説明

電極シートの検査装置

【課題】従来の検査装置では、シートを一定量ずつ間欠的に搬送しながら検査を行うものであるため、シートを連続的に搬送するインライン式の装置には適用することが困難であるという問題点があった。
【解決手段】連続して水平方向に搬送される電極シートSの上面に回転接触するローラ状の上部電極子21と、電極シートSの下面に回転接触するローラ状の下部電極子23と、電極シートSに接触した上下の電極子21,23間の通電により電極シートSの厚さ方向の電気抵抗を測定する厚さ抵抗測定手段60Aを備えた検査装置C2とした。電極シートSの厚さ方向の電気抵抗測定を連続して速やかに行うことができ、電極シートSを連続的に搬送するインライン式の装置に好適なものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池等の構成部材である電極シートの検査装置であって、とくに、電極シートの厚さ方向の電気抵抗を検査するのに用いられる電極シートの検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、電極シートの検査装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の装置は、グラファイトシートの非破壊検査装置であって、荷重測定ヘッドと厚さ方向電気抵抗測定ヘッドを備えている。そして、この非破壊検査装置は、ロール状の長尺品(グラファイトシート)を一定量ずつ間欠的に搬送すると共に、搬送停止の間に、長尺品を所定厚さまで圧縮しながら反発力と電気抵抗とを測定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3058585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の検査装置は、電極シートの製造工程中に配置するインライン式の装置とすることで、電極シートの品質向上に大きく貢献することができる。
【0005】
しかしながら、上記したような従来の検査装置(非破壊検査装置)では、長尺品を一定量ずつ間欠的に搬送しながら検査を行うものであるため、電極シートを連続的に搬送するインライン式の装置には適用することが困難であって、独立した検査工程にせざるを得ないという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、電極シートの厚さ方向の電気抵抗測定を連続して速やかに行うことができ、電極シートを連続的に搬送するインライン式の装置に好適な電極シートの検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電極シートの検査装置は、連続して水平方向に搬送される電極シートの搬送経路に設置して、前記電極シートの厚さ方向の電気抵抗を検査する装置である。この検査装置は、電極シートの上面に回転接触するローラ状の上部電極子と、上部電極子の下側で電極シートの下面に回転接触するローラ状の下部電極子を備えている。
【0008】
そして、電極シートの検査装置は、電極シートに接触した上下の電極子間の通電により電極シートの厚さ方向の電気抵抗を測定する厚さ抵抗測定手段を備えた構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電極シートの検査装置によれば、上記構成を採用したことにより、電極シートの厚さ方向の電気抵抗測定を連続して速やかに行うことができ、電極シートを連続的に搬送するインライン式の装置に非常に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電極シートの検査装置の一実施形態を説明する側面図(A)及び平面図(B)である。
【図2】図1に示す第1検査装置の側面図である。
【図3】図1に示す第1検査装置の平面図である。
【図4】図1に示す第1検査装置の正面図である。
【図5】図1に示す第2検査装置の側面図である。
【図6】図1に示す第2検査装置の平面図である。
【図7】図1に示す第2検査装置の正面図である。
【図8】本発明の電極シートの検査装置の他の実施形態を説明する正面図(A)及び側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の電極シートの検査装置の一実施形態を説明する。
図1に示す電極シートの検査装置は、連続して水平方向に搬送される電極シートSの搬送経路に設置してある。電極シートSの搬送方向は図1中で右方向である。図示例の検査装置は、搬送方向の上流側(図中で左側)に、電極シートSの面内方向の電気抵抗を検査する第1検査装置C1を備え、その下流側(図中で右側)に、電極シートSの厚さ方向の電気抵抗を検査する第2検査装置C2を備えている。
【0012】
電極シートSは、例えば、燃料電池の電極構造体やセパレータなどを構成する部材であって、製造工程に応じて厚さが異なるものも対象である。すなわち、電極シートSには、電極素材、電極素材に電極層や電解質層等の層を形成した直後のもの、製造が完了したもの等々が含まれる。また、電極シートSは、連続する同一材料であって、後工程で所定形状の電極部品に切断されるものや、連続するフィルム上に電極部品を所定間隔で配置して成るものがある。
【0013】
この電極シートSは、図外のロールから連続的に繰り出され、当該検査装置による検査工程を経て、図外のロールに巻き取られる。また、図示を省略したが、電極シートSの搬送経路には、電極シートSに一定の張力を付与するテンションローラや、適当なガイドローラを配置する。
【0014】
第1検査装置C1は、支柱や上下の桁を立体的に組み合わせて成るフレームF1を備えている。そして、第1検査装置C1は、図2〜図4に示すように、フレームF1内に、電極シートSの上面に回転接触する少なくとも二つのローラ状の電極子1と、各電極子1を昇降させる電極子昇降手段2と、電極子1の下側で電極シートSの下面を受けるガイド体3を備えている。
【0015】
また、第1検査装置C1は、電極シートSに接触した電極子1間の通電により電極シートSの面内方向の電気抵抗を測定する面内抵抗測定手段50Aと、電極シートSの厚さを測定する厚さ測定手段4を備えている。なお、この実施形態の電極シートSは、図3に示すように、連続するフィルムに矩形の電極部品(仮想線で示す部品)Pを一定間隔で配置して成るものである。
【0016】
この実施形態では、第1検査装置C1は、四個のローラ状の電極子1を備えている。これらの電極子1は、ホイール型であって、取付プレート5に、夫々のブラケット6を介して並列に設けてあると共に、夫々の外周部に、取付プレート5に装着した板ばね状の集電子7の先端を圧接させてある。また、各電極子1は、四端子法による抵抗測定端子として用いるものであり、例えば、図4に示すように、左側から一番目と三番目の電極子1(集電子6)を電流電極(A1,A2)とし、二番目と四番目の電極子1(集電子6)を電圧電極(V1,V2)としている。なお、取付プレート5及びブラケット6は、電気絶縁性を有している。
【0017】
前記電極子昇降手段2は、エアシリンダであって、出力軸(シリンダロッド)2Aを垂下させた状態にしてフレームF1の上部に固定してある。そして、出力軸2Aの下端部に、各電極子1を下側にした状態にして前記取付プレート5を固定する。このとき、四個の各電極子1は、電極シートSの幅方向(図4中で左右方向)に配列される。このようにして、電極子昇降手段2は、出力軸2Aを伸縮駆動することで、取付プレート5とともに各電極子1を一斉に昇降させる。
【0018】
前記ガイド体3は、図4に示す如く電極シートSの幅方向に長尺なローラであって、フレームF1の下部に固定した基盤8にブラケット9を介して回転自在に保持してある。このガイド体3にあっても、電気絶縁性を有するものである。なお、ガイド体3は、ローラ以外に、平滑な上面を有するブロックを用いることも可能である。この場合、電極シートSは、ガイド体3の上面に摺動接触することとなる。
【0019】
前記面内抵抗測定手段50Aは、図2に示す主制御装置50に含まれる一つの機能である。前記厚さ測定手段4は、電極子昇降手段2に装着した光学式の距離計である。この厚さ測定手段4は、例えば、ガイド体3に電極子1が接触した状態をゼロとして、取付プレート5までの距離を測定することにより、ガイド体3と電極子1との間に介在する電極プレートSの厚さを間接的に測定する。
【0020】
また、第1検査装置C1は、電極シートSに対する電極子1の圧接力を検出する圧接力検出手段10と、圧接力検出手段10からの検出信号に基づいて電極子1の圧接力を制御する圧接力制御手段50Bを備えている。
【0021】
前記圧接力検出手段10は、ガイド体3の基盤8内に設けたロードセルであって、ガイド体3及びブラケット9を介して、電極シートSに対する電極子1の圧接力を検出する。圧接力制御手段50Bは、前記主制御装置50に含まれる一つの機能であり、圧接力検出手段10からの検出信号に基づいて、電極子昇降手段2を駆動して電極子1の圧接力が一定になるように制御する。換言すれば、圧接力検出手段10からの検出信号に基づいて、電極子1の圧接力が一定になるように、電極子昇降手段2を駆動する。
【0022】
さらに、第1検査装置C1は、電極シートSに設けた検査箇所指示部を検出する読取手段11と、読取手段11による検査箇所指示部の検出信号に基づいて面内抵抗測定手段50A及び厚さ測定手段4に測定開始を指令する測定指令手段50Cを備えている。
【0023】
前記読取手段11は、図3及び図4に示すように、例えば、フレームF1の側部に装着した光学式の検出センサであって、電極シートSの電極部品Pの端部に予め設けておいた検査箇所指示部を検出する。この検査箇所指示部は、とくに限定されるものではなく、光学的に読取が可能な印であれば良い。前記測定指令手段50Cは、前記主制御装置50に含まれる一つの機能であり、読取手段11による検査箇所指示部の検出信号が入力されると、面内抵抗測定手段50A及び厚さ測定手段4に測定開始を指令する。
【0024】
さらに、第1検査装置C1は、電極シートSに目印を形成するマーキング手段12と、面内抵抗測定手段50A及び厚さ測定手段4による測定結果が基準値を外れた場合にマーキング手段12を作動させる不良指令手段50Dを備えている。
【0025】
前記マーキング手段12は、図3及び図4に示すように、例えば、フレームF1の側部に装着したインク噴射装置であって、インクジェットプリンタと同様に適宜の色のインクを所定形状に噴射し、電極シートSの電極部品Pの端部にインクによる目印を形成する。前記不良指令手段50Dは、前記主制御装置50に含まれる一つの機能であり、面内抵抗測定手段50A及び厚さ測定手段4による測定結果が基準値を外れた場合、すなわち測定結果が不良であった場合に、マーキング手段12を作動させて電極シートSの端部に不良を示す印を形成する。
【0026】
ここで、主制御装置50は、検査工程とは別の場所において、当該第1検査装置C1を集中的に制御するものであって、図2に示すように、面内抵抗測定手段50A、圧接力制御手段50B、測定指令手段50C及び不良指令手段50Dの機能を有する。この主制御装置50は、電極子昇降手段2、厚さ測定手段4、各電極子1の集電子7、圧接力検出手段10、読取手段11及びマーキング手段12との間で信号の出入力を行うと共に、各種測定のための演算を行って該当する機器類に指令信号を送信する。
【0027】
次に、第2検査装置C2の構成を説明する。
第2検査装置C2は、図5〜図7に示すように、先と同様のフレームF2内に、電極シートSの上面に回転接触するローラ状の上部電極子21と、上部電極子21の下側で電極シートSの下面に回転接触するローラ状の下部電極子23と、電極シートSに接触した上下の電極子21,23間の通電により電極シートSの厚さ方向の電気抵抗を測定する厚さ抵抗測定手段60Aを備えている。
【0028】
また、第2検査装置C2は、上部電極子21を昇降させる電極子昇降手段22と、電極シートSの厚さを測定する厚さ測定手段24を備えている。なお、この実施形態の電極シートSは、図6にも示すように、連続するフィルムに矩形の電極部品(仮想線で示す部品)Pを一定間隔で配置して成るものである。
【0029】
上部電極子21は、ホイール型であって、取付プレート25に、ブラケット26を介して設けてあると共に、夫々の外周部に、取付プレート25に装着した板ばね状の集電子27の先端を圧接させてある。
【0030】
前記電極子昇降手段22は、エアシリンダであって、出力軸22Aを垂下させた状態にしてフレームF2の上部に固定してある。そして、出力軸22Aの下端部に、上部電極子21を下側にした状態にして前記取付プレート25を固定する。このようにして、電極子昇降手段手段22は、出力軸22Aを伸縮駆動することで、取付プレート25とともに上部電極子21を昇降させる。
【0031】
前記下部電極子23は、同じくホイール型であって、フレームF2の下部に固定した基盤28にブラケット29を介して回転自在に保持してあり、その外周部に、基盤28に装着した板ばね状の集電子27の先端を圧接させてある。
【0032】
上部電極子21及び下部電極子23は、四端子法による抵抗測定端子として用いるものであり、この実施形態では、上下一対の電極子21,23を用いるので、図5に示すように、上部電極子21を一方の電流電極及び電圧電極(A1,V1)とし、下部電極子23を他方の電流電極及び電圧電極(A2,V2)としている。
【0033】
前記厚さ抵抗測定手段60Aは、図5に示す主制御装置60に含まれる一つの機能である。前記厚さ測定手段24は、電極子昇降手段22に装着した光学式の距離計である。この厚さ測定手段24は、例えば、下部電極子23に上部電極子21が接触した状態をゼロとして、取付プレート25までの距離を測定することにより、上下の電極子21,23の間に介在する電極プレートSの厚さを間接的に測定する。
【0034】
また、第2検査装置C2は、電極シートSに対する上部電極子21の圧接力を検出する圧接力検出手段30と、圧接力検出手段30からの検出信号に基づいて上部電極子21の圧接力を制御する圧接力制御手段60Bを備えている。
【0035】
前記圧接力検出手段30は、下部電極子23の基盤28内に設けたロードセルであって、下部電極子23及びブラケット29を介して、電極シートSに対する上部電極子21の圧接力を検出する。圧接力制御手段60Bは、前記主制御装置60に含まれる一つの機能であり、圧接力検出手段30からの検出信号に基づいて、電極子昇降手段22を駆動して上部電極子21の圧接力が一定になるように制御する。換言すれば、圧接力検出手段30からの検出信号に基づいて、上部電極子21の圧接力が一定になるように、電極子昇降手段22を駆動する。
【0036】
さらに、第2検査装置C2は、上下の電極子21,23及び電極子昇降手段22を一組の検査ユニットUとし、複数の検査ユニットUを電極シートSの幅方向に配列し、且つ各検査ユニットUを電極シートSの搬送方向に所定間隔で順次ずらせて配置している。
【0037】
この実施形態では、四基の検査ユニットUを備えており、図6及び図7に示すように、これらの検査ユニットUを電極シートSの幅方向に等間隔で配列している。そして、図5及び図6に示すように、電極シートS上に配列した電極部品Pの間隔と同間隔で、四基の検査ユニットUをずらせて配置している。
【0038】
さらに、第2検査装置C2は、電極シートSに設けた検査箇所指示部を検出する読取手段31と、読取手段31による検査箇所指示部の検出信号に基づいて厚さ抵抗測定手段60A及び厚さ測定手段24に測定開始を指令する測定指令手段60Cを備えている。
【0039】
前記読取手段31は、図6及び図7に示すように、フレームF2の側部に装着した光学式の検出センサであって、前記第1検査装置C1の構成と同様に、電極シートSの電極部品Pの端部に予め設けておいた検査箇所指示部を検出する。前記測定指令手段60Cは、前記主制御装置60に含まれる一つの機能であり、読取手段31による検査箇所指示部の検出信号が入力されると厚さ抵抗測定手段60A及び厚さ測定手段24に測定開始を指令する。
【0040】
さらに、第2検査装置C2は、電極シートSに目印を形成するマーキング手段32と、厚さ抵抗測定手段60A及び厚さ測定手段24による測定結果が基準値を外れた場合にマーキング手段32を作動させる不良指令手段60Dを備えている。
【0041】
前記マーキング手段32は、図6及び図7に示すように、フレームF1の側部に装着したインク噴射装置であって、前記第1検査装置C1の構成と同様に、電極シートSの電極部品Pの端部にインクによる目印を形成する。前記不良指令手段60Dは、前記主制御装置60に含まれる一つの機能であり、厚さ抵抗測定手段60A及び厚さ測定手段24による測定結果が基準値を外れた場合、すなわち測定結果が不良であった場合に、マーキング手段32を作動させて電極シートSの端部に不良を示す印を形成する。
【0042】
ここで、主制御装置60は、検査工程とは別の場所において、当該第2検査装置C2を集中的に制御するものであって、図5に示すように、厚さ抵抗測定手段60A、圧接力制御手段60B、測定指令手段60C及び不良指令手段60Dの機能を有する。この主制御装置60は、電極子昇降手段22、厚さ測定手段24、上下の電極子21,23の集電子27、圧接力検出手段30、読取手段31及びマーキング手段32との間で信号の出入力を行うと共に、各種測定のための演算を行って該当する機器類に指令信号を送信する。
【0043】
上記の構成を備えた検査装置の動作とともに、本発明の検査方法を説明する。
検査装置は、電極シートSを低速度で連続的に搬送し、第1検査装置C1において電極シートSの面内方向の電気抵抗(表面抵抗)を測定し、第2検査装置C2において電極シートSの厚さ方向の電気抵抗(体積抵抗)を測定する。この実施形態では、電極シートSが、連続するフィルムに電極部品Pを配列して成るものであるから、各電極部品Pについて面内抵抗及び厚さ抵抗を測定する。
【0044】
第1検査装置C1では、圧接力検出手段11により、電極シートSに対する電極子1の圧接力を検出し、主制御装置50の圧接力制御手段50Bにより、圧接力検出手段11からの検出信号に基づいて電極子1の圧接力を制御する。これにより、電極シートSに対する電極子1の圧接力が常に一定になり、測定条件を一定に維持することができる。
【0045】
そして、第1検査装置C1は、読取手段11が電極シートSの検査箇所指示部を検出すると、その検出信号が主制御手段50に入力され、主制御手段50における測定指令手段50Cが、面内抵抗測定手段50A及び厚さ測定手段4に測定開始を指令する。これにより、第1検出装置C1では、電極シートSに接触した電極子1間に通電を行い、四極端子法に基づいて電流(A1,A2)及び電圧(V1,V2)を測定し、面内抵抗測定手段50Aにおいて電極シートSの面内方向の電気抵抗を測定する。これと同時に、厚さ測定手段4により、電極シートSの厚さを測定し、その測定値を主制御手段50に入力する。
【0046】
また、主制御装置50では、電極シートSの面内方向の電気抵抗及び厚さの測定値と、予め設定した電気抵抗及び厚さの基準値とを比較して良否判定を行う。すなわち、電気抵抗の測定値及び厚さの測定値のいずれもが基準値以内であるか否かを判定する。そして、いずれの測定値も基準値以内である場合には、良好であるとして検査を終了し、いずれかの測定値が基準値を外れている場合には、不良であるとして、不良指令手段50Dによりマーキング手段12を作動させて、電極部品Pの端部に不良を示す印を付ける。
【0047】
ここで、例えば、燃料電池における電極構造体やセパレータを構成する電極シートS(電極部品P)の製造工程では、湿度60%RHを超える湿度環境、又は温度50℃を越える温度環境になる。また、湿度変動幅が10%RHを超える湿度環境、又は温度変動幅が10℃を越える温度環境になる。このような環境で製造される電極シートSは、素材の表面に電極層や電解質層が形成されていたり、これらの層が湿潤状態であったりして、必ずしも厚さが均一でないことがある。この厚さが不均一になると電気抵抗も変化する。
【0048】
これに対して、上記の第1検査装置C1は、電極シートSの面内方向の電気抵抗及び厚さを測定して、これらの測定値と基準値とを比較判定するので、温度及び湿度並びにこれらの変動幅が厳しい環境であっても、また、厚さに変化があるような製造工程中の電極シートSであっても、その面内方向の電気抵抗を正確に測定することができる。
【0049】
また、上記の第1検査装置C1は、電極シートSの製造工程中に配置して、電極シートPの面内方向の電気抵抗測定をインライン式で連続して速やかに行うことができる。そして、この実施形態のように電極シートSが多数の電極部品Pを配列して成る場合には、電極部品Pの全品検査を行うことができる。つまり、サンプリング検査や破壊検査は不要になる。
【0050】
さらに、第1検査装置C1は、電極シートSにローラ状の電極子1を回転接触させるので、上記の如くラインを止めずに連続的に測定を行うことができるほかに、電極シートSに損傷を与えない利点がある。
【0051】
さらに、第1検査装置C1は、圧接力検出手段11からの検出信号に基づいて電極子1の圧接力を制御する圧接力制御手段50Bを採用したので、電極シートSに対する電極子1の圧接力が常に一定になり、電極シートSの全域にわたって測定条件を一定にし得る。
【0052】
さらに、第1検査装置C1は、読取手段12による検査箇所指示部の検出信号に基づいて面内抵抗測定手段50A及び厚さ測定手段4に測定開始を指令する測定指令手段50Cを採用したので、例えば製品となる部位のみの測定検査が可能となり、主制御装置50の負担を軽減し得ると共に、省エネルギにも貢献することができる。
【0053】
さらに、第1検査装置C1は、面内抵抗測定手段50A及び厚さ測定手段4による測定結果が基準値を外れた場合にマーキング手段12を作動させる不良指令手段50Dを採用したので、後工程において、電極シートSの不良部分を人為的にも機械的にも判別することが容易になる。そして、電極シートSの不良部分を確実に除去することができる。その不良部分は、後にリサイクルすることが可能である。
【0054】
次に、第2検査装置C2の動作及び検査方法を説明する。
【0055】
第2検査装置C2では、圧接力検出手段30により、電極シートSに対する上部電極子21の圧接力を検出し、主制御装置60の圧接力制御手段60Bにより、圧接力検出手段30からの検出信号に基づいて上部電極子21の圧接力を制御する。これにより、電極シートSに対する上部電極子21の圧接力が常に一定になり、測定条件を一定に維持することができる。
【0056】
そして、第2検査装置C2は、読取手段31が電極シートSの検査箇所指示部を検出すると、その検出信号が主制御手段60に入力され、主制御手段60における測定指令手段60Cが、厚さ抵抗測定手段60A及び厚さ測定手段24に測定開始を指令する。これにより、第2検出装置C2では、図5中で左端側となる第1の検査ユニットUにおいて、電極シートSに接触した上下の電極子21,23間に通電を行い、四極端子法に基づいて電流(A1,A2)及び電圧(V1,V2)を測定し、厚さ抵抗測定手段60Aにおいて電極シートSの暑さ方向の電気抵抗を測定する。これと同時に、厚さ測定手段4により、電極シートSの厚さを測定し、その測定値を主制御手段60に入力する。
【0057】
この際、第2検査装置C2では、第1の検査ユニットUにより、電極シートSの厚さ方向の電気抵抗及び厚さを局部的に測定する。そして、電極シートSの搬送に伴って、第2〜第4の検査ユニットUにより、同様にして電極シートSの厚さ方向の電気抵抗及び厚さを幅方向にずらせながら局部的に順に測定し、第4の検査ユニットUで測定終了した時点において、電極部品Pの全体を測定したことになる。
【0058】
また、主制御装置60では、電極シートSの厚さ方向の電気抵抗と、予め設定した電気抵抗とを比較して良否判定を行う。若しくは、主制御装置60では、電極シートSの厚さ方向の電気抵抗及び厚さの測定値と、予め設定した電気抵抗及び厚さの基準値とを比較して良否判定を行う。すなわち、電気抵抗の測定値及び厚さの測定値のいずれもが基準値以内であるか否かを判定する。そして、いずれの測定値も基準値以内である場合には、良好であるとして検査を終了し、いずれかの測定値が基準値を外れている場合には、不良であるとして、不良指令手段60Dによりマーキング手段32を作動させて、電極部品Pの端部に不良を示す印を付ける。
【0059】
この際、先述したように、電極シートSの製造工程では、湿度60%RHを超える湿度環境、又は温度50℃を越える温度環境になったり、湿度変動幅が10%RHを超える湿度環境、又は温度変動幅が10℃を越える温度環境になったりする場合がある。そして、このような環境で製造される電極シートSは、素材の表面に電極層や電解質層が形成されていたり、これらの層が湿潤状態であったりして、必ずしも厚さが均一でないことがあり、この厚さが不均一になると電気抵抗も変化することがある。
【0060】
これに対して、上記の第2検査装置C2は、電極シートSの厚さ方向の電気抵抗を測定して、この測定値と基準値とを比較判定するので、温度及び湿度並びにこれらの変動幅が厳しい環境であっても、また、厚さに変化があるような製造工程中の電極シートSであっても、その厚さ方向の電気抵抗を測定することができる。しかも、第2検査装置C2は、厚さ測定手段24により電極シートSの厚さも測定し、厚さ方向の電気抵抗及び厚さの測定値とこれにの基準値とを比較判定するので、厚さ方向の電気抵抗の測定がより一層正確なものとなる。
【0061】
また、上記の第2検査装置C2は、電極シートSの製造工程中に配置して、電極シートPの厚さ方向の電気抵抗測定を連続して速やかに行うことができる。したがって、独立した検査工程にする必要がなく、インライン式の装置として非常に好適である。なお、独立した検査工程として使用することも勿論可能である。そして、この実施形態のように電極シートSが多数の電極部品Pを配列して成る場合には、電極部品Pの全品検査を行うことができる。つまり、サンプリング検査や破壊検査は不要になる。
【0062】
さらに、第2検査装置C2は、電極シートSにローラ状の上部電極子21及び下部電極子23を回転接触させるので、上記の如くラインを止めずに連続的に測定を行うことができるほかに、電極シートSに損傷を与えない利点がある。
【0063】
さらに、第2検査装置C2は、圧接力検出手段30からの検出信号に基づいて上部電極子21の圧接力を制御する圧接力制御手段60Bを採用したので、電極シートSに対する上部電極子21の圧接力が常に一定になり、電極シートSの全域にわたって測定条件を一定にし得る。
【0064】
さらに、第2検査装置C2は、複数の検査ユニットUを電極シートSの幅方向に配列し、且つ各検査ユニットUを電極シートSの搬送方向に所定間隔で順次ずらせて配置してあるので、電極シートS上に設定した個々のエリア毎に詳細な測定を行うことができる。
【0065】
つまり、この実施形態のように、矩形の電極部品Pを配列して成る電極シートSである場合には、測定対象となる電極部品Pを長辺方向に四つのエリアに分割し、個々のエリア毎の電気抵抗を測定する。この際、第2検査装置C2では、隣接する検査ユニットU同士が電極シートSの搬送方向にずれているので、通電を伴う測定が互いに干渉することが無く、隣接する検査ユニットUの影響を受けずに厚さ方向の電気抵抗を正確に測定することができる。これにより、電極シート(電極部品P)Sの全体にわたって厚さ方向の電気抵抗を正確に測定し得ることとなる。
【0066】
さらに、第2検査装置C2は、読取手段31による検査箇所指示部の検出信号に基づいて厚さ抵抗測定手段60A及び厚さ測定手段24に測定開始を指令する測定指令手段60Cを採用したので、例えば製品となる部位のみの測定検査が可能となり、主制御装置60の負担を軽減し得ると共に、省エネルギにも貢献することができる。
【0067】
さらに、第2検査装置C2は、厚さ抵抗測定手段60A(及び厚さ測定手段4)による測定結果が基準値を外れた場合にマーキング手段32を作動させる不良指令手段60Dを採用したので、後工程において、電極シートSの不良部分を人為的にも機械的にも判別することが容易になる。そして、電極シートSの不良部分を確実に除去することができる。その不良部分は、後にリサイクルすることが可能である。
【0068】
以上のように、上記検査装置は、第1検査装置C1において、電極シートSの面内方向の電気抵抗を正確に測定し、次いで、第2検査装置C2において、電極シートSの厚さ方向の電気抵抗を正確に測定することとなり、電極シートS(電極部品P)の検査精度の向上及び品質向上に大きく貢献することができる。
【0069】
また、上記の検査装置における第1及び第2の検査装置C1,C2は、フレームF1,F2、電極子昇降手段2,22、基盤8,28、読取手段11,31、及びマーキング手段12、32といった構成を共通化することが可能である。これにより、例えば、取付プレート5,25、ブラケット6,26、集電子7,27及び電極子(上部電極子)1,21を一組の検査ヘッドとし、第1及び第2の検査装置C1,C2の間で互換性をもたせることができる。
【0070】
図8は、本発明の検査装置(第2検査装置)の他の実施形態を説明する図である。
図示の検査装置C2は、先の実施形態では、ローラ状の上下の電極子21,23が、ホイール型であったのに対して、上下の電極子21,23が、ボール型である。上記の検査装置C2にあっても、先の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0071】
本発明の検査装置は、構成の細部が上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の細部を適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、面内方向の電気抵抗を測定する第1検査装置C1において、電極子1を電極シートSの幅方向に配列した構成を示したが、電極子1を電極シートSの搬送方向に配列した構成でも良い。
【0072】
また、読取手段11,31は、光学式のほか、機械式の手段を用いても良いし、さらに、メーキング手段12,32は、インクの噴射装置のほか、電極シートSに刻印や穿孔を施すものでも良い。さらに、電極シートSの大きさなどに応じて、電極子や検査ユニットの数を適宜変更することも可能である。図8に示すボール型の上下の電極子21,23は、第1検査装置C1の電極子にも使用可能である。
【符号の説明】
【0073】
C1 第1検査装置
C2 第2検査装置
S 電極シート
U 検査ユニット
1 電極子
2 22 電極子昇降手段
3 ガイド体
4 24 厚さ測定手段
10 30 圧接力検出手段
11 31 読取手段
12 32 マーキング手段
21 上部電極子
23 下部電極子
50 60 主制御装置
50A 面内抵抗測定手段
50B 60B 圧接力制御手段
50C 60C 測定指令手段
50D 50D 不良指令手段
60A 厚さ抵抗測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して水平方向に搬送される電極シートの搬送経路に設置して、前記電極シートの厚さ方向の電気抵抗を検査する装置であって、
電極シートの上面に回転接触するローラ状の上部電極子と、
上部電極子の下側で電極シートの下面に回転接触するローラ状の下部電極子と、
電極シートに接触した上下の電極子間の通電により電極シートの厚さ方向の電気抵抗を測定する厚さ抵抗測定手段を備えたことを特徴とする電極シートの検査装置。
【請求項2】
上部電極子を昇降させる電極子昇降手段と、
電極シートの厚さを測定する厚さ測定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電極シートの検査装置。
【請求項3】
電極シートに対する上部電極子の圧接力を検出する圧接力検出手段と、
圧接力検出手段からの検出信号に基づいて上部電極子の圧接力を制御する圧接力制御手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の電極シートの検査装置。
【請求項4】
上下の電極子及び電極子昇降手段を一組の検査ユニットとし、
複数の検査ユニットを電極シートの幅方向に配列し、且つ各検査ユニットを電極シートの搬送方向に所定間隔で順次ずらせて配置したことを特徴とする請求項2又は3に記載の電極シートの検査装置。
【請求項5】
電極シートに設けた検査箇所指示部を検出する読取手段と、
読取手段による検査箇所指示部の検出信号に基づいて厚さ抵抗測定手段に測定開始を指令する測定指令手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極シートの検査装置。
【請求項6】
電極シートに目印を形成するマーキング手段と、
厚さ抵抗測定手段による測定結果が基準値を外れた場合にマーキング手段を作動させる不良指令手段を備えたこと特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極シートの検査装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査装置を用いて、連続して水平方向に搬送される電極シートを検査するに際し、電極シートの厚さ方向の電気抵抗を測定し、この測定値と予め設定した電気抵抗の基準値とを比較して良否判定をすることを特徴とする電極シートの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−36768(P2013−36768A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170813(P2011−170813)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】