説明

電子黒板

【課題】 撮像手段の円滑な移動、およびバッテリー駆動が可能な電子黒板を提供する。
【解決手段】 本発明の電子黒板は、アームを収納位置または撮像位置に移動可能なモータMと、アームに取り付けられた撮像カメラと、撮像カメラによって撮像された画像データを処理する画像処理部230Aと、画像処理部230Aにより処理された画像データを記録するUSBメモリと、アームが収納位置にあることを検出するスイッチSW1と、アームが撮像位置にあることを検出するスイッチSW2と、コントローラ230とを有する。コントローラ230は、アームを撮像位置に移動させ、アームが撮像位置にあることが検出されてから一定の遅延時間後に撮像カメラに撮像させ、撮像カメラによる撮像終了後にアームを収納位置に移動させ、アームが収納位置にあることが検出されたことに応答して画像処理部230Aに画像処理をさせ、処理された画像データを記録させる、シーケンスを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子黒板に関し、特に、ホワイトボード上に描かれた画像の読取りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的な電子黒板は、文字、図形等の画像を描画するためのホワイトボードと、ホワイトボードを光学的に走査することで描画された画像を読取る手段と、読取られた画像を印刷するプリンタとを備えて構成される。また、光学的な読取り手段を電子カメラに置き換えたものも提案されている。例えば、特許文献1の電子黒板は、図1に示すように、ホワイトボード上に、電子カメラを支持するカメラ支持手段を取り付け、カメラ支持手段を読取り位置と非読取り位置で自由に移動させるものである。特許文献2の電子黒板は、フレームの下方にデジタルカメラ収納庫を設け、そこから延長フレームを介して引き出されたデジタルカメラを読取り位置に支持している。また、特許文献3は、電子カメラで撮像した画像の歪みを補正する電子黒板を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−108689号公報
【特許文献2】特開2002−52894号公報
【特許文献3】特開2004−312436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1ないし3に開示される電子黒板では、モータを用いて電子カメラを収納位置から撮像位置まで一定速度で移動させるため、電子カメラを撮像位置に停止させるのが容易でなく、また、電子カメラを撮像位置に急激に停止させるために頑強な支持部材等を必要としなければならない。さらに上記特許文献1ないし3の電子黒板は、モータの駆動や電子カメラの撮像に必要とされる電力の省電力化を図るものではないし、さらに、バッテリー駆動に対応し、且つ商用電源のない場所でも使用できるシステムでもない。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決し、バッテリー駆動システムにおいて低消費電力を図りつつ、商用電源のない場所でも自由に使用できる電子黒板を提供することを目的とする。
さらに本発明は、搭載された撮像手段の円滑な移動を図る電子黒板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子黒板は、文字、図形等を描画したり、投射された画像を表示可能な描画面を有するボード部材と、アーム部材を収納位置または撮像位置に移動可能な移動手段と、前記アーム部材に取り付けられ、前記アーム部材が撮像位置にあるとき前記描画面を撮像可能な撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像データを処理する画像処理手段と、前記画像処理手段により処理された画像データを出力する出力手段と、前記アーム部材が収納位置にあることを検出する第1の検出手段と、前記アーム部材が撮像位置にあることを検出する第2の検出手段と、前記描画面の撮像を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記移動手段により前記アーム部材を撮像位置に移動させ、前記第2の検出手段により前記アーム部材が撮像位置にあることが検出されたことに応答して前記移動手段による移動を停止させ、次いで前記撮像手段に前記描画面を撮像させ、前記撮像手段による撮像終了後に前記移動手段により前記アーム部材を収納位置に移動させ、前記第1の検出手段により前記アーム部材が収納位置にあることが検出されたことに応答して前記移動手段による移動を停止させ、前記移動手段による移動が停止したことに応答して前記出力手段に画像データを出力させる、シーケンスを有する。
【0007】
好ましくは電子黒板はさらに、バッテリーと、バッテリーからの電力を供給する電力供給手段とを含み、前記移動手段、前記撮像手段および前記画像処理手段は、前記電力供給手段から供給された電力に基づき動作する。好ましくは前記撮像手段は、前記描画面の露光調整を行った後に前記描画面を撮像する。好ましくは前記制御手段は、前記アーム部材が撮像位置から収納位置に移動する間に前記画像処理手段をスタンバイ状態にさせ、前記移動手段による移動が停止したことに応答して前記画像処理手段に撮像された画像データを処理させる。好ましくは前記電力供給手段は、前記移動手段に電力を供給する第1のDC−DCコンバータと、前記画像処理手段および前記撮像手段に電力を供給する第2のDC−DCコンバータを含む。好ましくは前記ボード部材は、前記描画面の位置を識別するための識別手段を含み、前記画像処理手段は、前記画像データに含まれる識別手段を利用して画像データの歪みを補正する。好ましくは前記移動手段は、前記アーム部材を回転させるモータと、モータの回転力を伝達する伝達機構と、伝達機構によって移動されるアーム部材とを有し、前記伝達機構は、モータの第1の方向の回転により、前記アーム部材を収納位置から撮像位置、および撮像位置から収納位置へ移動させる。好ましくは前記伝達機構は、モータが1回転されるとき、前記アーム部材を収納位置と撮像位置の間で1往復させる。好ましくは前記伝達機構は、前記アーム部材との間にクラッチを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動手段、撮像手段および出力手段を時間的に異ならせて動作させるようにしたので、消費電力の効率化を図ることができる。特に、バッテリー駆動の電子黒板であれば、バッテリー消費の軽減および延命を図ることができる。さらに、電子黒板の撮像手段の円滑な移動を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のデジタルカメラにより読み取りを行う電子黒板の例である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施例に係る電子黒板の正面図、図2(b)は、撮像位置にアームが回転されたときの側面図、図2(c)は、収納位置にアームが回転されたときの側面図である。
【図2A】本発明の実施例に係る電子黒板の他のホワイトボードの例を示す図である。
【図2B】本発明の実施例に係る電子黒板の他のホワイトボードの例を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る電子黒板の電気的な構成を示す図である。
【図3A】本発明の実施例に係る電子黒板の他の電気的な構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係る電子黒板により撮像を行うときの各部の動作シーケンスである。
【図5】本発明の第2の実施例に係る電子黒板の移動機構を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る移動機構に適用されるクラッチの例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る移動機構の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態の好適な電子黒板は、バッテリーを電源に用い、ホワイトボードに描画された文字、図形やプロジェクタから投射された画像を簡易に撮像し、撮像データをメモリやプリンタに出力したり、あるいは撮像データを無線または有線通信により他の電子機器へ送信することを可能にする。実施例の電子黒板は例示であり、本発明は、実施例に電子黒板に限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
図2は、本発明の実施例に係る電子黒板の全体を示す正面図である。本実施例の電子黒板10は、矩形状のホワイトボード20と、ホワイトボード20の上部に取り付けられた撮像装置30と、ホワイトボード20の側部に設けられたコントロールユニット40とを備えて構成される。ホワイトボード20は、公知のように、ボードマーカ等を用いて文字、図形などを描画したり、またはプロジェクタから投射された画像を映すスクリーンとしても機能する描画面を備える。
【0012】
ホワイトボード20は、プラスチック等の材料を加工して形成される。好ましくは、ホワイトボード20は、その表面または描画面20Aに、白色から区別されるような黒または他の表示色で識別される識別枠22を有する。識別枠22は、撮像カメラによってホワイトボード20の描画面20Aを撮像したとき、その撮像データの歪みを補正するために利用される。識別枠22は、例えば、ホワイトボード20の相似形であることが好ましく、ホワイトボード20の外縁に沿って一定の幅で表示される。また、識別枠22は、ホワイトボード20の描画面20Aに投射されるプロジェクタからの映像を鮮明に映し出すための境界または目安にもなり得る。
【0013】
識別枠22の作成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ホワイトボード20の描画面20Aに、枠状の黒色のフィルムを貼り付けることにより識別枠22を形成してもよいし、あるいは、図2Aに示すように、描画面20Aに表示する識別枠22の代わりに、ホワイトボード20の枠20Bを描画面20Aの色から識別できるような色、例えば黒にすることで識別枠20Bとすることも可能である。さらには、下地に黒色の識別枠22を用意しその上を透明な矩形状のパネルで覆うようにしてもよい。また、撮像データの歪み補正をする目的であれば、識別枠22は、必ずしも枠体である必要はなく、図2Bに示すように、ホワイトボード20の4隅にそのコーナー位置が識別できるような黒色等の識別マーク24を用いてもよい。図2Bでは、四角形のマーク24を示しているが、丸等のその他の形状であってもよい。さらに、4つのマーク24を示しているが、これよりも多くてもよい。
【0014】
撮像装置30は、ホワイトボード20に描画された文字、図形、プロジェクタから投射された画像、あるいはホワイトボード20に描画された画像とプロジェクタにより投射された画像との合成を撮像するものであり、ホワイトボード20の上部に収納可能に取り付けられる。撮像装置30は、撮像ユニット32と、撮像ユニット32の一端を搭載し他端がホワイトボード20に回転可能に取り付けられたアーム34と、アーム34を回転させるモータM(ここには図示しない)などを備えている。
【0015】
好ましい態様では、ホワイトボード20の描画面20Aの撮像が行われないとき、撮像装置30は、ホワイトボード20上に収納され、すなわち本実施例では、撮像ユニット32およびアーム34は、ホワイトボード20上にある。撮像が行われるとき、撮像装置30が収納位置から撮像位置に移動され、すなわち本実施例では、アーム34が約90度回転され、撮像ユニット32がホワイトボード20の前面に飛び出す。撮像ユニット32は、後述するように、ホワイトボード20の描画面20Aの全体を写すことができる超広角レンズ36(図3を参照)と、超広角レンズ36からの光を光電変換するCMOSイメージセンサ240等を有する撮像カメラを備えている。
【0016】
コントロールユニット40は、ホワイトボード20の側部に設けられる。このコントロールユニット40は、ユーザ操作可能なスイッチ、表示部、USBコネクタを有する操作基板、電池ボックス等を含んで構成される。
【0017】
図3は、本発明の電子黒板の電気的な構成を示す図である。操作基板100には、USBメモリを接続するためのUSBコネクタ110と、バッテリー(電池)BTを接続するバッテリーホルダー120と、バッテリーBTからの電圧を一定電圧(例えば、5V)に変換するDC−DCコンバータ130、132と、DC−DCコンバータ130から供給される電圧によりモータMを駆動する駆動回路134と、複数のLED140と、電源スイッチ150とが搭載される。
【0018】
DC−DCコンバータ130は、電源ラインPWR1を介して駆動回路134に接続され、駆動回路134は、モータMへ駆動信号を出力する。モータMは、好ましくは公知の手段を用いてアーム34に接続され、駆動回路134からの駆動信号に基づき撮像装置30のアーム34を、撮像位置から収納位置へ、あるいは収納位置から撮像位置へ回転させる。後述する第2の実施例では、アーム34とモータMとの間の移動機構にクラッチが提供される。DC−DCコンバータ132は、電源ラインPWR2を介してUSBコネクタ110に接続される。さらにDC−DCコンバータ132からの電源ラインPWR2は、カメラ用基板200へ供給される。但し、操作基板100からカメラ基板200までの電源ラインの本数を減らすため、電源ラインPWR2は、図3Aに示すように、USBコネクタ110の電源ラインと共用させることができる。複数のLED140(140−1〜140−4)は、バッテリーの残量のチェック結果を表すLED140−1、電源オンを示すLED140−2、撮像された画像データの保存完了を示すLED140−3、エラー発生を示すLED140−4を含む。
【0019】
カメラ基板200は、撮像ユニット32内に取り付けられ、カメラ基板200と操作基板100とは、電源ラインPWR2、信号ラインS1、S2によって電気的に接続される。電源ラインPWR2は、DC−DCコンバータ132からCPU電源部210に接続され、される。信号ラインS1は、USBコネクタ110とコントローラ230間に接続され、信号ラインS2は、バッテリーBT、複数のLED140、電源スイッチ150、駆動回路134、DC−DCコンバータ130、132とコントローラ230間に接続される。
【0020】
カメラ基板200には、CPU電源部210、カメラ用電源部220、画像処理部230Aが搭載され、かつ電子黒板のシーケンスを制御するコントローラ230、超広角レンズ36で撮像された光信号を電気信号に変換するCMOSイメージセンサ240、シャッター時間を遅延するシャッター遅延回路250、シャッターの開閉を行うシャッター部260が実装される。このカメラ基板200は、好ましくは、撮像ユニット32内に収容され、撮像ユニット32からの電源ラインおよび信号線は、アーム34を介してコントロールユニット40内の操作基板100へ配線される。
【0021】
CPU電源部210は、電源ラインPWR2を介してDC−DCコンバータ132から供給された5V電圧を3.3Vの電圧に変換するDC−DCコンバータを含み、変換された3Vの電圧を電源ラインPWR2を介してコントローラ230およびカメラ用電源部220に供給する。
【0022】
カメラ用電源部220は、CPU電源部210から供給された3.3Vの電圧を2.8Vの電圧に変換するDC−DCコンバータを含み、変換された2.8Vの電圧をカメラ部(CMOSイメージセンサ240、シャッター遅延回路250およびシャッター部260)に供給する。
【0023】
CMOSイメージセンサ240は、公知の光電変換センサであり、ホワイトボード20の描画面の画像を一定の解像度で撮像するのに必要な画素数を有する。シャッター遅延回路250は、撮像が行われるとき、一定の遅延時間経過後に、シャッター部260にシャッター動作を行わせる。超広角レンズ36、CMOSイメージセンサ240、シャッター遅延回路250およびシャッター部260は、カメラ部を構成し、カメラ部は、ホワイトバランス、露光調整などの、通常の撮像カメラが備える機能を有することができる。遅延回路250は、ホワイトバランスや露光調整のための時間を保証することができる。イメージセンサ240により撮像された画像データは、信号ラインS3を介して画像処理部230Aに供給され、そこで歪み補正等の画像処理が施される。
【0024】
コントローラ230は、例えば、マイクロコントローラ、中央処理装置、画像処理プロセッサ、あるいはマイクロプロセッサなどから構成される。本実施例では、コントローラ230は、電子黒板の動作を制御するプログラムをメモリに格納し、ホワイトボード20の撮像を行うとき、当該プログラムを実行して各部を制御する。さらにコントローラ230は、撮像された画像データを処理する画像処理部230Aを含み、好ましくは、画像処理部230Aは、電力消費を抑えたスタンバイ状態(スリープ状態)と動作状態とを有する。画像処理部230Aは、予め決められたシーケンスに従い、スタンバイ状態または動作状態に切り替えられる。好ましくは、コントローラ230は、電源ラインPWR2を介して電力を供給されると動作可能な状態になる。
【0025】
収納位置スイッチSW1は、アーム34が図2(c)に示す収納位置にあるか否かを検出し、アーム34が収納位置にあるときスイッチが閉じる。撮像位置スイッチSW2は、アーム34が図2(b)に示す撮像位置にあるか否かを検出し、アーム34が撮像位置にあるときスイッチが閉じる。スイッチSW1、SW2の検出結果は、コントローラ230へ提供され、この検出結果に応じて各部の制御を行う。
【0026】
コントローラ230は、画像処理部230Aで処理された画像データを信号ラインS1を介してUSBコネクタ110に接続されたUSBメモリに保存する。さらにコントローラ230は、信号ラインS2を介して、電源ONを検出したり、複数のLED140を発光を制御したり、バッテリー残量を検出したりする。
【0027】
次に、本発明の実施例に係る電子黒板の動作を図4のタイミングチャートを参照して説明する。本実施例では、コントロールユニット40の電源スイッチPWR/SWをユーザが押下したとき、これをトリガーに、ホワイトボード20の撮像を行うものとする。
【0028】
電源スイッチ150が押下されると、コントローラ230は、信号ラインS2を介してその入力を受け取り、バッテリーホルダー120に接続されたバッテリーBTの残容量をチェックする。バッテリーBTの残容量が一定以上であれば、コントローラ230は、バッテリーチェック信号を生成し、信号ラインS2を介してDC−DCコンバータ130、132へ供給する。
【0029】
DC−DCコンバータ130、132は、バッテリーチェック信号の立下りのタイミングでオンし、バッテリーBTから供給される電圧を5Vに変換し、この電圧を電源ラインPWR1を介して駆動回路134へ供給するとともに、電源ラインPWR2を介してCPU電源部210へ供給する。また、コントローラ230は、DC−DCコンバータ130をオンさせると同時に、駆動回路134を作動させ、モータMを駆動する。これにより、アーム34は、収納位置からホワイトボード20の前面の撮像位置に向けて回転される。アーム34が撮像位置に到達すると、その位置が撮像位置スイッチSW2によって検出される。コントローラ230は、その検出に応答して駆動回路134によるモータMの駆動を停止させる。
【0030】
さらにコントローラ230は、撮像位置スイッチSW2がオンすることで、カメラ用電源部220、およびシャッター遅延回路250を作動させ、遅延回路250による遅延後に、シャッター部260によりシャッターの開閉が行わせる。遅延回路250による遅延時間は予め設定され、この遅延時間の間に、CMOSイメージセンサ240は、露光調整(例えば、ホワイトバランスなど)を行うことができる。また、遅延時間は、アーム34が撮像位置に停止したときに発生する振動による影響をなくすこともできる。CMOSイメージセンサ240によって撮像された撮像データは、信号ラインS3を介して画像処理部230Aへ送信される。
【0031】
カメラのシャッターが終了すると、コントローラ230は、この信号を受けて、カメラ用電源部220をオフし、駆動回路134を介してモータMを回転させる。これにより、アーム34は、撮像位置から収納位置に向けて回転される。アーム34が収納位置に到達すると、その位置が収納位置スイッチSW1により検出され、コントローラ230は、その検出に応答してモータMの回転を停止させる。アーム34が撮像位置から収納位置に戻るまでの期間、コントローラ230は、画像処理部230Aをスタンバイ状態にさせ、電力の消費を抑制するようにしてもよい。
【0032】
収納位置スイッチSW1がオンするタイミングで、すなわちモータMが停止したタイミングで、コントローラ230は、画像処理部230Aによる画像処理を実行させる。画像処理部230Aは、撮像データに映し出されたホワイトボード上の識別枠24の歪みが是正されるような歪み処理を行ったり、所定の解像度や所定のフォーマットに撮像データを加工する。処理された画像データを信号ラインS1を介してUSBメモリに保存させる。コントローラ230は、画像データの保存が完了すると、保存完了の信号により、LED140−3を任意の時間だけ点灯させ、保存完了をユーザに知らせる。その後、DC−DCコンバータ130、132をオフにする。
【0033】
なお、動作中に異常が発生し、動作停止等になった場合でも、バッテリーの消耗を防止するために、電源スイッチ150を押してから、DC−DCコンバータ130、132のオンする時間は任意の時間で停止する(図4の破線で示す部分)。
【0034】
このように本実施例によれば、モータMの駆動回路134は、画像処理用等のCPU電源部210と分離されるため、モータMの作動時の突入電流による電池電圧の低下によるDC/DC電源の誤動作を防止し、かつ、モータ動作時のノイズ等による画像処理回路等の誤動作を防止することができる。
【0035】
さらに、本実施例のシーケンスによれば、画像処理部230A、カメラ用電源部220、駆動回路134等が同時に電流を消費することを抑えることで、DC/DCコンバータの電流負担を軽くすることができ、DC/DC電源の小型化、および電池寿命の延命を図ることができる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例に係る電子黒板は、モータMを動力源としてアーム34を回転させる移動機構において、アーム34の回転機構への衝撃等を緩和するためのクラッチ機構を設ける。図5は、本発明の第2の実施例に係るアームの移動機構の概略を示す側面図、図6は、クラッチ機構の幾つかの例を示す図、図7は、第2の実施例におけるアームの移動動作を説明する図である。
【0037】
図5に示すように、移動機構300は、モータMの回転軸に取り付けられたウォームギヤ310と、ウォームギヤ310と歯合する第1の歯車320と、第1の歯車320に歯合する第2の歯車330と、第2の歯車320と歯合する第3の歯車340と、リンク350と、リンク350を介して回転される回転部材360とを有する。リンク350の一旦は、第3の歯車340の回転軸から半径方向に一定距離だけ離れた位置に回転自在に取り付けられ、他端は、回転部材360の回転軸から半径方向に延在する延在部362に回転自在に取り付けられる。回転部材360には、後述するようにアーム34の一旦が結合される。本実施例では、第3の歯車340、リンク350および回転部材360は、リンク機構を形成する。好ましくは、第1ないし第3の歯車320、330、330を接続することで、モータMと回転部材360とに所望の回転比を形成する。
【0038】
図6は、本実施例の移動機構に設けられたクラッチ機構を説明する図である。図6Aに示すように、支持部材400または410に回転可能に第1ないし第3の歯車320、330、340、回転部材360が支持される。回転部材360と支持部材400との間には、回転部材360を軸方向に支持部材410側に付勢するバネ部材370が設けられている。回転部材360の中央の円筒部362の外周には摩擦リング380が設けられ、摩擦リング382の外周をアーム34の中空円筒状の摩擦係合部34Aが摺動可能に固定されている。例えば、撮像位置にあるアーム34に外部から強制的な力が与えられたとき、摩擦リング382および摩擦係合部34Aによって、アーム34は一定の滑りを生じながら回転することができるため、アーム34およびその回転機構が保護される。また、アームの位置決めがずれるような場合には、アームに大きな負荷が加わるおそれがあるが、そのような負荷はクラッチにより緩和される。
【0039】
図6Bに示すクラッチは、回転部材360の一面に歯車または凹凸390が形成され、アーム34の端部に、その凹凸390と一定の滑りを生じながら噛み合うことができる凹凸面34Bが形成される。また、図6Cに示すクラッチは、回転部材360の一面にアーム34の端部との間に摩擦材392が設けられる。
【0040】
次に、本実施例の移動機構による動作について説明する。図7は、第3の歯車340、リンク350および回転部材360の位置関係を表した図であり、アーム34が、収納位置(1)から位置(2)を経由して撮像位置(3)まで回転し、撮像位置(3)から位置(4)を経由して収納位置(5)に戻るときの例である。
【0041】
アーム34が収納位置(1)または(5)にあるとき、第3の歯車340とリンク350とを連結する連結点が0点にあり、アーム34が撮像位置(3)にあるとき、連結点が0点より180度回転したb点になるように、第3の歯車340、リンク350および回転部材360が設定される。第3の歯車340が回転するとき、連結点の動きは、正弦波となる。つまり、第3の歯車340が0度から180度回転するとき、アーム34が収納位置(1)から緩やかな速度で回転を開始し、その後、回転速度を速め、再び、撮像位置(3)に向けて緩やかな回転となり、撮像位置(3)に停止される。そして、180度から360度回転されるとき、アーム34が撮像位置(3)から緩やかに回転を開始し、途中、回転速度を速めた後、収納位置(5)に向けて緩やか回転となり、収納位置(5)に停止される。
【0042】
このように、モータMを一定速度で回転させることで、アーム34を収納位置から撮像位置、撮像位置から収納位置へ正弦波のような速度で移動させることができるため、アーム34の起動、停止が非常にスムーズであるとともに、モータMの定速回転によりモータの負荷が軽減されるためバッテリーBTの電力消費が節約される。さらに、第3の歯車340を同方向に1回転させるだけで、アーム34を収納位置(1)と撮像位置(3)の間を1往復させることができるため、モータMの駆動制御が非常に容易である。
【0043】
上記実施例では、アーム34をリンク等の移動機構300を用いて回転させる例を示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ステッピングモータにより、直接アーム34を回転させてもよいし、ステッピングモータとアーム34との間に歯車等のギヤを介在させて適当なギヤ比でアーム34を回転させるようにしてもよい。
【0044】
上記実施例では、USBメモリに画像データを保存する例を示したが、格納する媒体は、USBメモリ以外であってもよい。さらに撮像した画像データの出力形態としては、保存以外にも、プリンタなどに印字させるようにしてもよい。さらに、画像データは、無線LAN、有線LANなどを介して他の電子機器、携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどに送信するようにしてもよい。さらに上記実施例では、電源スイッチ150をトリガーに撮像を開始するようにしたが、これ以外にも、撮像開始を指示する入力スイッチを設けるようにしてもよい。
【0045】
上記実施例では、バッテリー駆動による電子黒板を例示したが、電子黒板は、商用電源を用いて動作されるものであってもよい。商用電源のみを用いて電子黒板を動作させてもよいし、商用電源とバッテリーとの併用であってもよい。さらにバッテリーは、充電可能な二次電池を用いることができる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10:電子黒板
20:ホワイトボード
30:撮像装置
32:撮像ユニット
34:アーム
36:超広角レンズ
40:コントロールユニット
100:操作基板
110:USBコネクタ
120:バッテリーホルダー
130、132:DC−DCコンバータ
134:駆動回路
140:LED
150:電源スイッチ
200:カメラ基板
210:CPU電源部
220:カメラ用電源部
230:コントローラ
230A:画像処理部
240:CMOSイメージセンサ
250:シャッター遅延回路
260:シャッター部
PWR1、PWR2:電源ライン
S1、S2、S3:信号ライン
SW1:収納位置スイッチ
SW2:撮像位置スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字、図形等を描画したり、投射された画像を表示可能な描画面を有するボード部材と、
アーム部材を収納位置または撮像位置に移動可能な移動手段と、
前記アーム部材に取り付けられ、前記アーム部材が撮像位置にあるとき前記描画面を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像データを処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段により処理された画像データを出力する出力手段と、
前記アーム部材が収納位置にあることを検出する第1の検出手段と、
前記アーム部材が撮像位置にあることを検出する第2の検出手段と、
前記描画面の撮像を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記移動手段により前記アーム部材を撮像位置に移動させ、前記第2の検出手段により前記アーム部材が撮像位置にあることが検出されたことに応答して前記移動手段による移動を停止させ、次いで前記撮像手段に前記描画面を撮像させ、前記撮像手段による撮像終了後に前記移動手段により前記アーム部材を収納位置に移動させ、前記第1の検出手段により前記アーム部材が収納位置にあることが検出されたことに応答して前記移動手段による移動を停止させ、前記移動手段による移動が停止したことに応答して前記出力手段に画像データを出力させる、シーケンスを有する電子黒板。
【請求項2】
電子黒板はさらに、バッテリーと、バッテリーからの電力を供給する電力供給手段とを含み、前記移動手段、前記撮像手段および前記画像処理手段は、前記電力供給手段から供給された電力に基づき動作する、請求項1に記載の電子黒板。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記描画面の露光調整を行った後に前記描画面を撮像する、請求項1または2に記載の電子黒板。
【請求項4】
前記制御手段は、前記アーム部材が撮像位置から収納位置に移動する間に前記画像処理手段をスタンバイ状態にさせ、前記移動手段による移動が停止したことに応答して前記画像処理手段に撮像された画像データを処理させる、請求項1ないし3いずれか1つに記載の電子黒板。
【請求項5】
前記電力供給手段は、前記移動手段に電力を供給する第1のDC−DCコンバータと、前記画像処理手段および前記撮像手段に電力を供給する第2のDC−DCコンバータを含む、請求項1ないし4いずれか1つに記載の電子黒板。
【請求項6】
前記ボード部材は、前記描画面の位置を識別するための識別手段を含み、前記画像処理手段は、前記画像データに含まれる識別手段を利用して画像データの歪みを補正する、請求項1ないし5いずれか1つに記載の電子黒板。
【請求項7】
前記移動手段は、前記アーム部材を回転させるモータと、モータの回転力を伝達する伝達機構と、伝達機構によって移動されるアーム部材とを有し、前記伝達機構は、モータの第1の方向の回転により、前記アーム部材を収納位置から撮像位置、および撮像位置から収納位置へ移動させる、請求項1ないし6いずれか1つに記載の電子黒板。
【請求項8】
前記伝達機構は、モータが1回転されるとき、前記アーム部材を収納位置と撮像位置の間で1往復させる、請求項1ないし7いずれか1つに記載の電子黒板。
【請求項9】
前記伝達機構は、前記アーム部材との間にクラッチを含む、請求項1ないし8いずれか1つに記載の電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−187733(P2012−187733A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51075(P2011−51075)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(301032735)プラス株式会社 (33)
【出願人】(504462711)ゼロラボ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】