説明

電子部品移載装置

【課題】真空ポンプが故障した場合でも長時間装置を停止させることなく電子部品の吸着動作を再開できるようにする。
【解決手段】複数の吸着ノズルを有する第1〜第4のヘッドユニット19a〜19dを備える。第1〜第4の吸引用空気通路34〜37から第1、第2の真空ポンプ38,39によって空気を吸引する空気吸引装置2を備える。第1、第2の真空ポンプ38,39と第1〜第4の吸引用空気通路34〜37との間に第1〜第4の切換弁40〜43を設ける。第1〜第4の切換弁40〜43を、第1、第2の真空ポンプ38,39のうちいずれか一つを選択して第1〜第4の吸引用空気通路34〜37に接続するものとし、第1〜第4の吸引用空気通路34〜37毎に設けた。各切換弁を遠隔操作するアクチュエータと、重量が相対的に重い電子部品を実装するヘッドユニットに少なくとも1台の真空ポンプが接続され、他のヘッドユニットには他の真空ポンプが接続されるようにアクチュエータを制御する制御装置45を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ノズルの負圧源として真空ポンプを備えた電子部品移載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品をプリント配線板に実装する表面実装機や、電子部品を検査用ソケットに装填するICハンドラーなどの電子部品移載装置は、電子部品を吸着ノズルによって吸着して移動させる構成が採られている。
前記吸着ノズルには、たとえば特許文献1に記載されているような空気吸引装置が接続されている。
【0003】
この特許文献1に開示されている空気吸引装置は、表面実装機に用いられるもので、負圧源として真空ポンプを備えている。この特許文献1に示されている表面実装機は、実装効率を向上させるために、2台のヘッドユニットによって1枚のプリント配線板に電子部品を実装する構成が採られている。
【0004】
一般的に、複数のヘッドユニットを備えた表面実装機においては、各ヘッドユニットに複数の吸着ヘッドが設けられている。これらの吸着ヘッドの下端部には吸着ノズルが設けられている。これら複数の吸着ノズルは、それぞれ真空ポンプに接続されており、真空ポンプが回転することによって空気を吸引する。一般に、複数のヘッドユニットを有する表面実装機においては、複数のヘッドユニットで1台の真空ポンプから真空吸引を行っている。従来のこの種の表面実装機の真空ポンプは、ベーン式のものが多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3846258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のヘッドユニットで1つの真空ポンプを共有する表面実装機は、真空ポンプが故障すると、真空吸引回路が連通している全ての吸着ノズルにおいて電子部品を吸着することができなくなる。このため、この表面実装機は、真空ポンプが故障すると、真空ポンプの修理が終わるまでの間は電子部品の実装を行うことはできなかった。特に、ベーン式の真空ポンプを使用している場合、ベーンの摩耗は必然的に起きるため、摩耗したベーンを交換するときにも真空ポンプを停止させなければならないから、実装効率がさらに低下することになる。
【0007】
また、真空吸引回路が連通している複数のヘッドユニットの全ての吸着ノズルから一つの真空ポンプによって空気を吸引する表面実装機では、空気を吸引するために、個々の吸着ノズルにおいて真空圧を高くするにも限界があった。このため、重量が嵩む電子部品は、吸着できないか、吸着できたとしても一ヘッドユニット当たりの吸着可能な数に制約があった。
なお、真空ポンプを負圧源とする空気吸引装置を備えたICハンドラーにおいても、上述した表面実装機と同様の問題があった。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、真空ポンプが故障した場合でも長時間装置を停止させることなく電子部品の吸着動作を再開できる電子部品移載装置を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、重量が嵩む電子部品を大量にかつ確実に吸着できる電子部品移載装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る電子部品移載装置は、複数の電子部品用吸着ノズルを有する複数のヘッドユニットと、これらのヘッドユニットをそれぞれ電子部品供給部と電子部品載置部との間で移動させる移動装置と、各ヘッドユニットの全ての吸着ノズルが接続されたヘッドユニット毎の吸引用空気通路から真空ポンプによって空気を吸引する空気吸引装置とを備えた電子部品移載装置において、前記空気吸引装置は、複数の真空ポンプと、これらの真空ポンプと前記吸引用空気通路との間に設けられた切換弁とを備え、前記切換弁は、前記複数の真空ポンプのうちいずれか一つを選択して前記吸引用空気通路に接続するものであり、吸引用空気通路毎に設けられ、前記各切換弁を遠隔操作により動作させるアクチュエータと、重量が相対的に重い電子部品を実装するヘッドユニットの吸引用空気通路に少なくとも1台の真空ポンプが接続され、かつ他のヘッドユニットの吸引用空気通路には他の真空ポンプが接続されるように前記アクチュエータを動作させる制御装置とを備えていることを特徴とするものである。なお、この発明は、3ポートの切換弁で例示されているが、4ポート以上の切換弁でも実現可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、ヘッドユニット毎の吸引用空気通路には、切換弁を介して複数の真空ポンプが接続されている。このため、吸引用空気通路には、切換弁を切換えることにより、故障した真空ポンプや、メンテナンスを必要とする真空ポンプの代わりに他の正常な真空ポンプを接続することができる。
したがって、本発明によれば、真空ポンプが故障したり真空ポンプのメンテナンスを行う場合であっても、長時間にわたって装置を停止させることなく電子部品の吸着動作を再開することが可能な電子部品移載装置を提供することができる。
【0011】
真空ポンプが故障した場合や、真空ポンプのメンテナンス時には、他の真空ポンプを使用して電子部品を吸着することができるから、故障した真空ポンプの修理、真空ポンプのメンテナンスを電子部品の移載動作と並行して行うことができる。
また、本発明においては、切換弁を切換えることにより1台の真空ポンプに接続される吸引用空気通路の数を減らしているため、この真空ポンプに接続された吸着ノズルに作用する真空圧を上昇させることができる。
【0012】
このため、例えば1台の真空ポンプに一つの吸引用空気通路を接続することによって、この吸引用空気通路に接続された全ての吸着ノズルにおいて相対的に重量が嵩む電子部品を吸着できるようになる。
したがって、本発明によれば、重量が嵩む電子部品を大量にかつ確実に吸着できる電子部品移載装置を提供することができる。
【0013】
また、重量が嵩む電子部品を実装するヘッドユニットの吸引用空気通路に少なくとも1台の真空ポンプが接続されるようにアクチュエータの動作を制御する制御装置を備えているから、重量が嵩む電子部品を吸着する吸着ノズルに作用する真空圧を自動的に上昇させることができる。
したがって、この発明によれば、重量が嵩む電子部品を吸着するときに自動的に真空圧が上昇するから、重量が嵩む電子部品を確実に吸着することが可能な電子部品移載装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る表面実装機の構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る表面実装機の構成を示す断面図である。
【図3】ヘッドユニット毎の吸引用空気通路の構成を示す空気圧回路図である。
【図4】ヘッドユニット毎の吸引用空気通路の構成を示す空気圧回路図である。
【図5】ヘッドユニット毎の吸引用空気通路の構成を示す空気圧回路図である。
【図6】ヘッドユニット毎の吸引用空気通路の構成を示す空気圧回路図である。
【図7】制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】真空ポンプが故障したときの動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】空気吸引装置の構成を示す空気圧回路図である。
【図10】空気吸引装置の構成を示す空気圧回路図である。
【図11】空気吸引装置の構成を示す空気圧回路図である。
【図12】空気吸引装置の構成を示す空気圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施例)
以下、本発明に係る電子部品移載装置の一実施例を図1〜図8によって詳細に説明する。ここでは、本発明に係る電子部品移載装置を表面実装機に適用する場合の例について説明する。
【0016】
図1は本発明に係る表面実装機の構成を示す平面図、図2は同じく断面図で、同図は図1におけるII−II線断面図である。図3はヘッドユニット毎の吸引用空気通路の構成を示す空気圧回路図、図4〜図6は空気吸引装置の構成を示す空気圧回路図で、図4は通常時の状態を示し、図5は第1の真空ポンプが故障したときの状態を示し、図6は重量が嵩む電子部品を吸着するときの状態を示す。図7は制御装置の構成を示すブロック図、図8は真空ポンプが故障したときの動作を説明するためのフローチャートである。
【0017】
図1において、符号1で示すものは、この実施例による表面実装機である。この表面実装機1は、後述する空気吸引装置2(図3〜図6参照)およびこの装置に関連する装置を除いて本願出願人が出願した特願2006-180210号に記載されている表面実装機と同等の構成が採られている。
【0018】
この表面実装機1は、図1に示すように、前工程を実施する装置(図示せず)に隣接する上流側端部Aから下流側端部Bに向けてプリント配線板3を送り、後述する第1〜第4の実装ユニット4〜7によってプリント配線板3に電子部品(図示せず)をそれぞれ実装するものである。以下においては、プリント配線板3の搬送方向と平行な方向(図1において左右方向)を単にX方向といい、搬送方向とは直交する方向(図1においては上下方向)を単にY方向という。また、この実施例においては、図1において下側を装置前側といい、図1において上側を装置後側という。
【0019】
この実施例による表面実装機1は、図1に示すように、基台11と、4台の実装ユニット4〜7と、上流側端部Aに隣接する前工程を実施する装置(図示せず)からプリント配線板3を受け取って最上流に位置する第1の実装ユニット4に送るための搬入装置12と、最下流に位置する第4の実装ユニット7からプリント配線板3を受け取って図示していない次工程を実施する装置に搬出するための搬出装置13と、これらの装置間でプリント配線板3をX方向に移動させるための基板搬送装置14とを備えている。前記基板搬送装置14は、Y方向に延びるように形成されており、図2に示すように、基台11のY方向の中央部の上方に設けられている。
【0020】
前記第1〜第4の実装ユニット4〜7は、基台11上において搭載される位置や部材の配置方向などが異なる他は互いに同じ構造となるように形成されている。
第1の実装ユニット4と第3の実装ユニット6とは、図1に示すように、装置前側で互いに隣接するように位置付けられ、第2の実装ユニット5と第4の実装ユニット7とは、装置後側で互いに隣接するように位置付けられている。
第2、第4の実装ユニット5,7は、第1、第3の実装ユニット4,6に対してプリント配線板3の搬送方向の下流側にずれた位置に配設されている。
【0021】
第1〜第4の実装ユニット4〜7は、図1および図2に示すように、プリント配線板3を支持するための支持装置15と、この支持装置15の一側方に隣接するように位置付けられた多数のテープフィーダー16,16‥‥からなる電子部品供給装置17と、複数の電子部品用吸着ノズル18(図2参照)を有するヘッドユニット19と、このヘッドユニット19を電子部品供給装置17とプリント配線板3との間で移動させる電子部品移動装置20とから構成されている。
【0022】
この実施例においては、第1〜第4の実装ユニット4〜7にそれぞれ設けられている電子部品供給装置17によって、本発明でいう電子部品供給部が構成されている。
また、この実施例においては、第1〜第4の実装ユニット4〜7にそれぞれ設けられているヘッドユニット19によって、本発明でいう複数のヘッドユニットが構成されている。すなわち、この実施例による表面実装機には、4台のヘッドユニット19が装備されている。以下においては、第1の実装ユニット4に設けられているヘッドユニットを第1のヘッドユニット19aといい、以下同様に、第2の実装ユニット5のヘッドユニットを第2のヘッドユニット19bといい、第3の実装ユニット6のヘッドユニットを第3のヘッドユニット19cといい、第4の実装ユニット7のヘッドユニットを第4のヘッドユニット19dという。
【0023】
さらに、この実施例においては、第1〜第4の実装ユニット4〜7にそれぞれ設けられている電子部品移動装置20によって、本発明でいう移動装置が構成されている。また、本発明でいう載置部は、この実施例ではプリント配線板3によって構成されている。
前記電子部品供給装置17は、基台11上または基台11に着脱可能に接続された台車(図示せず)に設けられている。
【0024】
前記支持装置15は、図2に示すように、前記基台11にY方向に移動自在に支持されたテーブル21と、このテーブル21をY方向に移動させるためのボールねじ式のY方向駆動装置22と、前記テーブル21の上に設けられたコンベア23と、電子部品の実装中にプリント配線板3をテーブル21に対して固定するためのクランプ機構24とから構成されている。
【0025】
前記テーブル21は、Y方向駆動装置22による駆動によって、基台11のY方向の中央に位置する搬送位置と、電子部品供給装置17に近接する実装位置との間で移動する。前記コンベア23は、無端ベルトが自由に回転できる構造のものが用いられている。
【0026】
前記電子部品移動装置20は、図1および図2に示すように、基台11に立設されたYフレーム25の上に搭載されている。この電子部品移動装置20は、前記Yフレーム25にY方向に移動自在に支持されるとともに後述する第1〜第4のヘッドユニット19a〜19dをX方向に移動自在に支持する支持部材26と、この支持部材26を駆動するボールねじ式のY方向駆動装置27と、第1〜第4のヘッドユニット19a〜19dをX方向に移動させるボールねじ式のX方向駆動装置28などによって構成されている。
【0027】
前記Yフレーム25には、図2に示すように、上述した基板搬送装置14が設けられている。この基板搬送装置14は、下方に突出させた爪部材14aをプリント配線板3の搬送方向の上流側端部に当接させ、この爪部材14aをX方向に移動させることによってプリント配線板3を搬送する構成が採られている。
【0028】
前記第1〜第4のヘッドユニット19a〜19dは、吸着ノズル18が下端部に設けられた8本の吸着ヘッド31と、吸着ノズル18を上下方向の軸線回りに回転させる回転装置32(図7参照)と、吸着ノズル18を昇降させる昇降装置33(図7参照)などを備えている。なお、図1においては、8本の吸着ヘッド31のうち3本の吸着ヘッド31のみが描いてある。
前記吸着ノズル18は、各吸着ヘッド31の図示していないヘッドシャフトに着脱可能に取付けられており、図3に示すように、本発明に係る空気吸引装置2に接続されている。
【0029】
空気吸引装置2は、図4〜図6に示すように、ヘッドユニット毎の吸引用空気通路(第1〜第4の吸引用空気通路34〜37)から第1の真空ポンプ38と第2の真空ポンプ39とのうちいずれか一方の真空ポンプによって空気を吸引する構成が採られている。詳述すると、この実施例による空気吸引装置2は、図3〜図6に示すように、前記第1、第2の真空ポンプ38,39と、これらの真空ポンプと第1〜第4の吸引用空気通路34〜37との間に設けられたヘッドユニット毎の切換弁(第1〜第4の切換弁40〜43)と、ヘッドユニット毎の真空切換バルブユニット44(図3参照)とを備えている。
【0030】
図4〜図6においては、第1のヘッドユニット19aをヘッドユニット1として描いてあり、同様に、第2のヘッドユニット19bをヘッドユニット2、第3のヘッドユニット19cをヘッドユニット3、第4のヘッドユニット19dをヘッドユニット4として描いてある。また、図4〜図6においては、第1の真空ポンプ38を真空ポンプ1として描いてあり、第2の真空ポンプ39を真空ポンプ2として描いてある。
【0031】
第1、第2の真空ポンプ38,39は、ベーン式のものが用いられており、図4〜図6に示すように、後述する4個の切換弁40〜43にそれぞれ接続されている。なお、真空ポンプの形式はベーン式に限定されることはなく、他のどのような形式でもよい。
この実施例による第1、第2の真空ポンプ38,39は、基台11の内部であってX方向の一端部(図1においては左側の端部)に取付けられている。
【0032】
これらの真空ポンプ38,39を取付ける位置は、上述した位置に限定されることはなく、適宜変更することができる。これらの真空ポンプ38,39を基台11におけるX方向の一側と他側とに配設することにより、空気配管の長さをX方向の一側と他側とで略等しく形成することができるから、表面実装機1の重量バランスを向上させることができる。これらの真空ポンプ38,39を駆動するモータ38a,39aは、図7に示すように、制御装置45に接続されている。第1、第2の真空ポンプ38,39の動作は、制御装置45の真空ポンプ制御部46によって制御される。
【0033】
制御装置45は、表面実装機1の動作を制御するためのもので、前記真空ポンプ制御部46の他に、電子部品供給装置17の動作を制御するための部品供給制御部47と、基板搬送装置14や支持装置15の動作を制御するための基板搬送制御部48と、電子部品移動装置20の動作を制御するための移動装置制御部49と、第1〜第4のヘッドユニット19a〜19dに設けられている回転装置32や昇降装置33の動作を制御するための吸着ヘッド制御部50などを備えている。
【0034】
この実施例による空気吸引装置2は、第1、第2の真空ポンプ38,39が正常に機能しているか否かを判別するために第1、第2の真空圧計51,52(図7参照)を備えている。第1の真空圧計51は、第1の真空ポンプ38に接続されている空気通路53における第1の真空ポンプ38の上流側近傍に接続されている。第2の真空圧計52は、第2の真空ポンプ39に接続されている空気通路54における第2の真空ポンプ39の上流側近傍に接続されている。これらの第1、第2の真空圧計51,52は、前記空気通路53,54内の圧力を検出し、圧力データとして制御装置45に送る。
【0035】
制御装置45は、第1、第2の真空ポンプ38,39が運転状態であるにもかかわらず真空圧が所定の判定圧力に達していない場合、表面実装機1の動作を停止させるとともに、真空ポンプの修理(点検)を促すために、ディスプレイ装置55(図7参照)に真空ポンプが異常であることを示す文字、図柄等を表示させる。なお、真空ポンプの異常の有無は、真空圧に基づいて判別する他に、第1、第2の真空ポンプ38,39のモータ38a,39aを流れる電流の値に基づいても判別することができる。
【0036】
前記第1〜第4の切換弁40〜43は、図4〜図6に示すように、ヘッドユニット毎(第1〜第4の吸引用空気通路34〜37毎)に設けられており、第1、第2の真空ポンプ38,39のうちいずれか一つを選択して前記第1〜第4の吸引用空気通路34〜37に接続することができるように構成されている。図4〜図6においては、第1の切換弁40をバルブ1として描いてあり、同様に、第2の切換弁41をバルブ2、第3の切換弁42をバルブ3、第4の切換弁43をバルブ4として描いてある。
【0037】
この実施例による第1〜第4の切換弁40〜43は、弁体(図示せず)の位置が二つある3ポート切換弁が使用されている。すなわち、第1〜第4の吸引用空気通路34〜37は、第1〜第4の切換弁40〜43の弁体の位置が一方に位置しているときに第1の真空ポンプ38に接続され、前記弁体の位置が他方に位置しているときに第2の真空ポンプ39に接続される。
【0038】
これらの第1〜第4の切換弁40〜43は、図4〜図6に示すように手動式のものを用いる他に、これらの第1〜第4の切換弁40〜43を遠隔操作により動作させるアクチュエータ(図示せず)を備えたものを用いることができる。アクチュエータを備えた切換弁としては、例えば、3ポート電磁切換弁や、空気駆動式の切換弁(図示せず)などが挙げられる。アクチュエータを有する切換弁を用いる場合は、図7中に二点鎖線で示すように、制御装置45に切換弁制御部57を設けることにより、この切換弁制御部57によって第1〜第4の切換弁40〜43の動作を制御することができる。
【0039】
前記真空切換バルブユニット44は、内部に図示していない各種の弁類を備えており、各ヘッドシャフト毎に正圧/負圧の切換を選択的に行うことができるように構成されている。正圧は、正圧源58から供給され、負圧は第1〜第4の吸引用空気通路34〜37から導かれる。すなわち、吸着ノズル18に正圧と負圧とを自在に供給することができる。電子部品を吸着するときは、該当ヘッドシャフトに負圧を供給する。電子部品を実装する(搭載する)ときは、負圧が導かれている状態で正圧を僅かの時間だけ供給することにより真空破壊を行い、電子部品をプリント配線板3上に搭載する。
【0040】
真空切換バルブユニット44と吸着ノズル18との間には、図3に示すように、流量センサ59が設けられている。
この流量センサ59は、各吸着ノズル18の下流側近傍において空気の流量を検出し、制御装置45に流量データとして送る。制御装置45は、吸着ノズル18内を空気が流れることがない状態であるときに流量センサ64によって空気の流通を検出した場合、真空切換バルブユニット44に異常が生じるていると判定する。
【0041】
制御装置45は、このような異常時には、表面実装機1を停止させるとともに、ディスプレイ装置55に真空切換バルブユニット44が異常であることを示す文字、図柄等を表示させる。なお、真空切換バルブユニット44の異常を検出するに当たっては、上述したように流量センサ59を用いる他に、真空圧計を用いることができる。
【0042】
このように構成された表面実装機1は、通常は、図4に示すように、第1、第2の真空ポンプ38,39のうち一方の真空ポンプに、第1〜第4の吸引用空気通路34〜37のうち二つの吸引用空気通路を接続して運転する。図4に示す例では、第1の真空ポンプ38に第1、第2の吸引用通路34,35が接続され、第2の真空ポンプ39に第3、第4の吸引用通路36,37が接続されている。なお、図4〜図6においては、空気が流れる通路を太線で描いてある。
【0043】
第1、第2の真空ポンプ38,39は、使用している間に何らかの原因により故障することがある。また、第1、第2の真空ポンプは、ベーン(図示せず)が摩耗することによって真空圧が低くなるために、摩耗したベーンを交換する必要がある。例えば、第1の真空ポンプ38が故障したり、第1の真空ポンプ38をメンテナンス(ベーン交換)のために停止させるような場合は、図5に示すように、第1、第2の吸引用空気通路34,35に接続されている第1、第2の切換弁40,41をこれらの吸引用空気通路34,35が第2の真空ポンプ39に接続されるように切換える。すなわち、このときは、第2の真空ポンプ39に第1〜第4の吸引用空気通路34〜37が接続される。
【0044】
ここで、真空ポンプが故障した場合の表面実装機1の動作を図8に示すフローチャートによって説明する。
真空ポンプが故障しているか否か、または真空ポンプのベーンを交換する時期であるか否かの判定は、第1、第2の真空圧計51,52によって検出された真空圧に基づいて制御装置45が行う。真空ポンプに故障が発生した場合(ステップS1)は、制御装置45がディスプレイ装置に真空ポンプの異常を示す情報を表示させる。この表示は、異常が発生している真空ポンプを特定できる内容になっている。なお、ベーンの摩耗により真空圧が低下した場合にも同様の表示が行われる。
【0045】
このディスプレイ装置55を見た操作者は、正常な真空ポンプに第1〜第4の吸引用空気通路34〜37が接続されるように第1〜第4の切換弁40〜43を切換える(ステップS2)。第1〜第4の切換弁40〜43として遠隔操作が可能なアクチュエータを備えたものを使用している場合は、このステップS2において、制御装置45が上述したように第1〜第4の切換弁40〜43を切換える。
【0046】
第1〜第4の切換弁40〜43を切換えた後、ステップS3において、故障した真空ポンプを修理、メンテナンスなどを行う。
このように1台の真空ポンプ(第1の真空ポンプ38)のみが全ての吸着ノズル18に接続されるようになると、各吸着ノズル18に作用する真空圧が低下する。このため、重量が相対的に重い電子部品は、他の表面実装機によって実装する。これを実施するためには、先ず、ステップS4に示すように、重量が嵩む電子部品を吸着するために装着されていた吸着ノズル18を軽量部品用の吸着ノズル18に交換する。
【0047】
次に、ステップS5に示すように、重量が嵩む電子部品を供給するためのテープフィーダー16を他の表面実装機に移動させる。このようにテープフィーダー16を他の表面実装機に移動させる場合、移動元となる表面実装機1と、移動先となる表面実装機との両方において、部品搭載データを変更し、電子部品の実装順序(搭載順序)を最適化する(ステップS6)。
【0048】
実装準備が整った後、ステップS7に示すように、表面実装機1において重量が相対的に軽い電子部品のみを実装する暫定的な生産を開始する。この暫定的な生産は、故障した真空ポンプの修理または真空ポンプのメンテナンスが終了するまで行う(ステップS8)。その後、ステップS9において、2台の真空ポンプを使用することができるように第1〜第4の切換弁40〜43を切換える。
【0049】
第1〜第4の切換弁40〜43として遠隔操作が可能なアクチュエータを備えたものを使用している場合は、このときにも制御装置45が上述したように第1〜第4の切換弁40〜43を切換える。このように第1〜第4の切換弁40〜43を切換えた後、上述したステップS4において装着した軽量部品用の吸着ノズル18を、重量が嵩む電子部品を吸着できる吸着ノズル18と交換する(ステップS10)。
【0050】
そして、上述したステップS5において他の表面実装機に移動させたテープフィーダー16を元の表面実装機1に戻し、これら2台の表面実装機において、電子部品の実装順序等の部品搭載データを元に戻す(S11)。このように吸着ノズル18と各種のデータとを元の状態に復元させた後、生産(電子部品の実装)を開始する(ステップS12)。
【0051】
したがって、この実施例による表面実装機1においては、第1の真空ポンプ38または第2の真空ポンプ39が故障したり、これらの真空ポンプ38,39のメンテナンスを行う場合であっても、長時間にわたって装置を停止させることなく電子部品の実装動作を再開することができる。しかも、故障した真空ポンプを修理している間や、一方の真空ポンプのメンテナンスを行っている間は、他の真空ポンプを使用して電子部品を実装することができるから、故障した真空ポンプの修理、真空ポンプのメンテナンスを電子部品の実装動作と並行して行うことができる。
【0052】
また、第1〜第4の切換弁40〜43として遠隔操作が可能なアクチュエータを備えたものを使用し、このアクチュエータ(切換弁)の動作を制御装置45によって制御する構成を採る場合は、第1、第2の真空ポンプ38,39に異常が発生したときに第1〜第4の切換弁40〜43が自動的に切換えられ、正常な真空ポンプが第1〜第4の吸引用空気通路34〜37に接続される。
したがって、この構成を採ることにより、第1、第2の真空ポンプ38,39に異常が発生したとしても吸着動作を停止させることなく、電子部品の実装動作を継続することができる。
【0053】
この実施例による表面実装機1は、従来では専用の表面実装機でしか実装することができなかったような、重量が著しく重い電子部品(以下、単に大重量の電子部品という)を大量にかつ確実に実装することができる。大重量の電子部品を実装する場合は、図6に示すように、1台の真空ポンプに接続される吸引用空気通路(吸着ノズル18)の数を減少させる。例えば、第1の実装ユニット4によって大重量の電子部品を実装する場合、第1の吸引用空気通路34がたとえば第1の真空ポンプ38に接続されるように第1の切換弁40を切換える。
【0054】
これとともに、第2〜第4の吸引用空気通路35〜37が第2の真空ポンプ39に接続されるように第2〜第4の切換弁41〜43を切換える。通常状態で第1〜第4の切換弁40〜43が図4に示すように切換えられていた場合は、第2の吸引用空気通路35が第2の真空ポンプ39に接続されるように第2の切換弁41を切換える。なお、第1〜第4の切換弁40〜43として遠隔操作が可能なアクチュエータを備えたものを使用している場合は、このときに制御装置45が第2の切換弁41を切換える。
【0055】
このように1台の真空ポンプ(第1の真空ポンプ38)のみが一つの第1の吸引用空気通路34に接続されるようになると、第1のヘッドユニット19aに設けられている複数の吸着ノズル18に作用する真空圧が相対的に高くなり、これらの吸着ノズル18の吸引力が増大する。このため、これらの吸着ノズル18によって、大重量の電子部品を大量にかつ吸着ミスを起こすことなく確実に吸着することができる。
【0056】
また、第1〜第4の切換弁40〜43として遠隔操作が可能なアクチュエータを備えたものを使用し、このアクチュエータ(切換弁)の動作を制御装置45によって制御する構成を採る場合は、大重量の電子部品を吸着する吸着ノズル18に作用する真空圧を自動的に上昇させることができる。
したがって、この構成を採ることにより、重量が嵩む電子部品を吸着するときに自動的に真空圧が上昇するから、大重量の電子部品を確実に吸着することが可能な表面実装機を提供することができる。
【0057】
(第2の実施例)
空気吸引装置は図9〜図12に示すように構成することができる。
図9〜図12は空気吸引装置の構成を示す空気圧回路図で、図9は通常時の状態を示し、図10は第1の真空ポンプが故障したときの状態を示し、図11は重量が嵩む電子部品を吸着するときの状態を示し、図12は真空切換バルブユニットにおいて吸引用空気通路での漏洩が生じたときの状態を示す。これらの図において、前記図1〜図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0058】
この第2の実施例において用いる第1〜第4の切換弁40〜43は、全てのポートが閉じる閉位置40a〜43aを有する3位置切換弁である。この第1〜第4の切換弁40〜43は、図9〜図12に示すように手動式のものを用いる他に、第1〜第4の切換弁40〜43を遠隔操作により動作させるアクチュエータ(図示せず)を備えたものを用いることができる。アクチュエータを備えた切換弁としては、例えば、3位置電磁切換弁や、空気駆動式の切換弁などが挙げられる。アクチュエータを有する切換弁を用いる場合は、第1の実施例で説明したように、制御装置45によって第1〜第4の切換弁40〜43の動作を制御することができる。
【0059】
このような第1〜第4の切換弁40〜43を備えた表面実装機1においては、通常時は、図9に示すように、1台の真空ポンプが二つの吸引用空気通路に接続されるように、第1〜第4の切換弁40〜43を切換える。
第1、第2の真空ポンプ38,39のうち一方の真空ポンプが故障したり、一方の真空ポンプをメンテナンスのために停止させる場合は、図10に示すように、運転を継続できる真空ポンプ(図10においては第2の真空ポンプ39)に第1〜第4の吸引用空気通路34〜37が接続されるように第1〜第4の切換弁40〜43を切換える。
【0060】
大重量の電子部品を実装する場合は、図11に示すように、1つの吸引用空気通路(図11においては第1の吸引用空気通路34)に一方の真空ポンプ(同図においては第1の真空ポンプ38)を接続し、他の全ての吸引用空気通路(同図においては第2〜第4の吸引用空気通路35〜37)に他方の真空ポンプ(同図においては第2の真空ポンプ39)を接続する。
【0061】
各ヘッドユニット19a〜19dに設けられている真空切換バルブユニット44において吸引用空気通路で漏洩が発生したときは、図12に示すように、漏洩部分が遮断されるように第1〜第4の切換弁40〜43を切換える。この漏洩は、真空切換バルブユニット44に設けられている各種の弁に何らかの不具合が生じてこれらの弁が完全に閉じることができないような場合に発生する。この実施例においては、この漏洩は、流量センサ59の検出値に基づいて制御装置45が検出する。
【0062】
このような吸引用空気通路での漏洩が発生すると、全ての吸引用空気通路34〜37において真空圧が低下し、吸着ノズル18の吸引力が低下するおそれがある。このため、この場合は、漏洩が発生しているヘッドユニットの吸引用空気通路を他の吸引用空気通路から遮断する。例えば、第1の実装ユニット4に設けられている第1のヘッドユニット19aにおいて漏洩が発生した場合、図11に示すように、第1の切換弁40の弁の位置を閉位置40aに切換える。
このため、第1のヘッドユニット19aの真空切換バルブユニット44で漏洩が発生したとしても、第2〜第4のヘッドユニット19b〜19dによって電子部品の実装動作を継続することができる。
【0063】
第2の実施例においても、第1〜第4の切換弁40〜43として遠隔操作が可能なアクチュエータを備えたものを使用し、この切換弁の動作を制御装置45によって制御する構成を採る場合は、上述した切換弁の切換操作を自動的に行うことができる。このため、この構成を採ることにより、第1、第2の真空ポンプが故障や他の理由で停止する場合や、大重量の電子部品を実装するような場合、真空切換バルブユニット44において漏洩が発生した場合に、表面実装機1を停止させることなく実装動作を継続することができる。
【0064】
上述した第1、第2の実施例においては、ヘッドユニット19を4台備えた表面実装機1に本発明を適用する例を示したが、本発明はこのような限定にとらわれることはなく、ヘッドユニットの数が2以上である表面実装機やICハンドラーに適用することができる。また、上述した第1、第2の実施例においては、2台の真空ポンプ38,39を使用する例を示したが、真空ポンプの数量は2以上であれば適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…表面実装機、2…空気吸引装置、3…プリント配線板、17…電子部品供給装置、20…電子部品移動装置、18…吸着ノズル、19a〜19d…第1〜第4のヘッドユニット、34〜37…第1〜第4の吸引用空気通路、38…第1の真空ポンプ、39…第2の真空ポンプ、40〜43…第1〜第4の切換弁、44…真空切換バルブユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品用吸着ノズルを有する複数のヘッドユニットと、
これらのヘッドユニットをそれぞれ電子部品供給部と電子部品載置部との間で移動させる移動装置と、
各ヘッドユニットの全ての吸着ノズルが接続されたヘッドユニット毎の吸引用空気通路から真空ポンプによって空気を吸引する空気吸引装置とを備えた電子部品移載装置において、
前記空気吸引装置は、複数の真空ポンプと、これらの真空ポンプと前記吸引用空気通路との間に設けられた切換弁とを備え、
前記切換弁は、前記複数の真空ポンプのうちいずれか一つを選択して前記吸引用空気通路に接続するものであり、吸引用空気通路毎に設けられ、
前記各切換弁を遠隔操作により動作させるアクチュエータと、
重量が相対的に重い電子部品を実装するヘッドユニットの吸引用空気通路に少なくとも1台の真空ポンプが接続され、かつ他のヘッドユニットの吸引用空気通路には他の真空ポンプが接続されるように前記アクチュエータを動作させる制御装置とを備えていることを特徴とする電子部品移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−156570(P2012−156570A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119278(P2012−119278)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【分割の表示】特願2008−24199(P2008−24199)の分割
【原出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】