電子部品用無鉛金属材料
【課題】耐酸化性に優れた無鉛金属材料であって、無鉛はんだならびに無鉛めっき材料として好適な電子部品用無鉛金属材料を提供する。
【解決手段】Taを0.005〜2.0重量%含有するSn基合金からなることを特徴とする電子部品用無鉛金属材料、Taを0.005〜2.0重量%含有するSn基合金からなる無鉛はんだ、およびTaを0.005〜2.0重量%含有するSn基合金からなる無鉛めっき材料。無鉛はんだについてはさらにZn、Bi、In、Cu、Agから選ばれる添加元素、またさらにCo、Ti、Ni、Pd,Sb、Geから選ばれる少なくとも1種の添加元素を含有する。また無鉛めっき材料は、Inの含有、さらにAg、Cu、Znから選ばれる少なくとも1種の添加元素を含有する。
【解決手段】Taを0.005〜2.0重量%含有するSn基合金からなることを特徴とする電子部品用無鉛金属材料、Taを0.005〜2.0重量%含有するSn基合金からなる無鉛はんだ、およびTaを0.005〜2.0重量%含有するSn基合金からなる無鉛めっき材料。無鉛はんだについてはさらにZn、Bi、In、Cu、Agから選ばれる添加元素、またさらにCo、Ti、Ni、Pd,Sb、Geから選ばれる少なくとも1種の添加元素を含有する。また無鉛めっき材料は、Inの含有、さらにAg、Cu、Znから選ばれる少なくとも1種の添加元素を含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用無鉛金属材料に関する。さらに詳細には、本発明は、耐酸化性に優れた無鉛金属材料であって、例えば無鉛はんだならびに無鉛めっき材料として好適な電子部品用無鉛金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から環境問題に対する関心が高まりつつある中、産業廃棄物の廃棄量の増大が深刻な問題となっている。産業廃棄物に含まれる、例えば、電力制御計算機の基板、家電製品、パソコンなどには、はんだが使用されており、このはんだから鉛などの有害な重金属が流出することがある。例えば、鉛が流出すると、酸性雨などに作用して鉛を含んだ水溶液を生成し、その水溶液が地下水に侵入することがある。
【0003】
国内では、1998年に家電リサイクル法が成立し、2001年には家電製品について使用済み製品の回収が義務づけられている。欧州では、電気・電子製品廃棄物EU指令により、2004年から鉛を特定物質の使用禁止が義務づけられている。このように、鉛の使用に関する法的規制が強化され、鉛フリーはんだの開発が急がれている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
はんだは、熱サイクル、機械的衝撃、機械的振動などを伴う厳しい環境下で使用される複数の要素部品を機械的かつ電気的に接続する重要な役割を担っており、鉛フリーはんだにおいても、従来用いられてきたSn-Pbはんだと同等の融点で、機械的性質やぬれ性に優れ、かつ、リボン状や糸状のはんだに成形できる塑性加工性に優れた無鉛はんだが要求されている。
【0005】
しかし、従来の鉛フリーはんだでは、Sn-37重量%Pbはんだ(融点183℃)と同等の融点を得るため、Sn-Zn系、Sn-Bi系を採用したり、融点を下げるためSn-Cu系、Sn-Ag系、Sn-Cu-Ag系等にIn、Biを多量添加したりすることが一般的である。例えば、Sn-9.0重量%Zn(融点199℃)、Sn-58.0重量%Bi(融点138℃)、Sn-0.5重量%Cu-4.0重量%Ag-8重量%In(融点208℃)が挙げられる。しかし、これらのはんだは、耐酸化性が十分でなく、そして脆性を引き起こす元素を多量に含有するために、機械的性質、塑性加工性等が低下し、はんだ接合強度、信頼性を十分に確保することが困難であった。また、これらの無鉛はんだは、塑性加工する際、脆性破壊等を起こやすいことから、押出し、圧延、線引き等が非常に困難であって、従ってリボン状、糸状の成形体がほとんど製造できず、用途が著しく制限されている。
【0006】
また、鉛を含まないSn基合金から形成されためっき層は、その表面が酸化されやすく、そして、めっき層の表面にウイスカが発生、成長することが知られている。特にめっき層中にInが含まれている場合には、より酸化が顕著になり、めっき層の表面に応力が発生し、これがウイスカの形成を促進することがあった。ウイスカの発生および成長を抑制することは、電子部品の短絡防止のために重要になっている。
【非特許文献1】Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on Waste Electrical and Electronic Equipment, Commission of the European Communities, Brussels,13.6.2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の無鉛金属材料は、上記のように耐酸化性が十分でないことから電子部品用無鉛金属材料、例えば無鉛はんだあるいは無鉛めっき材料としては必ずしも満足できるものではなかった。
【0008】
例えば、従来の鉛フリーはんだは、耐酸化性が十分でなく、そして脆性を引き起こす元素を多量に含有するため、機械的性質、塑性加工性等が低下し、はんだ接合強度、信頼性を十分に確保することが困難である。また、これらの無鉛はんだは、塑性加工する際、脆性破壊等を起こし、押出し、圧延、線引き等が非常に困難であり、リボン状、糸状のはんだがほとんど製造できず、用途が著しく制限されている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、耐酸化性、機械的性質、塑性加工性に優れ、はんだ接合強度や信頼性を十分に確保し、リボン状、糸状の成形品を製造できる無鉛はんだを提供するとともに、この無鉛はんだによって接合された信頼性の高いはんだ接合体ならびに電子部品を提供すること目的とする。
【0010】
また、従来の鉛を含まないSn基合金から形成されためっき層は、耐酸化性で十分でないことから、その表面が酸化されやすくて、めっき層の表面にウイスカが発生、成長することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、本発明は、耐酸化性に優れた無鉛金属材料であって、無鉛はんだならびに無鉛めっき材料として好適な電子部品用無鉛金属材料を提供するものである。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明による電子部品用無鉛金属材料は、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなること、を特徴とするものである。
【0013】
そして、本発明による無鉛はんだは、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなること、を特徴とするものである。
【0014】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびZnを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるもの、を包含する。
【0015】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびBiを0.1重量%以上、60.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0016】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびInを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0017】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびCuを0.01重量%以上、7.5重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0018】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびAgを0.01重量%以上、5.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるなるもの、を包含する。
【0019】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下、Agを0.01重量%以上、5.0重量%以下およびCuを0.01重量%以上、7.5重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0020】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、InおよびBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Y)をさらに含有するSn基合金からなるもの、を包含する。
【0021】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、前記のInおよびBiからなる群から選ばれる添加元素(Y)の含有量が、Inについては10重量%を越えず、Biについては60重量%を越えないSn基合金からなるもの、を包含する。
【0022】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Co、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(X)をさらに含有するSn基合金からなるもの、を包含する。
【0023】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、前記のCo、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる添加元素(X)の含有量が各々0.5重量%を超えず、かつ、前記の添加元素(X)を複数種含有する場合にはそれらの合計の含有量が1.0重量%を超えないSn基合金からなるもの、を包含する。
【0024】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、クリーム状、リボン状、糸状またはロッド状の形状を有するもの、を包含する。
【0025】
また、本発明によるはんだ接合体は、前記の無鉛はんだによって接合されたこと、を特徴とするものである。
【0026】
また、本発明による電子部品は、前記の無鉛はんだによって接合されたこと、を特徴とするものである。
【0027】
また、本発明による無鉛めっき材料は、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなること、を特徴とするものである。
【0028】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、Taを0.1重量%以上、1.0重量%以下含有するSn基合金からなるもの、を包含する。
【0029】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、Taを0.1重量%以上、1.0重量%以下およびInを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0030】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、Ag、CuおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Z)をさらに含有するSn基合金からなるもの、を包含する。
【0031】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、60℃−93%RHの環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの中央値(メジアン)が20μm以上、50μm以下であるめっき層を形成するもの、を包含する。
【0032】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、60℃−93%RHの環境下に1000時間曝したときのめっき層表面の酸化量(CPS)が70以下であるめっき層を形成するもの、を包含する。
【発明の効果】
【0033】
本発明による電子部品用無鉛金属材料は、耐酸化性に優れた無鉛金属材料であって、例えば無鉛はんだならびに無鉛めっき材料として好適なものである。
【0034】
特に、本発明による無鉛はんだは、耐酸化性に優れたものであって、例えば押出し、圧延、線引き等の塑性加工が極めて容易にかつ良好に行えるものであり、更に、はんだとして用いられた場合において、はんだとして求められる諸特性、例えば機械的特性、ぬれ性等が優れたものである。よって、本発明によれば、耐酸化性、機械的性質、塑性加工性に優れ、はんだ接合強度や信頼性を十分に確保し、リボン状、糸状はんだに塑性加工できる無鉛はんだを提供することができる。
【0035】
本発明による無鉛はんだは、実質的に融点の上昇を伴わずに、ぬれ性が向上したものであることから、接合対象物の熱による劣化を有効に防止しつつ、はんだ接合強度および信頼性を著しく向上させることができる。よって、本発明によれば、優れた接合強度および信頼性を有するはんだ接合物、好ましくは、各種の電子素子、例えばLED発光素子、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)、実装基板等、が接合された電子部品を得ることができる。
【0036】
そして、本発明による無鉛めっき材料は、耐酸化性に優れたものであって、耐酸化性が良好なめっき層を形成することができるものである。このような本発明による耐酸化性が良好な無鉛めっき層は、ウイスカの発生および成長が極めて少なくて、従来の無鉛めっき層に比べて著しくその発生および成長が抑制されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
<無鉛はんだ>
本発明による無鉛はんだは、Ta(タンタル)を0.005重量%以上、かつ、2.0重量%以下含有するSn(錫)基合金からなるものである。ここで、無鉛はんだとは、一般にPb(鉛)含有量1000ppm以下とされている。
【0038】
このようなTaを所定量含む本発明による無鉛はんだは、(イ)Sn-Ta系のもの、(ロ)Sn-Zn-Ta系のもの、(ハ)Sn-Bi-Ta系のもの、(ニ)Sn-Cu-Ta系のもの、(ホ)Sn-Ag-Ta系のもの、(ヘ)Sn-Cu-Ag-Ta系のもの、に類別することができる。
【0039】
本発明による無鉛はんだは、上記(イ)〜(ヘ)のいずれに類別されるものであっても、Taを必須成分として、0.005重量%以上、2.0重量%以下含有していることが肝要である。
【0040】
このTaは、主として、はんだのぬれ性向上とはんだ接合部の機械的性質向上のために重要な成分である。このTa添加元素は、Sn又はSn合金の溶融状態において、表面張力を減少させ、被はんだ部材とのぬれ性を向上させる。また、Sn又はSn合金の凝固過程で、Sn−Ta金属間化合物が核生成し、結晶組織の微細化に寄与する。Taが0.005重量%未満である場合には、十分な凝固組織の微細化効果が得られるものの、表面張力低減によるぬれ性向上効果を発揮できないためである。一方、2.0重量%超過では、優れたぬれ性を発揮するものの、冷却条件によって、粗大なSn−Ta金属間化合物を形成し、はんだ強度を低下させることがある。本発明による無鉛はんだにおけるTa含有量は、0.05〜1.0重量%の範囲が好ましく、特に、0.1〜0.5重量%の範囲がぬれ性と機械的性質のバランスが最も良く、はんだ性能を最大限に発揮することができる。
【0041】
(イ)のSn-Ta系の本発明による無鉛はんだは、Snと、上記の所定量のTaと、必要に応じて添加される各種の添加元素(詳細後記)ならびに不可避不純物とからなる。Sn-Ta系の本発明による無鉛はんだは、少量のTaを含有することにより、純Snの融点の232℃を変えずに、この融点の領域において、優れたぬれ性と機械的性質を兼備することができる。
【0042】
Sn−9重量%Znの共晶組成が最も融点が低く(融点:198℃)、低融点無鉛はんだとして一般に使われているが、Znの含有量が多いため、粗大な共晶組織を形成し易く、十分なはんだ強度と信頼性が得られないという課題がある。本発明の(ロ)のSn-Zn-Ta系の無鉛はんだは、特に上記の課題を解決するため最も威力を発揮する。すなわち、Taを含有することによって、表面張力が低減し、Sn−Znの共晶組織が著しく微細化し、かつ、均一になるため、機械的性質が向上し、特に、脆性が著しく改善され、凝固時のクラックの発生が抑制される。このメカニズムは、9重量%Znを超えるSn−Zn過共晶組成および9重量%Zn未満の亜共晶組成においても顕著な効果を発揮し、特に、組成を制限するべきのものではない。
【0043】
(ハ)のSn-Bi-Ta系の本発明による無鉛はんだは、上記(ロ)のSn-Zn-Ta系の本発明の無鉛はんだと類似し、低融点無鉛はんだとして、Sn−57重量%Biの共晶組成(融点:139℃)が一般に用いられている。Biの一部がSn中に固溶するものの、大部分がBi単体として共晶組織を形成し、冷却条件によって、粗大化する。このような粗大な共晶組織の存在は、はんだ部の脆性破壊を引き起こす主因である。はんだ強度と信頼性を確保しなければならない場合では、Bi含有量を5重量%以下に抑える必要があり、特に、0.1重量%〜1.0重量%の範囲が好ましい。
【0044】
(ニ)Sn-Cu-Ta系または(ホ)Sn-Ag-Ta系(ヘ)Sn-Cu-Ag-Ta系の本発明による無鉛はんだにおいても、上記の本発明のSn-Zn-Ta系、Sn-Bi-Ta系無鉛はんだと共通なTa含有効果を呈する。一般にSn−0.5〜0.75重量%Cuの共晶組成付近、Sn−0.5〜0.75重量%Cu−3.0〜3.5重量%Agの3元の共晶組成付近が用いられているが、はんだ融点(液相線温度)を上げるため、Sn−0.7重量%Cuの共晶組成より遥かに多い7.5重量%Cuを超える過共晶組成、又は、Sn−0.7重量%Cuの共晶組成より遥かに少ない0.5重量%Cu未満の亜共晶組成も用いられる。このようにSn−Cu系無鉛はんだの全組成において、Taの含有効果が変わらず、Sn−Ag系、Sn−Cu−Ag系無鉛はんだも同様である。
【0045】
上記(イ)〜(ヘ)の本発明による無鉛はんだは、必要に応じて、各種の添加元素を用いることが出来ることは前記した通りである。そのような添加元素の好ましい具体例としては、Co、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(X)を例示することができる。このような添加元素(X)の使用によって、溶融無鉛はんだの表面張力を減少させ、ぬれ性を向上させる。例えば、特願2004−65858には、Co、Ni、Pdを添加することによって、表面張力が減少することが記載されている。
【0046】
本発明の無鉛はんだの添加元素のCo、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeの添加量はいずれも0.005重量%以上、0.5重量%以下が好ましい。上記の添加量が0.005重量%未満では十分な表面張力低減を確保できず、添加量が0.5重量%を超えると冷却条件によって粗大な金属間化合物を形成し易く、機械的性質が悪くなる場合がある。また、前記添加元素(X)を複数種含有する場合において、それらの合計量は1.0重量%を超えないこと、特に、0.7重量%を超えないことが好ましい。
【0047】
本発明による無鉛はんだが、(ニ)Sn-Cu-Ta系、(ホ)Sn-Ag-Ta系、または(ヘ)Sn-Cu-Ag-Ta系のものである場合には、必要に応じて、上記の添加元素(X)以外の他の添加元素を用いることができる。そのような他の添加元素の好ましい具体例としては、InおよびBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Y)を例示することができる。なお、この添加元素(Y)を用いた本発明による無鉛はんだには、添加元素(X)が存在していても、存在していなくてもよい。また、本発明による無鉛はんだには、本発明の効果が得られるならば上記添加元素(X)および添加元素(Y)以外の他の添加元素が存在していてもよい。
【0048】
In(インジウム)は、主として、無鉛はんだの融点を下げるために有効な成分であって、適用される電子部品の許容の温度範囲と材料コストのバランスを考慮して適宜に規定されるものである。一般に、耐酸化性の観点から10.0重量%以下にすること、特に5.0重量%以下を添加することが好ましい。
【0049】
Bi(ビスマス)は、主として、無鉛はんだの融点を下げるために有効な成分であって、特に、組成を制限するべきのものではないが、前記したように、はんだ強度と信頼性を確保しなければならない場合では、Bi含有量を5重量%以下に抑える必要があり、特に、0.1重量%〜1.0重量%の範囲が好ましい。また、Inと複数種含有する場合において、特に、Biの含有量は、0.1重量%〜1.0重量%の範囲が好ましい。
【0050】
上記の本発明による無鉛はんだ(イ)〜(へ)、ならびに必要に応じて添加元素(X)および添加元素(Y)を含有する本発明による無鉛はんだは、例えば押出し、圧延、線引きなどの塑性加工が極めて容易にかつ良好に行えるものであって、更にはんだとして用いられた場合において、はんだとして求められる諸特性、例えば、接合強度、機械的特性、ぬれ性等が特に優れたものである。
【0051】
従って、本発明によれば、優れた接合強度および信頼性を有するはんだ接合物、好ましくは、各種の電子素子、例えばLED発光素子、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)、実装基板等、が接合された電子部品を得ることができる。
【0052】
本発明による無鉛はんだは、特に限定されることなく任意の方法によって製造することができる。例えば、目的とする組成の無鉛はんだが得られるように、必須成分であるSnおよびTaと、Zn、Bi、Cu、Agと、任意成分である添加元素(X)または添加元素(Y)と、場合によりその他の成分とを、各成分の融点以上の温度にて溶融混練した後、冷却することによって製造することができる。特に、目的とする無鉛はんだを構成する所要量以下のSnと、上記の必須成分および(または)任意成分の一種または二種以上とを予め合金化しておき、その後、この合金化物(予備合金化物)と、目的とする無鉛はんだが得られるようにSn所要量の残量と、必須成分および(または)任意成分の残量とを合金化して、本発明による無鉛はんだを調製することが好ましい。このようにすることによって、Snと上記各金属成分とが均一かつ緊密に分散したはんだを得ることが容易になる。無鉛はんだの酸化による特性劣化を防止するために、無鉛はんだおよびその構成成分は、不活性雰囲気中、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等のガス雰囲気中で、取り扱うことが好ましい。
【0053】
なお、本発明による無鉛はんだは、その組成や具体的な製造条件、その他の条件等に応じ、室温において固体状であるものとペースト状であるものとがある。
【0054】
上記のように製造された本発明による無鉛はんだは、例えば押出し、圧延、線引きなどの塑性加工が極めて容易にかつ良好に行えるものであって、更にはんだとして用いられる場合において、はんだとして求められる諸特性、例えば、接合強度、機械的特性、ぬれ性等が優れたものである。
【0055】
本発明による無鉛はんだのぬれ性は、JIS Z3198−3において規定されるぬれ広がり率(%)が、(イ)Sn-Ta系では75〜80%、(ロ)Sn-Zn-Ta系では60〜70%、(ハ)Sn-Bi‐Ta系では80〜90%、(ニ)Sn-Cu-Ta系では70〜85%、(ホ)Sn-Ta-Ag系では75〜85%、(ヘ)Sn-Cu-Ag-Ta系では75〜85%、のものである。Taを含まない以外は同様である上記各系のはんだに比べて、それぞれ15%以上ぬれ性(広がり率)の向上が観察される。
【0056】
また、無鉛はんだのぬれ性は、基板上に所定厚さのはんだ層を設置し、これを空気雰囲気中で当該はんだの融点以上の温度に加熱して、その溶融はんだから形成されたはんだ膜の状態を目視により観察することによって、評価することもできる。
【0057】
図1は、本発明によるはんだとしてSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.05Taからなる縦25mm×横25mm×厚さ150μmのリボンはんだを用い、フラックスを塗布した無酸素Cu板(1)上に設置し、温度250℃にて加熱処理し、溶融後凝固したリボンはんだ(2)の状態を示す図である。図2は、上記の本発明のはんだの代わりにSn−3Ag−0.5Cuを用いた以外は上記と同様に行った場合を、図3は、上記の本発明のはんだの代わりに、Sn−3Ag−0.5Cu−4Inを用いた以外は上記と同様に行った場合を、それぞれ示すものである。
【0058】
これらの図から明らかなように、本発明によるはんだ無鉛はんだは、ぬれ性が良好なものであって、基板上にほぼ均一な厚さのはんだ膜を形成することができる。これに対し、他のはんだは、ぬれ性が十分でないことから、溶融時にはんだの一部が基板からはじかれてしまい、均一なはんだ膜が形成されずに、はんだ非着部3が生じたり、はんだ膜の過度の盛り上がり部4が生じる。かつ、はんだ膜の輪郭が不鮮明である。このようにぬれ性が不良であるはんだでは、十分なはんだ接合強度を得ることができず、また意図しない領域にはんだが漏出してしまう危険性が高くなる。よって、このようなはんだは、特に高精度のはんだ接合品質が要求される利用分野、例えば高精密な電子素子の接合ないし配線用はんだ、としては適していない。
【0059】
また、はんだのぬれ性は、はんだの溶融状態における表面張力を滴下法にて測定することによって評価することも可能である。滴下法とは、液体を円形の管口から滴下させる場合において、しずく状のはんだの重量がその表面張力に打ち勝って落下する性質を利用した表面張力の測定法である。
【0060】
図4は、本発明によるはんだとしてSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.05Taからなる溶融状態のはんだを、直径0.7mmの円形の管口から徐々に流出させ、滴下直前の滴状のはんだの形状を示すものである。図5は、上記のはんだの代わりにSn−3Ag−0.5Cuを用いた場合の形状を、図6は、Sn−3Ag−0.5Cu−4Inを用いた場合の形状を、それぞれ示すものである。各図において、滴状のはんだが落下した直前の水平方向の最大直径deと滴状はんだの先端からの距離deの位置における水平方向の直径dsとの関係から下記のように溶融はんだの表面張力γを算出した。
γ = g・ρ・(de)2 / H
(ここで、γは表面張力を、gは重力定数を、deは最大直径を、Hは補正項(H=ds/de)を、示す)
【0061】
上記の式から導き出されるように、dsが大きいときほど表面張力が低くなる。表面張力が低いはんだ程、ぬれ性が良好なはんだと捉えることができる。
【0062】
図4に示される本発明のSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.1Taはんだの表面張力は、0.40〜0.42N/m、
図5に示される従来はんだのSn−3Ag−0.5Cuの表面張力は、0.38〜0.40N/m、
図6に示される従来はんだのSn−3Ag−0.5Cu−の表面張力は、0.43〜0.46N/mである。
【0063】
上記の結果から、従来のはんだSn−3Ag−0.5Cuに4Inを含有すると表面張力が上昇し、0.1Taを含有すると表面張力が減少し、ぬれ性が良好であることが判る。
【0064】
そして、本発明による無鉛はんだは、優れた耐酸化性を有するものであることから、酸化に基づく各種の特性劣化が高度に抑制されたものであり、かつはんだ酸化物から主として構成される所謂ドロスの発生が極めて少ないないものである。例えば、本発明による無鉛はんだによれば、Taを含まない無鉛はんだに比べて、ドロスの発生量が約1/5程度以下に抑制される。
【0065】
<無鉛はんだ成形体の製造方法>
本発明による無鉛はんだは、成形体とすることができる。そのような無鉛はんだ成形体は製造方法は、前記の本発明による無鉛はんだを、溶解、鋳造してインゴットを形成させるインゴット鋳造工程と、このインゴットを塑性加工して成形体を得る塑性加工工程とを具備すること、を特徴とする。
【0066】
一般に、従来の無鉛はんだは、塑性加工が難しかったり、組成可能できたとしてもはんだとして十分な機械的特性やぬれ性等を得ることが困難であったが、本発明による無鉛はんだは、塑性加工が極めて容易にかつ良好に行えるとともに、そのような塑性加工を経た後においても、はんだとして好ましい良好な機械的特性、ぬれ性、はんだ接合強度等を有するものである。
【0067】
本発明による無鉛はんだ成形体の製造方法によれば、はんだとして好ましい特性を有する、所望の形態および大きさのはんだ成形体を容易に得ることができる。本発明によれば、従来の一般的な無鉛はんだを用いた場合には得ることが難しかった形状、例えば、リボン状、糸状またはロッド状の形状を有する無鉛はんだ成形体を得ることができる。
【0068】
本発明によるリボン状の無鉛はんだ成形体の好ましい具体例には、厚さが50〜500μm、特に100〜150μm、のものが包含される。本発明による糸状の無鉛はんだ成形体の好ましい具体例には、糸径が0.1mm〜1mm、特に0.2mm〜0.5mmのものが包含される。本発明によるロッド状の無鉛はんだ成形体の形状、寸法は特に制限するべきものではないが、鋳造されるロッド状の無鉛はんだ成形体の化学成分の偏析を極力に低減させるため、冷却速度が1℃/秒以上が好ましい。また、鋳造されたインゴットを押出し、圧延などの塑性加工の工程を経て、均一な組織を有するロッド状の無鉛はんだ成形体、若しくは、溶融した無鉛はんだの溶湯を直接圧延し、ロッド状の無鉛はんだ成形体を成形するものが包含される。
【0069】
このような本発明による無鉛はんだ成形体は、特に各種の電子素子、例えばLED発光素子、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)および実装基板などがはんだ接合用のはんだ成形体として特に適したものである。
【0070】
そして、本発明による無鉛はんだおよび無鉛はんだ成形体は、従来のPb含有のSnはんだと同程度の融点を有するものであって、かつ従来と同等またはそれ以上の優れたはんだ接合強度および信頼性が得られるものである。
【0071】
<無鉛めっき材料>
本発明による無鉛めっき材料は、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなるものである。ここで、無鉛めっき材料とは、一般にPb(鉛)含有量1000ppm以下とされている。
【0072】
このようなTaを所定量含む本発明による無鉛めっき材料は、必要に応じて、Inを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有することができる。そして、さらに必要に応じて、Ag、CuおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Z)をさらに含有することができる。
【0073】
このTaは、主として、めっき材料の耐酸化性向上のために重要な成分であり、そしてウイスカの発生および成長を抑制するために重要な成分である。Taが0.005重量%未満である場合には、ウイスカの発生および成長を抑制効果が十分でなく、比較的早期にウイスカが観察されるようになり、そしてウイスカの成長速度およびウイスカの長さが過大となってしまうので、本発明の目的を達成することができない。一方、Taの量が2.0重量%超過しても、ウイスカ抑制効果は実施的に向上することはなく、かえって融点の上昇を招くので低温度での処理に適さなくなる。特に好ましいTa含有量は、0.1重量%以上、1.0重量%以下である。
【0074】
Inは、主として、無鉛めっき材料の融点を下げるために有効な成分であって、適用される基材や、処理および(または)使用環境の温度範囲と材料コストのバランス等を考慮して適宜定めることができる。Inを用いる場合、その量は0.1重量%以上が好ましいが、耐酸化性の観点から10.0重量%以下、特に5.0重量%以下を添加することが好ましい。
【0075】
Agは、主として、機械的強度を向上させるために有効な成分である。Agを用いる場合、その量は、好ましくは0.5重量%以上、6.0重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以上、4.0重量%以下、である。
【0076】
Cuは、主として、融点を低下させるために有効な成分である。Agを用いる場合、その量は、好ましくは0.5重量%以上、6.0重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以上、4.0重量%以下、である。
【0077】
Znは、主として、融点を低下させるために有効な成分である。その量は、好ましくは7重量%以上、9重量%以下、特に好ましくは8重量%以上、9重量%以下、である。
【0078】
上記の所定量のTaを含むSn基合金からなる本発明による無鉛めっき材料、およびIn、Ag、Cu、Zn等の添加元素を上記範囲で更に含む本発明による無鉛めっき材料は、特に耐酸化性が良好なめっき層を形成することができるものである。例えば、60℃−93%RHの恒温恒湿環境下に環境下に1000時間曝したときのめっき層表面の酸化量(CPS)が70以下、特に好ましくは50以下、であるめっき層を形成することができる。
【0079】
そして、長期間放置されたとしても、ウイスカの発生頻度が少なく、かつウイスカが発生したとしてもその成長速度が極めて遅い、無鉛めっき層を形成できるものである。例えば、60℃−93%RHの恒温恒湿環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの中央値(メジアン)が20μm以上、50μm以下、特に好ましくは20μm以上、30μm以下、であるめっき層を形成することができるものである。そして、例えば60℃−93%RHの恒温恒湿環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの平均値が15μm以上、20μm以下、特に好ましくは5μm以上、10μm以下、であるめっき層を形成することができるものである。
【0080】
ここで、酸化量(CPS)は表面状態や分析条件に基づくものであって、具体的には、電子線マイクロアナライザーの分析によって求められたものである。そして、ウイスカの長さの中央値(メジアン)とは、ウイスカの長さを、電子顕微鏡にて測定し、その測定値を大きさの順に並べたとき、その中央に当たる値を意味する。
【0081】
本発明による無鉛めっき材料は、上記の通りに、ウイスカの発生頻度が少なく、かつウイスカが発生したとしてもその成長速度が極めて遅いという点において、従来の無鉛めっき材料と区別できるものであるが、本発明による無鉛めっき材料は、さらに、ウイスカの長さのバラツキが少なくて、ウイスカの長さの最大値と最小値との差が少ないという点においても、従来の無鉛めっき材料と明確に区別できるものである。例えば、60℃−93%RHの恒温恒湿環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの最小値と最大値の差が、5μm以上、40μm以下、特に好ましくは5μm以上、30μm以下、であり、ウイスカの長さの分布を箱ひげ図(Box Plot)により示したとき、第1四分位にあたるウイスカの長さと第3四分位にあたるウイスカの長さの差が 20μm以上、30μm以下、特に好ましくは10μm以上、20μm以下、であるめっき層を形成できるものである。
【0082】
本発明による無鉛めっき材料は、例えば電気めっき、化学めっき、溶融めっき等の方法によってめっき層を形成することができる。この中では、電子部品の製造に特に適しておりかつ従来から広く行われきた化学めっき法が特に好ましい。
【0083】
そして、本発明によるめっき材料が適用されるめっき処理対象、即ち、本発明による無鉛めっき材料によってめっき層を形成させる対象は、上記のめっき方法、好ましくは化学めっき法、が採用可能なものならば任意である。好ましいものとしては、Cu、Fe、Fe−Niの金属基材を挙げることができる。
【0084】
そして、上記の金属基材には、必要に応じ、本発明による無鉛めっき材料によって無鉛めっき層を形成させる前に、必要に応じて、下地めっき層を形成しておくことができる。そのような下地めっき層として好ましいものは、本発明による無鉛めっき材料からなるめっき層との付着強度が高く、そして電気的特性ないし機械的特性が近似したもの、例えばSn基合金からなる金属表面を有する基材、特に好ましくは、Sn基合金からなる無鉛めっき材料によって形成されためっき層が下地層として形成された基材、を挙げることができる。
【0085】
通常、表層めっき層には、高度の耐酸化性が必要であるのに対し、下地めっき層にはそれと同等以上の耐酸化性までは通常必要でない。このことから、本発明による無鉛めっき材料によって表層めっき層を形成する際には、下地めっき層は従来の一般的なSn基合金からなる無鉛めっき材料を用いて形成することができる。なお、下地めっき層は、本発明によるSn基合金からなる無鉛めっき材料を用いて形成することもできる。
【0086】
めっき処理対象上に直接的にあるいは下地めっき層を上に形成された、本発明による無鉛めっき材料によるめっき層は、必要に応じて、リフロー処理に付すことができる。このリフロー処理によって、ウイスカの発生および成長をさらに抑制することができる。特に好ましいリフロー処理としては、下記を挙げることができる。
【0087】
リフロー炉中の温度は220℃〜240℃であり、時間は5分以上を目安とする。
下地めっき層としてSn基合金からなる無鉛めっき層が形成されている場合には、このリフロー処理によって、下地層と本発明による無鉛めっき材料によって表面層との両層の少なくとも一部分が溶融して、両層の密着性が向上することがある。リフロー処理を加圧下に行う場合、両層の密着性向上がさらに促進することができる。
【実施例】
【0088】
<実施例1>
Sn-9.0重量%Zn-0.1重量%Taからなる無鉛はんだを溶融し、直径100mm、長さ300mmのビレットを鋳造した。次に、ビレットを押出して、厚さ10mm、幅70mmの棒材を作製した。次に、棒材を圧延して、厚さ100μm、幅70mmのリボンを作成した。
【0089】
次に、図7に示すように、厚さ3mm、幅50mm、長さ60mmの銅板100の表面にフラックスを塗布した後、厚さ100μm、幅40mm、長さ50mmのリボンはんだ102を設置した。次に、Cuメタライジングされた厚さ0.5mm、幅30mm、長さ40mmのSiN基板102をリボンはんだ101の上部に設置し、窒素ガス雰囲気中において、230℃の温度で45秒間加熱して、リフローした。得られた接合体を−25℃〜125℃の熱サイクルを行なった。2000サイクルの熱サイクル試験後、接合体を超音波探傷試験で観測した結果、クラックや剥離の発生が認められなかった。
【0090】
<実施例2>
Sn-0.5重量%Cu-2.5重量%Ag-4.0重量%In-0.1%重量Ta-0.1重量%Coからなる無鉛はんだを溶融し、直径100mm、長さ300mmのビレットを鋳造した。次に、ビレットを押出して、厚さ10mm、幅70mmの棒材を作製した。次に、棒材を圧延して、厚さ100μm、幅70mmのリボンを作成した。
次に、図7に示すように、厚さ3mm、幅50mm、長さ60mmの銅板100の表面にフラックスを塗布した後、厚さ100μm、幅40mm、長さ50mmのリボンはんだ102を設置した。次に、Cuメタライジングされた厚さ0.5mm、幅30mm、長さ40mmのSiN基板102をリボンはんだ101の上部に設置し、窒素ガス雰囲気中において、250℃の温度で45秒間加熱して、リフローした。得られた接合体を−25℃〜125℃の熱サイクルを行なった。4000サイクルの熱サイクル試験後、接合体を超音波探傷試験で観測した結果、クラックや剥離の発生が認められなかった。
【0091】
<比較例1>
Sn-9.0重量%Znからなる無鉛はんだを溶融し、直径100mm、長さ300mmのビレットを鋳造した。次に、ビレットを厚さ10mm、幅70mmの形材に押出しを行った。しかし、形材のエッジ部に押出し方向と垂直な方向に多数クラックが発生した。押出し材を圧延し、厚さ100μm、幅40mm、長さ50mmのリボンはんだを切断し、供試材とした。
【0092】
次に、実施例1と同様に、厚さ3mm、幅50mm、長さ60mmの銅板100の表面にフラックスを塗布した後、厚さ100μm、幅40mm、長さ50mmのリボンはんだ102を設置した。次に、Cuメタライジングされた厚さ0.5mm、幅30mm、長さ40mmのSiN基板102をリボンはんだ101の上部に設置し、窒素ガス雰囲気中において、230℃の温度で45秒間加熱して、リフローした。得られた接合体を−25℃〜125℃の熱サイクルを行なった。750サイクルの熱サイクル試験後、接合体を超音波探傷試験で観測した結果、接合体の4つ角から多数クラックの発生が観察された。
【0093】
<実施例3および比較例2>
Taを0.1重量%含有するSn基合金からなる本発明の無鉛めっき材料(実施例3)と、Taを実質的に含まないSn基合金からなる無鉛めっき材料(比較例2)とを用意した。
【0094】
上記の2種類の無鉛めっき材料(実施例3および比較例2)を、それぞれ42アロイ合金からなる基材表面に施して、その基材表面にめっき層を形成した。
【0095】
これらを60℃−93%の恒温恒湿漕内に放置し、1000時間経過後の表面状態を観察し、表面に発生したウイスカの長さおよび太さを測定した。そして、各めっき層の表面の酸化量を電子線マイクロアナライザーによって測定した。
【0096】
図8および図9は、ウイスカの長さ、太さ、およびそれらの分布状態を示す箱ひげ図(Box Plot)であり、図10は、めっき層の表面の酸化量を示す箱ひげ図(Box Plot)である。
【表1】
【0097】
図8から明らかなように、本発明の無鉛めっき材料(実施例3)によれば、比較例3に比べてウイスカの長さが短くなっている。ウイスカの形状も、図9に示されるように、実施例3の方が比較例3よりも太いことから明らかなに異なっている、一般に、長さが長いウイスカは細く、長さが短いウイスカは太い傾向にあるが、この傾向も本発明で同様であることが確認された。そして、図10に示されるように、本発明の無鉛めっき材料(実施例3)によって形成されためっき層は、比較例3のめっき層に比べて、酸化量が少ないものとなっている。
【0098】
図8〜図10から明らかなように、本発明の無鉛めっき材料(実施例3)では、比較例3に比べて、めっき層の耐酸化性が向上し、ウイスカの発生および成長が抑制されている。
【0099】
<実施例4〜7>
Ta含有量を、0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%含有するSn基合金からなる本発明の無鉛めっき材料(実施例4〜7)を用意した。
【0100】
上記の4種類の無鉛めっき材料(実施例4〜7)を、それぞれ42アロイ合金からなる基材表面に施して、その基材表面にめっき層を形成した。
【0101】
これらを60℃−93%の恒温恒湿漕内に放置し、1000時間経過後の表面状態を観察し、表面のウイスカの長さを測定した。図11は、ウイスカの長さの分布状態を示す箱ひげ図(Box Plot)である。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.05Ta系はんだの溶融物によって、基板上に形成された薄膜の状態を示す写真。
【図2】Sn−3Ag−0.5Cu系はんだによって、基板上に形成された薄膜の状態を示す写真。
【図3】Sn−3Ag−0.5Cu−4In系はんだによって、基板上に形成された薄膜の状態を示す写真。
【図4】本発明のSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.05Ta系はんだの表面張力を滴下法によって評価する際に形成された滴の形状を示す図面。
【図5】Sn−3Ag−0.5Cu系はんだの表面張力を滴下法によって評価する際に形成された滴の形状を示す図。
【図6】Sn−3Ag−0.5Cu−4In系はんだの表面張力を滴下法によって評価する際に形成された滴の形状を示す図。
【図7】実施例1および2において行われた「熱サイクル試験」の概要を示す図。
【図8】実施例3と比較例4において形成されたウイスカの長さを示す図
【図9】実施例3と比較例4において形成されたウイスカの太さを示す図
【図10】実施例3と比較例4において形成されためっき層の酸化量を示す図
【図11】実施例4〜7において形成されたウイスカの長さを示す図
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用無鉛金属材料に関する。さらに詳細には、本発明は、耐酸化性に優れた無鉛金属材料であって、例えば無鉛はんだならびに無鉛めっき材料として好適な電子部品用無鉛金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から環境問題に対する関心が高まりつつある中、産業廃棄物の廃棄量の増大が深刻な問題となっている。産業廃棄物に含まれる、例えば、電力制御計算機の基板、家電製品、パソコンなどには、はんだが使用されており、このはんだから鉛などの有害な重金属が流出することがある。例えば、鉛が流出すると、酸性雨などに作用して鉛を含んだ水溶液を生成し、その水溶液が地下水に侵入することがある。
【0003】
国内では、1998年に家電リサイクル法が成立し、2001年には家電製品について使用済み製品の回収が義務づけられている。欧州では、電気・電子製品廃棄物EU指令により、2004年から鉛を特定物質の使用禁止が義務づけられている。このように、鉛の使用に関する法的規制が強化され、鉛フリーはんだの開発が急がれている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
はんだは、熱サイクル、機械的衝撃、機械的振動などを伴う厳しい環境下で使用される複数の要素部品を機械的かつ電気的に接続する重要な役割を担っており、鉛フリーはんだにおいても、従来用いられてきたSn-Pbはんだと同等の融点で、機械的性質やぬれ性に優れ、かつ、リボン状や糸状のはんだに成形できる塑性加工性に優れた無鉛はんだが要求されている。
【0005】
しかし、従来の鉛フリーはんだでは、Sn-37重量%Pbはんだ(融点183℃)と同等の融点を得るため、Sn-Zn系、Sn-Bi系を採用したり、融点を下げるためSn-Cu系、Sn-Ag系、Sn-Cu-Ag系等にIn、Biを多量添加したりすることが一般的である。例えば、Sn-9.0重量%Zn(融点199℃)、Sn-58.0重量%Bi(融点138℃)、Sn-0.5重量%Cu-4.0重量%Ag-8重量%In(融点208℃)が挙げられる。しかし、これらのはんだは、耐酸化性が十分でなく、そして脆性を引き起こす元素を多量に含有するために、機械的性質、塑性加工性等が低下し、はんだ接合強度、信頼性を十分に確保することが困難であった。また、これらの無鉛はんだは、塑性加工する際、脆性破壊等を起こやすいことから、押出し、圧延、線引き等が非常に困難であって、従ってリボン状、糸状の成形体がほとんど製造できず、用途が著しく制限されている。
【0006】
また、鉛を含まないSn基合金から形成されためっき層は、その表面が酸化されやすく、そして、めっき層の表面にウイスカが発生、成長することが知られている。特にめっき層中にInが含まれている場合には、より酸化が顕著になり、めっき層の表面に応力が発生し、これがウイスカの形成を促進することがあった。ウイスカの発生および成長を抑制することは、電子部品の短絡防止のために重要になっている。
【非特許文献1】Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on Waste Electrical and Electronic Equipment, Commission of the European Communities, Brussels,13.6.2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の無鉛金属材料は、上記のように耐酸化性が十分でないことから電子部品用無鉛金属材料、例えば無鉛はんだあるいは無鉛めっき材料としては必ずしも満足できるものではなかった。
【0008】
例えば、従来の鉛フリーはんだは、耐酸化性が十分でなく、そして脆性を引き起こす元素を多量に含有するため、機械的性質、塑性加工性等が低下し、はんだ接合強度、信頼性を十分に確保することが困難である。また、これらの無鉛はんだは、塑性加工する際、脆性破壊等を起こし、押出し、圧延、線引き等が非常に困難であり、リボン状、糸状のはんだがほとんど製造できず、用途が著しく制限されている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、耐酸化性、機械的性質、塑性加工性に優れ、はんだ接合強度や信頼性を十分に確保し、リボン状、糸状の成形品を製造できる無鉛はんだを提供するとともに、この無鉛はんだによって接合された信頼性の高いはんだ接合体ならびに電子部品を提供すること目的とする。
【0010】
また、従来の鉛を含まないSn基合金から形成されためっき層は、耐酸化性で十分でないことから、その表面が酸化されやすくて、めっき層の表面にウイスカが発生、成長することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、本発明は、耐酸化性に優れた無鉛金属材料であって、無鉛はんだならびに無鉛めっき材料として好適な電子部品用無鉛金属材料を提供するものである。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明による電子部品用無鉛金属材料は、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなること、を特徴とするものである。
【0013】
そして、本発明による無鉛はんだは、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなること、を特徴とするものである。
【0014】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびZnを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるもの、を包含する。
【0015】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびBiを0.1重量%以上、60.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0016】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびInを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0017】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびCuを0.01重量%以上、7.5重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0018】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびAgを0.01重量%以上、5.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるなるもの、を包含する。
【0019】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下、Agを0.01重量%以上、5.0重量%以下およびCuを0.01重量%以上、7.5重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0020】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、InおよびBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Y)をさらに含有するSn基合金からなるもの、を包含する。
【0021】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、前記のInおよびBiからなる群から選ばれる添加元素(Y)の含有量が、Inについては10重量%を越えず、Biについては60重量%を越えないSn基合金からなるもの、を包含する。
【0022】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、Co、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(X)をさらに含有するSn基合金からなるもの、を包含する。
【0023】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、前記のCo、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる添加元素(X)の含有量が各々0.5重量%を超えず、かつ、前記の添加元素(X)を複数種含有する場合にはそれらの合計の含有量が1.0重量%を超えないSn基合金からなるもの、を包含する。
【0024】
このような本発明による無鉛はんだは、好ましい態様として、クリーム状、リボン状、糸状またはロッド状の形状を有するもの、を包含する。
【0025】
また、本発明によるはんだ接合体は、前記の無鉛はんだによって接合されたこと、を特徴とするものである。
【0026】
また、本発明による電子部品は、前記の無鉛はんだによって接合されたこと、を特徴とするものである。
【0027】
また、本発明による無鉛めっき材料は、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなること、を特徴とするものである。
【0028】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、Taを0.1重量%以上、1.0重量%以下含有するSn基合金からなるもの、を包含する。
【0029】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、Taを0.1重量%以上、1.0重量%以下およびInを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなるもの、を包含する。
【0030】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、Ag、CuおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Z)をさらに含有するSn基合金からなるもの、を包含する。
【0031】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、60℃−93%RHの環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの中央値(メジアン)が20μm以上、50μm以下であるめっき層を形成するもの、を包含する。
【0032】
このような本発明による無鉛めっき材料は、好ましい態様として、60℃−93%RHの環境下に1000時間曝したときのめっき層表面の酸化量(CPS)が70以下であるめっき層を形成するもの、を包含する。
【発明の効果】
【0033】
本発明による電子部品用無鉛金属材料は、耐酸化性に優れた無鉛金属材料であって、例えば無鉛はんだならびに無鉛めっき材料として好適なものである。
【0034】
特に、本発明による無鉛はんだは、耐酸化性に優れたものであって、例えば押出し、圧延、線引き等の塑性加工が極めて容易にかつ良好に行えるものであり、更に、はんだとして用いられた場合において、はんだとして求められる諸特性、例えば機械的特性、ぬれ性等が優れたものである。よって、本発明によれば、耐酸化性、機械的性質、塑性加工性に優れ、はんだ接合強度や信頼性を十分に確保し、リボン状、糸状はんだに塑性加工できる無鉛はんだを提供することができる。
【0035】
本発明による無鉛はんだは、実質的に融点の上昇を伴わずに、ぬれ性が向上したものであることから、接合対象物の熱による劣化を有効に防止しつつ、はんだ接合強度および信頼性を著しく向上させることができる。よって、本発明によれば、優れた接合強度および信頼性を有するはんだ接合物、好ましくは、各種の電子素子、例えばLED発光素子、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)、実装基板等、が接合された電子部品を得ることができる。
【0036】
そして、本発明による無鉛めっき材料は、耐酸化性に優れたものであって、耐酸化性が良好なめっき層を形成することができるものである。このような本発明による耐酸化性が良好な無鉛めっき層は、ウイスカの発生および成長が極めて少なくて、従来の無鉛めっき層に比べて著しくその発生および成長が抑制されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
<無鉛はんだ>
本発明による無鉛はんだは、Ta(タンタル)を0.005重量%以上、かつ、2.0重量%以下含有するSn(錫)基合金からなるものである。ここで、無鉛はんだとは、一般にPb(鉛)含有量1000ppm以下とされている。
【0038】
このようなTaを所定量含む本発明による無鉛はんだは、(イ)Sn-Ta系のもの、(ロ)Sn-Zn-Ta系のもの、(ハ)Sn-Bi-Ta系のもの、(ニ)Sn-Cu-Ta系のもの、(ホ)Sn-Ag-Ta系のもの、(ヘ)Sn-Cu-Ag-Ta系のもの、に類別することができる。
【0039】
本発明による無鉛はんだは、上記(イ)〜(ヘ)のいずれに類別されるものであっても、Taを必須成分として、0.005重量%以上、2.0重量%以下含有していることが肝要である。
【0040】
このTaは、主として、はんだのぬれ性向上とはんだ接合部の機械的性質向上のために重要な成分である。このTa添加元素は、Sn又はSn合金の溶融状態において、表面張力を減少させ、被はんだ部材とのぬれ性を向上させる。また、Sn又はSn合金の凝固過程で、Sn−Ta金属間化合物が核生成し、結晶組織の微細化に寄与する。Taが0.005重量%未満である場合には、十分な凝固組織の微細化効果が得られるものの、表面張力低減によるぬれ性向上効果を発揮できないためである。一方、2.0重量%超過では、優れたぬれ性を発揮するものの、冷却条件によって、粗大なSn−Ta金属間化合物を形成し、はんだ強度を低下させることがある。本発明による無鉛はんだにおけるTa含有量は、0.05〜1.0重量%の範囲が好ましく、特に、0.1〜0.5重量%の範囲がぬれ性と機械的性質のバランスが最も良く、はんだ性能を最大限に発揮することができる。
【0041】
(イ)のSn-Ta系の本発明による無鉛はんだは、Snと、上記の所定量のTaと、必要に応じて添加される各種の添加元素(詳細後記)ならびに不可避不純物とからなる。Sn-Ta系の本発明による無鉛はんだは、少量のTaを含有することにより、純Snの融点の232℃を変えずに、この融点の領域において、優れたぬれ性と機械的性質を兼備することができる。
【0042】
Sn−9重量%Znの共晶組成が最も融点が低く(融点:198℃)、低融点無鉛はんだとして一般に使われているが、Znの含有量が多いため、粗大な共晶組織を形成し易く、十分なはんだ強度と信頼性が得られないという課題がある。本発明の(ロ)のSn-Zn-Ta系の無鉛はんだは、特に上記の課題を解決するため最も威力を発揮する。すなわち、Taを含有することによって、表面張力が低減し、Sn−Znの共晶組織が著しく微細化し、かつ、均一になるため、機械的性質が向上し、特に、脆性が著しく改善され、凝固時のクラックの発生が抑制される。このメカニズムは、9重量%Znを超えるSn−Zn過共晶組成および9重量%Zn未満の亜共晶組成においても顕著な効果を発揮し、特に、組成を制限するべきのものではない。
【0043】
(ハ)のSn-Bi-Ta系の本発明による無鉛はんだは、上記(ロ)のSn-Zn-Ta系の本発明の無鉛はんだと類似し、低融点無鉛はんだとして、Sn−57重量%Biの共晶組成(融点:139℃)が一般に用いられている。Biの一部がSn中に固溶するものの、大部分がBi単体として共晶組織を形成し、冷却条件によって、粗大化する。このような粗大な共晶組織の存在は、はんだ部の脆性破壊を引き起こす主因である。はんだ強度と信頼性を確保しなければならない場合では、Bi含有量を5重量%以下に抑える必要があり、特に、0.1重量%〜1.0重量%の範囲が好ましい。
【0044】
(ニ)Sn-Cu-Ta系または(ホ)Sn-Ag-Ta系(ヘ)Sn-Cu-Ag-Ta系の本発明による無鉛はんだにおいても、上記の本発明のSn-Zn-Ta系、Sn-Bi-Ta系無鉛はんだと共通なTa含有効果を呈する。一般にSn−0.5〜0.75重量%Cuの共晶組成付近、Sn−0.5〜0.75重量%Cu−3.0〜3.5重量%Agの3元の共晶組成付近が用いられているが、はんだ融点(液相線温度)を上げるため、Sn−0.7重量%Cuの共晶組成より遥かに多い7.5重量%Cuを超える過共晶組成、又は、Sn−0.7重量%Cuの共晶組成より遥かに少ない0.5重量%Cu未満の亜共晶組成も用いられる。このようにSn−Cu系無鉛はんだの全組成において、Taの含有効果が変わらず、Sn−Ag系、Sn−Cu−Ag系無鉛はんだも同様である。
【0045】
上記(イ)〜(ヘ)の本発明による無鉛はんだは、必要に応じて、各種の添加元素を用いることが出来ることは前記した通りである。そのような添加元素の好ましい具体例としては、Co、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(X)を例示することができる。このような添加元素(X)の使用によって、溶融無鉛はんだの表面張力を減少させ、ぬれ性を向上させる。例えば、特願2004−65858には、Co、Ni、Pdを添加することによって、表面張力が減少することが記載されている。
【0046】
本発明の無鉛はんだの添加元素のCo、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeの添加量はいずれも0.005重量%以上、0.5重量%以下が好ましい。上記の添加量が0.005重量%未満では十分な表面張力低減を確保できず、添加量が0.5重量%を超えると冷却条件によって粗大な金属間化合物を形成し易く、機械的性質が悪くなる場合がある。また、前記添加元素(X)を複数種含有する場合において、それらの合計量は1.0重量%を超えないこと、特に、0.7重量%を超えないことが好ましい。
【0047】
本発明による無鉛はんだが、(ニ)Sn-Cu-Ta系、(ホ)Sn-Ag-Ta系、または(ヘ)Sn-Cu-Ag-Ta系のものである場合には、必要に応じて、上記の添加元素(X)以外の他の添加元素を用いることができる。そのような他の添加元素の好ましい具体例としては、InおよびBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Y)を例示することができる。なお、この添加元素(Y)を用いた本発明による無鉛はんだには、添加元素(X)が存在していても、存在していなくてもよい。また、本発明による無鉛はんだには、本発明の効果が得られるならば上記添加元素(X)および添加元素(Y)以外の他の添加元素が存在していてもよい。
【0048】
In(インジウム)は、主として、無鉛はんだの融点を下げるために有効な成分であって、適用される電子部品の許容の温度範囲と材料コストのバランスを考慮して適宜に規定されるものである。一般に、耐酸化性の観点から10.0重量%以下にすること、特に5.0重量%以下を添加することが好ましい。
【0049】
Bi(ビスマス)は、主として、無鉛はんだの融点を下げるために有効な成分であって、特に、組成を制限するべきのものではないが、前記したように、はんだ強度と信頼性を確保しなければならない場合では、Bi含有量を5重量%以下に抑える必要があり、特に、0.1重量%〜1.0重量%の範囲が好ましい。また、Inと複数種含有する場合において、特に、Biの含有量は、0.1重量%〜1.0重量%の範囲が好ましい。
【0050】
上記の本発明による無鉛はんだ(イ)〜(へ)、ならびに必要に応じて添加元素(X)および添加元素(Y)を含有する本発明による無鉛はんだは、例えば押出し、圧延、線引きなどの塑性加工が極めて容易にかつ良好に行えるものであって、更にはんだとして用いられた場合において、はんだとして求められる諸特性、例えば、接合強度、機械的特性、ぬれ性等が特に優れたものである。
【0051】
従って、本発明によれば、優れた接合強度および信頼性を有するはんだ接合物、好ましくは、各種の電子素子、例えばLED発光素子、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)、実装基板等、が接合された電子部品を得ることができる。
【0052】
本発明による無鉛はんだは、特に限定されることなく任意の方法によって製造することができる。例えば、目的とする組成の無鉛はんだが得られるように、必須成分であるSnおよびTaと、Zn、Bi、Cu、Agと、任意成分である添加元素(X)または添加元素(Y)と、場合によりその他の成分とを、各成分の融点以上の温度にて溶融混練した後、冷却することによって製造することができる。特に、目的とする無鉛はんだを構成する所要量以下のSnと、上記の必須成分および(または)任意成分の一種または二種以上とを予め合金化しておき、その後、この合金化物(予備合金化物)と、目的とする無鉛はんだが得られるようにSn所要量の残量と、必須成分および(または)任意成分の残量とを合金化して、本発明による無鉛はんだを調製することが好ましい。このようにすることによって、Snと上記各金属成分とが均一かつ緊密に分散したはんだを得ることが容易になる。無鉛はんだの酸化による特性劣化を防止するために、無鉛はんだおよびその構成成分は、不活性雰囲気中、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等のガス雰囲気中で、取り扱うことが好ましい。
【0053】
なお、本発明による無鉛はんだは、その組成や具体的な製造条件、その他の条件等に応じ、室温において固体状であるものとペースト状であるものとがある。
【0054】
上記のように製造された本発明による無鉛はんだは、例えば押出し、圧延、線引きなどの塑性加工が極めて容易にかつ良好に行えるものであって、更にはんだとして用いられる場合において、はんだとして求められる諸特性、例えば、接合強度、機械的特性、ぬれ性等が優れたものである。
【0055】
本発明による無鉛はんだのぬれ性は、JIS Z3198−3において規定されるぬれ広がり率(%)が、(イ)Sn-Ta系では75〜80%、(ロ)Sn-Zn-Ta系では60〜70%、(ハ)Sn-Bi‐Ta系では80〜90%、(ニ)Sn-Cu-Ta系では70〜85%、(ホ)Sn-Ta-Ag系では75〜85%、(ヘ)Sn-Cu-Ag-Ta系では75〜85%、のものである。Taを含まない以外は同様である上記各系のはんだに比べて、それぞれ15%以上ぬれ性(広がり率)の向上が観察される。
【0056】
また、無鉛はんだのぬれ性は、基板上に所定厚さのはんだ層を設置し、これを空気雰囲気中で当該はんだの融点以上の温度に加熱して、その溶融はんだから形成されたはんだ膜の状態を目視により観察することによって、評価することもできる。
【0057】
図1は、本発明によるはんだとしてSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.05Taからなる縦25mm×横25mm×厚さ150μmのリボンはんだを用い、フラックスを塗布した無酸素Cu板(1)上に設置し、温度250℃にて加熱処理し、溶融後凝固したリボンはんだ(2)の状態を示す図である。図2は、上記の本発明のはんだの代わりにSn−3Ag−0.5Cuを用いた以外は上記と同様に行った場合を、図3は、上記の本発明のはんだの代わりに、Sn−3Ag−0.5Cu−4Inを用いた以外は上記と同様に行った場合を、それぞれ示すものである。
【0058】
これらの図から明らかなように、本発明によるはんだ無鉛はんだは、ぬれ性が良好なものであって、基板上にほぼ均一な厚さのはんだ膜を形成することができる。これに対し、他のはんだは、ぬれ性が十分でないことから、溶融時にはんだの一部が基板からはじかれてしまい、均一なはんだ膜が形成されずに、はんだ非着部3が生じたり、はんだ膜の過度の盛り上がり部4が生じる。かつ、はんだ膜の輪郭が不鮮明である。このようにぬれ性が不良であるはんだでは、十分なはんだ接合強度を得ることができず、また意図しない領域にはんだが漏出してしまう危険性が高くなる。よって、このようなはんだは、特に高精度のはんだ接合品質が要求される利用分野、例えば高精密な電子素子の接合ないし配線用はんだ、としては適していない。
【0059】
また、はんだのぬれ性は、はんだの溶融状態における表面張力を滴下法にて測定することによって評価することも可能である。滴下法とは、液体を円形の管口から滴下させる場合において、しずく状のはんだの重量がその表面張力に打ち勝って落下する性質を利用した表面張力の測定法である。
【0060】
図4は、本発明によるはんだとしてSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.05Taからなる溶融状態のはんだを、直径0.7mmの円形の管口から徐々に流出させ、滴下直前の滴状のはんだの形状を示すものである。図5は、上記のはんだの代わりにSn−3Ag−0.5Cuを用いた場合の形状を、図6は、Sn−3Ag−0.5Cu−4Inを用いた場合の形状を、それぞれ示すものである。各図において、滴状のはんだが落下した直前の水平方向の最大直径deと滴状はんだの先端からの距離deの位置における水平方向の直径dsとの関係から下記のように溶融はんだの表面張力γを算出した。
γ = g・ρ・(de)2 / H
(ここで、γは表面張力を、gは重力定数を、deは最大直径を、Hは補正項(H=ds/de)を、示す)
【0061】
上記の式から導き出されるように、dsが大きいときほど表面張力が低くなる。表面張力が低いはんだ程、ぬれ性が良好なはんだと捉えることができる。
【0062】
図4に示される本発明のSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.1Taはんだの表面張力は、0.40〜0.42N/m、
図5に示される従来はんだのSn−3Ag−0.5Cuの表面張力は、0.38〜0.40N/m、
図6に示される従来はんだのSn−3Ag−0.5Cu−の表面張力は、0.43〜0.46N/mである。
【0063】
上記の結果から、従来のはんだSn−3Ag−0.5Cuに4Inを含有すると表面張力が上昇し、0.1Taを含有すると表面張力が減少し、ぬれ性が良好であることが判る。
【0064】
そして、本発明による無鉛はんだは、優れた耐酸化性を有するものであることから、酸化に基づく各種の特性劣化が高度に抑制されたものであり、かつはんだ酸化物から主として構成される所謂ドロスの発生が極めて少ないないものである。例えば、本発明による無鉛はんだによれば、Taを含まない無鉛はんだに比べて、ドロスの発生量が約1/5程度以下に抑制される。
【0065】
<無鉛はんだ成形体の製造方法>
本発明による無鉛はんだは、成形体とすることができる。そのような無鉛はんだ成形体は製造方法は、前記の本発明による無鉛はんだを、溶解、鋳造してインゴットを形成させるインゴット鋳造工程と、このインゴットを塑性加工して成形体を得る塑性加工工程とを具備すること、を特徴とする。
【0066】
一般に、従来の無鉛はんだは、塑性加工が難しかったり、組成可能できたとしてもはんだとして十分な機械的特性やぬれ性等を得ることが困難であったが、本発明による無鉛はんだは、塑性加工が極めて容易にかつ良好に行えるとともに、そのような塑性加工を経た後においても、はんだとして好ましい良好な機械的特性、ぬれ性、はんだ接合強度等を有するものである。
【0067】
本発明による無鉛はんだ成形体の製造方法によれば、はんだとして好ましい特性を有する、所望の形態および大きさのはんだ成形体を容易に得ることができる。本発明によれば、従来の一般的な無鉛はんだを用いた場合には得ることが難しかった形状、例えば、リボン状、糸状またはロッド状の形状を有する無鉛はんだ成形体を得ることができる。
【0068】
本発明によるリボン状の無鉛はんだ成形体の好ましい具体例には、厚さが50〜500μm、特に100〜150μm、のものが包含される。本発明による糸状の無鉛はんだ成形体の好ましい具体例には、糸径が0.1mm〜1mm、特に0.2mm〜0.5mmのものが包含される。本発明によるロッド状の無鉛はんだ成形体の形状、寸法は特に制限するべきものではないが、鋳造されるロッド状の無鉛はんだ成形体の化学成分の偏析を極力に低減させるため、冷却速度が1℃/秒以上が好ましい。また、鋳造されたインゴットを押出し、圧延などの塑性加工の工程を経て、均一な組織を有するロッド状の無鉛はんだ成形体、若しくは、溶融した無鉛はんだの溶湯を直接圧延し、ロッド状の無鉛はんだ成形体を成形するものが包含される。
【0069】
このような本発明による無鉛はんだ成形体は、特に各種の電子素子、例えばLED発光素子、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)および実装基板などがはんだ接合用のはんだ成形体として特に適したものである。
【0070】
そして、本発明による無鉛はんだおよび無鉛はんだ成形体は、従来のPb含有のSnはんだと同程度の融点を有するものであって、かつ従来と同等またはそれ以上の優れたはんだ接合強度および信頼性が得られるものである。
【0071】
<無鉛めっき材料>
本発明による無鉛めっき材料は、Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなるものである。ここで、無鉛めっき材料とは、一般にPb(鉛)含有量1000ppm以下とされている。
【0072】
このようなTaを所定量含む本発明による無鉛めっき材料は、必要に応じて、Inを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有することができる。そして、さらに必要に応じて、Ag、CuおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Z)をさらに含有することができる。
【0073】
このTaは、主として、めっき材料の耐酸化性向上のために重要な成分であり、そしてウイスカの発生および成長を抑制するために重要な成分である。Taが0.005重量%未満である場合には、ウイスカの発生および成長を抑制効果が十分でなく、比較的早期にウイスカが観察されるようになり、そしてウイスカの成長速度およびウイスカの長さが過大となってしまうので、本発明の目的を達成することができない。一方、Taの量が2.0重量%超過しても、ウイスカ抑制効果は実施的に向上することはなく、かえって融点の上昇を招くので低温度での処理に適さなくなる。特に好ましいTa含有量は、0.1重量%以上、1.0重量%以下である。
【0074】
Inは、主として、無鉛めっき材料の融点を下げるために有効な成分であって、適用される基材や、処理および(または)使用環境の温度範囲と材料コストのバランス等を考慮して適宜定めることができる。Inを用いる場合、その量は0.1重量%以上が好ましいが、耐酸化性の観点から10.0重量%以下、特に5.0重量%以下を添加することが好ましい。
【0075】
Agは、主として、機械的強度を向上させるために有効な成分である。Agを用いる場合、その量は、好ましくは0.5重量%以上、6.0重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以上、4.0重量%以下、である。
【0076】
Cuは、主として、融点を低下させるために有効な成分である。Agを用いる場合、その量は、好ましくは0.5重量%以上、6.0重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以上、4.0重量%以下、である。
【0077】
Znは、主として、融点を低下させるために有効な成分である。その量は、好ましくは7重量%以上、9重量%以下、特に好ましくは8重量%以上、9重量%以下、である。
【0078】
上記の所定量のTaを含むSn基合金からなる本発明による無鉛めっき材料、およびIn、Ag、Cu、Zn等の添加元素を上記範囲で更に含む本発明による無鉛めっき材料は、特に耐酸化性が良好なめっき層を形成することができるものである。例えば、60℃−93%RHの恒温恒湿環境下に環境下に1000時間曝したときのめっき層表面の酸化量(CPS)が70以下、特に好ましくは50以下、であるめっき層を形成することができる。
【0079】
そして、長期間放置されたとしても、ウイスカの発生頻度が少なく、かつウイスカが発生したとしてもその成長速度が極めて遅い、無鉛めっき層を形成できるものである。例えば、60℃−93%RHの恒温恒湿環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの中央値(メジアン)が20μm以上、50μm以下、特に好ましくは20μm以上、30μm以下、であるめっき層を形成することができるものである。そして、例えば60℃−93%RHの恒温恒湿環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの平均値が15μm以上、20μm以下、特に好ましくは5μm以上、10μm以下、であるめっき層を形成することができるものである。
【0080】
ここで、酸化量(CPS)は表面状態や分析条件に基づくものであって、具体的には、電子線マイクロアナライザーの分析によって求められたものである。そして、ウイスカの長さの中央値(メジアン)とは、ウイスカの長さを、電子顕微鏡にて測定し、その測定値を大きさの順に並べたとき、その中央に当たる値を意味する。
【0081】
本発明による無鉛めっき材料は、上記の通りに、ウイスカの発生頻度が少なく、かつウイスカが発生したとしてもその成長速度が極めて遅いという点において、従来の無鉛めっき材料と区別できるものであるが、本発明による無鉛めっき材料は、さらに、ウイスカの長さのバラツキが少なくて、ウイスカの長さの最大値と最小値との差が少ないという点においても、従来の無鉛めっき材料と明確に区別できるものである。例えば、60℃−93%RHの恒温恒湿環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの最小値と最大値の差が、5μm以上、40μm以下、特に好ましくは5μm以上、30μm以下、であり、ウイスカの長さの分布を箱ひげ図(Box Plot)により示したとき、第1四分位にあたるウイスカの長さと第3四分位にあたるウイスカの長さの差が 20μm以上、30μm以下、特に好ましくは10μm以上、20μm以下、であるめっき層を形成できるものである。
【0082】
本発明による無鉛めっき材料は、例えば電気めっき、化学めっき、溶融めっき等の方法によってめっき層を形成することができる。この中では、電子部品の製造に特に適しておりかつ従来から広く行われきた化学めっき法が特に好ましい。
【0083】
そして、本発明によるめっき材料が適用されるめっき処理対象、即ち、本発明による無鉛めっき材料によってめっき層を形成させる対象は、上記のめっき方法、好ましくは化学めっき法、が採用可能なものならば任意である。好ましいものとしては、Cu、Fe、Fe−Niの金属基材を挙げることができる。
【0084】
そして、上記の金属基材には、必要に応じ、本発明による無鉛めっき材料によって無鉛めっき層を形成させる前に、必要に応じて、下地めっき層を形成しておくことができる。そのような下地めっき層として好ましいものは、本発明による無鉛めっき材料からなるめっき層との付着強度が高く、そして電気的特性ないし機械的特性が近似したもの、例えばSn基合金からなる金属表面を有する基材、特に好ましくは、Sn基合金からなる無鉛めっき材料によって形成されためっき層が下地層として形成された基材、を挙げることができる。
【0085】
通常、表層めっき層には、高度の耐酸化性が必要であるのに対し、下地めっき層にはそれと同等以上の耐酸化性までは通常必要でない。このことから、本発明による無鉛めっき材料によって表層めっき層を形成する際には、下地めっき層は従来の一般的なSn基合金からなる無鉛めっき材料を用いて形成することができる。なお、下地めっき層は、本発明によるSn基合金からなる無鉛めっき材料を用いて形成することもできる。
【0086】
めっき処理対象上に直接的にあるいは下地めっき層を上に形成された、本発明による無鉛めっき材料によるめっき層は、必要に応じて、リフロー処理に付すことができる。このリフロー処理によって、ウイスカの発生および成長をさらに抑制することができる。特に好ましいリフロー処理としては、下記を挙げることができる。
【0087】
リフロー炉中の温度は220℃〜240℃であり、時間は5分以上を目安とする。
下地めっき層としてSn基合金からなる無鉛めっき層が形成されている場合には、このリフロー処理によって、下地層と本発明による無鉛めっき材料によって表面層との両層の少なくとも一部分が溶融して、両層の密着性が向上することがある。リフロー処理を加圧下に行う場合、両層の密着性向上がさらに促進することができる。
【実施例】
【0088】
<実施例1>
Sn-9.0重量%Zn-0.1重量%Taからなる無鉛はんだを溶融し、直径100mm、長さ300mmのビレットを鋳造した。次に、ビレットを押出して、厚さ10mm、幅70mmの棒材を作製した。次に、棒材を圧延して、厚さ100μm、幅70mmのリボンを作成した。
【0089】
次に、図7に示すように、厚さ3mm、幅50mm、長さ60mmの銅板100の表面にフラックスを塗布した後、厚さ100μm、幅40mm、長さ50mmのリボンはんだ102を設置した。次に、Cuメタライジングされた厚さ0.5mm、幅30mm、長さ40mmのSiN基板102をリボンはんだ101の上部に設置し、窒素ガス雰囲気中において、230℃の温度で45秒間加熱して、リフローした。得られた接合体を−25℃〜125℃の熱サイクルを行なった。2000サイクルの熱サイクル試験後、接合体を超音波探傷試験で観測した結果、クラックや剥離の発生が認められなかった。
【0090】
<実施例2>
Sn-0.5重量%Cu-2.5重量%Ag-4.0重量%In-0.1%重量Ta-0.1重量%Coからなる無鉛はんだを溶融し、直径100mm、長さ300mmのビレットを鋳造した。次に、ビレットを押出して、厚さ10mm、幅70mmの棒材を作製した。次に、棒材を圧延して、厚さ100μm、幅70mmのリボンを作成した。
次に、図7に示すように、厚さ3mm、幅50mm、長さ60mmの銅板100の表面にフラックスを塗布した後、厚さ100μm、幅40mm、長さ50mmのリボンはんだ102を設置した。次に、Cuメタライジングされた厚さ0.5mm、幅30mm、長さ40mmのSiN基板102をリボンはんだ101の上部に設置し、窒素ガス雰囲気中において、250℃の温度で45秒間加熱して、リフローした。得られた接合体を−25℃〜125℃の熱サイクルを行なった。4000サイクルの熱サイクル試験後、接合体を超音波探傷試験で観測した結果、クラックや剥離の発生が認められなかった。
【0091】
<比較例1>
Sn-9.0重量%Znからなる無鉛はんだを溶融し、直径100mm、長さ300mmのビレットを鋳造した。次に、ビレットを厚さ10mm、幅70mmの形材に押出しを行った。しかし、形材のエッジ部に押出し方向と垂直な方向に多数クラックが発生した。押出し材を圧延し、厚さ100μm、幅40mm、長さ50mmのリボンはんだを切断し、供試材とした。
【0092】
次に、実施例1と同様に、厚さ3mm、幅50mm、長さ60mmの銅板100の表面にフラックスを塗布した後、厚さ100μm、幅40mm、長さ50mmのリボンはんだ102を設置した。次に、Cuメタライジングされた厚さ0.5mm、幅30mm、長さ40mmのSiN基板102をリボンはんだ101の上部に設置し、窒素ガス雰囲気中において、230℃の温度で45秒間加熱して、リフローした。得られた接合体を−25℃〜125℃の熱サイクルを行なった。750サイクルの熱サイクル試験後、接合体を超音波探傷試験で観測した結果、接合体の4つ角から多数クラックの発生が観察された。
【0093】
<実施例3および比較例2>
Taを0.1重量%含有するSn基合金からなる本発明の無鉛めっき材料(実施例3)と、Taを実質的に含まないSn基合金からなる無鉛めっき材料(比較例2)とを用意した。
【0094】
上記の2種類の無鉛めっき材料(実施例3および比較例2)を、それぞれ42アロイ合金からなる基材表面に施して、その基材表面にめっき層を形成した。
【0095】
これらを60℃−93%の恒温恒湿漕内に放置し、1000時間経過後の表面状態を観察し、表面に発生したウイスカの長さおよび太さを測定した。そして、各めっき層の表面の酸化量を電子線マイクロアナライザーによって測定した。
【0096】
図8および図9は、ウイスカの長さ、太さ、およびそれらの分布状態を示す箱ひげ図(Box Plot)であり、図10は、めっき層の表面の酸化量を示す箱ひげ図(Box Plot)である。
【表1】
【0097】
図8から明らかなように、本発明の無鉛めっき材料(実施例3)によれば、比較例3に比べてウイスカの長さが短くなっている。ウイスカの形状も、図9に示されるように、実施例3の方が比較例3よりも太いことから明らかなに異なっている、一般に、長さが長いウイスカは細く、長さが短いウイスカは太い傾向にあるが、この傾向も本発明で同様であることが確認された。そして、図10に示されるように、本発明の無鉛めっき材料(実施例3)によって形成されためっき層は、比較例3のめっき層に比べて、酸化量が少ないものとなっている。
【0098】
図8〜図10から明らかなように、本発明の無鉛めっき材料(実施例3)では、比較例3に比べて、めっき層の耐酸化性が向上し、ウイスカの発生および成長が抑制されている。
【0099】
<実施例4〜7>
Ta含有量を、0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%含有するSn基合金からなる本発明の無鉛めっき材料(実施例4〜7)を用意した。
【0100】
上記の4種類の無鉛めっき材料(実施例4〜7)を、それぞれ42アロイ合金からなる基材表面に施して、その基材表面にめっき層を形成した。
【0101】
これらを60℃−93%の恒温恒湿漕内に放置し、1000時間経過後の表面状態を観察し、表面のウイスカの長さを測定した。図11は、ウイスカの長さの分布状態を示す箱ひげ図(Box Plot)である。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.05Ta系はんだの溶融物によって、基板上に形成された薄膜の状態を示す写真。
【図2】Sn−3Ag−0.5Cu系はんだによって、基板上に形成された薄膜の状態を示す写真。
【図3】Sn−3Ag−0.5Cu−4In系はんだによって、基板上に形成された薄膜の状態を示す写真。
【図4】本発明のSn−3Ag−0.5Cu−4In−0.05Ta系はんだの表面張力を滴下法によって評価する際に形成された滴の形状を示す図面。
【図5】Sn−3Ag−0.5Cu系はんだの表面張力を滴下法によって評価する際に形成された滴の形状を示す図。
【図6】Sn−3Ag−0.5Cu−4In系はんだの表面張力を滴下法によって評価する際に形成された滴の形状を示す図。
【図7】実施例1および2において行われた「熱サイクル試験」の概要を示す図。
【図8】実施例3と比較例4において形成されたウイスカの長さを示す図
【図9】実施例3と比較例4において形成されたウイスカの太さを示す図
【図10】実施例3と比較例4において形成されためっき層の酸化量を示す図
【図11】実施例4〜7において形成されたウイスカの長さを示す図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなることを特徴とする、電子部品用無鉛金属材料。
【請求項2】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなることを特徴とする、無鉛はんだ。
【請求項3】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびZnを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項4】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびBiを0.1重量%以上、60.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物とからなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項5】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびInを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項6】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびCuを0.01重量%以上、7.5重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項7】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびAgを0.01重量%以上、5.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項8】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下、Agを0.01重量%以上、5.0重量%以下およびCuを0.01重量%以上、7.5重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項9】
InおよびBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Y)をさらに含有するSn基合金からなる、請求項2〜8のいずれか1項に記載の無鉛はんだ。
【請求項10】
前記のInおよびBiからなる群から選ばれる添加元素(Y)の含有量が、Inについては10重量%を越えず、Biについては60重量%を越えないSn基合金からなる、請求項9に記載の無鉛はんだ。
【請求項11】
Co、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(X)をさらに含有するSn基合金からなる、請求項2〜10のいずれか1項に記載の無鉛はんだ。
【請求項12】
前記のCo、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる添加元素(X)の含有量が各々0.5重量%を超えず、かつ、前記の添加元素(X)を複数種含有する場合にはそれらの合計の含有量が1.0重量%を超えないSn基合金からなる、請求項11に記載の無鉛はんだ。
【請求項13】
クリーム状、リボン状、糸状またはロッド状の形状を有する、請求項2〜12のいずれか1項に記載の無鉛はんだ。
【請求項14】
前記の請求項2〜13のいずれか1項に記載の無鉛はんだによって接合されたことを特徴とする、はんだ接合体。
【請求項15】
前記の請求項2〜13のいずれか1項に記載の無鉛はんだによって接合されたことを特徴とする、電子部品。
【請求項16】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなることを特徴とする、無鉛めっき材料。
【請求項17】
Taを0.1重量%以上、1.0重量%以下含有するSn基合金からなる、請求項16に記載の無鉛めっき材料。
【請求項18】
Taを0.1重量%以上、1.0重量%以下およびInを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項17に記載の無鉛めっき材料。
【請求項19】
Ag、CuおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Z)をさらに含有するSn基合金からなる、請求項16〜18のいずれか1項に記載の無鉛めっき材料。
【請求項20】
60℃−93%RHの環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの中央値(メジアン)が20μm以上、30μm以下であるめっき層を形成する、請求項16〜19のいずれか1項に記載の無鉛めっき材料。
【請求項21】
60℃−93%RHの環境下に1000時間曝したときのめっき層表面の酸化量(CPS)が70以下であるめっき層を形成する、請求項16〜20のいずれか1項に記載の無鉛めっき材料。
【請求項1】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなることを特徴とする、電子部品用無鉛金属材料。
【請求項2】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなることを特徴とする、無鉛はんだ。
【請求項3】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびZnを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項4】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびBiを0.1重量%以上、60.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物とからなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項5】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびInを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項6】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびCuを0.01重量%以上、7.5重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項7】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下およびAgを0.01重量%以上、5.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項8】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下、Agを0.01重量%以上、5.0重量%以下およびCuを0.01重量%以上、7.5重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項2に記載の無鉛はんだ。
【請求項9】
InおよびBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Y)をさらに含有するSn基合金からなる、請求項2〜8のいずれか1項に記載の無鉛はんだ。
【請求項10】
前記のInおよびBiからなる群から選ばれる添加元素(Y)の含有量が、Inについては10重量%を越えず、Biについては60重量%を越えないSn基合金からなる、請求項9に記載の無鉛はんだ。
【請求項11】
Co、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(X)をさらに含有するSn基合金からなる、請求項2〜10のいずれか1項に記載の無鉛はんだ。
【請求項12】
前記のCo、Ti、Ni、Pd、SbおよびGeからなる群から選ばれる添加元素(X)の含有量が各々0.5重量%を超えず、かつ、前記の添加元素(X)を複数種含有する場合にはそれらの合計の含有量が1.0重量%を超えないSn基合金からなる、請求項11に記載の無鉛はんだ。
【請求項13】
クリーム状、リボン状、糸状またはロッド状の形状を有する、請求項2〜12のいずれか1項に記載の無鉛はんだ。
【請求項14】
前記の請求項2〜13のいずれか1項に記載の無鉛はんだによって接合されたことを特徴とする、はんだ接合体。
【請求項15】
前記の請求項2〜13のいずれか1項に記載の無鉛はんだによって接合されたことを特徴とする、電子部品。
【請求項16】
Taを0.005重量%以上、2.0重量%以下含有するSn基合金からなることを特徴とする、無鉛めっき材料。
【請求項17】
Taを0.1重量%以上、1.0重量%以下含有するSn基合金からなる、請求項16に記載の無鉛めっき材料。
【請求項18】
Taを0.1重量%以上、1.0重量%以下およびInを0.1重量%以上、10.0重量%以下含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなるSn基合金からなる、請求項17に記載の無鉛めっき材料。
【請求項19】
Ag、CuおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素(Z)をさらに含有するSn基合金からなる、請求項16〜18のいずれか1項に記載の無鉛めっき材料。
【請求項20】
60℃−93%RHの環境下に1000時間曝したときにめっき層表面に発生するウイスカの長さの中央値(メジアン)が20μm以上、30μm以下であるめっき層を形成する、請求項16〜19のいずれか1項に記載の無鉛めっき材料。
【請求項21】
60℃−93%RHの環境下に1000時間曝したときのめっき層表面の酸化量(CPS)が70以下であるめっき層を形成する、請求項16〜20のいずれか1項に記載の無鉛めっき材料。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2007−196289(P2007−196289A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329712(P2006−329712)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]