電子部品供給装置および電子部品実装装置
【課題】電子部品搬送体を巻いた非導電性のリールは、−3000V〜−500Vに帯電しているため、リールに巻かれた電子部品搬送体も同電位に帯電する。そうすると、静電気により電子部品がキャリアテープの収納部の壁等に貼り付くため、吸着ヘッドがチップ形電子部品を吸着する際に、吸着ヘッドに対して電子部品の位置がずれ、電子部品の吸着ミスが多発するという問題がある。
【解決手段】電子部品をキャリアテープの収納部に収納し、キャリアテープの表面をトップカバーテープで覆った電子部品搬送体を、非導電性のリールから引き出し、キャリアテープからトップカバーテープを剥離し、トップカバーテープが剥離された電子部品搬送体のキャリアテープを、電子部品取出部に搬送する電子部品供給装置において、リールを導電性のカバーで覆い、カバーを接地した。
【解決手段】電子部品をキャリアテープの収納部に収納し、キャリアテープの表面をトップカバーテープで覆った電子部品搬送体を、非導電性のリールから引き出し、キャリアテープからトップカバーテープを剥離し、トップカバーテープが剥離された電子部品搬送体のキャリアテープを、電子部品取出部に搬送する電子部品供給装置において、リールを導電性のカバーで覆い、カバーを接地した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーピングされた電子部品を供給する電子部品供給装置と、該電子部品供給装置を搭載した電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップコンデンサ、チップ抵抗器等のチップ形電子部品は、電子部品搬送体により電子部品実装機に供給されている。
ここで、電子部品搬送体とは、長手方向に間隔をおいて複数の収納部(ポケット)が形成されたキャリアテープの上面にトップカバーテープが貼り付けられ、各収納部内に電子部品が収納されたものをいう。
【0003】
尚、収納部は、凹部であっても良く(例えば、特許文献1参照)、キャリアテープに貫通穴があけられて、そのキャリアテープの裏面にボトムテープが貼り付けられて形成されていても良い(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
この電子部品搬送体による電子部品実装機へのチップ形電子部品の供給は、まず、リールに巻かれた電子部品搬送体を電子部品供給装置にセットした後、この電子部品供給装置を電子部品実装装置にセットする。そして、電子部品実装装置からの動力(エアー、電気等)の供給により電子部品供給装置がキャリアテープの送りとトップカバーテープの剥離を間欠的に行うことによりなされている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
つまり、トップカバーテープがキャリアテープから間欠的に剥離されて、上面からトップカバーテープが無くなると、キャリアテープの収納部内に収納されたチップ形電子部品は、キャリアテープの収納部に収納されたままキャリアテープごと電子部品実装装置の電子部品取出部に間欠的に送られ、電子部品実装装置の吸着ヘッドにより吸着把持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平06−018365号公報
【特許文献2】特開平06−092388号公報
【特許文献3】特開平05−021987号公報
【特許文献4】特開平11−046089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、吸着ヘッドがチップ形電子部品を吸着する際に、吸着ヘッドに対してチップ形電子部品の位置がずれると、チップ形電子部品の吸着ミスが多発するという問題がある。
【0008】
これは、電子部品搬送体を巻いた非導電性のリールは、生産現場への搬送時の摩擦、電子部品供給装置にセットした後のリールの回転等により、リールの表面が、−3000V〜−500Vに帯電していることが原因の一つとして挙げられる。つまり、リールの表面が−3000V〜−500Vに帯電していると、リールに巻かれた電子部品搬送体もリールからの誘導及びリールとの摩擦により同電位または逆電位に帯電する。そうすると、電子部品搬送体のキャリアテープ、トップカバーテープ等も帯電するため、静電気により電子部品がキャリアテープの収納部の壁等に貼り付くのである。
【0009】
本発明は、前記した問題を解決するためになされたものであって、リール表面の電位を下げることにより、電子部品搬送体の帯電量を下げ、電子部品実装装置の電子部品の吸着率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明)
第1発明は、電子部品をキャリアテープの収納部に収納し、このキャリアテープの表面をトップカバーテープで覆った電子部品搬送体を、非導電性のリールから引き出し、キャリアテープからトップカバーテープを剥離し、トップカバーテープが剥離された電子部品搬送体のキャリアテープを、電子部品取出部に搬送する電子部品供給装置に関し、リールを導電性のカバーで覆い、カバーを接地したことを特徴とするものである。ここで、接地とは、大地と導線で結び、大地と電位を等しくすることをいう。
【0011】
かかる構成により、リール表面の−3000V〜−500Vの電位を、−300V程度に下げることができるので、静電気によるキャリアテープ等への電子部品の貼り付きを低減した電子部品供給装置を提供できる。このため、電子部品実装装置の吸着ヘッドによる電子部品の吸着成功率を向上できる。
【0012】
前記したように、非導電性のリールを導電性のカバーで覆い、この導電性のカバーを接地すると、非導電性のリールと、カバーの間にコンデンサ成分ができる。そうすると、このコンデンサ成分による静電容量と、リールの静電容量とが合成されて、より大きな合成静電容量(C)となる。
【0013】
一方、非導電性のリールは、生産稼働中の摩擦が一定であるため、リールの電荷(Q)は一定である。このため、Q(電荷)=C(静電容量)×V(電圧)の公式より、Q(電荷)が一定で、C(静電容量)が大きくなるので、V(電圧)が−300Vまで小さくなるのである。
【0014】
(第2発明)
第2発明は、少なくとも第1発明の電子部品供給装置と、この電子部品供給装置から電子部品を取り出し、プリント配線基板に電子部品を実装するヘッドとを備えた電子部品実装装置に関するものである。
かかる構成により、前記した第1発明と同一の効果を奏する電子部品実装装置を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、吸着ヘッドによる電子部品の吸着率を向上できる電子部品供給装置および電子部品実装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電子部品搬送体の斜視図である(実施例1)
【図2】トップカバーテープが剥離されたキャリアテープの平面図である。(実施例1)
【図3】キャリアテープの側面図である(実施例1)
【図4】電子部品供給装置の側面図である(実施例1)
【図5】カバーを付けた電子部品供給装置の側面である(実施例1)
【図6】カバーの斜視図である(実施例1)
【図7】電子部品実装装置の斜視図である(実施例1)
【図8】電子部品供給装置の斜視図である(実施例1)
【図9】電子部品供給装置の側面図である(実施例2)
【図10】リールの電圧を測定する方法を示した図である
【図11】電子部品供給装置の側面図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
(電子部品搬送体の概要)
図1乃至図3に示すように、電子部品搬送体1は、キャリアテープ2とトップカバーテープ3とボトムテープ4とからなる。より詳しく説明すると、電子部品搬送体1は、長手方向に間隔をおいて複数の貫通穴5が形成された紙製のキャリアテープ2の下面に、アセテート製のボトムテープ4が接着剤等により貼り付けられている。このため、キャリアテープ2には、貫通穴5とボトムテープ4により収納部が形成されている。この収納部の各々にチップ形電子部品6が収納されている。
【0019】
そして、キャリアテープ2の上面には、樹脂(例えば、PETとPEの2層構造)製のトップカバーテープ3が接着剤等により貼り付けられ、電子部品搬送体1からチップ形電子部品6が落下しないようになっている。また、電子部品搬送体1は、リール8に巻かれており、キャリアテープの短手方向の端部には、後述する電子部品供給装置が電子部品搬送体1を搬送するための送り孔7が長手方向に等間隔にあけられている。
【0020】
(電子部品供給装置の概要)
電子部品供給装置は、特開平05−21987号公報、特開平9−186487号公報、特開平11−46089号公報等に記載されたものの他、電子部品実装機メーカーから供給されているものを用いることができる。以下にその一例を説明する。
【0021】
図4は、電子部品供給装置9に、電子部品搬送体1を巻いたリール8をセットした状態を示した図である。電子部品供給装置9の本体16の後端部には軸10が固定されている。この軸10にリール8の略中央部にあけられた孔11を挿入することにより、電子部品供給装置9にリール8をセット(取り付ける)ことができる。
【0022】
リール8から引き出された電子部品搬送体1は、本体16の先端部26に取り付けられ電子部品搬送体1を所定ピッチずつ送る図示しないスプロケットに取り付けられている。具体的には、スプロケットの周面に設けられた複数の係合刃が電子部品搬送体1の送り孔7に挿入されている。そして、図示しない電子部品実装装置から供給されるエアー、電気等の動力により動作する駆動機構によって間欠的に回転するスプロケットの動作により、電子部品搬送体1はリール8から引き出されると共に先端部26に向かって搬送される。
【0023】
電子部品供給装置9の本体16の先端部26には、テープ剥離部としての板12が取り付けられており、この板12により、リール8から引き出された電子部品搬送体1の上面に貼り付けられたトップカバーテープ3がキャリアテープ2の上面から剥離される。そして、キャリアテープ2の上面から剥離されたトップカバーテープ3は、本体16の略中央部に取り付けられた巻き取りリール13により巻き取られる。
【0024】
一方、板12によりトップカバーテープ3を剥離されたキャリアテープ2は、電子部品供給装置9の本体16の先端部26に取り付けられたスプロケットの形状に沿って円弧状に彎曲し、電子部品供給装置9の本体16の略中央下部から排出される。
【0025】
尚、電子部品搬送体1の搬送(スプロケットの間欠駆動)および剥離したトップカバーテープ3の巻き取りリール13での巻き取りは、本体16に取り付けられた図示しないエアシリンダ等の駆動機構を用いて行なう。
【0026】
また、電子部品供給装置9の下面には2本の位置決めピン15が付いており、図8に示す様に、この2本の位置決めピン15を電子部品実装装置の位置決め穴21に挿入することにより、電子部品供給装置9を電子部品実装装置にセットすることができる。
【0027】
そして、図示しない電子部品実装装置のヘッドとしての吸着ヘッドは、板12によりトップカバーテープ3が剥離された直後の電子部品取出部としての把持部14において、キャリアテープ2の収納部に収納されたチップ形電子部品6を吸着する。
【0028】
(本発明に係る電子部品供給装置)
図5に示す様に、本発明に係る電子部品供給装置61は、前記した一般的な電子部品供給装置9に、非導電性のリール8の全体を覆うカバー23と、このカバー23を接地するケーブル25を設けたものである。
【0029】
カバー23は、図6に示すように、開口部28を備えた袋状のものであり、表面抵抗値が107Ω以下の導電性のものであれば良い。尚、表面抵抗値の測定は、測定試料(カバー)を表面抵抗1014以上の基台の上Bに載せ、その測定試料の上に2つのプローブを載せ、2点間の抵抗値を測定する。測定器は、例えば、トレック・ジャパン社製の表面抵抗計MODEL152等を用いることができる。
【0030】
本実施例1においては、カバー23として、透明な軟質塩化ビニル製の袋の内側に網の目状にカーボンを含有した塗料が塗布された(カーボンメッシュの)アキレス社製の導電シート(品名:セイデンF)を用いた。また、リール8は、ポリエチレン樹脂製の非導電性(絶縁性)のリールを用いた。
【0031】
(本発明に係る電子部品実装装置)
図7は、本発明に係る電子部品実装装置50の斜視図であり、本発明に係る電子部品供給装置61を電子部品実装装置50の台52に3台取り付けた状態を示した図である。電子部品実装装置50は、本発明に係る電子部品供給装置61から供給されたチップ形電子部品6を、把持部14において図示しない吸着ヘッドによりバキューム把持して、コンベア51により搬送された図示しないプリント配線基板に実装するものである。
【0032】
本発明に係る電子部品実装装置50は、電子部品供給装置61を用いた以外は一般的なチップ形電子部品を実装する電子部品実装装置であっても良い。一般的なチップ形電子部品の電子部品実装装置は、市販されており、特開平11−46089号公報、特開平08−242094号公報等の多くの文献が存在するので、これ以上の説明を省略する。
【実施例2】
【0033】
本発明の他の実施例を図9を用いて詳細に説明する。
図9は、本発明に係る電子部品供給装置の側面図である。説明を分かり易くするため、実施例1に係る電子部品供給装置と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施例2に係る電子部品供給装置62における実施例1との相違点は、導電性のカバー27の材質をアルミニウムを主成分としたシート(アルミホイル)にした点のみである。
【0035】
(チップ形電子部品の吸着テスト結果)
図5に示した実施例1に係る電子部品供給装置61を、図7に示したように電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。
【0036】
また、図9に示した実施例2に係る電子部品供給装置62を、図7に示したように電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。
【0037】
さらに、以下に示した3つの比較例の吸着テスト結果も実施した。以上、計5つの吸着テストの結果を表1に示した。
【0038】
〔比較例1〕
図4に示した電子部品実装装置9を、電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。尚、リールは、実施例1と同一のポリエチレン樹脂製の非導電性(絶縁性)のリールを用いた。
【0039】
〔比較例2〕
図4に示した電子部品実装装置9を、電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。尚、リールは、ポリエチレン樹脂にカーボンを含有した黒色の導電性リールを用いた。
【0040】
〔比較例3〕
図9に示した電子部品実装装置62を、電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。尚、リールは、ポリエチレン樹脂製の非導電性(絶縁性)のリールではなく、比較例2と同一のポリエチレン樹脂にカーボンを含有した黒色の導電性リールを用いた。
【0041】
【表1】
【0042】
表1により、非導電性のリールを、接地された導電性のカバーで覆うことにより、吸着成功率が99.9%以上になることが分かる。
【0043】
(リールの電圧の測定結果)
前記した表1のデータを採取する際、実施例1、実施例2および比較例1で示したそれぞれの非導電性のリールの電圧を測定した結果を表2に示した。
尚、リールの電圧(電位)の測定は、春日電機社製のデジタル低電位測定器KSD−0303を用いた。図10に示したように、この測定器55にケーブル57により接続されたプローブ56を、リール8から約10mm離して測定した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2により、非導電性のリールを、接地された導電性のカバーで覆うことにより、リールの電圧(電位)が−300V程度まで低下していることが分かる。
【0046】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【0047】
前記した実施例においては、図1乃至図3に示したように電子部品搬送体1として、キャリアテープ2とトップカバーテープ3とボトムテープ4とからなるものを示した、つまり、キャリアテープの収納部がキャリアテープにあけた貫通孔の側面とボトムテープにより形成されるものを示したが、これに限定されるものではない。例えば、電子部品搬送体1が、凹部が形成されたキャリアテープ2とトップカバーテープ3とから構成され、ボトムテープの無いものであっても良い。
【0048】
また、前記した実施例においては、袋状のカバーを示したが、図11に示したように、非導電性のリール8の全体をアルミニウム、鉄等の金属板からなる箱状のケース34で覆い、このケース34をケーブル25により接地しても良い。尚、図11において、ケース34を電子部品供給装置の本体16にネジ等で固定し、金属板からなる蓋36を金属製の蝶番35を用いて取り付ければ、リール8の交換が容易な電子部品供給装置にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、プリント配線基板に電子部品を実装するために用いる電子部品供給装置および電子部品実装装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電子部品搬送体
2 キャリアテープ
3 トップカバーテープ
5 貫通穴
6 チップ形電子部品
8 リール
9 電子部品供給装置
23 カバー
27 カバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーピングされた電子部品を供給する電子部品供給装置と、該電子部品供給装置を搭載した電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップコンデンサ、チップ抵抗器等のチップ形電子部品は、電子部品搬送体により電子部品実装機に供給されている。
ここで、電子部品搬送体とは、長手方向に間隔をおいて複数の収納部(ポケット)が形成されたキャリアテープの上面にトップカバーテープが貼り付けられ、各収納部内に電子部品が収納されたものをいう。
【0003】
尚、収納部は、凹部であっても良く(例えば、特許文献1参照)、キャリアテープに貫通穴があけられて、そのキャリアテープの裏面にボトムテープが貼り付けられて形成されていても良い(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
この電子部品搬送体による電子部品実装機へのチップ形電子部品の供給は、まず、リールに巻かれた電子部品搬送体を電子部品供給装置にセットした後、この電子部品供給装置を電子部品実装装置にセットする。そして、電子部品実装装置からの動力(エアー、電気等)の供給により電子部品供給装置がキャリアテープの送りとトップカバーテープの剥離を間欠的に行うことによりなされている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
つまり、トップカバーテープがキャリアテープから間欠的に剥離されて、上面からトップカバーテープが無くなると、キャリアテープの収納部内に収納されたチップ形電子部品は、キャリアテープの収納部に収納されたままキャリアテープごと電子部品実装装置の電子部品取出部に間欠的に送られ、電子部品実装装置の吸着ヘッドにより吸着把持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平06−018365号公報
【特許文献2】特開平06−092388号公報
【特許文献3】特開平05−021987号公報
【特許文献4】特開平11−046089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、吸着ヘッドがチップ形電子部品を吸着する際に、吸着ヘッドに対してチップ形電子部品の位置がずれると、チップ形電子部品の吸着ミスが多発するという問題がある。
【0008】
これは、電子部品搬送体を巻いた非導電性のリールは、生産現場への搬送時の摩擦、電子部品供給装置にセットした後のリールの回転等により、リールの表面が、−3000V〜−500Vに帯電していることが原因の一つとして挙げられる。つまり、リールの表面が−3000V〜−500Vに帯電していると、リールに巻かれた電子部品搬送体もリールからの誘導及びリールとの摩擦により同電位または逆電位に帯電する。そうすると、電子部品搬送体のキャリアテープ、トップカバーテープ等も帯電するため、静電気により電子部品がキャリアテープの収納部の壁等に貼り付くのである。
【0009】
本発明は、前記した問題を解決するためになされたものであって、リール表面の電位を下げることにより、電子部品搬送体の帯電量を下げ、電子部品実装装置の電子部品の吸着率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明)
第1発明は、電子部品をキャリアテープの収納部に収納し、このキャリアテープの表面をトップカバーテープで覆った電子部品搬送体を、非導電性のリールから引き出し、キャリアテープからトップカバーテープを剥離し、トップカバーテープが剥離された電子部品搬送体のキャリアテープを、電子部品取出部に搬送する電子部品供給装置に関し、リールを導電性のカバーで覆い、カバーを接地したことを特徴とするものである。ここで、接地とは、大地と導線で結び、大地と電位を等しくすることをいう。
【0011】
かかる構成により、リール表面の−3000V〜−500Vの電位を、−300V程度に下げることができるので、静電気によるキャリアテープ等への電子部品の貼り付きを低減した電子部品供給装置を提供できる。このため、電子部品実装装置の吸着ヘッドによる電子部品の吸着成功率を向上できる。
【0012】
前記したように、非導電性のリールを導電性のカバーで覆い、この導電性のカバーを接地すると、非導電性のリールと、カバーの間にコンデンサ成分ができる。そうすると、このコンデンサ成分による静電容量と、リールの静電容量とが合成されて、より大きな合成静電容量(C)となる。
【0013】
一方、非導電性のリールは、生産稼働中の摩擦が一定であるため、リールの電荷(Q)は一定である。このため、Q(電荷)=C(静電容量)×V(電圧)の公式より、Q(電荷)が一定で、C(静電容量)が大きくなるので、V(電圧)が−300Vまで小さくなるのである。
【0014】
(第2発明)
第2発明は、少なくとも第1発明の電子部品供給装置と、この電子部品供給装置から電子部品を取り出し、プリント配線基板に電子部品を実装するヘッドとを備えた電子部品実装装置に関するものである。
かかる構成により、前記した第1発明と同一の効果を奏する電子部品実装装置を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、吸着ヘッドによる電子部品の吸着率を向上できる電子部品供給装置および電子部品実装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電子部品搬送体の斜視図である(実施例1)
【図2】トップカバーテープが剥離されたキャリアテープの平面図である。(実施例1)
【図3】キャリアテープの側面図である(実施例1)
【図4】電子部品供給装置の側面図である(実施例1)
【図5】カバーを付けた電子部品供給装置の側面である(実施例1)
【図6】カバーの斜視図である(実施例1)
【図7】電子部品実装装置の斜視図である(実施例1)
【図8】電子部品供給装置の斜視図である(実施例1)
【図9】電子部品供給装置の側面図である(実施例2)
【図10】リールの電圧を測定する方法を示した図である
【図11】電子部品供給装置の側面図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
(電子部品搬送体の概要)
図1乃至図3に示すように、電子部品搬送体1は、キャリアテープ2とトップカバーテープ3とボトムテープ4とからなる。より詳しく説明すると、電子部品搬送体1は、長手方向に間隔をおいて複数の貫通穴5が形成された紙製のキャリアテープ2の下面に、アセテート製のボトムテープ4が接着剤等により貼り付けられている。このため、キャリアテープ2には、貫通穴5とボトムテープ4により収納部が形成されている。この収納部の各々にチップ形電子部品6が収納されている。
【0019】
そして、キャリアテープ2の上面には、樹脂(例えば、PETとPEの2層構造)製のトップカバーテープ3が接着剤等により貼り付けられ、電子部品搬送体1からチップ形電子部品6が落下しないようになっている。また、電子部品搬送体1は、リール8に巻かれており、キャリアテープの短手方向の端部には、後述する電子部品供給装置が電子部品搬送体1を搬送するための送り孔7が長手方向に等間隔にあけられている。
【0020】
(電子部品供給装置の概要)
電子部品供給装置は、特開平05−21987号公報、特開平9−186487号公報、特開平11−46089号公報等に記載されたものの他、電子部品実装機メーカーから供給されているものを用いることができる。以下にその一例を説明する。
【0021】
図4は、電子部品供給装置9に、電子部品搬送体1を巻いたリール8をセットした状態を示した図である。電子部品供給装置9の本体16の後端部には軸10が固定されている。この軸10にリール8の略中央部にあけられた孔11を挿入することにより、電子部品供給装置9にリール8をセット(取り付ける)ことができる。
【0022】
リール8から引き出された電子部品搬送体1は、本体16の先端部26に取り付けられ電子部品搬送体1を所定ピッチずつ送る図示しないスプロケットに取り付けられている。具体的には、スプロケットの周面に設けられた複数の係合刃が電子部品搬送体1の送り孔7に挿入されている。そして、図示しない電子部品実装装置から供給されるエアー、電気等の動力により動作する駆動機構によって間欠的に回転するスプロケットの動作により、電子部品搬送体1はリール8から引き出されると共に先端部26に向かって搬送される。
【0023】
電子部品供給装置9の本体16の先端部26には、テープ剥離部としての板12が取り付けられており、この板12により、リール8から引き出された電子部品搬送体1の上面に貼り付けられたトップカバーテープ3がキャリアテープ2の上面から剥離される。そして、キャリアテープ2の上面から剥離されたトップカバーテープ3は、本体16の略中央部に取り付けられた巻き取りリール13により巻き取られる。
【0024】
一方、板12によりトップカバーテープ3を剥離されたキャリアテープ2は、電子部品供給装置9の本体16の先端部26に取り付けられたスプロケットの形状に沿って円弧状に彎曲し、電子部品供給装置9の本体16の略中央下部から排出される。
【0025】
尚、電子部品搬送体1の搬送(スプロケットの間欠駆動)および剥離したトップカバーテープ3の巻き取りリール13での巻き取りは、本体16に取り付けられた図示しないエアシリンダ等の駆動機構を用いて行なう。
【0026】
また、電子部品供給装置9の下面には2本の位置決めピン15が付いており、図8に示す様に、この2本の位置決めピン15を電子部品実装装置の位置決め穴21に挿入することにより、電子部品供給装置9を電子部品実装装置にセットすることができる。
【0027】
そして、図示しない電子部品実装装置のヘッドとしての吸着ヘッドは、板12によりトップカバーテープ3が剥離された直後の電子部品取出部としての把持部14において、キャリアテープ2の収納部に収納されたチップ形電子部品6を吸着する。
【0028】
(本発明に係る電子部品供給装置)
図5に示す様に、本発明に係る電子部品供給装置61は、前記した一般的な電子部品供給装置9に、非導電性のリール8の全体を覆うカバー23と、このカバー23を接地するケーブル25を設けたものである。
【0029】
カバー23は、図6に示すように、開口部28を備えた袋状のものであり、表面抵抗値が107Ω以下の導電性のものであれば良い。尚、表面抵抗値の測定は、測定試料(カバー)を表面抵抗1014以上の基台の上Bに載せ、その測定試料の上に2つのプローブを載せ、2点間の抵抗値を測定する。測定器は、例えば、トレック・ジャパン社製の表面抵抗計MODEL152等を用いることができる。
【0030】
本実施例1においては、カバー23として、透明な軟質塩化ビニル製の袋の内側に網の目状にカーボンを含有した塗料が塗布された(カーボンメッシュの)アキレス社製の導電シート(品名:セイデンF)を用いた。また、リール8は、ポリエチレン樹脂製の非導電性(絶縁性)のリールを用いた。
【0031】
(本発明に係る電子部品実装装置)
図7は、本発明に係る電子部品実装装置50の斜視図であり、本発明に係る電子部品供給装置61を電子部品実装装置50の台52に3台取り付けた状態を示した図である。電子部品実装装置50は、本発明に係る電子部品供給装置61から供給されたチップ形電子部品6を、把持部14において図示しない吸着ヘッドによりバキューム把持して、コンベア51により搬送された図示しないプリント配線基板に実装するものである。
【0032】
本発明に係る電子部品実装装置50は、電子部品供給装置61を用いた以外は一般的なチップ形電子部品を実装する電子部品実装装置であっても良い。一般的なチップ形電子部品の電子部品実装装置は、市販されており、特開平11−46089号公報、特開平08−242094号公報等の多くの文献が存在するので、これ以上の説明を省略する。
【実施例2】
【0033】
本発明の他の実施例を図9を用いて詳細に説明する。
図9は、本発明に係る電子部品供給装置の側面図である。説明を分かり易くするため、実施例1に係る電子部品供給装置と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施例2に係る電子部品供給装置62における実施例1との相違点は、導電性のカバー27の材質をアルミニウムを主成分としたシート(アルミホイル)にした点のみである。
【0035】
(チップ形電子部品の吸着テスト結果)
図5に示した実施例1に係る電子部品供給装置61を、図7に示したように電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。
【0036】
また、図9に示した実施例2に係る電子部品供給装置62を、図7に示したように電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。
【0037】
さらに、以下に示した3つの比較例の吸着テスト結果も実施した。以上、計5つの吸着テストの結果を表1に示した。
【0038】
〔比較例1〕
図4に示した電子部品実装装置9を、電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。尚、リールは、実施例1と同一のポリエチレン樹脂製の非導電性(絶縁性)のリールを用いた。
【0039】
〔比較例2〕
図4に示した電子部品実装装置9を、電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。尚、リールは、ポリエチレン樹脂にカーボンを含有した黒色の導電性リールを用いた。
【0040】
〔比較例3〕
図9に示した電子部品実装装置62を、電子部品実装装置(ヤマハ発動機社製I−CUBE2)の台に取付け、チップ形電子部品(KOA株式会社製RK73B1ETTP)の吸着テストを実施した。尚、リールは、ポリエチレン樹脂製の非導電性(絶縁性)のリールではなく、比較例2と同一のポリエチレン樹脂にカーボンを含有した黒色の導電性リールを用いた。
【0041】
【表1】
【0042】
表1により、非導電性のリールを、接地された導電性のカバーで覆うことにより、吸着成功率が99.9%以上になることが分かる。
【0043】
(リールの電圧の測定結果)
前記した表1のデータを採取する際、実施例1、実施例2および比較例1で示したそれぞれの非導電性のリールの電圧を測定した結果を表2に示した。
尚、リールの電圧(電位)の測定は、春日電機社製のデジタル低電位測定器KSD−0303を用いた。図10に示したように、この測定器55にケーブル57により接続されたプローブ56を、リール8から約10mm離して測定した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2により、非導電性のリールを、接地された導電性のカバーで覆うことにより、リールの電圧(電位)が−300V程度まで低下していることが分かる。
【0046】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【0047】
前記した実施例においては、図1乃至図3に示したように電子部品搬送体1として、キャリアテープ2とトップカバーテープ3とボトムテープ4とからなるものを示した、つまり、キャリアテープの収納部がキャリアテープにあけた貫通孔の側面とボトムテープにより形成されるものを示したが、これに限定されるものではない。例えば、電子部品搬送体1が、凹部が形成されたキャリアテープ2とトップカバーテープ3とから構成され、ボトムテープの無いものであっても良い。
【0048】
また、前記した実施例においては、袋状のカバーを示したが、図11に示したように、非導電性のリール8の全体をアルミニウム、鉄等の金属板からなる箱状のケース34で覆い、このケース34をケーブル25により接地しても良い。尚、図11において、ケース34を電子部品供給装置の本体16にネジ等で固定し、金属板からなる蓋36を金属製の蝶番35を用いて取り付ければ、リール8の交換が容易な電子部品供給装置にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、プリント配線基板に電子部品を実装するために用いる電子部品供給装置および電子部品実装装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電子部品搬送体
2 キャリアテープ
3 トップカバーテープ
5 貫通穴
6 チップ形電子部品
8 リール
9 電子部品供給装置
23 カバー
27 カバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品をキャリアテープの収納部に収納し、該キャリアテープの表面をトップカバーテープで覆った電子部品搬送体を、非導電性のリールから引き出し、
前記キャリアテープから前記トップカバーテープを剥離し、
前記トップカバーテープが剥離された前記電子部品搬送体の前記キャリアテープを、電子部品取出部に搬送する電子部品供給装置において、
前記リールを導電性のカバーで覆い、
該カバーを接地したことを特徴とする電子部品供給装置
【請求項2】
少なくとも請求項1に記載の電子部品供給装置と、
該電子部品供給装置から電子部品を取り出し、プリント配線基板に前記電子部品を実装するヘッドとを備えた電子部品実装装置
【請求項1】
電子部品をキャリアテープの収納部に収納し、該キャリアテープの表面をトップカバーテープで覆った電子部品搬送体を、非導電性のリールから引き出し、
前記キャリアテープから前記トップカバーテープを剥離し、
前記トップカバーテープが剥離された前記電子部品搬送体の前記キャリアテープを、電子部品取出部に搬送する電子部品供給装置において、
前記リールを導電性のカバーで覆い、
該カバーを接地したことを特徴とする電子部品供給装置
【請求項2】
少なくとも請求項1に記載の電子部品供給装置と、
該電子部品供給装置から電子部品を取り出し、プリント配線基板に前記電子部品を実装するヘッドとを備えた電子部品実装装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−262953(P2010−262953A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110221(P2009−110221)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(310010793)富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(310010793)富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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