電極及び非水電解液電池
【課題】出力特性に優れ、電極集電タブの位置ずれを抑制できる非水電解液電池を形成できる電極、及び上記電極を備えた非水電解液電池を提供する。
【解決手段】電極は、帯状の電極集電部(12)及び電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブ(13)を有し、金属箔で形成された電極集電体(11)と、電極集電部に形成された活物質含有層と、を備えている。任意の定数をX、円周率をπ、電極の厚み、対となる電極の厚み及びセパレータ総厚みの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の電極集電タブ(13)間の距離は、X+2πTαnである。
【解決手段】電極は、帯状の電極集電部(12)及び電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブ(13)を有し、金属箔で形成された電極集電体(11)と、電極集電部に形成された活物質含有層と、を備えている。任意の定数をX、円周率をπ、電極の厚み、対となる電極の厚み及びセパレータ総厚みの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の電極集電タブ(13)間の距離は、X+2πTαnである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電極及び非水電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車として、駆動源として内燃機関と電力走行用モータを併用するハイブリッド型電気自動車が知られている。ハイブリッド型電気自動車には、モータ駆動電源として複数の非水電解液二次電池が搭載されている。
【0003】
非水電解液二次電池は、大電流での10秒程度の充放電特性が優れているほど、ハイブリッド型電気自動車の燃費向上に寄与することができる。上記事情により、非水電解液二次電池内に内蔵される電極群はもちろんのこと、電極群と非水電解液二次電池の正・負両極端子とを電気的に結ぶ導電構造に関しても低抵抗が求められる。また、非水電解液二次電池は、体積を小さくすることが望まれ、体積を小さくすることにより、自動車の居住性に寄与することができる。
【0004】
電極群としては、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層され、これらの間にセパレータが介在されて形成された電極群が知られている。この場合、正極及び負極の積層精度によって、正極及び負極が短絡する恐れがある。このため、正極及び負極を積層する際、高精度で位置合わせする必要がある。しかしながら、高精度で位置合わせを行うと、製造コストの高騰を招いてしまう。
【0005】
また、電極群としては、帯状の正極、負極及びセパレータが捲回して形成された捲回構造の電極群が知られている(例えば、特許文献1参照)。正極は、正極集電体及び正極集電体表面に形成された正極活物質含有層を有している。負極は、負極集電体及び負極集電体表面に形成された負極活物質含有層を有している。電極群の一方の端部には、正極活物質含有層が形成されていない正極集電体が突出し、他方の端部には、負極活物質含有層が形成されていない負極集電体が突出している。しかしながら、この場合、正極活物質含有層から外れた正極集電体及び負極活物質含有層から外れた負極集電体が、電極群の体積の増大を招いてしまう。
【0006】
そこで、電極群の体積の増大を抑制するため、電極群の一端側に、複数の正極集電タブ及び複数の負極集電タブをそれぞれ取り出して形成された電極群が知られている。正極集電体は複数の正極集電タブを有し、負極集電体は複数の負極集電タブを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−93242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記複数の正極集電タブ及び複数の負極集電タブを、それぞれ一定の狭い間隔で配置させることにより、大電流での放電が可能な(高出力の)非水電解液二次電池を得ることができる。
【0009】
ところで、捲回構造の電極群において、複数の正極集電タブ及び複数の負極集電タブをそれぞれ一定の間隔で配置した場合、正極集電タブ同士の位置及び負極集電タブ同士の位置がずれる問題がある。位置ずれが生じた場合、正極集電タブ及び負極集電タブが短絡する恐れがある。このため、正極集電タブや負極集電タブである電極集電タブの位置ずれを抑制できる技術が求められている。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、出力特性に優れ、電極集電タブの位置ずれを抑制できる非水電解液電池を形成できる電極、及び上記電極を備えた非水電解液電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る電極は、
セパレータとともに捲回されて電極群を形成する電極において、
帯状の電極集電部及び前記電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを有し、金属箔で形成された電極集電体と、
前記電極集電部に形成された活物質含有層と、を備え、
任意の定数をX、円周率をπ、2つの電極の厚みと2つのセパレータの厚みとの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、前記電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の前記電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnであることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の他の態様に係る非水電解液電池は、
帯状の電極集電部及び前記電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを含み、金属箔で形成された電極集電体、並びに前記電極集電部に形成された活物質含有層を具備した電極と、前記電極と対となる帯状の電極と、前記2つの電極とともに捲回された2つの帯状のセパレータと、を有した電極群と、
前記電極群を収容した外装体と、
前記外装体内に収容された非水電解液と、を備え、
任意の定数をX、円周率をπ、前記電極の厚み、前記対となる電極の厚み及び前記セパレータ総厚みの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、前記電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の前記電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、出力特性に優れ、電極集電タブの位置ずれを抑制できる非水電解液電池を形成できる電極、及び上記電極を備えた非水電解液電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る非水電解液二次電池を示す斜視図であり、実施例1の非水電解液二次電池を示す図である。
【図2】図1に示した非水電解液二次電池の一部を示す断面図である。
【図3】図2に示した電極群を示す斜視図である。
【図4】図2及び図3に示した電極群を一部展開して示す斜視図である。
【図5】図4の線V−Vに沿って示す正極、負極及びセパレータの断面図である。
【図6】図4及び図5に示した正極の正極集電体の一部を展開して示す平面図である。
【図7】図4及び図5に示した負極の負極集電体の一部を展開して示す平面図である。
【図8】上記実施の形態の実施例1乃至7及び比較例1及び2の、(1)補正定数、(2)非水電解液の粘度、(3)負極活物質の材料、(4)非水電解液二次電池の形状、(5)DOD50%の場合の10秒間の出力を表で示した図である。
【図9】図8に示した補正定数に対する出力の変化をグラフで示した図である。
【図10】上記実施の形態の実施例1及び8乃至12、並びに比較例3及び4の、(1)補正定数、(2)非水電解液の粘度、(3)負極活物質の材料、(4)非水電解液二次電池の形状、(5)DOD50%の場合の10秒間の出力を表で示した図である。
【図11】図10に示した補正定数に対する出力の変化をグラフで示した図である。
【図12】上記実施の形態の実施例1、13及び14の、(1)補正定数、(2)非水電解液の粘度、(3)負極活物質の材料、(4)非水電解液二次電池の形状、(5)DOD50%の場合の10秒間の出力を表で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながらこの発明に係る電極及び電極を備えた非水電解液電池を、正極及び負極、並びに正極及び負極を備えた非水電解液二次電池に適用した実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
(実施例1)
図1及び図2に示すように、非水電解液二次電池は、電極群1、ケース20、封口体30、及び非水電解液としての非水電解液40を備えている。非水電解液二次電池の形状は、扁平な角型である。
【0017】
図2、図3及び図4に示すように、電極群1は、帯状の正極2と、帯状の負極3と、2つの帯状のセパレータ4とを有している。電極群1において、正極2及び負極3が互いに対となる電極であることは言うまでもない。
【0018】
図3、図4、図5及び図6に示すように、正極2は、電極集電体としての正極集電体11と、活物質含有層としての正極活物質含有層14とを有している。
正極集電体11は、電極集電部としての帯状の正極集電部12と、正極集電部12の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブとしての複数の正極集電タブ13とを有している。正極集電体11は、金属箔で形成されている。正極集電体11を形成する材料としては、例えばアルミ二ウムや、アルミ二ウム合金を使用することができる。正極集電タブ13の幅W13は一定である。
【0019】
正極活物質含有層14は、正極集電部12の片面又は両面に帯状に形成されている。ここでは、正極活物質含有層14は、正極集電部12の両面に形成されている。正極活物質含有層14は、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含んでいる。
【0020】
正極活物質としては、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム及び燐酸鉄リチウム、これらの複合酸化物、又は上述した物質の混合物を使用することができる。コストの面において、正極活物質としては、マンガン酸リチウムが好ましいが、マンガン酸リチウム及びコバルト酸リチウムを組合せて使用した方が高い正極電位を得ることができるため好ましい。
【0021】
図3、図4、図5及び図7に示すように、負極3は、電極集電体としての負極集電体15と、活物質含有層としての負極活物質含有層18とを有している。
負極集電体15は、電極集電部としての帯状の負極集電部16と、負極集電部16の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブとしての複数の負極集電タブ17とを有している。負極集電体15は、金属箔で形成されている。負極集電体15を形成する材料としては、例えばアルミ二ウムや、アルミ二ウム合金を使用することができる。負極集電タブ17の幅W17は一定である。
【0022】
負極活物質含有層18は、負極集電部16の片面又は両面に帯状に形成されている。ここでは、負極活物質含有層18は、負極集電部16の両面に形成されている。負極活物質含有層18は、負極活物質と、導電剤と、結着剤とを含んでいる。
【0023】
負極活物質としては、チタン酸リチウムやグラファイトを使用することができる。負極活物質としては、チタン酸リチウムを使用することが望ましい。特に、チタン酸リチウムとして、Li4Ti5O12を使用することが望ましい。チタン酸リチウムが及ぼす静電引力は大きい。負極活物質がチタン酸リチウムである場合、非水電解液40の保持力は高くなるため、高出力の非水電解液二次電池を得ることができる。さらに、負極活物質としては、0.1μm乃至4μmのメジアン径を持つ物質が液保持性の観点から望ましい。さらに望ましい負極活物質としては、0.1μm乃至1μmのメジアン径を持つ物質である。
【0024】
図4及び図5に示すように、セパレータ4は、正極2の両側に配置されている。セパレータ4はイオン透過性を有している。セパレータ4を形成する材料としては、液保持性のため、無機材料及びポリオレフィンの混合物を使用することが望ましい。セパレータ4は、無機材料を20%以上含む材料で形成されている方が望ましい。液保持性のため、セパレータを、セルロース製の不織布で形成することも望ましい。不織布で形成されたセパレータの密度は、0.30g/cc乃至0.70g/ccであるのが望ましい。
【0025】
図3及び図4に示すように、正極2及び負極3は、2つのセパレータ4とともに円筒状となるように捲回された後、プレス成形され、扁平な電極群1を形成している。プレス成形された状態で、複数の正極集電タブ13は、ほとんど幅方向にずれることなく互いに対向し、複数の負極集電タブ17は、ほとんど幅方向にずれることなく互いに対向している。
【0026】
図1及び図2に示すように、ケース20は、有底矩形筒状に形成されている。より詳しくは、ケース20は、矩形枠状であり、一端が開口し、他端が閉塞されている。ケース20は、電極群1を収容している。ケース20は、金属で形成されている。このため、ここでは、ケース20を金属缶と言い換えることができる。ここでは、ケース20は、アルミニウムで形成されている。なお、図示しないが、ケース20の他端側であるケース20の底部の内面に、絶縁体が配置されている。また、絶縁体から外れたケース20の内面は、絶縁材で被覆されている。
【0027】
封口体30は、矩形板状に形成されている。封口体30は、ケース20の開口に対応したサイズに形成されている。封口体30は、アルミ二ウム等の金属で形成されている。封口体30は、ケース20の開口に、例えばレーザ溶接により気密に接合されている。封口体30は、ケース20の開口を閉塞(封止)するものである。
【0028】
封口体30は、一部が開口してなる注入口31を有している。このため、注入口31からケース20内に非水電解液40を注入することができる。なお、非水電解液40を注入した後、注入口31は、封止材32により封止されている。
【0029】
封口体30には、正極端子8及び負極端子9が取付けられている。
正極端子8は、樹脂等の絶縁材33を介してかしめにより封口体30に取付けられている。正極端子8は、封口体30と電気的に絶縁されている。ここで、正極集電タブ13は、束ねられて正極端子8に接続されている。正極端子8及び正極集電部12は、正極集電タブ13を介して電気的に接続されている。なお、正極端子8は、封口体30にガラス等の絶縁材を介在するハーメチックシールにより取付けられていてもよい。
【0030】
負極端子9は、封口体30に直に取付けられている。負極端子9は、封口体30に電気的に接続されている。ここで、負極集電タブ17は束ねられて封口体30に接続されている。負極端子9及び負極集電部16は、負極集電タブ17及び封口体30を介して電気的に接続されている。
【0031】
安全弁35は、封口体30に形成されている。ここでは、安全弁35は封口体30の一部を薄くして形成されている。安全弁35は、非水電解液二次電池内部(ケース20及び封口体30で密閉された領域)の圧力によって作動するものであり、非水電解液二次電池内部の圧力が上昇し、圧力が特定値を超えたとき、開裂し、非水電解液二次電池の破裂を防止するものである。
【0032】
非水電解液40は、ケース20内に収納されている。非水電解液40は、注入口31からケース20内に注入されている。非水電解液40は、電極群1に浸透し、電極群1によって保持されている。非水電解液40は、非水溶媒に電解質を溶解して調製されている。
上記のように非水電解液二次電池が形成されている。
【0033】
ここで、上記実施例1の非水電解液二次電池において、電極群1の捲回数は10である。正極集電タブ13の個数及び負極集電タブ17の個数はそれぞれ10である。正極集電タブ13及び負極集電タブ17は、電極群1の各周に1個ずつ設けられている。
【0034】
図5に示すように、正極集電タブ13の厚み(正極集電体11の厚みT11)は、15μmである。正極2の厚みをT2とする。負極集電タブ17の厚み(負極集電体15の厚みT15)は、15μmである。負極3の厚みをT3とする。各セパレータ4の厚みT4は、20μmである。
【0035】
正極2の厚みT2、負極3の厚みT3、及び2つのセパレータ4の厚み(T4×2)の合計Tは、180.6μmである。円周率をπとすると、2πT=361.2×π[μm]である。
【0036】
任意の定数をX、補正定数をαとすると、電極群1の内周側から数えたn周目及びn+1周目の正極集電タブ13間の距離、並びに電極群1の内周側から数えたn周目及びn+1周目の負極集電タブ17間の距離は、それぞれX+2πTαnである。正極集電タブ13及び負極集電タブ17は、上記の規定を満たすよう形成されている。正極集電タブ13間の距離及び負極集電タブ17間の距離は、それぞれ不等である。この実施の形態において、上記補正定数αは、1.01乃至1.10の範囲内である。
【0037】
ここで、正極集電タブ13及び負極集電タブ17の何れか一方を電極集電タブとする。例えば、電極群1のn周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTα×1=X+2πTαであり、n+1周目及びn+2周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTα×2=X+4πTαである。電極群1のn+1周目及びn+2周目の電極集電タブ間の距離と、n周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離との差は、2πTαである。
【0038】
図8に示すように、実施例1において、補正定数αは1.05である。20℃での非水電解液40の粘度は、6cpである。負極活物質の材料は、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)である。
【0039】
次に、上記実施例1の非水電解液二次電池の一層詳しい構成を、その製造方法と併せて説明する。以下、正極の作製方法、負極の作製方法、電極群の作製方法、非水電解液二次電池の作製方法について順に説明する。
【0040】
(正極の作製方法)
まず、正極活物質としてのマンガン酸リチウム(LiMnO2)及びコバルト酸リチウム(LiCoO2)を4:1の重量比となるように混合した混合物を用意する。続いて、用意した混合物と、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを100:5:4の重量比となるように混合した混合ペーストを用意する。次いで、厚さ15μmのアルミニウムからなる金属箔の両面に少なくとも片側端部に余白を残すように混合ペーストを塗布・乾燥させる。塗布する際、金属箔に50mm幅で帯状に塗布し、塗布量を片面で100g/m2とした。
【0041】
塗布した混合ペーストが乾燥した後、金属箔にロールプレスを施す。続いて、金属箔の余白部分に10個の正極集電タブ13を形成するよう、金属箔を帯状に分断する。これにより、n周目及びn+1周目の正極集電タブ13間の距離がX+2πTαnとなる帯状の正極2が作製される。正極集電体11は金属箔により形成されている。正極活物質含有層14は混合ペーストにより形成されている。作製された正極2の各正極活物質含有層14の密度は、3.3g/ccであった。
【0042】
(負極の作製方法)
まず、負極活物質として0.5μmのメジアン径を持つチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を用意する。続いて、用意したチタン酸リチウムと、導電剤としての粉末状のグラファイトと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを100:5:3の重量比となるように混合した混合ペーストを用意する。次いで、厚さ15μmのアルミニウムからなる金属箔の両面に少なくとも片側端部に余白を残すように混合ペーストを塗布・乾燥させる。塗布する際、金属箔に50mm幅で帯状に塗布し、塗布量を片面で60g/m2とした。
【0043】
塗布した混合ペーストが乾燥した後、金属箔にロールプレスを施す。続いて、金属箔の余白部分に10個の負極集電タブ17を形成するよう、金属箔を帯状に分断する。これにより、n周目及びn+1周目の負極集電タブ17間の距離がX+2πTαnとなる帯状の負極3が作製される。負極集電体15は金属箔により形成されている。負極活物質含有層18は混合ペーストにより形成されている。作製された負極3の各負極活物質含有層18の密度は、2.4g/ccであった。
【0044】
(電極群の作製方法)
図3乃至図5に示すように、まず、それぞれ20μmの厚みT4を有する2つのセパレータ4を用意する。セパレータ4は、無機材料を20%含む無機材料及びポリオレフィンの混合物で形成されている。続いて、作製した正極2及び負極3間にセパレータ4を介在させ、円筒状となるよう10回捲回する。正極集電タブ13及び負極集電タブ17は、同一方向に突出させている。
【0045】
捲回する際、電極集電タブ同士(正極集電タブ13同士及び負極集電タブ17同士)が対向するよう捲回する。n周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTnではなく、X+2πTαnであるため、正極2、負極3及びセパレータ4を窮屈に捲回するのではなく、僅かなゆとりをもたせて捲回することができる。
その後、円筒状の電極群1に加熱プレスを施し、絶縁テープで固定する。これにより、扁平な電極群1が作製される。
【0046】
(非水電解液二次電池の作製方法)
図1及び図2に示すように、まず、正極端子8及び負極端子9が取付けられた封口体30を用意する。続いて、作製した電極群1の正極集電タブ13を束ね、レーザ溶接により、正極端子8に固定する。また、電極群1の負極集電タブ17を束ね、レーザ溶接により、封口体30に固定する。
【0047】
次いで、ケース20を用意し、封口体30の付いた電極群1をケース20に挿入し、封口体30及びケース20をレーザ溶接により封口する。その後、封口体30の注入口31からケース20内に非水電解液40を注入する。これにより、非水電解液40は電極群1に浸透する。非水電解液40を注入した後、封止材32により注入口31を封止する。
これにより、1.5Ahの容量を持つ非水電解液二次電池が作製される。
【0048】
次に、上記実施例1及び実施例2乃至7の非水電解液二次電池、並びに比較例1及び2の非水電解液二次電池の構成について説明する。実施例1乃至7の非水電解液二次電池は、出力特性に優れ、プレス成形された扁平な電極群1において電極集電タブ(正極集電タブ13、負極集電タブ17)の幅方向の位置ずれを抑制できる非水電解液二次電池の例である。
【0049】
(実施例1)
まず、実施例1の非水電解液二次電池について説明する。
上述したように、補正定数αは1.05である。20℃での非水電解液40の粘度は6cpである。負極活物質の材料はチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)である。非水電解液二次電池の形状は、扁平な角型である。電極群1のn周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnである。すなわち、正極集電タブ13及び負極集電タブ17は、上記の規定を満たすよう形成されている。
【0050】
(実施例2)
図8に示すように、実施例2の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.03に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0051】
(実施例3)
図8に示すように、実施例3の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.07に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0052】
(実施例4)
図8に示すように、実施例4の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.09に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0053】
(実施例5)
図8に示すように、実施例5の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.02に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0054】
(実施例6)
図8に示すように、実施例6の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.01に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0055】
(実施例7)
図8に示すように、実施例7の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.10に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0056】
(比較例1)
図8に示すように、比較例1の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.00に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0057】
(比較例2)
図8に示すように、比較例2の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.11に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0058】
ここで、本願発明者等は、実施例1乃至7の非水電解液二次電池、並びに比較例1及び2の非水電解液二次電池に対し、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査(測定)した。
【0059】
図8に示すように、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査した結果、実施例1乃至3の非水電解液二次電池では200W、実施例4及び5の非水電解液二次電池では180W、実施例6及び7の非水電解液二次電池では160W、比較例1の非水電解液二次電池では80W、比較例2の非水電解液二次電池では90Wであった。
【0060】
図9は、図8に示した補正定数αに対する出力(放電深度が50%の場合の10秒間の出力)の変化をグラフで示した図である。
図8及び図9に示すように、比較例1及び2の非水電解液二次電池の調査結果からわかるように、補正定数αが1.00及び1.11の場合、出力の高い非水電解液二次電池を実現することができなかった。この原因を次に挙げる。
【0061】
(1)α=1.00の場合、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4を窮屈に捲回するため、電極及びセパレータ4間に隙間をほとんど形成することができない。電極群1に非水電解液40を浸透できたとしても、活物質含有層(正極活物質含有層14、負極活物質含有層18)付近で非水電解液40の量は不足する。活物質含有層付近でリチウムイオンの量も不足するため、10秒程度の出力が低下したものと推測される。
【0062】
(2)α=1.11の場合、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4を僅かなゆとりをもたせて捲回するため、電極及びセパレータ4間に隙間を形成することができる。活物質含有層は、非水電解液40を潤沢に保持するため、活物質含有層付近でリチウムイオンの量が不足することはない。しかしながら、正極2及び負極3間の間隔が広がり、インピーダンスが上昇するため、出力が低下したものと推測される。
【0063】
そこで、実施例1乃至7の調査結果からわかる様に、補正定数αを1.01乃至1.10の範囲内とすることにより、出力の高い非水電解液二次電池を実現できることが分かる。補正定数αが1.01乃至1.10の範囲内の場合、活物質含有層付近でのリチウムイオンの量の不足を抑制することができ、インピーダンスの上昇を抑制することができる。
【0064】
好ましい補正定数αは、1.02乃至1.09の範囲内であり、より出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。さらに好ましい補正定数αは、1.03乃至1.07の範囲内であり、これより、一層出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。
【0065】
また、本願発明者等は、実施例1乃至7の非水電解液二次電池、並びに比較例1及び2の非水電解液二次電池に対し、電極集電タブのずれ量を調査した。調査する際、工具顕微鏡を用いて電極集電タブ(正極集電タブ13又は負極集電タブ17)のずれ量を測定することにより行った。
【0066】
電極集電タブのずれ量を測定したところ、ずれ量は、実施例1乃至7、並びに比較例1及び2の全てで数十μmであり、ごく僅かであった。このため、実施例1乃至7、並びに比較例1及び2において、複数の正極集電タブ13をほとんど幅方向にずれることなく互いに対向させることができた。同様に、複数の負極集電タブ17をほとんど幅方向にずれることなく互いに対向させることができた。
【0067】
これは、電極群1の捲回数が増大するとともに電極群1の外周の長さも増大する点を考慮し、電極集電タブ間の距離をX+2πTαnと不等としたものである。電極群1の捲回数が増大するとともに、電極集電タブ間の距離も大きくなる。このため、ほとんど幅方向にずれることなく、複数の正極集電タブ13を互いに対向させることができ、同様に、複数の負極集電タブ17を互いに対向させることができる。これにより、正極集電タブ13及び負極集電タブ17の短絡を抑制することができる。また、電極集電タブを束ねて行う溶接作業性の向上を図ることができる。
【0068】
次に、上記実施例1及び実施例8乃至12の非水電解液二次電池、並びに比較例3及び4の非水電解液二次電池の構成について説明する。実施例8乃至12の非水電解液二次電池は、出力特性に優れ、プレス成形された扁平な電極群1において電極集電タブ(正極集電タブ13、負極集電タブ17)の幅方向の位置ずれを抑制できる非水電解液二次電池の例である。
【0069】
(実施例1)
まず、実施例1の非水電解液二次電池について説明する。
上述したように、補正定数αは1.05である。20℃での非水電解液40の粘度は6cpである。負極活物質の材料はチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)である。非水電解液二次電池の形状は、扁平な角型である。電極群1のn周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnである。
【0070】
(実施例8)
図10に示すように、実施例8の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を8cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0071】
(実施例9)
図10に示すように、実施例9の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を4.5cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0072】
(実施例10)
図10に示すように、実施例10の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を12cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0073】
(実施例11)
図10に示すように、実施例11の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を4cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0074】
(実施例12)
図10に示すように、実施例12の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を20cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0075】
(比較例3)
図10に示すように、比較例3の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を2cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0076】
(比較例4)
図10に示すように、比較例4の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を30cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0077】
ここで、本願発明者等は、実施例1及び8乃至12の非水電解液二次電池、並びに比較例3及び4の非水電解液二次電池に対し、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査(測定)した。
【0078】
図10に示すように、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査した結果、実施例8の非水電解液二次電池では202W、実施例1の非水電解液二次電池では200W、実施例9及び10の非水電解液二次電池では180W、実施例11及び12の非水電解液二次電池では160W、比較例3の非水電解液二次電池では30W、比較例4の非水電解液二次電池では10Wであった。
【0079】
図11は、図10に示した非水電解液40の粘度に対する出力(放電深度が50%の場合の10秒間の出力)の変化をグラフで示した図である。
図10及び図11に示すように、比較例3及び4の非水電解液二次電池の調査結果からわかるように、非水電解液40の粘度が2cp及び30cpの場合、出力の高い非水電解液二次電池を実現することができなかった。この原因を次に挙げる。
【0080】
(1)非水電解液40の粘度が2cpの場合、電極群1への非水電解液40の浸透を促進することができる。しかしながら、この場合、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4間に非水電解液40を均一に保持させることができない。非水電解液40の分布にばらつきが生じるため、出力が低下したものと推測される。
【0081】
(2)非水電解液40の粘度が30cpの場合、非水電解液40が電極群の高さ方向の上部及び下部から電極群1の中央部まで浸透し難い。非水電解液40が電極群1の中央部まで浸透できなかったため、出力が低下したものと推測される。
【0082】
そこで、実施例1及び8乃至12の調査結果からわかる様に、非水電解液40の粘度を4.0cp乃至20cpの範囲内とすることにより、出力の高い非水電解液二次電池を実現できることが分かる。非水電解液40の粘度が4.0cp乃至20cpの範囲内の場合、電極群1への非水電解液40の浸透を促進することができ、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4間に非水電解液40を均一に保持させることができる。
【0083】
好ましい非水電解液40の粘度は、4.5cp乃至12cpの範囲内であり、これより、一層出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。さらに好ましい非水電解液40の粘度は、6.0cp乃至8.0cpの範囲内であり、これより、一層出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。
【0084】
また、本願発明者等は、実施例8乃至12の非水電解液二次電池、並びに比較例3及び4の非水電解液二次電池に対し、電極集電タブのずれ量を調査した。調査する際、工具顕微鏡を用いて電極集電タブ(正極集電タブ13又は負極集電タブ17)のずれ量を測定することにより行った。
【0085】
電極集電タブのずれ量を測定したところ、ずれ量は、実施例8乃至12、並びに比較例3及び4の全てで数十μmであり、ごく僅かであった。このため、実施例8乃至12、並びに比較例3及び4において、複数の正極集電タブ13をほとんど幅方向にずれることなく互いに対向させることができた。同様に、複数の負極集電タブ17をほとんど幅方向にずれることなく互いに対向させることができた。
【0086】
これは、実施例8乃至12、並びに比較例3及び4においても、電極群1の捲回数が増大するとともに電極群1の外周の長さも増大する点を考慮し、電極集電タブ間の距離をX+2πTαnと不等としたためである。
【0087】
次に、上記実施例13及び実施例14の非水電解液二次電池の構成について説明する。実施例13及び14の非水電解液二次電池は、出力特性に優れ、電極集電タブ(正極集電タブ13、負極集電タブ17)の幅方向の位置ずれを抑制できる非水電解液二次電池の例である。
【0088】
(実施例13)
図12に示すように、実施例13の非水電解液二次電池は、形状を円筒型に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。電極群1は、円筒状に形成され、プレス成形されていない。
【0089】
(実施例14)
図12に示すように、実施例14の非水電解液二次電池は、負極活物質の材料をグラファイトに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0090】
ここで、本願発明者等は、実施例13及び14の非水電解液二次電池に対し、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査(測定)した。
【0091】
図12に示すように、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査した結果、実施例13の非水電解液二次電池では200W、実施例14の非水電解液二次電池では140Wであった。
【0092】
図12からわかるように、円筒型の非水電解液二次電池(実施例13)は、角型の非水電解液二次電池(実施例1)と同様の高い出力を得ることができる。すなわち、非水電解液二次電池の形状に関わりなく、出力の高い非水電解液二次電池を実現できることがわかる。
【0093】
また、チタン酸リチウムに比べ、グラファイトが及ぼす静電引力は小さいものの、グラファイトが及ぼす静電引力は十分大きいため、実施例14のように、負極活物質の材料がグラファイトであっても、出力の高い非水電解液二次電池を実現できることがわかる。
【0094】
また、本願発明者等は、実施例8乃至12の非水電解液二次電池、並びに比較例3及び4の非水電解液二次電池に対し、電極集電タブのずれ量を調査した。調査する際、工具顕微鏡を用いて電極集電タブ(正極集電タブ13又は負極集電タブ17)のずれ量を測定することにより行った。
【0095】
電極集電タブのずれ量を測定したところ、ずれ量は、実施例14で数十μmであり、ごく僅かであった。電極群1をプレス成形しない実施例13において、電極群1がプレス成形される実施例1及び実施例14等と比べ、電極集電タブのずれ量は、若干大きくなるもののごく僅かであった。このため、実施例13及び14において、複数の正極集電タブ13をほとんど幅方向にずれることなしに互いに対向させることができた。同様に、複数の負極集電タブ17をほとんど幅方向にずれることなしに互いに対向させることができた。
【0096】
これは、実施例13及び14においても、電極群1の捲回数が増大するとともに電極群1の外周の長さも増大する点を考慮し、電極集電タブ間の距離をX+2πTαnと不等としたためである。
【0097】
以上のように構成された電極(正極2及び負極3)、並びに電極(正極2及び負極3)を備えた非水電解液二次電池によれば、電極は、2つの帯状のセパレータ4間に介在され、対となる電極及び2つのセパレータ4とともに捲回され、対となる電極及び2つのセパレータ4とともに電極群1を形成するものである。
【0098】
電極は、電極集電体及び活物質含有層を備えている。電極集電体は、帯状の電極集電部及び電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを有し、金属箔で形成されている。活物質含有層は、電極集電部に形成されている。電極群1の内周側から数えたn周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnである。複数の電極集電タブは、上記の規定を満たすよう形成されている。
【0099】
補正定数αを1.01乃至1.10の範囲内とすることにより、電極群1を、僅かなゆとりをもって捲回して形成することができるため、活物質含有層は非水電解液40を潤沢に保持することができ、活物質含有層付近での非水電解液40(リチウムイオンの量)の不足を抑制することができ、インピーダンスの上昇を抑制することができる。これより、出力の高い実施例1乃至14の非水電解液二次電池を実現することができる。
【0100】
非水電解液40の粘度を4.0cp乃至20cpの範囲内とすることにより、電極群1への非水電解液40の浸透を促進することができ、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4間に非水電解液40を均一に保持させることができる。これにより、出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。
【0101】
電極群1の捲回数が増大するとともに電極群1の外周の長さも増大する点を考慮し、電極集電タブ間の距離がX+2πTαnと不等となるよう電極が形成されている。プレス成形された扁平な電極群1及び円筒型の電極群1を問わず、電極集電タブ(正極集電タブ13及び負極集電タブ17)の幅方向のずれ量を抑制することができる。これにより、正極集電タブ13及び負極集電タブ17の短絡を抑制することができる。また、電極集電タブを束ねて行う溶接作業性の向上を図ることができる。
【0102】
上記のことから、出力特性に優れ、電極集電タブの位置ずれを抑制できる電極(正極2及び負極3)、及び電極(正極2及び負極3)を備えた非水電解液二次電池を得ることができる。
【0103】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0104】
例えば、非水電解液二次電池の形状は、角型が望ましい。角型の場合、電極群1は直線部を持つため、電極集電タブ(正極集電タブ13及び負極集電タブ17)の位置ずれを一層抑制することができる。
【0105】
図3に示すように、電極集電タブの位置ずれを抑制する場合、電極群1の厚みT1が8mm乃至20mm、電極群1の幅W1が30mm乃至300mmであることが望ましい。特に、幅W1が50mm乃至100mmであることが望ましい。
【0106】
T1/W1は、1/10乃至1/2であることが望ましい。これは、T1/W1が1/2を超えると、電極集電タブの位置あわせ精度が大きく要求され、電極群1の製造が難しくなるためである。また、T1/W1が1/2未満であると、非水電解液二次電池に占める電極群1の体積密度が低下し、自動車の省スペース要求を満たせなくなるためである。
【0107】
電極集電タブは、溶接にて電極集電部に取付けられていてもよい。上述したように、電極集電部及び複数の電極集電タブが同一の金属箔で一体に形成されていた方が、電極集電タブを溶接にて電極集電部に取付けた場合に比べ、電極群1の厚みの増大を抑制することができる。
【0108】
電極群1の捲回数は、10回に限定されるものではなく、種々変形可能である。正極活物質含有層14及び負極活物質含有層18を形成する材料は、上述した例に限定されるものではなく、種々変形可能である。
この発明の非水電解液電池は、上記非水電解液二次電池に限らず、各種非水電解液電池に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1…電極群、2…正極、3…負極、4…セパレータ、8…正極端子、9…負極端子、11…正極集電体、12…正極集電部、13…正極集電タブ、14…正極活物質含有層、15…負極集電体、16…負極集電部、17…負極集電タブ、18…負極活物質含有層、20…ケース、30…封口体、40…非水電解液、T,T2,T3,T4,T11,T15…厚み、α…補正定数。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電極及び非水電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車として、駆動源として内燃機関と電力走行用モータを併用するハイブリッド型電気自動車が知られている。ハイブリッド型電気自動車には、モータ駆動電源として複数の非水電解液二次電池が搭載されている。
【0003】
非水電解液二次電池は、大電流での10秒程度の充放電特性が優れているほど、ハイブリッド型電気自動車の燃費向上に寄与することができる。上記事情により、非水電解液二次電池内に内蔵される電極群はもちろんのこと、電極群と非水電解液二次電池の正・負両極端子とを電気的に結ぶ導電構造に関しても低抵抗が求められる。また、非水電解液二次電池は、体積を小さくすることが望まれ、体積を小さくすることにより、自動車の居住性に寄与することができる。
【0004】
電極群としては、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層され、これらの間にセパレータが介在されて形成された電極群が知られている。この場合、正極及び負極の積層精度によって、正極及び負極が短絡する恐れがある。このため、正極及び負極を積層する際、高精度で位置合わせする必要がある。しかしながら、高精度で位置合わせを行うと、製造コストの高騰を招いてしまう。
【0005】
また、電極群としては、帯状の正極、負極及びセパレータが捲回して形成された捲回構造の電極群が知られている(例えば、特許文献1参照)。正極は、正極集電体及び正極集電体表面に形成された正極活物質含有層を有している。負極は、負極集電体及び負極集電体表面に形成された負極活物質含有層を有している。電極群の一方の端部には、正極活物質含有層が形成されていない正極集電体が突出し、他方の端部には、負極活物質含有層が形成されていない負極集電体が突出している。しかしながら、この場合、正極活物質含有層から外れた正極集電体及び負極活物質含有層から外れた負極集電体が、電極群の体積の増大を招いてしまう。
【0006】
そこで、電極群の体積の増大を抑制するため、電極群の一端側に、複数の正極集電タブ及び複数の負極集電タブをそれぞれ取り出して形成された電極群が知られている。正極集電体は複数の正極集電タブを有し、負極集電体は複数の負極集電タブを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−93242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記複数の正極集電タブ及び複数の負極集電タブを、それぞれ一定の狭い間隔で配置させることにより、大電流での放電が可能な(高出力の)非水電解液二次電池を得ることができる。
【0009】
ところで、捲回構造の電極群において、複数の正極集電タブ及び複数の負極集電タブをそれぞれ一定の間隔で配置した場合、正極集電タブ同士の位置及び負極集電タブ同士の位置がずれる問題がある。位置ずれが生じた場合、正極集電タブ及び負極集電タブが短絡する恐れがある。このため、正極集電タブや負極集電タブである電極集電タブの位置ずれを抑制できる技術が求められている。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、出力特性に優れ、電極集電タブの位置ずれを抑制できる非水電解液電池を形成できる電極、及び上記電極を備えた非水電解液電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る電極は、
セパレータとともに捲回されて電極群を形成する電極において、
帯状の電極集電部及び前記電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを有し、金属箔で形成された電極集電体と、
前記電極集電部に形成された活物質含有層と、を備え、
任意の定数をX、円周率をπ、2つの電極の厚みと2つのセパレータの厚みとの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、前記電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の前記電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnであることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の他の態様に係る非水電解液電池は、
帯状の電極集電部及び前記電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを含み、金属箔で形成された電極集電体、並びに前記電極集電部に形成された活物質含有層を具備した電極と、前記電極と対となる帯状の電極と、前記2つの電極とともに捲回された2つの帯状のセパレータと、を有した電極群と、
前記電極群を収容した外装体と、
前記外装体内に収容された非水電解液と、を備え、
任意の定数をX、円周率をπ、前記電極の厚み、前記対となる電極の厚み及び前記セパレータ総厚みの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、前記電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の前記電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、出力特性に優れ、電極集電タブの位置ずれを抑制できる非水電解液電池を形成できる電極、及び上記電極を備えた非水電解液電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る非水電解液二次電池を示す斜視図であり、実施例1の非水電解液二次電池を示す図である。
【図2】図1に示した非水電解液二次電池の一部を示す断面図である。
【図3】図2に示した電極群を示す斜視図である。
【図4】図2及び図3に示した電極群を一部展開して示す斜視図である。
【図5】図4の線V−Vに沿って示す正極、負極及びセパレータの断面図である。
【図6】図4及び図5に示した正極の正極集電体の一部を展開して示す平面図である。
【図7】図4及び図5に示した負極の負極集電体の一部を展開して示す平面図である。
【図8】上記実施の形態の実施例1乃至7及び比較例1及び2の、(1)補正定数、(2)非水電解液の粘度、(3)負極活物質の材料、(4)非水電解液二次電池の形状、(5)DOD50%の場合の10秒間の出力を表で示した図である。
【図9】図8に示した補正定数に対する出力の変化をグラフで示した図である。
【図10】上記実施の形態の実施例1及び8乃至12、並びに比較例3及び4の、(1)補正定数、(2)非水電解液の粘度、(3)負極活物質の材料、(4)非水電解液二次電池の形状、(5)DOD50%の場合の10秒間の出力を表で示した図である。
【図11】図10に示した補正定数に対する出力の変化をグラフで示した図である。
【図12】上記実施の形態の実施例1、13及び14の、(1)補正定数、(2)非水電解液の粘度、(3)負極活物質の材料、(4)非水電解液二次電池の形状、(5)DOD50%の場合の10秒間の出力を表で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながらこの発明に係る電極及び電極を備えた非水電解液電池を、正極及び負極、並びに正極及び負極を備えた非水電解液二次電池に適用した実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
(実施例1)
図1及び図2に示すように、非水電解液二次電池は、電極群1、ケース20、封口体30、及び非水電解液としての非水電解液40を備えている。非水電解液二次電池の形状は、扁平な角型である。
【0017】
図2、図3及び図4に示すように、電極群1は、帯状の正極2と、帯状の負極3と、2つの帯状のセパレータ4とを有している。電極群1において、正極2及び負極3が互いに対となる電極であることは言うまでもない。
【0018】
図3、図4、図5及び図6に示すように、正極2は、電極集電体としての正極集電体11と、活物質含有層としての正極活物質含有層14とを有している。
正極集電体11は、電極集電部としての帯状の正極集電部12と、正極集電部12の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブとしての複数の正極集電タブ13とを有している。正極集電体11は、金属箔で形成されている。正極集電体11を形成する材料としては、例えばアルミ二ウムや、アルミ二ウム合金を使用することができる。正極集電タブ13の幅W13は一定である。
【0019】
正極活物質含有層14は、正極集電部12の片面又は両面に帯状に形成されている。ここでは、正極活物質含有層14は、正極集電部12の両面に形成されている。正極活物質含有層14は、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含んでいる。
【0020】
正極活物質としては、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム及び燐酸鉄リチウム、これらの複合酸化物、又は上述した物質の混合物を使用することができる。コストの面において、正極活物質としては、マンガン酸リチウムが好ましいが、マンガン酸リチウム及びコバルト酸リチウムを組合せて使用した方が高い正極電位を得ることができるため好ましい。
【0021】
図3、図4、図5及び図7に示すように、負極3は、電極集電体としての負極集電体15と、活物質含有層としての負極活物質含有層18とを有している。
負極集電体15は、電極集電部としての帯状の負極集電部16と、負極集電部16の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブとしての複数の負極集電タブ17とを有している。負極集電体15は、金属箔で形成されている。負極集電体15を形成する材料としては、例えばアルミ二ウムや、アルミ二ウム合金を使用することができる。負極集電タブ17の幅W17は一定である。
【0022】
負極活物質含有層18は、負極集電部16の片面又は両面に帯状に形成されている。ここでは、負極活物質含有層18は、負極集電部16の両面に形成されている。負極活物質含有層18は、負極活物質と、導電剤と、結着剤とを含んでいる。
【0023】
負極活物質としては、チタン酸リチウムやグラファイトを使用することができる。負極活物質としては、チタン酸リチウムを使用することが望ましい。特に、チタン酸リチウムとして、Li4Ti5O12を使用することが望ましい。チタン酸リチウムが及ぼす静電引力は大きい。負極活物質がチタン酸リチウムである場合、非水電解液40の保持力は高くなるため、高出力の非水電解液二次電池を得ることができる。さらに、負極活物質としては、0.1μm乃至4μmのメジアン径を持つ物質が液保持性の観点から望ましい。さらに望ましい負極活物質としては、0.1μm乃至1μmのメジアン径を持つ物質である。
【0024】
図4及び図5に示すように、セパレータ4は、正極2の両側に配置されている。セパレータ4はイオン透過性を有している。セパレータ4を形成する材料としては、液保持性のため、無機材料及びポリオレフィンの混合物を使用することが望ましい。セパレータ4は、無機材料を20%以上含む材料で形成されている方が望ましい。液保持性のため、セパレータを、セルロース製の不織布で形成することも望ましい。不織布で形成されたセパレータの密度は、0.30g/cc乃至0.70g/ccであるのが望ましい。
【0025】
図3及び図4に示すように、正極2及び負極3は、2つのセパレータ4とともに円筒状となるように捲回された後、プレス成形され、扁平な電極群1を形成している。プレス成形された状態で、複数の正極集電タブ13は、ほとんど幅方向にずれることなく互いに対向し、複数の負極集電タブ17は、ほとんど幅方向にずれることなく互いに対向している。
【0026】
図1及び図2に示すように、ケース20は、有底矩形筒状に形成されている。より詳しくは、ケース20は、矩形枠状であり、一端が開口し、他端が閉塞されている。ケース20は、電極群1を収容している。ケース20は、金属で形成されている。このため、ここでは、ケース20を金属缶と言い換えることができる。ここでは、ケース20は、アルミニウムで形成されている。なお、図示しないが、ケース20の他端側であるケース20の底部の内面に、絶縁体が配置されている。また、絶縁体から外れたケース20の内面は、絶縁材で被覆されている。
【0027】
封口体30は、矩形板状に形成されている。封口体30は、ケース20の開口に対応したサイズに形成されている。封口体30は、アルミ二ウム等の金属で形成されている。封口体30は、ケース20の開口に、例えばレーザ溶接により気密に接合されている。封口体30は、ケース20の開口を閉塞(封止)するものである。
【0028】
封口体30は、一部が開口してなる注入口31を有している。このため、注入口31からケース20内に非水電解液40を注入することができる。なお、非水電解液40を注入した後、注入口31は、封止材32により封止されている。
【0029】
封口体30には、正極端子8及び負極端子9が取付けられている。
正極端子8は、樹脂等の絶縁材33を介してかしめにより封口体30に取付けられている。正極端子8は、封口体30と電気的に絶縁されている。ここで、正極集電タブ13は、束ねられて正極端子8に接続されている。正極端子8及び正極集電部12は、正極集電タブ13を介して電気的に接続されている。なお、正極端子8は、封口体30にガラス等の絶縁材を介在するハーメチックシールにより取付けられていてもよい。
【0030】
負極端子9は、封口体30に直に取付けられている。負極端子9は、封口体30に電気的に接続されている。ここで、負極集電タブ17は束ねられて封口体30に接続されている。負極端子9及び負極集電部16は、負極集電タブ17及び封口体30を介して電気的に接続されている。
【0031】
安全弁35は、封口体30に形成されている。ここでは、安全弁35は封口体30の一部を薄くして形成されている。安全弁35は、非水電解液二次電池内部(ケース20及び封口体30で密閉された領域)の圧力によって作動するものであり、非水電解液二次電池内部の圧力が上昇し、圧力が特定値を超えたとき、開裂し、非水電解液二次電池の破裂を防止するものである。
【0032】
非水電解液40は、ケース20内に収納されている。非水電解液40は、注入口31からケース20内に注入されている。非水電解液40は、電極群1に浸透し、電極群1によって保持されている。非水電解液40は、非水溶媒に電解質を溶解して調製されている。
上記のように非水電解液二次電池が形成されている。
【0033】
ここで、上記実施例1の非水電解液二次電池において、電極群1の捲回数は10である。正極集電タブ13の個数及び負極集電タブ17の個数はそれぞれ10である。正極集電タブ13及び負極集電タブ17は、電極群1の各周に1個ずつ設けられている。
【0034】
図5に示すように、正極集電タブ13の厚み(正極集電体11の厚みT11)は、15μmである。正極2の厚みをT2とする。負極集電タブ17の厚み(負極集電体15の厚みT15)は、15μmである。負極3の厚みをT3とする。各セパレータ4の厚みT4は、20μmである。
【0035】
正極2の厚みT2、負極3の厚みT3、及び2つのセパレータ4の厚み(T4×2)の合計Tは、180.6μmである。円周率をπとすると、2πT=361.2×π[μm]である。
【0036】
任意の定数をX、補正定数をαとすると、電極群1の内周側から数えたn周目及びn+1周目の正極集電タブ13間の距離、並びに電極群1の内周側から数えたn周目及びn+1周目の負極集電タブ17間の距離は、それぞれX+2πTαnである。正極集電タブ13及び負極集電タブ17は、上記の規定を満たすよう形成されている。正極集電タブ13間の距離及び負極集電タブ17間の距離は、それぞれ不等である。この実施の形態において、上記補正定数αは、1.01乃至1.10の範囲内である。
【0037】
ここで、正極集電タブ13及び負極集電タブ17の何れか一方を電極集電タブとする。例えば、電極群1のn周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTα×1=X+2πTαであり、n+1周目及びn+2周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTα×2=X+4πTαである。電極群1のn+1周目及びn+2周目の電極集電タブ間の距離と、n周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離との差は、2πTαである。
【0038】
図8に示すように、実施例1において、補正定数αは1.05である。20℃での非水電解液40の粘度は、6cpである。負極活物質の材料は、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)である。
【0039】
次に、上記実施例1の非水電解液二次電池の一層詳しい構成を、その製造方法と併せて説明する。以下、正極の作製方法、負極の作製方法、電極群の作製方法、非水電解液二次電池の作製方法について順に説明する。
【0040】
(正極の作製方法)
まず、正極活物質としてのマンガン酸リチウム(LiMnO2)及びコバルト酸リチウム(LiCoO2)を4:1の重量比となるように混合した混合物を用意する。続いて、用意した混合物と、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを100:5:4の重量比となるように混合した混合ペーストを用意する。次いで、厚さ15μmのアルミニウムからなる金属箔の両面に少なくとも片側端部に余白を残すように混合ペーストを塗布・乾燥させる。塗布する際、金属箔に50mm幅で帯状に塗布し、塗布量を片面で100g/m2とした。
【0041】
塗布した混合ペーストが乾燥した後、金属箔にロールプレスを施す。続いて、金属箔の余白部分に10個の正極集電タブ13を形成するよう、金属箔を帯状に分断する。これにより、n周目及びn+1周目の正極集電タブ13間の距離がX+2πTαnとなる帯状の正極2が作製される。正極集電体11は金属箔により形成されている。正極活物質含有層14は混合ペーストにより形成されている。作製された正極2の各正極活物質含有層14の密度は、3.3g/ccであった。
【0042】
(負極の作製方法)
まず、負極活物質として0.5μmのメジアン径を持つチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を用意する。続いて、用意したチタン酸リチウムと、導電剤としての粉末状のグラファイトと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを100:5:3の重量比となるように混合した混合ペーストを用意する。次いで、厚さ15μmのアルミニウムからなる金属箔の両面に少なくとも片側端部に余白を残すように混合ペーストを塗布・乾燥させる。塗布する際、金属箔に50mm幅で帯状に塗布し、塗布量を片面で60g/m2とした。
【0043】
塗布した混合ペーストが乾燥した後、金属箔にロールプレスを施す。続いて、金属箔の余白部分に10個の負極集電タブ17を形成するよう、金属箔を帯状に分断する。これにより、n周目及びn+1周目の負極集電タブ17間の距離がX+2πTαnとなる帯状の負極3が作製される。負極集電体15は金属箔により形成されている。負極活物質含有層18は混合ペーストにより形成されている。作製された負極3の各負極活物質含有層18の密度は、2.4g/ccであった。
【0044】
(電極群の作製方法)
図3乃至図5に示すように、まず、それぞれ20μmの厚みT4を有する2つのセパレータ4を用意する。セパレータ4は、無機材料を20%含む無機材料及びポリオレフィンの混合物で形成されている。続いて、作製した正極2及び負極3間にセパレータ4を介在させ、円筒状となるよう10回捲回する。正極集電タブ13及び負極集電タブ17は、同一方向に突出させている。
【0045】
捲回する際、電極集電タブ同士(正極集電タブ13同士及び負極集電タブ17同士)が対向するよう捲回する。n周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTnではなく、X+2πTαnであるため、正極2、負極3及びセパレータ4を窮屈に捲回するのではなく、僅かなゆとりをもたせて捲回することができる。
その後、円筒状の電極群1に加熱プレスを施し、絶縁テープで固定する。これにより、扁平な電極群1が作製される。
【0046】
(非水電解液二次電池の作製方法)
図1及び図2に示すように、まず、正極端子8及び負極端子9が取付けられた封口体30を用意する。続いて、作製した電極群1の正極集電タブ13を束ね、レーザ溶接により、正極端子8に固定する。また、電極群1の負極集電タブ17を束ね、レーザ溶接により、封口体30に固定する。
【0047】
次いで、ケース20を用意し、封口体30の付いた電極群1をケース20に挿入し、封口体30及びケース20をレーザ溶接により封口する。その後、封口体30の注入口31からケース20内に非水電解液40を注入する。これにより、非水電解液40は電極群1に浸透する。非水電解液40を注入した後、封止材32により注入口31を封止する。
これにより、1.5Ahの容量を持つ非水電解液二次電池が作製される。
【0048】
次に、上記実施例1及び実施例2乃至7の非水電解液二次電池、並びに比較例1及び2の非水電解液二次電池の構成について説明する。実施例1乃至7の非水電解液二次電池は、出力特性に優れ、プレス成形された扁平な電極群1において電極集電タブ(正極集電タブ13、負極集電タブ17)の幅方向の位置ずれを抑制できる非水電解液二次電池の例である。
【0049】
(実施例1)
まず、実施例1の非水電解液二次電池について説明する。
上述したように、補正定数αは1.05である。20℃での非水電解液40の粘度は6cpである。負極活物質の材料はチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)である。非水電解液二次電池の形状は、扁平な角型である。電極群1のn周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnである。すなわち、正極集電タブ13及び負極集電タブ17は、上記の規定を満たすよう形成されている。
【0050】
(実施例2)
図8に示すように、実施例2の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.03に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0051】
(実施例3)
図8に示すように、実施例3の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.07に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0052】
(実施例4)
図8に示すように、実施例4の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.09に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0053】
(実施例5)
図8に示すように、実施例5の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.02に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0054】
(実施例6)
図8に示すように、実施例6の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.01に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0055】
(実施例7)
図8に示すように、実施例7の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.10に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0056】
(比較例1)
図8に示すように、比較例1の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.00に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0057】
(比較例2)
図8に示すように、比較例2の非水電解液二次電池は、補正定数αを1.11に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0058】
ここで、本願発明者等は、実施例1乃至7の非水電解液二次電池、並びに比較例1及び2の非水電解液二次電池に対し、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査(測定)した。
【0059】
図8に示すように、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査した結果、実施例1乃至3の非水電解液二次電池では200W、実施例4及び5の非水電解液二次電池では180W、実施例6及び7の非水電解液二次電池では160W、比較例1の非水電解液二次電池では80W、比較例2の非水電解液二次電池では90Wであった。
【0060】
図9は、図8に示した補正定数αに対する出力(放電深度が50%の場合の10秒間の出力)の変化をグラフで示した図である。
図8及び図9に示すように、比較例1及び2の非水電解液二次電池の調査結果からわかるように、補正定数αが1.00及び1.11の場合、出力の高い非水電解液二次電池を実現することができなかった。この原因を次に挙げる。
【0061】
(1)α=1.00の場合、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4を窮屈に捲回するため、電極及びセパレータ4間に隙間をほとんど形成することができない。電極群1に非水電解液40を浸透できたとしても、活物質含有層(正極活物質含有層14、負極活物質含有層18)付近で非水電解液40の量は不足する。活物質含有層付近でリチウムイオンの量も不足するため、10秒程度の出力が低下したものと推測される。
【0062】
(2)α=1.11の場合、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4を僅かなゆとりをもたせて捲回するため、電極及びセパレータ4間に隙間を形成することができる。活物質含有層は、非水電解液40を潤沢に保持するため、活物質含有層付近でリチウムイオンの量が不足することはない。しかしながら、正極2及び負極3間の間隔が広がり、インピーダンスが上昇するため、出力が低下したものと推測される。
【0063】
そこで、実施例1乃至7の調査結果からわかる様に、補正定数αを1.01乃至1.10の範囲内とすることにより、出力の高い非水電解液二次電池を実現できることが分かる。補正定数αが1.01乃至1.10の範囲内の場合、活物質含有層付近でのリチウムイオンの量の不足を抑制することができ、インピーダンスの上昇を抑制することができる。
【0064】
好ましい補正定数αは、1.02乃至1.09の範囲内であり、より出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。さらに好ましい補正定数αは、1.03乃至1.07の範囲内であり、これより、一層出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。
【0065】
また、本願発明者等は、実施例1乃至7の非水電解液二次電池、並びに比較例1及び2の非水電解液二次電池に対し、電極集電タブのずれ量を調査した。調査する際、工具顕微鏡を用いて電極集電タブ(正極集電タブ13又は負極集電タブ17)のずれ量を測定することにより行った。
【0066】
電極集電タブのずれ量を測定したところ、ずれ量は、実施例1乃至7、並びに比較例1及び2の全てで数十μmであり、ごく僅かであった。このため、実施例1乃至7、並びに比較例1及び2において、複数の正極集電タブ13をほとんど幅方向にずれることなく互いに対向させることができた。同様に、複数の負極集電タブ17をほとんど幅方向にずれることなく互いに対向させることができた。
【0067】
これは、電極群1の捲回数が増大するとともに電極群1の外周の長さも増大する点を考慮し、電極集電タブ間の距離をX+2πTαnと不等としたものである。電極群1の捲回数が増大するとともに、電極集電タブ間の距離も大きくなる。このため、ほとんど幅方向にずれることなく、複数の正極集電タブ13を互いに対向させることができ、同様に、複数の負極集電タブ17を互いに対向させることができる。これにより、正極集電タブ13及び負極集電タブ17の短絡を抑制することができる。また、電極集電タブを束ねて行う溶接作業性の向上を図ることができる。
【0068】
次に、上記実施例1及び実施例8乃至12の非水電解液二次電池、並びに比較例3及び4の非水電解液二次電池の構成について説明する。実施例8乃至12の非水電解液二次電池は、出力特性に優れ、プレス成形された扁平な電極群1において電極集電タブ(正極集電タブ13、負極集電タブ17)の幅方向の位置ずれを抑制できる非水電解液二次電池の例である。
【0069】
(実施例1)
まず、実施例1の非水電解液二次電池について説明する。
上述したように、補正定数αは1.05である。20℃での非水電解液40の粘度は6cpである。負極活物質の材料はチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)である。非水電解液二次電池の形状は、扁平な角型である。電極群1のn周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnである。
【0070】
(実施例8)
図10に示すように、実施例8の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を8cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0071】
(実施例9)
図10に示すように、実施例9の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を4.5cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0072】
(実施例10)
図10に示すように、実施例10の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を12cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0073】
(実施例11)
図10に示すように、実施例11の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を4cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0074】
(実施例12)
図10に示すように、実施例12の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を20cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0075】
(比較例3)
図10に示すように、比較例3の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を2cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0076】
(比較例4)
図10に示すように、比較例4の非水電解液二次電池は、20℃での非水電解液40の粘度を30cpに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0077】
ここで、本願発明者等は、実施例1及び8乃至12の非水電解液二次電池、並びに比較例3及び4の非水電解液二次電池に対し、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査(測定)した。
【0078】
図10に示すように、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査した結果、実施例8の非水電解液二次電池では202W、実施例1の非水電解液二次電池では200W、実施例9及び10の非水電解液二次電池では180W、実施例11及び12の非水電解液二次電池では160W、比較例3の非水電解液二次電池では30W、比較例4の非水電解液二次電池では10Wであった。
【0079】
図11は、図10に示した非水電解液40の粘度に対する出力(放電深度が50%の場合の10秒間の出力)の変化をグラフで示した図である。
図10及び図11に示すように、比較例3及び4の非水電解液二次電池の調査結果からわかるように、非水電解液40の粘度が2cp及び30cpの場合、出力の高い非水電解液二次電池を実現することができなかった。この原因を次に挙げる。
【0080】
(1)非水電解液40の粘度が2cpの場合、電極群1への非水電解液40の浸透を促進することができる。しかしながら、この場合、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4間に非水電解液40を均一に保持させることができない。非水電解液40の分布にばらつきが生じるため、出力が低下したものと推測される。
【0081】
(2)非水電解液40の粘度が30cpの場合、非水電解液40が電極群の高さ方向の上部及び下部から電極群1の中央部まで浸透し難い。非水電解液40が電極群1の中央部まで浸透できなかったため、出力が低下したものと推測される。
【0082】
そこで、実施例1及び8乃至12の調査結果からわかる様に、非水電解液40の粘度を4.0cp乃至20cpの範囲内とすることにより、出力の高い非水電解液二次電池を実現できることが分かる。非水電解液40の粘度が4.0cp乃至20cpの範囲内の場合、電極群1への非水電解液40の浸透を促進することができ、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4間に非水電解液40を均一に保持させることができる。
【0083】
好ましい非水電解液40の粘度は、4.5cp乃至12cpの範囲内であり、これより、一層出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。さらに好ましい非水電解液40の粘度は、6.0cp乃至8.0cpの範囲内であり、これより、一層出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。
【0084】
また、本願発明者等は、実施例8乃至12の非水電解液二次電池、並びに比較例3及び4の非水電解液二次電池に対し、電極集電タブのずれ量を調査した。調査する際、工具顕微鏡を用いて電極集電タブ(正極集電タブ13又は負極集電タブ17)のずれ量を測定することにより行った。
【0085】
電極集電タブのずれ量を測定したところ、ずれ量は、実施例8乃至12、並びに比較例3及び4の全てで数十μmであり、ごく僅かであった。このため、実施例8乃至12、並びに比較例3及び4において、複数の正極集電タブ13をほとんど幅方向にずれることなく互いに対向させることができた。同様に、複数の負極集電タブ17をほとんど幅方向にずれることなく互いに対向させることができた。
【0086】
これは、実施例8乃至12、並びに比較例3及び4においても、電極群1の捲回数が増大するとともに電極群1の外周の長さも増大する点を考慮し、電極集電タブ間の距離をX+2πTαnと不等としたためである。
【0087】
次に、上記実施例13及び実施例14の非水電解液二次電池の構成について説明する。実施例13及び14の非水電解液二次電池は、出力特性に優れ、電極集電タブ(正極集電タブ13、負極集電タブ17)の幅方向の位置ずれを抑制できる非水電解液二次電池の例である。
【0088】
(実施例13)
図12に示すように、実施例13の非水電解液二次電池は、形状を円筒型に変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。電極群1は、円筒状に形成され、プレス成形されていない。
【0089】
(実施例14)
図12に示すように、実施例14の非水電解液二次電池は、負極活物質の材料をグラファイトに変えた以外、実施例1の非水電解液二次電池と同様に形成されている。
【0090】
ここで、本願発明者等は、実施例13及び14の非水電解液二次電池に対し、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査(測定)した。
【0091】
図12に示すように、放電深度(DOD)が50%の場合の10秒間の出力を調査した結果、実施例13の非水電解液二次電池では200W、実施例14の非水電解液二次電池では140Wであった。
【0092】
図12からわかるように、円筒型の非水電解液二次電池(実施例13)は、角型の非水電解液二次電池(実施例1)と同様の高い出力を得ることができる。すなわち、非水電解液二次電池の形状に関わりなく、出力の高い非水電解液二次電池を実現できることがわかる。
【0093】
また、チタン酸リチウムに比べ、グラファイトが及ぼす静電引力は小さいものの、グラファイトが及ぼす静電引力は十分大きいため、実施例14のように、負極活物質の材料がグラファイトであっても、出力の高い非水電解液二次電池を実現できることがわかる。
【0094】
また、本願発明者等は、実施例8乃至12の非水電解液二次電池、並びに比較例3及び4の非水電解液二次電池に対し、電極集電タブのずれ量を調査した。調査する際、工具顕微鏡を用いて電極集電タブ(正極集電タブ13又は負極集電タブ17)のずれ量を測定することにより行った。
【0095】
電極集電タブのずれ量を測定したところ、ずれ量は、実施例14で数十μmであり、ごく僅かであった。電極群1をプレス成形しない実施例13において、電極群1がプレス成形される実施例1及び実施例14等と比べ、電極集電タブのずれ量は、若干大きくなるもののごく僅かであった。このため、実施例13及び14において、複数の正極集電タブ13をほとんど幅方向にずれることなしに互いに対向させることができた。同様に、複数の負極集電タブ17をほとんど幅方向にずれることなしに互いに対向させることができた。
【0096】
これは、実施例13及び14においても、電極群1の捲回数が増大するとともに電極群1の外周の長さも増大する点を考慮し、電極集電タブ間の距離をX+2πTαnと不等としたためである。
【0097】
以上のように構成された電極(正極2及び負極3)、並びに電極(正極2及び負極3)を備えた非水電解液二次電池によれば、電極は、2つの帯状のセパレータ4間に介在され、対となる電極及び2つのセパレータ4とともに捲回され、対となる電極及び2つのセパレータ4とともに電極群1を形成するものである。
【0098】
電極は、電極集電体及び活物質含有層を備えている。電極集電体は、帯状の電極集電部及び電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを有し、金属箔で形成されている。活物質含有層は、電極集電部に形成されている。電極群1の内周側から数えたn周目及びn+1周目の電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnである。複数の電極集電タブは、上記の規定を満たすよう形成されている。
【0099】
補正定数αを1.01乃至1.10の範囲内とすることにより、電極群1を、僅かなゆとりをもって捲回して形成することができるため、活物質含有層は非水電解液40を潤沢に保持することができ、活物質含有層付近での非水電解液40(リチウムイオンの量)の不足を抑制することができ、インピーダンスの上昇を抑制することができる。これより、出力の高い実施例1乃至14の非水電解液二次電池を実現することができる。
【0100】
非水電解液40の粘度を4.0cp乃至20cpの範囲内とすることにより、電極群1への非水電解液40の浸透を促進することができ、電極(正極2、負極3)及びセパレータ4間に非水電解液40を均一に保持させることができる。これにより、出力の高い非水電解液二次電池を実現することができる。
【0101】
電極群1の捲回数が増大するとともに電極群1の外周の長さも増大する点を考慮し、電極集電タブ間の距離がX+2πTαnと不等となるよう電極が形成されている。プレス成形された扁平な電極群1及び円筒型の電極群1を問わず、電極集電タブ(正極集電タブ13及び負極集電タブ17)の幅方向のずれ量を抑制することができる。これにより、正極集電タブ13及び負極集電タブ17の短絡を抑制することができる。また、電極集電タブを束ねて行う溶接作業性の向上を図ることができる。
【0102】
上記のことから、出力特性に優れ、電極集電タブの位置ずれを抑制できる電極(正極2及び負極3)、及び電極(正極2及び負極3)を備えた非水電解液二次電池を得ることができる。
【0103】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0104】
例えば、非水電解液二次電池の形状は、角型が望ましい。角型の場合、電極群1は直線部を持つため、電極集電タブ(正極集電タブ13及び負極集電タブ17)の位置ずれを一層抑制することができる。
【0105】
図3に示すように、電極集電タブの位置ずれを抑制する場合、電極群1の厚みT1が8mm乃至20mm、電極群1の幅W1が30mm乃至300mmであることが望ましい。特に、幅W1が50mm乃至100mmであることが望ましい。
【0106】
T1/W1は、1/10乃至1/2であることが望ましい。これは、T1/W1が1/2を超えると、電極集電タブの位置あわせ精度が大きく要求され、電極群1の製造が難しくなるためである。また、T1/W1が1/2未満であると、非水電解液二次電池に占める電極群1の体積密度が低下し、自動車の省スペース要求を満たせなくなるためである。
【0107】
電極集電タブは、溶接にて電極集電部に取付けられていてもよい。上述したように、電極集電部及び複数の電極集電タブが同一の金属箔で一体に形成されていた方が、電極集電タブを溶接にて電極集電部に取付けた場合に比べ、電極群1の厚みの増大を抑制することができる。
【0108】
電極群1の捲回数は、10回に限定されるものではなく、種々変形可能である。正極活物質含有層14及び負極活物質含有層18を形成する材料は、上述した例に限定されるものではなく、種々変形可能である。
この発明の非水電解液電池は、上記非水電解液二次電池に限らず、各種非水電解液電池に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1…電極群、2…正極、3…負極、4…セパレータ、8…正極端子、9…負極端子、11…正極集電体、12…正極集電部、13…正極集電タブ、14…正極活物質含有層、15…負極集電体、16…負極集電部、17…負極集電タブ、18…負極活物質含有層、20…ケース、30…封口体、40…非水電解液、T,T2,T3,T4,T11,T15…厚み、α…補正定数。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータとともに捲回されて電極群を形成する電極において、
帯状の電極集電部及び前記電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを有し、金属箔で形成された電極集電体と、
前記電極集電部に形成された活物質含有層と、を備え、
任意の定数をX、円周率をπ、2つの電極の厚みと2つのセパレータの厚みとの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、前記電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の前記電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnであることを特徴とする電極。
【請求項2】
帯状の電極集電部及び前記電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを含み、金属箔で形成された電極集電体、並びに前記電極集電部に形成された活物質含有層を具備した電極と、前記電極と対となる帯状の電極と、前記2つの電極とともに捲回された2つの帯状のセパレータと、を有した電極群と、
前記電極群を収容した外装体と、
前記外装体内に収容された非水電解液と、を備え、
任意の定数をX、円周率をπ、前記電極の厚み、前記対となる電極の厚み及び前記セパレータ総厚みの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、前記電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の前記電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnであることを特徴とする非水電解液電池。
【請求項3】
前記補正定数αは、1.02乃至1.09の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項4】
前記補正定数αは、1.03乃至1.07の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項5】
前記非水電解液の20℃での粘度は、4.0cp乃至20cpの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項6】
前記電極は、負極であり、
前記活物質含有層は、負極活物質であるチタン酸リチウム及び結着剤を含む材料で形成された負極活物質含有層であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項7】
前記電極群は、扁平な形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項8】
前記セパレータは、無機材料を20%以上含む材料で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項1】
セパレータとともに捲回されて電極群を形成する電極において、
帯状の電極集電部及び前記電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを有し、金属箔で形成された電極集電体と、
前記電極集電部に形成された活物質含有層と、を備え、
任意の定数をX、円周率をπ、2つの電極の厚みと2つのセパレータの厚みとの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、前記電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の前記電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnであることを特徴とする電極。
【請求項2】
帯状の電極集電部及び前記電極集電部の一側縁から突出して形成された複数の電極集電タブを含み、金属箔で形成された電極集電体、並びに前記電極集電部に形成された活物質含有層を具備した電極と、前記電極と対となる帯状の電極と、前記2つの電極とともに捲回された2つの帯状のセパレータと、を有した電極群と、
前記電極群を収容した外装体と、
前記外装体内に収容された非水電解液と、を備え、
任意の定数をX、円周率をπ、前記電極の厚み、前記対となる電極の厚み及び前記セパレータ総厚みの合計をT、1.01乃至1.10の範囲内である補正定数をαとした場合、前記電極群の内周側から数えたn周目及びn+1周目の前記電極集電タブ間の距離は、X+2πTαnであることを特徴とする非水電解液電池。
【請求項3】
前記補正定数αは、1.02乃至1.09の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項4】
前記補正定数αは、1.03乃至1.07の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項5】
前記非水電解液の20℃での粘度は、4.0cp乃至20cpの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項6】
前記電極は、負極であり、
前記活物質含有層は、負極活物質であるチタン酸リチウム及び結着剤を含む材料で形成された負極活物質含有層であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項7】
前記電極群は、扁平な形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【請求項8】
前記セパレータは、無機材料を20%以上含む材料で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−70916(P2011−70916A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220885(P2009−220885)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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