電極表面上の金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法
電気化学的に動作するシステムにおいて電極表面上の金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法が説明される。金属酸化物は酸化環境にさらされる金属コンポーネントから形成される揮発性金属酸化物の電気化学アシスト還元によって形成される。一例において、金属コンポーネントに負の保護電位を印加することでカソードの被毒を軽減または防止する方法が説明される。別の例において、補助酸素ポンプセルの使用により金属コンポーネント自体から酸素を除去し、よって金属コンポーネントから放出される揮発性酸化物の量を低減することで、カソード上の金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法が説明される。別の例において、燃料チャンバまたは還元環境内の還元により酸化物種を含むコンポーネントから形成される揮発性亜酸化物の形成を軽減または防止するための、コンポーネントに正の保護電位を印加する工程を含む、方法が説明される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学的に動作するシステムに関し、特に固体酸化物燃料電池の電極被毒の軽減または防止に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(SOFC)は燃料を電気エネルギーに転換するための有望な方式である。しかし、これまでにSOFC技術は初めに考えられていたより効率が低いことが判明した。この低効率の一部は、「カソード被毒」を生じさせる電池内在不純物またはスタック(システム)固有汚染物質に帰因させることができる。例えば、「クロム中毒」と称されるカソード被毒の一形態は、SOFCの寿命及び効率を阻害する。詳しくは、SOFCスタックの高温動作中、スタックの空気チャンバまたはガス導管内の鋼または金属合金に存在するクロムが酸化され、とりわけ、揮発性Cr(VI)固体酸化物種を形成する。そのような化学種の例にはCrO3及びCrO2(OH)2があり、これらは多孔質カソードを有する空気チャンバ全体に侵入する。SOFCにおけるカソード被毒の結果、カソードにおいてCr2O3を生成するCr(VI)種の電気化学アシスト還元がおこり、このCr2O3がカソードの内孔表面上に堆積する。これはカソードにおける酸素取込を阻止し、最終的に時間の経過にともなう燃料電池の性能劣化をおこさせる。クロム中毒はクロム含有金属によって特異的に生じるが、他にも空気中で揮発性酸化物を形成してカソードに侵入することができる金属がある。カソードで反応し、同様の態様で内部電極表面上に堆積することができる固体化合物を他の電池コンポーネントと形成する、やはりカソード酸素交換を阻止するであろう、既知の揮発性酸化物がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この問題を最小限に抑えようとして、SOFC空気チャンバ内の鋼及びその他のCr含有合金がバリア層でコーティングされた。短時間であれば、そのような層は、クロム酸化、揮発性Cr(VI)種の形成及びその後のカソード被毒の進行を遅らせて、停止さえさせる。しかし、時間の経過とともにCrはバリア層を通って拡散し、クロム中毒をおこすことができる。したがって、電極被毒の軽減または防止が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電気化学システムにおける電極表面上の金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法が本明細書に説明されている。金属酸化物は、酸化環境にさらされた金属コンポーネントから形成される揮発性金属酸化物の電気化学アシスト還元または反応によって形成される。一例において、中毒をおこし得る化学種を含有する金属コンポーネントに負の保護電位を印加することによってカソードの被毒を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。別の例において、補助酸素ポンプセル及び酸素ポンプ電圧の使用によって酸素を間断なく除去することにより、金属コンポーネント内の酸素の活性を低くしておくことでカソード表面上の金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。別の例において、酸化物種からなるコンポーネントに正の保護電位を印加することによるSOFCデバイスまたは同様のデバイスの燃料チャンバまたは燃料導管におけるそのようなコンポーネントからの揮発性不完全還元金属酸化物の形成を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。
【0005】
本明細書に説明される方法は、SOFC、電気化学センサ、ガス分離セル及び同様の電気化学システムにおけるカソードのような電極の被毒を軽減または防止するための新規な手法を提供するという利点を有する。本発明の利点は、ある程度は以下の説明で述べられるであろうし、ある程度は説明または特許請求の範囲から明白になるであろう。上述の全般的説明及び以下の詳細な説明が例示及び説明に過ぎず、限定ではないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】図1Aは、燃料電池に存在するクロム含有ステンレス鋼フレームに負の保護電位が印加されている、略図を示す。
【図1B】図1Bは、燃料電池に存在するクロム含有ステンレス鋼フレームに負の保護電位が印加されている、略図を示す。
【図1C】図1Cは、燃料電池に存在するクロム含有ステンレス鋼フレームに負の保護電位が印加されている、略図を示す。
【図1D】図1Dは、燃料電池に存在するクロム含有ステンレス鋼フレームに負の保護電位が印加されている、略図を示す。
【図2】図2は、金属コンポーネントから周囲ガスに酸素が電気化学的にポンプで排出されている、略図を示す。
【図3】図3は、カソードが分極されておらず(バイアス0V)、Cr(VI)酸化物またはCr(VI)酸-水酸化物蒸気がない場合に対する、例示の対称単セルデバイスのインピーダンスデータを示す。
【図4】図4は、Cr(VI)酸化物またはCr(VI)酸-水酸化物蒸気がない場合の、例示の対称単セルデバイスの電流−電圧特性を示す。
【図5】図5は、カソードが分極されており(バイアス−0.3V)、Cr(VI)酸化物またはCr(VI)酸-水酸化物蒸気がない場合に対する、例示の対称単セルデバイスのインピーダンスを示す。
【図6】図6は、バイアスの下での、例示の対称単セルデバイスの時間の経過にともなう電流密度の推移を示す。
【図7A】図7Aは、揮発性Cr(VI)種としてCr2O3にさらしたときの、例示の対称単セルデバイスの無バイアス印加時インピーダンスを示す。
【図7B】図7Bは、揮発性Cr(VI)種としてCr2O3にさらしたときの、例示の対称単セルデバイスの電流−電圧特性を示す。
【図8A】図8Aは、Cr(VI)酸-水酸化物蒸気源としてCr2O3にさらしたときの、例示の対称単セルデバイスの電流−電圧特性を示す。
【図8B】図8Bは、Cr(VI)酸-水酸化物蒸気源としてCr2O3にさらしたときの、例示の対称単セルデバイスの無バイアス印加下における時間の関数としての電流密度推移を示す。
【図9】図9は、鋼にさらされたときの、例示の対称単セルデバイスの(−0.3Vのカソードバイアスでシミュレートされた)カソードの分極下での性能低下を(A)保護電位無し及び(B)保護電位有りについて示す。
【図10】図10は、様々な保護電位設定に対する、バイアスが印加された例示の対称単セルデバイスの電流密度推移を示す。
【図11】図11は、様々な保護電位下における、バイアスが印加された例示の対称単セルデバイスの電流密度推移を示す。
【図12】図12は、鋼板に外部電位が印加されている、例示の対称単セルデバイスの劣化速度の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス及び/または方法が開示及び説明される前に、以下で説明される例が特定の化合物、合成方法または用法に限定されず、したがって、当然、変わり得ることは理解されるべきである。本明細書に用いられる用語が特定の例を説明する目的のために過ぎず、限定は目的とされていないことも理解されるべきである。
【0008】
本明細書及び添付される特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義される多くの語句に言及がなされるであろう。
【0009】
本明細書及び添付される特許請求の範囲で用いられるように、単数形の冠詞‘a’,‘an'及び‘the’は、そうではないことを文脈が明白に規定していない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。すなわち、例えば「金属酸化物蒸気」への言及は、2つないしさらに多くのそのような金属酸化物蒸気の混合気を含み、他も同様である。
【0010】
「必要(状況)に応じる」または「必要(状況)に応じて」は、引き続いて記述されるイベントまたは状況がおこり得るかまたはおこり得ないことを意味し、そのイベントまたは状況がおこる例及びおこらない例をその記述が含むことを意味する。例えば、語句「必要に応じる鋼」は、その鋼が存在し得るかまたは存在し得ないことを意味する。
【0011】
ここで様々な例を参照して本発明を説明する。以下の例では、本発明の限定は目的とはされておらず、実施形態例が提供される。
【0012】
電極上の金属酸化物の堆積を防止または軽減する方法が本明細書に説明される。本明細書に用いられるような語句「金属コンポーネント」は、SOFCスタック、電気化学的センサ、ガス分離ユニット、化学反応器またはガス導管のような、システム内に存在する金属部品と定義される。語句「金属種」は金属コンポーネント内に存在する元素と定義される。金属種のタイプ、システム動作温度及びシステム動作環境(酸素含有量)に依存して、いくつかの金属種は酸化され得るか、または金属コンポーネントの表面まで移動し、続いて酸化されることにさえなり得る。金属種には揮発性金属酸化物を形成する種がある。そのような揮発性酸化物は、多孔質電極を含むがこれには限定されない、システム内のコンポーネントに侵入し得る。いくつかの揮発性酸化物は電極材料と反応して、以降の電極における酸素交換を妨げ得る酸化物層を形成することができる。動作中に分極を受けるカソードにおいて、そのような揮発性酸化物はある程度還元(例えば電気化学アシスト還元)されてカソード内部表面上に堆積することもできる。揮発性酸化物を形成する金属種の例には、クロム、タングステン、モリブデンまたはこれらのいずれかの混合物があるが、これらには限定されない。容易に還元されて不揮発性酸化物になり得る揮発性酸化物を形成する金属種の例にはクロムがある。そのような金属種を含有する金属の例には鋼及び合金があるがこれらには限定されない。一例において、金属コンポーネントは、デバイスを支持するための金属フレーム、ガス導入管、または電気化学デバイスを収めるために用いられる金属ケーシング、あるいはシステム内のその他いずれかの金属アクセサリーである。例えば、金属コンポーネントは固体酸化物燃料電池(SOFC)スタックの空気チャンバに存在し得る。
【0013】
一例において、金属コンポーネントに存在する金属種で形成される揮発性金属酸化物からの電極表面上の金属酸化物の堆積は、金属コンポーネントに負の保護電位を印加することによって軽減または防止することができる。語句「負の保護電位」は本明細書において、金属コンポーネントに印加されると、発生する金属酸化物蒸気の量を軽減するかまたは金属蒸気の発生を防止する、負電位と定義される。すなわち、負の保護電位は、金属コンポーネントに存在する金属種による電極の被毒の可能性を低めるかまたは被毒を防止する。理論に束縛されることは望まないが、この負の保護電位は、金属コンポーネントの酸化を制限し、不揮発性金属酸化物種の総圧力を低めるように機能し、高酸化状態にある揮発性金属酸化物種に対するシンクとしてさえ作用し得る。さらに、負の保護電位は被毒を最適に抑制するために動作中に変えることができる。負の保護電位はいずれの金属コンポーネントにも印加することができる。一例において、負の保護電位は全ての金属コンポーネントに一様に印加される。別の例において、負の保護電位は選ばれた金属コンポーネントに印加される。負の保護電位は、金属コンポーネントが電極に比較して負の電位に設定される、金属コンポーネントとカソードの間の負の電位差として印加される。
【0014】
一例において、負の保護電位は金属コンポーネントとシステム内で最も負電位にあるカソードの間に印加される。例えば、動作中のシステムにおいてカソードが接地に対して−0.2Vの電位にあれば、負の保護電位は金属コンポーネントを接地に対して−0.2Vより小さい(例えば、−0.4V,−0.5V,−0.6V,等)電位に設定することになる。負の保護電位は金属コンポーネントと接地の間の<−0.2Vの、または金属部品とカソードの間の<0Vの間の、電位差として印加することができる。一例において、負の保護電位は金属コンポーネントと、最も負の電位にある、回路のカソードの間に印加される。別の例において、負の保護電位は金属コンポーネントと個々のカソードのいずれかの間に印加される。また別の例において、保護電位は金属コンポーネントと共通システム接地の間に印加される。
【0015】
金属コンポーネントに印加される負の保護電位の値は揮発性金属酸化物種の分圧を低めるに十分である。一例において、負の保護電位の値は揮発性金属酸化物の分圧を、50%、50%より大きく、70%より大きく、あるいは90%より大きく、低めるに十分である。一例において、金属コンポーネントと、最も負の電位にある、回路のカソードの間に印加される負の保護電位差は少なくとも−0.3Vである。別の例において、金属コンポーネントに印加される負の保護電位は、最も負の電位にある回路のカソードに対して、少なくとも−0.5Vである。また別の例において、金属コンポーネントに印加される負の保護電位は、最も負の電位にある回路のカソードに対して、少なくとも−0.8Vである。
【0016】
図1A〜1Dは金属コンポーネントへの負の保護電位の印加に対する例を示す。図1Aは、一例の10セルデバイスの、カソード1,電解質2及び金属フレーム5を含む空気チャンバ側の図を示す。図1Bは、一例の10セルデバイスの、アノード3を含む燃料チャンバ側の図を示す。図1Cは、フレーム5に密封燃料チャンバが取り付けられている、2つの10セルデバイスでつくられたスタックまたはスタックユニットを示す。図1Dは複セルデバイスのカソード及びアノードの断面図を示す。図1A〜1Dに示されるようなSOFCスタックまたはスタックユニットは、電解質シート9上に複数のカソード(図1Dの1A及び1i〜1n)及び複数のアノード(図1Dの8A及び8i〜8n)を有する複セルデバイスである。カソード1iがバイア6iでアノード8Aに相互接続される、複セルの順次配置が選ばれる。残りのアノード及びカソードはバイア6j〜6nによって相互接続される。電解質はフレーム5に取り付けられる。空気チャンバと燃料チャンバは電解質とフレームの間に配置されたシール材7a及び7bによって隔てられる。カソードは空気チャンバ内で動作し、アノードは燃料チャンバ内で動作する。フレームの一部(図1Cの5a)は燃料チャンバ(図1Cの25)に露出し、フレームの一部(図1Cの5b)は空気チャンバ(図1Cの20)に露出する。
【0017】
図1Aを参照すれば、カソード1Aが接地される(図1Dの10,ψ=0V)。SOFCの動作中、それぞれのセルで電力がつくられる。アノード1nにおいて、対応するアノードが電位ψn=−ΔVnにあるように、電圧ΔVnが発生する。それぞれのカソードが前段のセルのアノードにバイア6i〜6nで相互接続される、図1Dのいくつかの連続セルの回路において、連結された動作中のセル(アノード及びカソード)の数にかけて負電位が積み上がる。全てのセルが動作中のスタックで順次に連結されているから、図1Dにおいて1nと識別されている最終カソードは最も低い電位、ψn=0−ΔVi−ΔVj−ΔVk・・・−ΔVnにある。負の保護電位4がフレーム5とカソード1nの間に印加される。負の保護電位は、スタックハウジング内の金属酸化物蒸気形成を防止または軽減するために、1つの金属コンポーネントに、または金属コンポーネントの全てに一様に、DC電源によって印加することができる。説明のために図1Dは接地されたカソード1Aを示しているが、特定のカソードを接地する必要はない。接地は、システムまたは用いられるデバイスに依存し、当業者には容易に明らかであろう。
【0018】
別の例において、金属コンポーネント自体からの揮発性金属酸化物の形成を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。この例においては、補助酸素ポンプセルによって金属コンポーネントのコアから酸素が所望の速度で所望のレベルまで間断なく除去される。ポンプセルは、例えばYSZのような、酸素イオン伝導性電解質、金属コンポーネントを有する電極及びガス(例えば空気)で囲まれた不活性対極を有する。補助酸素ポンプセルは金属コンポーネントに封着され、よって金属コンポーネントを有するセル側ではガスからの酸素が電解質に侵入できない。本方法は金属コンポーネント(例えば補助ポンプのカソード)と対極の間の酸素ポンプ電圧の印加を含む。この例において、金属コンポーネントに存在する酸素は電解質表面に拡散し、次いで還元されて酸素イオンになり、酸素イオンは続いて電解質を通して輸送され、対極において酸素ガスとして放出される。金属コンポーネントに存在する酸素は溶存酸素または酸化物として存在し得る。印加酸素ポンプ電圧は金属コンポーネントから酸素をポンプ作用で排出し、金属コンポーネントを低酸素化学ポテンシャルに保つ。酸素ポンプ電圧も金属コンポーネントの酸化速度を制限するに十分であり、最終的に電極を中毒させ得る揮発性金属酸化物(例えばSOFCカソードを中毒させる揮発性CrO3)の形成も阻止するかまたは少なくとも大きく減じる。酸素ポンプ電圧は、金属コンポーネント全体にまたは金属コンポーネントの特定の決定的スポットに、連続的にまたは断続的に、印加することができる。
【0019】
図2はこの方法に有用な補助酸素ポンプセルの一例を示す。金属コンポーネント12を酸素ポンプセルのカソードとして有する酸素ポンプセルにポンプ電圧11が印加される。酸素ポンプセルは、電解質14,金属コンポーネント電極12及び不活性対極13を有する。シール材15及び16が非導電性絶縁層を提供する。ポンプ電圧11が印加されると、酸素イオンが生成され、続いて、白抜き矢印18で示されるような方向に金属コンポーネントから電解質14を通して吸排される。O2−の流束方向は矢印19で示される。
【0020】
別の例において、酸化物種を含むコンポーネントに正の保護電位を印加することによってそのようなコンポーネントからの酸素活性を低めて、SOFCの燃料チャンバまたはチャンバに形成される揮発性金属酸化物の形成を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。この例において、正の保護電位は、最終的に電極(例えばアノード)と反応し得る、揮発性の、ある程度還元された金属酸化物をつくる、コンポーネントに存在する金属酸化物種の還元を防止または軽減するに十分である。コンポーネントには、セラミックまたは1つないしさらに多くの金属酸化物を含有する金属のような複合材を含めることができるが、これらには限定されない。例えば、コンポーネントが二酸化ケイ素を含有するセラミックである場合、正の保護電位を印加して二酸化ケイ素(SiO2)の揮発性酸化ケイ素(SiO)への還元を防止することができる。これは最終的にアノード被毒を軽減または防止することができる。
【0021】
いくつかの例において、揮発性金属酸化物を形成できる金属コンポーネントは金属種の表面への移動を防止または軽減する保護層でコーティングすることができる。そのような保護層の高温及び苛酷な酸化環境に耐え得る能力は限られており、保護電位の使用によって強めることができる。金属コンポーネントの表面に保護層が施されている場合、金属コンポーネントのコアに負の保護電位または酸素ポンプ電圧を印加して、揮発性金属酸化物の形成を軽減または防止することができる。
【0022】
本明細書に説明される方法は電極表面上の金属酸化物の堆積を防止または軽減する。一例において、電極は、SOFCカソード、電気化学センサの電極またはガス分離のための電気化学セルの電極である。一例において、本明細書に説明される方法は、ステンレス鋼またはクロム含有合金に存在するクロムからつくられるCr2O3の、SOFCのアノードの表面上の堆積の軽減に有用である。
【実施例】
【0023】
ここで様々な例を詳しく参照して本明細書に説明される方法を論じる。以下の例は本発明の限定を目的としておらず、実施形態例として提供される。数値(例えば、量、温度、等)に関しては正確を期すように努力したが、いくらかの誤差及び偏差が生じていることがあり得る。そうではないことが示されていない限り、分率は重量分率であり、温度は単位が℃であるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
【0024】
I.序
以下の例においては、様々なSOFC動作条件シミュレーションの下でSOFCアノード性能を評価した。空気中で動作させた例示の対称カソード/カソード単セルデバイスについて実験評価を行った。これらの実験ではカソード/カソード単セルデバイスにかけてバイアスを印加することによってカソード分極をシミュレートした。例示の単セルデバイスは、3イットリア安定化ジルコニア(YSZ)電解質及び、電解質の両面上に被着した、(La,Sr)MnO3/YSZ(LSM)カソード触媒層と(Ag,Pd)/3YSZ電流コレクタ層を含む多孔質電極を有する。電極コンタクトのバイアス印加及び検知として用いるために二組のリードを電流コレクタに取り付けた。例示のセルは平均的なセル性能を有していた。
【0025】
初めに、例示のセルのベースライン性能を空気中750℃で評価した(実施例1)。次いで、揮発性Cr(VI)酸化物源としてCr2O3粉末を用いて、例示セルの電気化学的試験を行った(実施例2)。スタックにおける鋼製のフレーム、ハウジングまたは配管の効果をシミュレートするため、さらに鋼板上で例示セルの電気化学的試験を行った(実施例3)。(乾燥空気を室温で水を通してバブリングさせた)低速加湿空気流を、アルミナ管炉を通して導いた。代表的なガス流量は0.5〜5scfhの範囲とした(1scfhは標準状態における毎時立方フィートであり、標準状態における毎分472cm3(472sccm)に相当する)。加湿ガスが初めに鋼板上を通されてCr(VI)酸化物(酸−水酸化物)を取り入れ、次いで試料上に導かれるように、鋼板をアルミナ管内前方で酸素ポンプセルの下においた。電気化学的試験に対し、Solartonインピーダンスアナライザを用いた。0.1〜300000Hzの周波数範囲でインピーダンススペクトルを取り込んだ。電流−電圧特性を−0.5Vから+0.5Vの範囲で取り込み、電流−時間推移を様々なカソードバイアスの下で追った。実施例4に示されるように、鋼板を帯電させ、様々な電位に対するセル性能を時間の経過にしたがって追った。図3〜12は、負の保護電位の印加及び無印加時の、LSMベースカソードをもつ例示酸素ポンプセルに対する空気中750℃での様々な動作条件下での実験データを示す。
【0026】
II.例示酸素ポンプ試料に対する処理詳細
a.酸素ポンプセルの構造
SOFCカソードの性能推移を検査及びモニタするため、カソード/カソード単セルデバイスを用いた。単セルにおいては、薄い3YSZ電解質シートを、3YSZ電解質の両面上にスクリーン印刷して焼結した、2つの対称な電極の間に挟み込んだ。電極はLSM/YSZ触媒層及びAg/YSZ電流コレクタ層を有していた。
【0027】
b.3YSZ電解質の処理
トーソー製3YSZ粉末(TZ-3Y)を電解質のための原材料として用いた。3YSZ粉末を、混練材、凝集剤、可塑剤及び結合剤とともに混合することで注型適性混合物を得た。スリップを注型して支持フィルム上の生テープにし、支持層からはがして、セッター上において空気中で焼成した(ボックス炉)。電解質の標準焼成サイクルでは、最高温度が1430℃で保持時間が2時間になった。約20μm厚の、十分に緻密で可撓性の正方晶3YSZシートが得られた。
【0028】
c.LSM触媒層の処理
成層触媒試料の様々なインク層のそれぞれをDeHaartスクリーン印刷機で印刷した。印刷プロセスは、3YSZセラミックシートの取付けを除き、半自動であった。布で覆った取付けプラテン上に印刷パターン原紙を置いた。現在のプリントの見当を取付けプラテン上の乾燥プリントに位置合せした。それぞれの基板に印刷し、裏面に印刷する前に、約150℃で数分間乾燥した。全てのスクリーンは、フレームに接合した、250及び200メッシュのステンレス鋼ワイアで作成した。
【0029】
印刷した基板のそれぞれを、次の層の印刷の前に、適切な熱サイクルで乾燥及び焼成した。第1の印刷層はLSM/YSZインクによる印刷面積が1cm×1.5cmのカソード触媒であり、電解質の両面に配され、表裏をなす側で1cm2の印刷面積が相互に重なる。全てのインクの配合は、無機材料のためのビヒクルとして有機成分を含み、溶媒としての高次錯体アルコール、分散剤及び結合材を含む。インクは無機粉末及び有機ビヒクルを含む。LSM混合物を3ロールミルで予備混合し、続いて最適に分散させるためEigerミルによって処理した。電流コレクタインクは3ロールミルだけで処理した。電流コレクタインクは銀/イットリア安定化ジルコニアを含む。
【0030】
III.カソードの電気化学的特性決定
対称2電極、4ワイア構成でカソードインピーダンスを測定した。印加バイアス有り及び印加バイアス無しで、Splartonシステム(1260周波数応答アナライザ/1287電気化学インターフェース)によりインピーダンスデータを取り込んだ。管炉内でガスを流しながら、保護アルミナチューブ内でセルを試験した。活性電極面積は1cm2であった。300000Hzから10mHzまで周波数を変えた。作用電極と参照電極の間に印加した振幅は30mVである。最高周波数から最低周波数までスキャンしながら、周波数10進あたり10点の測定を行った。観測したそれぞれの円弧について、インピーダンスへの、バルク、粒界及び電極の寄与を、並列抵抗及び定位相素子を有する等価回路でフィッティングした。モデリングには単純なキャパシタの代わりに定位相素子を、そのような位相素子は円弧が扁平の現実系をより良好に表すから、用いた。
【0031】
エージングまたはCr源への暴露時間の様々な段階で電流−電圧特性を取り込んだ。時間の経過にともなって電流密度を取り込むことで、カソードの性能劣化を時間の関数として追った。
【0032】
動作中のSOFCにおいてカソードが受ける分極をシミュレートするため、酸素ポンプセルのカソードにカソードバイアスを印加した。正規のSOFC動作においてカソードに通常かけられるバイアスより大きなバイアスを選んだ。ほとんどの実験において、−0.2Vまたは−0.3Vのカソードバイアスを用いた。
【0033】
IV.Cr中毒源
空気中で高温において揮発性Cr(VI)酸化物源及び/または酸−水酸化物源としてはたらく、代表的な鋼として446ステンレス鋼を用いた。
【0034】
V.実験例
a.荷電鋼板を用いた実験
以下の実験においては、鋼板とバイアスを印加した(分極した)カソードの間または鋼板と接地の間に電位差を印加した。DC電源を用い、鋼板を負電位に設定した。0V〜−1.2Vの電位差を(また説明のために正の電位差も)用いた。
【0035】
鋼板の荷電状態が酸化に影響を与えた。負電荷により鋼板の酸化速度が低下することが観測された。厚い酸化物層を示した無荷電鋼に比較して、負荷電鋼板は空気中で長時間経過後も青みを帯びた酸化光沢しか示さなかった。カソード劣化の印加電荷への応答は実施例4で報告する。
【0036】
b.電気化学的に強いられた還元状態にある鋼板を用いた予示的実験
別の実験セットにおいて、鋼板から電解質を通して空気中に保持することができる補助不活性電極に、印加電圧を用いて酸素イオンを電気化学的にポンピングすることにより、鋼板に還元条件を課すことができる。
【0037】
実施例1.Cr源が存在しない場合の非分極カソード及び分極カソードの性能
LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスのベースライン性能が、無バイアスセルのインピーダンススペクトル、セルのi-V特性、−0.3Vのカソードバイアス下でのインピーダンススペクトル及び−0.3Vのバイアス下でのセルのi-t曲線(図3〜6)によって示される。
【0038】
図3は、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの、クロム金属種または揮発性Cr(VI)種が全く存在しない環境における、非分極カソード(バイアス0V)についての、加湿空気流の下の750℃での、インピーダンスを示す。
【0039】
図4は、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの、クロム金属種または揮発性Cr(VI)種が全く存在しない環境における、加湿空気流の下の750℃での、電流−電圧特性を示す。
【0040】
図5は、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの、クロム金属種または揮発性Cr(VI)種が全く存在しない環境における、カソードバイアス−0.3V下で分極しているカソードについての、加湿空気流の下の750℃での、インピーダンスを示す。
【0041】
図6は、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの性能を、クロム金属種または揮発性Cr(VI)種が全く存在しない環境における、加湿空気流の下の750℃での、印加バイアス下での電流密度を時間の関数として提示することによって示す。印加セルバイアスは−0.3Vとした。
【0042】
実施例2.Cr源としてCr2O3が存在する場合の非分極カソード及び分極カソードの性能
非分極カソード:図7A及び7Bは、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスのカソードインピーダンス及び、印加電位の関数としての、電流密度を、Cr(VI)酸化物/酸−水酸化物蒸気源(湿性空気流下のCr2O3粉末床)に750℃でさらされたセルについて示す。カソードにバイアスが印加されていない(カソードが分極していない)限り、初期安定化期間後は、カソード性能劣化は長時間にわたって比較的小さいままであった。
【0043】
分極カソード:カソードバイアスの印加による擬似カソード分極の下で、かなりの性能低下がLSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスについて見られた。この性能低下は周知のカソードクロム中毒によるものであった。図8A及び8Bは、Cr2O3粉末によって形成された揮発性Cr(VI)酸化物(または酸−水酸化物との混合物)にバイアス下でさらされた例示のカソード/カソードセルの性能を示す。カソードバイアスは動作中のSOFCにおけるカソード分極をシミュレートするために用いた。図8Aはバイアス印加前のi-V特性(1)及びバイアス印加後のi-V特性(3)を示す。図8Bは−0.2Vの印加バイアスの下での電流密度の低下を時間の関数として示す。
【0044】
実施例3.Cr源としてCr含有鋼が存在する場合の分極カソードの性能
揮発性Cr(VI)種源として446ステンレス鋼板を用いても、やはり、カソードバイアスを印加した場合に、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスについてかなりの性能低下が見られた。図9は、曲線Aに、−0.3Vの印加カソードバイアスに対し、電流密度−時間推移の形態で性能低下を示す。カソードポンプセルを加湿空気内750℃で動作させた。カソードバイアスはSOFC動作中にカソードが受ける分極をシミュレートするために用いた。750℃で(加湿)空気に数日間さらした後に、446ステンレス鋼板は厚い黒褐色の腐蝕スケールを示した。
【0045】
実施例4.Cr含有鋼またはその他のCr含有金属コンポーネントへの保護電位印加によるクロム中毒関連カソード性能低下の軽減
上述したような、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスを用いて、揮発性Cr(VI)酸化物または酸−水酸化物源としてのCr含有鋼または合金にさらされた、分極した(カソードバイアスされた)カソードの性能低下にCr含有金属コンポーネントに電位を印加することで影響を与えることができる。
【0046】
446ステンレス鋼板と接地されたSOFCカソードの間に印加された−1Vの保護電位により、(加湿)空気に750℃で数日間さらされた後の446ステンレス鋼板は一般的な厚い黒褐色の腐蝕スケールを示さず、青みを帯びた光沢のある表面しか示さない。
【0047】
揮発性Cr(VI)酸化物/酸−水酸化物源として446ステンレス鋼板を用いて、カソードを−0.3VにバイアスしたLSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの性能低下を、全く保護電位が印加されていない鋼板にさらした場合(A)と負の保護電位が印加されている鋼板にさらした場合(B)について比較した(図9)。保護電位は−1Vとし、加工したままの鋼板の表面と単セルデバイスのカソードの間に印加した。図9は−0.3Vのカソードバイアスを印加した場合の性能低下を電流密度−時間推移の形態で示す。カソードの印加バイアスは、正規のSOFC動作中にカソードが受けるであろう分極を2つの対称LSMベースカソードをもつ例示の単セルデバイスでシミュレートするために用いた。鋼板に保護電位が印加されたセルの性能低下は軽減されていた。
【0048】
図10は、カソードに対して−0.3Vの負の保護電位に設定された(446)ステンレス鋼板が存在する場合の、−0.3Vの分極カソードバイアスについての加湿空気流内750℃におけるLSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの電流密度の推移を示す。初期時間帯にはほぼ線形の劣化が7.5×10−7A/cm2秒の速度でおこり、この速度は後の時間帯で下がる。
【0049】
図11は、−0.3Vのカソードバイアスにおける加湿空気流内750℃でのLSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの時間に対する電流密度推移を示す(領域1;t=0秒からt=60000秒)。t=60000秒において、Cr含有鋼板を炉内に入れ、鋼板の電位を−1.2Vに設定した。低温の鋼板が炉内に入れられたときのスパイクを特徴とする、遷移領域2において、(粗く研磨されただけで酸化に対して特に処理はなされていない)鋼板の薄い表面酸化層からCr(VI)蒸気が形成され、高速劣化をおこさせる。劣化は次いで、鋼板の負電位及びそれにともなう表面化学特性が落ち着くと、緩やかになり、安定化する。安定状態の劣化速度は領域3において印加電位−1.2Vに対してとられた。劣化速度はクロム源が存在しない領域1におけるセルについて見られた速度に近い。次いで領域4において電位を−0.6Vに変えた。劣化の変化が見られ、劣化は保護電位を低めると加速した。
【0050】
図12は、Cr含有鋼板が存在する場合の−0.3Vのカソードバイアスにおける10日間の初期劣化後の、加湿空気流内750℃におけるLSMベース電極をもつ単セルデバイスの時間に対する電流密度推移を示す。図12は、鋼板に外部電位を印加したときの劣化速度の変化を示す。図12は、鋼板の電位設定を−0.3V,+0.3V及び−0.6Vとしたときの電流密度推移を示す。そのような後期劣化段階においてさえ、劣化速度の大きな変化が見られた。劣化速度は、−0.3Vにおいて3×10−8A/cm2秒、+0.3Vにおいて5×10−8A/cm2秒、−0.6Vにおいて1.5×10−8A/cm2秒であった。このことから、初期だけでなく、後期の劣化段階においても、鋼板への負電位の印加によって劣化速度を下げ得ることが示された。
【0051】
本発明の精神及び範囲を逸脱しない様々な改変及び変形が本発明になされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって本発明の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内に入れば本発明はそのような改変及び変形を包含するとされる。
【符号の説明】
【0052】
1 カソード
2,9 電解質シート
3,8 アノード
4 負の保護電位
5 金属フレーム
6 バイア
7a,7b,15,16 シール材
10 接地
11 ポンプ電圧
12 金属コンポーネント電極
13 不活性対極
14 電解質
20 空気チャンバ
25 燃料チャンバ
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学的に動作するシステムに関し、特に固体酸化物燃料電池の電極被毒の軽減または防止に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(SOFC)は燃料を電気エネルギーに転換するための有望な方式である。しかし、これまでにSOFC技術は初めに考えられていたより効率が低いことが判明した。この低効率の一部は、「カソード被毒」を生じさせる電池内在不純物またはスタック(システム)固有汚染物質に帰因させることができる。例えば、「クロム中毒」と称されるカソード被毒の一形態は、SOFCの寿命及び効率を阻害する。詳しくは、SOFCスタックの高温動作中、スタックの空気チャンバまたはガス導管内の鋼または金属合金に存在するクロムが酸化され、とりわけ、揮発性Cr(VI)固体酸化物種を形成する。そのような化学種の例にはCrO3及びCrO2(OH)2があり、これらは多孔質カソードを有する空気チャンバ全体に侵入する。SOFCにおけるカソード被毒の結果、カソードにおいてCr2O3を生成するCr(VI)種の電気化学アシスト還元がおこり、このCr2O3がカソードの内孔表面上に堆積する。これはカソードにおける酸素取込を阻止し、最終的に時間の経過にともなう燃料電池の性能劣化をおこさせる。クロム中毒はクロム含有金属によって特異的に生じるが、他にも空気中で揮発性酸化物を形成してカソードに侵入することができる金属がある。カソードで反応し、同様の態様で内部電極表面上に堆積することができる固体化合物を他の電池コンポーネントと形成する、やはりカソード酸素交換を阻止するであろう、既知の揮発性酸化物がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この問題を最小限に抑えようとして、SOFC空気チャンバ内の鋼及びその他のCr含有合金がバリア層でコーティングされた。短時間であれば、そのような層は、クロム酸化、揮発性Cr(VI)種の形成及びその後のカソード被毒の進行を遅らせて、停止さえさせる。しかし、時間の経過とともにCrはバリア層を通って拡散し、クロム中毒をおこすことができる。したがって、電極被毒の軽減または防止が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電気化学システムにおける電極表面上の金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法が本明細書に説明されている。金属酸化物は、酸化環境にさらされた金属コンポーネントから形成される揮発性金属酸化物の電気化学アシスト還元または反応によって形成される。一例において、中毒をおこし得る化学種を含有する金属コンポーネントに負の保護電位を印加することによってカソードの被毒を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。別の例において、補助酸素ポンプセル及び酸素ポンプ電圧の使用によって酸素を間断なく除去することにより、金属コンポーネント内の酸素の活性を低くしておくことでカソード表面上の金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。別の例において、酸化物種からなるコンポーネントに正の保護電位を印加することによるSOFCデバイスまたは同様のデバイスの燃料チャンバまたは燃料導管におけるそのようなコンポーネントからの揮発性不完全還元金属酸化物の形成を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。
【0005】
本明細書に説明される方法は、SOFC、電気化学センサ、ガス分離セル及び同様の電気化学システムにおけるカソードのような電極の被毒を軽減または防止するための新規な手法を提供するという利点を有する。本発明の利点は、ある程度は以下の説明で述べられるであろうし、ある程度は説明または特許請求の範囲から明白になるであろう。上述の全般的説明及び以下の詳細な説明が例示及び説明に過ぎず、限定ではないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】図1Aは、燃料電池に存在するクロム含有ステンレス鋼フレームに負の保護電位が印加されている、略図を示す。
【図1B】図1Bは、燃料電池に存在するクロム含有ステンレス鋼フレームに負の保護電位が印加されている、略図を示す。
【図1C】図1Cは、燃料電池に存在するクロム含有ステンレス鋼フレームに負の保護電位が印加されている、略図を示す。
【図1D】図1Dは、燃料電池に存在するクロム含有ステンレス鋼フレームに負の保護電位が印加されている、略図を示す。
【図2】図2は、金属コンポーネントから周囲ガスに酸素が電気化学的にポンプで排出されている、略図を示す。
【図3】図3は、カソードが分極されておらず(バイアス0V)、Cr(VI)酸化物またはCr(VI)酸-水酸化物蒸気がない場合に対する、例示の対称単セルデバイスのインピーダンスデータを示す。
【図4】図4は、Cr(VI)酸化物またはCr(VI)酸-水酸化物蒸気がない場合の、例示の対称単セルデバイスの電流−電圧特性を示す。
【図5】図5は、カソードが分極されており(バイアス−0.3V)、Cr(VI)酸化物またはCr(VI)酸-水酸化物蒸気がない場合に対する、例示の対称単セルデバイスのインピーダンスを示す。
【図6】図6は、バイアスの下での、例示の対称単セルデバイスの時間の経過にともなう電流密度の推移を示す。
【図7A】図7Aは、揮発性Cr(VI)種としてCr2O3にさらしたときの、例示の対称単セルデバイスの無バイアス印加時インピーダンスを示す。
【図7B】図7Bは、揮発性Cr(VI)種としてCr2O3にさらしたときの、例示の対称単セルデバイスの電流−電圧特性を示す。
【図8A】図8Aは、Cr(VI)酸-水酸化物蒸気源としてCr2O3にさらしたときの、例示の対称単セルデバイスの電流−電圧特性を示す。
【図8B】図8Bは、Cr(VI)酸-水酸化物蒸気源としてCr2O3にさらしたときの、例示の対称単セルデバイスの無バイアス印加下における時間の関数としての電流密度推移を示す。
【図9】図9は、鋼にさらされたときの、例示の対称単セルデバイスの(−0.3Vのカソードバイアスでシミュレートされた)カソードの分極下での性能低下を(A)保護電位無し及び(B)保護電位有りについて示す。
【図10】図10は、様々な保護電位設定に対する、バイアスが印加された例示の対称単セルデバイスの電流密度推移を示す。
【図11】図11は、様々な保護電位下における、バイアスが印加された例示の対称単セルデバイスの電流密度推移を示す。
【図12】図12は、鋼板に外部電位が印加されている、例示の対称単セルデバイスの劣化速度の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス及び/または方法が開示及び説明される前に、以下で説明される例が特定の化合物、合成方法または用法に限定されず、したがって、当然、変わり得ることは理解されるべきである。本明細書に用いられる用語が特定の例を説明する目的のために過ぎず、限定は目的とされていないことも理解されるべきである。
【0008】
本明細書及び添付される特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義される多くの語句に言及がなされるであろう。
【0009】
本明細書及び添付される特許請求の範囲で用いられるように、単数形の冠詞‘a’,‘an'及び‘the’は、そうではないことを文脈が明白に規定していない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。すなわち、例えば「金属酸化物蒸気」への言及は、2つないしさらに多くのそのような金属酸化物蒸気の混合気を含み、他も同様である。
【0010】
「必要(状況)に応じる」または「必要(状況)に応じて」は、引き続いて記述されるイベントまたは状況がおこり得るかまたはおこり得ないことを意味し、そのイベントまたは状況がおこる例及びおこらない例をその記述が含むことを意味する。例えば、語句「必要に応じる鋼」は、その鋼が存在し得るかまたは存在し得ないことを意味する。
【0011】
ここで様々な例を参照して本発明を説明する。以下の例では、本発明の限定は目的とはされておらず、実施形態例が提供される。
【0012】
電極上の金属酸化物の堆積を防止または軽減する方法が本明細書に説明される。本明細書に用いられるような語句「金属コンポーネント」は、SOFCスタック、電気化学的センサ、ガス分離ユニット、化学反応器またはガス導管のような、システム内に存在する金属部品と定義される。語句「金属種」は金属コンポーネント内に存在する元素と定義される。金属種のタイプ、システム動作温度及びシステム動作環境(酸素含有量)に依存して、いくつかの金属種は酸化され得るか、または金属コンポーネントの表面まで移動し、続いて酸化されることにさえなり得る。金属種には揮発性金属酸化物を形成する種がある。そのような揮発性酸化物は、多孔質電極を含むがこれには限定されない、システム内のコンポーネントに侵入し得る。いくつかの揮発性酸化物は電極材料と反応して、以降の電極における酸素交換を妨げ得る酸化物層を形成することができる。動作中に分極を受けるカソードにおいて、そのような揮発性酸化物はある程度還元(例えば電気化学アシスト還元)されてカソード内部表面上に堆積することもできる。揮発性酸化物を形成する金属種の例には、クロム、タングステン、モリブデンまたはこれらのいずれかの混合物があるが、これらには限定されない。容易に還元されて不揮発性酸化物になり得る揮発性酸化物を形成する金属種の例にはクロムがある。そのような金属種を含有する金属の例には鋼及び合金があるがこれらには限定されない。一例において、金属コンポーネントは、デバイスを支持するための金属フレーム、ガス導入管、または電気化学デバイスを収めるために用いられる金属ケーシング、あるいはシステム内のその他いずれかの金属アクセサリーである。例えば、金属コンポーネントは固体酸化物燃料電池(SOFC)スタックの空気チャンバに存在し得る。
【0013】
一例において、金属コンポーネントに存在する金属種で形成される揮発性金属酸化物からの電極表面上の金属酸化物の堆積は、金属コンポーネントに負の保護電位を印加することによって軽減または防止することができる。語句「負の保護電位」は本明細書において、金属コンポーネントに印加されると、発生する金属酸化物蒸気の量を軽減するかまたは金属蒸気の発生を防止する、負電位と定義される。すなわち、負の保護電位は、金属コンポーネントに存在する金属種による電極の被毒の可能性を低めるかまたは被毒を防止する。理論に束縛されることは望まないが、この負の保護電位は、金属コンポーネントの酸化を制限し、不揮発性金属酸化物種の総圧力を低めるように機能し、高酸化状態にある揮発性金属酸化物種に対するシンクとしてさえ作用し得る。さらに、負の保護電位は被毒を最適に抑制するために動作中に変えることができる。負の保護電位はいずれの金属コンポーネントにも印加することができる。一例において、負の保護電位は全ての金属コンポーネントに一様に印加される。別の例において、負の保護電位は選ばれた金属コンポーネントに印加される。負の保護電位は、金属コンポーネントが電極に比較して負の電位に設定される、金属コンポーネントとカソードの間の負の電位差として印加される。
【0014】
一例において、負の保護電位は金属コンポーネントとシステム内で最も負電位にあるカソードの間に印加される。例えば、動作中のシステムにおいてカソードが接地に対して−0.2Vの電位にあれば、負の保護電位は金属コンポーネントを接地に対して−0.2Vより小さい(例えば、−0.4V,−0.5V,−0.6V,等)電位に設定することになる。負の保護電位は金属コンポーネントと接地の間の<−0.2Vの、または金属部品とカソードの間の<0Vの間の、電位差として印加することができる。一例において、負の保護電位は金属コンポーネントと、最も負の電位にある、回路のカソードの間に印加される。別の例において、負の保護電位は金属コンポーネントと個々のカソードのいずれかの間に印加される。また別の例において、保護電位は金属コンポーネントと共通システム接地の間に印加される。
【0015】
金属コンポーネントに印加される負の保護電位の値は揮発性金属酸化物種の分圧を低めるに十分である。一例において、負の保護電位の値は揮発性金属酸化物の分圧を、50%、50%より大きく、70%より大きく、あるいは90%より大きく、低めるに十分である。一例において、金属コンポーネントと、最も負の電位にある、回路のカソードの間に印加される負の保護電位差は少なくとも−0.3Vである。別の例において、金属コンポーネントに印加される負の保護電位は、最も負の電位にある回路のカソードに対して、少なくとも−0.5Vである。また別の例において、金属コンポーネントに印加される負の保護電位は、最も負の電位にある回路のカソードに対して、少なくとも−0.8Vである。
【0016】
図1A〜1Dは金属コンポーネントへの負の保護電位の印加に対する例を示す。図1Aは、一例の10セルデバイスの、カソード1,電解質2及び金属フレーム5を含む空気チャンバ側の図を示す。図1Bは、一例の10セルデバイスの、アノード3を含む燃料チャンバ側の図を示す。図1Cは、フレーム5に密封燃料チャンバが取り付けられている、2つの10セルデバイスでつくられたスタックまたはスタックユニットを示す。図1Dは複セルデバイスのカソード及びアノードの断面図を示す。図1A〜1Dに示されるようなSOFCスタックまたはスタックユニットは、電解質シート9上に複数のカソード(図1Dの1A及び1i〜1n)及び複数のアノード(図1Dの8A及び8i〜8n)を有する複セルデバイスである。カソード1iがバイア6iでアノード8Aに相互接続される、複セルの順次配置が選ばれる。残りのアノード及びカソードはバイア6j〜6nによって相互接続される。電解質はフレーム5に取り付けられる。空気チャンバと燃料チャンバは電解質とフレームの間に配置されたシール材7a及び7bによって隔てられる。カソードは空気チャンバ内で動作し、アノードは燃料チャンバ内で動作する。フレームの一部(図1Cの5a)は燃料チャンバ(図1Cの25)に露出し、フレームの一部(図1Cの5b)は空気チャンバ(図1Cの20)に露出する。
【0017】
図1Aを参照すれば、カソード1Aが接地される(図1Dの10,ψ=0V)。SOFCの動作中、それぞれのセルで電力がつくられる。アノード1nにおいて、対応するアノードが電位ψn=−ΔVnにあるように、電圧ΔVnが発生する。それぞれのカソードが前段のセルのアノードにバイア6i〜6nで相互接続される、図1Dのいくつかの連続セルの回路において、連結された動作中のセル(アノード及びカソード)の数にかけて負電位が積み上がる。全てのセルが動作中のスタックで順次に連結されているから、図1Dにおいて1nと識別されている最終カソードは最も低い電位、ψn=0−ΔVi−ΔVj−ΔVk・・・−ΔVnにある。負の保護電位4がフレーム5とカソード1nの間に印加される。負の保護電位は、スタックハウジング内の金属酸化物蒸気形成を防止または軽減するために、1つの金属コンポーネントに、または金属コンポーネントの全てに一様に、DC電源によって印加することができる。説明のために図1Dは接地されたカソード1Aを示しているが、特定のカソードを接地する必要はない。接地は、システムまたは用いられるデバイスに依存し、当業者には容易に明らかであろう。
【0018】
別の例において、金属コンポーネント自体からの揮発性金属酸化物の形成を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。この例においては、補助酸素ポンプセルによって金属コンポーネントのコアから酸素が所望の速度で所望のレベルまで間断なく除去される。ポンプセルは、例えばYSZのような、酸素イオン伝導性電解質、金属コンポーネントを有する電極及びガス(例えば空気)で囲まれた不活性対極を有する。補助酸素ポンプセルは金属コンポーネントに封着され、よって金属コンポーネントを有するセル側ではガスからの酸素が電解質に侵入できない。本方法は金属コンポーネント(例えば補助ポンプのカソード)と対極の間の酸素ポンプ電圧の印加を含む。この例において、金属コンポーネントに存在する酸素は電解質表面に拡散し、次いで還元されて酸素イオンになり、酸素イオンは続いて電解質を通して輸送され、対極において酸素ガスとして放出される。金属コンポーネントに存在する酸素は溶存酸素または酸化物として存在し得る。印加酸素ポンプ電圧は金属コンポーネントから酸素をポンプ作用で排出し、金属コンポーネントを低酸素化学ポテンシャルに保つ。酸素ポンプ電圧も金属コンポーネントの酸化速度を制限するに十分であり、最終的に電極を中毒させ得る揮発性金属酸化物(例えばSOFCカソードを中毒させる揮発性CrO3)の形成も阻止するかまたは少なくとも大きく減じる。酸素ポンプ電圧は、金属コンポーネント全体にまたは金属コンポーネントの特定の決定的スポットに、連続的にまたは断続的に、印加することができる。
【0019】
図2はこの方法に有用な補助酸素ポンプセルの一例を示す。金属コンポーネント12を酸素ポンプセルのカソードとして有する酸素ポンプセルにポンプ電圧11が印加される。酸素ポンプセルは、電解質14,金属コンポーネント電極12及び不活性対極13を有する。シール材15及び16が非導電性絶縁層を提供する。ポンプ電圧11が印加されると、酸素イオンが生成され、続いて、白抜き矢印18で示されるような方向に金属コンポーネントから電解質14を通して吸排される。O2−の流束方向は矢印19で示される。
【0020】
別の例において、酸化物種を含むコンポーネントに正の保護電位を印加することによってそのようなコンポーネントからの酸素活性を低めて、SOFCの燃料チャンバまたはチャンバに形成される揮発性金属酸化物の形成を軽減または防止する方法が本明細書に説明される。この例において、正の保護電位は、最終的に電極(例えばアノード)と反応し得る、揮発性の、ある程度還元された金属酸化物をつくる、コンポーネントに存在する金属酸化物種の還元を防止または軽減するに十分である。コンポーネントには、セラミックまたは1つないしさらに多くの金属酸化物を含有する金属のような複合材を含めることができるが、これらには限定されない。例えば、コンポーネントが二酸化ケイ素を含有するセラミックである場合、正の保護電位を印加して二酸化ケイ素(SiO2)の揮発性酸化ケイ素(SiO)への還元を防止することができる。これは最終的にアノード被毒を軽減または防止することができる。
【0021】
いくつかの例において、揮発性金属酸化物を形成できる金属コンポーネントは金属種の表面への移動を防止または軽減する保護層でコーティングすることができる。そのような保護層の高温及び苛酷な酸化環境に耐え得る能力は限られており、保護電位の使用によって強めることができる。金属コンポーネントの表面に保護層が施されている場合、金属コンポーネントのコアに負の保護電位または酸素ポンプ電圧を印加して、揮発性金属酸化物の形成を軽減または防止することができる。
【0022】
本明細書に説明される方法は電極表面上の金属酸化物の堆積を防止または軽減する。一例において、電極は、SOFCカソード、電気化学センサの電極またはガス分離のための電気化学セルの電極である。一例において、本明細書に説明される方法は、ステンレス鋼またはクロム含有合金に存在するクロムからつくられるCr2O3の、SOFCのアノードの表面上の堆積の軽減に有用である。
【実施例】
【0023】
ここで様々な例を詳しく参照して本明細書に説明される方法を論じる。以下の例は本発明の限定を目的としておらず、実施形態例として提供される。数値(例えば、量、温度、等)に関しては正確を期すように努力したが、いくらかの誤差及び偏差が生じていることがあり得る。そうではないことが示されていない限り、分率は重量分率であり、温度は単位が℃であるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
【0024】
I.序
以下の例においては、様々なSOFC動作条件シミュレーションの下でSOFCアノード性能を評価した。空気中で動作させた例示の対称カソード/カソード単セルデバイスについて実験評価を行った。これらの実験ではカソード/カソード単セルデバイスにかけてバイアスを印加することによってカソード分極をシミュレートした。例示の単セルデバイスは、3イットリア安定化ジルコニア(YSZ)電解質及び、電解質の両面上に被着した、(La,Sr)MnO3/YSZ(LSM)カソード触媒層と(Ag,Pd)/3YSZ電流コレクタ層を含む多孔質電極を有する。電極コンタクトのバイアス印加及び検知として用いるために二組のリードを電流コレクタに取り付けた。例示のセルは平均的なセル性能を有していた。
【0025】
初めに、例示のセルのベースライン性能を空気中750℃で評価した(実施例1)。次いで、揮発性Cr(VI)酸化物源としてCr2O3粉末を用いて、例示セルの電気化学的試験を行った(実施例2)。スタックにおける鋼製のフレーム、ハウジングまたは配管の効果をシミュレートするため、さらに鋼板上で例示セルの電気化学的試験を行った(実施例3)。(乾燥空気を室温で水を通してバブリングさせた)低速加湿空気流を、アルミナ管炉を通して導いた。代表的なガス流量は0.5〜5scfhの範囲とした(1scfhは標準状態における毎時立方フィートであり、標準状態における毎分472cm3(472sccm)に相当する)。加湿ガスが初めに鋼板上を通されてCr(VI)酸化物(酸−水酸化物)を取り入れ、次いで試料上に導かれるように、鋼板をアルミナ管内前方で酸素ポンプセルの下においた。電気化学的試験に対し、Solartonインピーダンスアナライザを用いた。0.1〜300000Hzの周波数範囲でインピーダンススペクトルを取り込んだ。電流−電圧特性を−0.5Vから+0.5Vの範囲で取り込み、電流−時間推移を様々なカソードバイアスの下で追った。実施例4に示されるように、鋼板を帯電させ、様々な電位に対するセル性能を時間の経過にしたがって追った。図3〜12は、負の保護電位の印加及び無印加時の、LSMベースカソードをもつ例示酸素ポンプセルに対する空気中750℃での様々な動作条件下での実験データを示す。
【0026】
II.例示酸素ポンプ試料に対する処理詳細
a.酸素ポンプセルの構造
SOFCカソードの性能推移を検査及びモニタするため、カソード/カソード単セルデバイスを用いた。単セルにおいては、薄い3YSZ電解質シートを、3YSZ電解質の両面上にスクリーン印刷して焼結した、2つの対称な電極の間に挟み込んだ。電極はLSM/YSZ触媒層及びAg/YSZ電流コレクタ層を有していた。
【0027】
b.3YSZ電解質の処理
トーソー製3YSZ粉末(TZ-3Y)を電解質のための原材料として用いた。3YSZ粉末を、混練材、凝集剤、可塑剤及び結合剤とともに混合することで注型適性混合物を得た。スリップを注型して支持フィルム上の生テープにし、支持層からはがして、セッター上において空気中で焼成した(ボックス炉)。電解質の標準焼成サイクルでは、最高温度が1430℃で保持時間が2時間になった。約20μm厚の、十分に緻密で可撓性の正方晶3YSZシートが得られた。
【0028】
c.LSM触媒層の処理
成層触媒試料の様々なインク層のそれぞれをDeHaartスクリーン印刷機で印刷した。印刷プロセスは、3YSZセラミックシートの取付けを除き、半自動であった。布で覆った取付けプラテン上に印刷パターン原紙を置いた。現在のプリントの見当を取付けプラテン上の乾燥プリントに位置合せした。それぞれの基板に印刷し、裏面に印刷する前に、約150℃で数分間乾燥した。全てのスクリーンは、フレームに接合した、250及び200メッシュのステンレス鋼ワイアで作成した。
【0029】
印刷した基板のそれぞれを、次の層の印刷の前に、適切な熱サイクルで乾燥及び焼成した。第1の印刷層はLSM/YSZインクによる印刷面積が1cm×1.5cmのカソード触媒であり、電解質の両面に配され、表裏をなす側で1cm2の印刷面積が相互に重なる。全てのインクの配合は、無機材料のためのビヒクルとして有機成分を含み、溶媒としての高次錯体アルコール、分散剤及び結合材を含む。インクは無機粉末及び有機ビヒクルを含む。LSM混合物を3ロールミルで予備混合し、続いて最適に分散させるためEigerミルによって処理した。電流コレクタインクは3ロールミルだけで処理した。電流コレクタインクは銀/イットリア安定化ジルコニアを含む。
【0030】
III.カソードの電気化学的特性決定
対称2電極、4ワイア構成でカソードインピーダンスを測定した。印加バイアス有り及び印加バイアス無しで、Splartonシステム(1260周波数応答アナライザ/1287電気化学インターフェース)によりインピーダンスデータを取り込んだ。管炉内でガスを流しながら、保護アルミナチューブ内でセルを試験した。活性電極面積は1cm2であった。300000Hzから10mHzまで周波数を変えた。作用電極と参照電極の間に印加した振幅は30mVである。最高周波数から最低周波数までスキャンしながら、周波数10進あたり10点の測定を行った。観測したそれぞれの円弧について、インピーダンスへの、バルク、粒界及び電極の寄与を、並列抵抗及び定位相素子を有する等価回路でフィッティングした。モデリングには単純なキャパシタの代わりに定位相素子を、そのような位相素子は円弧が扁平の現実系をより良好に表すから、用いた。
【0031】
エージングまたはCr源への暴露時間の様々な段階で電流−電圧特性を取り込んだ。時間の経過にともなって電流密度を取り込むことで、カソードの性能劣化を時間の関数として追った。
【0032】
動作中のSOFCにおいてカソードが受ける分極をシミュレートするため、酸素ポンプセルのカソードにカソードバイアスを印加した。正規のSOFC動作においてカソードに通常かけられるバイアスより大きなバイアスを選んだ。ほとんどの実験において、−0.2Vまたは−0.3Vのカソードバイアスを用いた。
【0033】
IV.Cr中毒源
空気中で高温において揮発性Cr(VI)酸化物源及び/または酸−水酸化物源としてはたらく、代表的な鋼として446ステンレス鋼を用いた。
【0034】
V.実験例
a.荷電鋼板を用いた実験
以下の実験においては、鋼板とバイアスを印加した(分極した)カソードの間または鋼板と接地の間に電位差を印加した。DC電源を用い、鋼板を負電位に設定した。0V〜−1.2Vの電位差を(また説明のために正の電位差も)用いた。
【0035】
鋼板の荷電状態が酸化に影響を与えた。負電荷により鋼板の酸化速度が低下することが観測された。厚い酸化物層を示した無荷電鋼に比較して、負荷電鋼板は空気中で長時間経過後も青みを帯びた酸化光沢しか示さなかった。カソード劣化の印加電荷への応答は実施例4で報告する。
【0036】
b.電気化学的に強いられた還元状態にある鋼板を用いた予示的実験
別の実験セットにおいて、鋼板から電解質を通して空気中に保持することができる補助不活性電極に、印加電圧を用いて酸素イオンを電気化学的にポンピングすることにより、鋼板に還元条件を課すことができる。
【0037】
実施例1.Cr源が存在しない場合の非分極カソード及び分極カソードの性能
LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスのベースライン性能が、無バイアスセルのインピーダンススペクトル、セルのi-V特性、−0.3Vのカソードバイアス下でのインピーダンススペクトル及び−0.3Vのバイアス下でのセルのi-t曲線(図3〜6)によって示される。
【0038】
図3は、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの、クロム金属種または揮発性Cr(VI)種が全く存在しない環境における、非分極カソード(バイアス0V)についての、加湿空気流の下の750℃での、インピーダンスを示す。
【0039】
図4は、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの、クロム金属種または揮発性Cr(VI)種が全く存在しない環境における、加湿空気流の下の750℃での、電流−電圧特性を示す。
【0040】
図5は、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの、クロム金属種または揮発性Cr(VI)種が全く存在しない環境における、カソードバイアス−0.3V下で分極しているカソードについての、加湿空気流の下の750℃での、インピーダンスを示す。
【0041】
図6は、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの性能を、クロム金属種または揮発性Cr(VI)種が全く存在しない環境における、加湿空気流の下の750℃での、印加バイアス下での電流密度を時間の関数として提示することによって示す。印加セルバイアスは−0.3Vとした。
【0042】
実施例2.Cr源としてCr2O3が存在する場合の非分極カソード及び分極カソードの性能
非分極カソード:図7A及び7Bは、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスのカソードインピーダンス及び、印加電位の関数としての、電流密度を、Cr(VI)酸化物/酸−水酸化物蒸気源(湿性空気流下のCr2O3粉末床)に750℃でさらされたセルについて示す。カソードにバイアスが印加されていない(カソードが分極していない)限り、初期安定化期間後は、カソード性能劣化は長時間にわたって比較的小さいままであった。
【0043】
分極カソード:カソードバイアスの印加による擬似カソード分極の下で、かなりの性能低下がLSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスについて見られた。この性能低下は周知のカソードクロム中毒によるものであった。図8A及び8Bは、Cr2O3粉末によって形成された揮発性Cr(VI)酸化物(または酸−水酸化物との混合物)にバイアス下でさらされた例示のカソード/カソードセルの性能を示す。カソードバイアスは動作中のSOFCにおけるカソード分極をシミュレートするために用いた。図8Aはバイアス印加前のi-V特性(1)及びバイアス印加後のi-V特性(3)を示す。図8Bは−0.2Vの印加バイアスの下での電流密度の低下を時間の関数として示す。
【0044】
実施例3.Cr源としてCr含有鋼が存在する場合の分極カソードの性能
揮発性Cr(VI)種源として446ステンレス鋼板を用いても、やはり、カソードバイアスを印加した場合に、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスについてかなりの性能低下が見られた。図9は、曲線Aに、−0.3Vの印加カソードバイアスに対し、電流密度−時間推移の形態で性能低下を示す。カソードポンプセルを加湿空気内750℃で動作させた。カソードバイアスはSOFC動作中にカソードが受ける分極をシミュレートするために用いた。750℃で(加湿)空気に数日間さらした後に、446ステンレス鋼板は厚い黒褐色の腐蝕スケールを示した。
【0045】
実施例4.Cr含有鋼またはその他のCr含有金属コンポーネントへの保護電位印加によるクロム中毒関連カソード性能低下の軽減
上述したような、LSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスを用いて、揮発性Cr(VI)酸化物または酸−水酸化物源としてのCr含有鋼または合金にさらされた、分極した(カソードバイアスされた)カソードの性能低下にCr含有金属コンポーネントに電位を印加することで影響を与えることができる。
【0046】
446ステンレス鋼板と接地されたSOFCカソードの間に印加された−1Vの保護電位により、(加湿)空気に750℃で数日間さらされた後の446ステンレス鋼板は一般的な厚い黒褐色の腐蝕スケールを示さず、青みを帯びた光沢のある表面しか示さない。
【0047】
揮発性Cr(VI)酸化物/酸−水酸化物源として446ステンレス鋼板を用いて、カソードを−0.3VにバイアスしたLSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの性能低下を、全く保護電位が印加されていない鋼板にさらした場合(A)と負の保護電位が印加されている鋼板にさらした場合(B)について比較した(図9)。保護電位は−1Vとし、加工したままの鋼板の表面と単セルデバイスのカソードの間に印加した。図9は−0.3Vのカソードバイアスを印加した場合の性能低下を電流密度−時間推移の形態で示す。カソードの印加バイアスは、正規のSOFC動作中にカソードが受けるであろう分極を2つの対称LSMベースカソードをもつ例示の単セルデバイスでシミュレートするために用いた。鋼板に保護電位が印加されたセルの性能低下は軽減されていた。
【0048】
図10は、カソードに対して−0.3Vの負の保護電位に設定された(446)ステンレス鋼板が存在する場合の、−0.3Vの分極カソードバイアスについての加湿空気流内750℃におけるLSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの電流密度の推移を示す。初期時間帯にはほぼ線形の劣化が7.5×10−7A/cm2秒の速度でおこり、この速度は後の時間帯で下がる。
【0049】
図11は、−0.3Vのカソードバイアスにおける加湿空気流内750℃でのLSMベース電極をもつ例示の単セルデバイスの時間に対する電流密度推移を示す(領域1;t=0秒からt=60000秒)。t=60000秒において、Cr含有鋼板を炉内に入れ、鋼板の電位を−1.2Vに設定した。低温の鋼板が炉内に入れられたときのスパイクを特徴とする、遷移領域2において、(粗く研磨されただけで酸化に対して特に処理はなされていない)鋼板の薄い表面酸化層からCr(VI)蒸気が形成され、高速劣化をおこさせる。劣化は次いで、鋼板の負電位及びそれにともなう表面化学特性が落ち着くと、緩やかになり、安定化する。安定状態の劣化速度は領域3において印加電位−1.2Vに対してとられた。劣化速度はクロム源が存在しない領域1におけるセルについて見られた速度に近い。次いで領域4において電位を−0.6Vに変えた。劣化の変化が見られ、劣化は保護電位を低めると加速した。
【0050】
図12は、Cr含有鋼板が存在する場合の−0.3Vのカソードバイアスにおける10日間の初期劣化後の、加湿空気流内750℃におけるLSMベース電極をもつ単セルデバイスの時間に対する電流密度推移を示す。図12は、鋼板に外部電位を印加したときの劣化速度の変化を示す。図12は、鋼板の電位設定を−0.3V,+0.3V及び−0.6Vとしたときの電流密度推移を示す。そのような後期劣化段階においてさえ、劣化速度の大きな変化が見られた。劣化速度は、−0.3Vにおいて3×10−8A/cm2秒、+0.3Vにおいて5×10−8A/cm2秒、−0.6Vにおいて1.5×10−8A/cm2秒であった。このことから、初期だけでなく、後期の劣化段階においても、鋼板への負電位の印加によって劣化速度を下げ得ることが示された。
【0051】
本発明の精神及び範囲を逸脱しない様々な改変及び変形が本発明になされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって本発明の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内に入れば本発明はそのような改変及び変形を包含するとされる。
【符号の説明】
【0052】
1 カソード
2,9 電解質シート
3,8 アノード
4 負の保護電位
5 金属フレーム
6 バイア
7a,7b,15,16 シール材
10 接地
11 ポンプ電圧
12 金属コンポーネント電極
13 不活性対極
14 電解質
20 空気チャンバ
25 燃料チャンバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コンポーネント内に存在する金属種によって形成される、システムに存在する電極表面上の、金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法において、前記金属コンポーネントに負の保護電位を印加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記負の保護電位が前記金属コンポーネントとカソードの間に印加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属コンポーネントと前記システム内で最も低い電位を有するカソードの間に印加される前記負の保護電位が少なくとも−0.3Vであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属コンポーネントと前記システム内で最も低い電位を有するカソードの間に印加される前記負の保護電位が少なくとも−0.8Vであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記負の保護電位が全ての金属コンポーネントに一様に印加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属コンポーネントが、デバイスまたはデバイスの回路を支持するための金属フレーム、ガス導入管または金属ケーシングを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属種が、(i)単一揮発性酸化物または混合揮発性酸化物を形成する元素、及び/または(ii)クロム、タングステン、モリブデンまたはこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電極が、SOFCカソード、電気化学センサの電極、またはガス分離のための電気化学セルの電極を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(i)前記金属コンポーネントが保護層を有する場合、前記負の保護電位が前記金属コンポーネントのコアに印加される、及び/または(ii)前記方法が固体酸化物燃料電池のカソードの表面上のCr2O3またはCr2O3が混合された酸化物の堆積を軽減または防止し、前記方法が前記燃料電池に存在する全ての金属コンポーネントに負の保護電位を印加する工程を含み、前記金属コンポーネントがクロムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
補助電気化学酸素ポンプセルの使用によって金属コンポーネント内に存在する酸素の量を低減する方法において、前記金属コンポーネントが前記酸素ポンプセルの電極であり、前記方法が、(a)前記金属コンポーネント内の前記酸素の化学ポテンシャルを低めるために前記金属コンポーネントに酸素ポンプ電圧を印加する工程、及び(b)前記金属コンポーネントから酸素を除去する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記金属コンポーネントが、ステンレス鋼、鋼またはクロム含有合金を含むことを特徴とする請求項1または10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属種がクロムを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
(i)前記酸素ポンプセルがイオン導電性電解質及び不活性補助対極を有し、前記ポンプセルが前記金属コンポーネントの側面上に封着され、前記金属コンポーネントが前記酸素ポンプセルのカソードである、及び/または(ii)前記酸素ポンプ電圧が前記酸素ポンプセルの前記電極に間断なく印加されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
燃料チャンバまたは還元環境内に存在する酸化物種を有するコンポーネントから形成される揮発性酸化物による電極中毒を軽減または防止する方法において、前記コンポーネントに正の保護電位を印加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
(i)前記コンポーネントがセラミックコンポーネントを含む、及び/または(ii)前記方法が揮発性SiOによるアノードの中毒を軽減または防止することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項1】
金属コンポーネント内に存在する金属種によって形成される、システムに存在する電極表面上の、金属酸化物の堆積を軽減または防止する方法において、前記金属コンポーネントに負の保護電位を印加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記負の保護電位が前記金属コンポーネントとカソードの間に印加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属コンポーネントと前記システム内で最も低い電位を有するカソードの間に印加される前記負の保護電位が少なくとも−0.3Vであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属コンポーネントと前記システム内で最も低い電位を有するカソードの間に印加される前記負の保護電位が少なくとも−0.8Vであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記負の保護電位が全ての金属コンポーネントに一様に印加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属コンポーネントが、デバイスまたはデバイスの回路を支持するための金属フレーム、ガス導入管または金属ケーシングを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属種が、(i)単一揮発性酸化物または混合揮発性酸化物を形成する元素、及び/または(ii)クロム、タングステン、モリブデンまたはこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電極が、SOFCカソード、電気化学センサの電極、またはガス分離のための電気化学セルの電極を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(i)前記金属コンポーネントが保護層を有する場合、前記負の保護電位が前記金属コンポーネントのコアに印加される、及び/または(ii)前記方法が固体酸化物燃料電池のカソードの表面上のCr2O3またはCr2O3が混合された酸化物の堆積を軽減または防止し、前記方法が前記燃料電池に存在する全ての金属コンポーネントに負の保護電位を印加する工程を含み、前記金属コンポーネントがクロムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
補助電気化学酸素ポンプセルの使用によって金属コンポーネント内に存在する酸素の量を低減する方法において、前記金属コンポーネントが前記酸素ポンプセルの電極であり、前記方法が、(a)前記金属コンポーネント内の前記酸素の化学ポテンシャルを低めるために前記金属コンポーネントに酸素ポンプ電圧を印加する工程、及び(b)前記金属コンポーネントから酸素を除去する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記金属コンポーネントが、ステンレス鋼、鋼またはクロム含有合金を含むことを特徴とする請求項1または10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属種がクロムを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
(i)前記酸素ポンプセルがイオン導電性電解質及び不活性補助対極を有し、前記ポンプセルが前記金属コンポーネントの側面上に封着され、前記金属コンポーネントが前記酸素ポンプセルのカソードである、及び/または(ii)前記酸素ポンプ電圧が前記酸素ポンプセルの前記電極に間断なく印加されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
燃料チャンバまたは還元環境内に存在する酸化物種を有するコンポーネントから形成される揮発性酸化物による電極中毒を軽減または防止する方法において、前記コンポーネントに正の保護電位を印加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
(i)前記コンポーネントがセラミックコンポーネントを含む、及び/または(ii)前記方法が揮発性SiOによるアノードの中毒を軽減または防止することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−525287(P2011−525287A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512465(P2011−512465)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/003339
【国際公開番号】WO2009/148567
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/003339
【国際公開番号】WO2009/148567
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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