説明

電子部品及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、内蔵される回路素子を大きく形成することができると共に、簡単な製造工程により製造できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】積層体12は、複数の絶縁体層が積層されてなる。コイルLは、積層体12に内蔵され、かつ、絶縁体層間から積層体12の側面から外部に露出している露出部19を有している。金属膜20は、露出部19を覆うように積層体12の側面に設けられている。金属膜20の表面24は、酸化されることにより絶縁性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及びその製造方法に関し、より特定的には、回路素子を内蔵している積層体を備えている電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の積層型コイルが知られている。以下に、特許文献1に記載の積層型コイルについて説明する。図4は、特許文献1に記載の積層型コイル100の分解斜視図である。
【0003】
積層型コイル100は、図4に示すように、複数の絶縁性シート102が積層されることにより構成されている。また、積層型コイル100は、複数のコイル導体パターン104及び複数のビアホール106が接続されて構成されているコイルLを内蔵している。コイル導体パターン104は、絶縁性シート102上において外周縁部とのギャップが零となるように形成されている。これにより、コイルLの径を大きくすることができ、コイルLのインダクタンス値を大きくすることができる。
【0004】
ところで、積層型コイル100では、コイル導体パターン104は、絶縁性シート102間から外部に露出している。そのため、積層型コイル100の実装時に他の電子部品や配線等が、コイル導体パターン104が露出している部分に接触して、ショートが発生するおそれがある。そこで、積層型コイル100では、側面を覆うように絶縁膜(図4には図示せず)が設けられている。
【0005】
しかしながら、積層型コイル100は、絶縁膜を形成する工程が複雑になるという問題を有している。より詳細には、積層型コイル100では、絶縁性シート102を積層した後に、コーティング材やセラミックペースト等をディッピングや印刷等の方法により塗布して絶縁膜を形成し、更に、外部電極を形成している。そのため、コイルLにおいて外部電極と接続される部分は、外部電極の形成工程において外部に露出している必要がある。したがって、ディッピングにより絶縁膜を形成する場合には、コイルLにおいて外部電極と接続させる部分を露出させるために、絶縁膜の一部を除去する必要がある。また、印刷により絶縁膜を形成する場合には、コイルLにおいて外部電極と接続される部分に絶縁膜が形成されないようにスクリーンやマスクを用いて一面ずつ塗布する必要がある。以上のように、積層型コイル100は、絶縁膜を形成する工程が複雑になるために、製造工程が複雑になるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−313212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、内蔵される回路素子を大きく形成することができると共に、簡単な製造工程により製造できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る電子部品は、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、前記積層体に内蔵され、かつ、前記絶縁体層間から該積層体の外部に露出している露出部を有している回路素子と、前記露出部を覆うように前記積層体の表面に設けられている金属膜と、を備えており、前記金属膜の表面は、酸化されることにより絶縁性を有していること、を特徴とする。
【0009】
本発明の一形態に係る電子部品の製造方法であって、前記回路素子を内蔵している前記積層体を準備する工程と、前記金属膜を、めっき工法により形成する工程と、前記金属膜の表面を酸化する工程と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内蔵される回路素子を大きく形成することができると共に、簡単な製造工程により製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】一実施形態に係る電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】図1の電子部品のA−Aにおける断面構造図である。
【図4】特許文献1に記載の積層型コイルの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品及びその製造方法について説明する。
【0013】
(電子部品の構成)
本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法にて作製される電子部品の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る電子部品10の積層体12の分解斜視図である。図3は、図1の電子部品10のA−Aにおける断面構造図である。
【0014】
以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10のz軸方向の正方向側の面(以下、上面と称す)の2辺に沿った方向をx軸方向及びy軸方向と定義する。x軸方向とy軸方向とz軸方向とは直交している。また、電子部品10のz軸方向の負方向側の面を下面と称す。更に、電子部品10の上面及び下面以外の面を側面と称す。
【0015】
電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極14(14a,14b)、金属膜20(20a〜20e)、及び、コイル(電子素子)L(図1には図示せず)を備えている。積層体12は、直方体状をなしており、コイルLを内蔵している。
【0016】
外部電極14a,14bはそれぞれ、積層体12の上面及び下面に設けられている。また、外部電極14a,14bはそれぞれ、上面及び下面から折り返されることにより、側面にも設けられている。
【0017】
積層体12は、図2に示すように、絶縁体層16(16a〜16m)がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積層されることにより構成されている。絶縁体層16は、磁性体材料(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)からなる長方形状の層である。なお、磁性体材料とは、−55℃以上+125℃以下の温度範囲において、磁性体材料として機能する材料を意味する。以下では、絶縁体層16のz軸方向の正方向側の面を表面と称し、絶縁体層16のz軸方向の負方向側の面を裏面と称す。
【0018】
コイルLは、積層体12に内蔵され、図2に示すように、コイル導体層18(18a〜18e)及びビアホール導体v1〜v13により構成されている。コイルLは、コイル導体層18a〜18e及びビアホール導体v1〜v13が接続されることにより螺旋状をなすように構成され、z軸方向と平行なコイル軸を有している。
【0019】
コイル導体層18a〜18eは、図2に示すように、絶縁体層16e〜16iの表面上に設けられており、絶縁体層16e〜16iの外縁に接しながら旋回するコ字型の線状導体層である。より詳細には、コイル導体層18a〜18eは、3/4ターンのターン数を有しており、絶縁体層16e〜16iの三辺に沿って設けられている。コイル導体層18aは、絶縁体層16eにおいて、x軸方向の正方向側の辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体層18bは、絶縁体層16fにおいて、y軸方向の正方向側の辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体層18cは、絶縁体層16gにおいて、x軸方向の負方向側の辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体層18dは、絶縁体層16hにおいて、y軸方向の負方向側の辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体層18eは、絶縁体層16iにおいて、x軸方向の正方向側の辺以外の三辺に沿って設けられている。
【0020】
以上のように、コイル導体層18a〜18eが絶縁体層16e〜16iの外縁に接することにより、コイル導体層18a〜18e(すなわち、コイルL)は、図2及び図3に示すように、絶縁体層16間から積層体12の外部に露出している露出部19(19a〜19e)(太線で表示)を有している。露出部19aは、絶縁体層16eのx軸方向の正方向側の辺を除く三辺全体と、絶縁体層16eのx軸方向の正方向側の辺の両端近傍に位置している。露出部19bは、絶縁体層16fのy軸方向の正方向側の辺を除く三辺全体と、絶縁体層16fのy軸方向の正方向側の辺の両端近傍に位置している。露出部19cは、絶縁体層16gのx軸方向の負方向側の辺を除く三辺全体と、絶縁体層16gのx軸方向の負方向側の辺の両端近傍に位置している。露出部19dは、絶縁体層16hのy軸方向の負方向側の辺を除く三辺全体と、絶縁体層16hのy軸方向の負方向側の辺の両端近傍に位置している。露出部19eは、絶縁体層16iのx軸方向の正方向側の辺を除く三辺全体と、絶縁体層16iのx軸方向の正方向側の辺の両端近傍に位置している。
【0021】
以下では、コイル導体層18において、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りの上流側の端部を上流端とし、時計回りの下流側の端部を下流端とする。なお、コイル導体層18のターン数は、3/4ターンに限らない。よって、コイル導体層18のターン数は、例えば、1/2ターンであってもよいし、7/8ターンであってもよい。
【0022】
ビアホール導体v1〜v13は、図2に示すように、絶縁体層16a〜16mをz軸方向に貫通するように設けられている。ビアホール導体v1〜v4は、絶縁体層16a〜16dをz軸方向に貫通しており、互いに接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体v1のz軸方向の正方向側の端部は、図3に示すように、外部電極14aに接続されている。また、ビアホール導体v4のz軸方向の負方向側の端部は、コイル導体層18aの上流端に接続されている。
【0023】
ビアホール導体v5は、絶縁体層16eをz軸方向に貫通し、コイル導体層18aの下流端及びコイル導体層18bの上流端に接続されている。ビアホール導体v6は、絶縁体層16fをz軸方向に貫通し、コイル導体層18bの下流端及びコイル導体層18cの上流端に接続されている。ビアホール導体v7は、絶縁体層16gをz軸方向に貫通し、コイル導体層18cの下流端及びコイル導体層18dの上流端に接続されている。ビアホール導体v8は、絶縁体層16hをz軸方向に貫通し、コイル導体層18dの下流端及びコイル導体層18eの上流端に接続されている。
【0024】
ビアホール導体v9〜v13は、絶縁体層16i〜16mをz軸方向に貫通しており、互いに接続されることにより1本のビアホール導体を構成している。ビアホール導体v9のz軸方向の正方向側の端部は、コイル導体層18eの下流端に接続されている。また、ビアホール導体v13のz軸方向の負方向側の端部は、図3に示すように、外部電極14bに接続されている。
【0025】
金属膜20(20a〜20e)は、図1及び図3に示すように、露出部19(19a〜19e)のみを覆うように積層体12の側面に設けられている。よって、金属膜20は、露出部19以外の部分には設けられておらず、積層体12の側面を周回する線状をなしている。金属膜20は、めっき工法により露出部19上に形成されたアルミニウム(Al)膜である。そして、金属膜20の表面24(図3では、表面24bを例示)は、図3に示すように、酸化されることにより絶縁性を有している。一方、金属膜20の内部22(図3では、内部22bを例示)は、図3に示すように、酸化されておらず、アルミニウムのままである。
【0026】
また、ビアホール導体v1,v13はそれぞれ、積層体12の上面及び下面において、積層体12の外部に露出部27(27a,27b)にて露出している。そして、電子部品10では、露出部27(27a,27b)を覆うように、金属膜26(26a,26b)が設けられている。金属膜26は、金属膜20と同じめっき工法により露出部27上に形成されたアルミニウム(Al)膜である。ただし、金属膜26の表面は、酸化されておらず、絶縁性を有していない。
【0027】
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10の製造方法について図1ないし図3を参照しながら説明する。なお、以下では、1つの電子部品10を製造する場合について説明するが、実際には、マザー積層体が作製されカットされることにより、複数の電子部品10が同時に製造される。
【0028】
まず、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、酸化第二鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
【0029】
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可塑剤、湿潤材及び分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを作製する。
【0030】
次に、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートのそれぞれに、ビアホール導体v1〜v13を形成する。具体的には、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートにレーザビームを照射してビアホールを形成する。更に、ビアホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性材料からなるペーストを印刷塗布などの方法により充填して、ビアホール導体v1〜v13を形成する。
【0031】
次に、絶縁体層16e〜16iとなるべきセラミックグリーンシート上に、導電性材料からなるペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コイル導体層18(18a〜18e)を形成する。導電性材料からなるペーストは、例えば、Agに、ワニス及び溶剤が加えられたものである。
【0032】
なお、コイル導体層18(18a〜18e)を形成する工程とビアホールに対して導電性材料(Ag又はAg−Pt)からなるペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
【0033】
次に、絶縁体層16a〜16mとなるべきセラミックグリーンシートをz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層及び圧着して未焼成の積層体12を得る。具体的には、絶縁体層16a〜16mとなるべきセラミックグリーンシートを1枚ずつ積層及び仮圧着する。この後、未焼成の積層体12に対して、静水圧プレスにて本圧着を施す。静水圧プレスの条件は、100MPaの圧力及び45℃の温度である。以上の工程により、複数の未焼成の積層体12が準備される。
【0034】
次に、未焼成の積層体12に、脱バインダー処理及び焼成を施す。脱バインダー処理は、例えば、低酸素雰囲気中においておよそ500℃で2時間の条件で行う。焼成は、例えば、870℃〜900℃で2.5時間の条件で行う。この後、積層体12の表面に、バレル研磨処理を施して、面取りを行う。
【0035】
バレル研磨処理後に、積層体12の露出部19,27上にアルミニウムの金属膜20,26をめっき工法により形成する。具体的には、バレル電解めっき工法を用いる。バレル電解めっきは、メッシュのバレルの中に陰極を設け、これに対応してバレルの外部に設けたアルミニウム棒からなる陽極との間にアルミニウムめっき液を介在させ、上記バレルに積層体12と導体のメディアボールを入れ、これらを一緒に攪拌しながらめっきを行うものである。この場合、陰極と直接又はメディアボールを通して通電されることにより、導電性を有する露出部19,27上には、アルミニウムが析出する。一方、積層体12の表面において露出部19,27以外の部分は、絶縁性材料により構成されている。そのため、露出部19,27以外の部分には、アルミニウムは析出しない。
【0036】
次に、Agを主成分とする導電性材料からなる電極ペーストを、積層体12の上面、下面及び側面の一部に塗布する。そして、塗布した電極ペーストを約800℃の温度で1時間の条件で焼き付ける。これにより、外部電極14となるべき銀電極を形成する。この際、露出部27上に形成された金属膜26は、外部電極14により覆われる。
【0037】
次に、陽極酸化処理を施すことにより、金属膜20の表面24を酸化する。陽極酸化処理の条件は、以下の通りである。
電解液:10体積%〜30体積%の硫酸
温度:15℃〜25℃
電流密度:60A/m2〜300A/m2
時間:1時間
これにより、アルミニウムからなる金属膜20の表面24は、絶縁性を有する酸化アルミニウム(Al23)となる。なお、金属膜26の表面は、外部電極14となるべき銀電極に覆われているので、酸化されない。
【0038】
更に、金属膜20の表面24に対して、封孔処理を施す。具体的には、積層体12を沸騰水に10分以上浸漬する。沸騰水には、酢酸ニッケルを5g/l〜5.8g/lの割合で混合することが望ましい。封孔処理を施すことにより、金属膜20の表面24の耐食性が向上する。
【0039】
最後に、外部電極14となるべき銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施すことにより、外部電極14を形成する。この際、金属膜20の表面24上には、Niめっき/Snめっきは施されない。これは、金属膜20の表面24が絶縁性を有しているためである。以上の工程を経て、図1に示すような電子部品10が完成する。
【0040】
(効果)
以上のような電子部品10及びその製造方法によれば、内蔵される回路素子を大きく形成することができる。より詳細には、電子部品10では、コイル導体層18は、図2に示すように、絶縁体層16の外縁に接している。すなわち、コイル導体層18と絶縁体層16の外縁との間に隙間が存在しない。よって、電子部品10は、コイル導体層と絶縁体層の外縁との間に隙間が存在する電子部品に比べて、コイルLの径を大きくすることができる。よって、電子部品10及びその製造方法では、内蔵されるコイルL(回路素子)を大きく形成することができる。その結果、コイルLのインダクタンス値を大きくすることが可能となる。
【0041】
更に、電子部品10及びその製造方法によれば、簡単な製造工程により電子部品10を製造できる。より詳細には、図4に示す従来の積層型コイル100では、コイル導体パターン104は、絶縁性シート102間から外部に露出している。そのため、積層型コイル100の実装時に他の電子部品や配線等が、コイル導体パターン104が露出している部分に接触して、ショートが発生するおそれがある。そこで、積層型コイル100では、側面を覆うように絶縁膜(図4には図示せず)が設けられている。
【0042】
しかしながら、積層型コイル100は、絶縁膜を形成する工程が複雑になるという問題を有している。より詳細には、積層型コイル100では、絶縁性シート102を積層した後に、コーティング材やセラミックペースト等をディッピングや印刷等の方法により塗布して絶縁膜を形成し、更に、外部電極を形成している。そのため、コイルLにおいて外部電極と接続される部分は、外部電極の形成工程において外部に露出している必要がある。したがって、ディッピングにより絶縁膜を形成する場合には、コイルLにおいて外部電極と接続させる部分を露出させるために、絶縁膜の一部を除去する必要がある。また、印刷により絶縁膜を形成する場合には、コイルLにおいて外部電極と接続される部分に絶縁膜が形成されないようにスクリーンやマスクを用いて一面ずつ塗布する必要がある。以上のように、積層型コイル100は、絶縁膜を形成する工程が複雑になるために、製造工程が複雑になるという問題を有している。
【0043】
これに対して、電子部品10及びその製造方法では、金属膜20は、露出部19を覆うように設けられている。これにより、露出部19に対してめっき工法により、金属膜20を形成することが可能となる。より詳細には、めっき工法では導電性を有する部分にのみアルミニウムが析出するので、露出部19上に対して金属膜20が形成される。そして、金属膜20の表面は酸化により絶縁性を有しているので、金属膜20に他の電子部品や配線等が接触したとしても、コイル導体層18と他の電子部品や配線等との間でショートが発生しない。このように、電子部品10及び製造方法では、金属膜20が露出部19上に設けられているので、絶縁性を有する金属膜20をめっき工法により簡単に形成できる。よって、電子部品10及びその製造方法では、絶縁膜を除去する工程、及び、絶縁膜を印刷する工程が不要である。以上より、電子部品10及びその製造方法によれば、簡単な製造工程により電子部品10を製造できる。
【0044】
また、電子部品10及びその製造方法では、金属膜20は、めっき工法により形成されるので、露出部19を覆うように設けられ、露出部19以外の部分には設けられていない。よって、金属膜20同士が積層体12の表面においてつながることがない。その結果、電子部品10では、コイル導体層18間において金属膜20によってショートが発生することがない。
【0045】
また、電子部品10及びその製造方法では、コイルLの直流抵抗値を低減することができる。より詳細には、電子部品10では、コイル導体層18の露出部19を覆うように金属膜20が設けられている。そして、金属膜20の内部22は、酸化されないので、導電性を有している。そのため、金属膜20の内部22は、コイルLの一部を構成するようになる。その結果、コイルLの断面積が大きくなり、コイルLの直流抵抗値が小さくなる。
【0046】
また、電子部品10及びその製造方法では、電子部品10の放熱性が向上する。より詳細には、図4に示す従来の積層型コイル100では、コイル導体パターン104が露出している部分は、絶縁膜により覆われている。そのため、積層型コイル100では、コイルLから発せられる熱は、コーティング材やセラミックペースト等の絶縁膜を介して外部に放出される。
【0047】
一方、電子部品10では、露出部19は、コーティング材やセラミックペースト等の絶縁膜に比べて熱伝導率が高いアルミニウム及び酸化アルミニウムからなる金属膜20により覆われている。よって、電子部品10では、コイルLから発せられる熱は、金属膜20を介して外部に放出される。その結果、電子部品10は、積層型コイル100に比べて、高い放熱性を有している。
【0048】
また、電子部品10及びその製造方法では、積層体12の表面のバレル研磨処理を金属膜20の形成前に行っている。これにより、バレル研磨処理により金属膜20が削り取られることが防止される。
【0049】
また、電子部品10及びその製造方法では、金属膜20を形成した後に、外部電極14の形成し、その後に金属膜20の表面を酸化させている。これにより、金属膜26の表面が酸化されることを抑制できる。その結果、コイルLと外部電極14との境界に酸化アルミニウムによる絶縁膜が形成され、コイルLと外部電極14との間において断線が発生することが防止される。
【0050】
(その他の実施形態)
以上のように構成された電子部品10及びその製造方法は、前記実施形態に示したものに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0051】
金属膜20の材料は、アルミニウムに限らない。金属膜20の材料は、めっき工法により露出部19上に析出し、かつ、酸化されることにより絶縁性を有するものであればよい。このような材料としては、例えば、タンタルが挙げられる。タンタルは、酸化されると絶縁性を有する酸化タンタル(Ta25)となる。
【0052】
なお、電子部品10に内蔵される回路素子は、コイルLに限らない。該回路素子は、例えば、コンデンサであってもよい。回路素子がコンデンサである場合には、コンデンサ導体層の面積を大きくできるので、コンデンサの容量値を大きくすることが可能となる。
【0053】
なお、金属膜20の表面24を酸化する工程では、25mol%の割合でアルコールを電解液に対して混合し、該電解液を用いて50A/m2で50分の条件で陽極酸化処理を行った後、更に、該電解液を用いて600A/m2で10分の条件で陽極酸化処理を行うようにしてもよい。これにより、金属膜20の表面24の硬度及び耐食性が向上する。
【0054】
なお、金属膜20は、露出部19を覆うように設けられているとしている。ただし、金属膜20がめっき工法により形成されることによって露出部19からわずかにはみ出す程度は許容される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明は、電子部品及びその製造方法に有用であり、特に、内蔵される回路素子を大きく形成することができると共に、簡単な製造工程により製造できる点において優れている。
【符号の説明】
【0056】
L コイル
v1〜v13 ビアホール導体
10 電子部品
12 積層体
14a,14b 外部電極
16a〜16m 絶縁体層
18a〜18e コイル導体層
19a〜19e,27a,27b 露出部
20a〜20e,26a,26b 金属膜
22a〜22e 内部
24a〜24e 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、
前記積層体に内蔵され、かつ、前記絶縁体層間から該積層体の外部に露出している露出部を有している回路素子と、
前記露出部を覆うように前記積層体の表面に設けられている金属膜と、
を備えており、
前記金属膜の表面は、酸化されることにより絶縁性を有していること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記金属膜は、めっき工法により形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記金属膜の表面は、陽極酸化処理により酸化されていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記金属膜は、アルミニウム又はタンタルにより形成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記回路素子は、コイルであること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記コイルは、前記絶縁体層上に設けられている複数の導体層が接続されることにより構成されている螺旋状コイルであり、
前記複数の導体層は、前記絶縁体層上において、該絶縁体層の外縁に接しながら旋廻している線状導体層であること、
を特徴とする請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電子部品の製造方法であって、
前記回路素子を内蔵している前記積層体を準備する工程と、
前記金属膜を、めっき工法により形成する工程と、
前記金属膜の表面を酸化する工程と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記金属膜の表面を酸化する工程では、陽極酸化処理を施すこと、
を特徴とする請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記金属膜を形成する前に、前記積層体の表面に対してバレル研磨処理を施すこと、
を特徴とする請求項7又は請求項8のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記電子部品の製造方法は、
前記金属膜を形成する工程の後、前記金属膜の表面を酸化する工程前に、外部電極を形成する工程を、
更に備えていること、
を特徴とする請求項7又は請求項8のいずれかに記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−165807(P2011−165807A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25382(P2010−25382)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】