説明

電子顕微鏡において温度制御デバイスを用いる方法

【課題】
【解決手段】電子顕微鏡において温度制御デバイスを用いる方法。デバイス構造の温度を制御して、以前は取得することができなかった反応及びプロセスに関する情報を抽出することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、一般に、電子顕微鏡のための標本の温度を制御するためのデバイスを用いる方法に関する。前記方法は、既存の技術を用いて捕捉することが難しい反応及びプロセスの理解を得ることに役立つ。
【背景技術】
【0002】
[0002] 透過電子顕微鏡検査(TEM:Transmission Electron Microscopy)技術は、高倍率、高分解能の撮像及び分析機能を提供することによって、近原子分解能で材料を分析することを可能とする。TEMにより、科学者は、材料の微細構造、結晶方位、及び元素組成等の物理的特性に関する情報を収集することができる。マイクロエレクトロニクス及びオプトエレクトロニクス、生物医学技術、航空宇宙、輸送システム、及び代替的なエネルギソース等の分野において用いるために先進の材料に対する要望が高まっているので、この情報はますます重要になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003] TEMは、透過電子顕微鏡の下で材料標本を調査することによって達成される。投下電子顕微鏡においては、一連の電磁気レンズによって、顕微鏡内に含まれる電子銃から発せられた加速電子ビームを標本の表面に向け合焦させる。標本を透過した電子が、標本の構造の画像を生成し、これがその特性に関する情報を提供する。更に、電子が標本と相互作用することの結果として標本の表面から発せられる透過電子及びx線の双方により、元素的及び化学的な情報が得られる。電子ビームは、標本だけでなく、標本自体を機械的に支持しなければならない標本支持部も透過する必要がある。
【0004】
[0004] 特に関心が高いのは、例えば観察領域において標本を温度変化に露呈させて、温度制御デバイス上で標本を撮像して、標本に物理的及び化学的な変化があった場合の標本に関する追加情報を取得する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005] 1つの態様において、温度検知要素を用いてデバイス上の少なくとも1つの熱ソース要素の温度を測定する方法を記載する。この方法は、
(a)デバイス上のメンブレンの近傍にワイヤ又は熱電対を位置付けることと、
(b)熱ソース要素に液体又は気体環境を導入してワイヤの導電性又はインピーダンスを測定することと、
を含み、ワイヤの導電性又はインピーダンスは環境の熱流又は加熱中に要素から伝導された熱の量の尺度であり、熱ソース要素の温度は熱流の測定値又は伝導熱から測定(calibrate)される。
【0006】
[0006] 別の態様において、温度制御デバイスを用いて標本上で電熱分析を実行する方法を記載する。この方法は、
(a)温度制御デバイス上に少なくとも1つの電気的検知要素及び/又は少なくとも1つの電気的ソース要素を位置付けることと、
(b)少なくとも1つの電気的特性を監視し標本を撮像しながら、同時に標本に熱刺激を与えることと、
を含む。
【0007】
[0007] 1つの態様において、電子顕微鏡においてビーム誘発加熱を判定する方法を記載する。この方法は、
(a)温度制御デバイス上に既知の遷移温度を有する標本を配置することと、
(b)電子ビームを用いて標本を撮像しながら同時に標本の温度を上昇させることと、
(c)相遷移の視覚化によって実験的遷移温度が得られたら温度上昇を終了させることと、
(d)電子ビームによって誘発されたエネルギの量を測定するために、既知の遷移温度を標本の実験的遷移温度と比較することと、
を含む。
【0008】
[0008] 別の態様において、電子顕微鏡においてビーム誘発加熱を判定する方法を記載する。この方法は、
(a)多数のヒータ温度制御デバイス上に既知の遷移温度を有する少なくとも2つの同一の標本を配置することと、
(b)電子ビームを用いて第1の標本を撮像しながら同時に少なくとも2つの同一の標本の温度を上昇させることと、
(c)第1の標本の相遷移の視覚化が生じたら少なくとも2つの同一の標本の温度上昇を終了させることと、
(d)第2の標本を撮像してビーム誘発加熱を定量化することと、
を含む。
【0009】
[0009] 更に別の態様において、電子顕微鏡を用いてサンプルの3次元再現を生成する方法を記載する。この方法は、
(a)大きいサンプルを少なくとも2つの標本に直列にスライスすることと、
(b)各標本を温度制御デバイス上に配置することと、
(c)電子ビームを用いて標本を撮像しながら同時に標本の温度を変更することと、
(d)各標本画像からデータを抽出することと、
(e)各標本画像からのデータを組み合わせてサンプルの3次元再現を生成することと、
を含む。
【0010】
[0010] 更に別の態様において、電子顕微鏡において撮像するために化学的反応又は物理的プロセスを時間スライスする方法を記載する。この方法は、
(a)温度制御デバイス上に標本を配置することと、
(b)標本の初期温度であるTから標本の加熱後の温度であるTにy時間にわたり標本の温度を上昇させることと、
(c)加熱を終了させてTから標本の冷却後の温度であるTに冷却させることであって、TはTと同一か又は異なるものとすることができる、ことと、
(d)Tにおいて標本の撮像及び/又は標本からのデータの抽出を行うことと、
(e)上記(b)から上記(d)をx回繰り返すことであって、T及びTはステップごとに同一か又は異なるものとすることができる、ことと、
を含む。
【0011】
[0011] 別の態様は、電子顕微鏡においてケンチングを観察する方法に関する。この方法は、
(a)温度制御デバイス上に標本を配置することと、
(b)標本を撮像しながら同時に標本の温度を上昇させることと、
(c)標本を急速に冷却させることと、
(d)冷却の後に標本を撮像することと、
を含む。
【0012】
[0012] 本発明の他の態様、特徴、及び利点については、この後の開示及び添付の特許請求の範囲から、より充分に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】[0013] 従来技術において記載したデバイスのメンブレン領域及びフレーム領域を平面図及び断面図で示す。
【図2】[0014] 従来技術において記載したデバイスの機械的指示要素を平面図及び断面図で示す。
【図3】[0015] 従来技術において記載した温度制御デバイスのヒートシンク及び熱ソース要素、過熱可能領域、観察エリア、及びパッド領域を平面図及び断面図で示す。
【図4】[0016] 従来技術において記載した温度制御デバイスの熱ソース要素を平面図及び断面図で示す。
【図5】[0017] 大きいサンプルの3D再現を達成するための前記サンプルの研究方法を示す。
【図6】[0018] 温度制御デバイスを用いて反応を「時間スライスする」方法を示す。
【図7】[0019] 温度制御デバイスを用いて寿命試験を行う方法を示す。
【図8】[0020] 等価回路が並列回路である多数の熱ソース要素を有するデバイスを示す。
【図9】[0021] デバイス上であるがメンブレンから離れて位置付けられた温度検知デバイスを示す。
【図10】[0022] 電熱機能を有するデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0023] 本発明は、概略的に、標本の温度を制御するためのデバイスを用いる方法に関する。デバイスは、概して、半導体材料を用いて構成され、少なくともメンブレン領域及びフレーム領域を含む。デバイスはホルダの標本先端領域に配置されている。
【0015】
[0024] 本明細書において定義されるように、「電子顕微鏡検査」及び「電子顕微鏡」は、走査型電子顕微鏡検査(SEM:scanning electron microscopy)、透過電子顕微鏡検査(TEM)、及び走査透過型電子顕微鏡(STEM:scanning transmission electron microscopy)のいずれかに相当する。
【0016】
[0025] 本明細書において定義されるように、システムの導電性コンポーネントに関して用いる際の「側面に位置する(franked)」とは、一般的に側面を接するコンポーネント(franking component)が側面に位置する構造のいずれかの側に配され、側面に位置するコンポーネントに電子的に結合されていることを意味する。あるコンポーネントが側面を接するコンポーネントの側面に位置すると言われることは、追加のコンポーネントが、側面に位置するコンポーネント及び側面を接するコンポーネントの間に存在する、及び/又はそれらと動作的に関連付けられるか係合される可能性を排除することは意図していない。更に、側面を接する要素は、側面に位置するコンポーネントに重複する場合があり、又は側面に位置するコンポーネントと一体になるように製造される場合がある。
【0017】
[0026] 本明細書において定義されるように、「半導体」とは、導体と絶縁体との間の中間の導電性である、シリコン等の材料を意味する。
【0018】
[0027] 本明細書において定義されるように、「デバイス」とは、気体を含有する及び/又は標本の周囲の温度を制御するために用いられる構造であり、限定ではないが、ウィンドウデバイス及び温度制御デバイスを含む。
【0019】
[0028] 本明細書において定義されるように、「標本」とは、電子顕微鏡において研究される物体を意味し、典型的に、少なくとも部分的に電子透過性である温度及び/又は気体制御の領域においてデバイス内又はデバイス上に配置される(例えばナノ粒子、触媒、薄い切片等)。
【0020】
[0029] 本明細書において定義されるように、「Eセル(E-cell)」とは、標本の周囲の環境を含みこれを制御するためのシステムを意味する(例えば、1つのデバイス、2つのデバイス、又は3つ以上のデバイスシステム)。
【0021】
[0030] 本明細書において定義されるように、「ホルダ」とは、1つ以上のデバイスを、個別に、集合として、又はEセルとして配置して保持し固定するため、更に、デバイス(複数のデバイス)及び/又はEセル及び外側世界の間の界面を提供するために用いられる1台の精密工作機器を意味する。
【0022】
[0031] 本明細書において定義されるように、「ウィンドウデバイス」とは、Eセル及び電子顕微鏡の真空環境の1つの境界上に物理的な電子透過性バリアを生成するために用いられるデバイスを意味し、一般に窒化シリコンベースの半導体微細加工部品であるが、他の半導体材料も考えられる。
【0023】
[0032] 本明細書において定義されるように、「温度制御デバイス」とは、個別に又はEセル内で標本の周囲の温度を制御するために用いられるデバイスを意味し、一般にシリコンカーバイドベースの半導体微細加工部品であるが、他の半導体材料も考えられる。
【0024】
[0033] 本明細書において定義されるように、「フレーム」とは、デバイス構造全体に機械的な支持を与えるために用いられるデバイスの外周の剛性領域を意味する。好適な実施形態は、KOHを用いて選択的にエッチングされたシリコンフレーム、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて選択的にエッチングされたシリコンフレーム、深堀り反応性イオンエッチング(RIE)を用いて選択的にエッチングされたシリコンフレーム、又はシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハから切り出されたシリコンフレームを含む。
【0025】
[0034] 本明細書において定義されるように、「メンブレン領域」とは、フレームによって支持されていない各デバイスの概ね中央の領域を意味する(例えばウィンドウデバイスにおいて、メンブレン領域は電子透過性の薄いアモルファス窒化シリコン膜とすることができる。温度制御デバイスにおいて、メンブレン領域は、電子透過性である場合もあるしそうでない場合もある薄いシリコンカーバイド膜とすることができるが、標本を配置し温度を制御することができる表面を提供する。温度制御デバイスにおいて、メンブレン領域は、シリコンカーバイド膜の上に配置された薄いアモルファスカーボン膜とすることができる。)。
【0026】
[0035] 本明細書において定義されるように、「要素」とは、デバイス上で、典型的にはメンブレンの上又は近傍で用いられて、デバイスに対して機能の向上又は追加を行うコンポーネントを意味する(例えば熱ソース要素、機械的要素、ヒートシンク要素、又はそれらの組み合わせ)。
【0027】
[0036] 本明細書において定義されるように、「機械的要素」とは、メンブレンに対して剛性を強化するか又は提供するために一般に用いられるコンポーネントを意味する(例えば補強メンブレンの実施形態)。
【0028】
[0037] 本明細書において定義されるように、「熱ソース要素」とは、電流を強制的に流す2つ以上の電極から構成され、ジュール加熱によって熱を生成するコンポーネントを意味する。温度制御デバイスにおいては、熱ソース要素を用いて直接加熱を実行することができる。メンブレンは熱ソース要素であり、標本を直接加熱する(二層スタック)。あるいは、温度制御デバイスにおいて、熱ソース要素を用いて間接加熱を実行することができる。熱流がメンブレンを介して標本まで熱を伝達する。多くの異なる空間設計が存在する。
【0029】
[0038] 本明細書において定義されるように、「ヒートシンク要素」とは、1つ以上の電極から構成されるコンポーネントを意味し、より高い熱流がメンブレンから離れる方向に発生するための経路(複数の経路)を提供することによってメンブレン領域から熱を受動的に除去するために用いられる。
【0030】
[0039] 本明細書において定義されるように、「温度検知要素」とは、デバイス上の温度を直接測定するために用いられるコンポーネントを意味し(例えばウィンドウデバイス及び/又は温度制御デバイス)、フレーム又はメンブレンコンポーネントのいずれかとすることができるが、典型的にはメンブレンである。
【0031】
[0040] 本明細書において定義されるように、「電気的検知要素」とは、デバイス上の電流又は電圧を直接測定するために用いられるコンポーネントを意味し(例えば温度制御デバイス)、フレーム又はメンブレンのいずれかとすることができるが、典型的にはメンブレンである。
【0032】
[0041] 本明細書において定義されるように、「機械的検知要素」とは、デバイス上のメンブレンのたわみ又は破裂を測定するために用いられるコンポーネントを意味する(例えばウィンドウデバイス及び/又は温度制御デバイス)。
【0033】
[0042] 本明細書において定義されるように、「電極」とは、デバイス上の熱流又は電気流を容易にするために用いられるコンポーネント又は要素を意味する。電極は、フレーム上まで及ぶメンブレン上の厚い領域に相当し、典型的には要素の一部である。
【0034】
[0043] 本明細書において定義されるように、「パッド」とは、ホルダとデバイスとの間の界面を提供するために用いられる電極上のエリアを意味する。
【0035】
[0044] 本明細書において定義されるように、「耐熱金属」とは、タングステン、ニオブ、タンタル、モリブデン、レニウム、オスミウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、テクネチウム、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、クロム、白金、パラジウム、及びそれらの合金に相当する。
【0036】
[0045] 本明細書に記載する方法は、電子顕微鏡における撮像の前及び/又は間に標本の温度を制御するために使用可能なデバイスの使用に関する。
【0037】
[0046] 温度制御デバイス
【0038】
[0047] 温度制御デバイスは、ユーザが電子顕微鏡内の標本の温度を正確に、安定的に、かつ迅速に操作することを可能とするいずれかのデバイスを含むことができる。例えば、温度制御デバイスは半導体材料を用いて構成することができ、少なくともフレーム及び1つのメンブレン領域を含む。また、これは、フレーム及び多数のメンブレン領域を含む場合もある。好適なデバイスは、1つのフレーム及び1つのメンブレン及び1つのフレーム及び2、3、又は4つのメンブレンである。好適な温度制御デバイスの一例は、2008年5月9日に出願された「Microscopy Support Structures」と題する国際特許出願PCT/US08/63200号、2007年5月9日に出願された「Microscopy Support Structures」と題する米国仮特許出願60/916,916号、及び2007年9月21日に出願された「Microscopy Support Structures」と題する米国仮特許出願60/974,384号に開示されたデバイスを含む。これらの出願は全て引用により全体が本願にも含まれるものとする。しかしながら、温度制御デバイスはこのようなものに限定されないことは認められよう。
【0039】
[0048] 上述の出願においてすでに記載されているように、メンブレン領域は、フレームによって支持されない各デバイスの概ね中央におけるデバイス構造の部分である。メンブレン領域は、1つ以上の薄膜で構成することができ、半導体材料並びにカーボン又はグラフェン等の他の堆積膜を含む。メンブレン領域は一般に厚さが1ミクロン未満であり、強固で、絶縁性又は導電性であるが、均一な厚さを有する必要はない。それらは標本における環境と電子顕微鏡内の環境との間の物理的なバリアを生成するように、又は標本を配置する支持部として、又はそれら双方を行うように機能することができる。1つ以上のメンブレン領域がデバイス上に位置する場合があり、それらは一般にそれらの間にある厚い境界領域によって分離されている。この境界領域は、メンブレン領域の上、下、及び/又は横にある。メンブレン領域は、連続的とすることができ、又はいずれかの形状又は大きさの孔を有することができる。図1に、メンブレン領域及びフレーム領域が特定されたデバイスを示す。
【0040】
[0049] メンブレン領域の一実施形態は、メンブレン材料としての薄いアモルファス窒化シリコン膜であり、メンブレン領域がほぼ電子透過性であるようになっている。メンブレン領域の別の実施形態は、メンブレン材料としての薄いシリコンカーバイド膜である。この実施形態においては、メンブレン領域は電子透過性である必要はないが、これを電子透過性とするか、又は部分的に電子透過性とすることができる。この実施形態では、メンブレン材料は、標本を配置し温度を制御することができる表面を提供する。メンブレン領域を生成するために使用可能である他のメンブレン材料は、窒化ホウ素、グラフェン、カーボン、窒化アルミニウム、二酸化シリコン、及びシリコンを含む。メンブレン領域は、上面又は底面に直接一体化されたか又は配置された追加の要素を含む場合もあるし含まない場合もある。
【0041】
[0050] メンブレン領域は、連続的なメンブレン材料膜で構成することができ、又は積層した膜もしくはメンブレン材料で構成することができ、これは一般に累積的な引張応力プロファイルを生じる。積層膜の場合、異なるメンブレン材料を相互に堆積することができ、又は、異なる材料特性(ドーピングレベル等)を有する同一のメンブレン材料を用いることも可能である。
【0042】
[0051] メンブレン領域は、上面から底面までメンブレン材料を貫通する1つ以上の孔を含むことができ、又は、上面もしくは底面に1つ以上のくぼみを含むことができる。孔は一般に円形であるが、正方形、ひし形、矩形、三角形、又は多角形とすることも可能である。孔は一般に、メンブレン領域において完全に電子透過性の複数の領域を生成するために用いられ、その上に標本を配置する。くぼみは一般に円形であるが、正方形、ひし形、矩形、三角形、又は多角形とすることも可能である。くぼみは一般に、メンブレン領域において、くぼみの無いメンブレン領域よりも比較的電子透過性の高い複数の領域を生成するために用いられる。
【0043】
[0052] 標本の温度を制御するために用いられるデバイス内のメンブレン領域は、メンブレン領域の概ね中央にあり標本の温度を主に制御する領域である加熱可能領域をメンブレン領域内に有する。この加熱可能領域は、熱ソース要素を用いて発生した熱によって画定される。各メンブレン領域上に2つ以上の加熱可能領域が存在する場合がある。メンブレン領域自体は、標本の支持部及び加熱可能領域(すなわち熱のソース)の双方として用いられる。この手法によって、標本と加熱可能領域との間の距離が最小限に抑えられ、熱ソースの極めて近傍(500nm未満)にサンプルを配することができる。
【0044】
[0053] メンブレン領域は追加の要素を含むことができる。それらは、メンブレン自体に機械的安定性を提供し、標本又はメンブレン領域に機械的なソース又は検知要素を提供し、標本又はメンブレン領域に電気的なソース又は検知要素を提供し、標本又はメンブレン領域に圧力検知要素を提供し、標本又はメンブレン領域に化学的検知要素を提供し、及び/又は電子顕微鏡を較正するための手段を提供する。
【0045】
[0054] 一般に、メンブレン領域自体に追加の物理的支持を与えるために機械的支持要素が用いられ、これはメンブレン領域に極めて薄い領域を生成することを可能とし、デバイス全体の性能を向上させる。機械的支持要素は、メンブレン領域内の1つの領域又は複数の領域であり、機械的な力に対して強固なメンブレン領域全体を形成する目的で局部的強度を与えるために用いられるが、電子ビーム拡散を最小限に抑えるサブ領域を含む。機械的支持要素は、標準的な材料堆積技法によってメンブレン領域の表面上にメンブレン領域の残り部分よりも厚い局部的エリアを形成することによって構築することができる。また、機械的支持要素は、標準的な材料エッチング技法によってメンブレン領域の表面上にメンブレン領域の残り部分よりも薄い局部的エリアを形成することによって構築することも可能である。図2に機械的支持要素を示す。
【0046】
[0055] 機械的支持要素は、メンブレン領域と同一のメンブレン材料、又はメンブレン領域とは異なる材料で構成することができる。機械的支持要素(複数の要素)の材料は、半導体、金属、及び/又は絶縁体を含み、窒化シリコン、シリコン、シリコンカーバイド、二酸化シリコン、銅、チタン、アルミニウム、金、白金、パラジウム、真鍮、タングステン、及び他の非磁性合金を含む。機械的要素によってメンブレンに加えられる追加の応力の結果として、やはり累積的な引張応力プロファイルが生じる。機械的要素は一般に5ミクロン未満の厚さである。
【0047】
[0056] 機械的支持部が存在するメンブレン領域上の領域は、支持領域と見なされる。支持領域及びメンブレン領域の合計の厚さが1ミクロン未満であり、充分に電子透過性である場合、これは機械的支持部及びメンブレン観察領域の双方と見なすことができる。機械的支持部は、メンブレン領域の上に又はメンブレン領域から離れてメンブレン材料にパターニングされた矩形又は正方形等の隔離されたフィーチャとすることができるか、メンブレン領域の上に又はメンブレン領域から離れてメンブレン材料にパターニングされたスクリーン又は格子等の連続フィーチャとすることができるか、メンブレン領域の上に又はメンブレン領域から離れてメンブレン材料の上に堆積及び/又は配置された材料にパターニングされた矩形又は正方形等の隔離されたフィーチャとすることができるか、あるいは、メンブレン領域の上に又はメンブレン領域から離れてメンブレン材料の上に堆積及び/又は配置された材料にパターニングされたスクリーン又は格子等の連続フィーチャとすることができる。
【0048】
[0057] 機械的支持領域の間の領域は観察領域と見なされ、これを介して標本を撮像する。これらの観察領域は一般にメンブレン領域の最も薄い領域であり、その全体の強度は機械的支持領域のために高くなり、概ね標本が配置される位置である。これらの観察領域は一般に正方形であるが、円形、矩形、六角形、三角形、又は多角形とすることも可能である。この観察領域は、典型的にメンブレン領域全体と同一の大きさ及び形状であるが、いくつかの例では、加熱可能領域としてのみ又はメンブレン領域のサブセットとして見なすことができる。図2に機械的支持観察エリアを示す。
【0049】
[0058] 標本の温度を制御するために用いるデバイスにおいては、メンブレン上の要素を用いて熱を発生させる。温度安定性を得て温度均一性を維持するため、特に、代替的な経路としての熱対流を妨げる電子顕微鏡の真空環境に標本を露呈させる場合、ヒートシンク要素を用いて、メンブレン領域から離れる方向に熱ソース要素からの追加の熱流経路を生成する。摂氏800度を超える温度が予想され、メンブレン領域及びデバイス上に存在するいずれかの要素の設計に基づいて熱的、機械的、又は電気的な不安定性が起こり得る場合、一般にメンブレン領域上にヒートシンク要素を配置する。ヒートシンク要素は、加熱可能領域において又はその近傍で用いて、加熱可能領域からの熱伝達を容易にする。これらのフィーチャは温度を安定化させるのに役立ち、加熱可能領域においていっそう高い温度を許容し、デバイスのいっそう急速な冷却を可能とする。1つの要素を、ヒートシンク要素として及び機械的支持部として機能する等、二重の目的のために用いることができる。図3にヒートシンク要素を示す。
【0050】
[0059] ヒートシンクは、メンブレンの表面上の要素として構築され、シリコンカーバイド、シリコン、又はタングステン、白金、金、チタン、パラジウム、又は銅等の非磁性金属、及び非磁性合金等、高い熱伝導性を有する材料又は複数の材料から成る。ヒートシンク要素は、メンブレン領域の表面上にパターニングされた同一の材料から成る厚い領域であるか、又は全体的に異なる材料である。好適な実施形態は、1)メンブレン領域上に直接パターニングされたシリコンカーバイドの厚い領域、及び2)メンブレン領域の上のタングステン等、金属の堆積及びパターニングを含む。
【0051】
[0060] ヒートシンク領域は、ヒートシンク要素を含むメンブレン領域上のエリアである。ヒートシンク要素は一般に矩形であるが、正方形、三角形、楕円、台形、及び多角形を含む他の形状も想定され、前記要素は対称形又は非対称形とすることができ、メンブレンの表面上に及びメンブレンから離れての双方の位置にあって、加熱可能領域からフレーム上への熱流経路を提供する。1つのデバイス上に1つ以上の熱流要素が存在することができ、一般にそれらは約2ミクロンから約500ミクロンまでの幅で、約50ミクロンから約1.5ミリメートルまでの長さでパターニングされている。ヒートシンク要素は一般にメンブレン上で側面を接する位置に対称的なパターンで配置されるが、非対称的な配置も想定される。ヒートシンク領域間の領域は観察エリアと見なされ、これを介して標本を撮像する。これらは一般にメンブレン領域の最も薄い領域である。
【0052】
[0061] デバイスが1つ以上の加熱可能領域を有する多数のメンブレン領域を含む場合、ヒートシンク構造を用いて熱の放散を制御することで、付近の(隣接した)メンブレン領域を熱的に分離することができる。ヒートシンク構造を用いて試験中のメンブレン領域上の標本から冷却フィンガに沿って特定方向に熱を向かわせて、熱分離を更に促進することができる。
【0053】
[0062] メンブレン領域からメンブレン領域の表面の上及び下のエリア内への熱対流は真空では実質的に存在しないことがわかっており、ヒートシンク構造を用いて特定の熱勾配を規定して、いっそうの温度安定性を達成すること及び/又は規定した熱勾配を標本(複数の標本)に与えることが可能となる。
【0054】
[0063] 熱ソース要素は、充分に高い導電性の電極で構成して、概ね200V未満の電圧でのジュール加熱のための電流を可能とする。熱ソース要素は、一般にフレーム材料の上に製造又は配置され、一般に、メンブレン材料(複数の材料)、メンブレン材料(複数の材料)及びメンブレン材料(複数の材料)の上に後に堆積、成長、又は配置される材料(複数の材料)の組み合わせ、又はメンブレン材料の上に堆積、成長、又は配置される材料(複数の材料)のいずれかから生成される。2つ以上の熱ソース要素の存在により、メンブレン領域上の少なくとも1つの加熱可能領域を画定する。熱ソース要素(複数の要素)はメンブレン領域上に延出することができる。直接加熱の場合、加熱可能領域及び観察領域は同一である。間接加熱の場合、観察領域(複数の領域)は加熱可能領域(複数の領域)とは別個の領域である。熱ソース要素はフレーム上の大きい面積を占める場合があり、電気的パッドを用いて熱ソース要素と電子顕微鏡ホルダとの間の電気的接触を容易にすることができる。メンブレン領域の近傍で熱ソース要素を細くすることで、電流経路を制限し、メンブレン領域を通してジュール加熱を容易にすることができる。直接加熱の好適な実施形態では、メンブレン領域をまたいで2つの熱ソース要素を側面が接する位置に配置し、それらの間に観察領域を画定する。また、観察領域は加熱領域であり、これは熱ソース要素間に位置する(熱ソース要素を含まない)メンブレン領域上のエリアである。図4に熱ソース要素を示す。少なくとも部分的に導電性であるメンブレン領域を用いることで、メンブレン内で、特に標本を支持している観察領域において、ジュール加熱を行うことができる。これによってメンブレン観察領域自体が加熱可能領域となり、これは、他の手法に対して本明細書に記載したデバイスを差別化する重要な特徴である。熱ソース要素を用いて材料に電流を強制的に流すことにより、(標本を支持する)メンブレンを直接加熱することによって、加熱可能領域と標本との間の距離が最小限に抑えられ、一般に約500nm未満の距離となる。これによって、ヒータの温度の認識とサンプルの温度との間のあいまいさがなくなる。間接加熱においては、熱ソース要素は熱ソース加熱可能領域であり、熱ソース観察領域は近傍に位置し、加熱可能領域において発生した熱によって加熱され熱伝導体によって熱ソース観察領域に伝達される。重要なことは、間接加熱においてメンブレンは絶縁体でなく熱伝導体であるということである。更に、ヒータは、ヒータとして半導体を用い、従来技術のデバイスにおいて見られたようにスパイラル金属ヒータを用いないことである。
【0055】
[0064] 熱ソース要素は一般にデバイスの表面上に堆積及びパターニングされ、フレーム及びメンブレンの双方の上に位置する。それらは導電性が高い材料を用いて製造される。熱ソース要素を製造するために好適な材料は、シリコンカーバイド及び耐熱金属である。
【0056】
[0065] 実際に1つ以上の熱ソース要素からメンブレン材料を介して1つ以上の他の熱ソース要素へと電流を強制的に流すと、メンブレン材料においてジュール加熱が発生する。熱ソース要素は、この熱ソース要素よりも導電性が低いメンブレン領域のエリアを選択的に露出させるように様々な方法で設計することができる。例えば、各熱ソース要素の大きさ及び形状、熱ソース要素(複数の要素)とメンブレン領域(複数の領域)との間の空間的関係、並びに熱ソース要素間の距離は全て、メンブレン領域上の熱の均一性及び隣接したメンブレン領域間の熱の局部化を制御するように設計することができる。熱ソース要素は、単純な多角形として、又は複雑な構造として設計して、多数のフィンガが1つ以上の他の熱ソース要素とかみ合わさるようにすることができる。好ましくは、加熱可能領域への電流の結果として、少なくとも約1000Kの上昇又は低下の均一な温度変化が少なくとも約100ミリ秒生じる。これは、更に好ましくは少なくとも約1000Kで約50ミリ秒であり、更に好ましくは少なくとも約1000Kで約25ミリ秒である。代替的な実施形態においては、加熱可能領域への電流の結果として、少なくとも約1500Kの上昇又は低下の均一な温度変化が少なくとも約100ミリ秒生じる。これは、更に好ましくは少なくとも約1500Kで約50ミリ秒であり、更に好ましくは少なくとも約1500Kで約25ミリ秒であり、最も好ましくは少なくとも約1500Kで少なくとも約15ミリ秒である。更に別の代替的な実施形態では、加熱可能領域への電流の結果として、少なくとも約2000Kの上昇又は低下の均一な温度変化が少なくとも約100ミリ秒生じる。これは、更に好ましくは少なくとも約2000Kで約50ミリ秒であり、更に好ましくは少なくとも約2000Kで約25ミリ秒であり、最も好ましくは少なくとも約2000Kで約15ミリ秒である。
【0057】
[0066] 単一又は多数のメンブレン上に多数の熱ソース要素を配置することができる。好ましくは、単一のメンブレン上に多数の熱ソース要素を配置して、単一のメンブレン上に多数の温度帯を生成することができる。このように、1つのデバイス上に配置された標本を、同一の真空又は気体環境であるが異なる温度で同時に観察することができる。これによって、おそらくは同一の材料で同時に調製された標本である、非常に近接したサンプル間の直接比較を行うことができる。それらは格子内の同一の小さいエリア上にあるからである。多数の熱ソース要素は、各要素ごとに別個の制御ワイヤ(複数のワイヤ)を用いるか、又は要素を直列回路又は並列回路に接続することで、独立して動作させることができる。例えば図8が示すデバイスは、多数の熱ソース要素を有し(すなわち加熱可能帯1及び2であり、これらは電子透過性ウィンドウである)、その等価回路は並列回路である。並列回路では、回路ネットワークに単一電流を強制的に流している間の抵抗又はインピーダンスの比が、各要素における温度差を規定する。これは、真空環境、液体又は気体の環境の双方において有用な技法である。
【0058】
[0067] デバイス上に温度検知要素を含むことができる。温度検知要素は、メンブレン領域の表面上、典型的には観察領域の上又は近傍に位置するパターニング材料であり、観察領域自体の温度を直接測定するために用いられる。標本は観察領域の上に直接配置されるので、この領域の温度測定は標本自体の温度の指示である。また、温度検知要素は、観察領域と異なる場合は、加熱可能領域等のデバイス上の他のエリアの温度を監視するためにも用いられる。温度検知要素は、非真空環境においてデバイスを用いて標本の温度を制御する場合には特に重要である。このことの例としてはEセル内の標本の加熱が含まれる。この場合、サンプルは特定の液体又は気体によって囲まれている。別の例として、専用の環境の電子顕微鏡(TEM又はSEM)内でデバイスを用いて標本の温度を制御することが含まれる。この場合、電子顕微鏡のチャンバ又は標本領域の真空環境(差動式にポンピングされる)の真空環境に特定の気体が充填される。別の例は、標本の気体又は液体環境を制御するエクスシチュー(ex-situ)リアクタを用いることによって電子顕微鏡の外部で標本の温度を制御することを含む。これらの用途における温度検知要素の重要性は、異なる気体、液体、及び圧力によって動作中にどのように熱ソース要素(従って標本)から熱を除去することができるかに基づいている。例えば、標本がジュール加熱を用いて真空環境において特定の温度に保持された場合、この標本の周囲に気体を導入すると熱ソース要素が冷却される。なぜなら、気体が伝導及び/又は対流によって要素から熱を除去し始め、この結果として新しい温度平衡が生じるからである。異なる気体、液体、及び圧力は全て熱ソース要素から異なるように熱を除去するので、これらの気体、液体、又は圧力が変動するならば、実験の過程で温度のあいまいさが生じる。デバイスに温度検知要素を追加することによって、気体又は液体の環境を変化させながら実際の温度低下を測定することができる。
【0059】
[0068] 温度検知要素の一実施形態は、観察領域において又はその近傍でメンブレンの表面全体に直接パターニングされたワイヤ又は熱電対である。かかる実施形態は、メンブレン領域自体よりも導電性が著しく高くなければならず、概ね100倍以上とする。かかる温度検知センサの一例は、白金抵抗熱電対である。別の実施形態は、温度と共に変動する動作中の抵抗又はインピーダンスを測定することによって、熱ソース要素を温度検知要素としても用いることである。温度検知要素の別の実施形態は、メンブレンの上に又はメンブレンから離れてデバイス上にパターニングされたか、あるいはデバイスから離れているがメンブレンに近接して位置するワイヤ又は熱電対である。例えば図9は、デバイス上であるがメンブレンから離れて位置する温度検知要素の一例を示す。ワイヤは、ジュール加熱によって特定の温度に予熱することができる(真空中の外部較正によってわかる)。デバイスの周囲に液体又は気体環境を導入すると、このワイヤの温度が低下し、これはワイヤの導電性又はインピーダンスを測定することによって直接検知することができる。温度検知要素におけるこの温度差は、環境の熱流、又は加熱中に要素から伝導された熱の量の尺度である。この測定を用いて、温度検知要素を用いて行った温度及び熱流測定値から熱ソースデバイスの実際の温度を測定することができる。この手法を用いる際、サンプルを加熱するために2つの動作方法が存在する。すなわち、1)熱ソースにおける一定電流、及び2)熱ソースにおける一定温度である。方法1においては、ジュール加熱によって真空中で標本を特定の温度に保持する。気体、液体、及び/又は圧力を導入すると、実際の温度は低下及び変動することが可能となるが、これは温度検知要素を監視することによってわかる。方法2においては、温度検知要素から取得した測定値を用いて標本を一定の温度に保持して、典型的に外部ハードウェア又はソフトウェアにおいて開ループ制御系により熱ソース要素における電流を調節する。本明細書に記載する他の温度検知要素は、これらの2つの方法を用いて動作させることができる。温度検知要素の別の実施形態は、特定した温度において既知の物理的、化学的、及び/又は電気的特性を有する材料から成る特徴であり、かかる特性は電子ビーム分析及びメンブレン領域上の加熱中にインシチュー(in-situ)で監視することができる。かかる温度検知要素の一例は、既知の温度において相変化を呈する合金から成る小さいパターニングエリアであり、温度検知要素の相変化は監視又は観察することができるので、温度検知要素の近傍におけるメンブレン領域上の温度がわかる。
【0060】
[0069] 温度を測定する別の方法は、サンプルの焦点の変化(Z方向のオフセット)を温度に相関させることである。メンブレンが加熱されると、メンブレン材料はわずかに膨張し、このため表面がわずかに曲がる。サンプルは一般にこの曲がりのピークの近くに位置し、サンプルが動く距離(Zオフセット)は、メンブレン材料の熱膨張係数のために実際の標本温度に直接関係する。
【0061】
[0070] デバイスの又はデバイス上の何らかの応答を測定又は刺激するために電気信号を用いるいかなる要素にも、ホルダからデバイスまでの電気的接触が必要である。電気的接触は一般に電気的なソース又は検知要素と関連付けて用いられる。電気的接触はパッド領域を画定することによって行われ、パッド領域は一般に各要素自体の表面の直接上及びフレームの上の領域にある。これらのパッド領域は、要素上に画定された約100ミクロンよりも概ね約100ミクロンだけ大きいエリアであり、1)パッド材料が要素材料とは異なるパターニング材料領域、又は2)パッド領域が要素材料と同一材料から成るパターニング要素領域のいずれかによる。別の材料の使用が好ましいのは、ホルダと要素材料との間の物理的接触によって良好な及び/又はオーミックな電気的接触を達成することができない場合である。要素材料がタングステン等の金属である場合、パッド領域は単にフレーム領域上のその要素内の大きいエリアとすることができる。要素材料がシリコンカーバイド等の半導体又はセラミックである場合、金、タングステン、白金、チタン、パラジウム、又は銅等の非磁性金属及び非磁性合金を用いることができる。要素当たり多数のパッドがあり、デバイス当たり多数の要素がある場合がある。電気的なソース及び検知要素は、電圧及び電流バイアス、電気化学(液体Eセルに組み込まれた場合)、並びに電気泳動及びジ誘電泳動(液体Eセルに組み込まれた場合)を含む特定の用途に応じて、様々な形状及び大きさでパターニングすることができる。典型的な形状は矩形及び円形の要素を含む。
【0062】
[0071] また、デバイスは、熱ソース及び電気的なソース要素もしくは複数の要素の双方を含んで、材料の電熱試験を可能とすることもできる。電熱試験は、温度の関数として変動する電気特性を有する標本を研究するために特に有用である。熱ソース要素を用いて、電子顕微鏡において導電性等の特性を同時に測定しながら標本の温度を制御することができる。熱ソースと電気的なソース要素との間で電気信号を分離させたままとするために、メンブレンの上に薄いパッシベーション層を堆積する。これについては、先に述べたように、2008年5月9日に出願された「Microscopy Support Structures」と題する国際特許出願PCT/US08/63200号に紹介されている。このパッシベーション層は薄く、概ね100nm未満で5nmを超える厚さで、アモルファスであり、好ましくは窒化シリコンを含む。これによって、非電子ビーム拡散薄膜において電気的絶縁及びサンプル支持が可能となる。例えば図10を参照すると、電熱デバイスが示されており、パッシベーション層は電気的なソース要素からメンブレンを隔離する。
【0063】
[0072] 各デバイスはフレームを有することが好ましく、これは概ねデバイスの外周の厚い領域である。フレームはデバイスに機械的支持を与えて取り扱いを容易にし、メンブレン領域を支持する強力な表面を与え、デバイスとホルダとの間の良好な接触を可能とする。また、これは、多数のメンブレン領域を有するデバイス上のメンブレン領域間に、あるレベルの熱分離を与える。フレームは典型的に約12ミクロン以上の厚さであり、好適な実施形態では約12、25、50、200、及び300ミクロンか、又はその間のいずれかの変化量の厚さである。フレーム領域は一般にデバイスの観察領域の外側にある。好適なフレーム材料は単結晶シリコンであるが、フレームはポリシリコン、石英、又は溶融シリカで作成することも可能である。
【0064】
[0073] フレームは、その外周において円形、矩形、正方形、又は多角形とすることができる。多数のメンブレン領域を有するデバイスでは、フレームはメンブレン領域間にも存在して、機械的支持を提供すると共に、温度制御デバイスとして用いる場合には熱分離も与える。また、メンブレン領域も正方形、矩形、円形、又は多角形とすることができる。
【0065】
[0074] 本明細書に与えた温度制御デバイスの説明は、これを限定することは意図していないことは当業者には認められよう。温度制御デバイスの変形も想定される。
【0066】
[0075] 本明細書に記載したような温度デバイスが、観察領域における気体及び/又は液体を制御することができるチャンバ(顕微鏡の外部又は内部)において用いられる場合、これは環境セルの一部となる。漏れを防ぐため、デバイス自体の上又はホルダの上のワッシャ等のコンポーネントを用いて封止を形成することができる。また、これらの構成は環境セル又はEセルも形成する。Eセルは電子顕微鏡の外側で用いることができるが、一般にそれらが最も有用であるのは、電子顕微鏡内に配置されて環境に変化が起こるのを可能としながら、撮像及び/又は分析によってその変化の影響を観察する場合である。環境セルは一般に、1つ以上のウィンドウデバイス、1つ以上の温度制御デバイス、又は1つ以上のウィンドウデバイス(複数のデバイス)及び温度制御デバイス(複数のデバイス)の組み合わせを用いて構築される。環境セル及びホルダについては、前述の国際特許出願PCT/US08/63200号、米国仮特許出願60/916、916号、及び米国仮特許出願60/974,384号に、より詳細に記載されている。
【0067】
[0076] 温度制御デバイスを用いる方法
【0068】
[0077] 実際には、電子顕微鏡において撮像のために温度制御デバイス上に標本を配置する。この場合、温度制御デバイスは環境セルの一部であるか、又は一部ではない。熱ソース要素及びヒートシンクを用いて、標本の温度を極めて急速に(10℃/秒のオーダーで)もしくは極めて低速で上昇させるか、又は極めて急速に(10℃/秒のオーダーで)もしくは極めて低速で低下させることができる。これは、加熱又は冷却するために典型的に数分を要する従来技術のインシチュー技術に比べて大きな進歩である。また、熱ソース要素及び/又はヒートシンクを用いて、温度制御デバイスにより制御可能熱勾配を提供することができるので、同一の温度制御デバイス上の異なる標本に、1つの温度制御デバイス上の単一の標本に、又はそれら双方に、ある温度範囲を同時に提供することができる。これは、標本(複数の標本)に対して典型的に単一の温度プラス又はマイナス大きい許容誤差を与える従来技術のインシチュー技術に比べて大きな進歩である。
【0069】
[0078] 多くの熱活性化材料反応は、温度が変化する速度に依存する。温度変化の速度を精密に制御することができる温度制御デバイスを用いて、急速な温度上昇、低速の(又は高度に制御された)温度上昇、急速な温度低下、又は低速の温度低下を必要とする反応を研究することができる。急速な温度上昇(例えば10℃/秒のオーダーの温度上昇時間)を必要とする反応は、ドーパント活性化、アニーリング、バイオマスのガス化及び熱分解、並びにコア/シェル粒子による爆発を含む。低速の(又は高度に制御された)温度上昇(例えば10℃/秒未満のオーダー)が必要となるのは、材料が非可逆性の相変化(例えばスチールにおけるオーステナイト−マルテンサイト)を経験する場合である。なぜなら、非可逆性の変化が生じる温度を超えないことが重要だからである。温度制御デバイスは、温度のオーバーシュートなしで小数点以下の度数で温度を調節することができるので、電子顕微鏡において撮像を行いながら信頼性高く温度を制御し、非可逆性反応を調査することができる。急速な冷却速度(例えば10℃/秒を超えるオーダー)を必要とする反応は、ケンチングを含む。低速の冷却速度(例えば10℃/秒のオーダー)を必要とする反応は、膨張及びひずみの研究を含む。
【0070】
[0079] 一態様において、ビーム誘発加熱を判定する方法を説明する。電子ビームを用いて標本を調べる場合、ビーム誘発加熱によってビームが標本を変質させる場合があることは理解されよう。ビーム誘発加熱は多数の方法で研究することができる。この技法は、SEM、TEM、及びSTEM機器で、大気、気体環境で、又は真空中で行うことができる。一実施形態においては、単一の温度制御デバイスを用いて精密に既知の温度で相変態を生じる材料を研究することができる。所望の相変態が起こるまで(撮像によって検証される)、電子ビームにより撮像を行いながら温度制御デバイスを用いて標本の温度を調節することができ、相変態が起こった温度を温度制御デバイスが与えた温度と比較することができる。温度制御デバイスが達成した温度と既知の変態温度との差は、電子ビームによって誘発された温度に関係している。多数の標本及び実験の繰り返しによって、ビーム誘発加熱を理解するために必要な統計的データを得ることができる。別の実施形態においては、多数のヒータを用いて又は多数の加熱デバイスを取り付けたホルダによって、精密に既知の温度で相変態を生じる材料を研究することができる。同一の材料標本を多数のヒータ(又は多数のデバイス)に適用し、次いで標本を同時に又は別個に加熱することができる。これによって、1つの標本(実験)は撮像しながら(電子ビームにより)加熱され、他の標本(対照)は加熱されるが撮像されない。実験標本において所望の変態が(撮像によって)観察されるまで加熱を行い、その後、対照及び実験標本の双方で加熱を終了する。加熱の完了時に対照を撮像する。対照及び実験標本の差を調べて、ビーム誘発効果を定量化する。例えばビーム誘発加熱があった場合、実験標本は相変態を生じるが、対照標本では、導入された熱エネルギが小さいので相変態は生じない。
【0071】
[0080] 別の態様において、サンプルの3次元再現を達成する方法を説明する。図5を参照すると、大きいサンプルから多数の連続標本を調製し、各標本を電子顕微鏡により研究し、次いで個々の標本からのデータを組み合わせてサンプルの3D再現を達成することによって、大きいサンプルの研究を達成することができる。この方法は、限定ではないが、拡散、アニーリング、ゲッタリング、結晶粒界移動、及びその他の大きいサンプルにおける熱活性化プロセスを含む多数の変態及びプロセスを研究するために有用であり得る。連続標本は、各々が個々の加熱要素を有する多数のデバイス上で、多数のヒータを有する単一デバイス上で、及び/又はデバイスの組み合わせにおいて研究することができる。各標本からのデータを抽出し、他の連続標本からのデータと組み合わせて、サンプルボリュームにおいて熱プロセスの3D表現を生成することができる。各標本から抽出されるデータの例は、限定ではないが、拡散速度、経時的な組成変化、及び欠陥回復のためのアニーリング時間/温度を含む。この技法において、標本のサイズ調整は重要である。当業者には容易に明らかであるように、いくつかの効果(結晶粒境移動等)は標本の大きさに依存するからである。この技法は、SEM、TEM、及びSTEM機器において、気体環境で又は真空で実行可能である。
【0072】
[0081] 更に別の態様において、反応を「時間でスライスする」方法を説明する。既存の技術では、いくつかの重要な反応があまりに速く起こるために捕捉が難しいことが知られている。例えば、半導体層を通る原子の拡散は数秒間で発生する場合がある。従来技術のミクロ分析を用いてこの反応を特徴付けることは極めて難しい。画像の収集に20秒を要し、ミクロ分析に数分を要する可能性があるからである。この問題を克服するため、効果的な反応低速化について説明する。これによって、高速熱パルスを用い、パルス間で反応を「一時停止」することにより反応を低速化する。これについて図6に概略的に示す。例えば、zユニット(例えば1秒)の反応を「時間スライスする」ため、反応を、各々がyサブユニット(例えば10ミリ秒)のxセグメント(例えば100)に分割することができる。x及びyは、数値を合計すると反応の長さ(すなわちzユニット)になるいずれかの数にすることができることは理解されよう。当業者に容易に明らかになるように、xセグメントの長さは等しくするか、又は様々とすることができる。y時間はナノ秒からマイクロ秒、秒、分、時間までのいずれかの測定値とすることができる。実際には、標本を温度制御デバイス上でyサブユニットだけパルス加熱し、標本を冷却することによって「一時停止」し(すなわち温度制御デバイスのヒートシンクによって標本部位から熱を取り除くことができる)、必要に応じて撮像/ミクロ分析を実行し、別のyサブユニットだけパルス加熱し、冷却のため「一時停止」し、撮像/ミクロ分析を実行する等とすることができる。この例では、実験の終了時に標本は確定可能な量の熱を有し、データを再構築して反応が経時的にどのように進行したかを示すことができる。図6に示す熱パルスは、各パルスについてΔTが同一であることを示すが、当業者によって容易に明らかになるように、ΔTは実験期間において変動し得ることは認められよう。この技法が可能であるのは、熱ソースがサンプルを極めて急速に加熱及び冷却することができる場合のみである。加熱及び冷却の速度は、各「セグメント」の時間よりもはるかに速くなければならないからである。従来のインシチュー加熱技術は加熱及び冷却に数分を要するので、多くの関心の高い反応についてこの技法の実行は不可能である。熱パルスの間、冷却の間、冷却の後、又は上述のいずれかの組み合わせにおいて標本を撮像可能であることは、当業者には認められよう。
【0073】
[0082] 更に別の態様において、ケンチングの影響を研究する方法について説明する。ケンチングは、サンプルを極めて急速に冷却する場合に生じる。典型的に、材料は温度変化と共に異なる相遷移を経るものであり、サンプルを極めて急速に冷却することで、いくつかの相遷移を回避し、材料の高温構造を室温で維持したままとすることができる。材料構造はその特性に影響を与える(例えば形態構造、機械的強度等)ので、材料特性を最適化し新しい合金を生成するためにケンチングを用いることができる。実際には、温度制御デバイス上の標本を所望の温度に加熱し、サンプルを撮像しミクロ分析を実行して標本を完全に特徴付ける。特定の相又は形態構造等の所望のに達したら、熱ソースを除去して、10℃/秒のオーダーで急速に標本を室温まで冷却させる。次いで標本を撮像し分析してケンチングの影響を研究することができる。この技法が可能であるのは、極めて急速な冷却、具体的には相遷移よりもはるかに速い冷却を標本に行うことができる場合である。従来のインシチュー技術は冷却に数分を要し、これは遅すぎるので中間相を回避することができず、このためケンチング実験では無益となってしまう。
【0074】
[0083] 更に別の態様において、熱アニーリングによるゲッタリングを研究する方法を説明する。ゲッタリングは、材料から欠陥又は不純物を除去するプロセスであり、性能は欠陥/不純物をどのくらい充分に除去可能であるかの関数であるので、多くの業界では重要なプロセスである。例えば、シリコンにおける欠陥のゲッタリング(機械的応力及びアニーリングの組み合わせによる)によって、高い性能、均一性の向上、及び高い歩留まりが可能となる。実際には、欠陥を室温で識別し、撮像及びミクロ分析の組み合わせによって特徴付けることができる。次いで、例えば図6に示すような高温パルスを標本に印加し、パルス間で欠陥領域を調べて、欠陥に対する熱アニールの影響を研究することができる。この技法は、熱ソースがサンプルを極めて急速に加熱及び冷却することができる場合に最も有用である。ゲッタリングは、選択した温度変化に応じて、長いか又は短いプロセスとすることができる。高速の高温ゲッタリングプロセスを研究するためには、加熱及び冷却速度はゲッタリング時間よりもはるかに速くなければならない。従来のインシチュー技法は加熱及び冷却に数分を要するので、ほとんどのゲッタリング反応では無益となってしまう。
【0075】
[0084] 別の態様において、寿命試験を行う方法について説明する。寿命試験は、温度を何度も循環させて、長年にわたる疲労及び環境変化をシミュレートする。ナノスケールでは、これを行うことは極めて難しい。温度を観察すると同時に迅速に循環させる技術はこれまで存在しないからである。高速温度応答及び極めて高い安定性を有する温度制御デバイスを用いて、電子顕微鏡内で直接に寿命試験を行うことができる。一般に試験全体を通して撮像を行うが、特に一連のサイクル(高温又は低温)の直前及び直後に行う。図7を参照すると、上昇時間及び低下時間は概ね1ミリ秒から10秒であり、期間は10ミリ秒未満から10秒を超え、ΔTは数度(C)から1000℃を超えるものとすることができる。本明細書に記載した時間スライスと同様、期間は相互に同一か又は異なるものとすることができ、上昇時間及び低下時間は相互に同一か又は異なるものとすることができ、ΔTは相互に同一か又は異なるものとすることができる。合計サイクル数は概ね5〜10から何万以上である。この技法は、SEM、TEM、及びSTEM機器において、気体環境で又は真空で実行可能である。
【0076】
[0085] 別の態様において、電熱分析を行う方法を説明する。温度制御デバイスに追加の電気的検知又はソース要素を設けることによって、熱刺激を与えながら同時に標本の電気的特性又は複数の特性を監視するように標本を調製することができる。単一のミリ秒スケールの温度サイクルで、任意の持続時間の長い温度サイクルで、及び/又は多数の熱処理及び温度サイクルで、標本を同時に撮像し電気的に分析することができる。この電熱分析技法は、材料の電気的特性の熱依存性を理解するために有利であり得る。更に、標本と電子との相互作用の結果として標本の表面から発せられた透過電子及び/又はx線を同時に電子撮像、取得/分析し、この電熱技法を用いて標本の電気的特性又は複数の特性を監視することによって、標本の電気的挙動を、標本の大きさ、形状、形態構造、方位、化学的組成、及び/又は構造に相関させることができる。電熱技法は、SEM、TEM、及びSTEM機器において、気体環境、液体環境で、又は真空で実行可能である。
【0077】
[0086] 別の態様において、ソフトウェアによって温度制御デバイスを動作させる方法について説明する。温度制御デバイスは10E6℃/秒のオーダーで温度変化率を提供することができるので、熱ソース要素(複数の要素)に印加する電流のタイミング及び大きさを制御することによってジュール加熱の速度及び持続時間をソフトウェアに制御させることが有利である。ソフトウェア制御のもとで、多数の温度ソース要素の制御とは独立して、温度循環、温度変化率、ケンチング速度、及び/又は任意の温度プロファイルを標本に適用することができる。また、ソフトウェア制御によって、標本に適用される時間及び温度プロファイルの精密なデータ記録が可能となる。本発明におけるようにミリ秒スケールの温度変化速度でシステムにソフトウェア制御及びデータ記録を提供すると、データログを用いて標本に適用した精密な熱処理を分析することができるので、従来技術のインシチュー技術に比べて大きな進歩である。
この技法は、SEM、TEM、及びSTEM機器において、気体環境で又は真空で実行可能である。
【0078】
[0087] 本発明について例示的な実施形態及び特徴を参照して本明細書において様々に開示したが、ここに記載した実施形態及び特徴は本発明を限定することは意図しておらず、本明細書における開示に基づいて、他の変形、変更、及び他の実施形態が当業者に想起されることは認められよう。従って、本発明は、以下に述べる特許請求の範囲の精神及び範囲内の全てのかかる変形、変更、及び代替的な実施形態を包含するものとして広く解釈されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検知要素を用いてデバイス上の少なくとも1つの熱ソース要素の温度を測定する方法であって、
(a)前記デバイス上のメンブレンの近傍にワイヤ又は熱電対を位置付けることと、
(b)前記熱ソース要素に液体又は気体環境を導入して前記ワイヤの導電性又はインピーダンスを測定することと、
を含み、前記ワイヤの導電性又はインピーダンスは前記環境の熱流又は加熱中に前記要素から伝導された熱の量の尺度であり、前記熱ソース要素の温度は前記熱流の測定値又は前記伝導熱から測定される、方法。
【請求項2】
前記ワイヤ又は熱電対が前記メンブレン上に位置付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワイヤ又は熱電対がメンブレンから離れてであるが前記デバイス上に位置付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ワイヤ又は熱電対がジュール加熱を用いて特定の温度に予熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱ソース要素に前記液体又は気体環境を導入すると前記ワイヤ又は熱電対の温度が低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
温度制御デバイスを用いて標本上で電熱分析を実行する方法であって、
(a)前記温度制御デバイス上に少なくとも1つの電気的検知要素及び/又は少なくとも1つの電気的ソース要素を位置付けることと、
(b)少なくとも1つの電気的特性を監視し前記標本を撮像しながら、同時に前記標本に熱刺激を与えることと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記標本の電気的挙動を、前記標本の大きさ、形状、形態構造、方位、化学的組成、及び/又は構造に相関させることができる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電熱分析が、SEM、TEM、又はSTEM機器において行われる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記電熱分析が、気体環境、液体環境において、又は真空中で行われる、請求項6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
電子顕微鏡においてビーム誘発加熱を判定する方法であって、
(a)温度制御デバイス上に既知の遷移温度を有する標本を配置することと、
(b)電子ビームを用いて前記標本を撮像しながら同時に前記標本の温度を上昇させることと、
(c)相遷移の視覚化によって実験的遷移温度が得られたら前記温度上昇を終了させることと、
(d)前記電子ビームによって誘発されたエネルギの量を測定するために、前記既知の遷移温度を前記標本の前記実験的遷移温度と比較することと、
を含む、方法。
【請求項11】
電子顕微鏡においてビーム誘発加熱を判定する方法であって、
(a)多数のヒータ温度制御デバイス上に既知の遷移温度を有する少なくとも2つの同一の標本を配置することと、
(b)電子ビームを用いて第1の標本を撮像しながら同時に前記少なくとも2つの同一の標本の温度を上昇させることと、
(c)前記第1の標本の相遷移の視覚化が生じたら前記少なくとも2つの同一の標本の前記温度上昇を終了させることと、
(d)第2の標本を撮像して前記ビーム誘発加熱を定量化することと、
を含む、方法。
【請求項12】
電子顕微鏡を用いてサンプルの3次元再現を生成する方法であって、
(a)大きいサンプルを少なくとも2つの標本に直列にスライスすることと、
(b)各標本を温度制御デバイス上に配置することと、
(c)電子ビームを用いて前記標本を撮像しながら同時に前記標本の温度を変更することと、
(d)各標本画像からデータを抽出することと、
(e)各標本画像からの前記データを組み合わせて前記サンプルの前記3次元再現を生成することと、
を含む、方法。
【請求項13】
電子顕微鏡において撮像するために化学的反応又は物理的プロセスをタイムスライスする方法であって、
(a)温度制御デバイス上に標本を配置することと、
(b)前記標本の初期温度であるTから前記標本の加熱後の温度であるTにy時間にわたり標本の温度を上昇させることと、
(c)前記加熱を終了させてTから前記標本の冷却後の温度であるTに冷却させることであって、TはTと同一か又は異なるものとすることができる、ことと、
(d)Tにおいて前記標本の撮像及び/又は前記標本からのデータの抽出を行うことと、
(e)前記(b)から前記(d)をx回繰り返すことであって、T及びTはステップごとに同一か又は異なるものとすることができる、ことと、
を含む、方法。
【請求項14】
ゲッタリングが観察される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
寿命試験が実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
電子顕微鏡においてケンチングを観察する方法であって、
(a)温度制御デバイス上に標本を配置することと、
(b)前記標本を撮像しながら同時に前記標本の温度を上昇させることと、
(c)前記標本を急速に冷却させることと、
(d)冷却の後に前記標本を撮像することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記温度制御デバイスが、
(a)少なくとも1つのメンブレン領域を含むメンブレンと、
(b)前記メンブレンと接触して前記メンブレンの加熱可能領域を形成する少なくとも1つの導電性要素と、
を含む、請求項10から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの導電性要素が1つ以上の熱ソース要素を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの導電性要素が1つ以上のヒートシンク要素を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記熱ソース要素を用いて少なくとも1つのメンブレン領域を直接加熱する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記デバイスが1つ以上の加熱可能領域の近傍に1つ以上のメンブレン領域を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱可能領域の間に1つ以上のヒートシンク要素が設けられて、前記メンブレン領域を熱的に分離させるように熱の放散を制御する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項23】
前記熱ソース要素が直列又は並列回路において接続されている、請求項18から21のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−506137(P2013−506137A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531013(P2012−531013)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/049913
【国際公開番号】WO2011/038062
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(509245670)プロトチップス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】