説明

電子部品及びその製造方法

【課題】メッキ膜上に置換メッキ膜を十分な厚みで確実に形成されている電子部品を提供する。
【解決手段】基板2上に、無電解メッキにより形成された第1のメッキ膜と、第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜、すなわち置換メッキ膜とを有する電極3,4が形成されており、第1のメッキ膜において、面積をS、第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたき、比S/Lが0.2以下である、電子部品1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に電極が形成されている電子部品及びその製造方法に関し、特に、無電解メッキにより形成された第1のメッキ膜及び第1のメッキ膜上に設けられた置換メッキ膜を有する電極が形成されている電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック多層基板のような基板上にメッキ膜を有する電極が形成されている様々な電子部品が知られている。近年、電子部品の高密度化に従って、基板上に形成される電極パターンが、複雑になってきている。電解メッキ法では、電界集中による膜厚ばらつきが生じたり、様々なパターンの電極に個々に配線を接続しなければならない。そこで、無電解メッキ法が広く用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、Ag導電ペーストにより形成された導電膜上に、銅、ニッケル、金、銀またはパラジウムからなるメッキ膜を無電解メッキ法により形成する方法が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、多層セラミック基板の表面をエッチング液によりエッチングした後、メッキにより外部電極を形成し、さらに電極上に、NiやAuメッキ膜を無電解メッキにより形成する方法が開示されている。
【0005】
さらに、下記の特許文献3には、アルミナ基板を粗化し、触媒付与した後、無電解メッキを行うことにより、Cu、NiまたはAuなどの貴金属からなるメッキ膜を形成する方法が開示されている。
【0006】
また、Agなどからなる電極の半田喰われを防止するために、Ag膜上にNiメッキ膜及びAuメッキ膜を順次形成してなる電極が知られている。この場合、半田喰われ防止層としてNiメッキ膜を無電解メッキ法により形成する。次に、半田接続性や導電性を高めるために、Niメッキ膜上に、置換Auメッキ膜を形成し、さらにAuメッキ膜を無電解メッキ法により形成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−49445号公報
【特許文献2】特開2007−318174号公報
【特許文献3】特開昭63−11675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述したように、近年、基板上に様々なパターン電極が形成されることが多い。他方、前述したように、無電解メッキ法によりメッキ膜を形成した後、メッキ膜上に置換メッキ膜を形成する場合、電極の形状や寸法によって、置換メッキ膜の膜厚がばらつくという問題のあることがわかった。
【0009】
例えば、半田喰われを防止するために、Niメッキ膜上に置換Auメッキ膜を形成する場合、置換Auメッキ膜の膜厚が電極によってばらつくことがあった。その結果、様々な形状及び寸法の電極が形成されている場合、中には、置換Auメッキ膜の厚みが十分でない電極が形成されることがあった。その結果、電気抵抗がばらついたり、下地のNiメッ
キ膜による半田喰われ防止効果が不十分であったりすることがあった。
【0010】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、メッキ膜上に、置換メッキ膜が十分な厚みで形成されている電極を有する電子部品及び該電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の第1の発明に係る電子部品は、基板と、前記基板の表面に形成されており、無電解メッキにより形成された第1のメッキ膜と、前記第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜としての置換メッキ膜とを有する電極とを備え、前記第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下であり、前記比S/Lが0.2以下である第1のメッキ膜が、複数の電極膜部分と、複数の電極膜部分を連結しており、かつ複数の電極膜部分よりも細いブリッジ部とを有する。
【0012】
本願の第2の発明に係る電子部品は、基板と、前記基板の表面に形成されており、無電解メッキにより形成された第1のメッキ膜と、前記第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜としての置換メッキ膜とを有する電極とを備え、前記第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下であり、前記比S/Lが0.2以下である第1のメッキ膜が、外周縁に凹凸を有する。
【0013】
本願の第3の発明に係る電子部品は、基板と、前記基板の表面に形成されており、無電解メッキにより形成された第1のメッキ膜と、前記第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜としての置換メッキ膜とを有する電極とを備え、前記第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下であり、前記比S/Lが0.2以下である前記第1のメッキ膜が、電極内部に電極欠落部を有する。この場合、長さLは、第1のメッキ膜の周囲の長さと、上記電極欠落部を囲む部分の長さの合計となる。
【0014】
本発明に係る電子部品のある特定の局面では、前記電極が、前記基板の表面と、前記第1のメッキ膜との間に積層された金属膜をさらに有する。このように、第1のメッキ膜の下方に、さらに金属膜が設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明に係る電子部品の他の特定の局面では、前記置換メッキ膜上に無電解メッキにより形成された第3のメッキ膜を有する。このように、第2のメッキ膜としての置換メッキ膜上に、さらに第3のメッキ膜を置換メッキ膜を構成している金属と同じ金属で形成してもよい。それによって、電極の導電性や半田などの導電性接合材に対する接合性を高めたりすることができる。
【0016】
本発明において、上記比S/Lが0.2以下である第1のメッキ膜については、様々な形状により実現することができる。
【0017】
また、本発明においては、基板と、前記基板上に形成されており、第1のメッキ膜と、第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜としての置換メッキ膜とを有する複数の電極とを備え、前記複数の電極の内、少なくとも2つの電極において、前記第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下であり、かつ同等とされている、電子部品も提供される。
【0018】
本発明に係る電子部品の製造方法は、基板上に電極が形成されている電子部品の製造方法であって、基板を用意する工程と、前記基板の表面に第1のメッキ膜を、該第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下となるように無電解メッキ法により形成する工程と、前記第1のメッキ膜上に、第2のメッキ膜として置換メッキ膜を形成する工程とを備える。
【0019】
本発明に係る電子部品の製造方法のある特定の局面では、前記第1のメッキ膜の形成に先立ち、前記第1のメッキ膜が形成される領域において、基板表面に金属膜を形成する工程がさらに備えられている。
【0020】
本発明に係る電子部品の製造方法の他の特定の局面では、前記置換メッキ膜を形成する工程に続いて、該置換メッキ膜を構成する金属と同じ金属からなる第3のメッキ膜を無電解メッキにより形成する工程がさらに備えられている。
【発明の効果】
【0021】
本願の第1の発明に係る電子部品では、第1のメッキ膜において、比S/Lが0.2以下とされており、かつ前記比S/Lが0.2以下である第1のメッキ膜が、複数の電極膜部分と、複数の電極膜部分を連結しており、かつ複数の電極膜部分よりも細いブリッジ部とを有するため、第1のメッキ膜上に置換メッキ法により第2のメッキ膜としての置換メッキ膜を形成した場合、十分な厚みの置換メッキ膜を形成することができる。従って、第1のメッキ膜の形状や寸法がばらついたとしても、比S/Lを0.2以下とすることにより、置換メッキ膜を十分な厚みを有するように形成することができる。
【0022】
本願の第2の発明に係る電子部品では、第1のメッキ膜において、比S/Lが0.2以下とされており、かつ比S/Lが0.2以下である第1のメッキ膜が外周縁に凹凸を有するため、第1のメッキ膜上に置換メッキ法により第2のメッキ膜としての置換メッキ膜を形成した場合、十分な厚みの置換メッキ膜を形成することができる。従って、第1のメッキ膜の形状や寸法がばらついたとしても、比S/Lを0.2以下とすることにより、置換メッキ膜を十分な厚みを有するように形成することができる。
【0023】
本願の第3の発明に係る電子部品では、第1のメッキ膜において比S/Lが0.2以下とされており、かつ電極内部に電極欠落部を有するため、第1のメッキ膜上に置換メッキ法により第2のメッキ膜としての置換メッキ膜を形成した場合、十分な厚みの置換メッキ膜を形成することができる。従って、第1のメッキ膜の形状や寸法がばらついたとしても、比S/Lを0.2以下とすることにより、置換メッキ膜を十分な厚みを有するように形成することができる。
【0024】
また、本発明に係る電子部品において、基板上に複数の電極が形成されており、複数の電極の内、少なくとも2つの電極において、第1のメッキ膜の上記比S/Lが0.2以下であり、かつ同等とされている場合には、該少なくとも2つの電極の形状が複雑であったり、形状が大きく異なっている場合であっても、また寸法が異なっている場合であっても、第1のメッキ膜上に、十分な厚みの置換メッキ膜を確実に形成することができる。さらに、少なくとも2つの上記電極間における置換メッキ膜の厚みのばらつきを少なくすることができる。
【0025】
本発明に係る電子部品の製造方法では、第1のメッキ膜を、比S/Lが0.2以下となるように無電解メッキにより形成した後に、第2のメッキ膜として第1のメッキ膜上に置換メッキ膜を形成するため、第1のメッキ膜の形状や寸法の如何にかかわらず、十分な厚みの置換メッキ膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態により提供される電子部品を示す正面図であり、(b)は、該電子部品の基板上に形成されている電極の平面形状を示す平面図であり、(c)は、基板上に形成されている他の電極の平面形状を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態の電子部品において、基板上に形成されている電極における複数のメッキ膜からなる積層構造を説明するための部分切欠断面図である。
【図3】実験例で用意した試料番号1の第1のメッキ膜の平面形状を示す模式的平面図である。
【図4】実験例で用意した試料番号3の第1のメッキ膜の平面形状を示す模式的平面図である。
【図5】試料番号1〜5における比S/Lと、置換Auメッキ膜の厚みとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る電子部品の略図的正面図である。
【0029】
電子部品1は、基板2と、基板2上に形成された複数の電極3,4とを有する。基板2を構成する材料は、特に限定されず、例えば絶縁性セラミックスや合成樹脂などからなる絶縁性材料、あるいは半導体材料などを挙げることができる。
【0030】
電極3,4は、それぞれ、Ag膜と、無電解メッキにより形成されたNiメッキ膜と、Niメッキ膜上に形成された置換Auメッキ膜と、置換Auメッキ膜上に積層されたAuメッキ膜とを有する。本実施形態では、第1のメッキ膜として、Niメッキ膜が形成されており、第2のメッキ膜として置換Auメッキ膜が形成され、第3のメッキ膜として、Auメッキ膜が形成されている。
【0031】
また、複数の電極3,4は、様々な形状及び寸法を有するように構成されている。例えば、電極3は、図1(b)に示すように、複数の矩形の電極部分3a〜3dを有する。この複数の電極部分3a〜3dが、電極部分3a,3dの一辺の長さよりも短い、すなわち細いブリッジ部3e〜3hにより連結されている。
【0032】
図1(b)のA−A線に沿う部分に相当する断面を図2に示す。図2に示すように、前述したように、基板2上に、Ag膜10、Ni無電解メッキ膜11、第2のメッキ膜としての置換Auメッキ膜12及び第3のメッキ膜としてのAuメッキ膜13が積層されている。
【0033】
他方、電極4は、図1(c)に示す平面形状を有する。ここでは、比較的大きな正方形の電極部分内に、電極欠落部4aが形成されている。電極欠落部4aは、正方形の電極4の3つの辺に平行に延び、かつ残りの1辺に平行に延びている部分中央において分断されている形状を有する。
【0034】
従来、このような様々な形状及び寸法の電極3,4を形成するに際し、第1のメッキ膜上に置換メッキ膜として第2のメッキ膜を形成した場合、第1のメッキ膜の形状や寸法によって第2のメッキ膜の厚みが不十分となることがあった。
【0035】
これに対して、本実施形態の電子部品1では、電極3,4の第1のメッキ膜の面積をS
、第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたときに、S/Lが0.2以下とされている。なお、長さLとは、第1のメッキ膜の設けられている部分と、第1のメッキ膜の外側の部分との境界において、該境界に沿った方向の長さ寸法の合計をいうものとする。例えば、正方形の電極の場合には、長さLは、その周囲長であり、電極4の場合には、電極の周囲の長さと、電極欠落部4aの周囲の長さとの合計をいうものとする。同様に、電極3では、外周縁の周囲長と、電極部分3a〜3dとブリッジ部3e〜3hとで囲まれた内部領域の周囲長との合計となる。
【0036】
比S/Lが0.2以下であるため、電極3,4のいずれにおいても、第1のメッキ膜上に、十分な厚みの置換Auメッキ膜を形成することができる。これを、以下の実験例に基づき、より具体的に説明する。
【0037】
基板2として、低温焼成ガラスセラミックスからなる絶縁性基板を用意した。上記絶縁性基板上に、下記の表1に示す試料番号1〜5の電極を以下の要領で形成した。
【0038】
表1中の試料番号1は、図3に示すように正方形の電極6である。電極面積Sは1.0mmとした。
【0039】
試料番号2は、図1(b)に示す電極3と同様の形状を有し、但し電極面積Sが0.1mm、長さLを1.0mmとするように形成した。
【0040】
試料番号3は、図4に示す電極7である。電極7は、略円形の形状を有し、但し外周縁に凹凸が周方向に規則的に設けられており、この面積Sは23.2mm、長さLは226mmとした。
【0041】
また、試料番号4は、試料番号1と同様に正方形の電極で、但し電極面積Sは4.0mm、長さLは8.0mmとした。
【0042】
試料番号5は、図1(c)に示す電極4と同様の形状を有し、但し電極面積Sは1.0mm、長さLは14.0mmとした。
【0043】
この絶縁性基板上の全面には、Ag膜が形成されている。このAg膜を5重量%濃度の硝酸を用いてエッチングした。このエッチングにより、最終的に得られる電極と同じ平面形状のAg膜を形成した。
【0044】
次に、Pd触媒(奥野製薬工業社製、商品名:ICPアクセラ)を絶縁性の基板2の上面に付与し、40℃で5分間維持した。次に、Niメッキ浴(上村工業社製、商品名:ニムデンKPR)を用い、80℃の温度で3分間、無電解Niメッキを行った。このようにして、試料番号1〜5における第1のメッキ膜としての無電解Niメッキ膜を形成した。
【0045】
次に、Auメッキ浴として、小島薬品社製、品番:オーエル2000を用い、80℃及び10分間の条件で置換Auメッキ膜を形成した。
【0046】
上記のようにして、Ag膜、第1のメッキ膜としての無電解Niメッキ膜及び置換Auメッキ膜がこの順序で積層されている試料番号1〜5の電極を形成した。各電極における第1のメッキ膜の面積S、上記長さL及び比S/Lと、形成された置換Auメッキ膜の厚みを下記の表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
なお、置換Auメッキ膜の膜厚は、5個の試料の平均値である。
【0049】
表1から明らかなように、試料番号1〜5の電極では、その面積S及び形状は様々である。他方、置換Auメッキ膜の厚みは、0.06μm〜0.12μmの間で大きくばらついている。よって、第1のメッキ膜の形状及び寸法によって、置換Auメッキ膜の厚みがばらつくことがわかる。
【0050】
もっとも、比S/Lが0.06である試料番号2と、比S/Lが0.07である試料番号5とは、その面積Sが非常に大きく異なっていても、置換Auメッキ膜の膜厚が0.12μm及び0.11μmと十分に厚く、かつ同等であることがわかる。
【0051】
なお、試料番号1と試料番号4とを対比した場合、両者は正方形の形状を有する点で共通するものの、面積Sにおいて大きく異なっている。また、長さLもそれに伴って異なっている。しかしながら、試料番号4では、S/Lが0.50である。すなわち、試料番号1及び試料番号4のいずれにおいても、S/Lが0.2より大きいため、置換Auメッキ膜の厚みは0.07μm以下と薄かった。
【0052】
図5は、上記試料番号1〜5における比S/Lと、置換Auメッキ膜の厚みとの関係を示す図である。
【0053】
図5から明らかなように、比S/Lを0.2以下とすれば、置換Auメッキ膜の膜厚を十分に厚くすることができることがわかる。すなわち、電極の形状が複雑化したり、電極の面積が大きくなった場合であっても、比S/Lを0.2以下とすれば、置換Auメッキ膜の厚みを、十分に厚くし得ることがわかる。また、上記試料番号2と試料番号5との対比から明らかなように、面積Sが大きく異なっていても、比S/Lを同等とすれば、Auメッキ膜の厚みをほぼ同等とし得ることがわかる。
【0054】
上記のように、比S/Lを0.2以下とすれば、置換Auメッキ膜の厚みを十分な大きさとし得るのは、以下の理由によると考えられる。Ni無電解メッキ膜上に、置換Auメッキ膜を形成するに際しては、Ni無電解メッキ膜の端部において、溶解が進行しやすい。従って、第1のメッキ膜としてのNi無電解メッキ膜の端縁の長さが相対的に長いと、置換Auメッキ析出速度が高められていると考えられる。そのため、上記比S/Lを小さくすることにより、置換Auメッキ膜の厚みを十分に厚くすることができたものと考えられる。
【0055】
そして、図5から明らかなように、比S/Lを0.2以下と特定の範囲とすれば、置換Auメッキ膜の厚みを十分に厚くすることができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、第1のメッキ膜としてNi無電解メッキ膜を用い、第2のメッキ膜として置換Auメッキ膜を形成したが、第1のメッキ膜及び置換メッキ膜としての第2のメッキ膜を構成する材料については、特に限定されるものではない。すなわち、N
i以外のAgやAuメッキ膜を第1のメッキ膜として用いてもよい。また、置換メッキ膜についても、置換Agメッキ膜、置換Snメッキ膜、置換Znメッキ膜などを用いてもよい。
【0057】
さらに、置換Auメッキ膜上に、さらにAu無電解メッキ膜を形成し、十分な厚みのAuメッキ膜を最外層に形成してもよい。その場合には、導電性及び半田付け性を効果的に高めることができる。
【0058】
本実施形態は、Ag膜上に、半田喰われを防止するためにNi無電解メッキ膜を第1のメッキ膜として形成したが、第1のメッキ膜の下面に形成される金属膜は必ずしも設けられずもともよい。また、上記Ag膜の代わりに、Au膜などの他の材料からなる金属膜を形成していてもよい。
【0059】
また、図1に示した電子部品1では、複数の電極3,4が形成されていたが、基板上に形成される電極は複数である必要は必ずしもない。すなわち、1つの電極のみが形成され、該電極において、第1のメッキ膜の比S/Lが0.2以下であれば、本発明に従って、十分な厚みの置換メッキ膜を第2のメッキ膜として形成することができる。
【0060】
さらに、電子部品1のように、複数の電極3,4が形成されている場合、少なくとも2つの電極において、第1のメッキ膜S/Lが0.2以下であり、かつ同等とされていることが好ましい。その場合には、該2つの電極において、十分な厚みの置換メッキ膜を形成することができ、しかも該2つの電極において、置換メッキ膜の厚みをほぼ同等とすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…電子部品
2…基板
3,4,6,7…電極
3a〜3d…電極部分
3e〜3h…ブリッジ部
4a…電極欠落部
7…電極
10…Ag膜
11…Ni無電解メッキ膜
12…置換Auメッキ膜
13…Auメッキ膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面に形成されており、無電解メッキにより形成された第1のメッキ膜と、前記第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜としての置換メッキ膜とを有する電極とを備え、
前記第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下であり、
前記比S/Lが0.2以下である第1のメッキ膜が、複数の電極膜部分と、複数の電極膜部分を連結しており、かつ複数の電極膜部分よりも細いブリッジ部とを有する電子部品。
【請求項2】
基板と、
前記基板の表面に形成されており、無電解メッキにより形成された第1のメッキ膜と、前記第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜としての置換メッキ膜とを有する電極とを備え、
前記第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下であり、
前記比S/Lが0.2以下である第1のメッキ膜が、外周縁に凹凸を有する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
基板と、
前記基板の表面に形成されており、無電解メッキにより形成された第1のメッキ膜と、前記第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜としての置換メッキ膜とを有する電極とを備え、
前記第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下であり、
前記比S/Lが0.2以下である前記第1のメッキ膜が、電極内部に電極欠落部を有する、請求項1〜2のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項4】
前記電極が、前記基板の表面と、前記第1のメッキ膜との間に積層された金属膜をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記置換メッキ膜上に無電解メッキにより形成された第3のメッキ膜をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に形成されており、第1のメッキ膜と、第1のメッキ膜上に形成された第2のメッキ膜としての置換メッキ膜とを有する複数の電極とを備え、
前記複数の電極の内、少なくとも2つの電極において、前記第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下であり、かつ同等とされている、電子部品。
【請求項7】
基板上に電極が形成されている電子部品の製造方法であって、
基板を用意する工程と、
前記基板の表面に第1のメッキ膜を、該第1のメッキ膜の面積をS、該第1のメッキ膜のメッキ膜が存在しない部分との境界の該境界に沿う長さ方向寸法の合計をLとしたとき、比S/Lが0.2以下となるように無電解メッキ法により形成する工程と、
前記第1のメッキ膜上に、第2のメッキ膜として置換メッキ膜を形成する工程とを備える、電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記第1のメッキ膜の形成に先立ち、前記第1のメッキ膜が形成される領域において、基板表面に金属膜を形成する工程をさらに備える、請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記置換メッキ膜を形成する工程に続いて、該置換メッキ膜を構成する金属と同じ金属からなる第3のメッキ膜を無電解メッキにより形成する工程をさらに備える、請求項7または8に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−62554(P2012−62554A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209706(P2010−209706)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】