説明

電極リード接続体及び非水電解質蓄電装置並びにその製造方法

【課題】異なる金属の正極リードと負極リードとを接続する場合であっても、機械的に十分な接合強度や接合信頼性を得られ、且つ非水電解質蓄電装置の組立プロセスの簡便、確実な接続及び非水電解質蓄電装置の小型化を可能とする電極リード接続体を提供する。
【解決手段】正極リード12と同じ金属からなり、正極リード12に接続させる第一部材14と、負極リード13と同じ金属からなり、負極リード13に接続させる第二部材15と、を備え、第一部材14と第二部材15は、正極リード12に接合される部分である正極接合部16及び負極リード13に接合される部分である負極接合部17以外の部分で互いに接合され、第一部材14と第二部材15との間であって、第一部材14と第二部材15との接合部分に近接する位置に、第一部材14と第二部材15とが接触しないようにするための絶縁材料20が設けられている電極リード接続体10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電池セルの正極に接続された正極リードと他の電池セルの負極に接続された負極リードとを電気的に接続する電極リード接続体及び非水電解質蓄電装置並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池の実用化が進展している。非水電解質二次電池は鉛蓄電池など他の電池と比較して単位体積(単位質量)当たりのエネルギ出力が高いため、移動体通信機器、ノートパソコンを始め、電気自動車やハイブリッド自動車、更には太陽電池など再生可能エネルギを使用した電力の蓄電システムへの適用が進められている。
【0003】
こうした非水電解質二次電池の電池セルは、正極と負極との間にセパレータを配して積層構造とした電極群を作製し、これを外装体に収納した後、外装体内に電解液を封入することにより製造される。正極の基材としてはAlが、負極の基材にはCuが用いられる。正負それぞれの電極には電極リードが接続され、この電極リードで他の電池セルや制御装置と電気的に接続される。電極リードの金属としては、正極に接続される電極リード(正極リード)にはAlが、負極に接続される電極リード(負極リード)についてはCu又はNiが用いられている。
【0004】
このような非水電解質二次電池は移動体通信機器など一部の機器では電池セル単体で用いられるが、電気自動車など大出力が必要な機器では電池セル単体の出力では当然足りず、複数の電池セルを直並列接続して所望の電気エネルギを得ることになる。この場合、正極リードと負極リードとを接続する必要があるが、前述のように正極リードにはAlが、負極リードにはCu又はNiが用いられているため、異種金属同士の接合を行わなければならない。異種金属同士の接合では、金属のイオン化傾向の違いによる局部電池効果によって接合部の腐食問題が懸念される。また、接合自体についても金属接合で一般的な抵抗溶接などではそれぞれの金属の持つ融点の違いにより、安定した接合強度を得るのは困難であるという問題がある。更に複数の電池セルを組み合わせて効率良く充放電を行うためには、各電池セルの状態、一般的には電圧を監視する必要があり、このための配線も各電池セル間に行う必要がある。故に、非水電解質蓄電装置(電池モジュール)の組立では、例えば、接続作業スペース的に余裕のある電池セル単体状態でAl材質である正極リードとNi板とを超音波接合した後、Ni板と他の電池セルのNi材質である負極リードとを抵抗溶接することで非水電解質蓄電装置を完成させ、その後、各電池セル間に電圧監視用のリード線を半田付けするといった都合3種類の異なる接合方法で非水電解質蓄電装置の組立を行っており煩雑である。
【0005】
その他、電池セルの電極リード間にNi板などを配し、これをボルトなどの機械的な締結機構を利用して電気的な接続を成立させることで、非水電解質蓄電装置の組立を行う方法もあるが、非水電解質蓄電装置の小型化を妨げること、及び締結トルク(ネジ締めトルク)のバラツキや実使用時に締結機構が緩むことによる接触抵抗の増加などが問題である。
【0006】
また、例えば特許文献1には、正極又は負極と同様の金属、即ちAl又はCuで構成された第一部材と第二部材との重複箇所を冷間圧延により接合し、その重複箇所に耐食材を被覆したリード部材(電極リード)が開示されている。このリード部材によれば、機械的に十分な接合強度が得られ、且つ被覆による外気遮断で接合部分の腐食を防止することができるとされている。これを電池セルの正極リード又は負極リードに用いることで電池セル間の電極接続では同種金属同士の接合となるため、局部電池効果による腐食を原理的に発生させずに、例えば抵抗溶接のようなより簡便な方法を採用することが可能となる。
【0007】
その他、例えば特許文献2及び特許文献3には、正極リード部材としてAl板にCu板をレーザ溶接などで接合し、接合部分を樹脂で被覆した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−108584号公報
【特許文献2】特許第3931983号公報
【特許文献3】特開2004−247244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1では、リード部材の第一部材と第二部材との接合部分を被覆した耐食材部分が外装体のシール部分と重なった構成となっているため、被覆していないリード部材よりも厚くなっており、外装体の熱シールプロセスでは十分な封止性を得るのは困難と考えられ、電解液の漏出懸念がある。
【0010】
また、特許文献2及び特許文献3では、リード部材における異種金属の接合部を被覆した樹脂被覆部分が外装体より外側に位置しているが、電池セルを製造する場合には外装体の熱シールプロセス時に樹脂被覆部分が製造治工具と干渉することで樹脂被覆部分に損傷などが発生することが懸念され、外装体の端から樹脂被覆部分の端までの電極リード部分の長さは、製造治工具の大きさよりも大きくする等の設計上の制限が課されるため、非水電解質蓄電装置の小型、薄型化を図る上では問題と言える。また、電池セルの製造後、電極リード部に異種金属を接合、樹脂被覆する場合には接続終了後の組電池形態での樹脂被覆作業性が悪く、不良品となった場合の損失も大きく、リード部材だけでなく電池セル或いはそれ以上に影響を及ぼしてしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、異なる金属の正極リードと負極リードとを接続する場合であっても、機械的に十分な接合強度や接合信頼性(長期接合安定性)を得られ、且つ非水電解質蓄電装置の組立プロセスの簡便、確実な接続及び非水電解質蓄電装置の小型化を可能とする電極リード接続体及び非水電解質蓄電装置並びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために創案された本発明は、電池セルの正極に接続された正極リードと、前記電池セルとは異なる他の電池セルの負極に接続され、前記正極リードと異なる金属からなる負極リードとの間に配置されて前記正極リードと前記負極リードとを電気的に接続する電極リード接続体において、前記正極リードと同じ金属からなり、前記正極リードに接続させる第一部材と、前記負極リードと同じ金属からなり、前記負極リードに接続させる第二部材と、を備え、前記第一部材と前記第二部材は、前記正極リードに接合される部分である正極接合部及び前記負極リードに接合される部分である負極接合部以外の部分で互いに接合され、前記第一部材と前記第二部材との間であって、前記第一部材と前記第二部材との接合部分に近接する位置に、前記第一部材と前記第二部材とが接触しないようにするための絶縁材料が設けられている電極リード接続体である。
【0013】
前記第一部材と前記第二部材は、電極溶接用穴と、前記電極溶接用穴の縁に設けられた突出部と、を有すると良い。
【0014】
前記第一部材がAlからなり、前記第二部材がCu、Ni又はNiめっきが施されたCuからなると良い。
【0015】
また本発明は、前記電極リード接続体と、正極リード及び負極リードを有する複数の電池セルと、を備え、前記複数の電池セルが前記電極リード接続体の第一部材と前記電池セルの正極リード、及び前記電極リード接続体の第二部材と前記電池セルの負極リードを接合することによって接続された非水電解質蓄電装置である。
【0016】
また本発明は、前記電極リード接続体の第一部材と前記電池セルの正極リード、及び前記電極リード接続体の第二部材と前記電池セルとは異なる他の電池セルの負極リードを接合することによって、複数の電池セルを接続する非水電解質蓄電装置の製造方法である。
【0017】
また本発明は、前記電極リード接続体の第一部材に設けられた電極溶接用穴に電池セルの正極端子、及び前記電極リード接続体の第二部材に設けられた電極溶接用穴に前記電池セルとは異なる他の電池セルの負極端子を各々挿入し、各々の電極溶接用穴の縁に設けられた突出部側面を溶接することによって、複数の電池セルを接続する非水電解質蓄電装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、異なる金属の正極リードと負極リードとを接続する場合であっても、機械的に十分な接合強度や接合信頼性を得られ、且つ非水電解質蓄電装置の組立プロセスの簡便、確実な接続及び非水電解質蓄電装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電極リード接続体を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1の電極リード接続体を用いた非水電解質蓄電装置を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る電極リード接続体を示す斜視図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】図4の電極リード接続体を用いた非水電解質蓄電装置を示す一部断面図である。
【図7】図4の電極リード接続体を用いた非水電解質蓄電装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1〜3に示すように、第1の実施の形態に係る電極リード接続体10は、電池セル11の正極に接続された正極リード12と、その電池セルとは異なる他の電池セル11の負極に接続され、正極リード12と異なる金属からなる負極リード13との間に配置されて正極リード12と負極リード13とを電気的に接続するものであり、正極リード12と同じ金属からなり、正極リード12に接続させる第一部材14と、負極リード13と同じ金属からなり、負極リード13に接続させる第二部材15と、を備える。この電極リード接続体10の第一部材14を電池セル11の正極に接続された正極リード12に接合(正極接合部16)し、第二部材15を負極に接続された負極リード13に接合(負極接合部17)すると非水電解質蓄電装置18が得られる。
【0022】
電池セル11の正極はAlからなり、負極はCuからなる。また、正極リード12はAl又はその合金からなり、負極リード13はCu、Ni又はNiめっきが施されたCuからなる。
【0023】
第一部材14と第二部材15は互いに金属が異なり、第一部材14は正極リード12と同種金属であり、第二部材15は負極リード13と同種金属である。即ち、第一部材14がAlからなり、第二部材15がCu、Ni又はNiめっきが施されたCuからなる。
【0024】
第一部材14と第二部材15は、正極リード12に接合される部分である正極接合部16及び負極リード13に接合される部分である負極接合部17以外の部分で互いに接合され、第一部材14と第二部材15との間であって、第一部材14と第二部材15との接合部分に近接する位置に、第一部材14と第二部材15とが接触しないようにするための絶縁材料20が設けられている。
【0025】
第一部材14と第二部材15の接合時には、第一部材14上に、絶縁材料20、第二部材15の順番で重ね、Cu、Ni又はNiめっきが施されたCuからなる第二部材15側から超音波接合ツール(図示せず)を当てて超音波及び荷重を印加して接合を行う。この超音波接合時に発生する熱により絶縁材料20が溶融し、接合部19の中心部からその周辺に押し出され、接合部19の周辺が絶縁材料20で充填されることとなる。これにより、接合部19が外部雰囲気(外気)から遮断されると共に、接合部19への腐食溶媒の侵入が防止され、第一部材14と第二部材15との局部電池効果による接合部19の腐食現象の発生や進展を抑制することができ、高い接合信頼性が得られる。
【0026】
なお、超音波接合時の各部材の重ね代は製造する非水電解質蓄電装置18の大きさにより適宜変更することができる。また、超音波接合ツールの先端部(即ち、接合に寄与する部分)の大きさも所望の接合強度確保のために任意に選択することが可能である。
【0027】
絶縁材料20としては、その融点が、非水電解質蓄電装置18の充放電時に電極リード接続体10の接合部19に発生するジュール熱以上で且つ230℃以下の熱可塑性樹脂が好ましい。この条件を満たすものとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどのポリオレフィン樹脂が挙げられるが、先の条件を満たすものであれば如何なる樹脂であっても選択することが可能である。
【0028】
なお、絶縁材料20の融点が接合部19に発生するジュール熱より低い場合、非水電解質蓄電装置18の充放電時に絶縁材料20が溶けてしまい、外気から接合部19を遮断することができなくなるため、腐食の進展を抑制する効果が得られなくなる。接合部19に発生するジュール熱は、電池セル11の容量、つまり電極リード接続体10に流れる最大電流値に依存するため、絶縁材料20の種類は適用する電池セル11に応じて適宜選択される。
【0029】
また、絶縁材料20の融点が230℃より高い場合、超音波接合時に発生する熱によって絶縁材料20を溶融させることができず、第一部材14と第二部材15の電気的接続が不十分となる可能性がある。これは、超音波接合時に発生する熱の温度は、一般に、接合する金属の融点の35〜50%の温度と言われており、Cuの融点が1080℃、Alの融点が660℃であるため、超音波接合時に発生する熱の温度は230℃以上であると考えられるためである。つまり、超音波接合時に発生する熱の温度が最も低い230℃であっても絶縁材料20が溶融するように絶縁材料20の融点を230℃以下と規定している。
【0030】
更に、第一部材14又は第二部材15にその金属と同種の金属からなる電圧監視用のリード線(図示せず)を接続しても良い。電極リード接続体10とリード線を同種の金属で接続することで、より一般的で生産性が高い、例えば抵抗溶接を採用することができると同時に、局部電池効果による接合部19の腐食現象の発生を抑制することができ、高い接合信頼性が得られる。
【0031】
以上要するに、第1の実施の形態に係る電極リード接続体10によれば、第一部材14と第二部材15は、正極接合部16及び負極接合部17以外の部分で互いに接合されているため、機械的に十分な接合強度を確保することができる。また、第一部材14と第二部材15との接合部19以外で第一部材14と第二部材15とが接触しないように絶縁材料20を介在させているため、接合部19が外気から遮断されると共に、接合部19への腐食溶媒の侵入が防止され、局部電池効果に起因する接合部19の腐食を効果的に抑制することができ、高い接合信頼性(長期接合安定性)が得られる。
【0032】
次に、この電極リード接続体10を用いた非水電解質蓄電装置18について説明する。
【0033】
図3に示すように、非水電解質蓄電装置18は、電極リード接続体10と、正極リード12及び負極リード13を有する複数の電池セル11と、を備え、電極リード接続体10の第一部材14と電池セル11の正極リード12、及び電極リード接続体10の第二部材15と電池セル11の負極リード13を接合することによって、複数の電池セル11を直列接続(並列接続であっても良い)して製造される。なお、正極リード12はAlなどからなり、負極リード13はCu、Ni又はNiめっきが施されたCuなどからなる。
【0034】
電池セル11としては、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電池セル11は、Alからなる正極とCuからなる負極とをセパレータを介して積層した電極群が電解液と共にアルミラミネートフィルムからなる外装体により矩形に封止パック化されたラミネート型電池セルであり、外部に前述した正極リード12と負極リード13とが引き出されている。
【0035】
電極リード接続体10によって複数の電池セル11を接続するときには、同種金属側同士を接合する。即ち、第一部材14を正極リード12に、第二部材15を負極リード13に接合する。このように接合金属が同種のものであるため、例えば抵抗溶接(スポット溶接)のような高速で低コストな接合方法を選択することが可能となる。また、同種金属であれば正極接合部16、負極接合部17における腐食問題の懸念もない。従って、電極リード接続体10を使用することによって、複数の電池セル11の接続を確実にすることができる。
【0036】
なお、電極リード接続体10の製造時に電圧監視用のリード線を接続した場合には、非水電解質蓄電装置18の組立の際に新たな配線を行う必要がなく、非水電解質蓄電装置18の組立プロセスの簡便化を図ることができる。
【0037】
よって、非水電解質蓄電装置18によれば、電池セル11の正極リード12又は負極リード13と同種の金属からなる第一部材14、第二部材15を用いた電極リード接続体10によって各電池セル11を接続しているため、正極接合部16及び負極接合部17に局部電池効果に起因する腐食が生じることはない。従って、非水電解質蓄電装置18の接続を確実にすることができ、更に、組立プロセスの簡便化を実現することができる。
【0038】
また、接合部19が電池セル11の外側に位置し、絶縁材料20は、電池セル11本体とは重ならないため、特許文献1で懸念されるような外装体の熱シール部分が厚くなることで外装体の封止性が不十分となり電解液が漏出するということがない。更に、電極リード接続体10は電池セル11の製造とは別工程で製造されるため、特許文献2で生じていたような絶縁材料20部分の製造治工具との干渉を考慮する必要がなく、結果として非水電解質蓄電装置18の小型化が可能となる。また、電極リード接続体10が電池セル11の製造と別工程で製造されることで、電極リード接続体10の製造不良の影響が電池セル11の製造に与える影響は全くなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電極リード接続体及びこれを用いた非水電解質蓄電装置について説明する。
【0040】
図4,5に示すように、第2の実施の形態に係る電極リード接続体40は、基本的な構成は電極リード接続体10と同様であるが、例えばプレス加工により第一部材14及び第二部材15にそれぞれ電極溶接用穴41,42が開けられており、電極溶接用穴41,42の縁に突出部46が設けられているという点が異なる。また、電極溶接用穴41,42は、図4,5のように貫通されていても良く、突出部46の突出側端部で塞がれていても良い。
【0041】
図6,7に示すように、この電極リード接続体40は、角型電池セル43の電極端子(正極端子44又は負極端子45)の接続に用いられ、非水電解質蓄電装置50を構成するためのものであり、角型電池セル43の正極端子44は第一部材14の電極溶接用穴41に挿入され、電極溶接用穴41に設けられた突出部46の側面で溶接により接合される。一方、負極端子45は第二部材15の電極溶接用穴42に挿入され、電極溶接用穴42に設けられた突出部46の側面で溶接により接合される。電極溶接用穴41,42の突出部46により、適切な溶接代を設けることができるため、良好な溶接状態を得ることができ、確実な接続が可能となる。
【0042】
従来、角型電池セルの電極接続には、例えばNiのような単一の金属材を用い、ボルトなどの機械的な締結機構により電気的な接続が行われていた。
【0043】
締結機構による接続では、機械的及び作業上の制約により電池システムとして小型化が困難であること、自動車などに搭載したときの振動による締結機構の緩みに起因して電気的な接続が不安定となることが問題となっていた。
【0044】
この問題を解決する接合方法として溶接があるが、角型電池セル43の正極端子44がAlからなり、負極端子45がCuからなるため、溶接条件の選定及び異種金属接合による局部電池効果の発生が課題となっていた。
【0045】
これに対し、第2の実施の形態に係る電極リード接続体40では、Alなどからなる第一部材14と、Cu、Ni又はNiめっきが施されたCuなどからなる第二部材15との間に絶縁材料20を挟み込んで介在させ、超音波接合で接合したことにより、第一部材14と第二部材15との接合部19の周辺が絶縁材料20で充填される。そのため、接合部19が外気から遮断されると共に、接合部19への腐食溶媒の侵入が防止され、局部電池効果の抑制が可能となる。同時に、第一部材14と第二部材15に、突出部46を有する電極溶接用穴41,42を形成することで、角型電池セル43の正極端子44及び負極端子45との溶接性の向上も可能となる。
【実施例】
【0046】
以下に本発明による電極リード接続体及びこれを用いて組み立てた非水電解質蓄電装置の実施例1,2を示す。
【0047】
(実施例1)
電極リード接続体の第一部材として厚さ0.3mm、幅30mm、長さ50mmのAl板を用い、第二部材として第一部材と同サイズのCu板を用いた。
【0048】
第一部材と第二部材との間にポリプロピレン系熱可塑性樹脂フィルムを挟んで介在させ、第二部材を上面にして重ね代10mmで重ね合わせ、第二部材のCu板側から超音波を印加すると同時に荷重をかけて接合した。
【0049】
この電極リード接続体を用いてリチウムイオン二次電池の電池セルの接続を行った。電池セルは正極としてAlが用いられ、負極としてCuが用いられ、セパレータ、電解液と共にアルミラミネートフィルムからなる外装体で矩形に密封化されたものであり、電池セルの両短辺よりAl製の正極リードとCu製の負極リードとが引き出されている。
【0050】
電極リード接続体と電池セルの各々の電極接続においては、電池セルの正極リードと第一部材、及び電池セルの負極リードと第二部材を抵抗溶接(スポット溶接)により溶接した。
【0051】
(実施例2)
電極リード接続体の第一部材として厚さ0.3mm、幅30mm、長さ50mmのAl板を用い、第二部材として第一部材と同サイズのCU板を用いた。
【0052】
第一部材と第二部材との間にポリプロピレン系熱可塑性樹脂フィルムを挟んで介在させ、第二部材を上面にして重ね代10mmで重ね合わせ、第二部材のCu板側から超音波を印加すると同時に荷重をかけて接合した。また、プレス加工により、第一部材と第二部材に、電極溶接用穴、及びその縁に突出部を形成した。
【0053】
この電極リード接続体を用いてリチウムイオン二次電池の電池セルの接続を行った。電池セルは正極としてAlが用いられ、負極としてCuが用いられ、セパレータ、電解液と共に角缶型の外装体で密封化されたものであり、電池セルの片側よりAl製の正極端子とCu製の負極端子が引き出されている。
【0054】
電極リード接続体と電池セルの各々の電極接続においては、電池セルの正極端子、負極端子を各々第一部材、第二部材に形成された電極溶接用穴に挿入し、電池セルの正極端子と第一部材に形成された電極溶接用穴の突出部、及び電池セルの負極端子と第二部材に形成された電極溶接用穴の突出部を抵抗溶接(スポット溶接)により溶接した。
【0055】
これらの構成により、ラミネート型電池セルの正極リード及び負極リードに本発明の電極リード接続体を接続する場合においては、電池セル本体には何も手を加えることなく、即ち、電池セルの電極リードのアルミラミネートフィルムによる封止部分については単純な電極リードのみが引き出された構造となっているので、熱シールプロセスで安定した封止性を得ることができ、電池セルの製造歩留まりを高く維持し、製造簡略化に寄与しつつ、更に非水電解質蓄電装置の小型化を図ることができる。
【0056】
また、角型電池セルの正極端子及び負極端子に本発明の電極リード接続体を接続する場合においても、角型電池セルの正極端子及び負極端子を各々第一部材、第二部材の電極溶接用穴に挿入し、抵抗溶接を行うだけで接続できるため、接続が簡便となる。更に、電極溶接用穴に設けられた突出部により、適切な溶接代を設けることができるため、良好な溶接状態を得ることができ、確実な接続が可能となる。また、従来のボルトなどの締結機構を使用することにより生じる問題の一つである緩みが起こらないため、確実な接続が可能となる。更に、もう一つの問題である機械的及び作業上の制約がないため、非水電解質蓄電装置の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0057】
10 電極リード接続体
11 電池セル
12 正極リード
13 負極リード
14 第一部材
15 第二部材
16 正極接合部
17 負極接合部
18 非水電解質蓄電装置
19 接合部
20 絶縁材料
40 電極リード接続体
41,42 電極溶接用穴
43 角型電池セル
44 正極端子
45 負極端子
46 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの正極に接続された正極リードと、前記電池セルとは異なる他の電池セルの負極に接続され、前記正極リードと異なる金属からなる負極リードとの間に配置されて前記正極リードと前記負極リードとを電気的に接続する電極リード接続体において、
前記正極リードと同じ金属からなり、前記正極リードに接続させる第一部材と、
前記負極リードと同じ金属からなり、前記負極リードに接続させる第二部材と、
を備え、
前記第一部材と前記第二部材は、前記正極リードに接合される部分である正極接合部及び前記負極リードに接合される部分である負極接合部以外の部分で互いに接合され、前記第一部材と前記第二部材との間であって、前記第一部材と前記第二部材との接合部分に近接する位置に、前記第一部材と前記第二部材とが接触しないようにするための絶縁材料が設けられていることを特徴とする電極リード接続体。
【請求項2】
前記第一部材と前記第二部材は、電極溶接用穴と、前記電極溶接用穴の縁に設けられた突出部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電極リード接続体。
【請求項3】
前記第一部材がAlからなり、前記第二部材がCu、Ni又はNiめっきが施されたCuからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極リード接続体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電極リード接続体と、
正極リード及び負極リードを有する複数の電池セルと、
を備え、
前記複数の電池セルが前記電極リード接続体の第一部材と前記電池セルの正極リード、及び前記電極リード接続体の第二部材と前記電池セルの負極リードを接合することによって接続されたことを特徴とする非水電解質蓄電装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の電極リード接続体の第一部材と前記電池セルの正極リード、及び前記電極リード接続体の第二部材と前記電池セルとは異なる他の電池セルの負極リードを接合することによって、複数の電池セルを接続することを特徴とする非水電解質蓄電装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の電極リード接続体の第一部材に設けられた電極溶接用穴に電池セルの正極端子、及び前記電極リード接続体の第二部材に設けられた電極溶接用穴に前記電池セルとは異なる他の電池セルの負極端子を各々挿入し、各々の電極溶接用穴の縁に設けられた突出部側面を溶接することによって、複数の電池セルを接続することを特徴とする非水電解質蓄電装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105567(P2013−105567A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247353(P2011−247353)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】