説明

電子部品用接着剤

【課題】電子部品を接合する際に塗布性に優れ、かつ、接合した電子部品に対する耐汚染性に優れる電子部品接合体を得ることができる電子部品用接着剤を提供する。
【解決手段】硬化性化合物、硬化剤、無機微粒子、ポリエーテル変性シロキサン及び場合によっては種々の構造を持ったエポキシ化合物、更にCV値が10%以下のスペーサー粒子を含有する電子部品用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を接合する際に塗布性に優れ、かつ、接合した電子部品に対する耐汚染性に優れる電子部品接合体を得ることができる電子部品用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップ等の電子部品の高集積化、小型化が要求されており、例えば、接着剤層を介して複数の薄い半導体チップを接合して半導体チップの積層体とすることが行われている。
このような半導体チップの積層体は、例えば、一方の半導体チップの一方の面上に接着剤を塗布した後、該接着剤を介して他方の半導体チップを積層し、その後、接着剤を硬化させる方法、又は、一定の間隔を空けて保持した半導体チップ間の空間に接着剤を充填し、その後、接着剤を硬化させる方法等により製造されている。
【0003】
ところが、このような半導体チップの積層体を製造する過程で、未硬化の接着剤を硬化させる際に該接着剤中の液状成分が接着剤から染み出す、いわゆるブリード現象が生じるという問題があった。このようなブリード現象が生じると、接着剤から染み出した液状成分が半導体チップ又は基板上のワイヤボンディングパットを汚染して、ワイヤボンディングすることができなかったり、半導体チップの積層体の信頼性が低下したりすることが問題であった。
【0004】
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、複数の半導体チップを接合する接着剤として、数平均分子量が600〜1000であるエポキシ化合物を含有するものが開示されており、この接着剤によると、半導体チップの積層体を製造した際にブリード現象が解消されると記載されている。
【0005】
しかしながら、近年、半導体チップ等の電子部品の高集積化、小型化への要求は益々高まっており、これに伴い、ワイヤボンディングパットと、接合される半導体チップとの近接化も進んでいる。従って、半導体チップ等の電子部品を接合する接着剤には、良好な塗布性に加えて、より厳密にブリード現象の発生を抑制することが求められている。
また、ブリード現象の発生の度合い、即ち液状成分の接着剤からの染み出しの度合いは被着体の材質にも依存しており、従来の接着剤では、半導体チップのレジスト上よりもワイヤボンディングパット上でのブリード現象の発生を抑制することが難しかったことから、特にワイヤボンディングパット上でのブリード現象の発生を抑制することのできる新たな接着剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−178342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電子部品を接合する際に塗布性に優れ、かつ、接合した電子部品に対する耐汚染性に優れる電子部品接合体を得ることができる電子部品用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化性化合物、硬化剤、無機微粒子及びポリエーテル変性シロキサンを含有する電子部品用接着剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
電子部品用接着剤には、通常、好適なチクソ性を付与し、良好な塗布性を発揮させるために、無機微粒子が配合される。本発明者は、検討の結果、ブリード現象の原因が、電子部品用接着剤中に含まれる液状成分と無機微粒子との親和性が低いことにあることを見出した。硬化の際に温度をかけることにより、一時的に電子部品用接着剤の粘度が低下し、低下した接着剤中で親和性の低い液状成分と無機微粒子とが分離し、更に粘度が低下してしまった液状成分だけがブリードして濡れ広がってしまうものと考えられる。本発明者は、更に鋭意検討の結果、ポリエーテル変性シロキサンを添加することにより、液状成分と無機微粒子との分離を防止してブリード現象の発生を防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の電子部品用接着剤は、硬化性化合物を含有する。上記硬化性化合物は、液状成分を構成するものである。
上記硬化性化合物としては特に限定されず、例えば、付加重合、重縮合、重付加、付加縮合、又は、開環重合等の反応により硬化する化合物を用いることができる。具体的には、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、アルキル−ベンゼン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、珪素樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性化合物が挙げられる。なかでも、接合後に得られる半導体装置等の電子部品の信頼性及び接合強度に優れていることから、エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、従来の電子部品用接着剤に用いられるエポキシ樹脂を用いることができる。なかでも、脂肪族ポリエーテル骨格とグリシジルエーテル基とを有するエポキシ化合物(以下、エポキシ化合物(A1)ともいう。)が好適である。上記脂肪族ポリエーテル骨格は特に限定されず、例えば、プロピレングリコール骨格、ポリテトラメチレングリコール骨格等が挙げられる。このような脂肪族ポリエーテル骨格を有するエポキシ化合物(A1)を含有することにより、本発明の電子部品用接着剤は硬化物の柔軟性が高くなり、信頼性の高い電子部品接合体を得ることができる。
【0012】
上記エポキシ化合物(A1)として、より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、電子部品用接着剤の硬化物の柔軟性をより一層高めることができることから、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好適である。
【0013】
上記エポキシ化合物(A1)の数平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は800、好ましい上限は10000である。上記エポキシ化合物(A1)の数平均分子量が800未満であると、電子部品用接着剤の硬化物の柔軟性が充分に高められないことがある。上記エポキシ化合物(A1)の数平均分子量が10000を超えると、電子部品用接着剤の粘度が高くなり、塗布性が低下することがある。
上記エポキシ化合物(A1)の数平均分子量のより好ましい下限は850、より好ましい上限は2000であり、更に好ましい下限は900、更に好ましい上限は1500である。
【0014】
なお、本明細書において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンをスタンダードとして求めた値であり、例えば、Waters社製の測定装置(測定温度を40℃、流速を1mL/min、溶媒をテトラヒドロフラン、標準物質をポリスチレンとする条件)で、昭和電工社製のカラム(Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本)を用いて測定した値を意味する。
【0015】
上記エポキシ化合物(A1)は、E型粘度計を用いて23℃、5rpmの条件で測定された粘度が500mmPa以下であることが好ましい。上記エポキシ化合物(A1)の粘度が500mmPa以下であることで、電子部品用接着剤の塗布性をより一層高めることができる。
【0016】
上記エポキシ化合物(A1)のうち、市販品として、例えば、エポゴーセーPT(四日市合成社製、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル)、EX−841(ナガセケムテックス社製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0017】
本発明の電子部品用接着剤が上記エポキシ化合物(A1)を含有する場合には、更に、エポキシ基含有アクリルポリマーを含有することが好ましい。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーを含有することにより、エポキシ基が上記エポキシ化合物(A1)と反応するとともに、アクリルポリマー骨格によって本発明の電子部品用接着剤の硬化物は靭性をもち、優れた耐衝撃性を発現することができる。これにより、本発明の電子部品用接着剤を用いることにより、信頼性の高い電子部品接合体を得ることができる。
【0018】
上記エポキシ基含有アクリルポリマーは、主鎖にアクリルポリマー骨格を有し、側鎖にエポキシ基を有するものが好ましい。
【0019】
上記エポキシ基含有アクリルポリマーのエポキシ当量は特に限定されないが、好ましい下限は300、好ましい上限は1000である。上記エポキシ基含有アクリルポリマーのエポキシ当量が300未満であると、架橋密度が高くなりすぎて、電子部品用接着剤の硬化物が堅く、脆くなることがある。上記エポキシ基含有アクリルポリマーのエポキシ当量が1000を超えると、架橋点が少なく、架橋密度が低くなりすぎて、電子部品用接着剤の硬化物の機械的強度、耐熱性等が不充分となることがある。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーのエポキシ当量のより好ましい下限は400、より好ましい上限は800である。
【0020】
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの数平均分子量の好ましい下限は5000、好ましい上限は50000である。上記エポキシ基含有アクリルポリマーの数平均分子量が5000未満であると、電子部品用接着剤をフィルム化する際の造膜性が不充分となり、フィルムとして形状を保持することができないことがある。上記エポキシ基含有アクリルポリマーの数平均分子量が50000を超えると、他の成分との相溶性が低下することがある。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの数平均分子量のより好ましい下限は7000、より好ましい上限は20000である。
【0021】
上記エポキシ基含有アクリルポリマーのうち、市販品として、例えば、CP−30(日油社製、エポキシ当量530、数平均分子量9000)、CP−50S(日油社製、エポキシ当量310、数平均分子量20000)、CP−20SAP(日油社製、エポキシ当量750、数平均分子量8000)等が挙げられる。
【0022】
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの配合量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物(A1)100重量部に対する好ましい下限が4重量部、好ましい上限が40重量部である。上記エポキシ基含有アクリルポリマーの配合量が4重量部未満であると、電子部品用接着剤の硬化物の靭性が低下し、信頼性の高い電子部品接合体を得ることができないことがある。上記エポキシ基含有アクリルポリマーの配合量が40重量部を超えると、電子部品用接着剤の粘度が高くなり、塗布性が低下することがある。
上記エポキシ基含有アクリルポリマーの配合量は、上記エポキシ化合物(A1)100重量部に対するより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0023】
本発明の電子部品用接着剤は、上記硬化性化合物として、更に、エピスルフィド化合物を含有してもよい。
上記エピスルフィド化合物を含有することにより、電子部品用接着剤は、接合した電子部品に対する硬化物の接着力が向上し、信頼性の高い電子部品接合体を得ることができる。
【0024】
上記エピスルフィド化合物はエピスルフィド基を有していれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、ビスフェノール型エピスルフィド化合物(ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換された化合物)、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、液状であり、電子部品用接着剤の粘度を必要以上に上げず、優れた塗布性を維持できることから、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物が好適である。
【0025】
上記水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物のうち、市販品として、例えば、YL−7007(ジャパンエポキシレジン社製、水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物)等が挙げられる。
【0026】
本発明の電子部品用接着剤が上記エピスルフィド化合物を含有する場合、上記エピスルフィド化合物の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物(A1)100重量部に対して1重量部以上、30重量部未満であることが好ましい。上記エピスルフィド化合物の配合量が1重量部未満であると、期待する接着力向上効果が得られないことがあり、30重量部以上であると、保存安定性が劣ることがある。上記エピスルフィド化合物の配合量は、上記エポキシ化合物(A1)100重量部に対するより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0027】
本発明の電子部品用接着剤は、上記硬化性化合物として、上記エポキシ化合物(A1)とは別に、芳香族骨格を有し、かつ分子量が150〜500であるエポキシ化合物(A2)を含有してもよい。
上記エポキシ化合物(A2)を含有することにより、電子部品用接着剤の硬化物の高温での弾性率を高めることができ、接着信頼性を高めることができ、また、電子部品用接着剤の硬化速度も速くなる。
【0028】
上記エポキシ化合物(A2)の分子量が150未満であると、エポキシ化合物(A2)は熱硬化中に揮発してしまうことがある。上記エポキシ化合物(A2)の分子量が500を超えると、充分な高温弾性率向上効果又は硬化速度の促進効果が得られないことがある。上記エポキシ化合物(A2)の分子量のより好ましい下限は200、より好ましい上限は300である。
なお、上記エポキシ化合物(A2)の分子量は、上記エポキシ化合物(A2)の構造式が特定できる場合には、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、エポキシ化合物(A2)が重合体であって構造式が特定できない場合には、数平均分子量を意味する。
【0029】
上記エポキシ化合物(A2)として、例えば、アニリン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物等が挙げられる。なかでも、電子部品用接着剤の粘度を低くすることができ、塗布性をより一層高めることができることから、アニリン型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物が好適である。
【0030】
上記アニリン型エポキシ化合物として、例えば、グリシジルオキシ−N,N−グリシジルアニリン等が挙げられる。
上記アニリン型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EP−3900S、EP−3950(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
【0031】
上記レゾルシノール型エポキシ化合物として、例えば、m−レゾルシノールジグリシジルエーテル、o−レゾルシノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−201、EX−203(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0032】
本発明の電子部品用接着剤が上記エポキシ化合物(A2)を含有する場合、上記エポキシ化合物(A2)の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物(A1)100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記エポキシ化合物(A2)の配合量が1重量部未満であると、高温での弾性率向上等の効果が得られないことがある。上記エポキシ化合物(A2)の配合量が20重量部を超えると、電子部品用接着剤の硬化物の柔軟性が低くなり、信頼性の高い電子部品接合体を得ることができないことがある。
上記エポキシ化合物(A2)の配合量は、上記エポキシ化合物(A1)100重量部に対するより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0033】
本発明の電子部品用接着剤は、硬化剤を含有する。上記硬化剤は、液状成分を構成するものである。
上記硬化剤としては特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられる。なかでも、酸無水物が好適に用いられる。
【0034】
上記酸無水物硬化剤は特に限定されず、従来公知の酸無水物硬化剤を用いることができ、具体的には、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、コハク酸無水物等が挙げられる。これらの酸無水物硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、上記酸無水物硬化剤は、二重結合を有することが好ましい。上記酸無水物硬化剤が二重結合を有することにより、電子部品用接着剤の硬化物の柔軟性をより一層高めることができる。
上記二重結合を有する酸無水物硬化剤として、例えば、ドデセニル無水コハク酸、テトラプロペニル無水コハク酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0036】
上記二重結合を有する酸無水物硬化剤のうち、市販品として、例えば、DDSA(新日本理化社製、ドデセニル無水コハク酸)、YH−306(ジャパンエポキシレジン社製、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸)等が挙げられる。
【0037】
上記硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記硬化剤がエポキシ基と等量反応する硬化剤である場合、本発明の電子部品用接着剤に含まれる全ての硬化性成分(エポキシ化合物(A1)、エポキシ基含有アクリルポリマー、エピスルフィド化合物、エポキシ化合物(A2)等)の硬化性官能基の総和100重量部に対して、好ましい下限が30当量、好ましい上限が110当量である。
上記硬化剤が触媒として機能する硬化剤である場合、本発明の電子部品用接着剤に含まれる全ての硬化性成分の総和100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0038】
本発明の電子部品用接着剤は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子は、本発明の電子部品用接着剤に接着剤として好適なチクソ性を与えて、良好な塗布性を発揮させる役割を有する。
【0039】
上記無機微粒子は、本発明の電子部品用接着剤に含まれる液状成分の親水性(疎水性)と比較的近い親水性(疎水性)を有する無機微粒子が好適である。このような無機微粒子は、比較的液状成分との親和性に優れることから、後述するポリエーテル変性シロキサンと併用することにより、本発明の電子部品用接着剤は、良好な塗布性を維持したまま、ブリード現象の発生を著しく抑制することができ、例えば、2以上の電子部品を接合して多層積層体とする際にも信頼性の高い電子部品接合体を得ることができる。
【0040】
一方、より高いチクソ性や塗布性が求められる場合には、更に、本発明の電子部品用接着剤に含まれる液状成分の親水性(疎水性)と比較的遠い親水性(疎水性)を有する無機微粒子を併用してもよい。このような無機微粒子は液状成分と親和性が低く、通常ではブリード現象の原因となる。しかしながら、上記液状成分の親水性(疎水性)と比較的近い親水性(疎水性)を有する無機微粒子及びポリエーテル変性シロキサンと併用することにより、ブリード現象の発生を抑制することができる。これは、ポリエーテル変性シロキサンにより液状成分と無機微粒子との分離が抑制されることに加えて、上記液状成分の親水性(疎水性)と比較的近い親水性(疎水性)を有する無機微粒子が、液状成分が滲出するのを防止する役割を果たすものと考えられる。
【0041】
ここで、上記液状成分の親水性(疎水性)を表す指標としては、一般に溶解度パラメータ(SP値)が用いられる。電子部品の接着に用いられる接着剤の液状成分のSP値としては、通常、8〜14程度が要求される。
上記SP値は、原料の液状成分のSP値の加重平均により求めることができる。また原料のSP値は例えば、δ=ΣE/ΣVの式により計算することができる。ここで、δはSP値、Eは蒸発エネルギー、Vはモル体積を意味している。
【0042】
一方、上記無機微粒子のようなフィラーの親水性(疎水性)を表す指標としては、一般に疎水化度(M値)が用いられる。
上記M値は、水にメタノールを滴下し、無機微粒子が完全に膨潤したときのメタノール濃度(重量%)を意味する。
【0043】
上記液状成分の親水性(疎水性)を表す指標であるSP値と、無機微粒子の親水性(疎水性)を表す指標であるM値との関係を、直接的に換算することはできない。
しかしながら、本発明者らは、上記液状成分のSP値と無機微粒子のM値の対応について以下の知見を得た。
上記液状成分のSP値の8以上11未満と、上記無機微粒子のM値の30以上50以下とが比較的近い親水性(疎水性)である。
上記液状成分のSP値の11以上12未満の値と、上記無機微粒子のM値の10以上40以下の値とが比較的近い親水性(疎水性)である。
上記液状成分のSP値の12以上14以下の値と、上記無機微粒子のM値の50以下の値とが比較的近い親水性(疎水性)である。
【0044】
そこで、本発明の電子部品用接着剤においては、上記液状成分のSP値を8以上11未満と、11以上12未満と、12以上14以下とに3つの区分に分け、それぞれのSP値の範囲に対応して最適なM値を有する無機微粒子の組み合わせを選択して含有させることができる。
【0045】
第1の態様は、溶解度パラメータ(SP値)が8以上11未満である液状成分(以下、「液状成分(1)」ともいう)である。この場合、上記液状成分の親水性(疎水性)と比較的近い親水性(疎水性)を有する無機微粒子として平均一次粒子径が50nm以下、かつ、疎水化度(M値)が30以上50以下の無機微粒子(A)が挙げられる。
【0046】
上記液状成分(1)は、SP値が8以上11未満である。
上記液状成分のSP値を所定の範囲内に調整する方法としては特に限定されず、例えば、上記硬化性化合物及び上記硬化剤等を、これらの有する個々のSP値を考慮して適宜選択して用いる方法等が挙げられる。最も効果的には、上記硬化性化合物のSP値を考慮して選択する方法が挙げられる。
第1の態様の電子部品用接着剤においては、具体的には例えば、上記硬化性化合物としてジシクロペンタジエン型エポキシ(SP値が9〜10)、ブタジエン変性エポキシ(SP値が8〜10)、シリコーン変性エポキシ(SP値が7〜8)等を選択して用いる方法が挙げられる。
【0047】
上記無機微粒子(A)としては特に限定されず、例えば、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、ブラックカーボン等が挙げられる。なかでも、シリカ微粒子が好適に用いられる。
【0048】
上記無機微粒子(A)は、平均一次粒子径の上限が50nmである。平均一次粒子径が50nmを超えると、チクソ性が不充分となって塗布性が劣ったり、充分な低ブリード性が得られなかったりすることがある。平均一次粒子径の好ましい上限は40nm、より好ましい上限は30nmである。
【0049】
上記無機微粒子(A)は、M値が30以上50以下である。上記無機微粒子(A)のM値がこの範囲外であると、低ブリード性が不充分となる。
上記無機微粒子(A)のM値を上記範囲に調整する方法としては特に限定されず、例えば、無機微粒子に表面処理を施し、表面に存在する親水性基の数を変化させる方法等が挙げられる。具体的には例えば、上記無機微粒子としてシリカ微粒子を選択した場合、シリカ微粒子の表面を−CHで修飾して炭素含有量を調整することによりM値を調整する方法等が挙げられる。このような方法により炭素含有量を調整したシリカ微粒子は、例えば、トクヤマ社等から市販されている。
【0050】
上記M値が30以上50以下である無機微粒子(A)の市販品としては、例えば、DM−10(M値が48、炭素含有量が0.9重量%)、MT−10(M値が47、炭素含有量が0.9重量%)(以上、いずれもトクヤマ社製)、R−972(M値が48)(Degussa社製)、フェニルシランカップリング剤処理シリカ(M値が30)(アドマテックス社製)等が挙げられる。
【0051】
上記無機微粒子(A)の含有量としては、上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、好ましい下限は2重量部、好ましい上限は20重量部である。上記無機微粒子(A)の含有量が2重量部未満であると、低ブリード性やチクソ性が不充分となることがあり、20重量部を超えると、粘度が高くなりすぎることがある。上記無機微粒子(A)の含有量のより好ましい下限は4重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0052】
第2の態様は、溶解度パラメータ(SP値)が11以上12未満である液状成分(以下、「液状成分(2)」ともいう)である。この場合、上記液状成分の親水性(疎水性)と比較的近い親水性(疎水性)を有する無機微粒子として平均一次粒子径が50nm以下かつ疎水化度(M値)が10以上40以下の無機微粒子(B)が挙げられる。
【0053】
上記液状成分(2)は、SP値が11以上12未満である。
第2の態様の電子部品用接着剤においては、具体的には例えば、上記硬化性化合物としてビスフェノールA型エポキシ(SP値が11)、ビスフェノールFエポキシ(SP値が11)等を選択して用いることにより上記液状成分(2)のSP値を調整することが考えられる。
【0054】
上記無機微粒子(B)としては特に限定されず、例えば、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、ブラックカーボン等が挙げられる。なかでも、シリカ微粒子が好適に用いられる。
【0055】
上記無機微粒子(B)は、平均一次粒子径の上限が50nmである。上記無機微粒子(B)の平均一次粒子径が50nmを超えると、チクソ性が不充分となって塗布性が劣ったり、充分な低ブリード性が得られなかったりする。上記無機微粒子(B)の平均一次粒子径の好ましい上限は40nm、より好ましい上限は30nmである。
【0056】
上記無機微粒子(B)は、M値が10以上40以下である。上記無機微粒子(B)のM値がこの範囲外であると低ブリード性が不充分となる。
上記無機微粒子(B)のM値を上記範囲に調整する方法としては上述と同様の方法が挙げられる。
【0057】
上記M値が10以上40以下である無機微粒子(B)の市販品としては、例えば、UFP−80(M値が20)(電気化学社製)、フェニルシランカップリング剤処理微粒子シリカ(M値が30)(アドマテックス社製)等が挙げられる。
【0058】
上記無機微粒子(B)の含有量としては、上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、好ましい下限は2重量部、好ましい上限は20重量部である。上記無機微粒子(B)の含有量が2重量部未満であると、低ブリード性やチクソ性が不充分となることがあり、20重量部を超えると、粘度が高くなりすぎることがある。上記無機微粒子(B)の含有量のより好ましい下限は4重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0059】
第3の態様は、溶解度パラメータ(SP値)が12以上14以下である液状成分(以下、「液状成分(3)」ともいう)である。この場合、上記液状成分の親水性(疎水性)と比較的近い親水性(疎水性)を有する無機微粒子として平均一次粒子径が50nm以下かつ疎水化度(M値)が50以下の無機微粒子(C)が挙げられる。
【0060】
上記液状成分(3)は、SP値が12以上14以下である。
第3の態様の電子部品用接着剤においては、具体的には例えば、上記硬化性化合物としてナフタレン型エポキシ(SP値が12)、プロピレングリコール変性エポキシ(SP値が13)、ポリエチレングリコール変性エポキシ(SP値が14)等を選択して用いることにより上記液状成分(3)のSP値を調整することが考えられる。
【0061】
上記無機微粒子(C)としては特に限定されず、例えば、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、ブラックカーボン等が挙げられる。なかでも、シリカ微粒子が好適に用いられる。
【0062】
上記無機微粒子(C)は、平均一次粒子径の上限が50nmである。上記無機微粒子(C)の平均一次粒子径が50nmを超えると、チクソ性が不充分となって塗布性が劣ったり、充分な低ブリード性が得られなかったりする。上記無機微粒子(C)の平均一次粒子径の好ましい上限は40nm、より好ましい上限は30nmである。
【0063】
上記無機微粒子(C)は、M値の上限が50である。上記無機微粒子(C)のM値が50を超えると、低ブリード性が不充分となる。
上記無機微粒子(C)のM値を上記範囲に調整する方法としては特に限定されず、例えば、上述した無機微粒子(A)と同様の方法が挙げられる。
【0064】
上記M値の上限が50である無機微粒子(C)の市販品としては、例えば、QS−40(M値が0、炭素含有量が0重量%)、MT−10(M値が47、炭素含有量が0.9重量%)(以上、トクヤマ社製)等が挙げられる。
【0065】
上記無機微粒子(C)の含有量としては、上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、好ましい下限は2重量部、好ましい上限は20重量部である。上記無機微粒子(C)の含有量が2重量部未満であると、低ブリード性やチクソ性が不充分となることがあり、20重量部を超えると、粘度が高くなりすぎることがある。上記無機微粒子(C)の含有量のより好ましい下限は4重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0066】
本発明の電子部品用接着剤は、ポリエーテル変性シロキサンを含有する。
上記ポリエーテル変性シロキサンは、本発明の電子部品用接着剤に含まれる液状成分と上記無機微粒子との分離を防止し、ブリード現象の発生を抑制する役割を有する。上記ポリエーテル変性シロキサンを用いることにより、本発明の電子部品用接着剤は、良好な塗布性を維持したまま、ブリード現象の発生を著しく抑制することができ、例えば、2以上の電子部品を接合して多層積層体とする際にも信頼性の高い電子部品接合体を得ることができる。
【0067】
また、ブリード現象の発生の度合い、即ち液状成分の電子部品用接着剤からの染み出しの度合いは被着体の材質にも依存しているところ、本発明の電子部品用接着剤は、半導体チップ又は基板のレジスト上だけでなくワイヤボンディングパット上でのブリード現象の発生も著しく抑制することができる。
【0068】
本明細書中、ポリエーテル変性シロキサンとは、シロキサンの主鎖の片末端、主鎖の両末端又は側鎖のうちの少なくとも1つにポリエーテル鎖が付加した化合物を意味する。
上記ポリエーテル鎖の構成単位は特に限定されず、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。なお、上記ポリエーテル鎖は、単独の構成単位を有していてもよく、2種以上の構成単位を有していてもよい。
【0069】
上記ポリエーテル変性シロキサンのうち、市販品として、例えば、BYK−347、BYK―348、BYK349(以上、ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0070】
上記ポリエーテル変性シロキサンの配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が2重量部である。上記ポリエーテル変性シロキサンの配合量が0.1重量部未満であると、電子部品用接着剤のブリード現象を抑制する効果が充分に得られないことがある。上記ポリエーテル変性シロキサンの配合量が2重量部を超えると、電子部品用接着剤のぬれ性が低下することがある。上記ポリエーテル変性シロキサンの配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい上限が1重量部である。
【0071】
本発明の電子部品用接着剤は、更に、硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤を含有することにより、硬化速度又は接合信頼性等の物性を更に高めることができる。
【0072】
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、硬化速度又は硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好適である。
【0073】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されないが、エポキシ化合物とのアダクト型のイミダゾール系硬化促進剤がより好適である。上記エポキシ化合物とのアダクト型のイミダゾール系硬化促進剤を含有することにより、電子部品用接着剤は、貯蔵安定性を維持したまま、比較的低温、短時間で硬化することができる。
【0074】
上記イミダゾール系硬化促進剤として、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、又は、イミダゾールの1位をイソシアヌル酸で保護した化合物(四国化成工業社製「2MA−OK」、味の素社製「PN−23J」等)等が挙げられる。
【0075】
本発明の電子部品用接着剤が上記硬化促進剤を含有する場合、上記硬化促進剤の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記硬化促進剤の配合量が1重量部未満であると、硬化速度又は接合信頼性を充分に高めることができないことがある。上記硬化促進剤の配合量が20重量部を超えると、電子部品用接着剤の硬化後に、未反応の硬化促進剤が残存することがある。
【0076】
本発明の電子部品用接着剤は、更に、スペーサー粒子を含有してもよい。
上記スペーサー粒子を含有することにより、電子部品用接着剤を用いて複数の電子部品を積層して接着する際に、電子部品間の間隔を一定に保つことができる。
【0077】
上記スペーサー粒子の形状は、球状が好ましい。
上記スペーサー粒子は、アスペクト比の好ましい上限が1.1である。上記スペーサー粒子のアスペクト比が1.1以下であると、電子部品を積層する際に、電子部品同士の間隔を安定して一定に保つことができる。
なお、本明細書においてアスペクト比とは、粒子の短径の長さに対する粒子の長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)を意味する。アスペクト比の値が1に近いほどスペーサー粒子の形状は真球に近くなる。
【0078】
上記スペーサー粒子の平均粒子径は、電子部品間の間隔が所望の範囲になるように適宜選択すればよいが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は200μmである。上記スペーサー粒子の平均粒子径が5μm未満であると、スペーサー粒子の粒子径程度にまで電子部品間の間隔を縮めることが困難なことがある。上記スペーサー粒子の平均粒子径が200μmを超えると、電子部品間の間隔が必要以上に大きくなることがある。
上記スペーサー粒子の平均粒子径のより好ましい下限は9μm、より好ましい上限は50μmである。
【0079】
上記スペーサー粒子は、粒子径のCV値が10%以下であることが好ましい。粒子径のCV値が10%を超えると、粒子径のばらつきが大きいことから、電子部品間の間隔を一定に保つことが困難となる。上記スペーサー粒子の粒子径のCV値は、6%以下がより好ましく、4%以下が更に好ましい。
【0080】
なお、本明細書において、上記CV値とは、下記式により求められる数値のことである。
CV値(%)=(σ/Dn)×100
上記式中、σは、粒子径の標準偏差を表し、Dnは、数平均粒子径を表す。
【0081】
上記スペーサー粒子は、樹脂からなる樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。
上記樹脂粒子を構成する樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等の非架橋樹脂、又は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体、トリアリルイソシアヌレート重合体、ベンゾグアナミン重合体等の架橋樹脂が挙げられる。なかでも、スペーサー粒子の硬さと圧縮回復率とを調整しやすく、電子部品用接着剤の硬化物の耐熱性を向上させることができることから、架橋樹脂が好ましい。
【0082】
上記スペーサー粒子は、必要に応じて表面処理されていてもよい。上記スペーサー粒子に表面処理を施すことにより、電子部品用接着剤の粘度を容易に所望の範囲とし、塗布性を向上させることができる。
上記スペーサー粒子を表面処理する方法は特に限定されず、例えば、電子部品用接着剤が全体として疎水性を示す場合には、スペーサー粒子の表面に親水基を付与する方法等が挙げられる。上記スペーサー粒子の表面に親水基を付与する方法は特に限定されず、例えば、スペーサー粒子として上記樹脂粒子を用いる場合には、上記樹脂粒子の表面を、親水基を有するカップリング剤で処理する方法等が挙げられる。
【0083】
本発明の電子部品用接着剤が上記スペーサー粒子を含有する場合、上記スペーサー粒子の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が1重量部である。上記スペーサー粒子の配合量が0.01重量部未満であると、電子部品同士の間隔を安定して一定に保つことができないことがある。上記スペーサー粒子の配合量が1重量部を超えると、電子部品同士の間隔を安定して一定に保つことができなかったり、他の成分の割合が相対的に少なくなりすぎて電子部品用接着剤の塗布性又は硬化物の柔軟性が低下したりすることがある。
【0084】
本発明の電子部品用接着剤は、無機イオン交換体を含有してもよい。
上記無機イオン交換体を含有することにより、電子部品用接着剤中のイオン不純物をトラップし、電子部品の電極の腐食を防止することができる。
上記無機イオン交換体の市販品として、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。
【0085】
本発明の電子部品用接着剤は、粘度を調整する目的で増粘剤を含有してもよい。
上記増粘剤として、例えば、シリカ粒子、エチルセルロース、炭化カルシウム等が挙げられる。なお、上記増粘剤としてシリカ粒子を用いる場合、シリカ粒子の平均粒子径の好ましい下限は5nm、好ましい上限は50nmである。
本発明の電子部品用接着剤が上記増粘剤を含有する場合、上記増粘剤の配合量は特に限定されないが、本発明の電子部品用接着剤に含まれる全ての硬化性成分の総和100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0086】
本発明の電子部品用接着剤は、必要に応じて、ブリード防止剤、接着性付与剤の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0087】
本発明の電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて、25℃、10rpmの条件で測定された粘度の好ましい下限が5Pa・s、好ましい上限が30Pa・sである。上記粘度が5Pa・s未満であると、電子部品用接着剤を電子部品上に塗布したときに、塗布形状を維持できずに流延してしまうことがあり、電子部品用接着剤の塗布性が低下することがある。上記粘度が30Pa・sを超えると、電子部品用接着剤を電子部品上に均一にあるいは所望の形状で塗布することができないことがあり、電子部品用接着剤の塗布性が低下することがある。
本発明の電子部品用接着剤の粘度のより好ましい下限は8Pa・s、より好ましい上限は20Pa・sである。
【0088】
本発明の電子部品用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃、5rpmの条件で測定された粘度を、25℃、0.5rpmの条件で測定された粘度で除した値(チクソ値)が、3以上であることが好ましい。上記チクソ値が3以上であると、基板に水分が残存していた場合にも、水分の移行を抑制することができ、ボイドの発生を抑制することができる。
【0089】
本発明の電子部品用接着剤は、例えば、上記硬化性化合物、硬化剤、ポリエーテル変性シロキサン、及び、必要に応じて添加する他の成分を混合した後、上記無機微粒子を配合する方法等により製造することができる。
上記成分の混合方法は、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、又はニーダー等を用いる方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0090】
本発明によれば、電子部品を接合する際に塗布性に優れ、かつ、接合した電子部品に対する耐汚染性に優れる電子部品接合体を得ることができる電子部品用接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0092】
(実施例1〜22、比較例1〜22)
表1〜表5に示す組成に従って、各材料をホモディスパーで攪拌混合することにより、電子部品用接着剤を調製した。
なお、各実施例及び比較例における液状成分のSP値は各原料の液状成分のSP値の加重平均により求めた。また、原料のSP値はδ=ΣE/ΣVの式により求めた。ここで、δはSP値、Eは蒸発エネルギー、Vはモル体積を意味している。
【0093】
(1)硬化性化合物
(1−1)エポキシ化合物(A1)
エポゴーセーPT(ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、四日市合成社製、数平均分子量900、SP値13)
EXA−4850−150(ポリプロピレングリコール骨格含有エポキシ、DIC社製、数平均分子量900、SP値13)
EXA−4850−1000(ポリプロピレングリコール骨格含有エポキシ、DIC社製、数平均分子量700、SP値13)
EX−861(ポリエーテル変性エポキシ、長瀬ケムテックス社製、SP値14)
【0094】
(1−2)エポキシ化合物(A2)
EP−4088S(ジシクロペンタジエン型エポキシ、アデカ社製、SP値9)
HP−7200HH(ジシクロペンタジエン型エポキシ、DIC社製、SP値9)
EX−201(レゾルシノール型エポキシ化合物、長瀬ケムテックス社製、SP値12)
EPR−4030(NBR変性ビスA型エポキシ化合物、アデカ社製、SP値9)
R−45EPT(ブタジエン変性エポキシ、長瀬ケムテックス社製、SP値8、)
YL−980(ビスフェノールA型エポキシ、ジャパンエポキシレジン社製、SP値11)
【0095】
(2)硬化剤
YH−306(酸無水物硬化剤、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ジャパンエポキシレジン社製)
【0096】
(3)無機微粒子
フェニル基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカ粒子(表面フェニル基処理ナノシリカ、平均一次粒子径1μm、M値30、アドマテックス社製)
QS−40(ヒュームドシリカ、平均一次粒子径7nm、M値0、炭素含有量0重量%、トクヤマ社製)
MT−10(ヒュームドシリカ、平均一次粒子径15nm、M値47、炭素含有量0.9重量%、トクヤマ社製)
UFP−80(表面エポキシ基処理ナノシリカ、平均一次粒子径34nm、M値20、電気化学社製)
【0097】
(4)ポリエーテル変性シロキサン
BYK−349(ビックケミー・ジャパン社製)
【0098】
(5)硬化促進剤
イミダゾール硬化促進剤(2MA−OK)
【0099】
(評価)
実施例、比較例で得られた電子部品用接着剤について、以下の評価を行った。結果を表1〜5に示した。
【0100】
(1)ブリード量(ブリード現象の発生の度合い)の評価
得られた電子部品用接着剤を、金のボンディングパッド又はレジスト上に塗布して直径500μmの円形の接着剤層を形成した。その後、80℃のオーブンに20分間入れて、接着剤層を硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物について、液状成分のブリード部分の距離を、光学顕微鏡を用いて測定した。
片側のブリード部分の距離が50μm以下であった場合を○と、50μmを超えた場合を×と評価した。
【0101】
(2)塗布性の評価
得られた電子部品用接着剤を、エアディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製)を用いて、シリコンチップ上にドット状に100点塗布した。
ドット径の平均が400〜600μmになるように塗布したとき、ドット径の最大値と最小値との差が100μm未満であった場合○と、100μm以上であった場合を×と評価した。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、電子部品を接合する際に塗布性に優れ、かつ、接合した電子部品に対する耐汚染性に優れる電子部品接合体を得ることができる電子部品用接着剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物、硬化剤、無機微粒子及びポリエーテル変性シロキサンを含有することを特徴とする電子部品用接着剤。
【請求項2】
液状成分の溶解度パラメータ(SP値)が8以上11未満であって、平均一次粒子径が50nm以下、かつ、疎水化度(M値)が30以上50以下の無機微粒子(A)を含有することを特徴とする請求項1記載の電子部品用接着剤。
【請求項3】
液状成分の溶解度パラメータ(SP値)が11以上12未満であって、平均一次粒子径が50nm以下、かつ、疎水化度(M値)が10以上40以下の無機微粒子(B)を含有することを特徴とする請求項1記載の電子部品用接着剤。
【請求項4】
液状成分の溶解度パラメータ(SP値)が12以上14以下であって、平均一次粒子径が50nm以下、かつ、疎水化度(M値)が50以下の無機微粒子(C)を含有することを特徴とする請求項1記載の電子部品用接着剤。
【請求項5】
脂肪族ポリエーテル骨格とグリシジルエーテル基とを有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電子部品用接着剤。
【請求項6】
更に、エポキシ基含有アクリルポリマーを含有することを特徴とする請求項5記載の電子部品用接着剤。
【請求項7】
更に、芳香族骨格を有し、かつ分子量が150〜500であるエポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項5記載の電子部品用接着剤。
【請求項8】
更に、CV値が10%以下のスペーサー粒子を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の電子部品用接着剤。

【公開番号】特開2011−195735(P2011−195735A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64946(P2010−64946)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】