説明

電極構造、電子デバイス、及び電極構造の製造方法

【課題】導電層の相互間で不要な静電容量の発生が抑えられると共に貫通電極が途中で断線することの無い安価な電極構造、電子デバイス、及び電極構造の製造方法を提供する。
【解決手段】一主面側に箱型の凹部21aが設けられた基板21の凹部底面上に圧電振動片3を実装するための二つの実装端子23a、23bと一筋の引回し配線25が設けられ、基板21の凹部底面と下面との間の肉厚部に二つの貫通電極24a、24bが設けられ、基板21の下面に圧電振動片3を外部へ電気的に接続するための二つの外部接続端子28a、28bが設けられた電極構造であって、二つの貫通電極24a、24bは、基板21の凹部21a底面に向かってその口径が連続的に拡大するような四角錘状の凹部26a、26bを備え、それら凹部26a、26bの内面においては、傾斜面を含む一部の領域にのみ導電層24cが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造、電子デバイス、及び電極構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の表面に形成された少なくとも二つの導電パターンが基板の肉厚部に設けられた貫通電極を介して相互に接続された電極構造が知られている。(例えば、特許文献1、2参照)
【0003】
図6は、従来の電極構造を備えた電子デバイスの一例を示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図である。尚、図6(b)上面図においては、電子デバイス内部の構成を分かり易くするため、構成の一部(蓋部材、圧電振動片)を透かして見た状態を示してある。ここに示す従来の電子デバイスにおいては、シリコン(Si)などの半導体材料から成る基板1の一主面側に箱型の凹部1aが設けられ、その凹部1aの内面全体と凹部1aを囲繞する壁部1bの上端面にポリイミドやシリコン酸化物(SiO2)などから成る第一の絶縁層2が形成されている。第一の絶縁層2の表面には、圧電振動片3を実装するための二つの実装端子4a、4bが形成され、それら二つの実装端子4a、4bの上に互いに電気的極性の異なる図示しない二つの励振電極を備えた圧電振動片3が図示しない導電性接着剤を介して実装されている。
【0004】
基板1の凹部1a底面上に配設された二つの実装端子4a、4bの直下には、凹部1a底面からそれと対向する基板1の下面に向かって直線的に貫通する二つの貫通電極5a、5bが設けられている。それら二つの貫通電極5a、5bは、基板1の凹部1a底面と下面との間の肉厚部に設けられた円柱状の貫通孔に、第一の絶縁層2を介して金(Au)などの導電材料が充填又はその内面全体に薄膜状に堆積されることで形成されている。
【0005】
基板1の下面には、ポリイミドやシリコン酸化物(SiO2)などから成る第二の絶縁層6と第三の絶縁層7がその全面にわたって順次積層され、それらのうち第三の絶縁層7の表面には、圧電振動片3の励振電極を外部へ電気的に接続するための二つの外部接続端子8a、8bが形成され、第二の絶縁層6と第三の絶縁層7との間には、二つの外部接続端子8a、8bの間を跨ぐように延在する一筋の引回し配線9が形成されている。
【0006】
また、二つの外部接続端子8a、8bのうち一方の外部接続端子8aと一方の貫通電極5aとの間には、第二の絶縁層6と第三の絶縁層7を貫通する接続電極10aが貫通電極5aと一体的に形成され、一方で他方の外部接続端子8bと引回し配線9との間には、第三の絶縁層7を貫通する接続電極10bが外部接続端子8bと一体的に形成されている。
【0007】
基板1の下面に配設された二つの外部接続端子8a、8bのうち一方の外部接続端子8aは、一方の貫通電極5aと接続電極10aを介して一方の実装端子4aと接続され、他方の外部接続端子8bは、他方の貫通電極5bと接続電極10bと引回し配線9を介して他方の実装端子4bと接続されており、これにより圧電振動片3の二つの励振電極がそれぞれ対応する外部接続端子8a、8bと電気的に接続されている。
【0008】
また、基板1の凹部1aを囲繞する壁部1bの上端部には、シリコン(Si)やガラスなどから成る平板状の蓋部材11が接合され、これにより圧電振動片3が凹部1a内に気密封止された状態となっている。
【特許文献1】特開2006−279872号公報
【特許文献2】特開2007−267101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上説明した従来の電極構造においては、基板表面に形成された各導電層(実装端子、引回し配線、貫通電極、外部接続端子)の相互間に基板の肉厚部を挟んで静電容量(寄生容量)が発生し、これが圧電振動片の動作(発振)に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0010】
以上の静電容量を決定するパラメーターの一つとしては、各導電層の対向面積が挙げられ、静電容量を減少させるためには、各導電層の形成領域を狭めて対向面積を減少させることが効果的であり、とりわけ貫通電極においては、導電層の形成領域を狭めるために貫通孔の口径を小さくすることとなる。
【0011】
しかしながら、貫通電極は、一般的に貫通孔内に導電材料を充填又はその内面全体に薄膜状に堆積させることで形成されるため、口径が小さくなることで貫通孔内に導電材料が入り込み難くなり、貫通孔内で導電層が途切れて断線したり、断線しないまでも導電層が変形して電気的特性(電気抵抗等)が変化したり導電層が剥離し易くなる虞がある。
【0012】
また、特に貫通孔内に導電材料を充填させる場合など、貫通孔内に存在する導電材料の総量が多くなると、それに伴って導電材料の内部応力や熱による体積変化(膨張、収縮)も大きくなり、それらの応力によって貫通孔自体が歪んだり破損する虞がある。貫通孔が歪んだり破損すると、電子デバイスの内部が気密封止されるような場合には、その個所において外部との間でリークが発生し、内部の気密性が保たれなくなる。
【0013】
また、貫通孔に導電材料を充填させるためには、その分、より多くの導電材料が必要となるため、材料費により製品コストが増大するという問題もある。特に小型電子部品の分野においては、電気的特性に係る理由などから、導電材料として金(Au)などの貴金属が用いられることがあり、そのような場合には以上の問題がより顕著となる。
【0014】
また、静電容量を減少させる別の手段として、各導電層と基板との間に低誘電率の絶縁層を厚く形成し、各導電層の対向領域内の実質的な誘電率を低下させることも効果的であるが、絶縁層を厚く形成することでその材料費により製品コストが増大すると共に、絶縁層の内部応力により基板に反りが生じる虞がある。特に貫通電極においては、その貫通孔内に厚く形成された絶縁層の内部応力により導電層が断線したり剥離する虞や貫通孔自体が歪んだり破損する虞があり、また、絶縁材料は、導電材料と同様に貫通孔内に入り込み難いため、貫通孔内に絶縁層を厚く形成すること自体も困難である。
【0015】
また、貫通孔の口径が小さくなると、基板に貫通孔を高精度で形成すること自体も困難となるため、それに起因する貫通孔の歪みなどによって、以上の貫通孔に係る問題はよりいっそう起こり易くなる。
【0016】
本発明は、以上の問題点に鑑みて成されたものであり、導電層の相互間で不要な静電容量の発生が抑えられると共に貫通電極が途中で断線することの無い安価な電極構造、電子デバイス、及び電極構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
基板の表面に形成された二つの導電パターンが貫通電極を介して相互に接続された電極構造であって、前記貫通電極は、前記基板の肉厚部に形成された貫通孔と当該貫通孔の内面に形成された導電層とを備え、前記貫通孔は、前記二つの導電パターンのうち少なくとも一つと前記導電層との接続部に、前記基板の一表面に向かって口径が連続的に拡大するような傾斜面を備えた凹部を有し、当該凹部の内面において、前記貫通電極の導電層は、
前記傾斜面を含む一部の領域にのみ形成されている電極構造とする。
【0018】
前記凹部は、前記貫通電極の深さ方向の一端部からそれと対向する他端部に向かって口径が連続的に拡大するように形成され得る。
【0019】
前記凹部は、前記貫通電極の深さ方向の一端部とそれと対向する他端部との間に位置する点から前記一端部に向かって口径が連続的に拡大するように形成され得る。
【0020】
前記凹部は、角錐状に形成され得る。
【0021】
以上の何れか一つに記載の電極構造を備えた基板上に、前記電極構造の導電パターンと接続されるように電子部品を実装して成る電子デバイスとする。
【0022】
前記電子部品と接続された前記導電パターンは、前記電子部品が実装される位置に当該電子部品を実装するための実装端子を備え、前記電極構造の貫通電極は、当該実装端子と平面的に重ならない位置に配置され得る。
【0023】
前記電子部品と接続された前記導電パターンと前記貫通電極を介して接続された他の導電パターンは、前記電子部品を外部へ電気的に接続するための外部接続端子を備え、前記貫通電極は、当該外部接続端子と平面的に重なる位置に配置され得る。
【0024】
前記基板は、平面視矩形状を成し、前記貫通電極は、当該基板の一辺の中間を通る法線に沿って配置され得る。
【0025】
基板の表面に形成された二つの導電パターンが貫通電極を介して相互に接続された電極構造の製造方法であって、少なくとも、所定の結晶方位を有する半導体材料から成る基板を用い、当該基板の表面の貫通電極を形成すべき位置に当該貫通電極の孔形状に対応した開口部を有するレジストパターンを形成する工程と、当該レジストパターンをエッチングマスクとして前記開口部から露出された前記基板をウェットエッチングにより一定量除去し、前記基板の表面に向かって口径が連続的に拡大するような傾斜面を備えた凹部を形成する工程とを有する電極構造の製造方法とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、貫通電極と導電パターンとの接続部に基板の表面に向かって貫通電極の口径が連続的に拡大するような傾斜面を備えた凹部を設け、その凹部内においては傾斜面を含む一部の領域にのみ導電層を形成することで、貫通電極の口径が拡大して貫通電極の形成精度が向上すると共に、貫通電極とその周辺に存在する導電パターンとの対向面積が減少してそれらの相互間に発生する不要な静電容量(寄生容量)が低減され、加えて、導電層を構成する導電材料の総量が減少してその材料費が削減されると共に、導電材料の内部応力や熱による体積変化(膨張、収縮)によって貫通電極が歪んだり破損するのが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
基板の表面に形成された二つの導電パターンが貫通電極を介して相互に接続された電極構造であって、貫通電極は、基板の肉厚部に形成された貫通孔とその内面に形成された導電層とを備え、貫通孔は、二つの導電パターンのうち少なくとも一つと導電層との接続部に基板の一表面に向かって口径が連続的に拡大するような傾斜面を備えた凹部を有し、その凹部の内面において貫通電極の導電層は、傾斜面を含む一部の領域にのみ形成されている電極構造とする。
【実施例1】
【0028】
図1は、実施例1における電極構造を備えた電子デバイスを示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図である。尚、図1においては、電子デバイス内部の構成を分かり易くするため、構成の一部(蓋部材、圧電振動片)を省略してある。ここに示す電子デバイスにおいては、シリコン(Si)から成る基板21の一主面側に箱型の凹部21aが設けられ、その凹部21aの内面全体と凹部21aを囲繞する壁部21bの上端面にシリコン酸化物(SiO2)から成る第一の絶縁層22が形成されている。第一の絶縁層22の表面には、圧電振動片3を実装するための二つの実装端子23a、23bが形成され、それら二つの実装端子23a、23bの上に互いに電気的極性の異なる図示しない二つの励振電極を備えた圧電振動片3(図6参照)が図示しない導電性接着剤を介して実装されている。
【0029】
基板21の凹部21a底面上に配設された二つの実装端子23a、23bのうち一方の実装端子23aに隣接する位置には、基板21の凹部21a底面からそれと対向する下面に向かって貫通する貫通電極24aが設けられ、一方で他方の実装端子23bには、凹部21a底面の長手方向へ延びる一筋の引回し配線25が一体的に形成されると共に、その引回し配線25の先端部直下に基板21の凹部21a底面からそれと対向する下面に向かって貫通する貫通電極24bが設けられている。
【0030】
それら二つの貫通電極24a、24bは、基板21の凹部21a底面と下面との間の肉厚部を貫通する四角錐状の凹部26a、26bの先端部(頂部)に金(Au)から成る導電材料が局所的に充填されると共に、四角錘を構成する四つの傾斜面のうち実装端子23a、23b寄りの傾斜面の一部に同じく金(Au)から成る導電材料が薄膜状に堆積され、凹部26a、26bの内面に部分的な導電層24cが形成されることで構成されている。
【0031】
以上のように四角錘状の凹部26a、26bにおいては、その内面の一部の領域にのみ導電層24cが形成されていることから、従来と比較して使用される導電材料(Au)の総量が減少し、その材料費が削減されると共に、導電層の内部応力や熱による堆積変化(膨張、収縮)が低減され、加えて、貫通部の孔径が拡大されることでそれらの応力が分散され、貫通部の歪みや破損が防止される。
【0032】
また、貫通電極24a、24bの導電層の表面積が減少することで、周辺に存在する他の導電層(特に後述の外部接続端子)との対向面積も減少し、それらの相互間に生じる不要な静電容量(寄生容量)が減少するため、圧電振動片3の動作が安定して行われる。
【0033】
また、凹部26a、26bの傾斜面上に配設された導電層24cと、基板21の凹部21a底面上に配設された実装端子23a及び引回し配線25とは、それぞれ内角が鈍角を成すように緩やかに接続されるため、それらの接続部位に不要な応力が掛かることはなく、断線が防止される。
【0034】
また、凹部26a、26bにより貫通電極24a、24bの口径が拡大されることで、貫通電極24a、24bの形成時に貫通孔内に導電材料(Au)が入り込み易くなり、貫通電極24a、24bの形成精度が向上して導電層24cの断線や剥離が防止され、それと同様に貫通孔内面の第一の絶縁層22の形成精度も向上して第一の絶縁層22の層厚が均一化され、それによって絶縁膜の内部応力のムラが減少し、貫通電極24a、24bの断線や貫通孔の歪みや破損、また、基板21が半導体基板である場合には絶縁層断裂による基板21とのショートが防止され、ひいては、第一の絶縁層22の層厚が均一化されることが、貫通孔内の第一の絶縁層22の総量を減少させることに繋がるため、絶縁層の材料費をも削減することが可能である。
【0035】
基板21の下面には、シリコン酸化物(SiO2)から成る第二の絶縁層27がその全面にわたって形成され、その第二の絶縁層27の表面に圧電振動片3の励振電極を外部へ電気的に接続するための二つの外部接続端子28a、28bが形成されている。
【0036】
二つの外部接続端子28a、28bのうち一方の外部接続端子28aと一方の貫通電極24aとの間には、第二の絶縁層27を貫通する接続電極29aが貫通電極24aと一体的に形成され、一方で他方の外部接続端子28bと他方の貫通電極24bとの間には、同じく第二の絶縁層27を貫通する接続電極29bが貫通電極24bと一体的に形成されている。
【0037】
即ち、二つの外部接続端子28a、28bのうち一方の外部接続端子28aは、貫通電極24aと接続電極29aを介して一方の実装端子23aと接続され、他方の外部接続端子28bは、貫通電極24bと接続電極29bと引回し配線25を介して他方の実装端子23bと接続されており、これにより圧電振動片3の二つの励振電極がそれぞれ対応する外部接続端子28a、28bと電気的に接続されている。
【0038】
また、基板21の壁部21bの上端部には、シリコン(Si)やガラスなどから成る平板状の蓋部材11が接合され(図6参照)、これにより圧電振動片3が凹部21a内に気密封止された状態となっている。
【0039】
図2−1、図2−2、及び図2−3は、図1に示した実施例1における電極構造の製造方法を示す工程毎のA−A’断面図である。シリコン(Si)から成る基板を用いて図1に示した電極構造を製造する際には、まず、図2−1(a)に示すように、予めエッチングなどにより一主面側に箱型の凹部21aが形成された基板21の下面全体にCVD法を用いてSiO2から成る第二の絶縁層27を形成し、次いで、その第二の絶縁層27の表面全体にスパッタ法を用いて金(Au)から成る導電層31を形成する。
【0040】
その後、図2−1(b)に示すように、導電層31の表面全体に任意のフォトレジスト材料をスピンコート法を用いて塗布したうえで露光及び現像処理を行い、二つの外部接続端子28a、28bを形成すべき位置に外部接続端子28a、28bの形状に対応したレジストパターン32を形成し、続いて、図2−1(c)に示すように、そのレジストパターン32をエッチングマスクとして、エッチャントにヨウ素又はヨウ化カリウムを用いたウェットエッチングにより、露出領域の導電層31を第二の絶縁層27が露出するまで除去し、基板21の下面に二つの外部接続端子28a、28bを形成する。
【0041】
その後、図2−1(d)に示すように、使用後のレジストパターン32をアセトンなどを用いて剥離し、次いで、図−1(e)に示すように、基板21の上面全体に任意のフォトレジスト材料を塗布したうえで露光及び現像処理を行い、二つの貫通電極24a、24bを形成すべき位置に貫通電極24a、24bの口径に応じた矩形状の開口部を備えたレジストパターン33を形成し、続いて、図2−1(f)に示すように、そのレジストパターン33をエッチングマスクとして、エッチャントに水酸化カリウムを用いたウェットエッチングにより、露出領域の基板21を第二の絶縁層27が露出するまで除去し、貫通電極形成用の二つの凹部34を形成する。
【0042】
その際、基板21の結晶方位とエッチング特性の関係から、エッチングが進むに連れて凹部34が四角錘状に形成される。例えば、結晶方位が(1、0、0)であるシリコン基板に対して、エッチャントに水酸化カリウムを用いたアルカリ性のウェットエッチングを行うと、凹部34は四角錘の底面(貫通孔開口面)に対して54.7°で傾斜する四つの傾斜面を持つ四角錘状となる。
【0043】
その後、図2−2(g)に示すように、使用後のレジストパターン33をアセトンなどを用いて剥離し、次いで、図2−2(h)に示すように、凹部34の内面を含む基板21の上面全体にCVD法を用いてSiO2から成る第一の絶縁層22を形成する。
【0044】
その後、図2−2(i)に示すように、第一の絶縁層22の表面全体に任意のフォトレジスト材料を塗布したうえで露光及び現像処理を行い、貫通孔34の先端(頂部)に対応した位置に開口部を備えたレジストパターン35を形成し、続いて、図2−2(j)に示すように、そのレジストパターン35をエッチングマスクとして、エッチャントにフッ化炭素ガスを用いたドライエッチングにより、露出領域の第一の絶縁層22とその下層の第二の絶縁層27を外部接続端子28a、28bが露出するまで除去する。
【0045】
その後、図2−2(k)に示すように、使用後のレジストパターン35をアセトンなどを用いて剥離し、次いで、図2−2(l)に示すように、凹部34の内面を含めた基板21の上面全体にスパッタ法を用いて金(Au)から成る導電層36を形成する。
【0046】
その後、図2−3(m)に示すように、金属層36の表面全体に任意のフォトレジスト材料を塗布したうえで露光及び現像処理を行い、二つの実装端子23a、23bを形成すべき位置に実装端子23a、23bの形状に対応した開口部を備え、凹部34の先端領域に凹部34の先端形状に対応した開口部を備えたレジストパターン37を形成し、続いて、図2−3(n)に示すように、そのレジストパターン37をメッキマスクとして、Auメッキ液により露出領域の導電層36表面にAuメッキ層を形成し、基板21に実装端子23a、23bの肉厚部分と貫通電極24a、24bの先端部分と接続電極29a、29bを形成する。
【0047】
その後、図2−3(o)に示すように、使用後のレジストパターン37をアセトンなどを用いて剥離し、次いで、図2−3(p)に示すように、Auメッキ層表面を含む導電層36の表面全体に任意のフォトレジスト材料をスピンコート法を用いて塗布したうえで露光及び現像処理を行い、二つの実装端子23a、23bと二つの貫通電極24a、24bの傾斜面上の配線部分と引回し配線25を形成すべき領域を覆うレジストパターン38を形成し、続いて、そのレジストパターン38をエッチングマスクとして、図2−3(q)に示すように、エッチャントにヨウ素又はヨウ化カリウムを用いたウェットエッチングにより、露出領域の金属層36を第一の絶縁層22が露出するまで除去し、実装端子23a、23bと貫通電極24a、24bの傾斜面上の配線部分と引回し配線25を形成し、最後に、図2−3(r)に示すように、使用後のレジストパターン38をアセトンなどを用いて剥離し、実施例1における電極構造が完成する。
【0048】
以上のようにして実施例1における電極構造が完成した後は、基板21の凹部21a底面上に配設された二つの実装端子23a、23bの上に導電性接着剤を用いて圧電振動片3を実装し、真空雰囲気中において基板21の壁部21b上端部に蓋部材11を接合することで、内部が気密封止された電子デバイスが完成する。
【0049】
尚、以上の製造方法は、あくまで一つの実施例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、貫通電極形成用の凹部34をエッチングのような化学的加工ではなく、切削などの機械的加工により形成するようなことも可能である。
【実施例2】
【0050】
図3は、実施例2における電極構造を備えた電子デバイスを示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図、(d)(b)のB−B’断面図である。尚、図3においては、電子デバイス内部の構成を分かり易くするため、構成の一部(蓋部材、圧電振動片)を省略してある。ここに示す電子デバイスは、前述の実施例1と同様の基本構成を備え、その最たる特徴は貫通電極の配置にある。即ち、本実施例2における電極構造においては、図3に示すように、実施例1と同様の二つの貫通電極24a、24bのうち一方の貫通電極24aが、基板21の凹部21a底面上に配設された二つの実装端子23a、23bの中間に配置され、その下端部が基板21の下面に配設された一方の外部接続端子28aの中央部に接続されている。
【0051】
通常、図3に示すような平面視矩形状の基板21においては、基板21をその長手方向の軸周りに捻った際に発生する捻り応力が、軸から離れた領域に発生し易いため、実施例1のように貫通電極24aが軸となる二つの実装端子23a、23bの中間を通る直線L上から外れた位置に配置されていると、特に電子デバイスを外部の回路基板に実装する際などに捻り応力が貫通電極24aに大きく作用し、その応力によって貫通電極24aが断線したり基板21から剥離する虞がある。しかしながら、本実施例2においては、以上の捻り応力が比較的発生し難い二つの実装端子23a、23bの中間を通る直線L(基板21の短辺の中間を通る法線)に沿って貫通電極24aが配置されているため、以上の問題が起こり難い。
【0052】
尚、本実施例2において、一方の貫通電極24aのみならず他方の貫通電極24bをも直線Lに沿って配置すれば、貫通電極24bについても同様の効果が得られるため、より好ましい。また、基板21に生じる捻り応力は、その長手方向の軸周りだけではなく、短手方向の軸周りにも発生するため、そちら側の捻り応力も考慮して貫通電極24a、24bの適切な配置箇所を決定するようにしてもよい。
【実施例3】
【0053】
図4は、実施例3における電極構造を備えた電子デバイスを示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図である。尚、図4においては、電子デバイス内部の構成を分かり易くするため、構成の一部(蓋部材、圧電振動片)を省略してある。ここに示す電子デバイスは、前述の実施例1と同様の基本構成を備え、その最たる特徴は貫通電極の形状にある。即ち、本実施例3における電極構造においては、図4に示すように、二つの貫通電極24a、24bの上端側が実施例1と同様の四角錘状の電極構造とされると共に、それと連通する貫通電極24a、24bの下端側が従来と同様の円柱状の電極構造とされている。
【0054】
貫通電極24a、24bの上端側においては、実施例1と同様の構成を備えていることから実施例1と同様の効果が得られると共に、貫通電極全体が四角錘状とされている実施例1と比較して貫通孔の口径を小さく設計できることから(傾斜面の角度が同じ場合)貫通電極のレイアウトの自由度が増し、一方で貫通電極24a、24bの下端側においては、ある程度の深さが確保された直線的な貫通孔とされていることから導電材料の充填領域が拡大され、貫通電極の強度が増す。
【実施例4】
【0055】
図5は、実施例4における電極構造を備えた電子デバイスを示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図である。尚、図5においては、電子デバイス内部の構成を分かり易くするため、構成の一部(蓋部材、圧電振動片)を省略してある。ここに示す電子デバイスは、実施例1と同様の基本構成を備え、その最たる特徴は、貫通電極と引回し配線の配置にある。即ち、本実施例4における電極構造においては、図5に示すように、実施例1において実装端子23bから離反した位置に配置されていた貫通電極24bが実装端子23bに隣接して配置されると共に、基板21の凹部21a底面上に配置されていた引回し配線25が従来と同様に基板21の下面側(従来における第二の絶縁層6と第三の絶縁層7との間)に配置されている。
【0056】
前述の実施例1、3における貫通電極の形状や実施例2における貫通電極の配置は、本実施例4のように引回し配線25が基板21の下面側に配置されている場合であっても適用することが可能であり、それらの実施例と同様の効果が得られる。
【0057】
以上、幾つかの実施例を示して本発明について説明したが、本発明の電極構造が形成される基板は、半導体基板に限らずセラミック基板などの絶縁性基板であってもよく、また、本発明の電子デバイスは、凹部内に電子部品を気密封止したパッケージ部品に限らず単に平板状の基板に電子部品が実装されたものであってもよく、更に電子部品についても圧電振動片に限らずその他種々のものが対象となる。
【0058】
また、本発明の電極構造において貫通電極と導電パターンとの接続部に形成される傾斜面を備えた凹部は、以上の実施例で示したような四角錘状のものに限定されず、少なくともその一部に貫通電極の口径が拡大するような傾斜面を備えていればよく、例えば、三角錐などのその他の多角錘又は円錐、V溝やかまぼこ状の溝、半球、更にはそれらを深さ方向に分断した形状などを含むものである。
【0059】
また、本発明の電極構造は、貫通電極が基板の互いに対向する二面を直線的に繋ぐ場合にのみ有効なものではなく、基板の主面と側面、又同一面内の異なる点を相互に繋ぐような場合にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1における電極構造を備えた電子デバイスを示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図
【図2−1】図1に示した電極構造の製造方法を示す工程毎のA−A’断面図
【図2−2】図1に示した電極構造の製造方法を示す工程毎のA−A’断面図
【図2−3】図1に示した電極構造の製造方法を示す工程毎のA−A’断面図
【図3】実施例2における電極構造を備えた電子デバイスを示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図、(d)(b)のB−B’断面図
【図4】実施例3における電極構造を備えた電子デバイスを示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図
【図5】実施例4における電極構造を備えた電子デバイスを示す図で、(a)下面図、(b)上面図、(c)(b)のA−A’断面図
【図6】従来の電極構造を備えた電子デバイスの一例を示す図で、(a)下面図、(b)上面図(c)(b)のA−A’断面図
【符号の説明】
【0061】
1 基板
1a 凹部
1b 壁部
2 第一の絶縁層
3 圧電振動片
4a 実装端子
4b 実装端子
5a 貫通電極
5b 貫通電極
6 第二の絶縁層
7 第三の絶縁層
8a 外部接続端子
8b 外部接続端子
9 引回し配線
10a 接続電極(バイアホール)
10b 接続電極(バイアホール)
11 蓋部材
21 基板
21a 凹部
21b 壁部
22 第一の絶縁層
23a 実装端子
23b 実装端子
24a 貫通電極
24b 貫通電極
24c 導電層
25 引回し配線
26a 凹部
26b 凹部
27 第二の絶縁層
28a 外部接続端子
28b 外部接続端子
29a 接続電極(バイアホール)
29b 接続電極(バイアホール)
31 導電層
32 レジストパターン
33 レジストパターン
34 凹部
35 レジストパターン
36 導電層
37 レジストパターン
38 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成された二つの導電パターンが貫通電極を介して相互に接続された電極構造であって、
前記貫通電極は、前記基板の肉厚部に形成された貫通孔と当該貫通孔の内面に形成された導電層とを備え、前記貫通孔は、前記二つの導電パターンのうち少なくとも一つと前記導電層との接続部に、前記基板の一表面に向かって口径が連続的に拡大するような傾斜面を備えた凹部を有し、当該凹部の内面において、前記貫通電極の導電層は、前記傾斜面を含む一部の領域にのみ形成されていることを特徴とする電極構造。
【請求項2】
前記凹部は、前記貫通電極の深さ方向の一端部からそれと対向する他端部に向かって口径が連続的に拡大するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
前記凹部は、前記貫通電極の深さ方向の一端部とそれと対向する他端部との間に位置する点から前記一端部に向かって口径が連続的に拡大するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。
【請求項4】
前記凹部は、角錐状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の電極構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載の電極構造を備えた基板上に、前記電極構造の導電パターンと接続されるように電子部品を実装して成ることを特徴とする電子デバイス。
【請求項6】
前記電子部品と接続された前記導電パターンは、前記電子部品が実装される位置に当該電子部品を実装するための実装端子を備え、
前記電極構造の貫通電極は、当該実装端子と平面的に重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記電子部品と接続された前記導電パターンと前記貫通電極を介して接続された他の導電パターンは、前記電子部品を外部へ電気的に接続するための外部接続端子を備え、
前記貫通電極は、当該外部接続端子と平面的に重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記基板は、平面視矩形状を成し、
前記貫通電極は、当該基板の一辺の中間を通る法線に沿って配置されていることを特徴とする請求項6、又は7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
基板の表面に形成された二つの導電パターンが貫通電極を介して相互に接続された電極構造の製造方法であって、少なくとも、
所定の結晶方位を有する半導体材料から成る基板を用い、当該基板の表面の貫通電極を形成すべき位置に当該貫通電極の孔形状に対応した開口部を有するレジストパターンを形成する工程と、
当該レジストパターンをエッチングマスクとして前記開口部から露出された前記基板をウェットエッチングにより一定量除去し、前記基板の一表面に向かって口径が連続的に拡大するような傾斜面を備えた凹部を形成する工程とを有することを特徴とする電極構造の製造方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−225218(P2009−225218A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68891(P2008−68891)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】