電極の回復処理方法
【課題】 電極部の接続面の不所望な削り屑が生じることなく、しかも、簡略化された方法で行うことができること。
【解決手段】 算術平均粗さRaが0.5以上1.5(μm)程度の範囲となるように形成される凹凸10aを有する転写面10sを備える転写板10により、バンプ44Bの先端部が、1バンプ当たり5g以上の押圧力で加圧処理されるもの。
【解決手段】 算術平均粗さRaが0.5以上1.5(μm)程度の範囲となるように形成される凹凸10aを有する転写面10sを備える転写板10により、バンプ44Bの先端部が、1バンプ当たり5g以上の押圧力で加圧処理されるもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の端子に対し電気的接続を行う電極部を有する電極板の電極部の接続面を所定の表面粗さとなるように回復させることができる電極の回復処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用ICソケットまたはコネクタにおいては、一般に、配線用基板の電極に装着される半導体装置の端子が電気的に確実に接続されることが要望される。
【0003】
半導体装置の端子(電極)が電気的に接続される配線用基板における導体パターンの電気接点部、あるいは、導電路の端面が繰り返し使用される場合、その電気接点部、あるいは、導電路の端面は、その使用頻度に応じ回復することなく、凹凸のない略平坦な表面となるので接触面積が増大し、かつ、接触圧力が不十分となる虞がある。その結果、当初得られた確実な電気的な接続が、使用するにつれて得られなくなる場合がある。
【0004】
斯かる場合において、磨耗し平坦面となった電極板の電極部の接続面に対し所定の凹凸を形成する対策として、例えば、特許文献1にも示されるように、配線基板上のバンプの先端に転写板の表面を押し付け加熱する方法、または、配線基板上のバンプの先端に転写板の表面を押し付けながら相対的に摺動させる方法等の回復処理方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−56078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、上述のような配線基板上のバンプの先端に転写板の表面を押し付けながら相対的に摺動させる回復処理方法においては、処理のとき、バンプの削り屑が生じることにより、その屑が塵となり飛散する場合がある。このような場合、それが配線基板の導電路に付着することにより、電気的な短絡の原因ともなる虞がある。
【0007】
以上の問題点を考慮し、本発明は、半導体装置の端子に対し電気的接続を行う電極部を有する電極板の電極部の接続面を所定の表面粗さとなるように回復させることができる電極の回復処理方法であって、電極部の接続面の不所望な削り屑が生じることなく、しかも、回復処理が簡略化された方法で行うことができる電極の回復処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明に係る電極の回復処理方法は、絶縁基板上に形成される電極部を有し、半導体装置の端子部に対して該電極部の接続面を介して電気的接続を行う電極板における該電極部の接続面に、算術平均粗さRaが0.5μm以上1.5μm以下となるような凹凸が形成される転写面を有する転写板の転写面と接続面とが互いに接触するように該転写板を載置する第1の工程と、第1の工程において電極部の接続面に載置された転写板を所定の圧力で電極部の接続面に向けて押圧する第2の工程と、第2の工程における転写板の押圧後、転写板を電極板に対して離隔させ、電極部の接続面に所定の凹凸を得る第3の工程と、を含んでなる。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る電極の回復処理方法によれば、電極部の接続面に載置された転写板を所定の圧力で電極部の接続面に向けて押圧することにより、電極部の接続面に所定の凹凸が形成されるので電極部の接続面の不所望な削り屑が生じることなく、しかも、回復処理が簡略化された方法で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、本発明に係る電極の回復処理方法の一例が適用される接続用電極板を備えるキャリアユニットの構成を概略的に示す。
【0011】
キャリアユニット40は、図示が省略されるが、例えば、特許文献1にも示されるようなICソケットの収容部に着脱可能に配置されるものとされる。そのようなICソケットは、例えば、半導体装置の電気的特性試験、具体的にはバーンイン試験等に利用される。
【0012】
キャリアユニット40は、図2に示されるように、半導体装置としてのベアチップ60が収容される収容部46Aを有するキャリアハウジング46と、キャリアハウジング46の収容部46Aの底部を形成するベース部材42上に弾性シート58を介して配されるコンタクトシート44と、ベアチップ60の電極群をコンタクトシート44のバンプ44Bに対して押圧する押圧体56を含んでなる押圧用蓋52と、押圧用蓋52をキャリアハウジング46に選択的に保持するラッチ機構50とを含んで構成されている。
【0013】
押圧用蓋52は、ベアチップ60の上面に当接する押圧面56aを有する押圧体56と、押圧体56の基部を収容する蓋本体64と、押圧体56の基部の凹部と蓋本体64の比較的深い凹部との間の空間に配され押圧体56をベアチップ60に向けて付勢する複数のスプリング54とを含んで構成されている。
【0014】
略正方形のベアチップ60は、例えば、所定の電極群をコンタクトシート44のバンプ群に対向する下面に有している。
【0015】
押圧体56の基部は、蓋本体64の比較的浅く広い凹部内に移動可能に挿入されている。その押圧体56において挿入される部分の端部には、蓋本体64の下端に設けられる爪部に係合される爪部56nが相対向して複数個形成されている。これにより、押圧体56がスプリング54の付勢力で付勢された状態で蓋本体64に保持されることとなる。
【0016】
蓋本体64は、その対向する両端部にそれぞれ、ラッチ機構50のフック部材48Aおよび48Bが係合される突起部64pを有している。突起部64pは、押圧用蓋52の装着のとき、フック部材48Aおよび48Bの先端に係合しフック部材48Aおよび48Bを互いに離隔する方向に押圧する斜面部64psを有している。
【0017】
ラッチ機構50は、キャリアハウジング46の両端にそれぞれ、回動可能に支持され蓋本体64を保持するフック部材48Aおよび48Bと、フック部材48Aおよび48Bをそれぞれ、蓋本体64の突起部64pに係合させる方向に付勢するねじりコイルばね(不図示)と、フック部材48A、48B、およびねじりコイルばねを支持する支持軸(不図示)とを含んで構成されている。
【0018】
キャリアハウジング46の収容部46Aを形成する壁部は、押圧用蓋52が装着されるとき、蓋本体64の下部の外周部を案内する。
【0019】
コンタクトシート44は、図2および図3に示されるように、電気的に接続されるベアチップ60の電極群に対応した配列で複数のバンプ44Bを基材44M内に有している。
【0020】
なお、図3においては、バンプ44Bは、代表的に、拡大誇張され複数個、示されている。
【0021】
例えば、母材となる銅の表面がニッケルおよび金メッキ処理されて形成される各バンプ44Bの先端は、その基材44Mの表面から所定の高さだけ突出している。各バンプ44Bの根元の直径は、例えば、約60μmとされる。各バンプ44Bの硬度は、例えば、焼鈍後の硬さが20以上125(Hv)以下とされ、耐久性の観点から好ましくは、48、90、125(Hv)とされる。基材44Mは、例えば、ポリイミド樹脂材料で薄板状に作られ、約40μm程度の厚さを有している。
【0022】
各バンプ44Bの硬度が20以上125(Hv)以下の範囲とされるのは、本願の発明者による検証の結果に基づく以下のような理由からである。
【0023】
その実験は、そのバンプの硬度(焼鈍後の硬度)がそれぞれ48、90、125(Hv)であるコンタクトシートについて、1バンプ当たり5gf、または90gfの押圧力で複数個のバンプの先端を均等に加圧した後、その潰れたバンプの先端の径を測定するものとされる。
【0024】
そのコンタクトシートには、55個のバンプが縦横に所定の間隔で形成されている。潰される前のバンプの先端は、曲率半径約5.0(μm)の円弧により形成されている。また、バンプの根元の直径は、約60(μm)とされる。
【0025】
図13は、縦軸に押圧され潰れたバンプの先端径の値をとり、横軸に各硬度を有するバンプの種類(バンプB1、バンプB2、バンプB3)をとり、各押圧力における潰れたバンプの先端径の値の変化をあらわす特性線La、Lbを示す。バンプB1、バンプB2、バンプB3は、それぞれ、硬度48、90、125(Hv)を有する。
【0026】
特性線Laは、90gfの押圧力で各バンプB1、バンプB2、バンプB3を押圧したとき、その押圧後の先端の径の変化を示す。一方、特性線Lbは、5gfの押圧力で各バンプB1、バンプB2、バンプB3を押圧したとき、その押圧後の先端の径の変化を示す。
【0027】
特性線Laから明らかなように、バンプB1の場合、その直径は、約27.5以上42.5以下(μm)の範囲とされ、直径の平均値(55個のバンプの直径の平均値)は、約34μmとされる。また、バンプB2およびB3においては、それぞれ、その直径は、約24以上39以下(μm)、約22以上37以下(μm)の範囲とされる。直径の平均値は、それぞれ、約29、28μmとされる。従って、バンプB2およびB3においては、その直径の大きな変化が見られない。
【0028】
特性線Lbから明らかなように、バンプB1の場合、その直径は、約11以上22以下(μm)の範囲とされ、直径の平均値(55個のバンプの直径の平均値)は、約14μmとされる。また、バンプB2およびB3においては、それぞれ、その直径は、約9以上15以下(μm)、約8.3以上15以下(μm)の範囲とされる。直径の平均値は、それぞれ、約12.5、12μmとされる。従って、バンプB2およびB3においては、その直径の大きな変化が見られない。
【0029】
また、バンプの硬度が125(Hv)を超える場合、バンプの先端が潰れることによる複数のバンプの高さのばらつきが吸収される効果が期待できなくなり、従って、転写板の転写面に接触しないバンプがでる虞がある。さらに、バンプの硬度が20(Hv)未満の場合、図13において、直径の値は、特性線LaおよびLbにおける破線で示されるように推測されるのでバンプの耐久性が低下し、かつ、劣化する虞がある。
以上の理由からバンプの硬度が20以上125以下(Hv)に設定される。
【0030】
各バンプ44Bは、図3に示されるように、銅箔で作られる導体層44cを介してパッド44pに接続されている。パッド44pは、基材44Mにおいてベース部材42の両端部からそれぞれ、外部に向けて突出する両端部に形成されている。
【0031】
斯かる構成のキャリアユニット40が上述したICソケットの収容部に装着された状態で各ベアチップ60に対し所定の雰囲気で試験が実行されることとなる。
【0032】
そのような試験にあたり、上述のコンタクトシート44は、所定数の装着される新たなベアチップ60に対し繰り返し利用されることとなる。
【0033】
一枚のコンタクトシート44が所定数のベアチップ60に対し繰り返し利用された場合、図8(A)および(B)にそれぞれ、拡大されて示されるように、使用済みの各バンプ44B’の最先端部は、押し潰され、平坦面を有する略円錐台形状となる。従って、そのような各バンプ44B’の平滑な平坦面44fsは、微小な凹凸を有していないものとなる。
【0034】
これにより、一枚のコンタクトシート44が交換されることなく所定回数以上使用される場合、コンタクトシート44およびベアチップ60相互間の電気的接続が不確実となる虞がある。
【0035】
そこで、本発明に係る電極の回復処理方法の一例においては、予め、図9(A)に示されるような、所定の厚さを有する転写板10が用意される。その転写板10は、例えば、表面処理されたアルミナセラミックで所定の厚さの略正方形の板状に作られ、少なくとも一方側の転写面10sに、図9(B)に拡大されて示されるように、所定の粗さ、例えば、算術平均粗さRaが0.5以上1.5(μm)程度の範囲、好ましくは、0.97μm程度となるように形成された凹凸10aを有している。なお、その凹凸10aの表面粗さは、例えば、最大高さRmax、または十点平均粗さRzで設定されるならば、最大高さRmaxが0.5以上12以下(μm)であり、十点平均粗さRzが0.5以上8以下(μm)(JIS規格:JISB0601−1982)となるように設定される。なお、転写板10の材質は、斯かる例に限られることなく、他の金属材料であっても良い。
【0036】
次に、後述するように、転写板10の転写面10sがコンタクトシート44のバンプ44B’に対し所定の圧力で押し付けられることとなる。
【0037】
転写板10を押し付けるにあたり、転写板10は、例えば、図5および図7に示されるような、後述する転写板固定ヘッドの固定面に固定される。
【0038】
転写板固定ヘッドに固定された転写板10は、その転写面10sが図9(A)に示されるように、各バンプ44B’の摩耗した平坦面44fsに接触するように複数の平坦面44fsにより形成される共通平面上に載置される。従って、転写板10は、複数のバンプ44B’の平坦面44fsにより支持されることとなる。
【0039】
その際、後述する押圧装置(図4参照)により、転写板固定ヘッドおよび転写板10は図9(A)に示される矢印Fの示す方向に沿って所定の圧力で所定期間、例えば、1秒間加圧された後、接触した状態で1秒間保持される。この加圧が2回繰り返される。なお、その1回目の加圧後、転写板10は、一旦、バンプ44Bの先端部に対し離隔される。
【0040】
その加圧力は、例えば、1個のバンプ44Bあたり約5g以上100g以下の範囲に設定されている。加圧力が1個のバンプ44Bあたり約5g未満の場合、例えば、55個のバンプ44Bの全体を均等に押圧することが困難であることが、後述する本願の発明者の実験による検証により確認されたのでその加圧力は、例えば、1個のバンプ44Bあたり約5g以上とされる。なお、その押圧力の範囲は、隣接する各バンプ44Bの相互間距離のばらつきが4μm未満となる場合において、適用される。
【0041】
上述の実験は、複数個のバンプ44B、例えば、55個のバンプ44Bの上端に、アルミニウム製の配線網が形成された導体板(シリコンチップ)が転写板の代わりに載置されるもとで、その導体板を介してバンプ44Bに作用される荷重を変化させながら各バンプ44Bと導体板との間の接触抵抗値を測定することにより、行われる。従って、この実験により得られた結果に基づいて導体板の表面の略全体がすべてのバンプ44Bに均等に接触可能となる荷重の値が判断されることとなる。
図1は、上述の実験により得られた結果を示し、縦軸に各バンプ44Bと所定の導体板との間の接触抵抗値(mΩ)をとり、横軸に押圧荷重(g)をとり、実験により得られた接触抵抗値の荷重に応じた変化をあらわす各特性線を示す。
【0042】
特性線Lmaxは、所定の各荷重における接触抵抗値の最大値をあらわす特性線である。特性線Lminは、所定の各荷重における接触抵抗値の最小値をあらわす特性線である。特性線Laは、所定の各荷重における接触抵抗値の平均値をあらわす特性線である。
【0043】
各特性線Lmax、Lmin、およびLaから明らかなように、接触抵抗値は、作用される荷重が1個のバンプ44Bあたり5(g)より小さい範囲では安定した小さな値とならないのに対し、一方、作用される荷重が1個のバンプ44Bあたり5(g)以上となるとき、所定の値近傍に安定した値となる。従って、転写板10に作用される押圧荷重は、上述のように、1個のバンプ44Bあたり5(g)以上に設定される。
【0044】
一方、押圧荷重が比較的大となるにつれて、バンプの先端の直径が大となる傾向があり、また、バンプの先端の直径は、電気的に接続される半導体装置のパッドの大きさ(例えば、100μm程度)よりも小または等しい必要がある。
【0045】
本願の発明者は、その押圧荷重と潰れたバンプの先端の直径との関係についての検証を行ない、これにより、図14および図15に示されるような実験結果が得られた。
【0046】
図14は、縦軸に押圧後のパンプの先端の直径をとり、横軸に1バンプ当たりの押圧荷重をとり、上述した各バンプB1、B2、B3についてのバンプの先端の直径の変化をあらわす特性線Ld1,Ld2,および、Ld3を示す。なお、押圧荷重は、各種の55個のバンプに対し均等に加えられた。
【0047】
特性線Ld1,Ld2,および、Ld3から明らかなように、押圧荷重が増大するにつれて、その先端の直径が大となる傾向がある。また、バンプの硬度が比較的小である場合(特性線Ld1)、押圧荷重が90gであるとき、最大の直径が約42.5μm程度となる。
【0048】
図15は、縦軸に押圧後のパンプの先端の直径をとり、横軸に押圧の繰り返し数(1回、10回)をとり、上述した各バンプB1、B2、B3についてのバンプの先端の直径の変化をあらわす特性線Lr1,Lr2,および、Lr3を示す。特性線Lr1,Lr2,および、Lr3は、それぞれ、押圧荷重が1バンプあたり90gであるとき、押圧後のパンプの先端の直径の繰り返し数に応じた変化を示す。
【0049】
特性線Lr1,Lr2,および、Lr3からも明らかなように、繰り返し数が1回よりも10回の場合の方が、バンプの先端の直径がより大となる傾向がある。
【0050】
特に、バンプの硬度が比較的小である場合(特性線Lr1)、1回押圧されたとき、パンプの先端の最大直径は、約42μm程度とされ、また、10回押圧されたとき、パンプの先端の最大直径は、約51μm程度とされる。
【0051】
従って、以上の結果と、バンプ自体の位置精度、バンプの先端と半導体装置のパッドとの位置合わせ精度、および、繰り返し数に応じたバンプの先端の直径の拡大傾向とをさらに考慮した場合、押圧荷重は、上述したように、1バンプ当たり100g以下とされる。
【0052】
図9(B)は、転写面10sが平坦面44fsに接触し加圧された直後のバンプ44B’の先端部の状態を拡大して示す。これにより、図10(B)から明らかなように、バンプ44B’の先端部は転写板10の凹凸10aにより押圧され、比較的粗い凹凸44psがバンプ44B’の先端部に形成されることとなる。
【0053】
図7において、上述の転写板固定ヘッドは、転写板10の転写面10sに対向する面が固定される固定面12aを有する押圧体12と、押圧体12の基部を収容する凹部を有する固定ヘッド本体14と、押圧体12の基部の凹部と固定ヘッド本体14の比較的深い凹部との間の各空間にそれぞれ配され転写板10をコンタクトシート44のバンプ44Bに向けて付勢する複数のスプリング16とを含んで構成されている。なお、図7は、押圧用蓋が取り外された状態のキャリアユニット40の一部の構成要素が後述するキャリアユニットステージ内に保持された状態を示す。
【0054】
押圧体12の基部は、固定ヘッド本体14の比較的浅く広い凹部内に移動可能に挿入されている。その押圧体12が挿入される部分の端部には、固定ヘッド本体14の下端に設けられる爪部に係合される爪部12nが相対向して複数個形成されている。これにより、押圧体12が複数のスプリング16の付勢力で付勢された状態で固定ヘッド本体14に保持されることとなる。
【0055】
転写板10の一方の面は、上述の固定面12aに対し接着または締結具により固定されている。なお、転写板10は、斯かる例に限られることなく、押圧体12と一体に形成されてもよい。また、押圧体12は、複数のスプリング16が介在されることなく、例えば、固定ヘッド本体14と一体に形成されてもよい。固定ヘッド本体14の上部の略中央部には、後述する押圧装置におけるロードセルの雄ねじ部がはめ合わされる雌ねじ部14sが設けられている。
【0056】
一方、キャリアユニット40の押圧用蓋(不図示)は、ベアチップ60に対し試験が実行されるとき、キャリアハウジング46にそのラッチ機構50(図2参照)により保持される。
【0057】
キャリアユニットステージ106は、図5および図7に示されるように、コンタクトシート44のバンプ44Bの回復処理にあたり、キャリアハウジング46を一時的に収容する収容部106Aを有している。上方に向けて開口する収容部106Aの内周部は、ベース部材42の収容部106Aに対する相対位置を規制するためにベース部材42の端部に係合するように形成されている。
【0058】
収容部106Aの周縁部には、キャリアユニット40のキャリアハウジング46を収容部106A内に着脱可能に保持する一対のラッチ機構が相対向して設けられている。そのラッチ機構は、キャリアユニットステージ106における収容部106Aを形成する壁部にそれぞれ、支持軸108により回動可能に支持されキャリアハウジング46の収容部46Aを形成する壁部の上端部を保持するフック部材112と、フック部材112の一端をそれぞれ、収容部46Aの壁部の上端部に係合させる方向に付勢するコイルスプリング114と、を含んで構成されている。
【0059】
フック部材112は、キャリアユニット40のキャリアハウジング46だけが収容部106A内に装着されるとき、または、収容部106Aから取り外されるとき、図5に二点鎖線で示されるように、その一端がコイルスプリング114の付勢力に抗して収容部106A内から離隔するように回動される。一方、フック部材112の一端は、キャリアハウジング116が収容部106A内に保持されるとき、コイルスプリング114の付勢力によりキャリアハウジング46の収容部46Aの壁部の上端部に当接される。
【0060】
上述の転写板固定ヘッドは、バンプが摩耗したコンタクトシート44について回復処理が行なわれるとき、図7に示されるように、キャリアユニットステージ106に配されたキャリアユニット40におけるキャリアハウジング46の収容部46A内に配置される。
【0061】
図4は、上述の回復処理における加圧工程において使用される押圧装置の全体構成を概略的に示す。
【0062】
押圧装置150は、ベース部材120上に配されコンタクトシート44が収容されるキャリアハウジング46を保持するキャリアユニットステージ106を固定する基台122と、転写板固定ヘッドを保持し所定の圧力を転写板10を介してコンタクトシート44のバンプ44Bに作用させる加圧機構部と、を含んで構成されている。
【0063】
ベース部材120は、図4における矢印Xの示す方向に沿って形成され基台122を支持する平坦部と、平坦部に対し略垂直に矢印Zの示す方向に広がり延在する倒立面部とからなる。キャリアユニットステージ106は、図示が省略される締結部材、例えば、ねじ部材等により基台122の平坦面に対し固定されている。
【0064】
加圧機構部は、転写板固定ヘッドを介してバンプ44Bに対する押圧力を検出するロードセル138と、ロードセル138を保持するとともに押圧力を転写板固定ヘッドに伝達するZ軸方向ステージ部材140と、Z軸方向ステージ部材140にはめ合わされ移動可能に支持するボールネジ部材142と、ボールネジ部材142を回動させる駆動モータ166とを含んで構成されている。
【0065】
ボールネジ部材142の両端部は、それぞれ、そのベース部材120の倒立面部に所定の間隔をもって設けられる一対のブラケット部に回動可能に支持されている。ボールネジ部材142の一方の端部は、減速機構166GHを介して倒立面部に固定される駆動モータ166の出力軸に連結されている。駆動モータ166は、例えば、リニアモータ、ステッピングモータ、サーボモータ等が用いられても良い。
【0066】
Z軸方向ステージ部材140は、ナットを介してボールネジ部材142がその軸線に対し略垂直となるように嵌め合わされており、かつ、自転しないようにガイドレール144により案内されている。
【0067】
ロードセル138は、内部のセンサ部に連結される雄ねじ部138sが転写板固定ヘッドの雌ねじ部14sにねじ込まれることにより、固定ヘッド本体14に連結されている。ロードセル138は、Z軸方向ステージ部材140の転写板固定ヘッドに対する押圧力を検出し押圧力をあらわす検出信号Spを制御ユニット100に送出する。
【0068】
制御ユニット100には、図示が省略される生産管理用のホストコンピュータからの回復処理開始指令信号Ss、および、上述のロードセル138からの検出信号Spが供給される。
【0069】
また、制御ユニット100は、コンタクトシート44に応じて設定される転写板固定ヘッドに対する押圧力の設定値、一連の回復処理を実行するためのプログラムデータ等が格納されるメモリ部100Mを内部に備えている。
【0070】
その押圧力の値は、バンプ44Bの大きさに応じて設定され、例えば、上述したように、1つの電極(バンプ)あたり約5g以上100g以下の範囲とされる。
【0071】
本発明に係る電極の回復処理方法の一例による回復処理にあたり、先ず、図4に示されるように、バンプが摩耗したコンタクトシート44が配置されるキャリアハウジング46が取付けられたキャリアユニットステージ106が、基台122の平坦面に保持される。
【0072】
次に、制御ユニット100は、回復処理開始指令信号Ssおよびメモリ部100M内のデータに基づいて押圧力を設定する。
【0073】
その際、制御ユニット100は、検出信号Spおよびメモリ部100M内の押圧力の設定値のデータに基づいてその押圧力に応じたZ軸ステージ140の移動量を設定する。
【0074】
制御ユニット100は、先ず、1回目の転写板10の押圧を行うべく、設定された移動量に応じてパルス制御信号Czを形成しモータ駆動回路102に供給する。モータ駆動回路102は、パルス制御信号Czに基づいて駆動信号を所定期間例えば、1秒間押圧した後、1秒間保持するように駆動モータ166に供給するものとされる。
【0075】
次に、制御ユニット100は、押圧力を一旦、解除し、転写板10をバンプ44Bに対し離隔させるべく、パルス制御信号Czを形成しモータ駆動回路102に供給する。
【0076】
続いて、制御ユニット100は、2回目の転写板10の押圧を行うべく、設定された移動量に応じてパルス制御信号Czを形成しモータ駆動回路102に供給する。モータ駆動回路102は、パルス制御信号Czに基づいて駆動信号を所定期間例えば、1秒間押圧した後、1秒間保持するように駆動モータ166に供給するものとされる。
【0077】
これにより、転写板10の2回目の押圧の工程が完了することにより、コンタクトシートのバンプ44Bに対する回復処理が終了することとなる。
【0078】
そして、回復処理されたコンタクトシートが収容されるキャリアハウジング46は、キャリアユニットステージ106から取り外される。
【0079】
取り外されたキャリアハウジング46は、ベアチップ60および押圧用蓋が装着された後、キャリアユニットとしてICソケットの収容部に装着されることとなる。
【0080】
従って、図10(B)に示されるように、転写板10における転写面10sの微小な凹凸10aの押圧に対応した比較的微細な凹凸がバンプ44B’の摩耗した端部に形成されることとなる。
【0081】
本願の発明者による実験によれば、バンプ44B’の凹凸は、例えば、上述したバンプB3について1バンプあたり押圧荷重5gで1回押圧された場合、凹凸の間隔が約2.60μm、凹凸の深さが約1.120μm程度となる。さらに他の一例として、本願の発明者による実験によれば、上述のバンプB1について1バンプあたり押圧荷重90gで10回押圧された場合、凹凸の間隔が約1.30μm、凹凸の深さが約1.0μm程度となる。
【0082】
即ち、本実施例は、一連の回復処理における制御が容易であり、かつ、比較的短期間で処理でき、その結果、より量産性に適している。しかも、不所望な電極部の接続面の削り屑が飛散する虞もない。
【0083】
なお、上述の例においては、転写板10による加圧が2回繰り返されているが、斯かる例に限られることなく、バンプの硬度に応じて押圧力をさらに高めることにより、1回の加圧だけで行われても良い。
【0084】
図11は、上述の回復処理が行われたバンプ44B’を有するコンタクトシートSa1、およびSa2と比較例としての回復処理が行われていないバンプを有するコンタクトシートCsa1およびCsa2との電気的特性の相違を示す特性図である。
【0085】
図11は、縦軸に抵抗値(mΩ)をとり、横軸に回復処理に供される転写板に作用される荷重(g)をとり、コンタクトシートにおいて隣接する二つのバンプが所定の導体板を介して接続された状態で所定の電流が供給されるもとでその接続端で測定された各抵抗値を示す。各抵抗値は、所定の抵抗測定器(HELETT PACKARD社製 4338A MILLIOHM METER)により測定された結果である。
【0086】
本実験においては、表面粗さ(算術平均粗さ)Raが0.97μmである転写面10sを有するアルミナセラミック製の転写板が使用された。同様に回復処理されたコンタクトシートSa1、およびSa2のバンプの構造および材質は、互いに同一とされる。各コンタクトシートSa1、およびSa2のバンプの硬度は、48(Hv)とされる。また、比較例としてのコンタクトシートCsa1およびCsa2のバンプの構造および材質は、互いに同一とされるとともに、上述のコンタクトシートSa1、およびSa2のバンプの構造および材質とも同一とされる。
【0087】
図11に示される特性図から明らかなように、転写板に作用される荷重が8g、10g、12g、14gである場合、回復処理されたコンタクトシートSa1における抵抗値は、それぞれ、294.0以上1509以下(mΩ)、310以上942以下(mΩ)、227以上667以下(mΩ)、209以上872以下(mΩ)の範囲とされる。また、回復処理されたコンタクトシートSa2における抵抗値は、それぞれ、216以上1492以下(mΩ)、226以上515以下(mΩ)、247以上505以下(mΩ)、238以上412以下(mΩ)の範囲とされる。
【0088】
一方、回復処理が行われていない比較例としてのコンタクトシートCSa1およびCSa2においては、それぞれ、2554以上3065以下(mΩ)、735以上3449以下(mΩ)の範囲とされる。
【0089】
従って、図11に示される結果から明らかなように、回復処理されたコンタクトシートSa1、Sa2の抵抗値は、それぞれ、比較例としてコンタクトシートCSa1およびCSa2の最大の抵抗値に比べてかなり小なる値なので回復処理されたコンタクトシートSa1、Sa2のバンプの方が、確実な電気的な接続が得られることが実証された。
【0090】
図12は、縦軸に抵抗値(mΩ)をとり、横軸に転写板の転写面における各算術平均粗さRaの値をとり、回復処理前、および、回復処理後における各コンタクトシートにおいて隣接する二つのバンプが所定の導体板を介して接続された状態で所定の電流が供給されるもとでその接続端で測定された各抵抗値を示す。各抵抗値は、所定の抵抗測定器(HELETT PACKARD社製 4338A MILLIOHM METER)により測定された結果である。
【0091】
図12に示される実験結果は、本願の発明者により行われた実験により、得られたものである。その実験においては、各算術平均粗さ0.60,0.83,0.95,1.13,1.28,1.43で形成された転写面をそれぞれ有する転写板により、所定の押圧力、例えば、18gで上述のように、押圧動作が6個のコンタクトシートのバンプに対し個別に、2回繰り返された後、抵抗値が測定された。
【0092】
図12に示されるように、例えば、算術平均粗さ0.60の転写面を有する転写板により、回復処理された場合、抵抗値(mΩ)は、502以上2650以下の範囲とされる。
【0093】
一方、回復処理されていない場合、抵抗値(mΩ)は、680以上8525以下の範囲とされる。
【0094】
また、例えば、算術平均粗さ1.43の転写面を有する転写板により、回復処理された場合、そのコンタクトシートの抵抗値(mΩ)は、625以上1219以下の範囲とされる。一方、回復処理されていない場合、そのコンタクトシートの抵抗値(mΩ)は、683以上1650以下の範囲とされる。
【0095】
従って、図12に示される実験結果から明らかなように、転写板の転写面の算術平均粗さRaが、約0.60以上1.43以下の範囲の場合において、転写板により回復処理が行われることにより、各抵抗値が回復処理されていない場合に比べて小となり、従って、回復処理されたコンタクトシートの方が、回復処理されないコンタクトシートに比べて確実な電気的な接続が得られるという効果が実証された。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る電極の回復処理方法の一例において導体板および電極に対する押圧力と接触抵抗値との関係を示す特性図である。
【図2】本発明に係る電極の回復処理方法の一例が適用されるキャリアユニットの構成を示す断面図である。
【図3】図2に示される例における平面図である。
【図4】本発明に係る電極の回復処理方法の一例において使用される押圧装置の全体構成を概略的に示す構成図である。
【図5】図4に示される押圧装置において使用されるキャリアユニットステージの構成を転写板固定ヘッドとともに分解して示す断面図である。
【図6】転写板固定ヘッドが装着された状態で図5に示されるキャリアユニットステージを示す平面図である。
【図7】図4に示される押圧装置において使用されるキャリアユニットステージの構成を転写板固定ヘッドとともに示す断面図である。
【図8】(A)、(B)は、それぞれ、本発明に係る電極の回復処理方法の一例に供されるバンプおよびその先端部を拡大して示す部分断面図である。
【図9】(A)および(B)は、それぞれ、本発明に係る電極の回復処理方法の一例における工程の説明に供される部分断面図である。
【図10】(A)および(B)は、それぞれ、本発明に係る電極の回復処理方法の一例における工程の説明に供される部分断面図である。
【図11】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの電気的特性と比較例の電気的特性とを対比して示す特性図である。
【図12】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの電気的特性と転写板の転写面の表面粗さとの関係を示す特性図である。
【図13】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの直径とバンプの種類との関係を示す特性図である。
【図14】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの直径と押圧荷重との関係を示す特性図である。
【図15】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの直径と押圧回数との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0097】
10 転写板
40 キャリアユニット
44 コンタクトシート
44B バンプ
60 ベアチップ
150 押圧装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の端子に対し電気的接続を行う電極部を有する電極板の電極部の接続面を所定の表面粗さとなるように回復させることができる電極の回復処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用ICソケットまたはコネクタにおいては、一般に、配線用基板の電極に装着される半導体装置の端子が電気的に確実に接続されることが要望される。
【0003】
半導体装置の端子(電極)が電気的に接続される配線用基板における導体パターンの電気接点部、あるいは、導電路の端面が繰り返し使用される場合、その電気接点部、あるいは、導電路の端面は、その使用頻度に応じ回復することなく、凹凸のない略平坦な表面となるので接触面積が増大し、かつ、接触圧力が不十分となる虞がある。その結果、当初得られた確実な電気的な接続が、使用するにつれて得られなくなる場合がある。
【0004】
斯かる場合において、磨耗し平坦面となった電極板の電極部の接続面に対し所定の凹凸を形成する対策として、例えば、特許文献1にも示されるように、配線基板上のバンプの先端に転写板の表面を押し付け加熱する方法、または、配線基板上のバンプの先端に転写板の表面を押し付けながら相対的に摺動させる方法等の回復処理方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−56078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、上述のような配線基板上のバンプの先端に転写板の表面を押し付けながら相対的に摺動させる回復処理方法においては、処理のとき、バンプの削り屑が生じることにより、その屑が塵となり飛散する場合がある。このような場合、それが配線基板の導電路に付着することにより、電気的な短絡の原因ともなる虞がある。
【0007】
以上の問題点を考慮し、本発明は、半導体装置の端子に対し電気的接続を行う電極部を有する電極板の電極部の接続面を所定の表面粗さとなるように回復させることができる電極の回復処理方法であって、電極部の接続面の不所望な削り屑が生じることなく、しかも、回復処理が簡略化された方法で行うことができる電極の回復処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明に係る電極の回復処理方法は、絶縁基板上に形成される電極部を有し、半導体装置の端子部に対して該電極部の接続面を介して電気的接続を行う電極板における該電極部の接続面に、算術平均粗さRaが0.5μm以上1.5μm以下となるような凹凸が形成される転写面を有する転写板の転写面と接続面とが互いに接触するように該転写板を載置する第1の工程と、第1の工程において電極部の接続面に載置された転写板を所定の圧力で電極部の接続面に向けて押圧する第2の工程と、第2の工程における転写板の押圧後、転写板を電極板に対して離隔させ、電極部の接続面に所定の凹凸を得る第3の工程と、を含んでなる。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る電極の回復処理方法によれば、電極部の接続面に載置された転写板を所定の圧力で電極部の接続面に向けて押圧することにより、電極部の接続面に所定の凹凸が形成されるので電極部の接続面の不所望な削り屑が生じることなく、しかも、回復処理が簡略化された方法で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、本発明に係る電極の回復処理方法の一例が適用される接続用電極板を備えるキャリアユニットの構成を概略的に示す。
【0011】
キャリアユニット40は、図示が省略されるが、例えば、特許文献1にも示されるようなICソケットの収容部に着脱可能に配置されるものとされる。そのようなICソケットは、例えば、半導体装置の電気的特性試験、具体的にはバーンイン試験等に利用される。
【0012】
キャリアユニット40は、図2に示されるように、半導体装置としてのベアチップ60が収容される収容部46Aを有するキャリアハウジング46と、キャリアハウジング46の収容部46Aの底部を形成するベース部材42上に弾性シート58を介して配されるコンタクトシート44と、ベアチップ60の電極群をコンタクトシート44のバンプ44Bに対して押圧する押圧体56を含んでなる押圧用蓋52と、押圧用蓋52をキャリアハウジング46に選択的に保持するラッチ機構50とを含んで構成されている。
【0013】
押圧用蓋52は、ベアチップ60の上面に当接する押圧面56aを有する押圧体56と、押圧体56の基部を収容する蓋本体64と、押圧体56の基部の凹部と蓋本体64の比較的深い凹部との間の空間に配され押圧体56をベアチップ60に向けて付勢する複数のスプリング54とを含んで構成されている。
【0014】
略正方形のベアチップ60は、例えば、所定の電極群をコンタクトシート44のバンプ群に対向する下面に有している。
【0015】
押圧体56の基部は、蓋本体64の比較的浅く広い凹部内に移動可能に挿入されている。その押圧体56において挿入される部分の端部には、蓋本体64の下端に設けられる爪部に係合される爪部56nが相対向して複数個形成されている。これにより、押圧体56がスプリング54の付勢力で付勢された状態で蓋本体64に保持されることとなる。
【0016】
蓋本体64は、その対向する両端部にそれぞれ、ラッチ機構50のフック部材48Aおよび48Bが係合される突起部64pを有している。突起部64pは、押圧用蓋52の装着のとき、フック部材48Aおよび48Bの先端に係合しフック部材48Aおよび48Bを互いに離隔する方向に押圧する斜面部64psを有している。
【0017】
ラッチ機構50は、キャリアハウジング46の両端にそれぞれ、回動可能に支持され蓋本体64を保持するフック部材48Aおよび48Bと、フック部材48Aおよび48Bをそれぞれ、蓋本体64の突起部64pに係合させる方向に付勢するねじりコイルばね(不図示)と、フック部材48A、48B、およびねじりコイルばねを支持する支持軸(不図示)とを含んで構成されている。
【0018】
キャリアハウジング46の収容部46Aを形成する壁部は、押圧用蓋52が装着されるとき、蓋本体64の下部の外周部を案内する。
【0019】
コンタクトシート44は、図2および図3に示されるように、電気的に接続されるベアチップ60の電極群に対応した配列で複数のバンプ44Bを基材44M内に有している。
【0020】
なお、図3においては、バンプ44Bは、代表的に、拡大誇張され複数個、示されている。
【0021】
例えば、母材となる銅の表面がニッケルおよび金メッキ処理されて形成される各バンプ44Bの先端は、その基材44Mの表面から所定の高さだけ突出している。各バンプ44Bの根元の直径は、例えば、約60μmとされる。各バンプ44Bの硬度は、例えば、焼鈍後の硬さが20以上125(Hv)以下とされ、耐久性の観点から好ましくは、48、90、125(Hv)とされる。基材44Mは、例えば、ポリイミド樹脂材料で薄板状に作られ、約40μm程度の厚さを有している。
【0022】
各バンプ44Bの硬度が20以上125(Hv)以下の範囲とされるのは、本願の発明者による検証の結果に基づく以下のような理由からである。
【0023】
その実験は、そのバンプの硬度(焼鈍後の硬度)がそれぞれ48、90、125(Hv)であるコンタクトシートについて、1バンプ当たり5gf、または90gfの押圧力で複数個のバンプの先端を均等に加圧した後、その潰れたバンプの先端の径を測定するものとされる。
【0024】
そのコンタクトシートには、55個のバンプが縦横に所定の間隔で形成されている。潰される前のバンプの先端は、曲率半径約5.0(μm)の円弧により形成されている。また、バンプの根元の直径は、約60(μm)とされる。
【0025】
図13は、縦軸に押圧され潰れたバンプの先端径の値をとり、横軸に各硬度を有するバンプの種類(バンプB1、バンプB2、バンプB3)をとり、各押圧力における潰れたバンプの先端径の値の変化をあらわす特性線La、Lbを示す。バンプB1、バンプB2、バンプB3は、それぞれ、硬度48、90、125(Hv)を有する。
【0026】
特性線Laは、90gfの押圧力で各バンプB1、バンプB2、バンプB3を押圧したとき、その押圧後の先端の径の変化を示す。一方、特性線Lbは、5gfの押圧力で各バンプB1、バンプB2、バンプB3を押圧したとき、その押圧後の先端の径の変化を示す。
【0027】
特性線Laから明らかなように、バンプB1の場合、その直径は、約27.5以上42.5以下(μm)の範囲とされ、直径の平均値(55個のバンプの直径の平均値)は、約34μmとされる。また、バンプB2およびB3においては、それぞれ、その直径は、約24以上39以下(μm)、約22以上37以下(μm)の範囲とされる。直径の平均値は、それぞれ、約29、28μmとされる。従って、バンプB2およびB3においては、その直径の大きな変化が見られない。
【0028】
特性線Lbから明らかなように、バンプB1の場合、その直径は、約11以上22以下(μm)の範囲とされ、直径の平均値(55個のバンプの直径の平均値)は、約14μmとされる。また、バンプB2およびB3においては、それぞれ、その直径は、約9以上15以下(μm)、約8.3以上15以下(μm)の範囲とされる。直径の平均値は、それぞれ、約12.5、12μmとされる。従って、バンプB2およびB3においては、その直径の大きな変化が見られない。
【0029】
また、バンプの硬度が125(Hv)を超える場合、バンプの先端が潰れることによる複数のバンプの高さのばらつきが吸収される効果が期待できなくなり、従って、転写板の転写面に接触しないバンプがでる虞がある。さらに、バンプの硬度が20(Hv)未満の場合、図13において、直径の値は、特性線LaおよびLbにおける破線で示されるように推測されるのでバンプの耐久性が低下し、かつ、劣化する虞がある。
以上の理由からバンプの硬度が20以上125以下(Hv)に設定される。
【0030】
各バンプ44Bは、図3に示されるように、銅箔で作られる導体層44cを介してパッド44pに接続されている。パッド44pは、基材44Mにおいてベース部材42の両端部からそれぞれ、外部に向けて突出する両端部に形成されている。
【0031】
斯かる構成のキャリアユニット40が上述したICソケットの収容部に装着された状態で各ベアチップ60に対し所定の雰囲気で試験が実行されることとなる。
【0032】
そのような試験にあたり、上述のコンタクトシート44は、所定数の装着される新たなベアチップ60に対し繰り返し利用されることとなる。
【0033】
一枚のコンタクトシート44が所定数のベアチップ60に対し繰り返し利用された場合、図8(A)および(B)にそれぞれ、拡大されて示されるように、使用済みの各バンプ44B’の最先端部は、押し潰され、平坦面を有する略円錐台形状となる。従って、そのような各バンプ44B’の平滑な平坦面44fsは、微小な凹凸を有していないものとなる。
【0034】
これにより、一枚のコンタクトシート44が交換されることなく所定回数以上使用される場合、コンタクトシート44およびベアチップ60相互間の電気的接続が不確実となる虞がある。
【0035】
そこで、本発明に係る電極の回復処理方法の一例においては、予め、図9(A)に示されるような、所定の厚さを有する転写板10が用意される。その転写板10は、例えば、表面処理されたアルミナセラミックで所定の厚さの略正方形の板状に作られ、少なくとも一方側の転写面10sに、図9(B)に拡大されて示されるように、所定の粗さ、例えば、算術平均粗さRaが0.5以上1.5(μm)程度の範囲、好ましくは、0.97μm程度となるように形成された凹凸10aを有している。なお、その凹凸10aの表面粗さは、例えば、最大高さRmax、または十点平均粗さRzで設定されるならば、最大高さRmaxが0.5以上12以下(μm)であり、十点平均粗さRzが0.5以上8以下(μm)(JIS規格:JISB0601−1982)となるように設定される。なお、転写板10の材質は、斯かる例に限られることなく、他の金属材料であっても良い。
【0036】
次に、後述するように、転写板10の転写面10sがコンタクトシート44のバンプ44B’に対し所定の圧力で押し付けられることとなる。
【0037】
転写板10を押し付けるにあたり、転写板10は、例えば、図5および図7に示されるような、後述する転写板固定ヘッドの固定面に固定される。
【0038】
転写板固定ヘッドに固定された転写板10は、その転写面10sが図9(A)に示されるように、各バンプ44B’の摩耗した平坦面44fsに接触するように複数の平坦面44fsにより形成される共通平面上に載置される。従って、転写板10は、複数のバンプ44B’の平坦面44fsにより支持されることとなる。
【0039】
その際、後述する押圧装置(図4参照)により、転写板固定ヘッドおよび転写板10は図9(A)に示される矢印Fの示す方向に沿って所定の圧力で所定期間、例えば、1秒間加圧された後、接触した状態で1秒間保持される。この加圧が2回繰り返される。なお、その1回目の加圧後、転写板10は、一旦、バンプ44Bの先端部に対し離隔される。
【0040】
その加圧力は、例えば、1個のバンプ44Bあたり約5g以上100g以下の範囲に設定されている。加圧力が1個のバンプ44Bあたり約5g未満の場合、例えば、55個のバンプ44Bの全体を均等に押圧することが困難であることが、後述する本願の発明者の実験による検証により確認されたのでその加圧力は、例えば、1個のバンプ44Bあたり約5g以上とされる。なお、その押圧力の範囲は、隣接する各バンプ44Bの相互間距離のばらつきが4μm未満となる場合において、適用される。
【0041】
上述の実験は、複数個のバンプ44B、例えば、55個のバンプ44Bの上端に、アルミニウム製の配線網が形成された導体板(シリコンチップ)が転写板の代わりに載置されるもとで、その導体板を介してバンプ44Bに作用される荷重を変化させながら各バンプ44Bと導体板との間の接触抵抗値を測定することにより、行われる。従って、この実験により得られた結果に基づいて導体板の表面の略全体がすべてのバンプ44Bに均等に接触可能となる荷重の値が判断されることとなる。
図1は、上述の実験により得られた結果を示し、縦軸に各バンプ44Bと所定の導体板との間の接触抵抗値(mΩ)をとり、横軸に押圧荷重(g)をとり、実験により得られた接触抵抗値の荷重に応じた変化をあらわす各特性線を示す。
【0042】
特性線Lmaxは、所定の各荷重における接触抵抗値の最大値をあらわす特性線である。特性線Lminは、所定の各荷重における接触抵抗値の最小値をあらわす特性線である。特性線Laは、所定の各荷重における接触抵抗値の平均値をあらわす特性線である。
【0043】
各特性線Lmax、Lmin、およびLaから明らかなように、接触抵抗値は、作用される荷重が1個のバンプ44Bあたり5(g)より小さい範囲では安定した小さな値とならないのに対し、一方、作用される荷重が1個のバンプ44Bあたり5(g)以上となるとき、所定の値近傍に安定した値となる。従って、転写板10に作用される押圧荷重は、上述のように、1個のバンプ44Bあたり5(g)以上に設定される。
【0044】
一方、押圧荷重が比較的大となるにつれて、バンプの先端の直径が大となる傾向があり、また、バンプの先端の直径は、電気的に接続される半導体装置のパッドの大きさ(例えば、100μm程度)よりも小または等しい必要がある。
【0045】
本願の発明者は、その押圧荷重と潰れたバンプの先端の直径との関係についての検証を行ない、これにより、図14および図15に示されるような実験結果が得られた。
【0046】
図14は、縦軸に押圧後のパンプの先端の直径をとり、横軸に1バンプ当たりの押圧荷重をとり、上述した各バンプB1、B2、B3についてのバンプの先端の直径の変化をあらわす特性線Ld1,Ld2,および、Ld3を示す。なお、押圧荷重は、各種の55個のバンプに対し均等に加えられた。
【0047】
特性線Ld1,Ld2,および、Ld3から明らかなように、押圧荷重が増大するにつれて、その先端の直径が大となる傾向がある。また、バンプの硬度が比較的小である場合(特性線Ld1)、押圧荷重が90gであるとき、最大の直径が約42.5μm程度となる。
【0048】
図15は、縦軸に押圧後のパンプの先端の直径をとり、横軸に押圧の繰り返し数(1回、10回)をとり、上述した各バンプB1、B2、B3についてのバンプの先端の直径の変化をあらわす特性線Lr1,Lr2,および、Lr3を示す。特性線Lr1,Lr2,および、Lr3は、それぞれ、押圧荷重が1バンプあたり90gであるとき、押圧後のパンプの先端の直径の繰り返し数に応じた変化を示す。
【0049】
特性線Lr1,Lr2,および、Lr3からも明らかなように、繰り返し数が1回よりも10回の場合の方が、バンプの先端の直径がより大となる傾向がある。
【0050】
特に、バンプの硬度が比較的小である場合(特性線Lr1)、1回押圧されたとき、パンプの先端の最大直径は、約42μm程度とされ、また、10回押圧されたとき、パンプの先端の最大直径は、約51μm程度とされる。
【0051】
従って、以上の結果と、バンプ自体の位置精度、バンプの先端と半導体装置のパッドとの位置合わせ精度、および、繰り返し数に応じたバンプの先端の直径の拡大傾向とをさらに考慮した場合、押圧荷重は、上述したように、1バンプ当たり100g以下とされる。
【0052】
図9(B)は、転写面10sが平坦面44fsに接触し加圧された直後のバンプ44B’の先端部の状態を拡大して示す。これにより、図10(B)から明らかなように、バンプ44B’の先端部は転写板10の凹凸10aにより押圧され、比較的粗い凹凸44psがバンプ44B’の先端部に形成されることとなる。
【0053】
図7において、上述の転写板固定ヘッドは、転写板10の転写面10sに対向する面が固定される固定面12aを有する押圧体12と、押圧体12の基部を収容する凹部を有する固定ヘッド本体14と、押圧体12の基部の凹部と固定ヘッド本体14の比較的深い凹部との間の各空間にそれぞれ配され転写板10をコンタクトシート44のバンプ44Bに向けて付勢する複数のスプリング16とを含んで構成されている。なお、図7は、押圧用蓋が取り外された状態のキャリアユニット40の一部の構成要素が後述するキャリアユニットステージ内に保持された状態を示す。
【0054】
押圧体12の基部は、固定ヘッド本体14の比較的浅く広い凹部内に移動可能に挿入されている。その押圧体12が挿入される部分の端部には、固定ヘッド本体14の下端に設けられる爪部に係合される爪部12nが相対向して複数個形成されている。これにより、押圧体12が複数のスプリング16の付勢力で付勢された状態で固定ヘッド本体14に保持されることとなる。
【0055】
転写板10の一方の面は、上述の固定面12aに対し接着または締結具により固定されている。なお、転写板10は、斯かる例に限られることなく、押圧体12と一体に形成されてもよい。また、押圧体12は、複数のスプリング16が介在されることなく、例えば、固定ヘッド本体14と一体に形成されてもよい。固定ヘッド本体14の上部の略中央部には、後述する押圧装置におけるロードセルの雄ねじ部がはめ合わされる雌ねじ部14sが設けられている。
【0056】
一方、キャリアユニット40の押圧用蓋(不図示)は、ベアチップ60に対し試験が実行されるとき、キャリアハウジング46にそのラッチ機構50(図2参照)により保持される。
【0057】
キャリアユニットステージ106は、図5および図7に示されるように、コンタクトシート44のバンプ44Bの回復処理にあたり、キャリアハウジング46を一時的に収容する収容部106Aを有している。上方に向けて開口する収容部106Aの内周部は、ベース部材42の収容部106Aに対する相対位置を規制するためにベース部材42の端部に係合するように形成されている。
【0058】
収容部106Aの周縁部には、キャリアユニット40のキャリアハウジング46を収容部106A内に着脱可能に保持する一対のラッチ機構が相対向して設けられている。そのラッチ機構は、キャリアユニットステージ106における収容部106Aを形成する壁部にそれぞれ、支持軸108により回動可能に支持されキャリアハウジング46の収容部46Aを形成する壁部の上端部を保持するフック部材112と、フック部材112の一端をそれぞれ、収容部46Aの壁部の上端部に係合させる方向に付勢するコイルスプリング114と、を含んで構成されている。
【0059】
フック部材112は、キャリアユニット40のキャリアハウジング46だけが収容部106A内に装着されるとき、または、収容部106Aから取り外されるとき、図5に二点鎖線で示されるように、その一端がコイルスプリング114の付勢力に抗して収容部106A内から離隔するように回動される。一方、フック部材112の一端は、キャリアハウジング116が収容部106A内に保持されるとき、コイルスプリング114の付勢力によりキャリアハウジング46の収容部46Aの壁部の上端部に当接される。
【0060】
上述の転写板固定ヘッドは、バンプが摩耗したコンタクトシート44について回復処理が行なわれるとき、図7に示されるように、キャリアユニットステージ106に配されたキャリアユニット40におけるキャリアハウジング46の収容部46A内に配置される。
【0061】
図4は、上述の回復処理における加圧工程において使用される押圧装置の全体構成を概略的に示す。
【0062】
押圧装置150は、ベース部材120上に配されコンタクトシート44が収容されるキャリアハウジング46を保持するキャリアユニットステージ106を固定する基台122と、転写板固定ヘッドを保持し所定の圧力を転写板10を介してコンタクトシート44のバンプ44Bに作用させる加圧機構部と、を含んで構成されている。
【0063】
ベース部材120は、図4における矢印Xの示す方向に沿って形成され基台122を支持する平坦部と、平坦部に対し略垂直に矢印Zの示す方向に広がり延在する倒立面部とからなる。キャリアユニットステージ106は、図示が省略される締結部材、例えば、ねじ部材等により基台122の平坦面に対し固定されている。
【0064】
加圧機構部は、転写板固定ヘッドを介してバンプ44Bに対する押圧力を検出するロードセル138と、ロードセル138を保持するとともに押圧力を転写板固定ヘッドに伝達するZ軸方向ステージ部材140と、Z軸方向ステージ部材140にはめ合わされ移動可能に支持するボールネジ部材142と、ボールネジ部材142を回動させる駆動モータ166とを含んで構成されている。
【0065】
ボールネジ部材142の両端部は、それぞれ、そのベース部材120の倒立面部に所定の間隔をもって設けられる一対のブラケット部に回動可能に支持されている。ボールネジ部材142の一方の端部は、減速機構166GHを介して倒立面部に固定される駆動モータ166の出力軸に連結されている。駆動モータ166は、例えば、リニアモータ、ステッピングモータ、サーボモータ等が用いられても良い。
【0066】
Z軸方向ステージ部材140は、ナットを介してボールネジ部材142がその軸線に対し略垂直となるように嵌め合わされており、かつ、自転しないようにガイドレール144により案内されている。
【0067】
ロードセル138は、内部のセンサ部に連結される雄ねじ部138sが転写板固定ヘッドの雌ねじ部14sにねじ込まれることにより、固定ヘッド本体14に連結されている。ロードセル138は、Z軸方向ステージ部材140の転写板固定ヘッドに対する押圧力を検出し押圧力をあらわす検出信号Spを制御ユニット100に送出する。
【0068】
制御ユニット100には、図示が省略される生産管理用のホストコンピュータからの回復処理開始指令信号Ss、および、上述のロードセル138からの検出信号Spが供給される。
【0069】
また、制御ユニット100は、コンタクトシート44に応じて設定される転写板固定ヘッドに対する押圧力の設定値、一連の回復処理を実行するためのプログラムデータ等が格納されるメモリ部100Mを内部に備えている。
【0070】
その押圧力の値は、バンプ44Bの大きさに応じて設定され、例えば、上述したように、1つの電極(バンプ)あたり約5g以上100g以下の範囲とされる。
【0071】
本発明に係る電極の回復処理方法の一例による回復処理にあたり、先ず、図4に示されるように、バンプが摩耗したコンタクトシート44が配置されるキャリアハウジング46が取付けられたキャリアユニットステージ106が、基台122の平坦面に保持される。
【0072】
次に、制御ユニット100は、回復処理開始指令信号Ssおよびメモリ部100M内のデータに基づいて押圧力を設定する。
【0073】
その際、制御ユニット100は、検出信号Spおよびメモリ部100M内の押圧力の設定値のデータに基づいてその押圧力に応じたZ軸ステージ140の移動量を設定する。
【0074】
制御ユニット100は、先ず、1回目の転写板10の押圧を行うべく、設定された移動量に応じてパルス制御信号Czを形成しモータ駆動回路102に供給する。モータ駆動回路102は、パルス制御信号Czに基づいて駆動信号を所定期間例えば、1秒間押圧した後、1秒間保持するように駆動モータ166に供給するものとされる。
【0075】
次に、制御ユニット100は、押圧力を一旦、解除し、転写板10をバンプ44Bに対し離隔させるべく、パルス制御信号Czを形成しモータ駆動回路102に供給する。
【0076】
続いて、制御ユニット100は、2回目の転写板10の押圧を行うべく、設定された移動量に応じてパルス制御信号Czを形成しモータ駆動回路102に供給する。モータ駆動回路102は、パルス制御信号Czに基づいて駆動信号を所定期間例えば、1秒間押圧した後、1秒間保持するように駆動モータ166に供給するものとされる。
【0077】
これにより、転写板10の2回目の押圧の工程が完了することにより、コンタクトシートのバンプ44Bに対する回復処理が終了することとなる。
【0078】
そして、回復処理されたコンタクトシートが収容されるキャリアハウジング46は、キャリアユニットステージ106から取り外される。
【0079】
取り外されたキャリアハウジング46は、ベアチップ60および押圧用蓋が装着された後、キャリアユニットとしてICソケットの収容部に装着されることとなる。
【0080】
従って、図10(B)に示されるように、転写板10における転写面10sの微小な凹凸10aの押圧に対応した比較的微細な凹凸がバンプ44B’の摩耗した端部に形成されることとなる。
【0081】
本願の発明者による実験によれば、バンプ44B’の凹凸は、例えば、上述したバンプB3について1バンプあたり押圧荷重5gで1回押圧された場合、凹凸の間隔が約2.60μm、凹凸の深さが約1.120μm程度となる。さらに他の一例として、本願の発明者による実験によれば、上述のバンプB1について1バンプあたり押圧荷重90gで10回押圧された場合、凹凸の間隔が約1.30μm、凹凸の深さが約1.0μm程度となる。
【0082】
即ち、本実施例は、一連の回復処理における制御が容易であり、かつ、比較的短期間で処理でき、その結果、より量産性に適している。しかも、不所望な電極部の接続面の削り屑が飛散する虞もない。
【0083】
なお、上述の例においては、転写板10による加圧が2回繰り返されているが、斯かる例に限られることなく、バンプの硬度に応じて押圧力をさらに高めることにより、1回の加圧だけで行われても良い。
【0084】
図11は、上述の回復処理が行われたバンプ44B’を有するコンタクトシートSa1、およびSa2と比較例としての回復処理が行われていないバンプを有するコンタクトシートCsa1およびCsa2との電気的特性の相違を示す特性図である。
【0085】
図11は、縦軸に抵抗値(mΩ)をとり、横軸に回復処理に供される転写板に作用される荷重(g)をとり、コンタクトシートにおいて隣接する二つのバンプが所定の導体板を介して接続された状態で所定の電流が供給されるもとでその接続端で測定された各抵抗値を示す。各抵抗値は、所定の抵抗測定器(HELETT PACKARD社製 4338A MILLIOHM METER)により測定された結果である。
【0086】
本実験においては、表面粗さ(算術平均粗さ)Raが0.97μmである転写面10sを有するアルミナセラミック製の転写板が使用された。同様に回復処理されたコンタクトシートSa1、およびSa2のバンプの構造および材質は、互いに同一とされる。各コンタクトシートSa1、およびSa2のバンプの硬度は、48(Hv)とされる。また、比較例としてのコンタクトシートCsa1およびCsa2のバンプの構造および材質は、互いに同一とされるとともに、上述のコンタクトシートSa1、およびSa2のバンプの構造および材質とも同一とされる。
【0087】
図11に示される特性図から明らかなように、転写板に作用される荷重が8g、10g、12g、14gである場合、回復処理されたコンタクトシートSa1における抵抗値は、それぞれ、294.0以上1509以下(mΩ)、310以上942以下(mΩ)、227以上667以下(mΩ)、209以上872以下(mΩ)の範囲とされる。また、回復処理されたコンタクトシートSa2における抵抗値は、それぞれ、216以上1492以下(mΩ)、226以上515以下(mΩ)、247以上505以下(mΩ)、238以上412以下(mΩ)の範囲とされる。
【0088】
一方、回復処理が行われていない比較例としてのコンタクトシートCSa1およびCSa2においては、それぞれ、2554以上3065以下(mΩ)、735以上3449以下(mΩ)の範囲とされる。
【0089】
従って、図11に示される結果から明らかなように、回復処理されたコンタクトシートSa1、Sa2の抵抗値は、それぞれ、比較例としてコンタクトシートCSa1およびCSa2の最大の抵抗値に比べてかなり小なる値なので回復処理されたコンタクトシートSa1、Sa2のバンプの方が、確実な電気的な接続が得られることが実証された。
【0090】
図12は、縦軸に抵抗値(mΩ)をとり、横軸に転写板の転写面における各算術平均粗さRaの値をとり、回復処理前、および、回復処理後における各コンタクトシートにおいて隣接する二つのバンプが所定の導体板を介して接続された状態で所定の電流が供給されるもとでその接続端で測定された各抵抗値を示す。各抵抗値は、所定の抵抗測定器(HELETT PACKARD社製 4338A MILLIOHM METER)により測定された結果である。
【0091】
図12に示される実験結果は、本願の発明者により行われた実験により、得られたものである。その実験においては、各算術平均粗さ0.60,0.83,0.95,1.13,1.28,1.43で形成された転写面をそれぞれ有する転写板により、所定の押圧力、例えば、18gで上述のように、押圧動作が6個のコンタクトシートのバンプに対し個別に、2回繰り返された後、抵抗値が測定された。
【0092】
図12に示されるように、例えば、算術平均粗さ0.60の転写面を有する転写板により、回復処理された場合、抵抗値(mΩ)は、502以上2650以下の範囲とされる。
【0093】
一方、回復処理されていない場合、抵抗値(mΩ)は、680以上8525以下の範囲とされる。
【0094】
また、例えば、算術平均粗さ1.43の転写面を有する転写板により、回復処理された場合、そのコンタクトシートの抵抗値(mΩ)は、625以上1219以下の範囲とされる。一方、回復処理されていない場合、そのコンタクトシートの抵抗値(mΩ)は、683以上1650以下の範囲とされる。
【0095】
従って、図12に示される実験結果から明らかなように、転写板の転写面の算術平均粗さRaが、約0.60以上1.43以下の範囲の場合において、転写板により回復処理が行われることにより、各抵抗値が回復処理されていない場合に比べて小となり、従って、回復処理されたコンタクトシートの方が、回復処理されないコンタクトシートに比べて確実な電気的な接続が得られるという効果が実証された。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る電極の回復処理方法の一例において導体板および電極に対する押圧力と接触抵抗値との関係を示す特性図である。
【図2】本発明に係る電極の回復処理方法の一例が適用されるキャリアユニットの構成を示す断面図である。
【図3】図2に示される例における平面図である。
【図4】本発明に係る電極の回復処理方法の一例において使用される押圧装置の全体構成を概略的に示す構成図である。
【図5】図4に示される押圧装置において使用されるキャリアユニットステージの構成を転写板固定ヘッドとともに分解して示す断面図である。
【図6】転写板固定ヘッドが装着された状態で図5に示されるキャリアユニットステージを示す平面図である。
【図7】図4に示される押圧装置において使用されるキャリアユニットステージの構成を転写板固定ヘッドとともに示す断面図である。
【図8】(A)、(B)は、それぞれ、本発明に係る電極の回復処理方法の一例に供されるバンプおよびその先端部を拡大して示す部分断面図である。
【図9】(A)および(B)は、それぞれ、本発明に係る電極の回復処理方法の一例における工程の説明に供される部分断面図である。
【図10】(A)および(B)は、それぞれ、本発明に係る電極の回復処理方法の一例における工程の説明に供される部分断面図である。
【図11】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの電気的特性と比較例の電気的特性とを対比して示す特性図である。
【図12】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの電気的特性と転写板の転写面の表面粗さとの関係を示す特性図である。
【図13】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの直径とバンプの種類との関係を示す特性図である。
【図14】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの直径と押圧荷重との関係を示す特性図である。
【図15】本発明に係る電極の回復処理方法の一例により処理されたバンプの直径と押圧回数との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0097】
10 転写板
40 キャリアユニット
44 コンタクトシート
44B バンプ
60 ベアチップ
150 押圧装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に形成される電極部を有し、半導体装置の端子部に対して該電極部の接続面を介して電気的接続を行う電極板における該電極部の接続面に、算術平均粗さRaが0.5μm以上1.5μm以下となるような凹凸が形成される転写面を有する転写板の該転写面と該接続面とが互いに接触するように該転写板を載置する第1の工程と、
前記第1の工程において前記電極部の接続面に載置された前記転写板を所定の圧力で該電極部の接続面に向けて押圧する第2の工程と、
前記第2の工程における転写板の押圧後、前記転写板を前記電極板に対して離隔させ、前記電極部の接続面に所定の凹凸を得る第3の工程と、
を含んでなる電極の回復処理方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、1電極部あたり5(g)以上の圧力で前記転写板を電極部の接続面に向けて押圧することを特徴とする請求項1記載の電極の回復処理方法。
【請求項3】
前記電極部の硬度は、20以上125以下(Hv)であることを特徴とする請求項1記載の電極の回復処理方法。
【請求項1】
絶縁基板上に形成される電極部を有し、半導体装置の端子部に対して該電極部の接続面を介して電気的接続を行う電極板における該電極部の接続面に、算術平均粗さRaが0.5μm以上1.5μm以下となるような凹凸が形成される転写面を有する転写板の該転写面と該接続面とが互いに接触するように該転写板を載置する第1の工程と、
前記第1の工程において前記電極部の接続面に載置された前記転写板を所定の圧力で該電極部の接続面に向けて押圧する第2の工程と、
前記第2の工程における転写板の押圧後、前記転写板を前記電極板に対して離隔させ、前記電極部の接続面に所定の凹凸を得る第3の工程と、
を含んでなる電極の回復処理方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、1電極部あたり5(g)以上の圧力で前記転写板を電極部の接続面に向けて押圧することを特徴とする請求項1記載の電極の回復処理方法。
【請求項3】
前記電極部の硬度は、20以上125以下(Hv)であることを特徴とする請求項1記載の電極の回復処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−156598(P2006−156598A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342991(P2004−342991)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】
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