説明

電機子用磁芯及びラジアルギャップ型回転電機

【課題】巻回部の界磁子側の端部を幅方向に突出させずとも電機子巻線が界磁子側に移動することを回避又は抑制する技術を提供する。
【解決手段】軸Qを中心とする径方向Rで界磁子40と対向するラジアルギャップ型回転電機100に搭載される電機子用磁芯10であって、径方向Rに沿って延在するティース12と、ティース12の軸方向の端部122に載置されるインシュレータ14とを備え、インシュレータ14は、ティース12の界磁子と対向する側において、ティース12の界磁子と対向する鍔部124の幅方向Wの辺縁126よりも、幅方向Wに突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子用磁芯に関し、特にラジアルギャップ型回転電機に搭載される電機子用磁芯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジアルギャップ型回転電機、特にインナーロータ型の回転電機は、所定の回転軸を中心に回転する回転子たる界磁子と、当該回転軸を中心とした当該界磁子の外側で空隙を介して当該界磁子と対向する環状の固定子たる電機子とを備えている。回転子と固定子の間にはトルク発生に寄与しない漏洩磁束があり、回転電機の効率低下を招来する。そのため、漏洩磁束を低減する技術が提案されており、例えば下記特許文献1,2等に開示されている。
【0003】
下記特許文献1ではロータコアに埋め込まれた界磁磁石の径方向外側にフラックスバリアを設ける技術を提供している。一方、下記特許文献2では永久磁石を収容する収容孔の周方向両端における延設孔(収容孔の周方向両端より径方向外側に延びる孔)同士の間の幅角度と、ティースの径方向内側両端部(以下、「鍔部」と仮称する)の幅角度とが一定の条件を満たすことにより、漏洩磁束の低減を図っている。
【0004】
他方、回転電機の極数及びスロット数の組合せは、トルクの大きさに関連があることが下記非特許文献1に開示されている。特に極数PとスロットSとの比P/S=4/3の場合、比P/S=2/3の場合に比べて、比P/S=2/3の場合と同等のトルクを得、比P/S=2/3の場合よりも低いステータ磁束密度を得る。そのため、比P/S=2/3の場合よりも比P/S=4/3の場合の方が、磁気飽和しにくいと考えられる。
【0005】
また、下記特許文献2では、極数Pとスロット数SとがP/S=10/12という場合について幅角度の望ましい値や条件を提案している。
【0006】
電機子巻線が巻回される巻回部は、回転軸に平行な軸方向からの平面視で径方向に延在する。よって鍔部が巻回部の辺縁から、当該径方向及び軸方向のいずれにも垂直な幅方向に突出することにより、巻回部に巻回された電機子巻線が径方向内側(すなわち界磁子側)へ移動することは、鍔部によって阻害される。
【0007】
鍔部を呈するティースの軸方向側の端部にインシュレータを載置し、当該インシュレータの界磁子側が軸方向に突出することによって電機子巻線の界磁子側への移動を阻害する態様が、例えば下記特許文献3等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−278896号公報
【特許文献2】特開2008−109799号公報
【特許文献3】特開2007−116844号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】赤津観、涌井伸二「巻線係数とインダクタンス係数を用いた多極多スロット集中巻SPMSMの簡易設計手法」電学論D,127巻11号,2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
仮にP<Sの場合について上記特許文献2で紹介された値が、上記非特許文献1に開示されているP>Sの場合についても適用可能であるならば、極数Pが大きくなるにつれて、ロータコアの延設孔同士の間の幅角度が小さくなるので、鍔部の幅角度も小さくなる。
【0011】
鍔部の幅角度を小さくすると、電機子巻線が界磁子側へと移動しやすくなる。特に、電機子巻線の巻回数が大きい場合には、電機子巻線が幅方向に拡がるので、電機子巻線の一部が鍔部から幅方向にはみ出る。よって、電機子巻線の当該一部は界磁子側へと移動しやすくなる。そのため、電機子巻線の当該一部が界磁子側へと移動することを回避するには、導線の巻回数を減らす、及び/又は、導線の線径を細くする必要がある。導線の巻回数を減らしたり、導線の線径を細くしたりすることは回転電機の運転効率低下を招来する。
【0012】
上記特許文献3で紹介されたようにインシュレータで電機子巻線の移動を阻害する場合であっても、ティースは通常は幅方向よりも軸方向に長いので、インシュレータが電機子巻線を押さえる軸方向の長さは、当該インシュレータが電機子巻線を押さえていない軸方向の長さよりも短いことが多い。
【0013】
そのため、インシュレータでティースの軸方向側の電機子巻線を押さえつつ、鍔部の幅角度を小さくすると、電機子巻線が界磁子側に引っ張られる力に対する抗力を与える領域が減少し、ガタツキや異音の発生を招来する可能性がある。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑み、巻回部の界磁子側の端部の幅方向の寸法に依存せずに電機子巻線が界磁子側に移動することを回避又は抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく、本発明に係る電機子用磁芯の第1の態様は、軸(Q)を中心とする径方向(R)で界磁子と対向するラジアルギャップ型回転電機に搭載される電機子用磁芯(10,10A,10B)であって、前記径方向に沿って延在するティース(12)と、前記ティースの前記軸に平行な軸方向の第1の端部(122)に載置されるインシュレータ(14,14A,14B)とを備え、前記インシュレータは、前記ティースの前記界磁子と対向する側において、前記ティースの前記界磁子と対向する第2の端部(124)の前記軸方向及び前記径方向のいずれにも垂直な幅方向(W)の辺縁(126)よりも、前記幅方向に突出する、電機子用磁芯である。
【0016】
本発明に係る電機子用磁芯の第2の態様は、前記ティース(12)は電機子巻線が巻回される巻回部(128)を有し、前記辺縁(126)のうち前記幅方向(W)の一方側(Wa)の端部(126A)が前記巻回部の前記一方側の辺縁たる一方側辺縁(129A)から突出する前記幅方向の長さは、前記辺縁(126)のうち前記幅方向の他方側(Wb)の端部(126B)が前記巻回部の前記他方側の辺縁たる他方側辺縁(129B)から突出する前記幅方向の長さよりも短く、前記インシュレータ(14A)は前記一方側にのみ突出し、前記インシュレータの前記一方側辺縁からの突出長さは、前記辺縁の前記他方側の端部が前記他方側辺縁から突出する前記幅方向の長さに略等しい。
【0017】
本発明に係る電機子用磁芯の第3の態様は、その第1の態様であって、前記インシュレータ(14,14B)は、前記ティース(12)の前記界磁子と対向する側において、前記径方向(R)に対して前記幅方向(W)の双方にそれぞれ突出する。
【0018】
本発明に係る電機子用磁芯の第4の態様は、その第1ないし第3の態様であって、前記インシュレータ(14B)は、前記ティース(12)の前記第1の端部(122)上に載置される第1部(142)と、前記第2の端部(124)に前記幅方向(W)で隣接する第2部(144)とを有する。
【0019】
本発明に係る電機子用磁芯の第5の態様は、その第4の態様であって、前記第2部(144)は、前記辺縁(126)の前記軸方向全体にわたって近接する。
【0020】
本発明に係る電機子用磁芯の第6の態様は、その第2ないし第5の態様であって、前記ティース(12)は電機子巻線が巻回される巻回部(128)を有し、前記第1部(142)のうち前記巻回部上に載置される部位の前記幅方向(W)の長さ(W1)は、前記巻回部の前記幅方向の長さ(W2)に略等しい。
【0021】
本発明に係る回転電機の第1の態様は、第1ないし第6の態様に係る電機子用磁芯(10,10A,10B)の複数と、前記電機子用磁芯が有するティース(12)のそれぞれに巻回される電機子巻線(20)の前記複数と、前記界磁子(40)とを備えるラジアルギャップ型回転電機(100,100A)であって、前記界磁子は複数の磁極を呈し、前記磁極面の数n(nは自然数)と前記ティースの数m(mは自然数)とはn/m=4/3の関係を満たす、ラジアルギャップ型回転電機である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電機子用磁芯の第1の態様によれば、巻回部の界磁子と対向する側の端部を、当該端部に対して界磁子から遠い側よりも幅方向に突出させずとも電機子巻線が界磁子側に崩れることを回避又は抑制できる。そのため、巻回部の製造工程を簡略化できる。また、インシュレータの素材を巻回部の素材よりも単位体積当たりの重さが軽い素材を採用すれば、巻回部と同じ素材で幅方向に突出させる態様よりも軽量化できる。また、幅方向の一方側にだけインシュレータを突出させることによりスロットオープンを大きくとることができ、電機子巻線を巻回しやすい。また、インシュレータを突出させない態様と比して巻回数を増加でき、占積率向上に資する。
【0023】
本発明に係る電機子用磁芯の第2の態様によれば、第1の態様と同様の効果を得ることができる。また、本態様に係る電機子用磁芯を採用した回転電機において、界磁子を幅方向の他方側から一方側へと回転させることにより、界磁子からの漏洩磁束を低減することに資する。
【0024】
本発明に係る電機子用磁芯の第3の態様によれば、電機子巻線が界磁子側に崩れることを回避又は抑制することに資する。
【0025】
本発明に係る電機子用磁芯の第4の態様によれば、第2部がティースの幅方向で隣接するので、第1の態様による効果を得ることに資する。
【0026】
本発明に係る電機子用磁芯の第5の態様によれば、電機子巻線が界磁子側に崩れることを回避又は抑制することに資する。
【0027】
本発明に係る電機子用磁芯の第6の態様によれば、電機子巻線の損傷を回避又は抑制しつつ占積率向上に資する。
【0028】
界磁子から電機子へと流れる磁束の漏洩を抑制するには、界磁子の磁極面の幅と、これに対向する電機子用磁芯(第2の端部)の幅とが同程度であることが望ましい。そのため、磁極数>ティースの場合には、磁極数が増えるにつれて第2の端部の幅の望ましい値が小さくなり、電機子巻線が界磁子側に崩れることを阻止できなくなってしまう。本発明に係るラジアルギャップ型回転電機の第1の態様によれば、電機子巻線が界磁子側に崩れることを阻止しつつ漏洩磁束の低減に資する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電機子用磁芯を搭載したラジアルギャップ型回転電機の平面図である。
【図2】電機子の部分斜視図である。
【図3】電機子の部分断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電機子用磁芯を搭載したラジアルギャップ型回転電機の平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る電機子用磁芯を採用した電機子の部分斜視図である。
【図6】電機子の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図1を初めとする以下の図には、本発明に関係する要素のみを示す。
【0031】
〈第1実施形態〉
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る電機子用磁芯10は、電機子巻線20とともに電機子30を形成する。電機子30が界磁子40に対して、軸Qと反対側で対向することでラジアルギャップ型回転電機100を形成する。
【0032】
界磁子40は、例えば埋込磁石型ロータが採用される。具体的には、界磁子40は、略円筒体を呈するロータコア41と、永久磁石42の複数とを有する。ロータコア41は、当該円筒体の中心を通ってシャフト43が貫通する貫通孔44と、永久磁石42のそれぞれを収容する収容孔45の複数と、それぞれの収容孔45の両端に設けられる磁気障壁部46の複数とを呈する。
【0033】
電機子用磁芯10は、複数の電機子巻線20のそれぞれが集中巻で巻回されるティース12の複数と、ティース12よりも軸Qから遠い側で複数のティース12同士を環状に接続するヨーク部13とを有する。なお、本実施形態では界磁子40の磁極面(永久磁石42)の数n(nは自然数)とティース12の数m(mは自然数)とは、n/m=4/3との関係を満たす。図1では界磁子の磁極面の数が12(n=12)、ティース12の数が9(m=9)の態様を示している。電機子用磁芯10では、ティース12の複数が軸Qを中心として周方向で等間隔に放射状に延在し、ヨーク部13が複数のティース12に接続されつつ円環状を呈する。換言すれば、電機子用磁芯10は、円環状を呈するヨーク部13から軸Q(当該円環の中心)へと向かって周方向で等間隔にティース12が突出する形状を呈する。
【0034】
図2,3に示すように、ティース12のそれぞれは例えば、巻回部128と鍔部(課題を解決するための手段における「第2の端部」に相当する)124とを呈する。なお、図2は、電機子30の部分斜視図であり、9個あるティース12のうち周方向に隣接する3個のティース12を示している。また、図3は電機子30の部分断面図であり、幅方向Wに垂直な面での断面図を示している。
【0035】
巻回部128は、電機子巻線20が巻回される芯として機能する。また、鍔部124は、巻回部128よりも軸Q側で界磁子20(図1参照)と対向する。鍔部124は巻回部128の幅方向(軸Qを中心として巻回部128が延在する方向たる径方向Rと軸方向とのいずれにも垂直な方向)Wの辺縁よりも幅方向Wに突出する。なお、本実施形態では巻回部128の幅方向Wの辺縁よりも幅方向Wに突出する鍔部124を呈する態様を示しているが、必ずしも幅方向Wに突出する鍔部124を呈する必要はなく、巻回部128よりも軸Q側が狭まっていても良い。これにより、電機子用磁芯10の軽量化に資する。
【0036】
このようなティース12及びヨーク部13は、予め定められた形状に打抜かれた鋼板の複数を軸方向に積層することにより形成できる。なお、図1では電機子巻線20は複数あるうちの一のみを破線で示している。また、図2では一のティース12のみについて、電機子巻線20で隠れた部位を破線で示している。
【0037】
また、図1に示すように、電機子用磁芯10は、インシュレータ14を備える。インシュレータ14は、例えば樹脂成形品が採用されて、ティース12の軸方向の端部(課題を解決するための手段における「第1の端部」に相当する)122上に載置される。具体的にはインシュレータ14は、環状部141と、第1部142の複数と、突出部143の複数とを有する。インシュレータ14は、ティース12と電機子巻線20との絶縁に資する。
【0038】
環状部141は、ヨーク部13が呈する円環と略同径の円環を呈し、ヨーク部13の軸方向の端部123に載置される。具体的には、環状部141の内径は、軸Qを中心として、軸Qとヨーク部13の軸Qに近い側(径方向R内側)の辺縁131との間の長さよりも大きくかつ、環状部141の外径は、軸Qとヨーク部13の軸Qから遠い側(径方向R外側)の辺縁133との間の長さよりも小さい。これにより、環状部141が電機子巻線20の巻回を阻害することを回避しかつ、ラジアルギャップ型回転電機100の径方向Rの大きさを抑制できる。
【0039】
環状部141には複数の第1部142が接続される。具体的には例えばティース12と同数(本実施形態では9個)の第1部142が軸Qを中心として周方向で等間隔に放射状に延在し、環状部141に接続される。それぞれの第1部142が、複数のティース12それぞれが呈する端部122上に載置される。より具体的には、巻回部128の軸方向の端部122上に載置される。なお、本実施形態では第1部142がティース12と同数の態様を示しているが、必ずしも同数である必要はなく、第1部142の個数は、ティース12の個数以下であれば良い。
【0040】
ここで、巻回部128が幅方向Wに長さW2を呈するとき、当該巻回部128の軸方向の端部122上に載置される第1部142の幅方向Wの長さW1は、巻回部128の幅方向Wの長さW2に略等しいことが望ましい。何となれば、第1部142が巻回部128よりも幅方向Wに突出しないことにより、電機子巻線20の占積率向上に資するからである。また、巻回部128(ティース12)が同一形状に打抜かれた鋼板の複数を積層して形成された場合には、端部122の幅方向Wの辺縁が径方向Rからの平面視で直角を呈する。そのため、W1<W2では、当該辺縁での電機子巻線の損傷を招来するからである。
【0041】
突出部143は、例えば第1部142のそれぞれに接続されて鍔部124の軸方向の端部125上に載置される。具体的には、突出部143は、鍔部124の軸方向の端部125上に載置されて、鍔部124の幅方向Wの双方の辺縁126よりも幅方向Wの両側に突出する。より具体的には、突出部143は、巻回部128の幅方向Wの双方の辺縁129よりも幅方向Wの両側に突出する。ただし、突出部143は、当該突出部143に接続される第1部142が載置される巻回部128の鍔部124と当該鍔部124に周方向で隣接する他の鍔部124との最近接地点の中間地点より突出することはない。これによりスロットオープンを確保できる。
【0042】
なお、本実施形態では、インシュレータ14は巻回部128の幅方向Wの双方の辺縁129を覆っていないが、覆っても良い。そのとき、突出部143が「突出する」とは、辺縁129を覆うインシュレータ(辺縁129を覆う態様は図示省略)の厚みよりも十分に大きい長さだけ突出することをいう。
【0043】
突出部143が巻回部128の幅方向Wの辺縁129よりも幅方向Wの両側に突出するので突出部143が辺縁129よりも突出しない場合と比して、電機子巻線20が界磁子40側に引っ張られる力に対する抗力を与える領域が増大しかつ、当該抗力を与えない領域が減少する。よって、巻回部128の幅方向Wの寸法に依存せず、電機子巻線20が界磁子40側に崩れることを回避又は抑制できる。仮に鍔部124を巻回部128の幅方向Wの辺縁よりも突出させるとしても、突出部143を鍔部124よりも幅方向Wに更に突出させるので、電機子巻線20が界磁子40側に崩れることをより確実に回避又は抑制できる。
【0044】
また、漏洩磁束の低減を考慮して鍔部124の幅を磁極面の幅に応じて設定できるので、電機子巻線20が界磁子40側に崩れることを阻止しつつ界磁子40と電機子30との間の磁束の漏洩を低減することに資する。
【0045】
〈第2実施形態〉
図4に示すように、本発明の第2実施形態に係る電機子用磁芯10Aは、第1実施形態で示したインシュレータ14に代えてインシュレータ14Aを有する。電機子用磁芯10Aと電機子巻線20とで電機子30Aを形成し、電機子30Aと界磁子40とでラジアルギャップ型回転電機100Aを形成する。なお、以下の実施形態において既述の実施形態と同様の機能を有する要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
鍔部124Aは、第1実施形態の鍔部124と同様に、巻回部128の幅方向Wの辺縁よりも幅方向Wに突出し、その突出長さは、幅方向Wの一方側(巻回部128の延在方向における軸Qを中心とする周方向で反時計方向側に対応する方向側)Waに比して他方側Wbの方が長い。このような鍔部124Aを電機子用磁芯10Aが備えるティース12Aのすべてに設け、これを採用した電機子30Aに対して界磁子40を軸Qを中心とする周方向で反時計方向に回転させることにより、界磁子40からの漏洩磁束を低減できる。
【0047】
インシュレータ14Aは、第1実施形態のインシュレータ14と同様に、環状部141と、複数の第1部142とを有する。そして、第1実施形態の突出部143に代えて突出部143Aを有する。
【0048】
突出部143Aは、例えば第1部142のそれぞれに接続されて鍔部124Aの軸方向の端部125上に載置される。具体的には、突出部143Aは、鍔部124Aの軸方向の端部125上に載置されて、鍔部124Aの幅方向Wの一方側Waの辺縁126Aよりも幅方向Wの当該一方側Waに突出する。より具体的には、突出部143Aは、巻回部128の幅方向Wの一方側Waの辺縁たる一方側辺縁129Aよりも幅方向Wの当該一方側Waに突出する。一方側辺縁129Aからの突出部143Aの突出長さは、例えば幅方向Wの他方側Wbの辺縁たる他方側辺縁129Bからの鍔部124Aの当該他方側Wbへの突出長さに等しい。そして、突出部143Aの当該他方側Wbは、当該他方側Wbの辺縁129Bからの鍔部124Aの当該他方側Wbへの突出長さに等しい。要するに、鍔部124Aが幅方向Wで非対称を呈し、突出部143Aが幅方向Wで対称を呈する。
【0049】
ここで、突出部143Aは、当該突出部143Aに接続される第1部142が載置される巻回部128の鍔部124Aと当該鍔部124Aに周方向で隣接する他の鍔部124Aとの最近接地点の中間地点より突出することはない。これにより鍔部124Aが幅方向Wで非対称であるモータ(図示省略)においても、インシュレータ14Aを幅方向Wで対称とすることで、電機子巻線20が界磁子40側に崩れることをより確実に回避又は抑制できる。
【0050】
〈第3実施形態〉
図5,6に示すように、本発明の第3実施形態に係る電機子用磁芯10Bは、第1実施形態で示したインシュレータ14に代えてインシュレータ14Bを有する。これにより電機子30Bを形成する。なお、図5は、電機子30Bの部分斜視図であり、図2に相当する部位を示している。また、図6は電機子30Bの部分断面図であり、幅方向Wに垂直な面での断面図を示している。
【0051】
インシュレータ14Bは、第1実施形態のインシュレータ14と同様に、環状部141と、複数の第1部142と、複数の突出部143とを有し、第2部144を更に有する。
【0052】
第2部144は、鍔部124の幅方向で隣接する。具体的には例えば、第2部144は、突出部143のうち、鍔部124の幅方向Wの双方の辺縁126よりも幅方向Wの両側に突出する部位の軸方向の端部に接続されて、鍔部124の幅方向Wの双方の辺縁126の軸方向Q全体にわたって近接する。
【0053】
本実施形態では突出部143と第2部144とが一体に形成されている態様を図5に示している。つまり、径方向Rからの平面視で第2部144は突出部143とともに略U字形状を呈し、鍔部124の辺縁(軸方向の端部125及び幅方向Wの辺縁126)に近接する。図5,6では図示を省略している軸方向の一方側においては例えば次のような態様を呈する。すなわち、鍔部124の軸方向の当該一方側の端部(図示省略)上に、第1実施形態で示した突出部143を載置し、当該突出部143と第2部144とを接続する。これにより、電機子巻線20が界磁子40側に崩れることをより確実に回避又は抑制できる。
【0054】
〈変形例〉
以上、本発明の好適な態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2部144を幅方向Wの一方側にのみ設けても良い。
【符号の説明】
【0055】
Q 回転軸
R 径方向
W 幅方向
Wa 幅方向の一方側
Wb 幅方向の他方側
W1,W2 長さ
10,10A,10B 電機子用磁芯
100,100A ラジアルギャップ型回転電機
12 ティース
122 第1の端部
124 第2の端部
126 辺縁
126A,126B 端部
128 巻回部
129A 一方側辺縁
129B 他方側辺縁
14,14A,14B インシュレータ
142 第1部
144 第2部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(Q)を中心とする径方向(R)で界磁子と対向するラジアルギャップ型回転電機に搭載される電機子用磁芯(10,10A,10B)であって、
前記径方向に沿って延在するティース(12)と、
前記ティースの前記軸に平行な軸方向の第1の端部(122)に載置されるインシュレータ(14,14A,14B)と
を備え、
前記インシュレータは、前記ティースの前記界磁子と対向する側において、前記ティースの前記界磁子と対向する第2の端部(124)の前記軸方向及び前記径方向のいずれにも垂直な幅方向(W)の辺縁(126,126A)よりも、少なくとも前記幅方向のいずれかに突出する、
電機子用磁芯。
【請求項2】
前記ティース(12)は電機子巻線が巻回される巻回部(128)を有し、
前記辺縁(126)のうち前記幅方向(W)の一方側(Wa)の端部(126A)が前記巻回部の前記一方側の辺縁たる一方側辺縁(129A)から突出する前記幅方向の長さは、前記辺縁(126)のうち前記幅方向の他方側(Wb)の端部(126B)が前記巻回部の前記他方側の辺縁たる他方側辺縁(129B)から突出する前記幅方向の長さよりも短く、
前記インシュレータ(14A)は前記一方側にのみ突出し、
前記インシュレータの前記一方側辺縁からの突出長さは、前記辺縁の前記他方側の端部が前記他方側辺縁から突出する前記幅方向の長さに略等しい、
請求項1記載の電機子用磁芯(10A)。
【請求項3】
前記インシュレータ(14,14B)は、
前記ティース(12)の前記界磁子と対向する側において、前記径方向(R)に対して前記幅方向(W)の双方にそれぞれ突出する、
請求項1記載の電機子用磁芯(10,10B)。
【請求項4】
前記インシュレータ(14B)は、
前記ティース(12)の前記第1の端部(122)上に載置される第1部(142)と、
前記第2の端部(124)に前記幅方向(W)で隣接する第2部(144)と
を有する、
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の電機子用磁芯(10B)。
【請求項5】
前記第2部(144)は、前記辺縁(126)の前記軸方向全体にわたって近接する、
請求項4記載の電機子用磁芯(10B)。
【請求項6】
前記第1部(142)のうち前記巻回部上に載置される部位の前記幅方向(W)の長さ(W1)は、前記巻回部の前記幅方向の長さ(W2)に略等しい、
請求項2ないし請求項5のいずれか記載の電機子用磁芯(10,10A,10B)。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の電機子用磁芯(10,10A,10B)の複数と、
前記電機子用磁芯が有するティース(12)のそれぞれに巻回される電機子巻線(20)の前記複数と、
前記界磁子(40)と
を備えるラジアルギャップ型回転電機(100,100A)であって、
前記界磁子は複数の磁極を呈し、
前記磁極面の数n(nは自然数)と前記ティースの数m(mは自然数)とはn/m=4/3の関係を満たす、ラジアルギャップ型回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−9474(P2013−9474A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139113(P2011−139113)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】