部20が溝18からずれるのが抑制される。この結果、チップ素体1への導電性ペーストCPの転写を適切且つ確実に行うことができる。
【0043】
本実施形態においては、凹部20が溝18の幅方向での中央部に位置するように、ローラ12とブレード14とが配置されている。これにより、ローラ12に対するブレード14の溝18を横断する両方向での位置ずれの許容範囲が拡大し、凹部20が溝18からずれてしまうのが確実に抑制される。この結果、チップ素体1への導電性ペーストCPの転写を適切且つ確実に行うことができる。
【0044】
本実施形態においては、溝18の幅がチップ素体1の幅よりも狭く設定されている。これにより、チップ素体1の側面1c,1dに、側面1c,1dの幅を越えて導電性ペーストCPが転写されてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0045】
本実施形態においては、溝18に充填された導電性ペーストCPの深さが溝18の深さよりも浅くなるように溝18に導電性ペーストCPを充填している。これにより、導電性ペーストCPが溝18から溢れてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0046】
本実施形態においては、略直方体形状のチップ素体1の側面1c,1dをローラ12の円周側面12bに押圧することによって側面1c,1dから一対の主面1a,1bに回り込むように導電性ペーストCPを転写している。これにより、チップ素体1の長手方向に伸びる側面1c,1dに、導電性ペーストCPを幅広な形状で転写する場合でも、導電性ペーストCPが一対の端面1e,1fに回り込むようにして付着することはなく、導電性ペーストCPを所望の形状に適切に転写することができる。また、側面1c,1dに形成される端子電極3と端面1e,1fに形成される端子電極5との間で短絡が生じるのを防ぐことができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0048】
本実施形態では、円柱形状を呈したローラ12にチップ素体1を押圧して、チップ素体1に導電性ペーストCPを転写しているが、ローラ12の代わりに、表面に溝が形成された平板形状の弾性部材を採用し、この弾性部材の溝に導電性ペーストを充填してもよい。
【0049】
本発明は、チップ素体を有する電子部品であれば適用可能であり、例えば、積層コンデンサ、積層貫通コンデンサ、積層バリスタ、積層アクチュエータ、積層インダクタ、又は積層複合部品等にも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…チップ素体、1a,1b…主面、1c,1d…側面、1e,1f…端面、3,5…端子電極、9…導電性ペースト付与装置、10…ペーストタンク、12…ローラ、12b…円周側面、14…ブレード、16…チップ保持ベルト、18…溝、20…凹部、CP…導電性ペースト、EC…電子部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ素体を準備する第1の工程と、
表面に溝が形成された弾性部材を準備する第2の工程と、
前記弾性部材の前記表面に導電性ペーストを付与し、前記弾性部材の前記表面から余分な導電性ペーストを前記溝に対応する位置に凹部を有するブレードによってかきとることによって前記溝に導電性ペーストを充填する第3の工程と、
前記溝を横断する状態で前記チップ素体を前記弾性部材の前記表面に押圧することによって前記溝に充填されている導電性ペーストを前記チップ素体に転写する第4の工程と、を備えていることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程では、前記ブレードとして、前記凹部の幅が前記弾性部材に形成された前記溝の幅よりも狭くされたブレードを準備することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程にて、前記凹部が前記溝の幅方向での中央部に位置するように前記弾性部材に対して前記ブレードを位置させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程では、前記弾性部材として、前記溝の幅がチップ素体の幅よりも狭くされた弾性部材を準備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程では、前記溝に充填された導電性ペーストの深さが前記溝の深さよりも浅くなるように前記溝に導電性ペーストを充填することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程では、前記チップ素体として、互いに対向する長方形状の一対の主面と、前記一対の主面間を連結するように前記一対の主面の長辺方向に伸び且つ互いに対向する一対の側面と、前記一対の主面を連結するように前記一対の主面の短辺方向に伸び且つ互いに対向する一対の端面と、を有するチップ素体を準備し、
前記第4の工程では、前記チップ素体の前記側面を前記弾性部材の前記表面に押圧することによって前記側面から前記一対の主面に回り込むように導電性ペーストを転写することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記第1の工程では、前記チップ素体として、前記一対の側面及び前記一対の端面のそれぞれに端子電極が形成された電子部品に用いられるチップ素体を準備することを特徴とする請求項6に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
表面に溝が形成された弾性部材と、
前記弾性部材の前記表面に当接すると共に、前記溝に対応する位置に凹部を有するブレードと、を備え、
前記弾性部材の前記表面から余分な導電性ペーストを前記ブレードによりかきとり、前記溝に導電性ペーストを充填することを特徴とする導電性ペーストの付与装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−251143(P2010−251143A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99786(P2009−99786)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】