説明

電子部品実装装置

【課題】部品供給台車を着脱可能な電子部品実装装置において、設備稼動中における部品供給台車の交換を作業者の安全を確保しつつかつ安価なシステムで実現可能とする。
【解決手段】装置本体1aが、カバー27内のガントリー移動空間26aと台車収容空間25aとを連通する開口29を有し、この開口29が、部品供給台車31からの部品取り出し位置にあるガントリー26によって閉塞可能である。装置本体1aには、ガントリー26が開口29を閉塞したことを検出する第一センサー36と、台車収容空間25aに部品供給台車31が収容されたことを検出する第二センサー37,38,39とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備稼働中にも部品供給台車を交換可能とする電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品実装装置において、多数のテープフィーダーを搭載した部品供給台車を装置本体に対して着脱可能とし、実装される電子部品の補充及び切り替えを容易にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−267651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記部品供給台車の着脱は、通常は当該装置を含む設備の稼動を一旦停止してから行われる。これは、設備稼働中の台車交換に関しては、台車収容部における電子部品のピックアップ部分の開口(台車を外した状態の開口)が大きいこともあり、エリアセンサー等の高価な装備を想定しても、設備を一旦停止しないと作業者に対する安全が確保されないからである。
しかし、設備稼働中における台車交換は半導体設備(実装機)の生産性を向上させるものであり、携帯やPC等の生産工場での機種切り替え時のロス低減を図るためにも、設備稼働中における台車交換を可能にするという課題の解決は不可欠と考えられる。
【0005】
そこで本発明は、部品供給台車を着脱可能な電子部品実装装置において、設備稼動中における部品供給台車の交換を作業者の安全を確保しつつかつ安価なシステムで実現可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、電子部品の実装を行う装置本体と、前記装置本体の下部に設けた台車収容空間に着脱可能とされる部品供給台車と、前記装置本体の上部を覆うカバー内に移動可能に設けられて前記台車収容空間に収容した前記部品供給台車から電子部品を取り出すガントリーと、を備える電子部品実装装置において、前記装置本体が、前記カバー内のガントリー移動空間と前記台車収容空間とを連通する開口を有し、この開口が、前記部品供給台車からの部品取り出し位置にある前記ガントリーによって閉塞可能であることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記装置本体には、前記ガントリーが前記開口を閉塞したことを検出する第一センサーと、前記台車収容空間に前記部品供給台車が収容されたことを検出する第二センサーとが設けられることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記第二センサーは、前記台車収容空間の入口側で前記部品供給台車を検出する手前側センサーと、前記台車収容空間の奥側で前記部品供給台車を検出する奥側センサーと、前記台車収容空間内の物体を検出する安全センサーとを有し、前記手前側センサーが前記部品供給台車を検出したときは、この部品供給台車が前記台車収容空間の入口を塞ぎ、この状態で前記安全センサーの検出が無効となり、次いで前記奥側センサーが前記部品供給台車を検出したときは、前記部品供給台車がドッキング準備位置に達し、この状態から所定のドッキング作業後に実装作業を再開することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設備稼働中であっても、カバーを開く等によってガントリー移動空間を大きく開放することなく、台車の交換のみで電子部品の補充及び切り替え等を安全に行うことができ、当該装置の生産性を向上できる。また、ガントリーが部品取り出し位置に移動することで前記開口を閉塞できると共に、台車の離脱をトリガーとして台車離脱状態のガントリーの作動を制限することもできる。このように、設備稼動中における部品供給台車の交換を、作業者の安全を確保しつつかつ安価なシステムで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態における電子部品実装装置の斜視図である。
【図2】上記電子部品実装装置の要部の側面図である。
【図3】図2における部品供給台車離脱時の側面図である。
【図4】上記電子部品実装装置の部品供給台車の装着手順の前半を(a)〜(c)の順に示す平面図である。
【図5】上記電子部品実装装置の部品供給台車の装着手順の後半を(a)〜(c)の順に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、電子部品実装装置1の装置本体1aは、基台2の幅方向(X方向)の両側部に奥行き方向(Y方向)に延びるYテーブル3を備えている。各Yテーブル3には、その上部に設けたテーブル台4にサーボモーター5によって回転するボールネジ6が設けられている。
【0010】
各Yテーブル3のうち、図1左側のYテーブル3のサーボモーター5は手前側に、図1右側のYテーブル3のサーボモーター5は奥側にそれぞれ設けられている。各Yテーブル3のボールネジ6には、X方向に延びるXテーブル7の両側部がそれぞれ螺合されている。
【0011】
Xテーブル7は、そのテーブル本体8が各Yテーブル3のボールネジ6に螺合し、各Yテーブル3のボールネジ6の回転によりY方向に沿って移動する。Xテーブル7には、図1右側に設けたサーボモーター9によって駆動するボールネジ10が設けられている。ボールネジ10には、ジョイントブロック11が螺合しており、このジョイントブロック11には、負圧により電子部品を吸着し、正圧で解放する八本のノズル18を備えたノズルヘッド20が支持されている。
【0012】
各Yテーブル3には、Y方向に沿って開口部13が形成され、各開口部13に掛け渡すようにして、基台2の前側(手前側)にてX方向に延びる基板搬送装置14が設けられている。基板搬送装置14は一対のレール15を備え、これら各レール15上を、電子部品が実装される基板16がX方向に沿って搬送される。
【0013】
基台2の上部の前側には、図1左側から順に、廃棄部品を投入する電子部品廃棄箱17、複数のノズル18を収容するノズルステーション19、及びノズルヘッド20を下方から照明した状態で撮影するカメラ21が配置されている。
【0014】
カメラ21の図1右側には、装置本体1aに対して基板16に実装する電子部品を供給する複数(図1では一対のみ示す)のテープフィーダー22を有する。各テープフィーダー22はX方向に沿って配列され、自身が保持するテープリールから繰り出したキャリアテープ上の電子部品(何れも不図示)をノズルヘッド20による部品吸着位置に配置する。
【0015】
この電子部品が、ノズルヘッド20の各ノズル18により吸着され、基板搬送装置14上の基板16への実装位置に搬送され実装される。ノズルヘッド20は、不図示の駆動装置の作動により垂直軸回りに回転駆動すると共に、同じく不図示の駆動装置の作動により前記部品吸着位置の上方に位置するノズル18を上下動させる。装置本体1aにおける例えば基台2の前部下側の図1左側には、各テーブル3,7及びノズルヘッド20を含む電子部品実装装置1全体の作動を制御するコントローラー24が配置されている。
【0016】
図2,3を併せて参照し、例えば装置本体1aにおける基台2の前部下側の図1右側には、複数のテープフィーダー22を搭載した後述の部品供給台車31を着脱可能に収容する台車収容部25が凹設される。部品供給台車31は、下端にキャスター33を備えると共に後上部両側に移動操作用の取っ手34を有する台車本体32と、台車本体32の上部に設けられたフィーダー装着テーブル35と、フィーダー装着テーブル35に保持された複数のテープフィーダー22とを備える。なお、図示都合状、図2,3ではテープフィーダー22の図示を略す。
【0017】
部品供給台車31は床面上を走行し、同じく床面上に設置された装置本体1aの台車収容部25に対して着脱される。以下、台車収容部25が形成する空間を台車収容空間25aという。
部品供給台車31及び装置本体1aは、互いの相対位置を規定する位置決めガイド1b(図4,5参照)を有し、台車収容部25にそのY方向後方から部品供給台車31を接近させ収容することで、部品供給台車31及び装置本体1aが所定の組み付け状態となる。この部品供給台車31を装置本体1aに対して着脱し交換することで、電子部品の補充及び切り替えを容易に行うことができる。
【0018】
図2,3を参照し、装置本体1aにおいて、Xテーブル7及びノズルヘッド20を主とするガントリー26は、装置本体1aの上部を覆うカバー27内のガントリー移動空間26aにて動作する。ガントリー移動空間26aは、各テーブル3,7によりノズルヘッド20が移動する空間に相当し、その前後左右の外周及び上方がカバー27により覆われる。
【0019】
カバー27は、その後部が基台2に固定されるカバー本体27aに対して別体のリッド28として構成される。リッド28は、上壁28a及び後壁28bを有するL字状をなし、その上壁28aの前端がX方向に沿うヒンジ軸を介してカバー本体27aに開閉可能に支持される。
【0020】
これにより、ガントリー26のメンテナンス時等には、電子部品実装装置1を含む設備の稼動を停止した後にリッド28を開き、カバー27後方からガントリー移動空間26aにアクセス可能であり、かつ設備稼働時には、リッド28を閉じて周囲に対する安全性を確保可能である。
【0021】
リッド28は台車収容部25の上方に位置し、このリッド28の下方に部品供給台車31が収容される。カバー27の後壁28bの下端(開閉端)からは、斜め下前方に向けて下壁28cが延びる。下壁28cの延長上には、装置本体1aの基台2の上部前端が配置される。基台2の上部前端と前壁の前端との間には、ガントリー移動空間26aと台車収容空間25aとを連通する開口29が形成される。
【0022】
開口29は、台車収容空間25aに向けて(下方に向けて)開口するもので、装置本体1aにおける部品供給台車31から電子部品をピックアップするための開口に相当する。開口29は、例えば前記部品吸着位置から電子部品を吸着可能な部品取り出し位置(最も後退した位置)にあるガントリー26により閉塞され、かつ前記組み付け状態にある部品供給台車31によっても閉塞される。
【0023】
以下、部品供給台車31の着脱について説明する。
まず、電子部品実装装置1を含む設備の稼働中において、所定の台車交換タイミングで台車交換ボタン(不図示)が押されると、コントローラー24がガントリー26を例えば前記部品取り出し位置まで移動させる(図3参照)。このときのガントリー26は、ノズルヘッド20が最終部品を基板16に装着した位置から最短となる経路で移動する。またこのとき、コントローラー24は、不図示の告知手段を作動させて台車交換作業中であることを周囲に知らしめる。
【0024】
ガントリー26が前記部品取り出し位置にあることで、このガントリーにより開口29が塞がれる。装置本体1aには、ガントリー26が前記部品取り出し位置(開口閉塞位置)に移動したことを検出するガントリー移動センサー36が設けられる。このとき、台車収容部25に臨む開口29は、ガントリー26により例えば作業者の手が入らない程度(8mm以下、欧州規格相当)の隙間をもって塞がれる。これにより、ガントリー26作動用のクリアランスの確保と作業者に対する安全の確保とが両立される。
【0025】
次いで、現状の部品供給台車31を台車収容部25から取り外した後に、新たな部品供給台車31を台車収容部25にそのY方向後方から接近させると(図4(a)参照)、例えば図4右側の位置決めガイド1bの後部に設けた手前側センサー37が部品供給台車31の前端部を検出する(図4(b)参照)。
【0026】
また、例えば図4右側の位置決めガイド1bの前後中間部には、台車収容部25内における作業者等の存在を検出する安全センサー39が設けられる。さらに、例えば図4左側の位置決めガイド1bの前部には、部品供給台車31の前端部を検出する奥側センサー38が設けられる。
各センサー36〜39は例えばビームセンサー(光電センサー)であり、これら各センサー36〜39の検出信号がコントローラー24に入力される。
【0027】
安全センサー39が台車収容部25内における作業者等の存在を検出したときは、コントローラー24が不図示の警告手段を作動させて周囲への警告を発する。なお、手前側センサー37が部品供給台車31を検出した後は、台車収容部25内にさらに進入した部品供給台車31を安全センサー39が検出したとしても、その検出信号はコントローラー24が無視して警告がなされない(図4(c)参照)。これは、手前側センサー37が部品供給台車31の前端部を検出した時点で台車収容部25への入口が塞がれるからである。
【0028】
次いで、さらに部品供給台車31が台車収容部25内に進入すると、奥側センサー38が部品供給台車31の前端部を検出し、コントローラー24が不図示の表示手段により部品供給台車31が所定のドッキング準備位置に達したことを周囲に知らしめる(図5(a)参照)。その後、ドッキングボタン(不図示)が押されると、コントローラー24が例えば各位置決めガイド1bのX方向外側にそれぞれ設けたシリンダ1cを作動させ、その負圧を利用する等により部品供給台車31を台車収容部25奥のドッキング位置まで押し込み始める(図5(b)参照)。なお、図中符号1dは各シリンダ1cを作動させるソレノイドを、符号1eはシリンダ1cの作動を検出するシリンダセンサをそれぞれ示す。
【0029】
そして、部品供給台車31がドッキング位置に達したことを例えばガントリー26に設けた不図示のドッキングセンサが検出すると(図5(c)参照)、コントローラー24が前記告知手段の作動を停止させると共に電子部品実装装置1による電子部品の実装作業を再開させる。以上により、部品供給台車31の着脱、交換作業が完了する。
このように、装置本体1aには、部品供給台車31が前記組み付け状態にあるか否かを検出する各センサー36〜39が設けられるのである。
【0030】
上記実施形態によれば、電子部品実装装置1を含む設備が稼働中であっても、カバー27を開く等によってガントリー移動空間26aを大きく開放することなく、部品供給台車31を交換するのみで電子部品の補充及び切り替え等を安全に行うことができ、電子部品実装装置1の生産性を向上できる。また、ガントリー26が部品取り出し位置に移動することで前記開口29を閉塞できると共に、部品供給台車31の離脱をトリガーとして台車離脱状態のガントリー26の作動を制限することもできる。このように、設備稼動中における部品供給台車31の交換を、作業者の安全を確保しつつかつ安価なシステムで実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、設備稼動中における部品供給台車の交換を、作業者の安全を確保しつつかつ安価なシステムで実現することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 電子部品実装装置
1a 装置本体
25a 台車収容空間
26 ガントリー
26a ガントリー移動空間
27 カバー
29 開口
31 部品供給台車
36 ガントリー移動センサー(第一センサー)
37 手前側センサー(第二センサー)
38 奥側センサー(第二センサー)
39 安全センサー(第二センサー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の実装を行う装置本体と、
前記装置本体の下部に設けた台車収容空間に着脱可能とされる部品供給台車と、
前記装置本体の上部を覆うカバー内に移動可能に設けられて前記台車収容空間に収容した前記部品供給台車から電子部品を取り出すガントリーと、を備える電子部品実装装置において、
前記装置本体が、前記カバー内のガントリー移動空間と前記台車収容空間とを連通する開口を有し、この開口が、前記部品供給台車からの部品取り出し位置にある前記ガントリーによって閉塞可能であることを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記装置本体には、前記ガントリーが前記開口を閉塞したことを検出する第一センサーと、前記台車収容空間に前記部品供給台車が収容されたことを検出する第二センサーとが設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記第二センサーは、前記台車収容空間の入口側で前記部品供給台車を検出する手前側センサーと、前記台車収容空間の奥側で前記部品供給台車を検出する奥側センサーと、前記台車収容空間内の物体を検出する安全センサーとを有し、
前記手前側センサーが前記部品供給台車を検出したときは、この部品供給台車が前記台車収容空間の入口を塞ぎ、この状態で前記安全センサーの検出が無効となり、次いで前記奥側センサーが前記部品供給台車を検出したときは、前記部品供給台車がドッキング準備位置に達し、この状態から所定のドッキング作業後に実装作業を再開することを特徴とする請求項2に記載の電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55220(P2013−55220A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192459(P2011−192459)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(500548884)三星テクウィン株式会社 (156)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Techwin Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】28 Sungju−dong,Changwon−city,Kyongsangnam−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】